デジタル方式ガルバノスキャナ制御装置
【課題】ユーザで使用する角度位置指定デジタルデータ範囲と要求角度範囲とを互いに合致させるべく、角度位置指令データを容易に変換してデジタル方式ガルバノスキャナをより有効かつ高精度に動作制御する。
【解決手段】ホストPC等の上位装置から出力されるmビットの角度位置指定デジタルデータによりデジタル方式ガルバノスキャナを指定の角度位置に動作制御するデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置において、mビットのデジタルデータをnビットずらして1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍にされた加工デジタルデータを1又は2以上作成するデータ加工手段(データ加工処理回路)15と、該加工デジタルデータを1又は2以上組み合わせたものをmビットのデジタルデータに加算するデータ加算手段(組合せ・足し算回路)16とを備え、加算後のデジタルデータを角度位置指定デジタルデータとして使用することで、角度位置指定デジタルデータによる動作角度範囲と、ユーザ側に要求された有効動作角度範囲とを一致若しくはほぼ一致させる。
【解決手段】ホストPC等の上位装置から出力されるmビットの角度位置指定デジタルデータによりデジタル方式ガルバノスキャナを指定の角度位置に動作制御するデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置において、mビットのデジタルデータをnビットずらして1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍にされた加工デジタルデータを1又は2以上作成するデータ加工手段(データ加工処理回路)15と、該加工デジタルデータを1又は2以上組み合わせたものをmビットのデジタルデータに加算するデータ加算手段(組合せ・足し算回路)16とを備え、加算後のデジタルデータを角度位置指定デジタルデータとして使用することで、角度位置指定デジタルデータによる動作角度範囲と、ユーザ側に要求された有効動作角度範囲とを一致若しくはほぼ一致させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置に関するものであり、特に、ホスト装置やコントロール装置などの上位装置からのビットデータによってデジタル方式ガルバノスキャナを指定の角度位置に動作制御するデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル方式ガルバノスキャナは、レーザによりマーキング加工、切断加工または溶接加工などを行うレーザ加工装置に多く使用されている。図1はレーザ加工装置を示すシステム構成図である。同図において、1は被加工物にレーザ光を照射させるためのレーザ発生装置、2はレーザ加工に必要な加工データを出力するホスト装置(以下、「ホストPC」という。)である。さらに、3は、ガルバノスキャナ制御装置SCを構成するガルバノスキャナ用コントローラであり、該コントローラ3は、ホストPC2からの加工データにより3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸)のガルバノスキャナ用サーボドライバ4,4,4を介して各軸のガルバノスキャナ5,5,5を動作制御する。
【0003】
また、コントローラ3はホストPC2からの加工データに基づいてガルバノスキャナ5,5,5の加工位置を計算し、計算後の加工データをガルバノスキャナ用サーボドライバ4,4,4に出力する。さらに、該サーボドライバ4,4,4はコントローラ3からの加工データを受信して、ガルバノスキャナ5,5,5を指定の角度位置に動作させる。
【0004】
図2に示すように、各ガルバノスキャナ5の軸端部にはレーザ光を反射するミラー(ミラー用ホルダを含む)6が取り付けられている。このミラー6が指定された角度位置に動作することにより、レーザ発生装置1からのレーザ光Lの照射位置がコントロールされて、被加工物、例えば、回路基板7にIDマーク等のマーキング加工、切断加工または溶接加工などが行われる。尚、図中の符号8は、前記ミラーによって反射されたレーザ光を集光して回路基板7の加工面に焦点を結ぶFθレンズである。
【0005】
前記ガルバノスキャナはサーボモータの一種であるが、通常のサーボモータのように回転せずに、ある一定の角度範囲だけ往復回動する。そして、ガルバノスキャナには、該ガルバノスキャナの角度位置を決定するためのエンコーダが搭載されている。エンコーダの駆動方式としては、アナログ方式とデジタル方式の2種類がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−178902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アナログ方式のエンコーダを搭載したガルバノスキャナ(以後、「アナログ方式ガルバノスキャナ」と称する。)は、(+)(−)の電圧範囲で、アナログ方式ガルバノスキャナの動作する角度範囲が決定されている。従って、(+)(−)の電圧の大きさでアナログ方式ガルバノスキャナの動作角度範囲を設定できるので、ボリュームなどを利用して電圧の範囲を可変調整することによって、任意の動作角度範囲にアナログ方式ガルバノスキャナを容易に設定することが出来る。
【0008】
例えば、ユーザが使用するアナログ方式ガルバノスキャナの角度範囲が±11.5度であり、且つ、ホストPCやコントローラなどの上位装置から出力される角度位置指定デジタルデータが0000h(hはH EXコードを表す)からFFFFhまでの範囲の16ビットデータであって、±3Vの入力電圧で最大振れ角の動作をするアナログ方式ガルバノスキャナを使用する場合は、DAコンバータ及びアンプ回路によって0000hのデータのときに−11.5度になり、且つ、FFFFhのデータのときに+11.5度になるように、アンプ回路のボリュームで電圧を調整して出力すれば良い。尚、本明細書において上位装置とは、デジタル方式ガルバノスキャナの角度位置の動作制御を行うべく、mビット(mは自然数)の角度位置を指定するデジタルデータを出力する装置をいい、例えば、ホストPCやコントローラなどである(以後、同じ。)。
【0009】
一方、デジタル方式のエンコーダを搭載したガルバノスキャナ(以下、「デジタル方式ガルバノスキャナ」と称する。)は、前記エンコーダにおける所定の角度範囲に多数のスリットが設けられ、一般的には360度はPビットのデジタルデータ(Pは自然数であり、2のP乗のデジタルデータ)で表される。
【0010】
従って、デジタル方式ガルバノスキャナでは、アナログ方式ガルバノスキャナのように任意の角度範囲に容易に設定することができず、使用するデジタルデータのビット数で動作可能な角度範囲が決定される。
【0011】
例えば、エンコーダの分解能がP=22ビットで360度(±180度)を表す仕様であるときは、図3に示すように、21ビットで180度(±90度)、20ビットで90度(±45度)、19ビットで45度(±22.5度)、18ビットで22.5度(±11.25度)が夫々デジタル方式ガルバノスキャナの動作可能な角度範囲を表すことになる。通常、デジタル方式ガルバノスキャナは19ビットの45度(±22.5度)若しくは、18ビットの22.5度(±11.25度)で使用されている。
【0012】
ところで、前記ガルバノスキャナを使用する装置は、該装置の仕様ごとに使用したい動作角度範囲が設定され、上位装置より使用したい動作角度位置のデータが出力される。例えば、±11.5度の動作角度範囲であって、角度位置指定デジタルデータのビット数が16ビットデータである場合は、図4に示すように、0000hのデータが最下点の−11.5度、8000hのデータが原点、そして、FFFFhのデータが最上点の+11.5度となる角度範囲で動作することが要求される。
【0013】
しかし、図5に示すように、上位装置からの角度位置指定デジタルデータが0000hからFFFFhの16ビットデータである場合は、前述したようにデジタル方式ガルバノスキャナではデジタルデータのビット数で動作角度範囲が決定されるため、使用されるデジタルデータのビットの数をずらして、19ビットのデジタルデータとして使用しなければならない。
【0014】
19ビットにて使用する理由は、使用する動作角度範囲として最も近い18ビットの±11.25度では動作角度範囲が不足するため、これを補うべく±22.5度の19ビットにしなければならないからである。従って、上位装置からの角度位置指定デジタルデータの1ビットから16ビットまでは、図6に示すように、4ビットから19ビットにずらして使用される。
【0015】
ここで、デジタル方式ガルバノスキャナは19ビットの分解能で動作しているので、上位装置からの角度位置指定デジタルデータ0000hからFFFFhまでの16ビットデータの範囲では、±11.5度の動作角度範囲を設定することが出来ないという問題があった。
【0016】
さらに、上記のようなデジタルデータの使用の仕方では、その約半分の角度位置データが±11.5度の範囲以外の角度位置データとなる。この結果、その分だけ角度位置データを有効に使うことが出来ないため、デジタル方式ガルバノスキャナが粗い角度位置で動作して動作角度位置の精度が低下する。
【0017】
また、アナログ方式ガルバノスキャナが0000hからFFFFhまでの角度位置指令データで±11.5度の角度範囲を動作する場合、デジタル方式ガルバノスキャナが19ビットの±22.5度で動作させると、その角度動作位置が上位装置からの角度位置指定デジタルデータの動作角度位置に対して大きく狂ってしまう。そのため、前記角度位置指定デジタルデータは、アナログ方式ガルバノスキャナの置き換え用データとして使用出来ないという問題があった。
【0018】
そこで、デジタル方式ガルバノスキャナにおいてユーザで使用する角度位置指定デジタルデータ範囲と要求角度範囲とを合致させるべく、角度位置指令データを容易に変換して高精度に動作するようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ホストPCやコントローラなどの上位装置から出力されるmビット(mは自然数)のデジタルデータによりデジタル方式ガルバノスキャナを指定角度位置に動作制御するデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置において、前記mビットのデジタルデータをnビット(nは自然数)ずらすことによって1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍された加工デジタルデータを1又は2以上作成するデータ加工手段と、該1又は2以上組み合せたものを前記mビットのデジタルデータに加算するデータ加算手段とを備え、加算後のデジタルデータを角度位置指定デジタルデータとして使用することにより、該角度位置指定デジタルデータによる動作角度範囲と、ユーザ側に要求される有効動作角度範囲とを互いに一致若しくはほぼ一致させるように構成したことを特徴とするデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置を提供する。
【0020】
この構成によれば、まず、mビットのデジタルデータをnビットだけずらして1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍された加工デジタルデータを1または2以上作成する。つぎに、作成した加工デジタルデータを1または2以上組み合わせたものを前記mビットのデジタルデータに加算する。そして、加算後のデジタルデータを角度位置指定デジタルデータとして使用する。これにより、該角度位置指定デジタルデータの動作角度範囲が、ユーザ側に要求される有効動作角度範囲に一致若しくはほぼ一致するようになる。
【0021】
請求項2記載の発明は、上記データ加算手段で作成された加算後のデジタルデータは、これに原点位置補正用のデジタルデータ値分を加えることにより、該デジタルの原点位置をデータ加工前の当初の原点位置に合致させて使用されることを特徴とする請求項1記載のデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置を提供する。
【0022】
この構成によれば、加算後のデジタルデータは、これに原点位置補正用のデジタルデータ値分を加えることにより、当初の原点位置、すなわち、データ加工手段で加工される前のデジタルデータの原点位置と合致するようになる。依って、原点位置補正後のデジタルデータを角度位置指定デジタルデータとして使用すると、デジタル方式ガルバノスキャナはデータ加工前と同様に、元の原点位置を中心に動作する。このため、デジタル方式ガルバノスキャナが位置ずれを起こす恐れがない。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明は、上位装置から出力される角度位置指定用のデジタルデータの動作角度範囲と、ユーザ側に要求される有効動作角度範囲とが互いに一致若しくはほぼ一致するので、従来例に比して、デジタル方式ガルバノスキャナを指定の角度位置に高精度に動作させることができる。
【0024】
また、角度位置指定用のデジタルデータは簡単に変換・作成できるのみならず、アナログ方式ガルバノスキャナにてDA変換される置き換え用のデジタルデータとしても容易に使用することができる。
【0025】
請求項2記載の発明は、デジタル方式ガルバノスキャナはデータ加工前の当初の原点位置を中心に動作するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、デジタル方式ガルバノスキャナの動作角度位置のずれを防止でき、以て、デジタル方式ガルバノスキャナの動作信頼性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来のデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置を示すシステム構成図。
【図2】図1のデジタル方式ガルバノスキャナの加工状態を示す説明図。
【図3】ビット数と角度との関係を示す説明図。
【図4】デジタル方式ガルバノスキャナ制御における角度位置指定データとガルバノスキャナ動作角度との関係を示す説明図。
【図5】同上デジタル方式ガルバノスキャナ制御においてホストPCやコントローラなどの上位装置からの16ビットデータを19ビット化したときの角度動作範囲を解説する説明図。
【図6】19ビットとデジタルデータとの関係を示す説明図。
【図7】本発明に係るユーザ側要求角度とデジタルデータの計算結果との関係を示す説明図。
【図8】本発明に係るホストPCやコントローラなどの上位装置から16ビット8000hが出力されたときの原点補正の一例を解説する説明図。
【図9】本発明に係るホストから16ビットFFFFhが出力されたときの原点補正の一例を解説する説明図。
【図10】本発明に係るデジタル方式ガルバノスキャナ制御における角度位置指定データとガルバノスキャナ動作角度との関係を示す説明図。
【図11】本発明に係るデジタル方式ガルバノスキャナドライバユニットの構成を示すブロック図。
【図12】本発明に係るデータ加工処理回路の構成例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、デジタル方式ガルバノスキャナにてユーザで使用する角度位置指定デジタルデータ範囲とユーザ側の要求角度範囲とを合致させるべく、角度位置指令データを適宜変換・加算して高精度に動作するようにするという目的を達成するために、ホストPCやコントロール装置などの上位装置から出力されるmビットのデジタルデータによりデジタル方式ガルバノスキャナを指定角度位置に動作制御するデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置において、前記mビットのデジタルデータをnビットずらすことによって1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍された加工デジタルデータを1又は2以上作成するデータ加工手段と、該1又は2以上組み合せたものを前記mビットのデジタルデータに加算するデータ加算手段とを備え、加算後のデジタルデータを角度位置指定デジタルデータとして使用することにより、該角度位置指定デジタルデータによる動作角度範囲と、ユーザ側に要求される有効動作角度範囲とを互いに一致若しくはほぼ一致させることにより実現した。
【0028】
即ち、ユーザの装置が求める角度範囲と、上位装置が出力する角度位置を指定するデジタルデータの動作角度範囲を略一致させることが可能になり、これによって、デジタル方式ガルバノスキャナの分解能が有効に使用され、かつ、原点位置をずらすことが無いので、すでに使用されているデジタル方式ガルバノスキャナの置き換え用デジタルデータとしても有効に利用することが可能になる。
【実施例1】
【0029】
以下、本発明の好適な一実施例を図7乃至図12に従って説明する。なお、本実施例は図1及び図2に示したレーザ加工装置に使用されるガルバノスキャナ制御装置、すなわち、上位装置たとえばホストPCから出力されるmビットの角度位置指定デジタルデータによりデジタル方式ガルバノスキャナを指定角度位置に動作制御する装置に適用したものある。
【0030】
本実施例は、ユーザ側で使用する有効動作角度範囲と、角度位置指定デジタルデータの動作角度範囲とを合わせるべく、角度位置指令デジタルデータを必要最小限にデータ変換して、デジタル方式ガルバノスキャナ制御装置を精度良く動作制御できるように構成したものである。
【0031】
即ち、ホストPCやコントローラなどの上位装置から出力される角度位置指定データのビット数をずらし、該ビット数が表す角度を適宜組み合わせると共に、これに原点補正値分を足し算することによって、前記角度位置指定データの分解能を有効に使用し、且つ、原点位置のずれを無くし、既存のガルバノスキャナのDA(デジタルアナログ)変換用のデジタルデータとしても使用可能となる。
【0032】
本実施例に係るガルバノスキャナ制御装置の基本的な構成は、データ加工処理回路(データ加工手段)及び組合せ・足し算回路(データ加算手段)が内蔵されたデジタル方式ガルバノスキャナ用ドライバユニットを除いてほぼ同様であるので、該ドライバユニット以外の構成要素の説明を省略するものとする。
【0033】
図11は、デジタル方式ガルバノスキャナ用ドライバユニットDUを示す。同図に示すように、ガルバノスキャナ制御装置SCを構成するCPU11の入力部には、上位装置用インタフェース12及びエンコーダ用インタフェース13が接続されている。さらに、CPU11と上位装置用インタフェース12の間には、データ加工・加算部14が介装され、該データ加工・加算部14はデータ加工処理回路15及び組合せ・足し算回路16から成る。
【0034】
データ加工処理回路15は、上位装置から出力される前記mビットのデジタルデータをnビットだけずらすことにより、1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍に加工する。この場合、1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍に加工されるデジタルデータの数は、必要に応じて1または2以上である。
【0035】
また、組合せ・足し算回路16は、デジタル方式ガルバノスキャナの動作角度位置をユーザ側の要求動作角度位置に有効に合わせるべく、前記mビットのデジタルデータに適合した加工位置データを組み合わせて足し算する。具体的には、データ加工処理回路15で作成された1又は2以上に組み合わせたデジタルデータを、前記mビットのデジタルデータに加算する。
【0036】
加算後のデジタルデータは、組合せ・足し算回路16からCPU11に出力され、デジタル方式ガルバノスキャナを指定角度位置に動作させるための角度位置指定デジタルデータとして使用される。組合せ・足し算回路16は、図12に示すように、ビット8の他に、ビット18,17,16及び14と引き算用の補数の1が加えられている。尚、同図では、足し算を行う具体的な回路は図示していないが、TTL(図示せず)の74LS83を使用することで容易に設計・製作することができる。
【0037】
さらに、CPU11とエンコーダ用インタフェース13との間にはエンコーダ信号処理回路17及び角度位置データ計算回路18が介装されている。エンコーダ信号処理回路17は、エンコーダからの信号を加工処理して、CPU11にて使用可能なデジタルデータにする。又、角度位置データ計算回路18は、前記デジタルデータに基づきデジタル方式ガルバノスキャナの動作する角度位置を計算する。
【0038】
さらに、CPU11の出力部にはスキャナドライブ回路19を介してスキャナドライバ20が接続されている。スキャナドライブ回路19は、CPU11からの角度位置デジタルデータに基づき、ドライバ用の駆動信号を発生してスキャナドライバ20の動作を制御する。
【0039】
次に、本実施例の作用について詳述する。図3に示したように、22ビットで360度、つまり±180度を表すデジタル方式ガルバノスキャナの場合、21ビットで±90度、20ビットで±45度、19ビットで±22.5度、18ビットで±11.25度、17ビットで±5.625度を表していく。
【0040】
そして、ユーザの使用したい要求角度範囲が±11.5度であり、且つ、ユーザが使用している上位装置からの角度位置指定デジタルデータが16ビットの0000hからFFFFhまでの動作範囲である場合、16ビットを2ビットずらして18ビットにすると共に18ビットの±11.25度に対して±0.25度の角度を加える必要がある。
【0041】
本実施例では、図7に示すように、18ビットの±11.25度のデータビットを図中の右方(下位桁の方)へ5ビット数だけずらした13ビットの±0.35度のデータを加えることによって19ビットのデータを作成する。ただし、16ビットから18ビットにずらした際に、ずらし様の無い1ビット目と2ビット目には0を入れるため、図7の単純な角度計算値より小さくなる。これにより、18ビットの00000hから41FFBhまでの動作範囲となり、動作角度は±11.601度となる。
【0042】
さらに、動作角度を±11.5度に近づけるために、18ビットの±11.25度のデータを所要のビット数だけずらして4種類のデータを新たに作成する。即ち、18ビットの±11.25度のデータビットを図中の右方へ6つずらした12ビットの±0.175度のデータと、8つずらした10ビットの±0.0439度のデータと、9つずらした9ビットの±0.0220度のデータと、10だけずらした8ビットの±0.011度のデータの4種類を作成する。
【0043】
そして、これら4種類のデータを18ビットの±11.25度のデータに加えて19ビットのデータを作成する。この19ビットのデータは、00000hから416F8hまでの動作角度±11.502度の範囲に対応するため、ユーザの要求する有効動作角度範囲にほぼ適合することができる。
【0044】
斯くして、ユーザ側の加工装置が求める有効動作角度範囲と、上位装置から出力する角度位置指定用のデジタルデータの動作角度範囲とをほぼ合致させることができ、依って、デジタル方式ガルバノスキャナの分解能が有効に使用される。
【0045】
而して、19ビットのデジタルデータで00000hから416F8hまでの範囲でデジタル方式ガルバノスキャナを動作させた場合は、19ビットの原点位置は40000hであるから、当初に比べてデジタル方式ガルバノスキャナの動作中心である原点が位置ずれして、デジタル方式ガルバノスキャナが偏った動作を行うようになる。
【0046】
そこで、本実施例では、前記デジタルデータの00000hから416F8hまでの範囲において、20000hのデータ値分(原点補正データ値分)を足し算することにより、20000hから616F8hまでの動作範囲にデータ変換され、ほぼ当初の原点位置に合致し、これを中心としてデジタル方式ガルバノスキャナが偏らずに動作することになる。
【0047】
更に、原点位置に関して付言すれば、上記のように加工した原点位置データは、20B80hで20000hを足し算すると40B80hとなり、原点のデータ40000hの
位置よりもB80hの相当分だけデータが大きくなる。この大きくなったB80hのデータ(原点位置補正用データ)を全体の加工位置データから差し引く(実際には当該データの補数を加えて引き算する)ことで、デジタル方式ガルバノスキャナの動作中心点を加工前の当初の原点位置に合致させることが出来る。
【0048】
その結果、原点補正した19ビットのデータを角度位置指定デジタルデータとして使用すると、最下位点が1F480h、原点位置が40000h、最上位点が60B78h、そして、デジタル方式ガルバノスキャナの動作角度範囲が±11.502度になるように制御される(図10参照)。
【0049】
なお、参考のために、動作角度範囲±11.5度で上記デジタルデータにより動作位置を計算した結果を図8及び図9に示す。図8は原点位置の計算結果を表し、また、図9は最上位点の計算結果を表す。
【0050】
以上説明した如く本発明よると、mビットのデジタルデータをnビットだけずらして1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍された加工デジタルデータを1または2以上作成したのちに、該加工デジタルデータを適宜組み合わせたものを前記mビットのデジタルデータに加算して、角度位置指定デジタルデータとして使用することにより、上位装置からの角度位置指定デジタルデータの動作角度範囲と、ユーザ側に要求された有効動作角度範囲とが互いに一致若しくはほぼ一致するようになる。
【0051】
斯くして、デジタル方式ガルバノスキャナを指定角度位置に高精度に動作させることができる。また、本発明の角度位置指定デジタルデータは、データのシフト処理及び加算処理を容易迅速に実行でき、加えて、加算後のデジタルデータは、アナログ方式ガルバノスキャナの置き換え用のデジタルデータとしても応用することができる。
【0052】
本実施例では、加算後のデジタルデータに原点位置補正用のデータ値分を加算処理することにより、加工前の当初の原点位置と合致するようになる。その結果、デジタル方式ガルバノスキャナは元の原点位置を中心として動作するため位置ずれの恐れがない。従って、本発明のデジタル方式ガルバノスキャナは、動作角度位置のずれを起こすことなく、指定の角度位置に正確かつ円滑に動作制御される。
【0053】
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、上位装置から出力されるmビットの角度位置指定デジタルデータをDAコンバータによりデータ変換して、ガルバノスキャナを指定の角度位置に動作させる制御装置にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
11 CPU
15 データ加工処理回路(データ加工手段)
16 組合せ・足し算回路(データ加算手段)
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置に関するものであり、特に、ホスト装置やコントロール装置などの上位装置からのビットデータによってデジタル方式ガルバノスキャナを指定の角度位置に動作制御するデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル方式ガルバノスキャナは、レーザによりマーキング加工、切断加工または溶接加工などを行うレーザ加工装置に多く使用されている。図1はレーザ加工装置を示すシステム構成図である。同図において、1は被加工物にレーザ光を照射させるためのレーザ発生装置、2はレーザ加工に必要な加工データを出力するホスト装置(以下、「ホストPC」という。)である。さらに、3は、ガルバノスキャナ制御装置SCを構成するガルバノスキャナ用コントローラであり、該コントローラ3は、ホストPC2からの加工データにより3軸方向(X軸、Y軸及びZ軸)のガルバノスキャナ用サーボドライバ4,4,4を介して各軸のガルバノスキャナ5,5,5を動作制御する。
【0003】
また、コントローラ3はホストPC2からの加工データに基づいてガルバノスキャナ5,5,5の加工位置を計算し、計算後の加工データをガルバノスキャナ用サーボドライバ4,4,4に出力する。さらに、該サーボドライバ4,4,4はコントローラ3からの加工データを受信して、ガルバノスキャナ5,5,5を指定の角度位置に動作させる。
【0004】
図2に示すように、各ガルバノスキャナ5の軸端部にはレーザ光を反射するミラー(ミラー用ホルダを含む)6が取り付けられている。このミラー6が指定された角度位置に動作することにより、レーザ発生装置1からのレーザ光Lの照射位置がコントロールされて、被加工物、例えば、回路基板7にIDマーク等のマーキング加工、切断加工または溶接加工などが行われる。尚、図中の符号8は、前記ミラーによって反射されたレーザ光を集光して回路基板7の加工面に焦点を結ぶFθレンズである。
【0005】
前記ガルバノスキャナはサーボモータの一種であるが、通常のサーボモータのように回転せずに、ある一定の角度範囲だけ往復回動する。そして、ガルバノスキャナには、該ガルバノスキャナの角度位置を決定するためのエンコーダが搭載されている。エンコーダの駆動方式としては、アナログ方式とデジタル方式の2種類がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−178902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アナログ方式のエンコーダを搭載したガルバノスキャナ(以後、「アナログ方式ガルバノスキャナ」と称する。)は、(+)(−)の電圧範囲で、アナログ方式ガルバノスキャナの動作する角度範囲が決定されている。従って、(+)(−)の電圧の大きさでアナログ方式ガルバノスキャナの動作角度範囲を設定できるので、ボリュームなどを利用して電圧の範囲を可変調整することによって、任意の動作角度範囲にアナログ方式ガルバノスキャナを容易に設定することが出来る。
【0008】
例えば、ユーザが使用するアナログ方式ガルバノスキャナの角度範囲が±11.5度であり、且つ、ホストPCやコントローラなどの上位装置から出力される角度位置指定デジタルデータが0000h(hはH EXコードを表す)からFFFFhまでの範囲の16ビットデータであって、±3Vの入力電圧で最大振れ角の動作をするアナログ方式ガルバノスキャナを使用する場合は、DAコンバータ及びアンプ回路によって0000hのデータのときに−11.5度になり、且つ、FFFFhのデータのときに+11.5度になるように、アンプ回路のボリュームで電圧を調整して出力すれば良い。尚、本明細書において上位装置とは、デジタル方式ガルバノスキャナの角度位置の動作制御を行うべく、mビット(mは自然数)の角度位置を指定するデジタルデータを出力する装置をいい、例えば、ホストPCやコントローラなどである(以後、同じ。)。
【0009】
一方、デジタル方式のエンコーダを搭載したガルバノスキャナ(以下、「デジタル方式ガルバノスキャナ」と称する。)は、前記エンコーダにおける所定の角度範囲に多数のスリットが設けられ、一般的には360度はPビットのデジタルデータ(Pは自然数であり、2のP乗のデジタルデータ)で表される。
【0010】
従って、デジタル方式ガルバノスキャナでは、アナログ方式ガルバノスキャナのように任意の角度範囲に容易に設定することができず、使用するデジタルデータのビット数で動作可能な角度範囲が決定される。
【0011】
例えば、エンコーダの分解能がP=22ビットで360度(±180度)を表す仕様であるときは、図3に示すように、21ビットで180度(±90度)、20ビットで90度(±45度)、19ビットで45度(±22.5度)、18ビットで22.5度(±11.25度)が夫々デジタル方式ガルバノスキャナの動作可能な角度範囲を表すことになる。通常、デジタル方式ガルバノスキャナは19ビットの45度(±22.5度)若しくは、18ビットの22.5度(±11.25度)で使用されている。
【0012】
ところで、前記ガルバノスキャナを使用する装置は、該装置の仕様ごとに使用したい動作角度範囲が設定され、上位装置より使用したい動作角度位置のデータが出力される。例えば、±11.5度の動作角度範囲であって、角度位置指定デジタルデータのビット数が16ビットデータである場合は、図4に示すように、0000hのデータが最下点の−11.5度、8000hのデータが原点、そして、FFFFhのデータが最上点の+11.5度となる角度範囲で動作することが要求される。
【0013】
しかし、図5に示すように、上位装置からの角度位置指定デジタルデータが0000hからFFFFhの16ビットデータである場合は、前述したようにデジタル方式ガルバノスキャナではデジタルデータのビット数で動作角度範囲が決定されるため、使用されるデジタルデータのビットの数をずらして、19ビットのデジタルデータとして使用しなければならない。
【0014】
19ビットにて使用する理由は、使用する動作角度範囲として最も近い18ビットの±11.25度では動作角度範囲が不足するため、これを補うべく±22.5度の19ビットにしなければならないからである。従って、上位装置からの角度位置指定デジタルデータの1ビットから16ビットまでは、図6に示すように、4ビットから19ビットにずらして使用される。
【0015】
ここで、デジタル方式ガルバノスキャナは19ビットの分解能で動作しているので、上位装置からの角度位置指定デジタルデータ0000hからFFFFhまでの16ビットデータの範囲では、±11.5度の動作角度範囲を設定することが出来ないという問題があった。
【0016】
さらに、上記のようなデジタルデータの使用の仕方では、その約半分の角度位置データが±11.5度の範囲以外の角度位置データとなる。この結果、その分だけ角度位置データを有効に使うことが出来ないため、デジタル方式ガルバノスキャナが粗い角度位置で動作して動作角度位置の精度が低下する。
【0017】
また、アナログ方式ガルバノスキャナが0000hからFFFFhまでの角度位置指令データで±11.5度の角度範囲を動作する場合、デジタル方式ガルバノスキャナが19ビットの±22.5度で動作させると、その角度動作位置が上位装置からの角度位置指定デジタルデータの動作角度位置に対して大きく狂ってしまう。そのため、前記角度位置指定デジタルデータは、アナログ方式ガルバノスキャナの置き換え用データとして使用出来ないという問題があった。
【0018】
そこで、デジタル方式ガルバノスキャナにおいてユーザで使用する角度位置指定デジタルデータ範囲と要求角度範囲とを合致させるべく、角度位置指令データを容易に変換して高精度に動作するようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ホストPCやコントローラなどの上位装置から出力されるmビット(mは自然数)のデジタルデータによりデジタル方式ガルバノスキャナを指定角度位置に動作制御するデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置において、前記mビットのデジタルデータをnビット(nは自然数)ずらすことによって1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍された加工デジタルデータを1又は2以上作成するデータ加工手段と、該1又は2以上組み合せたものを前記mビットのデジタルデータに加算するデータ加算手段とを備え、加算後のデジタルデータを角度位置指定デジタルデータとして使用することにより、該角度位置指定デジタルデータによる動作角度範囲と、ユーザ側に要求される有効動作角度範囲とを互いに一致若しくはほぼ一致させるように構成したことを特徴とするデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置を提供する。
【0020】
この構成によれば、まず、mビットのデジタルデータをnビットだけずらして1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍された加工デジタルデータを1または2以上作成する。つぎに、作成した加工デジタルデータを1または2以上組み合わせたものを前記mビットのデジタルデータに加算する。そして、加算後のデジタルデータを角度位置指定デジタルデータとして使用する。これにより、該角度位置指定デジタルデータの動作角度範囲が、ユーザ側に要求される有効動作角度範囲に一致若しくはほぼ一致するようになる。
【0021】
請求項2記載の発明は、上記データ加算手段で作成された加算後のデジタルデータは、これに原点位置補正用のデジタルデータ値分を加えることにより、該デジタルの原点位置をデータ加工前の当初の原点位置に合致させて使用されることを特徴とする請求項1記載のデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置を提供する。
【0022】
この構成によれば、加算後のデジタルデータは、これに原点位置補正用のデジタルデータ値分を加えることにより、当初の原点位置、すなわち、データ加工手段で加工される前のデジタルデータの原点位置と合致するようになる。依って、原点位置補正後のデジタルデータを角度位置指定デジタルデータとして使用すると、デジタル方式ガルバノスキャナはデータ加工前と同様に、元の原点位置を中心に動作する。このため、デジタル方式ガルバノスキャナが位置ずれを起こす恐れがない。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明は、上位装置から出力される角度位置指定用のデジタルデータの動作角度範囲と、ユーザ側に要求される有効動作角度範囲とが互いに一致若しくはほぼ一致するので、従来例に比して、デジタル方式ガルバノスキャナを指定の角度位置に高精度に動作させることができる。
【0024】
また、角度位置指定用のデジタルデータは簡単に変換・作成できるのみならず、アナログ方式ガルバノスキャナにてDA変換される置き換え用のデジタルデータとしても容易に使用することができる。
【0025】
請求項2記載の発明は、デジタル方式ガルバノスキャナはデータ加工前の当初の原点位置を中心に動作するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、デジタル方式ガルバノスキャナの動作角度位置のずれを防止でき、以て、デジタル方式ガルバノスキャナの動作信頼性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来のデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置を示すシステム構成図。
【図2】図1のデジタル方式ガルバノスキャナの加工状態を示す説明図。
【図3】ビット数と角度との関係を示す説明図。
【図4】デジタル方式ガルバノスキャナ制御における角度位置指定データとガルバノスキャナ動作角度との関係を示す説明図。
【図5】同上デジタル方式ガルバノスキャナ制御においてホストPCやコントローラなどの上位装置からの16ビットデータを19ビット化したときの角度動作範囲を解説する説明図。
【図6】19ビットとデジタルデータとの関係を示す説明図。
【図7】本発明に係るユーザ側要求角度とデジタルデータの計算結果との関係を示す説明図。
【図8】本発明に係るホストPCやコントローラなどの上位装置から16ビット8000hが出力されたときの原点補正の一例を解説する説明図。
【図9】本発明に係るホストから16ビットFFFFhが出力されたときの原点補正の一例を解説する説明図。
【図10】本発明に係るデジタル方式ガルバノスキャナ制御における角度位置指定データとガルバノスキャナ動作角度との関係を示す説明図。
【図11】本発明に係るデジタル方式ガルバノスキャナドライバユニットの構成を示すブロック図。
【図12】本発明に係るデータ加工処理回路の構成例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、デジタル方式ガルバノスキャナにてユーザで使用する角度位置指定デジタルデータ範囲とユーザ側の要求角度範囲とを合致させるべく、角度位置指令データを適宜変換・加算して高精度に動作するようにするという目的を達成するために、ホストPCやコントロール装置などの上位装置から出力されるmビットのデジタルデータによりデジタル方式ガルバノスキャナを指定角度位置に動作制御するデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置において、前記mビットのデジタルデータをnビットずらすことによって1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍された加工デジタルデータを1又は2以上作成するデータ加工手段と、該1又は2以上組み合せたものを前記mビットのデジタルデータに加算するデータ加算手段とを備え、加算後のデジタルデータを角度位置指定デジタルデータとして使用することにより、該角度位置指定デジタルデータによる動作角度範囲と、ユーザ側に要求される有効動作角度範囲とを互いに一致若しくはほぼ一致させることにより実現した。
【0028】
即ち、ユーザの装置が求める角度範囲と、上位装置が出力する角度位置を指定するデジタルデータの動作角度範囲を略一致させることが可能になり、これによって、デジタル方式ガルバノスキャナの分解能が有効に使用され、かつ、原点位置をずらすことが無いので、すでに使用されているデジタル方式ガルバノスキャナの置き換え用デジタルデータとしても有効に利用することが可能になる。
【実施例1】
【0029】
以下、本発明の好適な一実施例を図7乃至図12に従って説明する。なお、本実施例は図1及び図2に示したレーザ加工装置に使用されるガルバノスキャナ制御装置、すなわち、上位装置たとえばホストPCから出力されるmビットの角度位置指定デジタルデータによりデジタル方式ガルバノスキャナを指定角度位置に動作制御する装置に適用したものある。
【0030】
本実施例は、ユーザ側で使用する有効動作角度範囲と、角度位置指定デジタルデータの動作角度範囲とを合わせるべく、角度位置指令デジタルデータを必要最小限にデータ変換して、デジタル方式ガルバノスキャナ制御装置を精度良く動作制御できるように構成したものである。
【0031】
即ち、ホストPCやコントローラなどの上位装置から出力される角度位置指定データのビット数をずらし、該ビット数が表す角度を適宜組み合わせると共に、これに原点補正値分を足し算することによって、前記角度位置指定データの分解能を有効に使用し、且つ、原点位置のずれを無くし、既存のガルバノスキャナのDA(デジタルアナログ)変換用のデジタルデータとしても使用可能となる。
【0032】
本実施例に係るガルバノスキャナ制御装置の基本的な構成は、データ加工処理回路(データ加工手段)及び組合せ・足し算回路(データ加算手段)が内蔵されたデジタル方式ガルバノスキャナ用ドライバユニットを除いてほぼ同様であるので、該ドライバユニット以外の構成要素の説明を省略するものとする。
【0033】
図11は、デジタル方式ガルバノスキャナ用ドライバユニットDUを示す。同図に示すように、ガルバノスキャナ制御装置SCを構成するCPU11の入力部には、上位装置用インタフェース12及びエンコーダ用インタフェース13が接続されている。さらに、CPU11と上位装置用インタフェース12の間には、データ加工・加算部14が介装され、該データ加工・加算部14はデータ加工処理回路15及び組合せ・足し算回路16から成る。
【0034】
データ加工処理回路15は、上位装置から出力される前記mビットのデジタルデータをnビットだけずらすことにより、1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍に加工する。この場合、1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍に加工されるデジタルデータの数は、必要に応じて1または2以上である。
【0035】
また、組合せ・足し算回路16は、デジタル方式ガルバノスキャナの動作角度位置をユーザ側の要求動作角度位置に有効に合わせるべく、前記mビットのデジタルデータに適合した加工位置データを組み合わせて足し算する。具体的には、データ加工処理回路15で作成された1又は2以上に組み合わせたデジタルデータを、前記mビットのデジタルデータに加算する。
【0036】
加算後のデジタルデータは、組合せ・足し算回路16からCPU11に出力され、デジタル方式ガルバノスキャナを指定角度位置に動作させるための角度位置指定デジタルデータとして使用される。組合せ・足し算回路16は、図12に示すように、ビット8の他に、ビット18,17,16及び14と引き算用の補数の1が加えられている。尚、同図では、足し算を行う具体的な回路は図示していないが、TTL(図示せず)の74LS83を使用することで容易に設計・製作することができる。
【0037】
さらに、CPU11とエンコーダ用インタフェース13との間にはエンコーダ信号処理回路17及び角度位置データ計算回路18が介装されている。エンコーダ信号処理回路17は、エンコーダからの信号を加工処理して、CPU11にて使用可能なデジタルデータにする。又、角度位置データ計算回路18は、前記デジタルデータに基づきデジタル方式ガルバノスキャナの動作する角度位置を計算する。
【0038】
さらに、CPU11の出力部にはスキャナドライブ回路19を介してスキャナドライバ20が接続されている。スキャナドライブ回路19は、CPU11からの角度位置デジタルデータに基づき、ドライバ用の駆動信号を発生してスキャナドライバ20の動作を制御する。
【0039】
次に、本実施例の作用について詳述する。図3に示したように、22ビットで360度、つまり±180度を表すデジタル方式ガルバノスキャナの場合、21ビットで±90度、20ビットで±45度、19ビットで±22.5度、18ビットで±11.25度、17ビットで±5.625度を表していく。
【0040】
そして、ユーザの使用したい要求角度範囲が±11.5度であり、且つ、ユーザが使用している上位装置からの角度位置指定デジタルデータが16ビットの0000hからFFFFhまでの動作範囲である場合、16ビットを2ビットずらして18ビットにすると共に18ビットの±11.25度に対して±0.25度の角度を加える必要がある。
【0041】
本実施例では、図7に示すように、18ビットの±11.25度のデータビットを図中の右方(下位桁の方)へ5ビット数だけずらした13ビットの±0.35度のデータを加えることによって19ビットのデータを作成する。ただし、16ビットから18ビットにずらした際に、ずらし様の無い1ビット目と2ビット目には0を入れるため、図7の単純な角度計算値より小さくなる。これにより、18ビットの00000hから41FFBhまでの動作範囲となり、動作角度は±11.601度となる。
【0042】
さらに、動作角度を±11.5度に近づけるために、18ビットの±11.25度のデータを所要のビット数だけずらして4種類のデータを新たに作成する。即ち、18ビットの±11.25度のデータビットを図中の右方へ6つずらした12ビットの±0.175度のデータと、8つずらした10ビットの±0.0439度のデータと、9つずらした9ビットの±0.0220度のデータと、10だけずらした8ビットの±0.011度のデータの4種類を作成する。
【0043】
そして、これら4種類のデータを18ビットの±11.25度のデータに加えて19ビットのデータを作成する。この19ビットのデータは、00000hから416F8hまでの動作角度±11.502度の範囲に対応するため、ユーザの要求する有効動作角度範囲にほぼ適合することができる。
【0044】
斯くして、ユーザ側の加工装置が求める有効動作角度範囲と、上位装置から出力する角度位置指定用のデジタルデータの動作角度範囲とをほぼ合致させることができ、依って、デジタル方式ガルバノスキャナの分解能が有効に使用される。
【0045】
而して、19ビットのデジタルデータで00000hから416F8hまでの範囲でデジタル方式ガルバノスキャナを動作させた場合は、19ビットの原点位置は40000hであるから、当初に比べてデジタル方式ガルバノスキャナの動作中心である原点が位置ずれして、デジタル方式ガルバノスキャナが偏った動作を行うようになる。
【0046】
そこで、本実施例では、前記デジタルデータの00000hから416F8hまでの範囲において、20000hのデータ値分(原点補正データ値分)を足し算することにより、20000hから616F8hまでの動作範囲にデータ変換され、ほぼ当初の原点位置に合致し、これを中心としてデジタル方式ガルバノスキャナが偏らずに動作することになる。
【0047】
更に、原点位置に関して付言すれば、上記のように加工した原点位置データは、20B80hで20000hを足し算すると40B80hとなり、原点のデータ40000hの
位置よりもB80hの相当分だけデータが大きくなる。この大きくなったB80hのデータ(原点位置補正用データ)を全体の加工位置データから差し引く(実際には当該データの補数を加えて引き算する)ことで、デジタル方式ガルバノスキャナの動作中心点を加工前の当初の原点位置に合致させることが出来る。
【0048】
その結果、原点補正した19ビットのデータを角度位置指定デジタルデータとして使用すると、最下位点が1F480h、原点位置が40000h、最上位点が60B78h、そして、デジタル方式ガルバノスキャナの動作角度範囲が±11.502度になるように制御される(図10参照)。
【0049】
なお、参考のために、動作角度範囲±11.5度で上記デジタルデータにより動作位置を計算した結果を図8及び図9に示す。図8は原点位置の計算結果を表し、また、図9は最上位点の計算結果を表す。
【0050】
以上説明した如く本発明よると、mビットのデジタルデータをnビットだけずらして1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍された加工デジタルデータを1または2以上作成したのちに、該加工デジタルデータを適宜組み合わせたものを前記mビットのデジタルデータに加算して、角度位置指定デジタルデータとして使用することにより、上位装置からの角度位置指定デジタルデータの動作角度範囲と、ユーザ側に要求された有効動作角度範囲とが互いに一致若しくはほぼ一致するようになる。
【0051】
斯くして、デジタル方式ガルバノスキャナを指定角度位置に高精度に動作させることができる。また、本発明の角度位置指定デジタルデータは、データのシフト処理及び加算処理を容易迅速に実行でき、加えて、加算後のデジタルデータは、アナログ方式ガルバノスキャナの置き換え用のデジタルデータとしても応用することができる。
【0052】
本実施例では、加算後のデジタルデータに原点位置補正用のデータ値分を加算処理することにより、加工前の当初の原点位置と合致するようになる。その結果、デジタル方式ガルバノスキャナは元の原点位置を中心として動作するため位置ずれの恐れがない。従って、本発明のデジタル方式ガルバノスキャナは、動作角度位置のずれを起こすことなく、指定の角度位置に正確かつ円滑に動作制御される。
【0053】
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、上位装置から出力されるmビットの角度位置指定デジタルデータをDAコンバータによりデータ変換して、ガルバノスキャナを指定の角度位置に動作させる制御装置にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
11 CPU
15 データ加工処理回路(データ加工手段)
16 組合せ・足し算回路(データ加算手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストPCやコントロール装置などの上位装置から出力されるmビット(mは自然数)の角度位置を指定するデジタルデータによりデジタル方式ガルバノスキャナを指定角度位置に動作制御するデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置において、
前記mビットのデジタルデータをnビット(nは自然数)ずらすことによって1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍された加工デジタルデータを1又は2以上作成するデータ加工手段と、該1又は2以上組み合せたものを前記mビットのデジタルデータに加算するデータ加算手段とを備え、
加算後のデジタルデータを角度位置指定デジタルデータとして使用することにより、該角度位置指定デジタルデータによる動作角度範囲と、ユーザ側に要求される有効動作角度範囲とを互いに一致若しくはほぼ一致させるように構成したことを特徴とするデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置。
【請求項2】
上記データ加算手段で作成された加算後のデジタルデータは、これに原点位置補正用のデジタルデータ値分を加えることにより、該デジタルの原点位置をデータ加工前の当初の原点位置に合致させて使用されることを特徴とする請求項1記載のデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置。
【請求項1】
ホストPCやコントロール装置などの上位装置から出力されるmビット(mは自然数)の角度位置を指定するデジタルデータによりデジタル方式ガルバノスキャナを指定角度位置に動作制御するデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置において、
前記mビットのデジタルデータをnビット(nは自然数)ずらすことによって1/(2のn乗)倍若しくは2のn乗倍された加工デジタルデータを1又は2以上作成するデータ加工手段と、該1又は2以上組み合せたものを前記mビットのデジタルデータに加算するデータ加算手段とを備え、
加算後のデジタルデータを角度位置指定デジタルデータとして使用することにより、該角度位置指定デジタルデータによる動作角度範囲と、ユーザ側に要求される有効動作角度範囲とを互いに一致若しくはほぼ一致させるように構成したことを特徴とするデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置。
【請求項2】
上記データ加算手段で作成された加算後のデジタルデータは、これに原点位置補正用のデジタルデータ値分を加えることにより、該デジタルの原点位置をデータ加工前の当初の原点位置に合致させて使用されることを特徴とする請求項1記載のデジタル方式ガルバノスキャナ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−169881(P2010−169881A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12148(P2009−12148)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000139366)株式会社ワイ・イー・データ (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000139366)株式会社ワイ・イー・データ (39)
【Fターム(参考)】
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