説明

データ保持回路

【課題】電源電圧が一時的に大きく低下した場合でも、電源電圧が低下する以前の論理データを保持することが可能なデータ保持回路を提供する。
【解決手段】データ保持回路と電源の間に、ダイオードと容量で構成した電源電圧維持回路を挿入し、データ保持回路を入力端子にダイオードによって遮断された側の電圧が入力されたときにデータが変化する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体集積回路のロジック回路に属し、特に電源制御用IC等の電源変動による誤動作が許容されない特殊用途IC分野におけるデータ保持回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコンや携帯電話等の携帯機器に用いられている電池には充放電を制御する保護用ICが必要であり、これらの電池保護用ICは従来はアナログ回路で構成されていたが、アナログ回路で構成すると外付け部品が必要である。近年機器の小型化要求からこれらの外付け部品の削減が望まれ、それに伴い外付け部品を必要としないデジタル回路での構成が増えている。
【0003】
電池保護用ICの機能上、データ保持回路が必要であるが、これらの回路は一般的にラッチ回路やフリップフロップ回路で構成される。
【0004】
CMOSアーキテクチャのラッチ回路やフリップフロップ回路で構成されたデータ保持回路は、入力信号に変化がない限り電流を消費せず、電圧が印加されていればデータを保持することが可能である。
【0005】
近年、電子機器の高機能化、回路規模増大に伴い、消費電力が増加し、一時的に大電流が流れる場合がある。携帯機器等に搭載される電池は内部抵抗が存在し、この内部抵抗により、大電流が流れると著しい電圧低下が生じる。この電圧低下が生じた場合でも以前の論理を保持しておくことが可能なデータ保持回路が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】CMOS−ICとFET《電子科学シリーズ》27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のCMOSアーキテクチャのラッチ回路やフリップフロップ回路で構成されたデータ保持回路は、電源−GND間に設けられていたため、電源電圧が一時的にデータ保持回路の保持可能最低電圧を下回るとデータを保持できなかった。電源電圧が復帰しても、出力されるデータは、電源電圧が低下する以前のデータとは無関係のデータとなっていた。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、電源電圧が一時的に非常に低下した場合でも電源電圧低下以前の論理を保持しておくことが可能なデータ保持回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のデータ保持回路は、データ保持回路と電源の間に、ダイオードと容量で構成した電源電圧維持回路を挿入し、データ保持回路を入力端子にダイオードによって遮断された側の電圧が入力されたときにデータが変化する構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明のデータ保持回路は、上述したような回路構成を採ることにより、電源電圧が一時的に非常に低下しても、電源電圧が再び正常な電圧に復帰した際に、電源電圧低下前のデータを出力することが可能になり、引き続き正常な論理動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施例のデータ保持回路の接続例を示す回路図である。
【図2】第2の実施例のデータ保持回路の接続例を示す回路図である。
【図3】第1の実施例のデータ保持回路を示す回路図である。
【図4】第2の実施例のデータ保持回路を示す回路図である。
【図5】第1の実施例のデータ保持回路の動作波形である。
【図6】第2の実施例のデータ保持回路動作波形である。
【図7】第1の実施例のデータ保持回路の詳細な回路図である。
【図8】第2の実施例のデータ保持回路の詳細な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
データ保持回路と並列に接続された容量素子と、容量素子から電流が流出しないよう接続されたダイオードとで電圧維持回路を構成し、電源電圧が一時的に非常に低下した場合でもデータを保持し続けることを可能とし、電源電圧が通常の電圧に復帰した際に、電源電圧低下前のデータを出力する。
【実施例1】
【0013】
図1は、第1の実施例のデータ保持回路の接続例を示す回路図である。電源VDD11の電圧は、ダイオードD1を介して容量Chold1に蓄えられ、電圧VDD12としてデータ保持回路HLDCKT1に供給される。ダイオードD1と容量Chold1は、電源電圧維持回路を構成する。データ保持回路HLDCKT1は、入力端子S11と、リセット端子S12と、出力端子S13を備えている。
【0014】
図3は、第1の実施例のデータ保持回路を示す回路図である。図1のダイオードD1と容量Chold1を含めて示している。データ保持回路HLDCKT1は、入力端子S11、リセット端子S12及び出力端子S13に設けられたレベルシフト回路LS11、LS12,LS13と、データを保持する論理回路であるNOR回路11及び12とを備える。データ保持回路HLDCKT1の論理回路は、電圧VDD12で動作するよう構成されている。
【0015】
次に、第1の実施例のデータ保持回路HLDCKT1の動作を説明する。図5は、第1の実施例のデータ保持回路の動作波形である。
【0016】
データ保持回路HLDCKT1は、Hパルスが入力された時にのみ動作する回路構成となっている。通常動作時は、入力信号の切り替わりに応じて電流が流れるため、ノードN11の電圧VDD12は電源電圧VDD11よりダイオードD1のバンドギャップ電圧VF1分だけ下がった電圧に保たれている。
【0017】
電源電圧VDD11の電圧が低下した場合、ダイオードD1にかかる電圧は逆バイアスとなり、電流が流れない。そのため、容量Chold1に蓄積された電荷は保持され、ノードN11の電圧VDD12は電圧低下以前の電圧を保持し続ける。
【0018】
このとき、データ保持回路HLDCKT1への入力データが変化すると、入力信号の切り替わりに応じて電流が流れるため、データ保持回路HLDCKT1は容量Chold1に蓄積した電荷を消費する。しかし、電源電圧VDD11が非常に低下している時は、データ保持回路へ入力信号を出力する回路が動作できないので、入力データが変化することはない。すなわち、データ保持回路HLDCKT1は容量Chold1に蓄積した電荷を消費することはない。
【0019】
従ってデータ保持回路HLDCKT1は、電源電圧VDD11の電圧が低下したとしてもデータを保持することが可能であり、電源電圧VDD11の電圧が復帰すると電源電圧低下前のデータを出力することが出来る。
【0020】
図7に、一例として第1の実施例のデータ保持回路の詳細な回路図を示す。
【0021】
なお、データ保持回路HLDCKT1を構成するPチャネル型MOSトランジスタは、バックゲートをノードNVDD11に接続していると、電源電圧VDD11が低くなった際、寄生ダイオードを通じて電流が流れてしまう。従って、容量Chold1に蓄積された電荷が消費されてしまう。このため、データ保持回路HLDCKT1を構成するPチャネル型MOSトランジスタは、バックゲートをノードN11に接続する必要がある。
【実施例2】
【0022】
図2は、第2の実施例のデータ保持回路の接続例を示す回路図である。電源VDD21の電圧は、容量Chold2に蓄えられ、電圧VDD12としてデータ保持回路HLDCKT2に供給される。データ保持回路HLDCKT2と容量Chold2は、ダイオードD2を介して接地されている。ダイオードD2と容量Chold2は、電源電圧維持回路を構成する。データ保持回路HLDCKT2は、入力端子S21と、リセット端子S22と、出力端子S23を備えている。
【0023】
図4は、第2の実施例のデータ保持回路を示す回路図である。図2のダイオードD2と容量Chold2を含めて示している。データ保持回路HLDCKT2は、入力端子S21、リセット端子S22及び出力端子S23に設けられたレベルシフト回路LS21、LS22,LS23と、データを保持する論理回路であるNAND回路21及び22とを備える。データ保持回路HLDCKT2の論理回路は、電圧VDD22で動作するよう構成されている。
【0024】
次に、第2の実施例のデータ保持回路HLDCKT2の動作を説明する。図6は、第2の実施例のデータ保持回路の動作波形である。
【0025】
データ保持回路HLDCKT2は、Lパルスが入力された時にのみ動作する回路構成となっている。通常動作時は、入力信号の切り替わりに応じて電流が流れるため、ノードN21の電圧はGNDよりダイオードD2のバンドギャップ電圧VF2分だけ上がった電圧に保たれている。
【0026】
電源電圧VDD21の電圧が低下した場合、ダイオードD2にかかる電圧は逆バイアスとなり、電流が流れない。そのため、容量Chold2に蓄積された電荷は保持され、ノードN21の電圧VDD22は電源電圧VDD21低下以前の電圧を保持し続ける。
【0027】
このとき、データ保持回路への入力データが変化すると、入力信号の切り替わりに応じて電流が流れるため、データ保持回路HLDCKT2は容量Chold2に蓄積した電荷を消費する。しかし、電源電圧VDD21が非常に低下している時は、データ保持回路HLDCKT2へ入力信号を出力する回路が動作できないので、入力データが変化することはない。すなわち、データ保持回路HLDCKT2は容量Chold2に蓄積した電荷を消費することはない。
【0028】
従ってデータ保持回路HLDCKT2は、電源電圧VDD21の電圧が低下したとしてもデータを保持することが可能であり、電源電圧VDD21の電圧が復帰すると電源電圧低下前のデータを出力することが出来る。
【0029】
図8に、一例として第1の実施例のデータ保持回路の詳細な回路図を示す。
【0030】
なお、データ保持回路HLDCKT2を構成するNチャネル型MOSトランジスタは、バックゲートをGNDに接続していると、電源電圧VDD21が低くなった際、寄生ダイオードを通じて電流が流れてしまう。従って、容量Chold2に蓄積された電荷が消費されてしまう。このため、データ保持回路HLDCKT2を構成するNチャネル型MOSトランジスタは、バックゲートをノードN21に接続する必要がある。
【符号の説明】
【0031】
HLDCKT1、HLDCKT2 データ保持回路
S11、S21 入力端子
S12、S22 リセット端子
S13、S23 出力端子
LS11、LS12、LS13、LS21、LS22、LS23 レベルシフタ
NOR11、NOR12 NOR回路
NAD21、NAD22 NAND回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の正極端子とアノードを接続したダイオードと、
前記ダイオードのカソードと接地の間に接続した容量と、
前記ダイオードのカソードの電圧で動作するデータ保持回路と、を備え、
前記データ保持回路は、
入力信号を前記電源の電圧から前記ダイオードのカソードの電圧に変換するレベルシフト回路と、
前記ダイオードのカソードの電圧で動作し、データを保持する論理回路と、
前記論理回路の出力信号を前記電源の電圧に変換するレベルシフト回路と、
を備え、前記入力信号が前記電源の正極端子の電圧のときにデータが変化する、ことを特徴とするデータ保持回路。
【請求項2】
電源の負極端子とカソードを接続したダイオードと、
前記電源の正極端子と前記ダイオードのアノードの間に接続した容量と、
前記電源の正極端子と前記ダイオードのアノードの間の電圧で動作するデータ保持回路と、を備え、
前記データ保持回路は、
入力信号を前記電源の電圧から前記電源の正極端子と前記ダイオードのアノードの間の電圧に変換するレベルシフト回路と、
前記電源の正極端子と前記ダイオードのアノードの間の電圧で動作するデータを保持する論理回路と、
前記論理回路の出力信号を前記電源の電圧に変換するレベルシフト回路と、
を備え、前記入力信号が前記電源の負極端子の電圧のときにデータが変化する、ことを特徴とするデータ保持回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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