説明

データを伝送する方法、通信システム、および受信装置

【課題】非常に限られた数の受信パイロットシンボルに基づいて、チャネル応答推定を略瞬時に行うことができ、したがってデータパケット伝送に適した伝送方法を提供する。
【解決手段】本発明は、通信チャネルCH1、…、CHNを通して複数の搬送信号Cs、…、Csによってデータを伝送する方法に関し、方法は、前記搬送信号の1つに対する上記通信チャネルの各応答を表すチャネルパラメータhs(ここで、n=1〜N)を計算することを含む。本発明による方法は、予備推定値hp(ここで、i=1〜N)を生成する予備推定ステップと、相関パラメータの平均値を計算することによって予備推定値hpを改良する二次推定ステップとを含み、平均値は、少なくとも2つの異なる搬送信号にわたって計算される。本発明は、異なるチャネルに関連して生成された情報を一緒にプールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの通信チャネルを通して複数の搬送信号によりデータを伝送する方法に関し、この方法は、上記搬送信号の1つに対する上記通信チャネルの各応答を表すチャネルパラメータの計算を含み、上記方法は、チャネルパラメータの予備推定値が生成される予備推定ステップ、および予備推定ステップ中に生成された予備推定値が改良(refine)される二次推定ステップを含む。
【背景技術】
【0002】
このような伝送方法は、MC−CDMA(「マルチキャリア符号分割多元接続」、MultiCarrier-Code Division Multiple Accessを表す)通信システムにおいて使用されることが多い。MC−CDMA通信システムにおいて、任意の所与の受信機が最適に動作するには、上記受信機が入力情報シンボルを認識することが可能なように、チャネル周波数応答についての正確な事前知識が必要である。通常、チャネルパラメータの予備推定値が、各搬送信号により伝送され、受信機にとって既知であるパイロットシンボルの助けをかりて生成され、それによって受信機は、上記受信機が予測した値と実際に受信した値との比較から、伝送されたシンボルに対する通信チャネルの影響を導き出すことができ、次いで、上記影響は予備推定値によって定量化される。
【0003】
現在の当該技術分野において既知の大半の伝送方法では、任意の所与の予備推定において、上記所与の予備推定値が対応する搬送信号によって連続したパイロットシンボルを伝送した後に、連続した値が導き出されるため、予備推定は一般に、チャネルパラメータを生成するために、二次推定ステップ中に時間にわたって平均される。したがって、このような平均プロセスは、平均値を有意にするためには多数の予備推定値が必要なことから、実行にかなりの時間を要する。これは、伝送信号がデータパケットの搬送を意図する場合、上述した通信システムの効率的な動作を妨げ得る。実際に、このような用途では、非常に少ない数のパイロットシンボルに基づいて、各データパケットの総伝送時間にわたるチャネル応答を定量化しなければならない。これには、予備推定ステップおよび二次推定ステップを略瞬時に実行することが必要であり、上述した既知の伝送方法は、時間平均プロセスのため正確に行うことができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、非常に限られた数の受信パイロットシンボルに基づいて、チャネル応答推定を略瞬時に行うことができ、したがってデータパケット伝送に適した伝送方法を提供することにより、上記問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実際に、本発明に係るデータを伝送する方法は、予備推定ステップ中に生成された予備推定値が、相関パラメータの少なくとも1つの平均値を計算することにより、二次推定ステップの過程において改良されることを特徴とし、この平均値は、少なくとも2つの異なる搬送信号にわたって計算される。
【0006】
本発明は、隣接チャネルが、連続性という基本物理原理によりよく似た属性を有し得ることを利用する。したがって、所与のチャネルのチャネル応答は、隣接チャネルと十分に共に相関している場合、隣接チャネルのチャネル応答に対していくらかの情報を与えることができるため、これは、所与のチャネルに対して生成された予備チャネル推定値が、隣接チャネルに関連するチャネルパラメータを求めるにあたっても関係があり得ることを意味する。したがって、本発明は、予備推定ステップによって生成される全情報をより十分に利用できるようにする。
【0007】
本発明の特定の一実施形態によれば、二次推定ステップは、予備推定値に適用される重み係数が、相関パラメータの少なくとも1つの平均値を計算することによって求められる重み決定サブステップを含み、この平均値は、少なくとも2つの異なる搬送信号にわたって計算される。
【0008】
このような二次推定ステップにより、簡易に、異なるチャネルパラメータに関連して生成された情報を一緒にプールすることができる。このようなプーリングは、上記所与のチャネルパラメータをもたらすことを意図する線形結合を計算する際に、予備推定値に適用される重み係数の値を求めることを通して実施され、この求めることは、以下説明するように、上記所与のチャネルパラメータに関連する相関パラメータの平均値に依存する。
【0009】
本発明の変形形態によれば、重み決定サブステップは、誤差基準の平均値を最小化することを含み、この平均値は少なくとも2つの搬送信号にわたって計算される。
【0010】
誤差基準は単に、推定と実際のチャネルパラメータの差であってもよいが、好ましくは、上記差を二乗した値である。以下説明するように、このような誤差基準の使用により、行列計算によって略瞬時に行うことができる単純な式系を解くことで重み係数を計算することが可能になる。
【0011】
この変形形態の第1の実施形態によれば、重み決定サブステップは、上記搬送信号に関連するチャネルパラメータの予備推定値間の相関の、少なくとも2つの異なる搬送信号にわたる平均値として計算される要素を有する相関行列を求めることを含む。
【0012】
この第1の実施形態は実施は非常に容易であり、相関行列の各要素は、2つの予備推定値の単一の平均値を計算することによって得られる。
【0013】
上述の変形形態の第2の実施形態によれば、重み決定サブステップは、上記搬送信号に関連するチャネルパラメータの予備推定値間の相関の線形結合の、異なる搬送信号にわたる平均値として計算される要素を有する相関行列を求めることを含む。
【0014】
この第2の実施形態は、第1の実施形態よりも実施に高い計算能力を必要とするが、それでもやはり実施はかなり容易なままであり、関連する予備推定値をすべて、相関行列の各要素の計算に含めることが可能であるため、チャネルパラメータを求める際に、上記予備推定値に含まれる情報を最も多く使用できるようにする。
【0015】
本発明の第3の実施形態によれば、上述した方法は、有利なことに、相関パラメータの平均値が所定のしきい値と比較される比較ステップを含み、二次推定ステップは、上記平均値が上記所定のしきい値を超える場合のみ実際に計算される。
【0016】
比較ステップにより、二次推定ステップを実際に実行する前に、上記二次推定ステップが本当に、予備推定値よりも正確なチャネルパラメータの値をもたらすか否かを判断することができる。上で説明したように、上記予備推定に対する有意な改良は、隣接チャネルが互いに十分にリンクされている場合にのみ得られ、これは、相関パラメータの平均値が所定のしきい値を超えることによって表される。この条件が満たされない場合、予備推定値がチャネルパラメータを構成するものとしてそのまま選択される。
【0017】
先の変形形態に代えて、または加えて使用することができる本発明の別の変形形態は、伝送信号を複数のアンテナ受信機で拾う場合、上述のように計算されたチャネルパラメータの正確性を高めることができる。
【0018】
したがって、この他の変形形態は、少なくとも1つの受信機に複数の受信アンテナが設けられ、各受信アンテナはデータを伝送する複数の搬送信号を拾うことができる通信システムにおいて使用することを意図する、データを伝送する方法に関連し、この方法は、チャネルパラメータの複数の群を計算することを含み、各群は、所与のアンテナによって拾われた搬送信号に対するチャネル応答を表すチャネルパラメータを含み、チャネルパラメータは、上述の方法を実行することと、同じ搬送信号に関連し、かつ、少なくとも2つの異なるチャネルパラメータ群に関連する、少なくとも2つのチャネルパラメータの平均値が、各搬送信号について計算される平均ステップを実行することとによって計算される。
【0019】
本発明のこの他の変形形態は、同じ搬送信号に関連し、一緒にプールされる情報量を増大させることができ、これにより、値が複数の受信アンテナにわたって平均されるチャネルパラメータに対する関連性が、この平均値の計算時間をあまり増大させることなく高められる。
【0020】
ハードウェア関連態様の1つによれば、本発明は、複数の搬送信号によってデータが伝送される少なくとも1つのワイヤレス通信チャネルによって共にリンクされた少なくとも1つの送信機および少なくとも1つの受信機を備えた通信システムであって、受信機は、上記搬送信号の1つに対する上記通信チャネルの各応答を表すチャネルパラメータの計算を行い、上記受信機は、チャネルパラメータの予備推定値を生成することを意図する予備推定手段と、上記予備推定値の少なくとも2つの線形結合を計算することにより、予備推定手段が生成した予備推定値を改良することを意図する二次推定手段とを備え、各線形結合は、所与のチャネルパラメータをもたらすことを意図し、システムは、二次推定手段が、相関パラメータの少なくとも1つの平均値を計算することにより、予備推定値に適用される重み係数を求めることを意図する重み決定モジュールと協働することを特徴とし、平均値は、少なくとも2つの異なる搬送信号にわたって計算される、通信システムにも関する。
【0021】
本発明のこのハードウェア関連態様の特定の一実施形態によれば、このようなシステムは、有利なことに、相関パラメータの平均値を所定のしきい値と比較する比較手段と、上記平均値が上記所定のしきい値を超える場合のみ、予備推定値の線形結合の計算を始動させる起動手段とを備える。
【0022】
このような起動手段は、単純に、MOSスイッチであってもよい。このMOSスイッチは、そのグリッドがオペアンプコンパレータの出力に接続され、予備推定値をそれぞれの重み係数で乗算することを意図するギルバートセルと、上記セルの電源との間に配置される。
【0023】
別のハードウェア関連態様によれば、本発明は、複数の搬送信号によって少なくとも1つのワイヤレス通信チャネルを通して伝送されるデータを受信する受信装置であって、受信装置は、上記搬送信号の1つに対する上記通信チャネルの各応答を表すチャネルパラメータの計算を行い、受信装置は、チャネルパラメータの予備推定値を生成することを意図する予備推定手段と、上記予備推定値の少なくとも2つの線形結合を計算することにより、予備推定手段が生成した予備推定値を改良することを意図する二次推定手段とを備え、各線形結合は所与のチャネルパラメータをもたらすことを意図し、受信装置は、二次推定手段が、相関パラメータの少なくとも1つの平均値を計算することにより、予備推定値に適用される重み係数を求めることを意図する重み決定モジュールと協働することを特徴とし、平均値は、少なくとも2つの異なる搬送信号にわたって計算される受信装置にも関する。
【0024】
本発明のこの他のハードウェア関連態様の特定の実施形態によれば、このような受信装置は、有利なことに、相関パラメータの平均値を所定のしきい値と比較する比較手段と、上記平均値が上記所定のしきい値を超える場合のみ、予備推定値の線形結合の計算を始動させる起動手段とを備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、データを伝送する方法は、非常に限られた数の受信パイロットシンボルに基づいて、チャネル応答推定を略瞬時に行うことができ、したがってデータパケット伝送に適したものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の上記および他の特徴は、添付図面に関連して行われる以下の説明を読むことからより明らかになろう。
【0027】
図1は、少なくとも1つの送信装置TRDおよび少なくとも1つの受信装置RCDを備えた通信システムSYSTを示し、通信システムSYSTは、複数の搬送信号Cs、Cs、…、Csが伝送される複数の通信チャネルCH1、CH2、…、CHNによって共にリンクされた送信アンテナシステムTASおよび受信アンテナシステムRASのそれぞれを備える。受信装置RCDは、上記搬送信号Cs、Cs、…、Csの1つに対する上記通信チャネルCH1、CH2、…、CHNの1つの各応答を表すチャネルパラメータを計算することを意図するチャネル推定手段CEMを備える。
【0028】
図2は、本発明によるチャネルパラメータの推定を実行するチャネル推定手段CEMを備えた受信装置を概略的に示す。この受信装置は、各通信チャネルCHi(ここで、i=1〜N)を通して伝送された複数の搬送信号Csを含む入力信号ISを拾うことを意図する受信アンテナシステムRASを備え、複数の搬送信号Csは、入力信号ISが供給される高速フーリエ変換モジュールFFTによって互いに分離される。
【0029】
受信装置に備えられるチャネル推定手段CEMは、チャネルパラメータの予備推定値hp(ここで、i=1〜N)を生成する予備推定手段PEMと、予備推定手段PEMが生成した予備推定値hpを改良し、二次推定値hsを生成する二次推定手段SEMとを備える。
【0030】
本発明のこの実施形態では、所与の搬送信号Csに関連するチャネルパラメータの任意の所与の二次推定値hsを生成するために二次推定手段SEMによって行われる改良は、上記所与の搬送信号Csを囲むN−n2−n1+1個の隣接搬送信号Csn1、…、Cs、…、CsN−n2の群に関連する予備推定値hpn1、…、hp、…、hpN−n2の線形結合を計算することにある。
【0031】
このために、本発明による受信装置に備えられるチャネル推定手段CEMは、予備推定値hpn1、…、hp、…、hpN−n2に適用される重み係数wを生成することを意図する重み決定モジュールWDMを備え、これら重み係数wは、相関パラメータの少なくとも1つの平均値を計算することによって求められ、平均値は、以下説明するように、少なくとも2つの異なる搬送信号にわたって計算される。
【0032】
本発明のこの実施形態では、重み決定モジュールWDMは、相関パラメータの平均値を所定のしきい値と比較する比較手段CMPと、上記平均値が上記所定のしきい値を超える場合のみ、予備推定値の線形結合の計算を始動させる起動手段(図示せず)とを備える。
【0033】
このような起動手段は、単純に、MOSスイッチであってもよい。比較手段CMPに備えられるオペアンプコンパレータの出力によって送られるイネーブル/ディセーブル信号E/Dによって、このMOSスイッチのグリッドが制御され、MOSスイッチは、予備推定値hpn1、…、hp、…、hpN−n2をそれぞれの重み係数wn1、…、w、…、wN−n2で乗算することを意図するギルバートセルと、上記乗算セルの電源との間に配置することができる。
【0034】
予備推定値の線形結合の計算が起動される場合、所与の搬送信号Csに関連するチャネルパラメータの二次推定値hsは、次のように表せる。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、太字は行列またはベクトルを表し、「」は係る行列またはベクトルの共役転置を表す。
【0037】
したがって、次のベクトル
【0038】
【数2】

【0039】
は、所与の搬送信号Csを囲むn2+n1+1個の隣接搬送信号Csn−n1、…、Cs、…、Csn+n2の群に関連する縮小された予備チャネル推定ベクトルであり、記号「」はこのようなベクトルの転置を表す。
【0040】
特別な構成では、たとえば、(1,0)に等しい(n1,n2)を選択すると、所与の搬送信号Csに関連するチャネルパラメータの二次推定値hsを、この構成において次のように表せる。
【0041】
【数3】

【0042】
2つの搬送信号Csn−1およびCsの間に存在し得る周波数相関を利用するために、重み係数ベクトル
【0043】
【数4】

【0044】
および
【0045】
【数5】

【0046】
が、
【0047】
【数6】

【0048】
として計算される。ここで、記号「」は複素数の共役を表す。
【0049】
したがって、パラメータФは、複数の異なる搬送信号にわたって平均された相関パラメータであり、これにより、所与のチャネルに関連する情報を一緒にプールすることが可能になり、この情報の大半は、他のチャネルパラメータに関連して先に生成されている。
【0050】
パラメータФは、任意選択で、上述した予備推定値の線形結合をいずれも実際に計算する前に、さらには重み係数ベクトルを計算する前に、所定のしきい値と比較することができる。
【0051】
このような比較サブステップにより、二次推定ステップの過程において計算されることを意図する線形結合が、実際に、予備推定値hpよりも正確なチャネルパラメータの推定値を生成するか否かを判断することができる。このような二次推定ステップが生成する二次推定値hsは、隣接チャネルが互いに十分にリンクしている場合のみ、予備推定値hpに関して有意な改良を提供し、十分にリンクしていることは、相関パラメータの平均値Фが所定のしきい値を超えることによって表される。この条件が満たされない場合、重み決定サブステップも、また、予備推定値の線形結合の計算も実行する必要はなく、予備推定値hpが、チャネルパラメータを構成するものとしてそのまま選択される。
【0052】
上記例は、所与のチャネルCHが実際にはいずれの搬送信号Csも、ひいてはパイロットシンボルも特徴としない状況での本発明の有用性を示すためにも使うことができる。このような場合、上記搬送信号Csに関連する予備推定値の、時間にわたる平均値の計算に基づく既知の技法は、この特定の信号Csに関連する予備推定値の計算にパイロットシンボルを利用することができないため、役に立たない。しかし、本発明は、チャネルパラメータ推定値を、隣接チャネル、たとえばCHn−1およびCHn+1に関連するチャネルパラメータの予備推定値間の相関の平均値として計算できるようにし、この場合、搬送信号Csに対するチャネル応答を表すチャネルパラメータ推定値は、hs=(hpn+1+hpn−1)/2として表すことができ、これも相関パラメータの平均値を構成する。
【0053】
信号が利用可能ではない所与のチャネルに隣接するチャネルに関連する複数の予備推定値間での拡張相関の平均値を計算することを意図する他の数学関数も、もちろん、本発明の一般的な周波数平均原理に従って上述した目的と同じ目的で使用することが可能である。
【0054】
本発明の別の可能な実施形態では、n1およびn2は両方とも、同じ整数n0に等しいものを選択することができる。本発明のこのような一実施形態では、所与の搬送信号Csに関連するチャネルパラメータの二次推定値hsは、次のように表せる。
【0055】
【数7】

【0056】
これより説明するように、重み決定サブステップは、誤差基準の平均値を最小化することを含むことができ、この平均値は、複数の搬送信号にわたって計算される。
【0057】
推定によってもたらされる誤差eは、e=|h−hs|として表すことができ、ここで、hは、搬送信号Csに対する通信チャネルの周波数応答を定量化する実際の、未知のチャネルパラメータである。したがって、二次推定値を生成することを意図する線形結合の計算に使用する重み係数は、推定チャネルパラメータhsと実際のチャネルパラメータhの差の平均値、または好ましくは、上記差を二乗した値の平均値が最小化されるように選択すべきであり、これは、次のように表せる。
【0058】
【数8】

【0059】
これより説明するように、このような誤差基準の使用により、行列計算によって略瞬時に行うことができる単純な式系を解くことによって重み係数を計算することが可能になる。
【0060】
実際に、本発明者は、この誤差基準を満たす重みベクトルを次のように表すことができることを観察した。
【0061】
【数9】

【0062】
ここで
【0063】
【数10】

【0064】
は単位行列(identity matrix)であり、(P/q)は、搬送信号Csの伝送に悪影響を及ぼす干渉雑音の分散を表す実数であり、
【0065】
【数11】

【0066】
は各成分が相関パラメータの平均値によって形成される相関行列であり、平均値は、搬送信号Csを囲むN−2・n0個の隣接搬送信号Csn−n0…Cs…Csn+n0の群全体にわたって計算することができ、これは、以下のように表せる。
【0067】
【数12】

【0068】
別の例では、相関行列
【0069】
【数13】

【0070】
の行r1および列r2の各成分
【0071】
【数14】

【0072】
は、上記搬送信号Csr1およびCsr2に関連する予備推定値hpr1およびhpr2の間の相関のうちの2つの搬送信号Csr1およびCsr2のみにわたる平均値によって形成することができる。もちろん、相関行列のこのような計算方式は、より正確性の低い結果をもたらすが、各成分が、上述した一般的な形で必要なサイズN−2・n0の2つのベクトルの行列積ではなく、2つの値の単純なスカラー積からもたらされるため、実行に必要な計算能力は低い。
【0073】
したがって、上記実施形態によって示される本発明は、非常に限られた数の受信パイロットシンボルに基づいて、正確なチャネル応答推定を略瞬時に行うことができ、このため、データパケット伝送に特に適している。
【0074】
図3は、本発明の別の実施形態を概略的に示し、この実施形態によれば、受信装置には、受信アンテナシステムRASに備えられた複数の受信アンテナA1、…、Am、…、AMが設けられ、各アンテナAm(ここで、m=1〜M)は、各通信チャネルCHi(ここで、i=1〜N)を通して伝送される複数の搬送信号Csを含む入力信号ISmを拾うことを意図する。この受信装置は、入力信号ISmを時間にわたって順序付ける多重化手段MUXを備え、これは次に高速フーリエ変換モジュールFFTに供給され、次いで、上述したものと同一のチャネル推定手段CEMによって処理される。このような受信装置の他の実施形態では、上述したものと同一の複数のチャネル推定手段CEMを並列に配置して、すべての入力信号IS1、…、ISm、…、ISMを同時に処理することができ、これはもちろん、より高速であるが、より大きな処理回路を必要とする。
【0075】
本発明のこの実施形態では、チャネル推定手段は、チャネルパラメータhs1,m、…、hsn,m、…、hsN,m(ここで、m=1〜M)の複数の群の計算を行い、各群は、所与のアンテナAmによって拾われた搬送信号Cs(ここで、i=1〜N)に対するチャネル応答を表すチャネルパラメータhs(ここで、i=1〜N)を含む。
【0076】
受信装置は、各m番目の群の各チャネルパラメータhs1,m、…、hsn,m、…、hsN,m(ここで、m=1〜M)を記憶する記憶手段MEMと、少なくとも2つ、好ましくは、この例では、
【0077】
【数15】

【0078】
と表すことができる、同じ搬送信号Csに関連するすべてのチャネルパラメータhsn,1、…、hsn,m、…、hsn,Mの間の平均値hsを計算する平均手段AVMとをさらに備える。
【0079】
本発明のこの実施形態は、同じ搬送信号Csに関連し、一緒にプールされる情報量を増大させることができ、これにより、値が複数の受信アンテナにわたって平均されるチャネルパラメータhsに対する関連性が、この平均値の計算時間をあまり増大させることなく高められる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明によるチャネルパラメータの推定を実行するチャネル推定手段を備える通信システムを示す概略図である。
【図2】図1の通信システムに備えられる受信装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の特定の一実施形態による受信装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0081】
A1、…、Am、…、AM 受信アンテナ、CH1、CH2、…、CHN チャネル(通信チャネル、ワイヤレス通信チャネル)、CMP 比較手段、Cs、Cs、…、Cs 搬送信号、hsn,1、…、hsn,m、…、hsn,M チャネルパラメータ、hp 予備推定値、PEM 予備推定手段、RCD 受信機(受信装置)、SYST 通信システム、SEM 二次推定手段、WDM 重み決定モジュール、w 重み係数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの通信チャネルを通して複数の搬送信号によりデータを伝送する方法であって、
前記方法は、前記搬送信号の1つに対する前記通信チャネルの各応答を表すチャネルパラメータを計算することを含み、
前記方法は、前記チャネルパラメータの予備推定値が生成される予備推定ステップと、前記予備推定ステップ中に生成された前記予備推定値が、相関パラメータの少なくとも1つの平均値を計算することによって改良される二次推定ステップとを含み、
前記平均値は、少なくとも2つの異なる搬送信号にわたって計算される
データを伝送する方法。
【請求項2】
前記二次推定ステップは、前記予備推定値の少なくとも2つの線形結合を計算することを含み、
各線形結合は、所与のチャネルパラメータをもたらすことを意図し、
前記二次推定ステップは、前記予備推定値に適用される重み係数が、前記相関パラメータの少なくとも1つの平均値を計算することによって求められる、重み決定サブステップを含み、
前記平均値は、少なくとも2つの異なる搬送信号にわたって計算される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記重み決定サブステップは、誤差基準の平均値を最小化することを含み、
前記平均値は、少なくとも2つの搬送信号にわたって計算される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記重み決定サブステップは、前記搬送信号に関連するチャネルパラメータの予備推定値間の相関の、少なくとも2つの異なる搬送信号にわたる平均値として計算される要素を有する相関行列を求めることを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記重み決定サブステップは、前記搬送信号に関連するチャネルパラメータの予備推定値間の相関の線形結合の、異なる搬送信号にわたる平均値として計算される要素を有する相関行列を求めることを含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記相関パラメータの前記平均値が所定のしきい値と比較される比較ステップを含み、
前記二次推定ステップは、前記平均値が前記所定のしきい値を超える場合のみ、実際に実行される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの受信機に複数の受信アンテナが設けられ、各受信アンテナはデータを伝送する前記複数の搬送信号を拾うことができる通信システムにおいて使用することを意図するデータを伝送する方法であって、
前記方法はチャネルパラメータの複数の群を計算することを含み、
各群は、所与のアンテナによって拾われた搬送信号に対するチャネル応答を表すチャネルパラメータを含み、
前記チャネルパラメータは、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法を実行することと、同じ搬送信号に関連し、少なくとも2つの異なるチャネルパラメータ群に属する少なくとも2つのチャネルパラメータの平均値が、各搬送信号について計算される平均ステップを実行することとによって計算される、データを伝送する方法。
【請求項8】
複数の搬送信号によってデータが伝送される少なくとも1つのワイヤレス通信チャネルによって共にリンクされた少なくとも1つの送信機および少なくとも1つの受信機を備えた通信システムであって、
前記受信機は、前記搬送信号の1つに対する前記通信チャネルの各応答を表すチャネルパラメータの計算を行い、
前記受信機は、前記チャネルパラメータの予備推定値を生成することを意図する予備推定手段と、前記予備推定手段が生成した予備推定値を、前記予備推定値の少なくとも2つの線形結合を計算することによって改良することを意図する二次推定手段とを備え、
各線形結合は所与のチャネルパラメータをもたらすことを意図する
通信システムにおいて、
前記二次推定手段は、相関パラメータの少なくとも1つの平均値を計算することにより、前記予備推定値に適用される重み係数を求めることを意図する重み決定モジュールと協働し、
前記平均値は、少なくとも2つの異なる搬送信号にわたって計算される
ことを特徴とする、通信システム。
【請求項9】
前記相関パラメータの前記平均値を所定のしきい値と比較する比較手段と、前記平均値が前記所定のしきい値を超える場合のみ、前記予備推定値の線形結合の計算を始動させる起動手段とをさらに備える、請求項8記載の通信システム。
【請求項10】
複数の搬送信号によって少なくとも1つのワイヤレス通信チャネルを通して伝送されるデータを受信する受信装置であって、
前記受信装置は、前記搬送信号の1つに対する前記通信チャネルの各応答を表すチャネルパラメータの計算を行い、
前記受信装置は、前記チャネルパラメータの予備推定値を生成することを意図する予備推定手段と、前記予備推定手段が生成した予備推定値を、前記予備推定値の少なくとも2つの線形結合を計算することによって改良することを意図する二次推定手段とを備え、
各線形結合は所与のチャネルパラメータをもたらすことを意図する
受信装置において、
前記二次推定手段は、相関パラメータの少なくとも1つの平均値を計算することにより、前記予備推定値に適用される重み係数を求めることを意図する重み決定モジュールと協働し、前記平均値は、少なくとも2つの異なる搬送信号にわたって計算される
ことを特徴とする、受信装置。
【請求項11】
前記相関パラメータの前記平均値を所定のしきい値と比較する比較手段と、前記平均値が前記所定のしきい値を超える場合のみ、前記予備推定値の線形結合の計算を始動させる起動手段とをさらに備える、請求項10記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−20315(P2006−20315A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190063(P2005−190063)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(503163527)ミツビシ・エレクトリック・インフォメイション・テクノロジー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (175)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC INFORMATION TECHNOLOGY CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
【Fターム(参考)】