説明

デジタル放送方法及びその放送受信端末機

【課題】視聴資格の無いデジタル放送利用者に対して一時的に有料放送サービスを利用できるようにすることによって、有料放送サービスに加入するか否かを決めやすくする、一時的試用を可能としたCA(Conditional Access)デジタル放送を提供する。
【解決手段】本発明によるデジタル放送方法は、デジタル放送コンテンツを所定の制限時間内で受信できるようにする試用受信許諾情報を入れたデジタル放送伝送フレームを生成する伝送フレーム生成段階を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2005年12月13日に出願された韓国特許出願10−2005−0122521の優先権を主張するものであり、その全内容は、ここに参照として組み込まれる。
【0002】
本発明は、デジタル放送システムに係り、特に、デジタル放送方法及びその放送の受信端末機に関する。
【背景技術】
【0003】
近来、CD、DVDなどの優れた音質のデジタルオーディオ機器が急速に普及して一般化するのに伴い、高音質のデジタル放送に対する聴取者の要求も益々増加しつつある。このような要求に応じて、既存のFM放送における音質の限界を克服すべく、ヨーロッパ、カナダ、米国などでデジタルオーディオ放送(Digital Audio Broadcasting;DAB)が施行されている。
【0004】
DABシステムは、現在のAM放送やFM放送とは全く異なる技術を用いて高品質の音を得られるだけでなく、移動中にも優れた受信能力を示す。そしてさらには、映像や文字のようなデジタルデータも高速で送信できるという特長を有する。
【0005】
このようなモバイル放送サービスとして、韓国ではオーディオ放送よりも映像を含む様々なマルチメディアサービスが強調され、デジタルマルチメディア放送(DMB)と命名されている。一方、米国、ヨーロッパ、日本などでは韓国とは異なる方式のモバイル放送サービスが推進されており、その例には、米国におけるメディアフロー(mediaFLO)、ヨーロッパにおけるDVB−H(Digital Video Broadcating-Hand held)、日本におけるISDB−T(Integrated Service Digital Broadcasting-Terrestrial)などがある。
【0006】
一般に、デジタル放送では、受信資格を持つ者のみが放送サービスを受けられるように、CA(制限受信;Conditional Access)機能が採用されている。すなわち、有料(ペイパービュー)放送サービスの場合、CA機能を用いることにより、資格を持つ者のみが有料放送サービスを受けられるようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インターネット有料コンテンツの場合、“閲覧(tour)”のメニューがあり、インターネット使用者はこれを通じてインターネット有料コンテンツの内容を概ね吟味した後、有料放送コンテンツを利用するか否かを決定することができる。これに対し、デジタル放送の有料放送サービスでは、このようなインターネットにおける“閲覧”に該当する機能が提供されておらず、デジタル放送利用者が有料放送サービスに加入するか否かを決定する上で、改善の余地がある。
【0008】
本発明は、デジタル放送方法及びその放送受信端末機に関し、このような背景技術を課題としたもので、その目的は、必要な資格(又は条件)の無いデジタル放送利用者に対して一時的に有料放送サービスを利用できるようにすることによって、有料放送サービスに加入するか否かを決めやすくする、臨時試用を可能としたCA(Conditional Access)デジタル放送を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的、特徴、効果は、実施形態を含む以下の説明から把握され、また実践により理解される。上記以外の目的及び効果も、図面と共に示す以下の説明及び特許請求の範囲で提示される構成により実現される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明によるデジタル放送方法は、デジタル放送コンテンツを所定の制限時間内で受信できるようにする試用受信許諾情報を入れたデジタル放送伝送フレームを生成する伝送フレーム生成段階と、その伝送フレームを送信する伝送フレーム送信段階と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の放送受信端末機は、デジタル放送信号を受信して信号処理する放送受信部と、この信号処理後のデジタル放送コンテンツを出力する放送出力部と、前記信号処理後の伝送フレームから試用受信許諾情報を抽出し、前記コンテンツを所定の制限時間内で出力するように、前記放送受信部及び前記放送出力部を制御する制御部と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明に関する上記の広範な記載及び下記の詳細な記載は、例示及び説明と、特許請求の範囲に記載された発明のさらなる理解を提供するためのものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
【0014】
本発明では、デジタル放送利用者に対し、例えば、有料放送サービスのようなCA放送サービスを、必要な資格(又は条件)が無くとも一時的に利用できるようにしている。これにより、事業者にとっては、デジタル放送利用者の有料放送サービス加入を誘導することができ、消費者にとっては、有料放送サービスを一時的に利用できることから、有料放送サービスに加入するか否かを決めやすくなる、といった効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図中、同じ要素についてはできるだけ共通の符号を用いるものとする。
【0016】
下記では、世界各国のデジタル放送サービスのうち、韓国で現在推進中の地上波DMBサービスを例として本発明によるデジタル放送及び端末機を説明する。しかし、本発明は韓国のデジタル放送サービスに限定されることはなく、米国のメディアフロー、ヨーロッパのDVB−H、日本のISDB−T放送サービスなどにも適用可能であることは自明である。
【0017】
まず、図1を参照して、ユーレカ・プロジェクト147(Eureka project 147)の結果として発表されたETSI EN 300 401 V1.3.3(2005−05)で定義されているDMBサービスのための伝送フレーム(transmission frame)の構成について説明する。図1は、DMB伝送フレームの構造を示す図である。
【0018】
DMB伝送フレームは、図1に示すように、主サービスチャネル(Main Service Channel:MSC)、高速情報チャネル(Fast Information Channel;FIC)、同期チャネル(Synchronization Channel)で構成される。
【0019】
MSCは、ビデオ、オーディオ、データサービスコンポーネントを搬送するために用いられるチャネルで、個別及びコンボリューションで符号化されて均一又は不均一誤り保護機能を有した複数のサブチャネルに分けられるタイムインターリーブドチャネル(time interleaved channel)である。各サブチャネルは、一つ以上のサービスコンポーネントを搬送できる。サブチャネル及びサービスコンポーネントの構成は、マルチプレクス構成(Multiplex Configuration)と呼ばれる。
【0020】
FICは、受信機が迅速に情報をアクセスできるようにするチャネルで、MCI(Multiplex Configuration Information)を送信するために、選択的にサービス情報(Service Information)及びデータサービス(data service)と共に用いられる。FICは、固定均一誤り保護機能を有するノンタイムインターリーブドデータチャネル(non-time-interleaved data channel with fixed equal error protection)である。FICは、さらに、様々なFIB(Fast Information Block)に分けられる。当該FIBについては後述する。
【0021】
同期チャネルは、伝送システム内において、伝送フレーム同期化(transmission frame synchronization)、自動周波数制御(automatic frequency control)、チャネル状態推定(channel state estimation)、送信機識別(transmitter identification)のような基本的復調器の機能のために用いられる
【0022】
図2を参照して、FIBの構成について詳細に説明する。図2は、FIBの構造を示す図である。
【0023】
FIBは、図2に示すように、FIBデータフィールド(FIB data field)及びCRC(Cyclic Redundancy Check)で構成される。FIBデータフィールドは、さらに、一つ以上のFIG(Fast Information Group)、エンドマーカー(end marker)、パッディング(padding)で構成される。
【0024】
FIGは、FIGタイプ(FIG type)及び長さ(Length)で構成されるFIGヘッダー(FIG header)、FIGデータフィールド(FIG data field)で構成される。FIGタイプは、FIGデータフィールドに記録されるデータのタイプを表し、長さは、FIGデータフィールドの長さを表す。FIGタイプのリストを、表1に示す。
【表1】

【0025】
本発明では、表1にリストアップされたFIGタイプの中で、番号0のFIGタイプ(FIG type number 0)が関心の対象となる。このFIGタイプ0によるFIGデータフィールドを、図3に示す。図3を参照して、FIGタイプ0のFIGデータフィールドの構造について説明する。
【0026】
FIGタイプ0は、現在以降のマルチプレクス構成(multiplex configuration)、マルチプレクス再構成(multiplex re-configuration)、時間と日付、及びその他の基本サービス情報を表すために用いられる。このFIGタイプ0のFIGデータフィールドには、図3に示すように、拡張(extension)フィールドとタイプ0フィールド(Type 0 field)がある。拡張フィールドは、タイプ0フィールドの32種のインタープリテーション(32 kinds of interpretations)の中から一つを識別するためのものである。
【0027】
本発明では、FIGタイプ0の拡張フィールド3及び4が特に関心の対象となり、これについて、図4及び図5を参照して説明する。
【0028】
図4は、パケットモードのサービスコンポーネント(Service component)フィールドの構造を示す図であり、図5は、FICまたはストリームモードのサービスコンポーネント(Service component)フィールドの構造を示す図である。
【0029】
図4及び図5のサービスコンポーネントフィールドはいずれも、16ビットのSCCA(Service Component Conditional Access)フィールドを有する。SCCAフィールドは、CAのために割り当てられた部分であって、これについてはETSI TS 102 367 V2.1.1(2005−09)で、CAOrg(CA Organisation)フィールドという名前でより詳細に定義されている。
【0030】
このCAOrgフィールドには、上記DMB伝送フレームによって送信されるデジタル放送コンテンツを制限時間内で受信利用できるようにする試用受信許諾情報(time-limited broadcast reception admissionin formation)が、入れられる。該試用受信許諾情報は、制限時間内に放送されるサービスの種類を表す試用放送サービス種類情報と、試用の制限時間を表す制限時間情報と、を含む構成とすることが好ましいが、必ずしもこのように構成される必要はなく、例えば、試用放送サービス種類情報のみ、或いは、制限時間情報のみの構成としても良い。
【0031】
CAOrgフィールドに試用受信許諾情報を入れる方式について、図6を参照して具体的に説明する。図6は、CAOrgフィールドのフォーマットを示す図である。
【0032】
図6に示すように、CAOrgフィールドは、3ビットのCAモード(CA Mode)フィールド、5ビットのRfu(Reserved for Future use)フィールド、8ビットのSharedFlagフィールドで構成される。
【0033】
CAモードフィールドは、現在適用されているスクランブリングモードを表すもので、表2のようなフォーマットを持つようにETSI TS 102 367 V2.1.1(2005−09)で定義されている。
【表2】

【0034】
本発明は、表中に示すように、CAモードフィールドで現在は予備(reserved)とされているコードを、試用放送サービス種類情報として用いることを提案する。すなわち、“100”、“101”、“110”、“111”のコードが試用放送サービス種類情報となり、必要な資格が無い利用者であってもCA放送コンテンツを所謂“閲覧”できるように、CA放送利用を一時的に許可するコードとして利用することを提案する。
【0035】
例えば、一例では、コード“100”、“101”、“110”、“111”が、様々な放送サービスのうち、それぞれ“Subchannel CA”、“Data Group CA”、“MOT CA”、“proprietary CA”の放送サービスを一時的に“閲覧”できるコードとして、放送事業者と放送受信端末機との間に事前約束されうる。当該例示した事前約束は一例に過ぎず、他の方式(例えば、コード“101”が“Data Group CA”ではなく“Subchannel CA”の一時的閲覧を意味するなど)で一時的閲覧を事前約束しても良いことは明らかである。
【0036】
一方、本発明は、Rfuフィールドに、制限時間情報を5ビットで入れることを提案する。例えば、“00001”で5秒、“00010”で10秒、“00011”で15秒、…などを意味するように事前約束されうる。
【0037】
したがって、放送受信端末機使用者は、本発明によるCA放送をチャネル選択する場合、該CA放送のコンテンツを視聴できる資格の有無にかかわらず、一定の時間は、当該CA放送コンテンツを閲覧することができる。
【0038】
以上のように送信されるDMBの伝送フレームを受信して、CA放送の受信資格にかかわりなく一時的に放送サービスを試用受信しうる放送受信端末機について、図7を参照して説明する。図7は、本発明による放送受信端末機の構成を示す概略ブロック図である。
【0039】
図7に示すように、放送受信端末機1は、放送受信部10、メモリ部30、入力部50、放送出力部70、制御部90を含んで構成される。
【0040】
放送受信部10は、前述のDMB伝送フレームを含むデジタル放送信号を受信して処理する役割を担う。
【0041】
メモリ部30は、放送受信端末機1の動作及び管理に必要なプログラムと、使用者の必要に応じて各種情報をランダムに記憶する役割を担う。
【0042】
入力部50は、端末機使用者が放送受信端末機1に各種命令等を入力できるようにする。
【0043】
放送出力部70は、放送受信部10を通じて受信/信号処理されたデジタル放送コンテンツを端末機使用者に出力する役割を担う。当該放送出力部70は、好ましくは、ビデオディスプレイ部(図示せず)及びオーディオ出力部(図示せず)を備えている。
【0044】
そして、制御部90は、放送受信部10、メモリ部30、入力部50、及び放送出力部70を制御する役割を担う。特に、制御部90は、前述の本発明によるデジタル放送方法によって提供されるデジタル放送の伝送フレームから試用受信許諾情報を抽出し、当該デジタル放送コンテンツを端末機使用者へ一時的に出力できるように制御する。この試用受信許諾情報が放送の伝送フレームのどの部分から抽出されるかについては、本発明によるデジタル放送方法と関連付けて既に上述したので、その詳細は本明細書の簡明化のために省かれる。
【0045】
本発明の精神及び必須特徴を逸脱しない範囲で他の特定の形態に本発明を具体化できることは、当業者にとっては自明である。例えば、以上では地上波DMBを例にして本発明を説明してきたが、以上の説明から、本発明の概念が、CA放送が具現されうるデジタル放送に容易に適用されるということが、本発明の技術分野における当業者には容易に理解できる。
【0046】
したがって、上記の詳細な説明は、全ての面において制限的に解釈されてはならず、例示的なものとして考慮されるべきである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の合理的解釈によって決定されなければならず、本発明の均等的範囲内における変更はいずれも本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本発明のより良い理解を提供するために含まれ、本願に組み入れられて一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を図示し、その説明と共に本発明の原理を表す補助となる。
【図1】DMB伝送フレームの構造を示す図。
【図2】FIBの構造を示す図。
【図3】FIGタイプ0のデータフィールドの構造を示す図。
【図4】パケットモードのサービスコンポーネントフィールドの構造を示す図。
【図5】FIC又はストリームモードのサービスコンポーネントフィールドの構造を示す図。
【図6】CAOrgフィールドのフォーマットを示す図。
【図7】本発明による放送受信端末機の構成を示す概略ブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送コンテンツを所定の制限時間内で受信できるようにする試用受信許諾情報を入れたデジタル放送伝送フレームを生成する伝送フレーム生成段階と、
前記伝送フレームを送信する伝送フレーム送信段階と、
を含むことを特徴とするデジタル放送方法。
【請求項2】
前記試用受信許諾情報は、前記伝送フレームのFIGタイプ0の拡張フィールド3又は4に入れることを特徴とする請求項1に記載のデジタル放送方法。
【請求項3】
前記試用受信許諾情報は、前記FIGタイプ0の拡張フィールド3又は4のSCCAフィールドに入れることを特徴とする請求項2に記載のデジタル放送方法。
【請求項4】
前記SCCAフィールドのCAモードフィールドに、CAデジタル放送のサービス種類を示す試用放送サービス種類情報を入れることを特徴とする請求項3に記載のデジタル放送方法。
【請求項5】
前記SCCAフィールドのRfuフィールドに、CAデジタル放送の試用制限時間を示す制限時間情報を入れることを特徴とする請求項3に記載のデジタル放送方法。
【請求項6】
デジタル放送信号を受信して信号処理する放送受信部と、
前記信号処理後のデジタル放送コンテンツを出力する放送出力部と、
前記信号処理後の伝送フレームから試用受信許諾情報を抽出し、前記コンテンツを制限時間内で出力するように、前記放送受信部及び前記放送出力部を制御する制御部と、
を含んで構成されることを特徴とする放送受信端末機。
【請求項7】
前記制御部は、前記試用受信許諾情報を、前記伝送フレームのFIGタイプ0の拡張フィールド3又は4から抽出する制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の放送受信端末機。
【請求項8】
前記制御部は、前記試用受信許諾情報を、前記FIGタイプ0の拡張フィールド3又は4のSCCAフィールドから抽出する制御を行うことを特徴とする請求項7に記載の放送受信端末機。
【請求項9】
前記制御部は、前記SCCAフィールドのCAモードフィールドから、制限時間内に出力可能な放送のサービス種類を示す試用放送サービス種類情報を抽出する制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の放送受信端末機。
【請求項10】
前記制御部は、前記SCCAフィールドのRfuフィールドから、前記制限時間を示す制限時間情報を抽出する制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の放送受信端末機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−166628(P2007−166628A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−336014(P2006−336014)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(502032105)エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド (2,269)
【Fターム(参考)】