説明

データ入力装置

【課題】 この発明は、机上から浮かせた状態で指の負担が可及的に少なく操作でき、かつ限られた数のキーによって可及的に多くの入力信号が得られる入力装置を得ることを課題とするものである。
【解決手段】 この発明の入力装置は、右手の掌で把持できる大きさ、形状とした右入力体4と、左手の掌で把持できる大きさ、形状とした左入力体1とを組合せて構成する。前記右及び左の各入力体には、これらの入力体を掌で把持したときの各指の位置に対応する位置に、指の長さ方向に沿って2個のキー3を前後に配設し、各キー及び前後2つのキーの同時押しに対応した信号を割り当てる。
この発明によれば、可及的に少ない数のキーによって通常の文字入力が可能となり、かつ指を左右に移動させる必要がないので指への負担が少ない。そして、左右の入力体は掌で握れる大きさ形状であるから、机上で操作する必要がなく、横たわった状態でも無理なく操作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パーソナルコンピュータその他の電子機器に文字などのデータを入力するためのデータ入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータなどの電子機器に文字情報を入力する場合、通常汎用型のキーボードが用いられている。汎用型のキーボードにはアルファベット26文字と数字、各種記号など多数のキーが配設されており、これを使いこなして日本語を入力するためには熟練が必要である。
また、キーボードは机又は膝などに置いて操作することを前提に作られており、寝たまま仰向けで使用することは不可能である。
【特許文献1】特開2002−55759号公報
【0003】
係る問題点を解決するものとして、本願発明者は先に、掌で把持できる大きさ、形状とした二つの入力体を組合せ、各入力体に把持した状態で操作することのできるキーを配設して構成したデータ入力装置を提案した(特開2002−55759号)。
この発明は1本の指で操作すべきキーを左右に並べて配設したもので、入力操作に際しては指を左右に移動させる必要がある。
【特許文献2】特開昭62−9419号公報
【0004】
上記公報に記載されている発明は、左右の手の掌で握って操作できるようにした二つのキーボード部で構成された入力装置であり、各キーボード部は支持台に水平回転可能に支持された操作盤にキーが取り付けられた構成である。そして、入力モードの切替は操作盤を回転させることによって行うようにされている。
この発明は、各指に対して2個のキーを前後に配設した点では本願発明と共通するが、この発明の入力装置は、支持台を机上において使用するものであって、手で握った状態で机上から浮かせて(例えば仰向けの状態で)操作することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、机上から浮かせた状態で指の負担が可及的に少なく操作でき、かつ限られた数のキーによって可及的に多くの入力信号が得られる入力装置を得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の入力装置は、右手の掌で把持できる大きさ、形状とした右入力体と、左手の掌で把持できる大きさ、形状とした左入力体とを組合せて構成する。
前記右及び左の各入力体には、これらの入力体を掌で把持したときの各指の位置に対応する位置に、指の長さ方向に沿って2個のキーを前後に配設する。2個のキーの配設位置は、指の第二関節より指先側とすることが好ましい。
各入力体のボディーの形状は、掌で把持することができれば制約はない。
各キーのキートップの形状は、半球状、平板状など適宜選択することができる。そして、キートップは前後方向に傾動自在としたり、前後に配設された2個のキーを覆うカバーで被覆することもできる。前記カバーは硬質のものでもよいが、ゴムや軟質樹脂など弾性素材を用いると、キー操作の際に前後方向に移動する指の動きにキートップが追随することとなり、入力時の指への負担が軽減される。
なお、キーは横方向の動きが比較的容易な親指には前後2個のキーを二組配設したり、指に対応した位置に加えて、掌の手首側や手首に対応した位置に設けることもできる。
【0007】
前記前後に配設された2個のキーは、各キーに対応する信号と、2個のキーの同時押しに対応する信号とを割り当てる。この構成によって、限られた数のキーによって可及的に多くの文字の入力が可能となる。なお、2個のキーの同時押しに対応する信号は、必ずしも全てのキーに割り当てる必要はない。
キーの数が限られているので、入力モードの切替が可能であることが好ましい。入力モードの切り替え信号は何れかのキーに割り当てる必要があるが、上記2個のキーの同時押しに割り当てる(「同時押しに割り当てる」ことも「何れかのキーに割り当てる」に含まれる。)ことにより、個別キーへの割り当て文字を減らすことなく、入力モードの切り替え信号を得ることができる。
また、同時押し入力は前後の二個のキーのみならず、左右に隣接するキーを含めて三つの同時押し、四つの同時押しなどにそれぞれ信号を割り当てることも可能である。
なお、入力モードには、かな入力モード、英字入力モード、数字入力モードなどが考えられる。英字入力モードにおいては、一つのキーに複数の文字を割り当て(例えばA,B,C)、当該キーを一度押すとA、2度押すとB、3度押すとCの文字が入力されるようにする。また携帯電話機における文字入力のように、一つのキーに数個の文字を割り当てることにより、左又は右の何れか一方の入力体のみを使用して文字入力を行うことも可能である。
【0008】
なお、モード切替を含めると一つのキーに割り当てられる文字など出力信号の数が多くなり、表示スペースが不足するなどの問題が発生して入力体に全ての入力モードにおけるキーへの割り当てをキートップや入力体の表面に表示することが困難な場合が考えられる。
その場合は、入力時に接続されたモニター画面に入力装置の絵を表示し、その絵に使用中の入力モードに対応するキーの割り当てを表示するようにすることも考えられる。
【0009】
前記各入力体のボディーは熱可塑性樹脂で形成すると、使用者の掌に合致した形状の入力装置が得られ、作業性が向上する。前記熱可塑性樹脂とは、熱を加える(湯につける)ことによって軟化し冷却により硬化する性質の樹脂をいい、例えばヒノデワシ株式会社のポリエチレン樹脂「おゆまる」(商品名)、株式会社ダイセルクラフト製のポリカプロラクトン(平均分子量約5×104)に塩素化パラフィンを混ぜた樹脂「自由樹脂 FREEPLASTIC」(商品名)等である。ボディーを加熱して軟化した状態で使用者がこれを手で軽く握ると、特定の使用者の掌形状に沿ってボディーは変形し、冷却により硬化して変形した形状が保持される。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、指に沿って前後に2個のキーを配設し、前後の2個のキーには同時押しに対応する信号も割り当てたので、可及的に少ない数のキーによって通常の文字入力が可能となり、かつ指を左右に移動させる必要がないので指への負担が少ない。そして、左右の入力体は掌で握れる大きさ形状であるから、机上で操作する必要がなく、ベッドに横たわった状態でも無理なく操作することができる。
その結果、机上で作業をすることのできない病人や手や指の動作が不自由な人でもコンピュータなどにデータを入力することができる。
また、キーの数が少ないのでブラインドタッチが容易であり、指の動きが極めて少ないので標準キーボードと比較して高速な入力が可能である。その結果、健常者にとっても入力作業の高速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は左手用の入力体1を示す平面図である。前記入力体1は合成樹脂製で掌で握れる大きさの半球状としたボディー2の上面にキー3が取り付けてある。前記キー3は、前記ボディー2を掌で握ったときにおける親指の位置に対応する位置に2個のキー31a、31bが前後に配設してあり、人差し指に対応する位置に2個のキー32a,32bが前後に配設してあり、中指に対応する位置に2個のキー33a,33bが前後に配設してあり、薬指に対応する位置に2個のキー34a,34bが前後に配設してあり、小指に対応する位置に2個のキー35a,35bが前後に配設してある。
上記において、各指に対応して前後に配設されたキーの位置は、各指の第二関節よりも指先側としてある。図においては親指に対応して更に1組の補助キー36a、36bが設けてある。
前記各キー3は円柱状のキートップを有し、押し下げることにより入力信号が発せられるようにしてあり、各キーを単独で押し下げたときに対応する信号の他に、二つのキーを同時に押し下げたときに対応する信号も発せられるようにしてある。すなわち前後に並んだ2つのキーで3種類の信号が発せられる。
そして、各キーのキートップは前後方向に傾動し、キー操作時における指の前後移動に追随し、キー操作時の指の負担が軽減するようにしてある。
図2に示す右手用の入力体4も左手用の入力体1と同様の構成であり、同じ符号で表示する。
【0012】
図3は2個のキーをゴムカバー5で被覆した構成を示すものである。前後に並ぶ2個のキー(図は一例として31a、31bを示す)の上部に、これらを覆う大きさで上壁と周壁とを有するゴムカバー5が装着してある。
このような構成においては、キー操作時の指の前後移動に伴いゴムカバー5がその弾性変形によって前後に移動するので、指の負担が軽減される。
なお、この態様においては、ゴムカバー5はキートップ付のキーに装着しても、キートップを省略してキー本体に直接ゴムカバー5を装着してもよい。また、キートップ付のキーに装着する場合、そのキートップは傾動するものであっても傾動しないものであってもよい。
【0013】
図4はキー3の別の構成であって、前後に並んだ二つのキー本体6a、6bに対向させて指のカーブに沿って突弧状に湾曲させた板状のキートップ7を配設してある。このキートップ7は前後中央部において、バネ8によって支持されたセンターピン9に取り付けられており、センターピン9を中心に傾動すると共に、バネ8に抗して押し下げることができるようにしてある。
この構成のキーにおいては、キートップ7の前部を押し下げるとキー本体6aが押し下げられ、後部を押し下げるとキー本体6bが押し下げられ、中央部を押し下げるとキー本体6a,6bが共に押し下げられることとなる。
なお、キートップの形状は図5に示すように中央から両端に向けて上向き傾斜とすることもできるが、図4のような形態とすると指に馴染んで疲れにくい。
【0014】
以下各キーへの入力信号の割り当て例を説明する。
図1,図2は日本語入力モードにおける割り当てであり、左手用の入力体1には小指前方から親指後方の順に、「Back Space」「は行」「か行」「ま行」「さ行」「や行」「た行」「ら行」「な行」「わ行」と割り当て、さらに小指対応のキー35a,35bの同時押しに対して「ば行」、薬指対応のキー34a、34bの同時押しに対して「が行」、中指対応のキー33a、33bの同時押しに対して「ざ行」、人差し指対応のキー32a、32bの同時押しに対して「だ行」がそれぞれ割り当てられている。
また、右手用の入力体4には親指の補助キー36aを「Enter」とし、次いで親指前方から小指後方の順に「あ」「Shift」「い」「濁点」「う」「半濁点」「え」「小文字変換」「お」「Space(変換)」と割り当ててある。さらに人差し指対応のキー32a,32bの同時押しに対して「日本語入力モード呼び出し」、中指対応のキー33a、33bの同時押しに対して「英字入力モード呼び出し」、薬指対応のキー34a、34bの同時押しに対して「数字入力モード呼び出し」がそれぞれ割り当てられている。
【0015】
上記において日本語を入力するときには、例えば左入力体1で「か行」キーを押し、右手入力体で「い」キーを押すと「き」と入力される。濁音「ぎ」を入力使用するときは、上記「き」を入力する操作の後に「濁点」キーを押す方法の他に、左入力体1の薬指対応の2個のキーを押した後に右入力体4の「い」を入力することもできる。
入力操作において英文字の入力が必要になったときには、「英文字入力モード呼び出し」キーを押すと、英文字入力が可能となる。
【0016】
英文字入力モードにおけるキーの割り当ての一例を図5、図6に示す。各文字入力キーには複数の文字を割り当てる。図においては左入力体1のキー32aには「P,Q,R,S」の4文字を割り当ててある。ここでキーを一度押すと「P」、二度押すと「Q」三度押すと「R」、四度押すと「S」の各文字が入力される。
【0017】
図7,図8は日本語入力モードの変形例である。制御キーは左入力体1に集中させ、右入力体4のキーには親指の補助キーを含めて50音全てを割り当ててある。図においては右入力体4のキー32aには「か、き、く、け、こ」の5文字が割り当ててあり、上記英文字入力と同様対応するキーを複数回押すことにより所望の文字を呼び出すようにしてある。
この構成においては、基本入力は全て右入力体で行うことができるので、片手が不自由な者であっても入力操作を行うことができる。なお、右入力体のいずれか二つのキーの同時押しによって、右入力体と左入力体の機能を入れ替えることができるようにしておくと、右入力体で全ての操作を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明によれば、入力体を掌出に儀手入力作業をすることができるので、入力作業を机上で行う必要がなく、ベッドに横たわった状態でもおこなうことができる。そしてキー配列が極めて単純であり、かつ2個のキーで3種類の入力を行うことができるので、ブラインドタッチによる高速入力も可能となるものであって、産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明実施形態の左入力体の平面図
【図2】同じく右入力体の平面図
【図3】ゴムカバーを取り付けたキーの断面図
【図4】2個のキー本体にまたがるキートップを取り付けたキーの断面図
【図5】同じく左入力体の英文字入力モードにおけるキー割り当てを示す平面図
【図6】同じく右入力体の英文字入力モードにおけるキー割り当てを示す平面図
【図7】同じく左入力体の日本語入力モード変形例におけるキー割り当てを示す平面図
【図8】同じく右入力体の日本語入力モード変形例におけるキー割り当てを示す平面図
【符号の説明】
【0020】
1 左入力体
2 ボディー
3 キー
4 右入力体
5 ゴムカバー
6a,6b キー本体
7 キートップ
8 バネ
9 センターピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右手の掌で把持できる大きさ、形状とした右入力体と、左手の掌で把持できる大きさ、形状とした左入力体とを組合せて構成され、
前記右及び左の各入力体には、これらの入力体を掌で把持したときの各指の位置に対応する位置に、指の長さ方向に沿って2個のキーが前後に配設され、
前後に配設された2個のキーの一部又は全てには、各キーに対応する信号と、2個のキーの同時押しに対応する信号とが割り当てられた、
データ入力装置
【請求項2】
何れかのキーに、入力モード切り替え信号が割り当てられた、請求項1記載のデータ入力装置
【請求項3】
各キーのキートップは、前後方向に傾動可能とした、請求項1又は2に記載のデータ入力装置
【請求項4】
前後に配設された2個のキーは、両者を覆う形状のカバーで被覆された、請求項1ないし3の何れかに記載のデータ入力装置
【請求項5】
各入力体のボディーは熱可塑性樹脂で形成された、請求項1ないし4の何れかに記載のデータ入力装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−338089(P2006−338089A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158743(P2005−158743)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(591267855)埼玉県 (71)
【Fターム(参考)】