説明

デンドライト状銀粉

【課題】光反応性樹脂と組合わせて使用するのに適したものとして、隠蔽力の低い銀粉を提供する。
【解決手段】BET一点法で測定される比表面積が0.5〜4m2/gの銀粉であって、
電子顕微鏡観察(5000倍若しくは10000倍)による銀粉粒子形状が、棒状の主枝から棒状の分岐が伸長してなる針枝状、或いは該分岐の内、一部の分岐が途中で折れた針枝状を呈することを特徴とするデンドライト状銀粉を、隠蔽力の低い銀粉として提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に光反応性樹脂(例えば光硬化性樹脂等)と組合わせて使用するのに適したデンドライト状銀粉に関する。
【背景技術】
【0002】
銀粉を含有する導電性ペーストには様々なものが知られており、近年、例えばICカード、磁気カードなどの内層の遮光材、スクラッチカードの隠蔽部分の形成、各種セキュリティ印刷、微細回路などを形成するのに利用されている。中でも、銀粉と光硬化性樹脂とを含有する導電性ペーストは、例えばプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略称する)の前面基板など、微細回路を形成するための導電性ペーストとして着目されている。
【0003】
この種の銀粉、すなわち光硬化性樹脂と組合わせて使用する銀粉としては、例えば特許文献1において、平均粒径が0.05〜10μm、比表面積が0.01〜2.0m2/g
でデントライト状の銀粉粒子からなる銀粉が開示されている。
【0004】
また、導電性ペーストに用い得る銀粉として、特許文献2には、無電解湿式プロセスにより得られるデンドライト状の銀粉であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によるD10が3.0μm以下、D50が12.0μm以下、D90が18.0μm以下、Dmaxが44.0μm以下であるデンドライト状微粒銀粉が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−296755号公報 段落[0031]―[0032]など
【特許文献2】特開2005−146387号公報 請求項1など
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
銀粉と光反応性樹脂(例えば光硬化性樹脂等)とを組合わせて導電性ペーストを作製する場合、フィラーである銀粉によって光が遮蔽されると樹脂の反応不良(例えば硬化不良)を生じることがあるため、当該銀粉には、導電性のほかに光透過性が特に要求される。
【0007】
そこで本発明は、光反応性樹脂(例えば光硬化性樹脂等)と組合わせて使用するのに特に適したデンドライト状銀粉として、導電性ペーストを作成した際に光透過性に優れた、言い換えれば隠蔽力の低い銀粉を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題解決のため、本発明は、BET一点法で測定される比表面積が0.5〜4m2/gの銀粉であって、電子顕微鏡観察(5000倍若しくは10000倍)による銀粉
粒子形状が、棒状の主枝から棒状の分岐が伸長してなる針枝状、或いは該分岐の内、一部の分岐が途中で折れた針枝状を呈することを特徴とするデンドライト状銀粉を提案する。
【発明の効果】
【0009】
かかる範囲の比表面積を有し、且つ、かかる粒子形状からなる銀粉は、光透過性に優れているため、光反応性樹脂(例えば光硬化性樹脂等)と組合わせて導電性ペーストを作製すると、光硬化性に優れた導電性ペーストとすることができる。
よって、例えばICカード、磁気カードなどの内層の遮光材、スクラッチカードの隠蔽部分の形成、各種セキュリティ印刷、微細回路などの形成、さらには、プラズマディスプ
レイパネル(以下、PDPと略称する)の前面基板に精細な電極回路などの形成に用いる、光反応性樹脂(例えば光硬化性樹脂)を主体としてなる導電性ペーストの原料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳述するが、本発明の範囲が以下の実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、デンドライト状とは、主枝から枝部分が分岐して平面状或いは三次元的に成長してなる形状のものを包含する。
また、本明細書において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意であり、「好ましくはXより大きく、Yより小さい」の意を包含するものである。
【0011】
本実施形態に係る銀粉(以下「本銀粉」という)は、BET一点法で測定される比表面積が0.5〜4m2/gの銀粉であって、電子顕微鏡観察(5000倍若しくは1000
0倍)による銀粉粒子形状が、棒状の主枝から棒状の分岐が伸長してなる針枝状、或いは該分岐の内、一部の分岐が途中で折れた針枝状を呈することを特徴とするデンドライト状銀粉である。
【0012】
(銀粉粒子形状)
本銀粉の銀粉粒子は、電子顕微鏡観察(5000倍若しくは10000倍)による銀粉粒子形状が、デンドライト状の中でも、幅広の葉が伸びてなる樹葉状ではなく、棒状の主枝から棒状の分岐が適宜間隔を置いて伸長してなる針枝状、或いは該分岐の内、一部の分岐が途中で折れた形状を呈することを特徴とする。
例えば上記特許文献2の図1に示されたデンドライト状の銀粉粒子は、主枝から幅広の葉が伸びてなる樹葉状を呈している。また、デンドライト状と呼ばれるものの中には、多数の針状部が放射状に伸長してなる形状のものもある。しかし、本銀粉に主として含まれる銀粉粒子は、同じくデンドライト状を呈する銀粉粒子であっても、棒状の主枝から棒状の分岐が適宜間隔を置いて伸長してなる針枝状か、或いは前記分岐の内、一部の分岐が途中で折れた針枝状を呈するものであり、前記特許文献2のデンドライト状のものに比べ、隠蔽力が低く、光透過性に優れているという特徴を有する。
【0013】
なお、針枝状或いは該針枝状の分岐が途中で折れた針枝状ではない銀粉粒子を含んでいる銀粉を全て本発明の対象外とするものではない。針枝状或いは該針枝状の分岐が途中で折れた針枝状の銀粉粒子の作用効果を妨げない範囲であれば、他の形状の銀粉粒子を含んでいても構わない。その意味で、針枝状或いは該針枝状の分岐が途中で折れた針枝状の銀粉粒子が主成分粒子であればよく、全粒子の50%以上を占めることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上(100%含む)を占めるのがよい。
【0014】
(比表面積)
本銀粉のBET一点法で測定される比表面積は、0.5〜4m2/gであることが重要
である。0.5m2/g未満の場合、粒子径が大き過ぎるため、或いは、デンドライト粒
子の針枝状の度合いが足りないため、光透過性が不十分となる。他方、4m2/gよりも
大きいと、粒子径が小さ過ぎるため、或いは、デンドライト状粒子末端が微細化するため、ペースト化した際の分散性を阻害したり、ペースト粘度の上昇を招いたりする。このような観点から、0.5〜3.5m2/gであることがより好ましく、中でも0.6〜3.
0m2/gであることが特に好ましい。
【0015】
(中心粒径(D50))
本銀粉の中心粒径(D50)、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって
測定される体積累積粒径D50は、1μm〜20μmであることが好ましい。D50が20μmより大きいと、微細回路を形成するのが困難になり、1μmより小さいと、隠蔽力が大きくなり、光硬化性樹脂の硬化不良を促すことになる。このような観点から、特に2μm〜18μm、中でも特に3μm〜15μmであるのが好ましい。
【0016】
(タップ密度:TD)
本銀粉のタップ密度は、0.3〜3.0g/cm3であることが好ましい。銀粉粒子形
状がデンドライト状の場合、タップ密度が3.0g/cm3を超えることは通常はあり得
ない。他方、タップ密度が0.3g/cm3より小さくなると、吸油量が極端に高くなり
、ペースト作成時に高い導電性を得ることができなくなる。このような観点から、0.3〜1.5g/cm3であるのがより好ましく、中でも0.4〜1.0g/cm3であるのが好ましい。
【0017】
(見掛け密度:AD)
本銀粉の見掛け密度は、0.1〜1.0g/cm3であることが好ましい。見掛け密度
が1.0g/cm3より大きい場合、粒子径が大き過ぎるため、或いはデンドライト粒子
の針枝状の度合いが足りないため、光透過性が不十分となるおそれがある。また、見掛け密度が0.1g/cm3より小さい場合、粒子径が小さ過ぎるため、或いはデンドライド
状末端が微細化するため、ペースト化した際の分散性を阻害したり、ペースト粘度の上昇を招いたりするおそれがある。このような観点から、0.1〜0.8g/cm3であるの
がより好ましく、中でも0.2〜0.6g/cm3であるのが特に好ましい。
【0018】
(用途)
本銀粉の主成分粒子は、デンドライト状の銀粉粒子であるから、その形状異方性ゆえに導電性に優れている。しかも、デンドライト状の中でも、針枝状での銀粉粒子であるから、光透過性に特に優れている。
よって、本銀粉は、一般的な導電性ペーストの導電性フィラーとしても使用することは可能であるが、特に光反応性樹脂、例えば光硬化性樹脂と組合わせて導電性ペーストを作製すると、光反応性(例えば光硬化性)に優れた導電性ペーストとすることができる。
【0019】
(製造方法)
本銀粉は、例えば次のようにして製造することができる。但し、次に説明する製造方法に限定されるものではない。
【0020】
本銀粉は、銀アンミン錯塩水溶液、特に一座配位子錯塩である銀アンミン錯塩の水溶液(銀アンミン錯塩水溶液)を電解液に用いて電解して得ることができる。
一座配位子である銀アンミン錯塩は、二座配位子或いはそれ以上の多座配位子に比べて銀イオンとの結合力が弱く、立体障害も少ないため、錯体の中でも特に銀粉の電析に適している。
なお、本発明における「電解」とは、DSE電極を用いた電解採取、銀電極を用いた電解精製のどちらも包含するものである。
【0021】
銀アンミン錯塩水溶液の調製方法は、特に限定するものではない。例えば硝酸銀水溶液などの銀イオンを含む水溶液に、アンモニア或いはアンモニア水を加えて調製することもできるし、また、さらに硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩をさらに加えて調製することもできる。この際、アンモニウム塩はアンモニウムイオンの供給源となると共にpH緩衝剤として機能するため、アンモニア或いはアンモニア水の添加量を抑えることができ、電解液のpH調整を容易にすることができる。
【0022】
銀錯塩水溶液のpHは3〜11、特に4〜11、その中でも特に5〜10に調整するの
が好ましい。pHが3よりも低いときは、析出した粒子が溶解してしまい、形状が安定しない。また、pHが11を超える場合には、アンモニアガスが揮発し、悪臭を引き起こすばかりか、生成する粒子に差がないことより経済的でない。中でも特に銀錯塩水溶液のpHを5〜10の範囲に調整することにより、析出した微粒銀粉粒子が溶解(再溶解)することなくより一層安定して存在するため、形状及び大きさの点で品質がより一層安定した微粒銀粉を製造することができる。
【0023】
電解液中の銀濃度は、0.5g/L〜50g/L、特に1g/L〜30g/Lに調整するのが好ましい。0.5g/L未満になると、銀の析出速度が遅くなり、効率的に銀粉を得ることができない。また、50g/Lより多くなると、生成する銀粉粒子の形状が安定しなくなるため好ましくない。
【0024】
電解液中のNH3/Ag+は、モル比で2以上、中でも2〜20に調整するのが好ましい。2未満であると錯形成が不十分となり銀が沈殿するようになる。また、20より大きくなると不経済であり、アンモニアガスの悪臭により作業環境が悪化する可能性がある。
具体的には、例えば硝酸銀水溶液とアンモニア水、或いはさらに、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩とを、銀とNH3とのモル比が上記所定の範囲内になるように混合する
のが好ましい
【0025】
電解条件としては、電流密度は10〜1000A/m2が好ましく、より好ましくは3
0〜800A/m2であり、さらに好ましくは50〜500A/m2である。10A/m2
未満であると、銀の析出速度が遅くなり粒子が粗大化する。また1000A/m2より高
くなると、溶液内の温度が上昇し、銀粉の形状が安定しない。また、アンモニアもより揮発しやすくなり、ランニングコストもかさみ不経済である。
【0026】
極板上に析出した銀粉は適宜時間おきに掻き落し、極板から掻き落した銀粉は、濾過し、洗浄し、乾燥することにより、微粒銀粉を得ることができる。この際、濾過、洗浄および乾燥の方法は特に限定するものではなく、一般的な方法を採用すればよい。
【0027】
上記のようにして得られた銀粉に対して有機表面処理を施してもよい。銀粉粒子に有機表面処理を施すことにより、凝集性を抑制することができる。また、有機表面処理剤を適宜選択することにより、他材料との親和性をコントロールすることも可能となる。
この際、有機表面処理としては、例えば飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びシランカップリング剤等からなる皮膜を銀粉粒子表面に形成するようにすればよい。中でも、上記有機化合物のうち、オレイン酸、カプリン酸又はステアリン酸を用いて行なうのが好ましい。皮膜形成方法としては、例えば乾式法、湿式法等、公知の方法を採用すればよい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
<粒度測定>
銀粉を少量ビーカーに取り、3%トリトンX溶液(関東化学製)を2、3滴添加し、粉末になじませてから、0.1%SNディスパーサント41溶液(サンノプコ製)50mLを添加し、その後、超音波分散器TIPφ20(日本精機製作所製、OUTPUT:8、TUNING:5)を用いて2分間分散処理して測定用サンプルを調製した。
この測定用サンプルを、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置MT3300 (日機装製)を用いて体積累積粒径D50を測定した。
【0030】
<比表面積の測定>
比表面積は、ユアサアイオニクス社製モノソーブにて、BET一点法で測定した。
【0031】
<タップ密度(TD)測定>
銀粉のタップ密度(g/cm3 )は、試料200gを用いてパウダーテスターPT−E型(ホソカワミクロン製)により測定した。
【0032】
<見掛け密度(AD)測定>
銀粉の見掛け密度(g/cm3)は、JIS K−5101に準拠して蔵持科学器械製
作所製カサ比重測定器を使用して測定した。
【0033】
(実施例1)
0.8Lの純水に硝酸銀12.6gを溶解し、25%アンモニア水を24mL、さらに硫酸アンモニウムを40g添加し、銀アンミン錯塩水溶液を調製した(銀濃度10g/L、NH3/Ag+モル比12、20℃、pH9.4)。
この銀アンミン錯塩水溶液を電解液とし、陽極、陰極共にDSE極板を使用し、電流密度200A/m2、溶液温度20℃で電解し、適当な間隔をおいてスクレーパにより電析
した銀粉粒子を極板から掻き落し、1時間電解した。
その後、掻き落して得られた銀粉粒子を含むスラリーをヌッチェでろ過し、純水、さらにアルコール洗浄を行い、70℃×12時間、大気雰囲気下で乾燥させ、針枝状銀粉を得た。
【0034】
得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM)観察像を図1及び図2に示した。また、得られた銀粉について測定した比表面積、見掛け密度(AD)、タップ密度(TD)、及びレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いた中心粒径D50を表1に示した。
【0035】
(実施例2)
0.8Lの純水に硝酸銀1.26gを溶解し、25%アンモニア水を24mL、さらに硫酸アンモニウムを4g添加し、銀アンミン錯塩水溶液を調製した(銀濃度1g/L、NH3/Ag+モル比12、20℃、pH9.4)。
この銀アンミン錯塩水溶液を電解液とし、陽極、陰極共にDSE極板を使用し、電流密度200A/m2、溶液温度20℃で電解し、実施例1同様に電析した銀粉粒子を極板か
ら掻き落し、1時間電解した。
その後、掻き落して得られた銀粉粒子を含むスラリーをヌッチェでろ過し、純水、さらにアルコール洗浄を行い、70℃×12時間、大気雰囲気下で乾燥させ、針枝状銀粉を得た。
【0036】
得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM)観察像を図3及び図4に示した。また、得られた銀粉について測定した比表面積、見掛け密度(AD)、タップ密度(TD)、及びレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いた中心粒径D50を表1に示した。
【0037】
(実施例3)
0.8Lの純水に硝酸銀1.26gを溶解し、25%アンモニア水を24mL、さらに硫酸アンモニウムを4g添加し、銀アンミン錯塩水溶液を調製した(銀濃度1g/L、NH3/Ag+モル比12、20℃、pH9.4)。
この銀アンミン錯塩水溶液を電解液とし、陽極、陰極共にDSE極板を使用し、電流密度1000A/m2、溶液温度20℃で電解し、実施例1同様に電析した銀粉粒子を極板
から掻き落し、1時間電解した。
その後、掻き落して得られた銀粉粒子を含むスラリーをヌッチェでろ過し、純水、さらにアルコール洗浄を行い、70℃×12時間、大気雰囲気下で乾燥させ、針枝状銀粉を得
た。
【0038】
得られた銀粉について測定した粉体特性を比表面積、見掛け密度(AD)、タップ密度(TD)、及びレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いた中心粒径D50を表1に示
した。
【0039】
(実施例4)
0.8Lの純水に硝酸銀12.6gを溶解し、25%アンモニア水を24mL、さらに硫酸アンモニウムを40g添加し、銀アンミン錯塩水溶液を調製した(銀濃度10g/L、NH3/Ag+モル比12、20℃、pH9.4)。
この銀アンミン錯塩水溶液を電解液とし、陽極、陰極共にDSE極板を使用し、電流密度200A/m2、溶液温度20℃で電解し、実施例1と同様に電析した銀粉
粒子を極板から掻き落し、1時間電解した。
その後、掻き落して得られた銀粉粒子を含むスラリーをヌッチェでろ過し、純水、さらにアルコール洗浄を行い、70℃×12時間、大気雰囲気下で乾燥させ、針枝状銀粉を得た。
【0040】
得られた銀粉3gを、0.003gのステアリン酸(:有機表面処理剤)を含んだアセトン50mL中に投入し、超音波分散器(日本精機製作所製:TIPφ20、OUTPUT:8、TUNING:5)を用いて2分間分散処理した後、ヌッチェでろ過し、アセトン洗浄を行い、70℃×12時間、大気雰囲気下で乾燥させ、針枝状銀粉(正確には、針枝状の分枝が途中で折れた形状の銀粉粒子からなる銀粉)を得た。
【0041】
得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM)観察像を図5及び図6に示した。また、得られた銀粉について測定した比表面積、見掛け密度(AD)、タップ密度(TD)、及びレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いた中心粒径D50を表1に示した。
【0042】
(比較例1)
0.2Lの純水に硝酸銀100gを溶解して硝酸銀溶液を調製した。また、182.6gのL−アスコルビン酸(3.5当量に相当)を1Lの純水に溶解してL−アスコルビン酸水溶液を調製した。
上記硝酸銀溶液を攪拌しつつ、L−アスコルビン酸水溶液を一度に添加した後、3分間攪拌を行なって樹葉状銀粉粒子を生成させた。その後、得られた樹葉状銀粉粒子を含むスラリーをヌッチェでろ過し、純水、さらにアルコールで洗浄を行い、70℃×12時間、大気雰囲気下で乾燥させ、樹葉状銀粉を得た。
【0043】
得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM)観察像を図7及び図8に示した。また、得られた銀粉について測定した比表面積、見掛け密度(AD)、タップ密度(TD)、及びレーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いた中心粒径D50を表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1〜3の銀粉粒子のほとんど(90%以上)は、走査型電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍或いは10000倍)観察像でみると、棒状の主枝から棒状の分岐が適宜間隔を置いて伸長してなる針枝状であることが確認された。
また、実施例4の銀粉粒子のほとんど(90%以上)は、走査型電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)観察像でみると、前記針枝状の分岐が途中で折れた形状を呈するものであることが確認された。
これに対し、比較例1の銀粉粒子は、走査型電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)観察像でみると、樹葉状を呈し、針枝状とは区別できることが確認された。
【0046】
<隠蔽力の評価>
実施例1及び比較例1で得られた銀粉5gとバインダー樹脂(エチルセルロース)8gを混合してペーストを作製した。
JIS K−5101に準じて、JIS規定の隠蔽力試験紙(174mm×1444mm)上に前記ペースト1.2gを置き、両者が接するように引き伸ばして展色して測定サンプルとした。
色彩色差計(CR−400、コニカミノルタ社製)により、測定サンプルの白面上及び黒面上の明度(L値)を測定し、これらの差(ΔL)を明度差として隠蔽力を評価した。この明度差の値が大きいもの程、隠蔽力が小さいものと評価することができる。
【0047】
【表2】

【0048】
実施例1及び比較例1で得られた銀粉の隠蔽力を比べると、実施例1で得られた銀粉の隠蔽力は有意に小さかった。つまり、光透明性に優れていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1で得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)観察像である。
【図2】実施例1で得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM、倍率1000倍)観察像である。
【図3】実施例2で得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM、倍率10000倍)観察像である。
【図4】実施例2で得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM、倍率1000倍)観察像である。
【図5】実施例4で得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)観察像である。
【図6】実施例4で得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM、倍率1000倍)観察像である。
【図7】比較例1で得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM、倍率5000倍)観察像である。
【図8】比較例1で得られた銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM、倍率1000倍)観察像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET一点法で測定される比表面積が0.5〜4m2/gの銀粉であって、
電子顕微鏡観察(5000倍若しくは10000倍)による銀粉粒子形状が、棒状の主枝から棒状の分岐が伸長してなる針枝状、或いは該分岐の内、一部の分岐が途中で折れた針枝状を呈することを特徴とするデンドライト状銀粉。
【請求項2】
銀アンミン錯塩水溶液を電解液に用いて電解して得られる請求項1に記載のデンドライト状銀粉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−291499(P2007−291499A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49107(P2007−49107)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】