説明

データストリーム伝送方法および送信側装置および受信側装置

【課題】タイムスタンプ処理において高度な回路を必要とせず、有効パケットの時間間隔を保存したまま効率良くデータストリームを伝送する。
【解決手段】データストリームを構成する複数の有効パケットと無効パケットとからなるパケット群を、その時系列に沿って固定ビット長のフレームに格納し、そのフレーム全体に対してタイムスタンプを付与する。この際、パケット群を、その先頭および末尾のパケットが有効パケットとなるように作成し、フレームの末尾となる有効パケットと次フレームの先頭となる有効パケットとの間に存在する無効パケットについてこれを削除する。このときに、削除された無効パケットのパケット数情報をタイムスタンプとして付与する。受信側では、フレームから抽出した隣接するパケット群の間に、タイムスタンプに基づき認識された数の無効パケットを挿入して送信側の時間間隔を復元する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効パケットと無効パケットとが混在して構成されるデータストリームの伝送に利用する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル映像信号または音声信号が伝送路を介して送受信される場合に、伝送容量を削減するために、元のディジタルデータを圧縮するMPEG(Moving Picture Experts Group)方式(MPEG−1:ISO/IEC11172、MPEG−2:ISO/IEC13818)やH.264/AVC方式(ISO/IEC14496−10)が実用化されている。
【0003】
これらの圧縮映像または音声ディジタルデータを配信するパケットとしてTS(Transport
Stream)パケットがあり、このTSパケットを伝送するための物理インタフェース規格としてDVB−ASI(Digital Video
Broadcasting-Asynchronous Serial Interface)方式(EN50083−9)がある。以下の説明では、TSパケットを有効パケットと呼ぶ。
【0004】
有効パケットは188バイトの固定バイト長であるが、放送システムではこの有効パケットにリードソロモン誤り訂正符号16バイトを付加した204バイト長をTSパケットとして用いられている。そこで、本明細書では2つのパケット長に対応すべく、以後、有効パケット長に関して、188(204)バイト(誤り訂正符号無し(誤り訂正符号有り))のフォーマットで表記する。
【0005】
DVB−ASI方式を模式的に表した図を図7に示す。図7に示すように、DVB−ASI方式は270Mbpsの一定の伝送レートで有効パケットであるTSパケットを伝送するものである。つまり、TSレートが低く、送信すべき有効パケットが存在しない場合では、無効パケットを挿入することにより、伝送レートを270Mbps一定に保持する。
【0006】
DVB−ASI方式では、この無効パケットは10ビットからなり、K28.5ワードとして定義されている。また、無効パケットは有効パケット間に最低2パケット挿入しなければならないことが規格化されている。さらに、DVB−ASI方式ではデータストリームを8B/10B変換して伝送するため、188(204)バイト長のTSパケットは
188(204)×8×(10/8)=1880(2040)
となることから1880(2040)ビットに変換されて伝送される。
【0007】
したがって、DVB−ASI方式を用いて伝送することが可能な有効パケットの最大伝送レートは無効パケットが有効パケット間に2パケット挿入される場合であり、
(270×(8/10)×1880(2040))/(1880(2040)+10×2))≒213.72(213.90)
となることから約214Mbpsとなる。
【0008】
一方、ディジタル放送などで用いられているMPEG−2システムズ(ISO/IEC13818−1)では受信側と送信側との間のクロックを合わせるために、タイミング情報として基準時刻情報であるPCR(Program Clock Reference)が有効パケット中に書き込まれ、定期的に伝送されなければならないことが規定されている。このとき、受信側のクロックが安定して動作することを保証するため、PCRの送信間隔は100msec以下の一定値と定められている。
【0009】
現在のRF(Radio Frequency)方式による電波放送では、電波放送帯域の帯域制限により各放送局が配信可能な放送信号容量に制限がある。例えば、地上ディジタル放送の場合には、最大伝送レートは一放送局当り23.23Mbps、BSディジタル放送では52.17Mbpsである。このため、電波放送でのMPEG−2を用いた映像・音声圧縮信号の伝送レートは、DVB−ASI方式において規定されている伝送レート270Mbpsに比べて非常に小さくなっている。
【0010】
従って、DVB−ASI方式では有効パケットの実効伝送レートが小さい場合においても、上記のとおり出力速度を一定に保持して伝送しなければならないため、データストリームは無効パケットK28.5が大部分を占めていることになる。よって伝送効率が悪い状態となる。
【0011】
他方、例えばEthernet(登録商標)などの非同期網上のフレームに有効パケットを再配列して伝送するような場合には、伝送効率を上げるため無効パケットを削除して伝送することを考えると、PCRの時間間隔情報が欠落してしまうため、受信側で有効パケットの処理タイミングの復元ができないという問題が生じる。
【0012】
従来のタイムスタンプ付与方式について模式的に表した図を図8に示す。そこで、この問題を解決するため、これまでは図8に示すように、全ての有効パケット間にある無効パケットを削除し、有効パケット間の時間情報をタイムスタンプとして有効パケットに付与して伝送フレームに格納する方式(TTS方式:Time stamped TS方式)が提案されてきた。
【0013】
タイムスタンプ情報付与の方式としては、削除した無効パケット数を算出して付与する方式、有効パケット間の時間を内部クロックを用いて算出(例えば、立ち上がり回数を算出する)して付与する方式などが提案されている。後者ではタイムスタンプとして4バイトが定義され、有効パケットの先頭に付与された形式が規格化されている(例えば、前者については特許文献1を、後者については非特許文献1を参照)。
【0014】
【特許文献1】特開2001−308876号公報
【非特許文献1】ARIB STD−B24 3.4版、“デジタル放送におけるデータ放送符号化方式と伝送方式”、社団法人電波産業会、平成14年7月25日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
現在の電波放送に関しては上記のとおり、電波放送帯域の帯域制限により最大伝送レートが制限されていた。しかし、例えば光ファイバを用いたFTTH(Fiber To The Home)放送における非同期網上の伝送フレームに有効パケットを再配列して伝送するような場合では、全伝送容量にして10Gbpsといった電波放送以上の容量が可能となる。このため、各放送局に割当てられる帯域制限が緩和され、DVB−ASI方式の伝送レートである270Mbpsを最大限まで活用した放送信号を配信することが可能となる。
【0016】
上述のようにDVB−ASI方式では有効パケット間に最低2パケット(20ビット)無効パケットを挿入することが定められている。従って、上記のような従来のタイムスタンプ付与方式ではタイムスタンプに4バイト(32ビット)用いるため、有効パケットの実効レートが非常に高い(データストリームに対して有効パケットの割合が大きい)場合に、伝送効率がDVB−ASI方式に比べて悪くなる。
【0017】
また、タイムスタンプ付与の処理は、有効パケット毎に行われるため、有効パケットの実効レートが高い場合には、タイムスタンプ付与や除去に伴う処理負荷が大きくなり、高性能なハードウェアが必要である。
【0018】
本発明は、このような課題を解決するために行われたものであって、有効パケットの実効レートが非常に高いデータストリームに対し、タイムスタンプ処理において高度な回路を必要とせず、有効パケットの時間間隔を保存したまま効率良くデータストリームを伝送することができるデータストリーム伝送方法および送信側装置および受信側装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、データが搭載された有効パケットと、データが搭載されていない無効パケットとが混在して構成されるデータストリームを伝送する送信側装置において、データストリームを構成する複数の有効パケットと無効パケットとからなるパケット群を、その時系列に沿ってその先頭および末尾のパケットが有効パケットとなるよう固定長のフレームに格納したときに、フレームの末尾となる有効パケットと次フレームの先頭となる有効パケットとの間に存在する無効パケットについてはこれを削除するパケット群作成手段と、削除された無効パケットのパケット数情報をそのフレーム全体に対してタイムスタンプとして付与するタイムスタンプ付与手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
これによれば、固定長のフレームに格納されているパケットについては、データ送信元から送信された有効パケットと無効パケットとがそのままの時系列で格納されており、時間間隔情報が保存されているため、タイムスタンプを付与する必要がなく、タイムスタンプ処理を省くことができる。
【0021】
また、前記パケット群を、その先頭および末尾のパケットが有効パケットとなるように作成し、フレームの末尾となる有効パケットと次フレームの先頭となる有効パケットとの間に存在する無効パケットについてはこれを削除することにより、隣接するフレーム間に無効となる情報を挿入する必要がなく、伝送効率を高めることができる。
【0022】
しかし、この場合には、削除した無効パケットの数に相応する時間が短縮されるため、受信側において、データストリームを構成するパケットの正確な時間間隔情報を復元することができなくなる。このような問題を回避するために、タイムスタンプ付与手段は、前記パケット群作成手段によって削除された無効パケットのパケット数情報をタイムスタンプとして付与する。
【0023】
これによれば、受信側においてタイムスタンプを参照することにより、送信側で削除された無効パケットを再び有効パケット間に挿入することができ、パケットの正確な時間間隔情報を復元することができる。
【0024】
すなわち、本発明を受信側装置としての観点から観ると、本発明は、本発明の送信側装置により送信された前記フレームを受信する受信側装置であって、前記フレームに格納されているパケット群を抽出して元のデータストリームに復元するデータストリーム復元手段を備え、このデータストリーム復元手段は、前記フレームから抽出した隣接するパケット群の間に、前記タイムスタンプに基づき認識されたパケット数の無効パケットを挿入する手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
また、本発明をデータストリーム伝送方法としての観点から観ると、本発明は、データが搭載された有効パケットと、データが搭載されていない無効パケットとが混在して構成されるデータストリームを伝送する送信側装置によって実行されるデータストリーム伝送方法において、パケット群作成手段が、データストリームを構成する複数の有効パケットと無効パケットとからなるパケット群を、その時系列に沿ってその先頭および末尾のパケットが有効パケットとなるよう固定長のフレームに格納したときに、フレームの末尾となる有効パケットと次フレームの先頭となる有効パケットとの間に存在する無効パケットについてはこれを削除し、タイムスタンプ付与手段が、削除された無効パケットのパケット数情報をそのフレーム全体に対してタイムスタンプとして付与することを特徴とする。
【0026】
さらに、本発明は、本発明のデータストリーム伝送方法における前記送信側装置により送信された前記フレームを受信する受信側装置によって実行されるデータストリーム伝送方法であって、データストリーム復元手段が、前記フレームに格納されているパケット群を抽出して元のデータストリームに復元する際に、前記フレームから抽出した隣接するパケット群の間に、前記タイムスタンプに基づき認識されたパケット数の無効パケットを挿入することを特徴とする。
【0027】
また、本発明をプログラムとしての観点から観ると、本発明は、情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、本発明の送信側装置の機能に相応する機能を実現させるプログラムである。
【0028】
あるいは、本発明は、情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、本発明の受信側装置の機能に相応する機能を実現させるプログラムである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、有効パケットの実効レートが非常に高いデータストリームに対し、タイムスタンプ処理において高度な回路を必要とせず、有効パケットの時間間隔を保存したまま効率良くデータストリームを伝送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施形態を図1から図6を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態の送信側装置であるタイムスタンプ化部1およびフレーム化部2の構成を示す図である。図2は、本発明の実施形態の受信側装置であるデフレーム化部7およびデータストリーム復元部8の構成を示す図である。
【0031】
本発明の実施形態は、図1に示すように、データが搭載された有効パケットと、データが搭載されていない無効パケットとが混在して構成されるデータストリームを伝送する送信側装置であるタイムスタンプ化部1において、データストリームを構成する複数の有効パケットと無効パケットとからなるパケット群を、フレーム化部2がその時系列に沿ってその先頭および末尾のパケットが有効パケットとなるよう固定長のフレームに格納したときに、フレームの末尾となる有効パケットと次フレームの先頭となる有効パケットとの間に存在する無効パケットについてはこれを削除するパケット群作成部3と、削除された無効パケットのパケット数情報をそのフレーム全体に対してタイムスタンプとして付与するタイムスタンプ付与部6とを備える。
【0032】
パケット群作成部3および分離部4は、パケット群を、その先頭および末尾のパケットが有効パケットとなるように作成し、この作成したパケット群を固定長のフレームに格納したときに、フレームの末尾となる有効パケットと次フレームの先頭となる有効パケットとの間に存在する無効パケットについてはこれを削除する
【0033】
すなわち、パケット群作成部3で、先頭が有効パケットになるパケット群を作成し、このとき、末尾に無効パケットが存在する場合には、分離部4がこの無効パケットをパケット群から分離して無効パケットカウンタ部5に伝送する。タイムスタンプ付与部6は、分離部4によって削除された無効パケットのパケット数情報を、パケット群が格納された固定長のフレームの全体に対してタイムスタンプとして付与する。
【0034】
また、図1に示した送信側装置により送信されたフレームを受信する受信側装置であるデータストリーム復元部8は、図2に示すように、フレームに格納されているパケット群を抽出して元のデータストリームに復元するデータストリーム復元手段であるタイムスタンプ除去部9、挿入部10、無効パケットカウンタ部11を備え、このデータストリーム復元手段は、前記フレームから抽出した隣接するパケット群の間に、タイムスタンプに基づき認識されたパケット数の無効パケットを挿入する。
【0035】
(概要の説明)
本発明の実施形態の概要を図3および図4を参照して説明する。図3は、本発明の実施形態のタイムスタンプ付与方式について模式的に表した図である。図4は、従来のタイムスタンプ付与方式と本発明のタイムスタンプ付与方式とにおけるTSレートと伝送効率との関係を示した図である。
【0036】
従来の方式では、有効パケット(例えばTSパケット)毎にタイムスタンプを付与していたが、本発明の方式では図3に示すように固定長のフレームを用意し、このフレーム内に複数の有効パケットと無効パケットとをその時系列に沿って格納し、この格納するパケット群に対してタイムスタンプを付与することを考える。
【0037】
本発明の実施形態では、有効パケットを先頭に、その後、複数の無効パケットと有効パケットを格納し、末尾は有効パケットとなるパケット群を固定長のフレームに格納する。つまり、あるフレームに格納したパケット群と次のフレームに格納したパケット群との間のみ無効パケットを削除し、この無効パケットのパケット数をタイムスタンプとして次のパケット群の先頭に付与する。
【0038】
図4に複数の有効パケットと無効パケットとによるパケット群(有効パケット数:n、無効パケット数:n−1とする)に対して1つのタイムスタンプを付与した場合(表記をTTS/nTSと定義する)の伝送効率を示す。ここで、伝送効率とは、データストリームにおいて、「有効パケットのビット数/データストリームのビット数」とした。
【0039】
また、図4中の最大TSレートとは前述のDVB−ASI方式を用いて伝送可能な有効パケットの最大伝送レート(約214Mbps)を示している。TSレートが210Mbpsを超えるような場合には、複数の有効パケットと無効パケットとに対し1つのタイムスタンプを付与した方式は、従来の有効パケット毎にタイムスタンプを付与する方式に比べ、伝送効率が高い。また、タイムスタンプ付与の処理がn分の1になるため回路処理の負荷が低減する。
【0040】
従って、例えばFTTH放送における非同期網上の伝送フレームに有効パケットを再配列して伝送するような場合には、有効パケットの実効レートが非常に高いデータストリームに対し、従来、タイムスタンプ付与方式に比べ伝送効率を上げること、および、回路内の処理の負荷の軽減が期待できる。
【0041】
(実施形態の詳細説明その1)
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0042】
本発明の実施形態におけるタイムスタンプ化部1およびフレーム化部2を図1に示す。ここで、フレームとして固定長(1522バイト、ペイロード1500バイト)のMACフレームを用いている。
【0043】
タイムスタンプ化部1は、複数の有効パケットと無効パケットとから構成され、先頭が有効パケット、末尾が無効パケットとなるパケット群を作成する機能を有し、このパケット群の末尾の無効パケット群を削除すると1496バイト(1500−4(タイムスタンプ))以下となる特徴を持つパケット群作成部3と、パケット群作成部3から送出されたパケット群に対し、末尾の無効パケット群を分離する機能を有する分離部4と、分離部4にて分離された無効パケット群に関し、無効パケットの数を算出し、タイムスタンプ情報として4バイト表記する機能を有する無効パケットカウンタ部5と、分離部4から送出されてきた有効パケットと無効パケットとで構成されたパケット群の先頭に、無効パケットカウンタ部5から送出されてきたタイムスタンプ情報を付与するタイムスタンプ付与部6とからなる。
【0044】
このタイムスタンプ化されたパケット群はフレーム化部2において固定長(1522バイト)のMACフレームのペイロード部に格納されて伝送される。
【0045】
次に、タイムスタンプ付与部6について図5および図6を参照して説明する。図5は、本発明の実施形態のタイムスタンプ化部1の構成を示す図である。図6は、本発明の実施形態のタイムスタンプ化部1の処理手順を示すフローチャートである。
【0046】
ここで、有効パケット数を表す関数としてJを定義し、FIFO32に蓄積されたメモリ量に対してある閾値(本発明では1308(1292)バイト)を越えたか否かを判定する関数としてLを定義する。J、L共に初期値は“0”とする(ステップS1およびS2)。
【0047】
まず、パケット判別部31では送信元からDVB−ASI方式を用いて伝送されてきたデータストリームに対してパケットが有効パケットであるか無効パケットであるかを判別する(ステップS3)。有効パケットの先頭に定義されている8バイトの同期信号を用いて、ビットパターンが0×47時に有効パケットであると認識する(ステップS3のYes)。一方、無効パケットはK28.5ワードで定義されており、このビットパターンが0011111010(反転可)時に無効パケットであると認識する(ステップS3のNo)。
【0048】
パケット判別部31において有効パケットと判別した際(ステップS3のYes)、パケット判別部31から有効パケットカウンタ部30へ制御信号を伝送し、有効パケットカウンタ部30では有効パケット数Jを1増加させる(ステップS5)。
【0049】
FIFO32には有効パケットと無効パケットとが蓄積されるが(ステップS6)、蓄積量が1308(1292)バイトを越えた場合に(ステップS7のYes)、有効パケットまたは無効パケットがFIFO32に伝送される毎に有効パケットカウンタ部30に通知する。有効パケットカウンタ部30では、この通知を受け、Lを1増加させる(ステップS8)。
【0050】
ここで1308(1292)バイトとは、MACフレームのペイロード1500バイトからタイムスタンプ4バイト、有効パケット188(204)バイトを引いた数値であり、有効パケットと無効パケットとのパケット群のバイト長がこの数値を越えた場合には、有効パケットをこのパケット群にさらに付与するとタイムスタンプ付与後のパケット群のバイト長が1500バイトよりも長くなりMACフレームに格納出来なくなることを意味している。
【0051】
つまり、有効パケットカウンタ部30において、L値が“0”以外の状態でパケット判別部31から有効パケットを認識した制御信号を受信した場合に(ステップS4のNo)、この有効パケットをFIFO32に蓄積してしまうと上述のようにFIFO32内のパケット群はMACパケットに格納できなくなってしまう。従って、この有効パケットが蓄積される前にFIFO32では蓄積された複数の有効パケットと無効パケットとのパケット群を分離部4へ送出させる(ステップS9)。
【0052】
また、同時に、有効パケットカウンタ部30ではカウントした有効パケット数Jの情報を分離部4へ送出する。上記方法を用いて分離部4へと送出されたパケット群は、有効パケット+無効パケット群がJ回繰り返されており、ビット長はこのパケット群の末尾の無効パケット群を削除すると1496バイト以内となる特徴を有する。
【0053】
分離部4ではFIFO32から送出されたパケット群に対し、有効パケットカウンタ部30から得られた有効パケット数Jの情報を元に、パケット群の先頭からJ番目の有効パケットまでをタイムスタンプ付与部6へ送出し、残りの無効パケット群を無効パケット数をカウントする無効パケットカウンタ部5へ送出する。無効パケットカウンタ部5では分離部4から送出された無効パケットの数を算出し、4バイトのタイムスタンプ値を蓄積する。
【0054】
すなわち、分離部4では、有効パケットカウンタ部30からの有効パケット数Jの値が“0”でなく(ステップS10のYes)、FIFO32から送出されたパケットが有効パケットであれば(ステップS11のYes)、有効パケット数Jの値を1減算する(ステップS12)。このようにして、有効パケットカウンタ部30からの有効パケット数Jの値が“0”となったら(ステップS10のNo)、分離部4は、パケット群の先頭からJ番目の有効パケットまでをタイムスタンプ付与部6へ送出し、残りの無効パケット群を無効パケットカウンタ部5へ送出する。
【0055】
タイムスタンプ付与部6は、分離部4から送出されたパケット群の先頭に、一つ前のパケット群において無効パケットカウンタ部5にてカウントされた無効パケット数に相応する4バイトのタイムスタンプを付与して送出する(ステップS13)。また、無効パケットカウンタ部5は、分離部4から送出された無効パケット数を抽出し(ステップS14)、その無効パケット数を、次のパケット群に付与するタイムスタンプを準備するためにタイムスタンプ付与部6に送出する(ステップS15)。
【0056】
以上の処理により、タイムスタンプ付与部6では複数の有効パケットと無効パケットとから構成され、先頭と末尾のパケットが有効パケットであることを特徴としたパケット群に対し、タイムスタンプを先頭に4バイト付与し、全ビット長がMACフレームのペイロード長1500バイト以下となるビット列をフレーム化部2へ送出することが可能となる。
【0057】
また、DVB−ASI方式において有効パケットの実効レートが非常に高い場合には、無効パケットカウンタ部5およびタイムスタンプ付与部6ではJ個の有効パケットに対して1回の処理でよく、従来の1つの有効パケットに対して1つのタイムスタンプを付与する方式に比べ処理の負荷が軽減される。
【0058】
フレーム化部2では受信したタイムスタンプが付与された有効パケットと無効パケットとから構成されるパケット群をMACフレームのペイロード部へ格納する。格納する際、ペイロードの余った部分にはnull情報を書込み、MACフレームを固定長(1522バイト)にして送信する。
【0059】
次に、送信されたMACフレームから元の放送局の信号を復元する方式について図2を参照して説明する。まず、デフレーム化部7ではMACフレームを受信し、MACフレーム内のペイロード部を抽出する。この際、図1のフレーム化部2において付与されたペイロード内のnull情報は削除する。データストリーム復元部8ではタイムスタンプを基にデフレーム化されたパケット群から送信元のデータストリームを復元する特徴を有する。
【0060】
タイムスタンプ除去部9ではデフレーム化部7より送出されたタイムスタンプ化された有効パケットと無効パケットとから構成されるパケット群に対し、先頭の4バイトで定義されているタイムスタンプを抽出し、その情報を無効パケットカウンタ部11へ送出し、また、タイムスタンプが除去されたパケット群を挿入部10へ送出する。無効パケットカウンタ部11ではタイムスタンプ情報を元に無効パケットK28.5を作成し、挿入部10にてこの無効パケットをタイムスタンプ除去部9から送信された有効パケットと無効パケットとから構成されるパケット群の前に挿入する。
【0061】
以上の処理により、有効パケット間の時間間隔情報を復元することが可能となる。
【0062】
(実施形態の詳細説明その2)
情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、上述した実施形態の送信側装置であるタイムスタンプ化部1および受信側装置であるデータストリーム復元部8の機能に相応する機能を実現させるプログラムの実施形態を説明する。
【0063】
本実施形態のプログラムは記録媒体に記録されることにより、情報処理装置は、この記録媒体を用いて本実施形態のプログラムをインストールすることができる。あるいは、本実施形態のプログラムを保持するサーバからネットワークを介して直接情報処理装置に本実施例のプログラムをインストールすることもできる。
【0064】
これにより、情報処理装置を用いて、上述した実施形態のタイムスタンプ化部1におけるパケット群作成部3、分離部4、無効パケットカウンタ部5、タイムスタンプ付与部6およびデータストリーム復元部8におけるタイムスタンプ除去部9、挿入部10、無効パケットカウンタ部11の機能に相応する機能を実現することができる。さらに、フレーム化部2およびデフレーム化部7の機能に相応する機能についても本実施形態のプログラムによって実現してもよい。
【0065】
なお、本実施形態のプログラムは、情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、FTTHなどのように、TSパケットの実効レートが非常に高いデータストリームに対し、タイムスタンプ処理において高度な回路を必要とせず、TSパケットの時間間隔を保存したまま効率良くデータストリームを伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態の送信側装置であるタイムスタンプ化部およびフレーム化部の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の受信側装置であるデフレーム化部およびデータストリーム復元部の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態のタイムスタンプ付与方式について模式的に表した図である。
【図4】従来のタイムスタンプ付与方式と本発明のタイムスタンプ付与方式とにおけるTSレートと伝送効率との関係を示した図である。
【図5】本発明の実施形態のタイムスタンプ化部の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態のタイムスタンプ化部の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】DVB−ASI方式を模式的に表した図である。
【図8】従来のタイムスタンプ付与方式について模式的に表した図である。
【符号の説明】
【0068】
1 タイムスタンプ化部
2 フレーム化部
3 パケット群作成部
4 分離部
5、11 無効パケットカウンタ部
6 タイムスタンプ付与部
7 デフレーム化部
8 データストリーム復元部
9 タイムスタンプ除去部
10 挿入部
30 有効パケットカウンタ部
31 パケット判別部
32 FIFO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データが搭載された有効パケットと、データが搭載されていない無効パケットとが混在して構成されるデータストリームを伝送する送信側装置において、
データストリームを構成する複数の有効パケットと無効パケットとからなるパケット群を、その時系列に沿ってその先頭および末尾のパケットが有効パケットとなるよう固定長のフレームに格納したときに、フレームの末尾となる有効パケットと次フレームの先頭となる有効パケットとの間に存在する無効パケットについてはこれを削除するパケット群作成手段と、
削除された無効パケットのパケット数情報をそのフレーム全体に対してタイムスタンプとして付与するタイムスタンプ付与手段と
を備えたことを特徴とする送信側装置。
【請求項2】
請求項1記載の送信側装置により送信された前記フレームを受信する受信側装置であって、
前記フレームに格納されているパケット群を抽出して元のデータストリームに復元するデータストリーム復元手段を備え、
このデータストリーム復元手段は、前記フレームから抽出した隣接するパケット群の間に、前記タイムスタンプに基づき認識されたパケット数の無効パケットを挿入する手段を備えた
ことを特徴とする受信側装置。
【請求項3】
データが搭載された有効パケットと、データが搭載されていない無効パケットとが混在して構成されるデータストリームを伝送する送信側装置によって実行されるデータストリーム伝送方法において、
パケット群作成手段が、データストリームを構成する複数の有効パケットと無効パケットとからなるパケット群を、その時系列に沿ってその先頭および末尾のパケットが有効パケットとなるよう固定長のフレームに格納したときに、フレームの末尾となる有効パケットと次フレームの先頭となる有効パケットとの間に存在する無効パケットについてはこれを削除し、
タイムスタンプ付与手段が、削除された無効パケットのパケット数情報をそのフレーム全体に対してタイムスタンプとして付与する
ことを特徴とするデータストリーム伝送方法。
【請求項4】
請求項3記載のデータストリーム伝送方法における前記送信側装置により送信された前記フレームを受信する受信側装置によって実行されるデータストリーム伝送方法であって、
データストリーム復元手段が、前記フレームに格納されているパケット群を抽出して元のデータストリームに復元する際に、前記フレームから抽出した隣接するパケット群の間に、前記タイムスタンプに基づき認識されたパケット数の無効パケットを挿入する
ことを特徴とするデータストリーム伝送方法。
【請求項5】
情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、請求項1記載の送信側装置の機能に相応する機能を実現させるプログラム。
【請求項6】
情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、請求項2記載の受信側装置の機能に相応する機能を実現させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−141841(P2009−141841A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318175(P2007−318175)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】