説明

データ処理装置,データ処理方法,作業機械の遠隔診断システム及び作業機械の遠隔診断方法

【課題】データ処理装置,データ処理方法,作業機械の遠隔診断システム及び作業機械の遠隔診断方法に関し、簡素な構成で、対象体の状態をより正確かつ効率的に解析することができるようにする。
【解決手段】対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを検出する実データ検出手段1と、実データ検出手段1で検出された該複数の実データのうち、予め設定された抽出条件を満たす実データを有効実データとして抽出する実データ抽出手段4aと、実データ抽出手段4aで抽出された該有効実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習によりニューロンへと圧縮するニューロン圧縮手段6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューラルネットワークの教師なし学習の手法を用いて、各種機械をはじめとする、動植物,微生物等の生命体、天候や天体の運動等の自然現象など種々の対象体の状態を診断するためのデータ処理装置及びデータ処理方法に関し、特に、油圧ショベル等の作業機械に生じる稼働状態を診断するのに用いて好適な作業機械の遠隔診断システム及び作業機械の遠隔診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、膨大な数のデータの構造を解析するために、ニューラルネットワークの教師なし学習の手法を用いてデータをニューロンへと圧縮する技術や、圧縮されたニューロンから元のデータの構造を復元する技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、対象となる機械に取り付けられたセンサにより、機械の稼働状態に応じて変動する複数のパラメータ値からなるデータセットを複数検出する構成や、複数のデータセットをニューロンの座標情報,平均距離情報及びウェイト情報を含むニューロンモデルパラメータへと圧縮する構成、これらのニューロンモデルパラメータを機械から管理センターへと送信し、ニューロンの移動平均やデータセットの密度分布(分布密度)を求めてデータセットを解析する構成等が開示されている。これらのような構成により、圧縮データから元のデータセットの特性をより正確に再現して、機械の診断を行うことができるようになっている。
【特許文献1】特開2006−11849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、機械の稼働状態に応じて変動する複数のパラメータが大量にあるような場合、すなわち、ニューロンへと圧縮するデータセット数が膨大である場合には、それらのデータセットの圧縮に係る時間や労力も増加することになる。例えば、油圧ショベル等の作業機械における診断を行う場合には、エンジン回転数やエンジンへの過給圧,燃料消費率,排気温度等のエンジンの状態に関連するパラメータだけでなく、油圧回路のパワーシフト圧や油圧ポンプ圧力,負荷圧力,作動油温,油圧ポンプケース圧,油圧ポンプドレーン圧等の油圧回路及び油圧ポンプに関連するパラメータや、外気温度,総稼働時間,作業モードといった様々なパラメータを考慮する必要がある。
【0004】
したがって、これらの全てのパラメータ値からなるデータセットをニューロンへと圧縮しようとすれば、複雑な演算処理を長時間行わなければならない。また、圧縮されたデータから元のデータセットの特性を復元するにも同様の労力が必要となってしまう。
また、油圧ショベル等の作業機械においては、センサによって得られた情報が必ずしもその作業機械の稼働状態を正しく反映しているとはいえない場合がある。例えば、エンジンを始動させてから暖機するまでの間の暖機運転時には、たとえ稼働状態が変化していなくてもパラメータが不安定に変動することがあり、正確な診断が望めない。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、簡素な構成で、対象体の状態をより正確かつ効率的に解析することができるようにした、データ処理装置,データ処理方法,作業機械の遠隔診断システム及び作業機械の遠隔診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明のデータ処理装置は、対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを検出する実データ検出手段(データ検出装置)と、該実データ検出手段で検出された該複数の実データのうち、予め設定された抽出条件を満たす実データを有効実データとして抽出する実データ抽出手段(実データ抽出部)と、該実データ抽出手段で抽出された該有効実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習によりニューロンへと圧縮するニューロン圧縮手段(ニューロン圧縮部)とを備えたことを特徴としている。
【0007】
つまり、検出された全ての情報をニューロンへ圧縮するのではなく、検出された情報から、さらにニューロン圧縮に供する情報を抽出した後に、抽出した情報のみをニューロンへと圧縮する。
なお、作業機械の稼働状態の判定に係るデータ処理装置の場合、実データ検出手段によって検出される実データを構成するパラメータには、例えば、総稼働時間の情報,稼働位置情報,エンジン・車両のエラー情報,アクセルダイヤル情報,レバー操作量の情報をはじめとして、エンジン回転数,エンジンオイル圧力,ブースト圧力,燃料消費量,排気温度,パワーシフト圧力,油圧ポンプ圧力,ロードファクター(稼働率),エンジンオイル温度,エンジン冷却水温度,作動油温度,外気温度,油圧ポンプケース温度,油圧ポンプドレーン圧等が挙げられる。
【0008】
また、請求項2記載の本発明のデータ処理装置は、請求項1記載の構成において、該有効実データの数に応じて圧縮する該ニューロンの数及び圧縮に係るトレーニング条件を設定するトレーニング条件設定手段(トレーニング条件設定部)をさらに備えたことを特徴としている。
また、請求項3記載の本発明のデータ処理装置は、請求項2記載の構成において、該トレーニング条件設定手段が、該トレーニング条件として、学習率,近傍領域関数及び学習回数(すなわち、ニューロン圧縮の学習結果に影響する演算条件)を設定することを特徴としている。
【0009】
また、請求項4記載の本発明のデータ処理装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載の構成において、該ニューロン圧縮手段が、該有効実データをその検出時刻の新しい順に用いて、ニューロンへと圧縮することを特徴としている。つまり、ニューロン圧縮の学習に用いられる該有効実データの順列が、その検出時刻に基づいて規定される。
また、請求項5記載の本発明のデータ処理装置は、請求項1〜4の何れか1項に記載の構成において、該実データ検出手段で検出される該複数の実データを記憶しうる複数の記憶手段(第一記憶部,第二記憶部)をさらに備えたことを特徴としている。
【0010】
例えば、作業機械の状態判定に係るデータ処理装置の場合、作業機械の1日分の稼働情報を記憶しうる容量を有する第一記憶部及び第一記憶部と同一容量の第二記憶部とを用意しておく。もちろん、より多くの記憶部を用意しておいてもよい。
また、請求項6記載の本発明のデータ処理装置は、請求項1〜5の何れか1項に記載の構成において、該ニューロン圧縮手段により得られた該ニューロンに基づいて、該対象体の状態を復元する状態復元手段をさらに備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項7記載の本発明の作業機械の遠隔診断システムは、請求項6項に記載のデータ処理装置を備えて、作業機械の稼働状態を診断する遠隔診断システムであって、該実データ検出手段が、該作業機械に搭載されて、該作業機械の稼働状態に応じて変動する該複数のパラメータからなる該複数の実データを検出し、該実データ抽出手段及び該ニューロン圧縮手段が、第一の情報処理装置(第一データ処理装置)として該作業機械に搭載されるとともに、該状態復元装置が、第二の情報処理装置(第二データ処理装置)として該作業機械の外部に設けられて、該第一の情報処理装置から該ニューロンの情報を遠隔通信により取得することを特徴としている。
【0012】
また、請求項8記載の本発明の作業機械の遠隔診断システムは、請求項7記載の構成において、該実データ抽出手段が、該複数の実データのうち、該作業機械の負荷運転状態下において検出された実データを該有効実データとして抽出することを特徴としている。
なお、作業機械の負荷運転の判定は、レバー操作量の情報や負荷圧力等に基づいて判定することが考えられる。
【0013】
また、請求項9記載の本発明の作業機械の遠隔診断システムは、請求項7又は8記載の構成において、該作業機械のエンジン油温又はエンジン冷却水温を検出する温度センサを備え、該実データ抽出手段が、該温度センサで検出された該エンジン油温又は該エンジン冷却水温が予め設定された所定温度以上であるときに検出されたパラメータからなる実データを該有効実データとして抽出することを特徴としている。
【0014】
つまりここでは、作業機械が暖機運転中でないことが有効実データの抽出条件となっている。なお、エンジンオイル温度やエンジン冷却水温度だけでなく、作動油温度,外気温度,油圧ポンプケース温度等の温度情報が、予め設定された所定温度以上であるか否かによって判定してもよい。
また、請求項10記載の本発明の作業機械の遠隔診断システムは、請求項7〜9の何れか1項に記載の構成において、該作業機械のエンジン目標回転数として、複数の目標回転数の中から一つの目標回転数を選択して設定する稼働ダイヤルを備え、該実データ抽出手段が、該稼働ダイヤルにおける設定頻度が所定頻度以上である目標回転数が該エンジン目標回転数として設定されているときに検出されたパラメータからなる実データを該有効実データとして抽出することを特徴としている。
【0015】
請求項11記載の本発明のデータ処理方法は、対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを検出する実データ検出ステップと、該実データ検出ステップで検出された該複数の実データのうち、予め設定された抽出条件を満たす実データを有効実データとして抽出する実データ抽出ステップと、該実データ抽出ステップで抽出された該有効実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習によりニューロンへと圧縮するニューロン圧縮ステップとを備えたことを特徴としている。
【0016】
また、請求項12記載の本発明のデータ処理方法は、請求項11記載の構成において、該有効実データの数に応じて圧縮する該ニューロンの数及び圧縮に係るトレーニング条件を設定するトレーニング条件設定ステップをさらに備えたことを特徴としている。
また、請求項13記載の本発明のデータ処理方法は、請求項11又は12記載の構成において、該ニューロン圧縮ステップにおいて、該トレーニング条件として、学習率,近傍領域関数及び学習回数を設定することを特徴としている。
【0017】
また、請求項14記載の本発明のデータ処理方法は、請求項11〜13の何れか1項に記載の構成において、該ニューロン圧縮ステップにおいて、該有効実データをその検出時刻の新しい順に用いて、ニューロンへと圧縮することを特徴としている。
また、請求項15記載の本発明のデータ処理方法は、請求項11〜14の何れか1項に記載の構成において、該実データ検出ステップで検出される該複数の実データを記憶しうる複数の記憶ステップをさらに備えたことを特徴としている。
【0018】
また、請求項16記載の本発明のデータ処理方法は、請求項11〜15の何れか1項に記載の構成において、該ニューロン圧縮ステップで得られた該ニューロンに基づいて、該対象体の状態を復元する状態復元ステップをさらに備えたことを特徴としている。
請求項17記載の本発明の作業機械の遠隔診断方法は、請求項16項に記載のデータ処理方法を用いて、作業機械の稼働状態を診断する遠隔診断方法であって、該実データ検出ステップにおいて、該作業機械の稼働状態に応じて変動する該複数のパラメータからなる該複数の実データを検出し、該実データ抽出ステップ及び該ニューロン圧縮ステップにおけるデータ処理を、該作業機械に搭載された第一の情報処理装置上で実施するとともに、該状態復元ステップにおけるデータ処理を、遠隔通信により該ニューロンの情報を該第一の情報処理装置から該作業機械の外部に設けられた第二の情報処理装置へ伝達し、該第二の情報処理装置上で実施することを特徴としている。
【0019】
また、請求項18記載の本発明の作業機械の遠隔診断方法は、請求項17記載の構成において、該実データ抽出ステップにおいて、該複数の実データのうち、該作業機械の負荷運転状態下において検出された実データを該有効実データとして抽出することを特徴としている。
また、請求項19記載の本発明の作業機械の遠隔診断方法は、請求項17又は18記載の構成において、該実データ抽出ステップにおいて、該作業機械のエンジン油温又はエンジン冷却水温が予め設定された所定温度以上であるときに検出されたパラメータからなる実データを該有効実データとして抽出することを特徴としている。
【0020】
また、請求項20記載の本発明の作業機械の遠隔診断方法は、請求項17〜19の何れか1項に記載の構成において、該作業機械に設けられた稼働ダイヤルによって、複数の目標回転数の中から一つ選択されて設定されるエンジン目標回転数を検出する目標回転数検出ステップを備えるとともに、該実データ抽出ステップにおいて、該目標回転数検出ステップにおける検出頻度が所定頻度以上である目標回転数が該エンジン目標回転数として設定されているときに検出されたパラメータからなる実データを該有効実データとして抽出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明のデータ処理装置及びデータ処理方法(請求項1,11)によれば、複数の実データの中から有効実データを抽出することにより、ニューロン圧縮の信頼性を向上させることができる。
また、本発明のデータ処理装置及びデータ処理方法(請求項2,12)によれば、有効実データの数に応じてトレーニング条件を設定することにより、圧縮にかかる時間や精度を任意に調節することができる。
【0022】
また、本発明のデータ処理装置及びデータ処理方法(請求項3,13)によれば、トレーニング条件として、学習率,近傍領域関数及び学習回数を用いることで、圧縮過程において、より近似的な実データの特性を保持することが可能となる。
また、本発明のデータ処理装置及びデータ処理方法(請求項4,14)によれば、検出時刻が新しい順に有効実データが用いられるため、データ圧縮の時点における最新の状態に係るデータを圧縮することができる。また、例えば油圧ショベルの場合には、始動後,特に暖機前の有効実データを排除することができ、ニューロン圧縮の信頼性をさらに向上させることができる。
【0023】
また、本発明のデータ処理装置及びデータ処理方法(請求項5,15)によれば、複数の記憶手段を備えることにより、ニューロン圧縮に供する情報を使い分けることができる。例えば、対象体の稼働日や稼働内容に応じたニューロンを得ることができ、それらを用いたデータ処理が可能となる。また、検出された複数のパラメータを、複数の記憶手段に順に記憶させることにより、ニューロン圧縮や基本統計量の算出に係る演算を行いつつ、作業機械を連続稼働させることができる。
【0024】
また、本発明のデータ処理装置及びデータ処理方法(請求項6,16)によれば、有効実データを用いて対象体の状態を復元することにより、正確な対象体の状態判定が可能となる。
また、本発明の作業機械の遠隔診断システム及び作業機械の遠隔診断方法(請求項7,17)によれば、作業機械に搭載された第一の情報処理装置から作業機械の外部に設けられた第二の情報処理装置へ伝達される情報量を圧縮することができ、遠隔通信の効率を高めることができる。
【0025】
また、本発明の作業機械の遠隔診断システム及び作業機械の遠隔診断方法(請求項8,18)によれば、作業機械のアイドリング時の情報を除外することができ、演算結果の信頼性を向上させることができる。
また、本発明の作業機械の遠隔診断システム及び作業機械の遠隔診断方法(請求項9,19)によれば、作業機械の暖機運転時の過渡的な情報を除外することができ、演算精度をより高めることができる。
【0026】
また、本発明の作業機械の遠隔診断システム及び作業機械の遠隔診断方法(請求項10,20)によれば、使用頻度の高い稼働状態における情報を抽出することができ、作業機械の診断の信頼性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4は本発明の一実施形態にかかるデータ処理装置を説明するものであり、図1は本データ処理装置の全体構成を示す構成図、図2は本装置におけるデータの記憶に係る制御内容を示すフローチャート、図3は本装置におけるデータの圧縮演算に係る制御内容を示すフローチャート、図4は本装置で復元されたデータの密度分布を示す三次元グラフである。
【0028】
[1.構成]
[1−1]全体構成
図1に示すように、本データ処理装置15は、油圧ショベルの状態(正常,非正常,故障等の状態)を診断の対象とした遠隔診断システムをなすものであり、油圧ショベル上に搭載されたデータ検出装置1及び第一データ処理装置10と、油圧ショベルから離れた場所にあるメンテナンスセンター(第一データ処理装置10が設けられた油圧ショベルの外部であって、例えば、油圧ショベルを所有、あるいは、管理する事業所等のことを意味する)で情報処理を行うための第二データ処理装置14とを備えて構成される。
【0029】
第一データ処理装置10は、油圧ショベルの状態が反映されている膨大な検出情報(データ)をデータ検出装置1から得て、その検出情報に内在する構造(油圧ショベルの状態を示す特性)を保ちつつ情報量のみを小さくする演算処理を実施するものである。つまり、第一データ処理装置10では、検出情報のデータサイズが圧縮されるようになっている。
【0030】
一方、第二データ処理装置14は、第一データ処理装置10で圧縮された情報を復元する演算処理を実施するものである。つまり、第二データ処理装置14では、検出情報が復元されるようになっている。
【0031】
[1−2]データ検出装置
データ検出装置1とは、油圧ショベルに関する各パラメータ(検出情報,変動要素)に対応する各種のセンサの総称であり、これらのセンサは、油圧ショベルの動作に応じて変動する各パラメータ値を検出するものである。
【0032】
ここで検出されるパラメータとは、センサから直接検出されるデータのほか、あるセンサでの検出情報を演算等によって処理して、対応するパラメータの値を推定値として求めたものを含む。例えば、現在時刻,総稼働時間(アワメータ)の情報,稼働位置情報,エンジン・車両のエラー情報,アクセルダイヤル(稼働ダイヤル)情報,レバー操作量の情報をはじめとして、エンジン回転数,エンジンオイル圧力,ブースト圧力,燃料消費量,排気温度,パワーシフト圧力,油圧ポンプ圧力,ロードファクター(稼働率),エンジンオイル温度,エンジン冷却水温度,作動油温度,外気温度,油圧ポンプケース温度,油圧ポンプドレーン圧等が挙げられる。
なお、これらの検出情報は、データ検出装置1で検出された時刻の情報とともに、随時第一データ処理装置10へと入力されるようになっている。
【0033】
[1−3]第一データ処理装置
第一データ処理装置10は、処理プログラムを内蔵した記憶装置(ROM,RAM等)や中央処理装置(CPU)を備えた小型のコンピュータである。第一データ処理装置10の内部には、機能部位として、前処理部2,データ収集部3,演算条件設定部(演算条件設定手段)4,演算部5,結果保存部8及び送信部9が備えられている。
【0034】
[1−4]前処理部
前処理部2は、データ検出装置1から入力された検出情報を、第一データ処理装置10の内部で演算しやすいデジタル値の形式に変換するとともに、各情報の有効桁数を揃える演算処理を実施するものである。
つまり、データ検出装置1から入力された各パラメータの情報には、センサの種類に応じてアナログ値の情報やデジタル値の情報が混在している。また、各検出情報の精度に関しても統一されていない。そこで、データ検出装置1から入力される検出情報を、演算しやすいように一旦前処理部2で前処理したのちに、他の演算を実施するようになっている。
【0035】
[1−5]データ収集部
図1に示すように、データ収集部3には、第一記憶部3a及び第二記憶部3b(ともに記憶手段の一つ)が設けられている。第一記憶部3a及び第二記憶部3bは、双方とも略同一の記憶容量(メモリ領域)を有しており、第一記憶部3a及び第二記憶部3bのそれぞれが油圧ショベルの一日分の稼働情報を記憶しうる容量を備えている。このように、各記憶部3a,3bを備えることにより、油圧ショベルの稼働日や作業内容に応じて、圧縮処理を行うデータを使い分けることができるようになっている。
【0036】
本実施形態のデータ収集部3では、各記憶部3a,3bの使い分けの判定条件として、フラグF1が設定されるようになっている。このフラグF1は、各記憶部3a,3bのうち、その時点でデータを記録中の(あるいは、その時点で入力されるデータを記録しうる)記憶部がどちらであるかを示すフラグであり、各記憶部3a,3bが記憶しうる稼働時間毎にF1=0又は1へと切り換えられるようになっている。
【0037】
本実施形態では、一日(24時間)毎にフラグF1がF1=0又はF1=1に切り換えられるようになっている。また、F1=0であるときに、データ記録中の記憶部が第一記憶部3aである状態を示し、F1=1であるときに、データ記録中の記憶部が第二記憶部3bである状態を示すものとする。つまり、データ収集部3は、F1=0であるときには、前処理部2から入力された情報を第一記憶部3aへ記録し、F1=1であるときには、第二記憶部3bへ記録するように機能する。
【0038】
このフラグF1を参照することによって、各記憶部3a,3bのうちどちらの記憶部がデータの記録中でないかを知ることができ、例えば、データの圧縮作業中に記憶部に記録された情報が上書きされてしまうのを防止できるようになっている。
なお、フラグF1の切り換えに関して、本実施形態のデータ収集部3は、現在時刻tが予め設定された所定時刻t1であるか否かの判定により、フラグF1をF1=0又はF1=1に切り換えるようになっている。また、所定時刻t1は午前0時に設定されている。
【0039】
[1−6]演算条件設定部
演算条件設定部(演算条件設定手段)4は、データ検出装置1で検出された各パラメータを、第一パラメータ群と第二パラメータ群とに分類するものであり、図1に示すように、その内部に、各パラメータ群の抽出条件を記憶している。
また、この演算条件設定部4には、第一パラメータ群の中からニューロン圧縮の演算に供される情報を抽出する実データ抽出部4aと、第二パラメータ群の中から基本統計量の演算に供される情報を抽出するパラメータ抽出部4bとが設けられている。なお、ここでいうニューロン圧縮とは、データ圧縮の手法の一つであり、後述のニューロン圧縮部6で実施される演算内容を意味している。また、基本統計量の演算とは、後述の基本統計量演算部7での演算内容のことを意味している。
【0040】
第一パラメータ群とは、油圧ショベルによる具体的な作業内容や動作の種類,作業モード等に応じて変化するパラメータであって、時間変動量が比較的大きいパラメータの総称である。ここでは例えば、エンジン回転数,エンジンオイル圧力,ブースト圧力,燃料消費量,排気温度,パワーシフト圧力,油圧ポンプ圧力,ロードファクター(稼働率)等のことを指している。
【0041】
一方、第二パラメータ群とは、油圧ショベルによる具体的な作業内容や動作の種類,作業モード等によって変化しにくい(影響を受けにくい)パラメータであって、時間変動量が比較的小さいパラメータの総称である。ここでは例えば、エンジンオイル温度,エンジン冷却水温度,作動油温度,外気温度,油圧ポンプケース温度,油圧ポンプドレーン圧等のことを指している。なお、これらの各部温度情報は、油圧ショベルの正常稼働時には、暖機運転後、略一定の値を示すことが知られている。
【0042】
つまり、演算条件設定部4では、稼働開始からの経過時間との相関関係が比較的弱い傾向にあるパラメータが、第一パラメータ群のパラメータとして抽出されるようになっている。一方、第二パラメータ群のパラメータには、稼働開始から所定の経過時間が過ぎると変動が安定化する傾向の強いパラメータが、第二パラメータ群のパラメータとして抽出されるようになっている。
【0043】
[1−7]有効実データの抽出
実データ抽出部4aは、上記の抽出条件によって第一パラメータ群に分類されたパラメータのうち、同時に検出されたパラメータ(同一の状態下において検出された各パラメータのことを意味し、ここでは同時刻に検出された各パラメータのことをいう)からなる多次元のベクトルを実データXsとして設定する。そして、この実データXsの中から、ニューロン圧縮制御に供されるものを抽出し、有効実データxsとして設定するようになっている。なお、実データ抽出部4aで抽出される実データXsに含まれるパラメータの種類がK種類であって、且つ、ここで設定される有効実データxsの数がM個であるとすると、有効実データxsは以下の式1のように一般化して記述することができる。以下の数式中においては、ベクトルやマトリックスを意味する記号を太字(Bold)で示し、スカラーを意味する記号を斜体(Italic)で示す。
【0044】
【数1】

【0045】
つまりここでは、一つの有効実データxsを、K次元空間内における点座標(データ点)として記述しており、実データ抽出部4aで抽出されたM個の有効実データxsは、K次元空間内におけるM個の点の集合として表現される。
なお、実データ抽出部4aにおける有効実データxsの実データXsからの抽出条件は、以下に示す通りとなっている。
(1)使用頻度の高い上位3つのアクセルダイヤル位置での稼働時に検出された実データXsであること
(2)作業機械の暖機運転中(アイドリング中)に検出された実データXsでないこと
(3)作業機械が負荷運転中に検出された実データXsであること
なお、上記の条件1におけるアクセルダイヤル位置とは、油圧ショベルのエンジン回転数を設定するための一般的なダイヤル式スイッチの操作位置のことを意味している。また、上記の条件2は、例えば実データXsが、エンジンオイル温度,エンジン冷却水温度,作動油温度,外気温度,油圧ポンプケース温度等の温度情報が予め設定された所定温度以上であるときに検出されたものであるか否かによって判定される。また、上記の条件3は、実データXsが、レバー操作量が予め設定された所定値以上であったときに検出されたものであるか否かによって判定されものであり、本実施形態では、油圧ショベルに設けられた操作レバーによる操作の有無を検出する圧力スイッチの検出値に基づいて判定されるようになっている。
【0046】
このような抽出条件1〜3に基づいて、実データ抽出部4aでは、これらの条件を満たす実データXsが有効実データxsとして抽出されるようになっている。抽出された有効実データxsは、演算部5のニューロン圧縮部6へと入力されるようになっている。
【0047】
[1−8]有効パラメータの抽出
一方、パラメータ抽出部4bは、以下の抽出条件に基づいて、第二パラメータ群に分類された各パラメータPsの中から有効パラメータpsを抽出するものである。
(4)頻度の高い上位3つのアクセルダイヤル位置での稼働時に検出されたパラメータPsであること
(5)作業機械の暖機運転中(アイドリング中)に検出されたパラメータPsでないこと
(6)作業機械が負荷運転中に検出されたパラメータPsであること
これらの抽出条件4〜6に基づいて抽出された有効パラメータpsは、演算部5の基本統計量演算部7へと入力されるようになっている。
【0048】
[1−9]ニューロン圧縮部
図1に示すように、演算部5は、ニューロン圧縮部6と基本統計量演算部7とを備えて構成される。これらの各機能部について以下に説明する。
ニューロン圧縮部6は、実データ抽出部4aで抽出された有効実データxsに基づいて、ニューロン圧縮制御を実施するものである。
【0049】
まず、ニューロン圧縮部6は、M個の有効実データxsを、これよりも大幅に数の少ないN個の情報の粒(N<<M)に置き換えることをコンセプトとして、情報を圧縮する演算を行う。このニューロン圧縮部6における圧縮の手法としては、ニューラルネットワークの教師なし学習法が用いられる。具体的には、ニューラルガス学習法や自己組織化マップ学習法等の公知の学習法により学習(トレーニング)がなされ、N個の情報の粒がニューロンとして得られることになる。
【0050】
例えば、K次元空間内に所定数のニューロンがランダムに配置されるとともに、有効実データxsがその検出時刻の新しい順にK次元空間内に入力され、ニューロンの学習が繰り返し行われる。この学習の後、弱いニューロンやアイドリングニューロンが削除され、N個のニューロンからなるニューロンセットが作成される。このようにして作成された各ニューロンは、有効実データxsの特性を保持したまま情報量(データサイズ)を圧縮したものであり、有効実データxsと同じK次元のベクトルとして記述されている。
【0051】
なお、ニューロン圧縮部6は、実データ抽出部4aで抽出されたM個の有効実データxsを一時的に蓄え、所定の稼働時間毎にまとめて圧縮するようになっている。例えば、1日の油圧ショベルの稼働によって蓄積された数千個以上のデータを有効実データxsとして、24時間毎にニューロンセットへの圧縮を実施する。
また、ニューロン圧縮部6の内部には、トレーニング条件設定部6aが設けられている。トレーニング条件設定部6aは、ニューロン圧縮部6でのニューロン圧縮における学習の条件を設定するものである。ここでは、有効実データxsの数Mに応じて、圧縮するニューロンの数N及び圧縮に係るトレーニング条件が設定されるようになっている。なお、本実施形態におけるトレーニング条件としては、学習率,近傍領域関数,学習回数等が挙げられる。
【0052】
[1−9−1]ニューロンセンター
ニューロン圧縮制御で得られたニューロンセットの各ニューロンについて、ニューロン圧縮部6は、K次元空間内における各ニューロンの位置の情報を、ニューロンセンター[c1,c2,…,cN]として設定する。各ニューロンはK種類のパラメータを備えて構成されているため、ニューロンセンターciはK次元のベクトル量として表現され、その一般式は以下の式2に示す通りとなる。
【0053】
【数2】

【0054】
なお一般的に、ニューロンのニューロンセンターciが多くの実データxsに囲まれているほど、そのニューロンはそれらの有効実データxsを代表しているものと見なすことができる。
【0055】
[1−9−2]ニューロンウェイト
また、ニューロン圧縮部6は、各ニューロンが代表する有効実データxsの数をニューロンウェイト[g1,g2,…,gN]として演算する。換言すれば、ニューロンウェイトgiとは、そのニューロンがM個の有効実データxsのうちの何個の有効実データxsに対して勝者ニューロンとなっているかを示すものである。つまり、このニューロンウェイトgiは、スカラー量として表現される。なお、ニューロンウェイトgiとは、ニューロンの強さを示す指標といえる。
【0056】
まず、ニューロンウェイト演算部1bは、各有効実データxsに対し、以下の式3に示すユークリッド距離の最も短いニューロンである勝者ニューロンnsを算出する。
【0057】
【数3】

【0058】
ただし、Ds(n)は、有効実データxsからi番目のニューロンまでの距離
次にこの情報を用いて、ニューロン圧縮部6は、M個の有効実データxsをN個のサブセットMi(i=1,2,…,N)に分割する。各サブセットMiは、同じi番目のニューロンを勝者ニューロンとしている有効実データxsを有している。各サブセットMiに含まれる有効実データxsの数をmi(i=1,2,…,N)と表すと、以下の式4,式5に示す条件が成立する。
【0059】
【数4】

【0060】
つまり、ニューロンの標準化したウェイトgiは、以下に示す式6で計算される。
【0061】
【数5】

【0062】
各サブセットMi(i=1,2,…,N)は、K次元空間内に固有のサブ空間を形成しており、いわゆる「ボロノイ多角形」に類似した形状をなしている。ボロノイ多角形とは、平面中に多数の点が存在する場合に、隣り合った点の垂直二等分線によって形成される複雑な形状の多角形のことをいう。
【0063】
[1−9−3]ニューロン幅
さらに、ニューロン圧縮部6は、それぞれのニューロンについて、サブセットMi内に存在する各有効実データxsまでの平均距離をニューロン幅[w1,w2,…,wN]として演算する。これは、各サブセットMiの領域内には、部分的に有効実データxsの存在しないところがあり、ボロノイ多角形によって囲まれる領域の大きさが必ずしも有効実データxsの分布状態を反映したものとはいえないからである。ここでは、ニューロン幅wi(i=1,2,…,N)を有効実データxsの分布状態を示す指標として扱うこととする。なお、ニューロン幅wiは、K次元のベクトル量として表現され、その一般式は以下の式7,8に示す通りとなる。
【0064】
【数6】

【0065】
なお、ニューロン圧縮部6内で設定,演算されたニューロンセットの情報、すなわち、上記のニューロンセンターci,ニューロンウェイトgi及びニューロン幅wiの情報は、結果保存部8へと入力されるようになっている。
【0066】
[1−10]基本統計量演算部
一方、基本統計量演算部7は、パラメータ抽出部4bで抽出された有効パラメータpsに基づいて、各有効パラメータpsの基本統計量の演算を行うものである。
【0067】
この基本統計量演算部7で演算される有効パラメータpsの基本統計量とは、各有効パラメータpsの基本的な特徴を表す統計量のことを指し、ここではデータ数,データの平均値,最頻値,最大値及び最小値等の代表値、並びに、標準偏差等の散布度のことをいう。
この基本統計量演算部7で演算された基本統計量は、ニューロンセットの情報と同様に、結果保存部8へと入力されるようになっている。
【0068】
なお、演算部5では、上述のようなニューロン圧縮の演算の実施時に、フラグF2が設定されるようになっている。このフラグF2とは、ニューロン圧縮の演算が行われている状態にあるか否かを示すフラグであり、本実施形態においては、ニューロン圧縮の演算中にF2=1に設定され、圧縮演算が実施されていない状態でF2=0に設定されるようになっている。
【0069】
[1−11]結果保存部・送信部
結果保存部8は、演算部5で演算されたニューロンセットの情報及び基本統計量を保存する記憶装置である。なおここでは、上記のニューロンセンターci,ニューロンウェイトgi,ニューロン幅wi及び基本統計量等の圧縮された情報とともに、油圧ショベルの総稼働時間(積算稼働時間,アワメータ)の情報,稼働位置情報,エンジン・車両のエラー情報が保存されるようになっている。
【0070】
また、送信部9は、結果保存部8に保存されたニューロンセットの情報や基本統計量の情報をはじめとする上記の各情報を油圧ショベルの外部へ無線送信を行うためのものである。ここでは、最も低コストの電気通信網(形態電話網や衛星通信等)が利用されて、各情報がメンテナンスセンター内に設けられた第二データ処理装置14へと送信されるようになっている。送信部9における通信頻度は、ニューロン圧縮部6における圧縮頻度に対応しており、例えば油圧ショベルの稼働終了後に、1日1回送信されるようになっている。
【0071】
なお、送信部9で送信されなかった各情報は、一定期間の間、結果保存部8に保存されるようになっている。ここに保存される情報のほとんどは、ニューロン圧縮や基本統計量の演算を経た情報であるため、データ収集部3に記憶される情報よりもデータサイズがコンパクトである。
【0072】
[1−12]第二データ処理装置
第二データ処理装置14は、第一データ処理装置10と同様に、処理プログラムを内蔵した記憶装置(ROM,RAM等)や中央処理装置(CPU)を備えたコンピュータであり、第一データ処理装置10から送信された情報を復元する演算処理を実施するようになっている。第二データ処理装置14の内部には、機能部位として、受信部11,復元部12及びデータ出力装置13が備えられている。まず、受信部11は、第一データ処理装置10の送信部9から送信された情報を受信し、復元部12へと入力するように機能する。
【0073】
[1−13]復元部
一方、復元部12は、上記のニューロンセットの情報(すなわち、ニューロンセンターci,ニューロンウェイトgi,ニューロン幅wi)に基づく演算を実施して、圧縮されたニューロンセットから元の有効実データxsの構造を復元する演算を行う。
なお、ここでいう情報の復元とは、例えばソフトウェア応用分野におけるデータの展開や解凍(decompression,unzipping)とは異なるアイデアである。主な違いは、オリジナルの情報を完全に復元するのではなく、圧縮した情報に基づいて元のデータのパラメータ間の相関を抽出することや、データの密度分布の概略を復元することを目的としている点である。
【0074】
まず、復元部12は、演算部5で圧縮されたニューロンの情報から有効実データxsの密度分布の復元演算を実施する。まず、第一データ処理装置10から入力されたニューロンセンターci,ニューロンウェイトgi及びニューロン幅wiの3つの情報に基づいて、図4に示すような3次元グラフを作成する。この図4は、ニューロンセットに含まれる情報のうち、ブースト圧力及びエンジン回転数の2つのパラメータのみを取り出して、密度分布をグラフ化したものである。
【0075】
このグラフ上では、各ニューロンがピーク(山)として示されており、図4においては複数のニューロンが視覚化されている。グラフ上におけるピーク(山)の位置は、ニューロンセンターciの値に対応している。また、ピークの高さがニューロンウェイトgiの値に対応して定められ、ピークの傾斜面(勾配)がニューロン幅wiの値に対応して設定されている。例えば、ニューロンウェイトgiの大きいニューロンほどピークが高く描かれ、また、ニューロン幅wiの大きいニューロンほど緩やかな傾斜面を持つように描かれている。
【0076】
また、ここではニューロンセットに含まれる2つのパラメータを取り出してグラフ化しているが、1つのパラメータを取り出してグラフ化した場合には、2次元グラフとして密度分布を描くことができる。また、このようなグラフ化処理は、ニューロンセットに含まれる全てのパラメータについて行われるようになっている。
なお、復元部12は、上述のように復元されたニューロンの密度分布の情報と、第一データ処理装置10から送信されてきた基本統計量の情報とを、データ出力装置13へ出力してディスプレイ表示するようになっている。
【0077】
[2.フローチャート]
本実施形態に係るデータ処理装置15において実施されるフローチャートを図2,図3に示す。これらのフローチャートはともに、第一データ処理装置10の内部においてオンボードで実行されているフローである。
【0078】
[2−1]記憶フロー
図2のフローは、データ検出装置1で検出された各パラメータ値の記憶に係る制御内容を示している。
【0079】
まず、ステップA10では、データ検出装置1で検出された各パラメータ値が第一データ処理装置10へ入力される。なお、ここで入力される各パラメータには、データ検出装置1で検出された時刻の情報が付随している。
続くステップA20では、前処理部2において、データ検出装置1で検出された各パラメータ値がデジタル値の形式に変換されるとともに、各パラメータの有効桁数を揃える処理が実施されて、ステップA30へ進む。
【0080】
ステップA30では、データ収集部3において、フラグF1がF1=0であるか否かが判定される。ここで、F1=0である場合にはステップA40へ進み、F1≠0(すなわち、F1=1)である場合にはステップA50へ進む。
ステップA40では、データ収集部3において、前処理部2から入力された各パラメータの情報が第一記憶部3aへ記録されてステップA60へ進む。一方、ステップA50では、各パラメータの情報が第二記憶部3bへ記録されてステップA60へ進む。つまり、フラグF1の判定により、記憶部3a,3bのうちどちらの記憶部がデータの記録中でないかが把握されることになる。
【0081】
ステップA60では、演算部5において、フラグF2がF2=1であるか否かが判定される。つまりこの時点でニューロン圧縮の演算が実施中であるか否かが判定される。ここでF2=1である場合には、ニューロン圧縮及び基本統計量の演算フローへと進む。一方、F2≠1(すなわち、F2=0)である場合には、ステップA70へと進む。
ステップA70では、データ収集部3において、現在時刻tが所定時刻t1であるか否かが判定される。このステップにおいてt≠t1である場合、すなわち、時刻が午前0時でない場合には、そのままこのフローを終了し、所定周期でステップA10からの制御が繰り返される。この場合、フラグF1の値が切り換えられないため、ステップA30における判定結果も変わらないことになり、ステップA40又はステップA50の何れかの制御が繰り返し実施されることになる。
【0082】
一方、ステップA70においてt=t1である場合、すなわち、時刻が午前0時になった時には、ステップA80〜ステップA100の制御が実施され、フラグF1の値が切り換えられる。具体的には、ステップA80において、フラグF1がF1=0であるか否かが判定され、F1=0である場合には、ステップA90へ進んでF1=1に設定される。逆に、ステップA80においてF1≠0(すなわち、F1=1)である場合には、ステップA100へ進んでF1=0に設定される。
【0083】
なお、ステップA90及びステップA100におけるフラグ設定の後には、ニューロン圧縮及び基本統計量の演算フローへと進む。
上記の通り、データ検出装置1で検出される各パラメータは、日付を跨がない限り(時刻が午前0時にならない限り)、第一記憶部3a又は第二記憶部3bの何れか一方に記録され続ける。そして、日付を跨いだ時(時刻が午前0時になった時)に、各パラメータが記録される記憶部が切り換えられることになる。
【0084】
[2−2]ニューロン圧縮及び基本統計量の演算フロー
図3のフローは、前フローで記憶されている各パラメータ値を用いた具体的な演算処理の内容を示している。
まず、ステップB10では、フラグF1がF1=0であるか否かが判定される。このステップでは、以下のステップで演算を行う情報が記憶されている記憶部を選択するための判定が行われている。つまり、このステップでF1=0であると判定された場合、その時点で前処理部2から入力される情報が第一記憶部3aへ記録されているはずであるから、第二記憶部3bに記憶されている各パラメータが読み込まれて演算対象とされる。逆に、このステップでF1=1であると判定された場合、その時点で前処理部2から入力される情報が第二記憶部3bへ記録されているはずであるから、第一記憶部3aに記憶されている各パラメータが読み込まれて演算対象とされる。
【0085】
続くステップB40では、演算条件設定部4において、前ステップで読み込まれた各パラメータが、時間変動量に係る所定条件に基づいて分類される。
すなわち、読み込まれた各パラメータのうち、時間変動量が比較的大きい、エンジン回転数,エンジンオイル圧力,ブースト圧力,燃料消費量,排気温度,パワーシフト圧力,油圧ポンプ圧力,ロードファクター等のパラメータが、第一パラメータ群に分類される。また、時間変動量の比較的小さい、エンジンオイル温度,エンジン冷却水温度,作動油温度,外気温度,油圧ポンプケース温度,油圧ポンプドレーン圧等のパラメータが、第二パラメータ群に分類される。
【0086】
さらに続くステップB50では、演算条件設定部4の実データ抽出部4aにおいて、第一パラメータ群に分類されたパラメータのうち、同時刻に検出されたパラメータから構成される実データXsが設定され、さらに、実データXsの中からニューロン圧縮制御に供される有効実データxsが抽出される。ここで抽出される有効実データxsの条件は、(1)使用頻度の高い上位3つのアクセルダイヤル位置での稼働時に検出されたものであること、(2)エンジンオイル温度及びエンジン冷却水温度が、予め設定された所定温度以上である時に検出されたものであること、(3)操作レバーによる操作がなされている時に検出されたものであること、である。このような条件付けにより、油圧ショベルの暖機運転中等の不安定かつ過渡的な状態に検出された実データXsの情報が除外されて、圧縮に供されるデータセットの信頼性が確保される。
【0087】
続くステップB60では、ニューロン圧縮部6において、ニューラルネットワークの教師なし学習法が用いられて、複数のニューロン(ニューロンセット)の演算が開始される。このステップでの学習の条件は、トレーニング条件設定部6aにおいて、有効実データxsの数Mに応じて設定される。なお、本実施形態では、学習率,近傍領域関数,学習回数がそのトレーニング条件として設定される。このステップの圧縮演算により、有効実データxsの特性がニューロンに保持されたままの状態で、情報量が圧縮されることになる。
【0088】
また、このステップでは、圧縮されたニューロンセットの情報として、ニューロンセンターci,ニューロンウェイトgi及びニューロン幅wiが演算される。これらの情報は、結果保存部8へと入力される。なお、このステップにおけるニューロン圧縮の演算は、本フローから独立したサブフローとして処理される。
一方、続くステップB70では、演算条件設定部4のパラメータ抽出部4bにおいて、第二パラメータ群に分類された各パラメータPsのうち、実際の演算に供されるものが有効パラメータpsとして抽出される。ここで抽出される有効パラメータpsの抽出条件は、ステップB50における有効実データxsの抽出条件と同様であり、(1)使用頻度の高い上位3つのアクセルダイヤル位置での稼働時に検出されたものであること、(2)エンジンオイル温度及びエンジン冷却水温度が、予め設定された所定温度以上である時に検出されたものであること、(3)操作レバーによる操作がなされている時に検出されたものであること、である。このような条件付けにより、油圧ショベルの暖機運転中等の不安定かつ過渡的な状態に検出されたパラメータPsの情報が除外されて、演算に供されるパラメータの信頼性が確保される。
【0089】
また、続くステップB80では、基本統計量演算部7において、抽出された有効パラメータpsの基本統計量の演算が開始される。本実施形態では、抽出された有効パラメータpsのデータ数,データの平均値,最頻値,最大値,最小値及び標準偏差が算出される。これらの基本統計量は、結果保存部8へと入力される。なお、このステップにおける基本統計量の演算についても、本フローから独立したサブフローとして処理される。
【0090】
続くステップB90では、全ての有効実データxs,有効パラメータpsについて、演算部5におけるニューロン及び基本統計量の演算が終了したか否かが判定される。ここで、終了したと判定された場合には、ステップB100へ進み、終了していないと判定された場合には、ステップB110へ進む。
なお、ステップB100では、フラグF2がF2=0に設定されてこのフローが終了され、一方、ステップB110では、フラグF2がF2=1に設定されてこのフローが終了される。つまり、ニューロン及び基本統計量の演算が終了していない場合には、フラグF2がF2=1のままの状態となるため、再び図2に示す記憶フローが実施された時には、ステップA60において演算フローへ進むことになる。また、一旦ニューロン及び基本統計量の演算が終了すると、フラグF2がF2=0に設定されるため、時刻が午前0時になるまでの間、演算フローは実行されない。
【0091】
なお、この演算フローによって結果保存部8へと入力されたニューロン及び基本統計量の情報は、それらの演算が終了した後に、送信部9によってメンテナンスセンターの第二データ処理装置14へと送信される。
一方、第二データ処理装置14の復元部12では、送信されたニューロンの情報に基づいてデータの密度分布が復元される。復元された密度分布及び基本統計量は、例えば図4に示すように、データ出力装置13においてディスプレイ表示される。
【0092】
[3.効果]
本発明の一実施形態に係るデータ処理装置15は、以下のような効果を奏する。
[3−1]ニューロン圧縮の手法による利点
まず、本第一データ処理装置10のニューロン圧縮部6は、第一パラメータ群に分類されたパラメータをニューロンに圧縮する構成を備えている。つまり、例えばエンジン回転数や油圧ポンプ圧力等の時間変化の大きいパラメータ、換言すれば、稼働時間との相関が弱いパラメータがニューロンに圧縮されている。
【0093】
これらの第一パラメータ群に分類されたパラメータは、油圧ショベルの作業内容や動作の種類等に応じて大きく変化するため、例えば単一のパラメータを取り出してその平均値やばらつきを観察したとしても、油圧ショベルの状態を具体的に判別することは難しい。しかしながら、これらのパラメータを多次元で構成されたニューロンへ圧縮することによって、パラメータ同士の相関構造を保ちながら近似的に圧縮,復元することが可能となる。したがって、このような相関構造の変化を検出することによって、油圧ショベルの状態の変化を捉えることができ、例えば油圧ショベルの故障判定に利用することができる。
【0094】
また、図4に示すように、2つのパラメータ間の相関をグラフ化すれば、視覚的に油圧ショベルの稼働状態を把握することが可能となる。つまり、例えば油圧ショベルの正常稼働時における任意のパラメータ間の相関グラフを用意しておくことにより、それを判定基準とした油圧ショベルの稼働状態の診断が容易となる。
【0095】
[3−2]基本統計量の手法による利点
一方、本第一データ処理装置10の基本統計量演算部7では、第二パラメータ群に分類されたパラメータの基本統計量を演算する構成を備えている。つまり、例えばエンジンオイル温度やエンジン冷却水温度等の時間変化の小さいパラメータ、換言すれば、一旦暖機してしまえば油圧ショベルが正常に稼働している限り略一定の値をとるパラメータの基本統計量が演算されている。
【0096】
これらの第二パラメータ群に分類されたパラメータは、検出されるデータの変化量が小さいため、その平均値やばらつきを観察することによっておおよその特性を把握することができる。したがって、これらのパラメータの基本統計量と予め設定された所定閾値との比較によって油圧ショベルの状態を判定することができ、例えば基本統計量と所定閾値との乖離が検出された場合に、油圧ショベルに故障の兆候が認められると判定することができる。
【0097】
[3−3]2つの手法による利点
さらに本データ処理装置15は、データ検出装置1で検出された各パラメータを、第一パラメータ群と第二パラメータ群とに分類する演算条件設定部4を備えている。つまり、検出された全ての情報をニューロンへと圧縮するのではなく、検出された情報をニューロン圧縮に供する情報とより簡易的な演算処理に供する情報とに分類し、前者の情報のみをニューロンへと圧縮するようになっている。これにより、各パラメータの特性に応じた演算処理が行われることになり、簡素な構造で、検出情報に内在する構造(油圧ショベルの状態を示す特性)を保ちながら情報量をより小さくすることが可能となる。つまり、油圧ショベルの状態を、正確かつ効率的に解析することができる。
【0098】
なお、上記の2つの手法のうち、基本統計量の演算はニューロン圧縮の演算と比較して容易且つ短時間で処理が可能であるとともに、演算結果のデータサイズも小さい。したがって、本データ処理装置15によれば、全ての各パラメータをニューロンへと圧縮する場合よりも効率的に油圧ショベルの稼働特性を把握することができる。また、第一データ処理装置10から第二データ処理装置14への通信量も小さくなり、通信コストを低減させることもできる。
【0099】
また、本データ処理装置15では、各パラメータの時間変動量に応じて、第一パラメータ群と第二パラメータ群との分類がなされているため、ニューロン圧縮の手法に適したパラメータと基本統計量の手法に適したパラメータとを容易に分類することができ、油圧ショベルの状態を容易に判定することが可能となる。
【0100】
[3−4]有効実データ及び有効パラメータの抽出による利点
本データ処理装置15は、演算条件設定部4に実データ抽出部4a及びパラメータ抽出部4bを備えて構成されている。つまり、油圧ショベルが負荷運転を行っているときの情報を有効データとして、ニューロン圧縮及び基本統計量の演算に係る情報の抽出がなされるようになっている。これにより、例えば油圧ショベルのアイドリング時の情報を除外することができ、演算部6における演算結果の信頼性を向上させることができる。
【0101】
また、実データ抽出部4a及びパラメータ抽出部4bでは、油圧ショベルの暖機運転時の情報を参照しないようになっているため、圧力が安定しない等の過渡的なデータを除外することができ、演算精度をより高めることができる。
【0102】
[3−5]トレーニング条件に関する利点
本データ処理装置15のトレーニング条件設定部6aでは、有効実データxsの数Mに応じて、圧縮するニューロンの数N及び圧縮に係るトレーニング条件が設定されるようになっている。これにより、ニューロン圧縮にかかる時間や圧縮精度を任意に調節することができる。
【0103】
また、ニューロン圧縮部6における圧縮演算時には、有効実データxsがその検出時刻の新しい順に学習されるようになっているため、データ圧縮の時点における最新の状態に係るデータを圧縮することができる。特に、油圧ショベルの一般的な利用形態を考慮すると、最新の有効実データxsから順に学習することで、暖機前の不安定な有効実データxsを排除しやすくなり、ニューロン圧縮の信頼性をさらに向上させることができる。
なお、ニューロン圧縮に供される有効実データxsの数Mは、450〜6000個程度であることが好ましい。
【0104】
[3−6]複数の記憶部による利点
本データ処理装置15では、データ収集部3に第一記憶部3a及び第二記憶部3bの2つの記憶部が設けられており、データ検出装置1から入力される各パラメータの情報は、これらの記憶部に対して一日毎に交互に記録されるようになっている。これにより、油圧ショベルの稼働日や作業内容に応じて、圧縮処理を行うデータを使い分けることができる。
【0105】
例えば、本実施形態では、時刻が午前0時になった時にフラグF1の値が切り換え、演算フローが開始されるようになっているが、仮に油圧ショベルが午前0時を跨いで深夜に稼働している場合であっても、演算部5における演算を実施しながら、検出される稼働時の情報をデータ収集部3へ滞りなく記憶させることができる。このように、検出された複数のパラメータを、複数の記憶部3a,3bに順に記憶させることにより、ニューロン圧縮や基本統計量の算出に係る演算を行いつつ、油圧ショベルを連続稼働させることができる。
【0106】
[4.その他]
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上述の実施形態では、第一データ処理装置10及び第二データ装置14を備えた遠隔診断システムとしてのデータ処理装置15が示されているが、第二データ処理装置14を省略したシステムとすることも可能である。すなわち、第一データ処理装置10で得られたニューロンセットや基本統計量に対して演算処理を施すことなくそのまま用いて稼働状態を診断するような場合には、少なくとも第一データ処理装置10のようなデータ処理装置を備えた構成であればよい。
【0107】
また、上述の実施形態では、図4に示すように、第一データ処理装置10上で復元された密度分布が三次元化されたグラフとしてデータ出力装置13にディスプレイ表示されるようになっているが、解析結果の出力方法に関しては様々な公知の手法を適用することが考えられる。
例えば、油圧ショベルの正常稼働時における実データを正常実データとして予め検出しておくとともに、正常実データをニューロン圧縮して正常ニューロンセットを取得しておき、ニューロン圧縮部6で演算されたニューロンセットと上記の正常ニューロンセットとの比較によって、油圧ショベルの稼働状態を判定するような構成としてもよい。
【0108】
また、ニューロンの密度分布のグラフ上に、基本統計量の情報を重ね合わせて表示してもよい。例えば、各ニューロンが代表する有効実データと同一時刻に検出された第二パラメータ群のパラメータの基本統計量をグラフ上に表示したり、その基本統計量が予め設定された閾値以上となるニューロンのみを強調表示する。このような、ニューロンセットの情報を用いた診断手法と基本統計量を用いた診断手法とを併用することで、ニューロン圧縮部6での演算結果と基本統計量演算部7での演算結果との対応関係が明確となり、より正確に油圧ショベルの状態を判定することが可能になる。
【0109】
また、上述の実施形態では、データ検出装置1で検出された各パラメータが、第一パラメータ群と第二パラメータ群とに分類されるようになっているが、このような構成は必須ではない。例えば、演算条件設定部4において、データ検出装置1で検出された全ての各パラメータを第一パラメータ群に分類する構成としてもよい。この場合、データ検出装置1から得られた全ての情報が実データXsとなり、実データ抽出部4aにおける有効実データxsの抽出対象となる。
【0110】
また、上述の実施形態では、ニューロン圧縮部6でのニューロン圧縮制御において、有効実データxsがその検出時刻の新しい順に学習されるようになっているが、その他の演算方法のバリエーションも考えられる。例えば、その検出時刻の古い順に学習してもよいし、予め設定された基準となる所定時間内に掲出された有効実データxsのみをニューロンの学習に用いてもよい。
【0111】
また、上述の実施形態では、実データXs中から有効実データxsを抽出する条件として3つの条件が規定されているが、これらの条件のうちの何れかのみを備えた構成としてもよいし、あるいは、さらに抽出条件を加えた構成としてもよい。また、有効パラメータpsの抽出条件についても同様である。なお、基本統計量の演算においては、母集団(有効パラメータpsの数)が大きいほど、結果(平均値,最頻値,最大値,最小値,標準偏差等)の信頼性が向上する。したがって、結果の信頼性という観点からは、抽出条件を厳しくし過ぎないことが肝要である。
【0112】
なお、上述の実施形態では、第一データ処理装置10の結果保存部8に、ニューロン圧縮や基本統計量の演算を経た情報が一定期間の間保存されるようになっているが、これらの保存情報を用いて、別の演算処理を施すことも可能である。また同様に、データ収集部3に記録された油圧ショベルの稼働情報についても、演算部5における演算処理だけでなく、他の演算に用いることもできる。この場合、例えばデータ収集部3の記憶容量をより大きくすることで、データ検出装置1から入力された検出情報を統計的な資料とすることができるようになる。
【0113】
なお、本実施形態では、診断の対象として油圧ショベルを例に挙げたが、対象体はこれに限定されるものではなく、例えばトラック・バス,船舶等の乗物類、及び、産業機械をはじめとした各種機械類の動作の良否判定等に広く適用できるほか、動植物や微生物等の生命体の状態の良否判定等や、天候或いは地球等、天体の変化の推定等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の一実施形態にかかるデータ処理装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本データ処理装置におけるデータの記憶に係る制御内容を示すフローチャートである。
【図3】本データ処理装置におけるデータの圧縮演算に係る制御内容を示すフローチャートである。
【図4】本データ処理装置で復元された密度分布を示す三次元グラフである。
【符号の説明】
【0115】
1 データ検出装置(パラメータ検出手段)
2 前処理部
3 データ収集部
3a 第一記憶部(記憶手段の一つ)
3b 第二記憶部(記憶手段の一つ)
4 演算条件設定部(演算条件設定手段)
4a 実データ抽出部(実データ抽出手段)
4b パラメータ抽出部(パラメータ抽出手段)
5 演算部
6 ニューロン圧縮部(ニューロン圧縮手段)
6a トレーニング条件設定部(トレーニング条件設定手段)
7 基本統計量演算部(基本統計量演算手段)
8 結果保存部
9 送信部
10 第一データ処理装置
11 受信部
12 復元部(状態復元手段)
13 データ出力装置
14 第二データ処理装置
15 データ処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを検出する実データ検出手段と、
該実データ検出手段で検出された該複数の実データのうち、予め設定された抽出条件を満たす実データを有効実データとして抽出する実データ抽出手段と、
該実データ抽出手段で抽出された該有効実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習によりニューロンへと圧縮するニューロン圧縮手段と
を備えたことを特徴とする、データ処理装置。
【請求項2】
該有効実データの数に応じて圧縮する該ニューロンの数及び圧縮に係るトレーニング条件を設定するトレーニング条件設定手段
をさらに備えたことを特徴とする、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
該トレーニング条件設定手段が、該トレーニング条件として、学習率,近傍領域関数及び学習回数を設定する
ことを特徴とする、請求項2記載のデータ処理装置。
【請求項4】
該ニューロン圧縮手段が、該有効実データをその検出時刻の新しい順に用いて、ニューロンへと圧縮する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
該実データ検出手段で検出される該複数の実データを記憶しうる複数の記憶手段
をさらに備えたことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
該ニューロン圧縮手段により得られた該ニューロンに基づいて、該対象体の状態を復元する状態復元手段
をさらに備えたことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
請求項6項に記載のデータ処理装置を備えて、作業機械の稼働状態を診断する遠隔診断システムであって、
該実データ検出手段が、該作業機械に搭載されて、該作業機械の稼働状態に応じて変動する該複数のパラメータからなる該複数の実データを検出し、
該実データ抽出手段及び該ニューロン圧縮手段が、第一の情報処理装置として該作業機械に搭載されるとともに、
該状態復元装置が、第二の情報処理装置として該作業機械の外部に設けられて、該第一の情報処理装置から該ニューロンの情報を遠隔通信により取得する
ことを特徴とする、作業機械の遠隔診断システム。
【請求項8】
該実データ抽出手段が、該複数の実データのうち、該作業機械の負荷運転状態下において検出された実データを該有効実データとして抽出する
ことを特徴とする、請求項7記載の作業機械の遠隔診断システム。
【請求項9】
該作業機械のエンジン油温又はエンジン冷却水温を検出する温度センサを備え、
該実データ抽出手段が、該温度センサで検出された該エンジン油温又は該エンジン冷却水温が予め設定された所定温度以上であるときに検出されたパラメータからなる実データを該有効実データとして抽出する
ことを特徴とする、請求項7又は8記載の作業機械の遠隔診断システム。
【請求項10】
該作業機械のエンジン目標回転数として、複数の目標回転数の中から一つの目標回転数を選択して設定する稼働ダイヤルを備え、
該実データ抽出手段が、該稼働ダイヤルにおける設定頻度が所定頻度以上である目標回転数が該エンジン目標回転数として設定されているときに検出されたパラメータからなる実データを該有効実データとして抽出する
ことを特徴とする、請求項7〜9の何れか1項に記載の作業機械の遠隔診断システム。
【請求項11】
対象体の状態に応じて変動する複数のパラメータからなる複数の実データを検出する実データ検出ステップと、
該実データ検出ステップで検出された該複数の実データのうち、予め設定された抽出条件を満たす実データを有効実データとして抽出する実データ抽出ステップと、
該実データ抽出ステップで抽出された該有効実データを、ニューラルネットワークの教師なし学習によりニューロンへと圧縮するニューロン圧縮ステップと
を備えたことを特徴とする、データ処理方法。
【請求項12】
該有効実データの数に応じて圧縮する該ニューロンの数及び圧縮に係るトレーニング条件を設定するトレーニング条件設定ステップ
をさらに備えたことを特徴とする、請求項11記載のデータ処理方法。
【請求項13】
該ニューロン圧縮ステップにおいて、該トレーニング条件として、学習率,近傍領域関数及び学習回数を設定する
ことを特徴とする、請求項11又は12記載のデータ処理方法。
【請求項14】
該ニューロン圧縮ステップにおいて、該有効実データをその検出時刻の新しい順に用いて、ニューロンへと圧縮する
ことを特徴とする、請求項11〜13の何れか1項に記載のデータ処理方法。
【請求項15】
該実データ検出ステップで検出される該複数の実データを記憶しうる複数の記憶ステップ
をさらに備えたことを特徴とする、請求項11〜14の何れか1項に記載のデータ処理方法。
【請求項16】
該ニューロン圧縮ステップで得られた該ニューロンに基づいて、該対象体の状態を復元する状態復元ステップ
をさらに備えたことを特徴とする、請求項11〜15の何れか1項に記載のデータ処理方法。
【請求項17】
請求項16項に記載のデータ処理方法を用いて、作業機械の稼働状態を診断する遠隔診断方法であって、
該実データ検出ステップにおいて、該作業機械の稼働状態に応じて変動する該複数のパラメータからなる該複数の実データを検出し、
該実データ抽出ステップ及び該ニューロン圧縮ステップにおけるデータ処理を、該作業機械に搭載された第一の情報処理装置上で実施するとともに、
該状態復元ステップにおけるデータ処理を、遠隔通信により該ニューロンの情報を該第一の情報処理装置から該作業機械の外部に設けられた第二の情報処理装置へ伝達し、該第二の情報処理装置上で実施する
ことを特徴とする、作業機械の遠隔診断方法。
【請求項18】
該実データ抽出ステップにおいて、該複数の実データのうち、該作業機械の負荷運転状態下において検出された実データを該有効実データとして抽出する
ことを特徴とする、請求項17記載の作業機械の遠隔診断方法。
【請求項19】
該実データ抽出ステップにおいて、該作業機械のエンジン油温又はエンジン冷却水温が予め設定された所定温度以上であるときに検出されたパラメータからなる実データを該有効実データとして抽出する
ことを特徴とする、請求項17又は18記載の作業機械の遠隔診断方法。
【請求項20】
該作業機械に設けられた稼働ダイヤルによって、複数の目標回転数の中から一つ選択されて設定されるエンジン目標回転数を検出する目標回転数検出ステップを備えるとともに、
該実データ抽出ステップにおいて、該目標回転数検出ステップにおける検出頻度が所定頻度以上である目標回転数が該エンジン目標回転数として設定されているときに検出されたパラメータからなる実データを該有効実データとして抽出する
ことを特徴とする、請求項17〜19の何れか1項に記載の作業機械の遠隔診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−9935(P2008−9935A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182504(P2006−182504)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】