説明

データ処理装置

【課題】消費電力解析などによりセキュリティ情報が推定されるのを困難にすることが可能なデータ処理装置を提供すること。
【解決手段】CPU1は、コプロセッサ4に与える入力値をメモリ2の領域に設定する前に、メモリ2の領域に乱数発生器3が発生した乱数を設定する。したがって、演算処理に移行する前後においてメモリ2の値が固定されておらず、状態の変化を消費電力解析などの統計処理で抽出することができなくなり、セキュリティ情報の推定を困難にすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ保護機能を有するデータ処理装置に関し、特に、消費電力解析などによってセキュリティ情報が推定されるのを困難にすることが可能なデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティ保護機能を有するセキュリティチップなどのデータ処理装置の開発が進んでいる。このようなデータ処理装置においては、暗号鍵などのセキュリティ情報を用いた暗号化や暗号文の復号を行なうために使用されるコプロセッサが搭載されることが多い。ここで、CPU(Central Processing Unit)がコプロセッサに演算処理を行なわせるときの手順を簡単に説明する。
【0003】
まず、CPUは、コプロセッサが使用するメモリ領域のうち、入力値を格納する第1のメモリ領域に数値を設定する。そして、CPUがコプロセッサに対して演算開始を指示する。
【0004】
コプロセッサは、第1のメモリ領域に格納された数値を読み出して演算を行ない、演算途中のデータを格納する第2のメモリ領域にアクセスしながら演算処理を実行する。そして、コプロセッサは演算処理が終了すると、CPUに対して演算結果をメモリに格納したことを通知して、処理を終了する。
【0005】
このような演算フローを用いることにより、CPUの演算能力不足をコプロセッサが補い、演算処理の向上を図ることができる。
【0006】
一方、近年、消費電力解析の研究開発が進んでいる。データ処理装置が上述のような演算フローを実行しているときに消費電力の変化を観測し、消費電力解析を用いることにより、演算に使用されるセキュリティ情報を推測可能であることが知られている。これに関連する技術として、下記の特許文献1〜2に開示された発明がある。
【0007】
特許文献1は、ICカード用チップでの処理のデータとICカード用チップの消費電流との関連性を減らすことを目的とする。ICカード用チップの処理順序をランダムに入れ替えたり、無駄なダミー処理を追加したりすることにより、処理データとICカード用チップの消費電流との関連性を減らす。これによって、ICカード用チップでの処理のデータとICカード用チップの消費電流との関連性を減らすことを可能とする。
【0008】
特許文献2は、高いセキュリティを持つカ−ド部材などの耐タンパ−情報処理装置を提供することを目的とする。ICカード用チップで消費される電流値と、処理されているデータの関連性を減らすための方法として、処理するデータを撹乱用データで変形し、データの処理を変形したデータで処理し、処理後に撹乱用データを用いて逆変換し、正しい処理結果を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−165375号公報
【特許文献2】特開2002−247025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、消費電力の変化を観測して消費電力解析を用いることにより、演算に使用されるセキュリティ情報を推測することが可能である。そのため、消費電力解析によってセキュリティ情報を推測できないようにする処理が必要となる。
【0011】
特許文献1に開示された発明は、処理順序をランダムに入れ替えたり、無駄なダミー処理を追加したりすることにより、処理データとICカード用チップの消費電流との関連性を減らすものである。しかしながら、処理が複雑になってしまったり、ダミー処理の追加によって処理時間が長くなったり、短くなったりする場合がある。
【0012】
また、特許文献2に開示された発明は、処理するデータを撹乱用データで変形し、データの処理を変形したデータで処理し、処理後に撹乱用データを用いて逆変換し、正しい処理結果を求めるものであるが、処理時間が長くなってしまう。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、消費電力解析などによりセキュリティ情報が推定されるのを困難にすることが可能なデータ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施例によれば、セキュリティ保護機能を有するデータ処理装置が提供される。データ処理装置は、CPUと、CPUによる指示によって演算処理を行なうコプロセッサと、メモリと、乱数を発生する乱数発生器とを含み、CPUがコプロセッサを使用する前に、CPUが、コプロセッサが使用するメモリの領域に乱数発生器が発生した乱数を設定する。
【0015】
本発明の別の実施例によれば、セキュリティ保護機能を有するデータ処理装置が提供される。データ処理装置は、CPUと、CPUによる指示によって演算処理を行なうコプロセッサと、メモリと、外部から数値を入力するI/Oとを含み、CPUがコプロセッサを使用する前に、CPUが、コプロセッサが使用するメモリの領域にI/Oによって入力された演算の度に変化する数値を設定する。
【0016】
本発明のさらに別の実施例によれば、セキュリティ保護機能を有するデータ処理装置が提供される。データ処理装置は、CPUと、CPUによる指示によって演算処理を行なうコプロセッサと、メモリとを含む。コプロセッサは、演算処理を実行する演算部と、メモリの領域に設定された入力値と演算部による演算結果とを選択的に出力する選択器とを含み、CPUから演算処理の指示がある場合には、選択器が入力値を選択して演算部に与え、CPUから演算処理の指示がない場合には、選択器が演算結果を選択して演算部に与える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施例によれば、CPUがコプロセッサを使用する前に、CPUが、コプロセッサが使用するメモリの領域に乱数発生器が発生した乱数を設定するので、消費電力解析などによりセキュリティ情報が推定されるのを困難にすることが可能となる。
【0018】
本発明の別の実施例によれば、CPUがコプロセッサを使用する前に、CPUが、コプロセッサが使用するメモリの領域にI/Oによって入力された演算の度に変化する数値を設定するので、消費電力解析などによりセキュリティ情報が推定されるのを困難にすることが可能となる。
【0019】
本発明のさらに別の実施例によれば、CPUから演算処理の指示がある場合には、選択器が入力値を選択して演算器に与え、CPUから演算処理の指示がない場合には、選択器が演算結果を選択して演算器に与えるので、演算タイミングの特定が困難となり、消費電力解析などによりセキュリティ情報が推定されるのを困難にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるデータ処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】CPU1がコプロセッサ4を使用して演算処理を行なう場合の一般的な処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図3】データ処理装置が図2に示す演算フローを実行したときの消費電力解析結果の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるデータ処理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】メモリ領域の初期値として乱数を設定した場合の効果を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるデータ処理装置が演算処理を行なうときの消費電力解析結果の一例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態におけるデータ処理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施の形態におけるコプロセッサ4の内部構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態におけるコプロセッサ4の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるデータ処理装置の概略構成を示すブロック図である。このデータ処理装置は、セキュリティチップなどを構成し、データ処理装置の全体的な制御を行なうCPU1と、メモリ2と、乱数発生器3と、コプロセッサ4と、I/O(Input/Output)5とがバス6を介して接続される。
【0022】
メモリ2は、CPU1が実行するプログラムを格納する領域、コプロセッサ4に設定する入力値を格納する領域、コプロセッサ4が演算途中のデータを格納する領域などの領域を有している。
【0023】
乱数発生器3は、CPU1からの指示に応じて乱数を発生する部分であり、ハードウェアによって実現されてもよいし、CPU1がプログラムを実行することによりソフトウェア的に乱数を発生させるようにしてもよい。
【0024】
コプロセッサ4は、CPU1の演算能力の不足を補うためのものであり、CPU1からの演算開始指示を受け、メモリ2にアクセスしながら演算処理を実行する。また、I/O5は、データ処理装置外部との通信を行なう。
【0025】
図2は、CPU1がコプロセッサ4を使用して演算処理を行なう場合の一般的な処理手順を説明するためのフローチャートである。まず、CPU1は、メモリ2にコプロセッサ4に与える入力値を設定し(S100)、コプロセッサ4に対して演算処理の開始を指示する(S101)。
【0026】
コプロセッサ4は、CPU1から演算処理の開始指示を受けると、メモリ2に格納された入力値を読み出して演算を行ない、メモリ2に演算途中のデータを書き込んだり、メモリ2から演算途中のデータを読み出したりしながら演算処理を実行する(S102)。そして、コプロセッサ4は、演算結果をメモリ2に格納する(S103)。
【0027】
コプロセッサ4は、演算処理が終了すると、CPU1に対して演算処理が終了したことを通知する(S104)。
【0028】
最後に、CPU1は、コプロセッサ4から演算処理の終了通知を受けると、メモリ2から演算結果を読み出して(S105)、処理を終了する。
【0029】
図3は、データ処理装置が図2に示す演算フローを実行したときの消費電力解析結果の一例を示す図である。消費電力解析においては、推定の確からしさを解析波形の偏りで判定する。たとえば、図3において、楕円で囲んだ部分の解析波形が乱れており、解析波形の偏りが見られる。この結果から、セキュリティ情報が推定可能であると判断される。
【0030】
ここで、解析波形とは、セキュリティ情報を複数仮定して複数の状態で演算処理を実行し、ある時刻の複数の状態をパラメータとしたときの状態間の消費電力の差分波形を指している。図3においては、8種類の解析波形が示されている。なお、図3の下部は、消費電力波形を示している。
【0031】
図4は、本発明の第1の実施の形態におけるデータ処理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。まず、CPU1は、乱数発生器3に乱数を発生させ、コプロセッサ4が使用する予定の領域にその乱数を設定する(S110)。このとき、メモリ領域ごとに異なる乱数を設定するようにしてもよいし、メモリ領域すべてに同じ乱数を設定するようにしてもよい。
【0032】
メモリ領域ごとに異なる乱数を設定した場合、メモリ領域の初期値がメモリ領域ごとに異なることになるため、メモリ領域すべてに同じ乱数を設定するよりも広い空間をカバーでき、より効果的にセキュリティ情報の推定を困難化することができる。
【0033】
次に、CPU1は、メモリ2にコプロセッサ4に与える入力値を設定し(S111)、コプロセッサ4に対して演算処理の開始を指示する(S112)。
【0034】
コプロセッサ4は、CPU1から演算処理の開始指示を受けると、メモリ2に格納された入力値を読み出して演算を行ない、メモリ2に演算途中のデータを書き込んだり、メモリ2から演算途中のデータを読み出したりしながら演算処理を実行する(S113)。そして、コプロセッサ4は、演算結果をメモリ2に格納する(S114)。
【0035】
コプロセッサ4は、演算処理が終了すると、CPU1に対して演算処理が終了したことを通知する(S115)。
【0036】
最後に、CPU1は、コプロセッサ4から演算処理の終了通知を受けると、メモリ2から演算結果を読み出して(S116)、処理を終了する。
【0037】
図5は、メモリ領域の初期値として乱数を設定した場合の効果を説明するための図である。なお、図5(a)〜図5(d)においては、時刻t0でメモリに入力値が設定されるものとする。
【0038】
図5(a)は、メモリ領域に乱数が設定されていない状態で、メモリに入力値が設定される場合のデータの1信号の消費電力トレースを示している。時刻t0以前においては信号レベルが“0”に固定されているか、“1”に固定されているかのいずれかである。時刻t0以降は入力値に応じて“0”か“1”のいずれかになる。
【0039】
図5(b)は、メモリ領域に乱数が設定されていない状態で、メモリに入力値を複数回変えて設定したときの多数信号の消費電力の平均波形を示している。時刻t0以前においては信号レベルが“0”に固定されているか、“1”に固定されているため、その平均波形のレベルも“0”か“1”のいずれかである。時刻t0以降は入力値に応じて“0”か“1”のいずれかになるため、その平均波形は0.5近辺となる。
【0040】
図5(c)は、メモリ領域に乱数が設定されている状態で、メモリに入力値が設定される場合のデータの1信号の消費電力トレースを示している。時刻t0以前においてはメモリ領域に乱数が設定されているため、信号レベルが“0”か“1”のいずれか、すなわち信号レベルが固定されていない。時刻t0以降においても入力値に応じて“0”か“1”のいずれかになる。
【0041】
図5(d)は、メモリ領域に乱数が設定されている状態で、メモリに入力値を複数回変えて設定したときの多数信号の消費電力の平均波形を示している。時刻t0以前および時刻t0以降のいずれにおいても、信号レベルが“0”になるか“1”になるかは確率によって決まる。したがって、その平均波形は時刻t0以前および時刻t0以降のいずれにおいても0.5近辺となる。その結果、時刻t0を特定することができなくなり、セキュリティ情報を推定することが困難となる。
【0042】
図6は、本発明の第1の実施の形態におけるデータ処理装置が演算処理を行なうときの消費電力解析結果の一例を示す図である。図6(a)は、メモリ領域に乱数が設定されていない状態で、演算処理を行なったときの消費電力解析結果を示している。図6(a)においては、楕円で囲んだ部分の解析波形が乱れており、解析波形の偏りが見られる。この結果から、セキュリティ情報が推定可能であると判断される。
【0043】
一方、図6(b)は、本発明の第1の実施の形態におけるデータ処理装置によって乱数を設定した状態で、演算処理を行なったときの消費電力解析結果を示している。図6(b)においては、楕円で囲んだ部分の解析波形が乱れておらず、偏りも観測することができないため、セキュリティ情報の推定が困難となっている。
【0044】
以上の説明においては、CPU1が、コプロセッサ4が使用する予定であるメモリ領域に乱数を設定することとしたが、CPU1がコプロセッサ4に対して“乱数設定”コマンドを発行して、コプロセッサ4自身が使用する予定のメモリ領域やレジスタに、乱数発生器3が発生した乱数を設定するようにしてもよい。この場合、CPU1はコプロセッサ4が使用するメモリ領域に予め設定される情報を処理する必要がないため、コプロセッサ4の使用手順を汎用的なプログラムで実現することが可能となる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態におけるデータ処理装置によれば、コプロセッサ4が使用する予定のメモリ領域に乱数を設定してから演算処理を行なうようにしたので、演算処理に移行する前後においてメモリの値が固定されておらず、状態の変化を消費電力解析などの統計処理で抽出することができなくなり、セキュリティ情報の推定を困難にすることが可能となった。
【0046】
また、コプロセッサ4が使用する予定のメモリ領域に乱数を設定してから演算処理を行なうようにしただけであるので、演算処理時間を延長せずに、状態の変化を消費電力解析などの統計処理で抽出することができなくなり、セキュリティ情報の推定を困難にすることが可能となった。
【0047】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態におけるデータ処理装置の構成は、図1に示す第1の実施の形態におけるデータ処理装置の概略構成と同様である。したがって、重複する構成および機能の詳細な説明は繰り返さない。
【0048】
図7は、本発明の第2の実施の形態におけるデータ処理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。まず、CPU1は、I/O5を介して演算の度に変化する数値を入力し、コプロセッサ4が使用する予定のメモリ領域に設定する(S120)。このとき、メモリ領域ごとに異なる数値を設定するようにしてもよいし、メモリ領域すべてに同じ数値を設定するようにしてもよい。
【0049】
メモリ領域ごとに異なる数値を設定した場合、メモリ領域の初期値がメモリ領域ごとに異なることになるため、メモリ領域すべてに同じ数値を設定するよりも広い空間をカバーでき、より効果的にセキュリティ情報の推定を困難化することができる。
【0050】
次に、CPU1は、メモリ2にコプロセッサ4に与える入力値を設定し(S121)、コプロセッサ4に対して演算処理の開始を指示する(S122)。
【0051】
コプロセッサ4は、CPU1から演算処理の開始指示を受けると、メモリ2に格納された入力値を読み出して演算を行ない、メモリ2に演算途中のデータを書き込んだり、メモリ2から演算途中のデータを読み出したりしながら演算処理を実行する(S123)。そして、コプロセッサ4は、演算結果をメモリ2に格納する(S124)。
【0052】
コプロセッサ4は、演算処理が終了すると、CPU1に対して演算処理が終了したことを通知する(S125)。
【0053】
最後に、CPU1は、コプロセッサ4から演算処理の終了通知を受けると、メモリ2から演算結果を読み出して(S126)、処理を終了する。
【0054】
以上の説明においては、CPU1が、コプロセッサ4が使用する予定であるメモリ領域に、I/O5を介して入力した演算の度に変化する数値を設定することとしたが、CPU1がコプロセッサ4に対して“I/O値設定”コマンドを発行して、コプロセッサ4自身が使用する予定のメモリ領域やレジスタに、I/O5を介して入力した演算の度に変化する数値を設定するようにしてもよい。この場合、CPU1はコプロセッサ4が使用するメモリ領域に予め設定される情報を処理する必要がないため、コプロセッサ4の使用手順を汎用的なプログラムで実現することが可能となる。
【0055】
また、コプロセッサ4が使用する予定であるメモリ領域に、I/O5を介して入力した演算の度に変化する数値を設定することとしたが、時々刻々変化する数値を設定するようにしてもよい。演算の度に変化する数値としては、演算の実行回数、演算が実行された時間、演算が実行されるときのメモリ2のチェックサム値、ハッシュ値などを挙げることができる。また、時々刻々変化する数値としては、チップの浮遊容量、電源投入時のメモリの状態値、時計の値などを挙げることができる。さらに、これらの値の組み合せによって、演算の度に変化する数値を生成するようにしてもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態におけるデータ処理装置によれば、コプロセッサ4が使用する予定のメモリ領域に、I/O5を介して入力した演算の度に変化する数値を設定してから演算処理を行うようにしたので、演算処理に移行する前後においてメモリの値が固定されておらず、状態の変化を消費電力解析などの統計処理で抽出することができなくなり、セキュリティ情報の推定を困難にすることが可能となった。
【0057】
また、コプロセッサ4が使用する予定のメモリ領域に、I/O5を介して入力した演算の度に変化する数値を設定してから演算処理を行うようにしただけであるので、演算処理時間を延長せずに、状態の変化を消費電力解析などの統計処理で抽出することができなくなり、セキュリティ情報の推定を困難にすることが可能となった。
【0058】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態におけるデータ処理装置は、図1に示す第1の実施の形態におけるデータ処理装置の概略構成と比較して、コプロセッサ4の機能のみが異なる。したがって、重複する構成および機能の詳細な説明は繰り返さない。
【0059】
図8は、本発明の第3の実施の形態におけるコプロセッサ4の内部構成を示すブロック図である。このコプロセッサ4は、演算部41と、入力レジスタ42と、出力レジスタ43と、選択器44と、制御部45とを含む。
【0060】
制御部45は、CPU1との間の通信機能を有しており、CPU1からの指示を受けてコプロセッサ4全体の制御を行なって演算処理を実行する。制御部45は、演算処理が終了すると、通信機能を用いてCPU1に演算が終了したことを通知する。
【0061】
選択部44は、制御部45からの制御によって、メモリ2からの入力値Aおよび演算部41による演算結果のいずれかを選択的に入力レジスタ42に出力する。入力レジスタ42は、選択部44から出力された値を保持する。
【0062】
演算部41は、制御部45からの制御によって、入力レジスタ42に保持される値に対して演算処理を実行し、演算結果を出力レジスタ43および選択部44に出力する。出力レジスタ43は、演算結果Bをメモリ2に出力する。
【0063】
図9は、本発明の第3の実施の形態におけるコプロセッサ4の処理手順を説明するためのフローチャートである。まず、CPU1から演算開始指示があると、制御部45は、選択器44がメモリ2からのコプロセッサ入力値Aを選択するように、選択器44に信号を出力する(S200)。そして、入力レジスタ42にコプロセッサ入力値Aが設定される(S201)。
【0064】
次に、演算部41が入力レジスタ42に設定された入力値Aに対して演算処理を実行し(S202)、出力レジスタ43に演算結果が格納される(S203)。そして、制御部45は、出力レジスタ43に格納される演算結果Bをメモリ2に格納するよう制御を行ない(S204)、CPU1に対して演算完了信号を出力する(S205)。
【0065】
次に、制御部45は、選択器44が演算部41からの演算出力を選択するように、選択器44に信号を出力する(S206)。そして、入力レジスタ42に演算部41からの演算出力が設定される(S207)。
【0066】
次に、演算部41が入力レジスタ42に設定された演算出力に対して演算処理を実行する(S208)。そして、制御部45は、CPU1から次の演算開始の指示が発行されたか否かを判定する(S209)。
【0067】
次の演算開始の指示が発行された場合には(S209,Yes)、ステップS200に戻って以降の処理を繰り返す。また、次の演算開始の指示が発行されていない場合には(S209,No)、ステップS206に戻って入力レジスタ42に設定された演算出力に対する演算処理を行なう。
【0068】
このように、CPU1から演算開始の指示がある場合には、コプロセッサ入力値Aに基づく演算が行なわれ、CPU1から演算開始の指示がない場合には、入力レジスタ42に格納された演算出力に基づく演算が行なわれることになる。そのため、コプロセッサ4は、データ処理装置に電源供給があるときは演算を繰り返し行なうことになり、セキュリティ情報の演算を行なうタイミングを特定することが困難となる。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態におけるデータ処理装置によれば、コプロセッサ4内の演算部41が、コプロセッサ入力値Aに基づく演算と、演算出力に基づく演算とを連続して行なうように制御され、演算結果Bがメモリ2に格納されるようにしたので、演算タイミングの特定が困難となり、消費電力解析などの統計処理の前提となる演算タイミングを合わせることが困難となる。すなわち、消費電力解析などの統計処理によってセキュリティ情報を推定することが困難となった。
【0070】
また、コプロセッサ4内の演算部41が、コプロセッサ入力値Aに基づく演算と、演算出力に基づく演算とを連続して行なうように制御され、演算結果Bがメモリ2に格納されるようにしたので、演算時間に影響を与えることがなく、消費電力解析などの統計処理の前提となる演算タイミングを合わせることが困難となった。
【0071】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 CPU、2 メモリ、3 乱数発生器、4 コプロセッサ、5 I/O、6 バス、41 演算部、42 入力レジスタ、43 出力レジスタ、44 選択器、45 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、
前記プロセッサによる指示によって演算処理を行なうコプロセッサと、
メモリと、
乱数を発生する乱数発生手段とを含み、
前記プロセッサが前記コプロセッサを使用する前に、該コプロセッサが使用する前記メモリの領域に前記乱数発生手段が発生した乱数が設定される、データ処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記コプロセッサに与える入力値を前記メモリの領域に設定する前に、当該メモリの領域に前記乱数発生手段が発生した乱数を設定する、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記コプロセッサに与える入力値を前記メモリの領域に設定する前に、前記コプロセッサに対して当該メモリの領域に前記乱数発生手段が発生した乱数を設定するよう指示する、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記コプロセッサは、演算処理を実行する演算手段と、
前記メモリの領域に設定された入力値と前記演算手段による演算結果とを選択的に出力する選択手段とを含み、
前記プロセッサから演算処理の指示がある場合には、前記選択手段が前記入力値を選択して前記演算手段に与え、前記プロセッサから演算処理の指示がない場合には、前記選択手段が前記演算結果を選択して前記演算手段に与える、請求項1〜3のいずれかに記載のデータ処理装置。
【請求項5】
プロセッサと、
前記プロセッサによる指示によって演算処理を行なうコプロセッサと、
メモリと、
外部から数値を入力する入力手段とを含み、
前記プロセッサが前記コプロセッサを使用する前に、該コプロセッサが使用する前記メモリの領域に前記入力手段によって入力された演算の度に変化する数値が設定される、データ処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記コプロセッサに与える入力値を前記メモリの領域に設定する前に、当該メモリの領域に前記入力手段によって入力された演算の度に変化する数値を設定する、請求項5記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記コプロセッサに与える入力値を前記メモリの領域に設定する前に、前記コプロセッサに対して当該メモリの領域に前記入力手段によって入力された演算の度に変化する数値を設定するよう指示する、請求項5記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記コプロセッサは、演算処理を実行する演算手段と、
前記メモリの領域に設定された入力値と前記演算手段による演算結果とを選択的に出力する選択手段とを含み、
前記プロセッサから演算処理の指示がある場合には、前記選択手段が前記入力値を選択して前記演算手段に与え、前記プロセッサから演算処理の指示がない場合には、前記選択手段が前記演算結果を選択して前記演算手段に与える、請求項5〜7のいずれかに記載のデータ処理装置。
【請求項9】
プロセッサと、
前記プロセッサによる指示によって演算処理を行なうコプロセッサと、
メモリとを含み、
前記コプロセッサは、演算処理を実行する演算手段と、
前記メモリの領域に設定された入力値と前記演算手段による演算結果とを選択的に出力する選択手段とを含み、
前記プロセッサから演算処理の指示がある場合には、前記選択手段が前記入力値を選択して前記演算手段に与え、前記プロセッサから演算処理の指示がない場合には、前記選択手段が前記演算結果を選択して前記演算手段に与える、データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−277327(P2010−277327A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129132(P2009−129132)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】