説明

デジタル無線回路、及び該デジタル無線回路が設けられた無線通信機器

【課題】
携帯通信端末などの無線回路の基板上のデバイスやパターンの占有面積を削減する。
【解決手段】受信I/Q信号は、LPF47,48で遮断されるため、直交変調器46には入力されず、又、LPF67,68で遮断されるため、D/A変換部69,70には入力されない。又、出力I/Q信号は、BPF63,64で遮断されるため、A/D変換部65,66には入力されず、又、HPF44,45で遮断されるため、直交復調器43には入力されない。このため、RF部40とBB部60との間が共通インタフェース50を介して接続されても、相互の影響がない。よって、受信I信号、受信Q信号、送信I信号及び送信Q信号の各信号に対応するRF部40の端子数が2、及びBB部60の端子数が2となり、また、プリント基板上のパターンも2本となり、RF部40、BB部60、及びパターンの占有面積が小さくなり、デジタル無線回路の小形化が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デジタル無線回路、及び該デジタル無線回路が設けられた無線通信機器に係り、たとえば携帯電話機などにおいて、無線信号を送受信する送受信部を構成する集積回路、及び同無線信号とベースバンド信号との間の変換を行う信号変換部を構成する集積回路が1つのプリント基板上に実装される場合に用いて好適なデジタル無線回路、及び該デジタル無線回路が設けられた無線通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの無線通信機器では、デジタル変調された無線信号が送受信部で送受信され、信号変換部で同無線信号とベースバンド信号との間の変換が行われる。又、この場合、送受信部と信号変換部との間でインタフェース部を介して信号が伝送される。これらの送受信部、信号変換部、及びインタフェース部でデジタル無線回路が構成されている。
【0003】
この種のデジタル無線回路は、従来では、たとえば図8に示すように、無線部(RF部)10と、帯域通過フィルタ(BPF)21,22と、低域通過フィルタ(LPF)23,24と、ベースバンド部(BB部)30とから構成されている。RF部10は、直交復調器11と、直交変調器12とを有している。直交復調器11は、図示しない受信機からデジタル変調された受信信号RXinを入力し、受信ローカル信号RXLoにより第1の周波数帯域を有する受信I信号及び同受信I信号と直交する受信Q信号に直交復調する。直交変調器12は、第1の周波数帯域よりも低い第2の周波数帯域を有する送信I信号及び同送信I信号と直交する送信Q信号を送信ローカル信号TXLoにより送信信号TXoutに直交変調して図示しない送信用電力増幅器へ送出する。BPF21は、受信I信号をBB部30へ伝送し、BPF22は、受信Q信号をBB部30へ伝送する。
【0004】
BB部30は、A/D(アナログ/デジタル)変換部31,32と、D/A(デジタル/アナログ)変換部33,34とを有している。A/D変換部31は、受信I信号をA/D変換してI成分からなる受信系ベースバンド信号Baを図示しないベースバンド処理部へ出力する。A/D変換部32は、受信Q信号をA/D変換してQ成分からなる受信系ベースバンド信号Bbをベースバンド処理部へ出力する。D/A変換部33は、ベースバンド処理部からのI成分からなる送信系ベースバンド信号BcをD/A変換して送信I信号を出力する。D/A変換部34は、ベースバンド処理部からのQ成分からなる送信系ベースバンド信号BdをD/A変換して送信Q信号を出力する。LPF23は、D/A変換部33からの送信I信号を直交変調器12へ伝送する。LPF24は、D/A変換部34からの送信Q信号を直交変調器12へ伝送する。
【0005】
このデジタル無線回路では、RF部10及びBB部30が、それぞれ集積回路として構成され、1つのプリント基板上に実装されている。また、RF部10及びBB部30の切り口には、形態[1]〜[4]の4通りの形態がある。
すなわち、形態[1]では、LPF23,24がRF部10内、及びBPF21,22がBB部30内に含まれ、同RF部10と同BPF21,22との間、及び同BB部30とLPF23,24との間がプリント基板上の各パターンを介して接続されている。形態[2]では、BPF21,22及びLPF23,24がBB部30内に含まれ、RF部10と同BPF21,22及びLPF23,24との間がプリント基板上の各パターンを介して接続されている。形態[3]では、BPF21,22及びLPF23,24がRF部10内に含まれ、BB部30と同BPF21,22及びLPF23,24との間がプリント基板上の各パターンを介して接続されている。形態[4]では、BPF21,22がRF部10内、及びLPF23,24がBB部30内に含まれ、BB部30と同BPF21,22との間、及び同RF部10とLPF23,24との間がプリント基板上の各パターンを介して接続されている。上記各パターンは、インタフェース部の働きをする。
【0006】
上記のデジタル無線回路の他、従来、この種の技術としては、たとえば、次のような文献に記載されるものがあった。
特許文献1に記載された2線式インターホン装置では、親機から子機へ伝送させる音声信号をベースバンド音声帯域にし、子機から親機へ伝送させる音声信号をキャリア信号のAM変調信号にすることにより、親機及び子機双方向の信号伝送を行う際、線路長や線種の影響を最小限にして双方向の信号帰還の抑圧性能が向上する。
【0007】
特許文献2に記載された移動通信システムの基地局アーキテクチャでは、基地送受信局は、RF/セクタ機能装置と受信器・送信器機能装置との間に新規の接続インタフェースを含む。インタフェースは、受信器・送信器機能装置とコード・デコーダ機能装置内に含まれる任意のリソースが任意のセクタに割り当てられることを可能とする。従って、受信器・送信器機能装置とコード・デコーダ機能装置と関係するベースバンドのハードウェアは、各セクタの最大負荷の代わりに基地送受信局全体の最大負荷を処理する寸法にすることができる。このため、RF部とベースバンド部とがインタフェースによって柔軟に接続される。
【特許文献1】特許第3436852号公報(第5頁、図1)
【特許文献2】特表2001−519635号公報(第9頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のデジタル無線回路では、次のような問題点があった。
すなわち、RF部10及びBB部30の切り口に形態[1]〜[4]の4通りがあり、いずれも、受信I信号、受信Q信号、送信I信号及び送信Q信号を、それぞれ個別のパターンを介して伝送する構成となっているため、これらの各信号に対応するRF部10の端子数が4、及びBB部30の端子数が4と、合計で8つの端子が必要となり、また、プリント基板上のパターンも4本必要となる。このため、RF部10、BB部30、及びパターンの占有面積が大きくなり、デジタル無線回路の小形化が困難になるという問題点がある。
【0009】
また、特許文献1に記載された2線式インターホン装置は、親機及び子機双方向の信号伝送を行う際、双方向の信号帰還の抑圧性能を向上させるものであり、この発明とは構成や主旨が異なる。
【0010】
特許文献2に記載された基地局アーキテクチャは、無線基地局のRF部とベースバンド部とをインタフェースによって柔軟に接続するものであり、この発明とは構成や主旨が異なる。
【0011】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、受信I信号、受信Q信号、送信I信号及び送信Q信号の各信号に対応するRF部の端子数及びBB部の端子数、及びプリント基板上のパターンを減らすことにより、RF部、BB部、及びパターンの占有面積が小さくなるデジタル無線回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、デジタル変調されてなる受信信号を受信ローカル信号により第1の周波数帯域を有する受信I信号及び該受信I信号と直交する受信Q信号に直交復調する一方、前記第1の周波数帯域よりも低い第2の周波数帯域を有する送信I信号及び該送信I信号と直交する送信Q信号を送信ローカル信号により送信信号に直交変調する送受信部と、該送受信部からの前記受信I信号及び受信Q信号をアナログ/デジタル変換してI成分及びQ成分からなる受信系ベースバンド信号を出力する一方、I成分及びQ成分からなる送信系ベースバンド信号をデジタル/アナログ変換して前記送信I信号及び送信Q信号を前記送受信部へ出力する信号変換部と、前記送受信部と前記信号変換部との間で、前記受信I信号、受信Q信号、送信I信号及び送信Q信号を伝送するインタフェース部とを備えてなるデジタル無線回路に係り、前記送受信部は、前記受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に前記送信I信号及び送信Q信号を遮断する第1のフィルタと、前記送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に前記受信I信号及び受信Q信号を遮断する第2のフィルタとが設けられ、前記信号変換部は、前記受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に前記送信I信号及び送信Q信号を遮断する第3のフィルタと、前記送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に前記受信I信号及び受信Q信号を遮断する第4のフィルタとが設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のデジタル無線回路に係り、前記送受信部は、前記受信信号を前記受信ローカル信号により直交復調して前記受信I信号及び受信Q信号を出力する直交復調器と、前記送信I信号及び送信Q信号を送信ローカル信号により直交変調して前記送信信号を出力する直交変調器とを備え、前記信号変換部は、前記直交復調器からの前記受信I信号及び受信Q信号をアナログ/デジタル変換してI成分及びQ成分からなる前記受信系ベースバンド信号を出力する受信信号変換器と、I成分及びQ成分からなる前記送信系ベースバンド信号をデジタル/アナログ変換して前記送信I信号及び送信Q信号を前記直交変調器へ出力する送信信号変換器とを備えてなることを特徴としている。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のデジタル無線回路に係り、前記第1のフィルタは、前記受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に前記送信I信号及び送信Q信号を遮断する高域通過フィルタ、前記第2のフィルタは、前記送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に前記受信I信号及び受信Q信号を遮断する低域通過フィルタ、前記第3のフィルタは、前記受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に前記送信I信号及び送信Q信号を遮断する帯域通過フィルタ、及び、前記第4のフィルタは、前記送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に前記受信I信号及び受信Q信号を遮断する低域通過フィルタで構成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のデジタル無線回路に係り、前記第1のフィルタは、前記受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に前記送信I信号及び送信Q信号を遮断する帯域通過フィルタ、前記第2のフィルタは、前記送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に前記受信I信号及び受信Q信号を遮断する低域通過フィルタ、前記第3のフィルタは、前記受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に前記送信I信号及び送信Q信号を遮断する高域通過フィルタ、及び、前記第4のフィルタは、前記送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に前記受信I信号及び受信Q信号を遮断する低域通過フィルタで構成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1記載のデジタル無線回路に係り、前記送受信部は、第1の集積回路として構成され、前記信号変換部は、第2の集積回路として構成され、該第1の集積回路、該第2の集積回路及び前記インタフェース部が1つのプリント基板上に設けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項6記載の発明は、無線通信機器に係り、請求項1乃至5のうちのいずれか一に記載のデジタル無線回路が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
この発明の構成によれば、送受信部は、第1のフィルタで受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に送信I信号及び送信Q信号を遮断し、かつ第2のフィルタで送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に受信I信号及び受信Q信号を遮断する。又、信号変換部は、第3のフィルタで受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に送信I信号及び送信Q信号を遮断し、かつ第4のフィルタで送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に受信I信号及び受信Q信号を遮断する。このため、インタフェース部は、受信I信号及び送信I信号を共通に伝送すると共に、受信Q信号及び送信Q信号を共通に伝送する構成となり、又、受信I信号、受信Q信号、送信I信号及び送信Q信号の各信号に対応する送受信部の端子数が2、及び信号変換部の端子数が2となり、デジタル無線回路の小形化が可能となる。又、送受信部が第1の集積回路として構成され、信号変換部が第2の集積回路として構成され、同第1の集積回路、同第2の集積回路及びインタフェース部が1つのプリント基板上に設けられる場合、同プリント基板上の占有面積が小さくなり、デジタル無線回路の小形化が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
送受信部に、受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に送信I信号及び送信Q信号を遮断する第1のフィルタ、及び送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に受信I信号及び受信Q信号を遮断する第2のフィルタが設けられ、信号変換部に、受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に送信I信号及び送信Q信号を遮断する第3のフィルタ、及び送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に受信I信号及び受信Q信号を遮断する第4のフィルタが設けられているデジタル無線回路を提供する。
【実施例1】
【0020】
図1は、この発明の第1の実施例であるデジタル無線回路が設けられた無線通信機器の要部の電気的構成を示すブロック図である。
この例の無線通信機器は、同図に示すように、携帯電話機39であり、デジタル無線回路は、無線部(RF部)40と、共通インタフェース50と、ベースバンド部(BB部)60とから構成されている。RF部40は、受信部41と、送信部42とから構成されている。受信部41は、直交復調器43と、高域通過フィルタ(HPF)44,45とを有している。直交復調器43は、図示しない受信機からのデジタル変調された受信信号RXin(周波数;Frx)を、受信ローカル信号RXLo(周波数;Frx+α)により第1の周波数帯域を有する受信I信号及び同受信I信号と直交する受信Q信号に直交復調する。HPF44は、受信I信号を通過させると共に、BB部60から共通インタフェース50を介して伝送される送信I信号を遮断する。HPF45は、受信Q信号を通過させると共に、BB部60から共通インタフェース50を介して伝送される送信Q信号を遮断する。
【0021】
送信部42は、直交変調器46と、低域通過フィルタ(LPF)47,48とを有している。直交変調器46は、第1の周波数帯域よりも低い第2の周波数帯域を有する送信I信号及び同送信I信号と直交する送信Q信号を送信ローカル信号TXLo(周波数;Ftx)により送信信号TXout(周波数;Ftx)に直交変調して図示しない送信用電力増幅器へ送出する。LPF47は、BB部60から共通インタフェース50を介して伝送される送信I信号を通過させると共に受信I信号を遮断する。LPF48は、BB部60から共通インタフェース50を介して伝送される送信Q信号を通過させると共に受信Q信号を遮断する。
【0022】
共通インタフェース50は、RF部40とBB部60との間で、受信I信号及び送信I信号を伝送するパターンと、受信Q信号及び送信Q信号を伝送するパターンとから構成されている。BB部60は、受信部61と、送信部62とから構成されている。受信部61は、帯域通過フィルタ(BPF)63,64と、A/D変換部65,66とを有している。BPF63は、受信I信号を通過させると共に送信I信号を遮断する。BPF64は、受信Q信号を通過させると共に送信Q信号を遮断する。A/D変換部65は、BPF63からの受信I信号をA/D変換してI成分からなる受信系ベースバンド信号Baを図示しないベースバンド処理部へ出力する。A/D変換部66は、BPF64からの受信Q信号をA/D変換してQ成分からなる受信系ベースバンド信号Bbをベースバンド処理部へ出力する。
【0023】
送信部62は、低域通過フィルタ(LPF)67,68と、D/A変換部69,70とを有している。D/A変換部69は、ベースバンド処理部からのI成分からなる送信系ベースバンド信号BcをD/A変換して送信I信号を出力する。D/A変換部70は、ベースバンド処理部からのQ成分からなる送信系ベースバンド信号BdをD/A変換して送信Q信号を出力する。LPF67は、D/A変換部69からの送信I信号を通過させると共に受信I信号を遮断する。LPF68は、D/A変換部70からの送信Q信号を通過させると共に受信Q信号を遮断する。
【0024】
また、RF部40は、第1の集積回路(LSI、大規模集積回路)として構成され、BB部60が、第2の集積回路(LSI)として構成されている。そして、RF部40、BB部60及び共通インタフェース50が図示しない1つのプリント基板上に設けられている。また、上記各フィルタは、たとえばBAW(Bulk Acoustic Wave)フィルタで構成されている。BAWフィルタは、AlNやZnOなどの圧電膜をMoなどの電極層で挟み込んだ構造の共振器を使うフィルタである。SAWフィルタが表面弾性波を利用するのに対して、BAWフィルタは、バルク弾性波という圧電膜自体の共振振動を利用する。この共振器は、基板の種類を問わず、たとえば、Si基板上に形成することができる。
【0025】
図2は、図1中の直交復調器43の構成図である。
この直交復調器43は、同図2に示すように、2分配器81と、乗算器82,83と、90°移相器84とから構成されている。2分配器81は、入力された受信信号RXinを同相で2分配する。乗算器82は、2分配器81からの受信信号RXinと受信ローカル信号RXLoとを乗算して受信I信号を生成する。90°移相器84は、受信ローカル信号RXLoを90°移相してローカル信号LoBを出力する。乗算器83は、2分配器81からの受信信号RXinとローカル信号LoBとを乗算して受信Q信号を生成する。
【0026】
図3は、図1中の直交変調器46の構成図である。
この直交変調器46は、同図3に示すように、乗算器91,92と、90°移相器93と、加算器94とから構成されている。乗算器91は、LPF47からの送信I信号と送信ローカル信号TXLoとを乗算してI成分の送信ローカル信号TXIを生成する。90°移相器93は、送信ローカル信号TXLoを90°移相してQ成分の送信ローカル信号TXLoBを生成する。乗算器92は、LPF48からの送信Q信号と送信ローカル信号TXLoBとを乗算してQ成分の送信ローカル信号TXQを生成する。加算器94は、送信ローカル信号TXIと送信ローカル信号TXQとを加算して送信信号TXoutを出力する。
【0027】
図4は、図1中のHPF44,45、LPF47,48、LPF67,68、及びBPF63,64の特性を示す図であり、縦軸に減衰量(Attenuation )、及び横軸に周波数(Freq)がとられている。
同図4に示すように、HPF44,45は、フィルタ特性B1に示す特性を有している。LPF47,48及びLPF67,68は、フィルタ特性Aに示す特性を有し、カットオフ周波数Faは、送信信号TXoutの帯域幅Tx bwの1/2(第2の周波数帯域)以上となっている。すなわち、
Fa≧Tx bw/2
又、Fcは、送信特性に影響を及ぼさないレベルまで減衰されるのに必要な帯域幅である。又、BPF63,64は、フィルタ特性Bに示す特性を有し、中心周波数がα、周波数帯域Fbは、受信信号RXinの帯域幅Rx bw(第1の周波数帯域)以上となっている。すなわち、
Fb≧Rx bw
又、Fdは、受信特性に影響を及ぼさないレベルまで減衰されるのに必要な帯域幅である。又、中心周波数αは、
Fa+Fb/2+Fc+Fd<α
の関係に設定されている。
【0028】
図5は、図1中の受信信号RXin及び送信信号TXoutの周波数特性を示す図、図6は、図1中の受信I信号、受信Q信号、送信I信号、及び送信Q信号の周波数特性を示す図である。
これらの図を参照して、この携帯電話機39の動作について説明する。
この携帯電話機39では、図5に示す受信信号RXin(周波数;Frx)が、直交復調器43で受信ローカル信号RXLo(周波数;Frx+α)によりダウンコンバートされ、図6に示す第1の周波数帯域(Rx bw、中心周波数α)を有する受信I信号及び受信Q信号に直交復調される。受信I信号及び受信Q信号は、HPF44,45、共通インタフェース50、及びBPF63,64を経てA/D変換部65,66へそれぞれ伝送される。A/D変換部65では、BPF63からの受信I信号がA/D変換され、I成分からなる受信系ベースバンド信号Baが図示しないベースバンド処理部へ出力される。A/D変換部66では、BPF64からの受信Q信号がA/D変換され、Q成分からなる受信系ベースバンド信号Bbがベースバンド処理部へ出力される。この場合、受信I/Q信号は、LPF47,48で遮断されるため、直交変調器46には入力されず、影響を与えない。又、受信I/Q信号は、LPF67,68で遮断されるため、D/A変換部69,70には入力されず、影響を与えない。
【0029】
又、図示しないベースバンド処理部からのI成分からなる送信系ベースバンド信号BcがD/A変換部69でD/A変換され、同D/A変換部69から送信I信号が出力される。又、ベースバンド処理部からのQ成分からなる送信系ベースバンド信号BdがD/A変換部70でD/A変換され、同D/A変換部70から送信Q信号が出力される。送信I信号及び送信Q信号は、LPF67,68、共通インタフェース50、及びLPF47,48を経て直交変調器46へ伝送される。直交変調器46では、図6に示すLPF47,48からの第2の周波数帯域(Tx bw/2)を有する送信I信号及び送信Q信号が送信ローカル信号TXLo(周波数;Ftx)によりアップコンバートされ、図5に示す送信信号TXout(周波数;Ftx、帯域幅;Tx bw)に直交変調される。そして、送信信号TXoutは、図示しない送信用電力増幅器へ送出される。この場合、出力I/Q信号は、BPF63,64で遮断されるため、A/D変換部65,66には入力されず、影響を与えない。又、出力I/Q信号は、HPF44,45で遮断されるため、直交復調器43には入力されず、影響を与えない。
【0030】
以上のように、この第1の実施例では、受信I/Q信号は、LPF47,48で遮断されるため、直交変調器46には入力されず、又、LPF67,68で遮断されるため、D/A変換部69,70には入力されない。又、出力I/Q信号は、BPF63,64で遮断されるため、A/D変換部65,66には入力されず、又、HPF44,45で遮断されるため、直交復調器43には入力されない。このため、RF部40とBB部60との間が共通インタフェース50を介して接続されても、相互の影響がない。よって、受信I信号、受信Q信号、送信I信号及び送信Q信号の各信号に対応するRF部40の端子数が2、及びBB部60の端子数が2となり、また、プリント基板上のパターンも2本となる。このため、RF部40、BB部60、及びパターンの占有面積が小さくなり、デジタル無線回路の小形化が容易になる。
【実施例2】
【0031】
図7は、この発明の第2の実施例であるデジタル無線回路が設けられた携帯電話機の要部の電気的構成を示すブロック図であり、第1の実施例を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
この例の携帯電話機39Aでは、同図7に示すように、図1中のRF部40及びBB部60に代えて、異なる構成のRF部40A及びBB部60Aが設けられている。RF部40Aでは、図1中の受信部41に代えて、異なる構成の受信部41Aが設けられている。受信部41Aでは、図1中のHPF44,45に代えて、BPF63,64が設けられている。BB部60Aでは、図1中の受信部61に代えて、異なる構成の受信部61Aが設けられている。受信部61Aでは、図1中のBPF63,64に代えて、HPF44,45が設けられている。他は、図1と同様の構成である。
【0032】
この携帯電話機39Aの動作では、次の点が第1の実施例と異なっている。
すなわち、直交復調器43で直交復調された受信I信号及び受信Q信号は、BPF63,64、共通インタフェース50、及びHPF44,45を経てA/D変換部65,66へそれぞれ伝送される。A/D変換部65では、HPF44からの受信I信号がA/D変換され、I成分からなる受信系ベースバンド信号Baが図示しないベースバンド処理部へ出力される。A/D変換部66では、HPF45からの受信Q信号がA/D変換され、Q成分からなる受信系ベースバンド信号Bbがベースバンド処理部へ出力される。又、出力I/Q信号は、HPF44,45で遮断されるため、A/D変換部65,66には入力されず、影響を与えない。又、出力I/Q信号は、BPF63,64で遮断されるため、直交復調器43には入力されず、影響を与えない。他は、第1の実施例と同様の動作が行われ、同様の利点がある。
【0033】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、上記各実施例では、共通インタフェース50は、パターンで構成されているが、ケーブルなどでも良い。又、上記各実施例中の各フィルタは、BAWフィルタに限らず、集積回路内に構成でき、必要な特性が得られるものであれば、任意のもので良い。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、携帯電話機の他、たとえば、PDA(Personal Digital Assistants )や無線基地局などのような移動体通信に用いられるデジタル無線回路全般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の第1の実施例であるデジタル無線回路が設けられた無線通信機器の要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の直交復調器43の構成図である。
【図3】図1中の直交変調器46の構成図である。
【図4】図1中のHPF44,45、LPF47,48、LPF67,68、及びBPF63,64の特性を示す図である。
【図5】図1中の受信信号RXin及び送信信号TXoutの周波数特性を示す図である。
【図6】図1中の受信I信号、受信Q信号、送信I信号、及び送信Q信号の周波数特性を示す図である。
【図7】この発明の第2の実施例であるデジタル無線回路が設けられた携帯電話機の要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】従来のデジタル無線回路の構成図である。
【符号の説明】
【0036】
39,39A 携帯電話機(無線通信機器)
40,40A 無線部(RF部、送受信部の一部、第1の集積回路)
41,41A 受信部(RF部、送受信部の一部、第1の集積回路の一部)
42 送信部(RF部、送受信部の一部、第1の集積回路の一部)
43 直交復調器(RF部、送受信部の一部、第1の集積回路の一部)
44,45 高域通過フィルタ(HPF、第1のフィルタ)
46 直交変調器(RF部、送受信部の一部、第1の集積回路の一部)
47,48 低域通過フィルタ(LPF、第2のフィルタ)
50 共通インタフェース(インタフェース部)
60,60A ベースバンド部(BB部、信号変換部、第2の集積回路)
61,61A 受信部(BB部、信号変換部の一部、第2の集積回路の一部)
62 送信部(BB部、信号変換部の一部、第2の集積回路の一部)
63,64 帯域通過フィルタ(BPF、第3のフィルタ)
65,66 A/D変換部(BB部、信号変換部の一部、第2の集積回路の一部)
67,68 低域通過フィルタ(LPF、第4のフィルタ)
69,70 D/A変換部(BB部、信号変換部の一部、第2の集積回路の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル変調されてなる受信信号を受信ローカル信号により第1の周波数帯域を有する受信I信号及び該受信I信号と直交する受信Q信号に直交復調する一方、前記第1の周波数帯域よりも低い第2の周波数帯域を有する送信I信号及び該送信I信号と直交する送信Q信号を送信ローカル信号により送信信号に直交変調する送受信部と、
該送受信部からの前記受信I信号及び受信Q信号をアナログ/デジタル変換してI成分及びQ成分からなる受信系ベースバンド信号を出力する一方、I成分及びQ成分からなる送信系ベースバンド信号をデジタル/アナログ変換して前記送信I信号及び送信Q信号を前記送受信部へ出力する信号変換部と、
前記送受信部と前記信号変換部との間で、前記受信I信号、受信Q信号、送信I信号及び送信Q信号を伝送するインタフェース部とを備えてなるデジタル無線回路であって、
前記送受信部は、
前記受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に前記送信I信号及び送信Q信号を遮断する第1のフィルタと、
前記送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に前記受信I信号及び受信Q信号を遮断する第2のフィルタとが設けられ、
前記信号変換部は、
前記受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に前記送信I信号及び送信Q信号を遮断する第3のフィルタと、
前記送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に前記受信I信号及び受信Q信号を遮断する第4のフィルタとが設けられていることを特徴とするデジタル無線回路。
【請求項2】
前記送受信部は、
前記受信信号を前記受信ローカル信号により直交復調して前記受信I信号及び受信Q信号を出力する直交復調器と、
前記送信I信号及び送信Q信号を送信ローカル信号により直交変調して前記送信信号を出力する直交変調器とを備え、
前記信号変換部は、
前記直交復調器からの前記受信I信号及び受信Q信号をアナログ/デジタル変換してI成分及びQ成分からなる前記受信系ベースバンド信号を出力する受信信号変換器と、
I成分及びQ成分からなる前記送信系ベースバンド信号をデジタル/アナログ変換して前記送信I信号及び送信Q信号を前記直交変調器へ出力する送信信号変換器とを備えてなることを特徴とする請求項1記載のデジタル無線回路。
【請求項3】
前記第1のフィルタは、前記受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に前記送信I信号及び送信Q信号を遮断する高域通過フィルタ、前記第2のフィルタは、前記送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に前記受信I信号及び受信Q信号を遮断する低域通過フィルタ、前記第3のフィルタは、前記受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に前記送信I信号及び送信Q信号を遮断する帯域通過フィルタ、及び、前記第4のフィルタは、前記送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に前記受信I信号及び受信Q信号を遮断する低域通過フィルタで構成されていることを特徴とする請求項1記載のデジタル無線回路。
【請求項4】
前記第1のフィルタは、前記受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に前記送信I信号及び送信Q信号を遮断する帯域通過フィルタ、前記第2のフィルタは、前記送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に前記受信I信号及び受信Q信号を遮断する低域通過フィルタ、前記第3のフィルタは、前記受信I信号及び受信Q信号を通過させると共に前記送信I信号及び送信Q信号を遮断する高域通過フィルタ、及び、前記第4のフィルタは、前記送信I信号及び送信Q信号を通過させると共に前記受信I信号及び受信Q信号を遮断する低域通過フィルタで構成されていることを特徴とする請求項1記載のデジタル無線回路。
【請求項5】
前記送受信部は、第1の集積回路として構成され、前記信号変換部は、第2の集積回路として構成され、該第1の集積回路、該第2の集積回路及び前記インタフェース部が1つのプリント基板上に設けられていることを特徴とする請求項1記載のデジタル無線回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一に記載のデジタル無線回路が設けられていることを特徴とする無線通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−135729(P2006−135729A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323460(P2004−323460)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】