説明

デジタル無線機、方法及びプログラム

【課題】ヘテロダイン型受信機10において待ち受け期間中の電力を節約する。
【解決手段】今回の受信シンボルの値axを検出して(S51)、受信信号における直近n個のシンボルを受信順に並べた直近受信シンボル列の各シンボル値を更新する(S52)。直近受信シンボル列から奇数番のシンボルを選択し、Co=Σi=1n/2(a2i-1*S2i-1)を計算する(S53)。Co<閾値Kであるならば、直近受信シンボル列はフレーム同期ワードでないとして、処理を終了して、電力消費量を抑制する(S54否)。Co≧閾値Kであるならば、直近受信シンボル列から偶数番のシンボルを選択し、Ce=Σi=1n/2(a2i*S2i)を計算してから(S55)、C=Co+Ceを計算し(S56)、C≧Kであれば(S57)、直近受信シンボル列はフレーム同期ワードであると判断する(S58)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーム同期ワード付きの受信信号を受信するデジタル無線機、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
陸上業務用無線等の無線通信では近年、周波数の有効利用の観点から狭帯域化が進められ、それに伴った狭帯域デジタル無線通信機も開発されている。狭帯域化は従来のナロー(12.5kHz帯域)から、さらにベリーナロー(6.25kHz帯域)に進んでいる。一方、これまでのワイド(25kHz帯域)の運用もまだ残されており、1つの無線機でいくつかの帯域が使用できることが望まれている。
【0003】
図7は従来のヘテロダイン型受信機100の構成図である。ヘテロダイン型受信機100において、本発明の後述の実施例としてのヘテロダイン型受信機10(図1)の素子と同一の素子はヘテロダイン型受信機10の該素子に付けた符号と同一の符号で指示して、説明は省略し、ヘテロダイン型受信機100の主要点についてのみ説明する。ヘテロダイン型受信機100において、ヘテロダイン型受信機10との相違点はベースバンド処理部101の同期検出部102である。
【0004】
ベースバンド処理部101の同期検出部102は、ベースバンドフィルタ32からのベースバンド信号の中からフレーム同期ワードを検出する同期処理を実施する。同期検出部102に適用される具体的な同期検出方式は例えば特許文献1に開示されている。該特許文献1は第1及び第2の2つの同期検出方式を開示している。第1の同期検出方式(特許文献1の段落0003の式(2))は、波形相関に基づくものであり、それによると、同期ワードのシンボル数をn、同期ワードのシンボル値をS1〜Sn、復調波の受信時点から直近、n個のシンボルの値をa1〜an(※a1〜anはシンボルを新たに受信するたびに更新される。)とすると、相関値Cは次の式1で求められる。実際には、相関値Cは、式1をサンプル数で除算して求める必要があるが、サンプル数は定数のためここでは省いている。また、下式において「*」は掛け算を意味する。
【0005】
C=Σi=1n(ai*Si)・・・式1
【0006】
第2の同期検出方式(特許文献1の段落0003の式(3))は、波形相関の代わりに、フレーム同期ワードと、受信波形から取り出したフレーム同期ワード候補の各シンボル値との誤差に基づき同期を検出する。具体的には次の式(2)を使用する。
E=Σi=1n(ai−Si2・・・式2
【0007】
図8は所定の具体的波形に適用した従来の第1及び第2の同期検出方式の説明図である。図8ではシンボルタイミングをt1〜t11とするとともに、同期ワードのシンボル数は説明の便宜上、4としている。また、同期ワードのシンボルを時間軸上、前から順番に番号1〜4を付けて、それらのシンボル値S1〜S4は、−3,+1,−1,+3であると仮定する。t1〜t4でのシンボル値a1〜a4(a1=+1,a2=+3,a3=+3,a4=−1)に対し、t4時点でのCを式1により計算すると、(−3)×1+1×3+(−1)×3+3×(−1)=−6となる。同様にしてt11までの式1のCを求めた場合、t8の時点でCが最大となり、ここが同期タイミングであることが分かる。また、式2のEは、その最小点が同期タイミングとなり、同様にt8の時点で最小値0となっている。
【0008】
両同期検出方式において、1フレーム分のデータを取得後、該フレームの最大値(Cの場合)又は最小値(Eの場合)の検出時点を同期タイミングとすると、同期タイミングの検出は、1フレーム分のデータを取得するのを待たなければならず、検出が遅れる。業務用無線機や警察・消防無線のようになるべくデータ遅延(音声遅延)を起こしたくない場合は、同期タイミングを即座に判定するため、CやEを所定の閾値と対比させ、その閾値を超えた場合の最大値/最小値を同期タイミングとすることで、同期獲得までの時間を短くすることが通例となっている。
【0009】
なお、相関値に対して閾値レベルを設定する手法は例えば特許文献2(その第1図のレベル比較回路に入力される「フレーム同期閾値」を参照)に説明されている。また、図8では、1シンボルを1サンプルとしているが、実際には、1シンボルを複数のサンプリング点でサンプルし、同期タイミングの検出精度を上げるように設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−150472号公報
【特許文献2】特開平3−70266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
相手側送信機が送信をしていない状態では、受信機は待ち受け状態となる。無線機の通常の使用では、待ち受け状態が時間的にも長く、また、山岳登山等での使用では、待ち受け時の消費電流が少ないことが特に重要となる。受信機は、いつ、相手が送信してくるかを予測できないため、常に受信をしてフレーム同期ワードをサーチし続けなければならない。このとき式1又は式2の積和演算を常に行うこととなる。特に同期ワードのシンボル数が多いシステムなどでは、この演算を行うことでの消費電流は無視できなくなる。
【0012】
特許文献1,2は、相関値や閾値を使用した同期検出方式を開示するものの、相手機からの受信があった場合には、迅速な同期検出に対応しつつ、待ち受け期間の消費電力を抑える手立てについて一切言及していない。
【0013】
本発明の目的は、相手機からの受信があった場合には、その同期タイミング検出に迅速に対応しつつ、待ち受け期間の消費電力を抑えるデジタル無線機、方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、相手機からの受信信号の待ち受け期間は、フレーム同期ワードのシンボルとの一致性を判断する判断対象としての直近受信シンボル列のシンボルを間引きし、直近受信シンボル列のシンボルの一部のみを判断対象とした部分一致性判断に留める。そして、フレーム同期ワードに対して直近受信シンボル列の部分一致性が認められたならば、直近受信シンボル列のシンボルの全部を判断対象とした全体一致性判断を行って、同期タイミングを検出する。
【0015】
本発明のデジタル無線機は次のものを備える。
フレーム同期ワードのシンボル数をnとして、受信信号における直近n個のシンボルを並べた直近受信シンボル列の各シンボル値を検出するシンボル値検出手段、
前記直近受信シンボル列からm個(m<n)のシンボルを選択し選択シンボルとフレーム同期ワードの同一順番のシンボルとにより定義される部分一致性判断式に基づきフレーム同期ワードに対する前記直近受信シンボル列の部分一致性を判断する部分判断手段、及び
部分一致性無しとの判断に対して直近受信シンボル列はフレーム同期ワードではないと判断するフレーム同期ワード検出手段。
【0016】
本発明のデジタル無線機制御方法は次のステップを備える。
フレーム同期ワードのシンボル数をnとして、受信信号における直近n個のシンボルを並べた直近受信シンボル列の各シンボル値を検出するシンボル値検出ステップ、
前記直近受信シンボル列からm個(m<n)のシンボルを選択し選択シンボルとフレーム同期ワードの同一順番のシンボルとにより定義される部分一致性判断式に基づきフレーム同期ワードに対する前記直近受信シンボル列の部分一致性を判断する部分判断ステップ、及び
前記部分一致性無しとの判断に対して直近受信シンボル列はフレーム同期ワードではないと判断するフレーム同期ワード検出ステップ。
【0017】
本発明のプログラムは、本発明のデジタル無線機の各手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、相手機からの受信信号の待ち受け期間では、フレーム同期ワードのシンボルとの一致性を判断する判断対象としての直近受信シンボル列のシンボルを間引きし、直近受信シンボル列のシンボルの一部のみを判断対象とした部分一致性判断に留めるので、処理が軽減され、その分、消費電力を抑制できる。
【0019】
本発明によれば、フレーム同期ワードに対して直近受信シンボル列の部分一致性が認められたならば、直近受信シンボル列のシンボルの全部を判断対象とした全体一致性判断を行うので、受信信号にフレーム同期ワードが含まれている場合には、遅滞なく同期タイミングを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ヘテロダイン型受信機の構成図である。
【図2】同期検出方法のフローチャートである。
【図3】同期検出のために計算する2種の相関値に対して設定する閾値のエラー許容レベルを示す図である。
【図4】同期検出のために計算する2種の誤差に対して設定する閾値のエラー許容レベルを示す図である。
【図5】デジタル無線機のブロック図である。
【図6】デジタル無線機制御方法のフローチャートである。
【図7】従来のヘテロダイン型受信機の構成図である。
【図8】所定の具体的波形に適用した従来の第1及び第2の同期検出方式の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1はヘテロダイン型受信機10の構成図である。RF部11は、高周波増幅器12、ミキサー13、局部発振器14及び中間波増幅器15を備える。
【0022】
高周波増幅器12は、アンテナ16が捕捉した電波から生成されたRF信号を増幅する。ミキサー13は、高周波増幅器12からのRF信号と局部発振器14からの局部発振信号と混合し、局部発振信号の周波数に対応する周波数のRF信号を選択して、それを所定周波数の中間波(IF)信号へ変換し、中間波増幅器15へ出力する。中間波増幅器15は、中間波信号を増幅して、出力する。
【0023】
復調器19は、中間波信号を復調して、検波信号を生成し、帯域制限器20は、該検波信号を帯域制限してから、A/D変換器21へ出力する。A/D変換器21は、アナログの検波信号をデジタル信号へ変換して、ベースバンド処理部25へ出力する。なお、A/D変換器21が出力する信号はなお変調が残る変調信号となっている。
【0024】
ベースバンド処理部25は、ミキサー30、変調度調整部31、ベースバンドフィルタ32、奇数番同期検出器33、偶数番同期検出器34、クロック再生器35及びデータ取得部36を備える。
【0025】
ミキサー30は、A/D変換器21からのデジタル変調信号と変調度調整部31からの変調度調整信号とを混合して、ベースバンド信号を生成する。該ベースバンド信号はベースバンドフィルタ32を経て奇数番同期検出器33へ送られる。奇数番同期検出器33及び偶数番同期検出器34の詳細は後述する。クロック再生器35はベースバンド信号からクロックを再生する。データ取得部36は、クロック再生器35からのクロックパルスに同期してベースバンド信号内の各シンボルを対応のデータへ変換する。データ取得部36は、また、データのエラー訂正や、データからのフレーム構築も行う。フレームは、先頭にフレーム同期ワードを有するとともに、フレーム同期ワードに後ろに音声データ部を有する。
【0026】
データ解析部40はデータ取得部36からのデータを解析する。音声デコーダ41は、データ取得部36からのデータをデコードして、デジタル音声信号を生成する。該デジタル音声信号は、D/A変換器(図示せず)及び増幅器(図示せず)を経てスピーカ(図示せず)へ送られ、スピーカにおいて音声に変換されて、出力される。
【0027】
図2は同期検出方法50のフローチャートである。同期検出方法50を参照しつつ、ベースバンド処理部25の奇数番同期検出器33及び偶数番同期検出器34について詳説する。S51〜S54の処理は奇数番同期検出器33において実施され、S55〜S58の処理は偶数番同期検出器34において実施される。
【0028】
ここで、受信信号に含まれるフレーム同期ワードのシンボル数をnとする。ここでは、nは偶数を選択される。また、フレーム同期ワードの各シンボルの値を先頭から順番にS1,S2,・・・,Snと定義する。一方、ベースバンドフィルタ32が出力するベースバンド信号に対し、その直近のn個のシンボル(以下、「直近受信シンボル列」又は「受信シンボル列」という。)の値を受信順にa1,a2,・・・,anと定義する。
【0029】
同期検出方法50は1シンボルが経過するごとに起動される。S51では、今回の受信シンボルの値axを検出する。S52では、直近受信シンボル列a1〜anを更新する。具体的には、直近受信シンボル列a1〜anがRAM等の記憶装置に格納されており、S52では、i=2から1ずつ順番にi=nまで、aiをai-1に代入する処理を繰り返し、最後にaxをanに代入する。
【0030】
ここで、次の式3,4,5を定義する。なお、「*」は掛け算を意味する。なお、「o」及び「e」はそれぞれ奇数、偶数を意味する。
o=Σi=1n/2(a2i-1*S2i-1)・・・式3
e=Σi=1n/2(a2i*S2i)・・・式4
C=Co+Ce・・・式5
【0031】
S53では、式3に基づきCoを計算する。すなわち、S53では、a1〜anから、受信順番が奇数番のもののみを対象にして、直近受信シンボル列及びフレーム同期ワードにおける同一順番同士のシンボルの値a2i-1とS2i-1との積を計算し、それらの合計Coを計算する。
【0032】
S54では、Co≧閾値K’であるか否かを判定し、判定が正であれば、S55へ進み、否であれば、同期検出方法50を直ちに終了する。前述したように、同期検出方法50は1シンボルの時間が経過するごとに、実行されるので、同期検出方法50は、S54の判定が否であることにより直ちに終了しても、1シンボルの時間経過後、再起動される。後述のS57の判定が否であることにより、同期検出方法50が直ちに終了する場合も、同様である。
【0033】
S54における閾値K’と後述のS57における閾値Kとの関係について説明する。後述のS57における閾値Kは、従来のヘテロダイン型受信機100が前述の式1(奇数番のシンボルだけでなく、全シンボルについての合計を計算する式)で計算したCに対し、従来のヘテロダイン型受信機100がCと対比させてSnのシンボルの受信タイミングを同期タイミングとする閾値をそのまま採用する。すなわち、従来のヘテロダイン型受信機100では、C≧閾値KzとするSnのシンボルの受信タイミングを同期タイミングとしている。これに対し、S54における閾値K’はKより小さい値となる。しかしながら、Kがフレーム同期ワードのn個のシンボルの内、例えば3個のエラーを許容する閾値に設定されているならば、K’も、奇数番のシンボルのみについて計算したCoについての閾値であるにもかかわらず、同数(3個)のエラーを許容する値に設定される。奇数番のみについて計算する式3も、シンボルの検出値について式1と同数のエラーが生じる可能性があるからである。
【0034】
図3はC,CoとK,K’との関係を示す図である。Coは、a,Sについて同一奇数番号同士の積のみの和となるので、C(=Co+Ce)より小さい値になる。閾値K,K’は理論的に同期ワードを完全に受信した時に生じるC,Coの最高値からエラーとして許容できるレベル、下げたレベルとされ、許容レベル下げ分はK,K’共に等しくされる。Coの許容レベルをCの許容レベルと相違させると、Co+CeとしてのCの許容レベルが本来の許容レベルからずれてしまうからである。
【0035】
図2へ戻って、S55〜S58はS54が正である場合のみ実行される。すなわち、S55〜S58の処理を受け持つ偶数番同期検出器34は、待ち受け期間中、S53がCo<閾値Kである限り、休止しており、休止中の消費電力が節約されるようになっている。偶数番同期検出器34は、待ち受け期間において、S54においてCo≧閾値Kと判定されると、作動開始する。
【0036】
S55では、式4に基づき相関値Ceを計算する。すなわち、S55は、a1〜anから、受信順番が偶数番のもののみを対象にして、直近受信シンボル列及びフレーム同期ワードにおける同一順番同士のシンボルの値a2iとS2iとの積を計算し、それらの合計Ceを計算する。
【0037】
S56では、さらに、式5に基づきCを計算する。S57では、Cと閾値Kとを対比し、C≧Kであれば、S58へ進み、また、C<Kであれば、直近受信シンボル列がフレーム同期ワードではないと判断し、同期検出方法50を直ちに終了する。同期検出方法50の終了に伴い、偶数番同期検出器34は作動休止状態になる。S58では、直近受信シンボル列がフレーム同期ワードであると判断し、axの受信タイミングを同期タイミングとする。偶数番同期検出器34は、その作動中、ベースバンド信号をクロック再生器35及びデータ取得部36へ出力する。
【0038】
図1の構成図では、奇数番同期検出器33及び偶数番同期検出器34がそれぞれ前段及び後段に配置されているが、逆にして偶数番同期検出器34及び奇数番同期検出器33をそれぞれ前段及び後段に配置することもできる。その場合、前段の偶数番同期検出器34は式5については計算せず、式4のみを計算し、後段の奇数番同期検出器33は、式3及び式5を計算する。
【0039】
奇数番同期検出器33及び偶数番同期検出器34に代えて計算部A1,A2を装備することもできる。計算部A1,A2は前述の式3〜5に代えて次の式6〜8の計算を行う。式6〜8は式3〜5にそれぞれ対応している。式3,4と式6,7との相違点は、積の演算式「*」が差の演算式「−」に変更され、かつ、式6,7では、差が自乗されていることである。なお、式6,7の差は、直近受信シンボル列とフレーム同期ワードとにおける同一順番のシンボルの値の相違量に対応する。差の絶対値が小さいほど、両者の一致性が高くなる。
o=Σi=1n/2(a2i-1−S2i-12・・・式6
e=Σi=1n/2(a2i−S2i2・・・式7
E=Eo+Ee・・・式8
【0040】
計算部A1,A2について、第1の配置例では、計算部A1,A2がそれぞれ前段及び後段の関係で配置される。そして、計算部A1は式6からEoを計算し、計算部A2は式7,8からEe,Eを計算する。
【0041】
第1の配置例では、計算部A1は、Eo≦閾値Lであれば、次段の計算部A2を作動させ、また、Eo>閾値Lであれば、計算部A2の休止を維持したまま、今回の処理を終了する。計算部A2の休止は消費電力節約の効果がある。計算部A2は、前段の計算部A1がEo≦閾値Lであると判断したのに伴い、作動開始し、相違量Ee,Eを計算し、Eが≦Lであるか又は>Lかを判定する。計算部A2は、E≦Lと判定したならば、直近受信シンボル列がフレーム同期ワードであると判断し、axの受信タイミングを同期タイミングとする。計算部A2がE>Lと判定したならば、計算部A2は、直近受信シンボル列がフレーム同期ワードではないと判断し、直ちに作動を休止する。
【0042】
第2の配置例では、計算部A2,A1がそれぞれ前段及び後段の関係で配置される。そして、計算部計算部A2は式7からEeを計算し、A1は式6,8からEo,Eを計算する。
【0043】
第2の配置例では、計算部A2は、Ee≦閾値Lであれば、次段の計算部A1を作動させ、また、Ee>閾値Lであれば、次段の計算部A1の休止を維持したまま、今回の処理を終了する。計算部A1の休止は消費電力節約の効果がある。計算部A1は、前段の計算部A2がEe≦閾値Lであると判断したのに伴い、作動し、相違量Eo,Eを計算し、Eが≦Lであるか又は>Lであるかを判定する。計算部A1は、E≦Lと判定したならば、直近受信シンボル列がフレーム同期ワードであると判断し、axの受信タイミングを同期タイミングとする。計算部A1がE>Lと判定したならば、計算部A1は、直近受信シンボル列がフレーム同期ワードではないと判断し、直ちに作動を休止する。
【0044】
図4はE,EoとLとの関係を示す図である。前述の式6から分かるように、E,Eoでは、同一番号のa2i-1及びS2i-1の差を算出しており、同期ワードを検出した場合には、共に最低値0になり、最低値に対するエラー許容レベルはE(=Eo+Ee)とEoとで等しく設定される。
【0045】
図5はデジタル無線機70のブロック図である。デジタル無線機70の一例はヘテロダイン型受信機10である。デジタル無線機70は、典型的にはバッテリ駆動の携帯型である。デジタル無線機70はシンボル値検出手段71、部分判断手段72及びフレーム同期ワード検出手段73を備える。
【0046】
シンボル値検出手段71は、フレーム同期ワードのシンボル数をnとして、受信信号における直近n個のシンボルを並べた直近受信シンボル列の各シンボル値を検出する。部分判断手段72は、直近受信シンボル列からm個(m<n)のシンボルを選択し、選択シンボルとフレーム同期ワードの同一順番のシンボルとにより定義される部分一致性判断式に基づきフレーム同期ワードに対する直近受信シンボル列の部分一致性を判断する。フレーム同期ワード検出手段73は、部分一致性無しとの判断に対して直近受信シンボル列はフレーム同期ワードではないと判断する。
【0047】
典型的には、部分一致性有りとは、選択したm個のシンボルの全部について、フレーム同期ワードにおいて同一順番のシンボルと値が一致することであるが、一部一致しない場合、すなわち多少一致しない場合も含めてよいとする。後述の全体一致性についても、一部のシンボルがフレーム同期ワードの対応のシンボルと不一致であっても全体一致性有りと判断することを可とする。
【0048】
これにより、直近受信シンボル列の一部のシンボルについては処理対象から間引きして、直近受信シンボル列とフレーム同期ワードとの部分一致性判断を行って、部分一致性無しと判断した場合には、直近受信シンボル列はフレーム同期ワードではないと判断する。結果、処理の間引きに相当する分、デジタル無線機70の消費電力を節約することができる。また、部分一致性有りと判断されれば、直ちに間引き無しの全体一致性判断が行われるので、同期タイミングを遅滞なく検出することができる。
【0049】
なお、間引き率は、ヘテロダイン型受信機10では、偶数番の間引きとして1/2となっているが、デジタル無線機70では、1/2に限定することなく、1/2より小でも大でもかまわない。間引き率は、固定でなく、受信環境(例:時間帯、通信の込み具合)やデジタル無線機70のバッテリ残量等に応じて制御するようになっていてもよい。
【0050】
部分一致性判断は1段に限定せず、複数段とすることもできる。すなわち、n=m1+m2+m3とし、第1の部分一致性判断では、選択したm1のシンボルについてのみを部分一致性判断の処理対象とし、第1の部分一致性が有りと判断されれば、次に、残りのシンボルの中から選択したm2のシンボルについてのみか、該m2のシンボルにm1のシンボルを加えたm1+m2のシンボルかを第2の部分一致性判断の処理対象とし、第2の部分一致性が有りと判断されれば、最後に、全部のシンボルを処理対象とする全体一致性判断を行うようにしてもよい。
【0051】
典型的には、フレーム同期ワード検出手段73は、部分一致性有りとの判断に対して直近受信シンボル列の全シンボルとフレーム同期ワードの全シンボルとにより定義される全体一致性判断式に基づきフレーム同期ワードに対する直近受信シンボル列の全体一致性を調べ、全体一致性が有れば、直近受信シンボル列はフレーム同期ワードであると判断する。
【0052】
したがって、デジタル無線機70は、常時は、部分一致性のみ調べて、電力節約しているにもかかわらず、受信信号にフレーム同期ワードが含まれる場合には、直ちに直近受信シンボル列はフレーム同期ワードであると判断することができる。
【0053】
好ましくは、フレーム同期ワード検出手段73は、一旦作動状態になると、部分判断手段72からの部分一致性有りの信号が途絶えた後も、少なくとも1フレームの受信期間より大きい経過期間は作動状態を維持する。
【0054】
典型的には、全体一致性判断式は、選択シンボルとフレーム同期ワードの同一順番のシンボルとにより定義される第1の部分一致性判断式と、非選択シンボルとフレーム同期ワードの同一順番のシンボルとにより定義される第2の部分一致性判断式とから構成されている。部分一致性判断式が全体一致性判断式の部分となる結果、特別の部分一致性判断式を用意することを省略することができる。
【0055】
全体一致性の有無を判断する判断式の具体例は、ヘテロダイン型受信機10における式5,8である。第1の部分一致性判断式の具体例はヘテロダイン型受信機10における式3,6である。第2の部分一致性判断式の具体例はヘテロダイン型受信機10における式4,7である。
【0056】
全体一致性判断式及び部分一致性判断式は、例えば直近受信シンボル列とフレーム同期ワードとの相関関係を計算する式(例:式3〜5)や、直近受信シンボル列とフレーム同期ワードとにおける対応シンボル同士の相違度を相違度を計算する式(例:式6〜8)である。
【0057】
好ましくは、フレーム同期ワード検出手段73は、自身が第2の部分一致性判断式について計算して求めた計算値と、部分判断手段72が第1の部分一致性判断式について計算して求めた計算値とを加算した加算値を全体一致性判断式の計算値とし、該加算値を所定の閾値と対比して、全体一致性を判断する。フレーム同期ワード検出手段73は、第1の部分一致性判断式についての計算を省略できるので、処理時間を短縮することができる。
【0058】
典型的には、選択シンボルは、直近受信シンボル列において先頭から奇数番目又は偶数番目に配置されているシンボルである。ヘテロダイン型受信機10ではnは偶数となっているが、デジタル無線機70ではnは奇数であってもよい。nが奇数である場合は、奇数番のシンボルの総数は偶数番のnの総数より1、大きくなる。選択シンボルは、それらが直近受信シンボル列全体において等密度分布となるように、選択するのが好ましいが、これに限定する必要はない。直近受信シンボル列の先頭から連続m個、末尾の連続m個、又は直近受信シンボル列の中間の連続m個を選択シンボルとしてもよい。
【0059】
図6はデジタル無線機制御方法80のフローチャートである。デジタル無線機制御方法80はデジタル無線機70に適用される。
【0060】
S81では、フレーム同期ワードのシンボル数をnとして、受信信号における直近n個のシンボルを並べた直近受信シンボル列の各シンボル値を検出する。S82では、直近受信シンボル列からm個(m<n)のシンボルを選択し、選択シンボルとフレーム同期ワードの同一順番のシンボルとにより定義される部分一致性判断式について計算する。S83では、S82の計算値に基づきフレーム同期ワードに対する直近受信シンボル列の部分一致性を判断する。そして、部分一致性無しと判断されれば、S84へ進み、部分一致性有りと判断されれば、S85へ進む。S84では、直近受信シンボル列はフレーム同期ワードではないと判断する。
【0061】
S85では、直近受信シンボル列の全シンボルとフレーム同期ワードの全シンボルとにより定義される全体一致性判断式について計算する。S86では、S85の計算値に基づき、フレーム同期ワードに対する直近受信シンボル列の全体一致性を判断する。そして、全体一致性が有れば、S87へ進み、無ければ、S84へ進む。S87では、直近受信シンボル列はフレーム同期ワードであると判断する。
【0062】
S81の処理はデジタル無線機70(図5)のシンボル値検出手段71の機能にそれぞれ対応している。S82,S83の処理はデジタル無線機70の部分判断手段72の機能に対応する。S84〜S87の機能はデジタル無線機70のフレーム同期ワード検出手段73の機能に対応する。シンボル値検出手段71〜フレーム同期ワード検出手段73の機能について述べた具体的態様はデジタル無線機制御方法80において対応するステップの処理についての具体的態様としても適用可能である。
【0063】
本発明を適用したプログラムは、コンピュータをデジタル無線機70の各手段として機能させる。本発明を適用した別のプログラムは、デジタル無線機制御方法80の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0064】
本明細書は様々な範囲及びレベルの発明を開示している。それら発明は、本明細書で説明した様々な技術的範囲及び具体的レベルの各装置及び各方法だけでなく、拡張ないし一般化の範囲で、各装置及び各方法から独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の要素を抽出したものや、1つ又は複数の要素を拡張ないし一般化の範囲で変更したものや、さらに、各装置間及び各方法間で1つ又は複数の要素の組合せを入れ換えたものを含む。
【符号の説明】
【0065】
70:デジタル無線機、71:シンボル値検出手段、72:部分判断手段、73:フレーム同期ワード検出手段、80:デジタル無線機制御方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム同期ワードのシンボル数をnとして、受信信号における直近n個のシンボルを並べた直近受信シンボル列の各シンボル値を検出するシンボル値検出手段、
前記直近受信シンボル列からm個(m<n)のシンボルを選択し選択シンボルとフレーム同期ワードの同一順番のシンボルとにより定義される部分一致性判断式に基づきフレーム同期ワードに対する前記直近受信シンボル列の部分一致性を判断する部分判断手段、及び
部分一致性無しとの判断に対して直近受信シンボル列はフレーム同期ワードではないと判断するフレーム同期ワード検出手段、
を備えることを特徴とするデジタル無線機。
【請求項2】
前記フレーム同期ワード検出手段は、部分一致性有りとの判断に対して直近受信シンボル列の全シンボルとフレーム同期ワードの全シンボルとにより定義される全体一致性判断式に基づきフレーム同期ワードに対する前記直近受信シンボル列の全体一致性を調べ、全体一致性が有れば、直近受信シンボル列はフレーム同期ワードであると判断することを特徴とする請求項1記載のデジタル無線機。
【請求項3】
前記全体一致性判断式は、選択シンボルとフレーム同期ワードの同一順番のシンボルとにより定義される第1の部分一致性判断式と、非選択シンボルとフレーム同期ワードの同一順番のシンボルとにより定義される第2の部分一致性判断式とから構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のデジタル無線機。
【請求項4】
前記フレーム同期ワード検出手段は、自身が前記第2の部分一致性判断式について計算して求めた計算値と、前記部分判断手段が前記第1の部分一致性判断式について計算して求めた計算値とを加算した加算値を前記全体一致性判断式の計算値とし、該加算値を所定の閾値と対比して、全体一致性を判断することを特徴とする請求項3記載のデジタル無線機。
【請求項5】
前記選択シンボルは、直近受信シンボル列において先頭から奇数番目又は偶数番目に配置されているシンボルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに1項に記載のデジタル無線機。
【請求項6】
フレーム同期ワードのシンボル数をnとして、受信信号における直近n個のシンボルを並べた直近受信シンボル列の各シンボル値を検出するシンボル値検出ステップ、
前記直近受信シンボル列からm個(m<n)のシンボルを選択し選択シンボルとフレーム同期ワードの同一順番のシンボルとにより定義される部分一致性判断式に基づきフレーム同期ワードに対する前記直近受信シンボル列の部分一致性を判断する部分判断ステップ、及び
前記部分一致性無しとの判断に対して直近受信シンボル列はフレーム同期ワードではないと判断するフレーム同期ワード検出ステップ、
を備えることを特徴とするデジタル無線機制御方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のデジタル無線機の各手段としてコンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−40847(P2011−40847A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184099(P2009−184099)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】