説明

デンプンの凝集

本発明は、デンプンを凝集する為の方法、該方法により得られたデンプン、該デンプンを含む食品製品、及び該デンプンの使用方法に向けられる。本発明の方法は、デンプンを、塩を含む水性溶液と混合すること、及び該混合物を乾燥することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンプンを凝集する為の方法に、該方法により得られたデンプンに、該デンプンを含む食品製品に、及び該デンプンの使用方法に向けられる。
【背景技術】
【0002】
デンプン及びデンプン誘導体は、広くさまざまな食品製品、例えばベーカリークリーム、インスタントヌードル、スープ、ドライミックス、肉など、において採用される多機能成分である。デンプンは通常、栄養価を高める為に、味を改善する為に及び/又は該製品に望ましい粘度及びテクスチャーを与える為に加えられる。
【0003】
デンプン及びその誘導体の食品製品における適用は、決して容易ではない。その問題の一つは、いわゆるランピング(lumping)である。デンプン成分の一部が処理においてくっつき、これがランプ(継粉、lump)を生じる。これらのランプは同様に、末端消費者によって、不愉快なもの及び望ましくないものとして理解されている。他の問題は、デンプンとの他の乾燥成分、例えば塩、スパイス、ハーブなど、とのあり得る偏析(demixing)である。デンプンの流動性において、さらなる問題が、パッケージングから、そしてより重要には工場のサイロから、該材料を配量する(dosing)場合に直面される。
【0004】
これらの問題の一部は、デンプン又はその誘導体を凝集することにより解決されうる。
【0005】
欧州特許出願公開第1 166 645号明細書は、糖、マルトデキストリン又は冷可溶性デンプンを用いた、凝集したデンプン製品の調製を記載する。該凝集デンプン製品におけるマルトデキストリンのランダムな分布が、ランピング問題を回避すると言われている。該製品は自由に流動し、これが該食品系への添加(dosing)を楽にする。しかしながら、この方法は、デンプンと高密度を有する成分、例えば塩など、との偏析を回避しない。加えて、マルトデキストリン又は冷可溶性デンプンの添加の故に、粘度が著しく増加する。
【0006】
米国特許第7 186 293号明細書は、天然デンプン及び予め圧縮されたデンプンパウダーを含む混合物を流動化することそして該流動化した混合物上に予め圧縮されたデンプンパウダーを含むスラリーをスプレーすることによる、又は予め圧縮されたデンプンパウダーと天然デンプンとの水性スラリーを作ること続いて該スラリーをスプレードライすることによる、凝集したデンプン組成物の調製を記載する。得られた凝集したデンプンは、改善した流動性を有すると言われている。しかしながら、この方法は、最初に予め圧縮されたデンプンパウダーを調製する追加工程を要求する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、凝集したデンプンを調製する為の簡単な方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、処理の間のランプの形成を回避し又は少なくとも減少する、凝集したデンプンを調製する為の方法を提供することである。
【0009】
さらに、本発明のさらなる目的は、凝集したデンプンを調製する為の方法であって、これが他の乾燥成分との偏析及び/又は分離をせず、又はより少ない程度でだけ偏析及び/又は分離をする、上記方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、増加した流動性を有する凝集したデンプンを調製する為の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、これらの目的の1以上が、デンプンが塩により凝集される方法の提供により満たされうることを発見した。
【0012】
従って、第一の局面において、本発明は、凝集したデンプンを調製する為の方法であって、
デンプンを塩及び水と混合すること;及び
該混合物を乾燥すること
を含む上記方法に向けられる。
【0013】
理論にとらわれることを望まないで、本発明者らは、混合及び乾燥の後に、脱水した塩が、該デンプン顆粒に結合する結晶を形成すると考える。該塩結晶は、該塩が結合する一つのデンプン顆粒のまわりに層を形成する。この様式で、デンプン/塩の凝集物が形成されうる。水が、そのような凝集したデンプンに施与されたときに、該塩は、該デンプンを適切に溶解することにおいて助ける。
【発明の効果】
【0014】
本発明のデンプン凝集物は塩気のある食品製品、例えばインスタントスープ及び肉など、において有利に適用されうる。これらの利点は、該デンプン凝集物がランプ無しで溶解すること、並びに、該塩及び該デンプンが偏析せず又はほとんど偏析せずそしてエンドユーザが該凝集したデンプン/塩混合物を1回で(in one go)用いることができ、より少ない誤り及びより少ない貯蔵コストをもたらすことを含む。加えて、該製品は自由流動性である。
【0015】
本発明の凝集したデンプンの適用は非常に便利である。例えば、多くの場合、スープは塩味を有する。スープ配合物を調製するとき、それ故に、塩の添加はしばしば必要な工程である。しかしながら、もしデンプンと塩とがちょうど混合されるならば、均一な混合物を得ることは困難である。なぜなら、パッキングの間に、デンプン、塩及び他の成分が、これら成分の異なる密度に起因して分離するからである。該凝集したデンプンの添加は、先行技術のこの不利点を打破する。
【0016】
本発明者らは、塩を用いたデンプンの凝集を記載する先行文献を何も知らない。特開昭59−066858号公報は、KCl又はKCl及びNaClの混合物と、カルボキシメチルセルロース又は可溶性デンプンなどのバインダーとの造粒を記載する。そのような造粒は、該塩の凝集を防ぐといわれている。この日本の特許出願における該デンプンは、塩組成物の造粒を提供するのに役立つだけである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】モチ性ジャガイモデンプンの糊化挙動を示すグラフである。
【図2】加工デンプンの糊化挙動を示すグラフである。
【図3】飽和NaCl溶液をスプレーされた試料を示す写真である。
【図4】実施例2の試料の顕微鏡写真である。
【図5】試料2及び3の凝集デンプンの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
デンプンは、種子仁、茎、根及び塊茎に蓄えられる予備の炭水化物である。デンプンは通常、2つの成分からなる:アミロースと呼ばれる線状α(1−4)D−グルカンポリマー(分枝が低レベルで見られる)及びアミロペクチンと呼ばれる緻密に分枝したα(1−4及び1−6)D−グルカンポリマー。
【0019】
本発明の方法の為に、天然デンプン並びにそれらの誘導体が用いられうる。デンプンは適当に、根、塊茎、穀類、マメに由来しうるか、又は他の植物から分離されうる。デンプンは例えば、トウモロコシ、オオムギ、コムギ、コメ、ライコムギ、キビ、タピオカ、クズウコン、バナナ、ジャガイモ、サツマイモ、マメ、サゴなどに由来しうる。それらの高い粘度の故に、ジャガイモデンプン及びその誘導体が好ましい。
【0020】
特定の実施態様の故に、高アミロースデンプン(30%超のアミロース含有量)、例えばアミロトウモロコシデンプン、リョクトウ(mung bean)デンプン、エンドウマメデンプン(pea starches)、高アミロースジャガイモデンプン、又はそれらの組み合わせが用いられる。これらの高アミロースデンプンは、天然のプロセスを通じてアミロースを優先的に生産する植物から得られてよいが、植物を遺伝子的に改変することにより得られてもよい。
【0021】
さらなる実施態様において、いわゆるモチ性(waxy)デンプンが用いられる。これらのデンプンは、93重量%超のアミロペクチンからなる。本発明において用いられうるモチ性デンプンのよく知られた例は、モチ性トウモロコシデンプン、モチ性コムギデンプン、モチ性オオムギデンプン、モチ性ソルガムデンプン、モチ性コメデンプン、モチ性ジャガイモデンプン、及びモチ性タピオカデンプンである。これらの高アミロペクチンデンプンは、天然のプロセスを通じてアミロペクチンを優先的に生産する植物から得られてよいが、植物を遺伝子的に改変することにより得られてもよい。
【0022】
デンプン誘導体も本発明において用いられうる。当業者は誘導体化の多くの方法を知っている(O.B.Wurzburg(Ed.),“Modified Starches:Properties and Uses”,CRC Press Inc.,Boca Eaton,Florida,1986)。誘導体は例えば、化学的に加工されたデンプン、再糊化(regelatinised)デンプンを含む物理的に加工されたデンプン、酵素的に加工されたデンプン、及び生物工学的に加工されたデンプンを含む。誘導体化の例は、架橋、酵素的分解、酸分解、酸化、エーテル化、エステル化、ドライロースト(dry roasting)、及びデキストリン化を含む。
【0023】
物理的処理はデンプンに種々の機能性も与えうる。ドラム乾燥、スプレー調理及び押し出しは、デンプンを冷水可溶性にするであろう。特別な物理的処理が、欧州特許第0 804 488号明細書に記載されている。乾燥加熱処理において、デンプンは物理的に架橋され、すなわち化学物質を添加することなく化学的に架橋されたデンプンの製品特性を与える(サーマルインヒビション(thermal inhibition))。あるいは、欧州特許第0 436 208号明細書に記載されているとおり、ジャガイモ及びバナナのデンプンが、より高い水分レベルで加熱されて(ヒートモイスチャー処理)、架橋された性能を有する製品を作る。本発明は、これらの誘導体化技術を用いて調製されうる全てのデンプン誘導体に関する。
【0024】
本出願において言及されたデンプンは、単独で又は組み合わせて用いられうる。
【0025】
本発明の方法に従い、該塩は溶液の形で用意される。原理上、いずれの塩も用いられうるが、食品製品における適用の為に、該塩は好ましくはNaClであるが、任意の他の食用の塩、例えばKI、KCl、CaSO、KSO、CaCl、MgCl、CaI又はそれらの混合物も用いられうる。該塩溶液の濃度は、0.1%から飽和した塩溶液まででありうる。しかしながら、さらにより高い塩濃度、例えば過飽和塩溶液など、を用いることも可能である。好ましくは、該塩濃度は、少なくとも1%、より好ましくは少なくとも10%である。非常に好ましい実施態様において、飽和した塩溶液が適用される。
【0026】
該デンプンと該塩及び水の混合は、慣用のミキサーにおいて実施されうる。典型的には該混合は、数分間、好ましくは3〜10分間実施される。混合の間の温度は55℃より低くてよく、例えば0〜55℃でありうる。通常は、該混合は、室温で行われる。該3つの成分が該ミキサーに添加される順序はさほど重要ではない。原理上、あり得るいかなる順序を選択することができ、該3つの成分を同時に添加すること、最初に該デンプンと該塩とを混合しそして次に水を添加すること、最初に該デンプンと水とを混合しそして次に塩を添加すること、最初に該塩と水とを混合しそして次にデンプンを添加することを含む。好ましい順序は、該塩を水に溶解して塩溶液を形成しそして次に該デンプンを添加することである。
【0027】
好ましい実施態様に従い、該混合は、該塩を含む水性溶液を該デンプン顆粒上にスプレーすることにより実施される。該デンプン顆粒は好ましくは乾燥しているが、最大で30%の水分含量を有しうる。
【0028】
さらなる実施態様に従い、湿ったデンプン(例えばバキューム脱水(vacuum dehydration)の生産ラインから新鮮に抜き出された)が、塩溶液と又は細かい塩パウダーと混合される。
【0029】
さらなる実施態様に従い、デンプン懸濁物が乾燥した塩と混合される。
【0030】
次に、デンプン、塩及び水の混合物が乾燥され、それにより該デンプン凝集物を産する。
【0031】
水性塩溶液が適用される場合、混合の間のデンプン対塩溶液の重量比は、該塩溶液の濃度に依存して、1:0.1〜1:0.7でありうる。飽和した塩溶液の場合、デンプンと塩溶液と間の重量比は好ましくは、1:0.3〜1:0.5である。デンプンと塩溶液との間の重量比が、1:0.1よりも低いならば、該塩溶液中に該デンプン顆粒の均一な分布を達成することは困難である。
【0032】
本発明の特別な実施態様において、該デンプンは糖とも混合される。糖は該デンプンと結合する能力も有し、その結果該デンプンの凝集が増加される。やはり、成分が該ミキサーに添加される順序はさほど重要でない。原理上、あり得るいかなる順序を選択することができる。例えば、該デンプンが最初に該塩及び該水と混合されて、そしてその後該糖と混合されうる。該デンプンはまた、最初に該糖及び該水と混合され、そしてその後該塩と混合されうる。該塩及び糖が最初に該水に溶解され、その後この溶液が該デンプンと混合されることも可能である。他の実施態様において、全ての成分が同時に該ミキサーに添加される。好ましい順序は、該塩と糖を水中に溶解して溶液を形成し、そして次に該デンプンを添加することである。
【0033】
任意の糖が用いられてよく、例えばグルコース、フルクトース、デキストロース、ガラクトース、マンノース、スクロース、ラクトース及び/又はマルトースなどが用いられてよい。
【0034】
他の水溶性成分、例えばマルトデキストリン又は冷可溶性デンプンなど、もまた該デンプンと混合されうる。これらの水溶性成分は該デンプンの凝集を助ける。
【0035】
混合後、該混合された組成物が乾燥される。該乾燥は、オーブン、フラッシュドライヤー、流動床ドライヤー、スプレードライヤー、スプレー調理器、バキュームドライヤー、電子レンジ、真空フリーズドライヤー、気体によるドライヤー、高められた温度のゼオライトによる乾燥を用いて、又は空気中での乾燥により、実施されうる。これらの乾燥技術の組み合わせもまた、本発明の方法に含まれる。当業者は、所望の特性、例えば分散性及び/又は粒子サイズなど、を有する製品を得る為に、所定のドライヤー、例えばスプレードライヤー又は流動床ドライヤーなど、を操作することができる。
【0036】
好ましくは、乾燥の間の該デンプンの温度は、60℃を超えず、より好ましくは50℃を超えない。より高い温度は、該デンプンにとって有害でありうる。該凝集したデンプンは典型的には、30%より少ない、好ましくは25%より少ない、より好ましくは20%より少ない、さらにより好ましくは10%より少ない水分含有量へと乾燥される。
【0037】
該分散性及び/又は該粒子サイズを最適化する為に、該乾燥したデンプン凝集物は、任意的な粉砕工程に、好ましくは乾燥後に、付されてもよい。粉砕は例えば、該乾燥したデンプンを、200〜2000μmの穴を有するメッシュふるいを通すことにより実施されうる。
【0038】
本発明者らはさらに、加工されたデンプン、例えばアセチル化デンプン、酸化及び/又はヒドロキシプロピル化デンプンなど、が、該デンプンを異なる種類のデンプン(例えば天然デンプン又は誘導体)と混合することそして次に該混合物を塩溶液により濡らすことにより或る程度に糊化されうることを発見した。これは天然デンプンを塩溶液により濡らすこと(これは糊化したデンプンを産しない)と対照的である。理論にとらわれることを望まないで、本発明者らは、塩溶液により濡らすことは、該加工デンプンが糊化すること(又は部分的に糊化すること)及び凝集にとっての該デンプン混合物におけるバインダーとして役割を果たすことを引き起こすと考えている。本発明者らは驚くべきことに、この実施態様が、さらにより良く溶解するデンプン凝集物を結果すること及び従ってさらにより低いランピングの程度を結果することを発見した。
【0039】
該加工デンプンは、乾燥重量に基づき、0.5〜70%の量で該天然デンプンと混合されうる。該濡らすことは例えば、スプレーすること若しくは浸すこと又は同様のことを含みうる。塩溶液対デンプン混合物の比は、0.4:1、好ましくは0.6:1でありうる。適当には、飽和した塩溶液が適用されうる。乾燥後、デンプン混合物と塩との凝集物が得られる。
【0040】
さらなる局面において、本発明は、本発明の方法により得られるデンプン凝集物に向けられる。本発明の方法に従い、実質的に全てのデンプン顆粒が塩により覆われているデンプン凝集物が得られる。該塩は、該凝集したデンプン顆粒の間に存在するだけでなく、該デンプン顆粒の細かい孔/トンネルの内側にも存在する。結果として、水は容易に該デンプン中に均一な様式で浸透し、そしてそれによりランプ形成を減少し又は防ぎさえする。
【0041】
得られたデンプン凝集物は、種々の食品製品において適用されうる。さらなる局面において、それ故に、本発明は、本発明のデンプン凝集物を用いて食品製品を調製する為の方法に向けられる。
【0042】
さらに他の局面において、本発明は、本発明のデンプン凝集物を含む食品製品に向けられる。
【0043】
本発明のデンプン凝集物が含まれうる食品製品は例えば、インスタントスープ、スープ、グレイビー、シーズニング、フレーバーキャリア、インスタントカスタード、飲料、プレミックス粉、ベーカリー製品、肉製品、ソース及びソースバインダー、ヌードル調製物、スナック、塩気のあるビスケット、並びにインスタント食品を含む。本発明のデンプン凝集物は、調理済み食品(ready meal)、缶入りスープ、乳製品などの製造においても適用されうる。この要約は、適用の分野を限定することを意図されたものでなくむしろ、いくつかの例を言及することを意図されたものである。
【0044】
他の局面において、本発明は、本発明のデンプン凝集物を増粘剤(viscosifier)として使用する方法に向けられる。該デンプン凝集物は適当には、製品に所望の粘度を備える為の増粘剤として用いられうる。
【0045】
本発明は今、以下の非限定的な実施例により、さらに説明されるであろう。
【実施例1】
【0046】
材料
用いられたデンプンは、一般的なジャガイモデンプン、アミロペクチンジャガイモデンプン及びそれらの誘導体であった。Eliane 100は天然のモチ性ジャガイモデンプンであり、そしてPerfectamyl ACはアセチルかジャガイモデンプンである。該デンプン及び誘導体はAVEBEから得られた。本実施例において用いられた塩及び糖は標準的な食卓塩(NaCl)及び標準的なテーブルシュガー(ショ糖)であった。
【0047】
方法
ランピングは、ビーカー中の2g(乾燥ベース)のデンプンへと、100mlの熱水(95℃)を、1分間穏やかに攪拌しながら注ぐことにより測定された。次に、該溶液が80メッシュのふるいを通された。残留物が該ふるい上に集められ、そして乾燥された。ランピング(%)は、以下の等式に従い計算された。
ランピング(%)=残留物(db(乾燥ベース)、g)×100%/2(g)
モデルスープの粘度が、Brabender Viscograph Eを用いて測定された(5重量%のデンプン濃度、トルク700cmg)。
【0048】
凝集
該デンプンは、ほとんど飽和した塩溶液と、スプレーすること及び混合することにより混合された。次に、該混合物がオーブン中で約50℃で、該デンプンの水分含有量が20%未満になるまで乾燥された。該乾燥デンプンは、500μmの孔を有するメッシュふるいにそれを通すことにより穏やかに粉砕された。次に、該デンプンが封されたバッグ中にパックされた。
【0049】
結果が表1に要約される。
【0050】
【表1】

【0051】
凝集後、糊化温度はわずかに上がる。凝集したデンプンのピーク粘度は下がり、一方で、最終粘度は大きな違いを示さない。
【0052】
図1は、塩と凝集したモチ性ジャガイモデンプンに対するモチ性ジャガイモデンプン(Eliane 100)の糊化挙動(pasting behaviour)を示す。図2は、塩と凝集した天然ジャガイモデンプンに対する加工ジャガイモデンプン(Perfectamyl AC)の糊化挙動を示す。灰色の線は、加熱及び冷却の際の粘度発達を示す。
【実施例2】
【0053】
2つのインスタントスープが、以下の成分を用いて調製された。

【0054】
200mlの熱水(>90℃)が、該乾燥した混合された粉へと、穏やかに攪拌しながら注がれた。両方の場合において、該スープの均一な構造が、視覚上のランピング発生無く、得られた。
【実施例3】
【0055】
以下の3つの試料が調製されそして評価された。
試料1:1000gの天然ジャガイモデンプンが、460mlの飽和したNaCl溶液をスプレーされた。
試料2:950g(95重量%)の天然ジャガイモデンプンが、AVEBEから入手された50g(5重量%)のPerfectamyl AC(アセチル化ジャガイモデンプン)とよく混合された。該デンプン混合物は、500mlの飽和したNaCl溶液をスプレーされた。
試料3:970g(97重量%)の天然ジャガイモデンプンが、AVEBEから入手された30g(3重量%)のPerfectamyl A3108(酸化ジャガイモデンプン)とよく混合された。該デンプン混合物は、520mlの飽和したNaCl溶液をスプレーされた。
【0056】
飽和したNaCl溶液によりスプレーされた試料の写真が図3に示される(3A:天然ジャガイモデンプン;3B:Perfectamyl AC;3C:Perfectamyl A3108)。図4は、種々の試料の顕微鏡写真を示す(4A:天然ジャガイモデンプン;4B:Perfectamyl AC;4C:Perfectamyl A3108)。図1及び図2は、試料2及び3がある程度に糊化された一方で、試料1のデンプンは糊化しなかったことを、明白に実証する。
【0057】
スプレー後、それぞれの試料のデンプン混合物が、No.30−メッシュふるい(595μmの孔)を通じて押出され、そして次に、該デンプン混合物が18%より低い水分含有量を有するまで40℃で空気乾燥された。
【0058】
試料2及び3の最終的な凝集したデンプンが図5Aに示される(5A:天然ジャガイモデンプンとPerfectamyl ACとの混合物;5B:天然ジャガイモデンプンとPerfectamyl A3108との混合物)。
【0059】
糊化温度(the gelatinisation temperature)とピーク粘度温度とが、Brabender Viscographにより測定され、そして、結果が表1に示される。凝集の主な目的は、熱水の溶液(例えばインスタントスープなど)に調製されたときに、デンプン又はデンプン製品のランピング問題を回避し又は減少することである。ランピングは、1分間穏やかに攪拌しながら、2g(乾燥ベース)のデンプンを穏やかにビーカー中の100mlの熱水(95℃)へと注ぐことにより測定された。次に、該溶液が80メッシュふるい(180μmの孔)を通された。残留物が該ふるい上に集められ、そして乾燥された。ランピング(%)は以下の等式に従い計算された。

結果が表2に示される。
【0060】
【表2】

【0061】
凝集したデンプンさえ、なおもランピングを完全に回避することはできないことが分かった(ランピング割合は4.7%である、一方で凝集していない通常のデンプンのランピング割合は40%超である)。天然ジャガイモデンプンと加工デンプン(Perfectamyl A3108)との混合物は、しかしながら、ランピングを何も結果しなかった。
【0062】
該凝集した混合物の糊化温度は、Granamyl P13のそれよりもわずかに高く、そして、該時間差は、Granamyl P13のそれよりもはるかに高い。これは、該凝集したデンプン混合物が、水を吸収してゆっくりと膨らみそして糊化するであろうこと、これが外側のデンプンが迅速すぎる糊化をすることを回避するであろうことを示す。該外側のデンプンの迅速な糊化は、内側を補足し(encapture)、そして、内側のデンプンが糊化の為の水を吸収するのを妨げるであろう。これが、なぜ、該凝集した混合物がランピングをより良く回避できるかの理由でありうる。
【実施例4】
【0063】
種々のデンプン凝集物(天然デンプン、化学的に加工されたデンプン、物理的に加工されたデンプン、及び再糊化されたデンプン)のランピング割合が試験された。該デンプン凝集物は、NaClの飽和溶液を用いて調製された。結果が表3に示される。
【0064】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンと塩及び水とを混合すること;及び
該混合物を乾燥すること
を含む、凝集したデンプンの調製の為の方法。
【請求項2】
該デンプンがさらに糖と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該デンプン及び水が水性デンプン懸濁物の形で用意される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該塩及び水が該塩を含む水性溶液の形で用意される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
該水性溶液が、少なくとも1%、より好ましくは少なくとも10%の塩濃度を有し、及び最も好ましくは飽和した塩溶液である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
該混合が、塩を含む該水性溶液を該デンプン上にスプレーすることを含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
該乾燥された混合物が粉砕される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該乾燥が、オーブン、フラッシュドライヤー、流動床ドライヤー、スプレードライヤー、スプレー調理器、バキュームドライヤー、電子レンジ、バキューム凍結ドライヤー、気体によるドライヤー、高められた温度のゼオライトによる乾燥、又は空気中での乾燥の使用を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該塩がNaClである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該デンプンが、トウモロコシデンプン、オオムギデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ライコムギデンプン、キビデンプン、タピオカデンプン、クズウコンデンプン、バナナデンプン、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、サゴデンプン、リョクトウデンプン、及びマメデンプンからなる群から選ばれる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
該デンプンが、デンプン誘導体、例えば架橋したデンプン、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、ドライローストしたデンプン、又はデキストリン化したデンプン、である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該デンプンが、加工デンプン、例えばアセチル化デンプン、酸化デンプン及び/又はヒドロキシプロピル化デンプン、と、異なる種類のデンプン、例えば天然デンプン又は誘導体化デンプン、とを含むデンプン混合物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
該デンプン混合物中の加工デンプンの量が、乾燥重量に基づき0.5〜70%である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法により得られた凝集したデンプン。
【請求項15】
請求項14に記載の凝集したデンプンを含む食品製品。
【請求項16】
請求項14に記載の凝集したデンプンを使用することを含む、食品製品の調製の方法。
【請求項17】
請求項16の方法に従い得られた食品製品。
【請求項18】
インスタントスープ、スープ、グレイビー、シーズニング、フレーバーキャリア、インスタントカスタード、飲料、プレミックス粉、ベーカリー製品、肉製品、ソース、ソースバインダー、ヌードル調製物、スナック、塩気のあるビスケット、又はインスタント食品の形にある、請求項15又は17に記載の食品製品。
【請求項19】
請求項14に記載の凝集したデンプンを増粘剤として使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2011−505828(P2011−505828A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537882(P2010−537882)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050789
【国際公開番号】WO2009/075575
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(510160993)
【Fターム(参考)】