説明

データ検出装置、再生装置、データ検出方法

【課題】隣接トラックからのクロストークを簡易な構成で精度良くキャンセルする。
【解決手段】データ検出対象としている対象トラックからの再生情報信号と、クロストーク成分となる近接トラックからの再生情報信号とのそれぞれを、適応イコライザユニットのそれぞれに入力する。各適応イコライザユニットの出力は加算されて等化信号として出力され、等化信号について2値化処理を行って2値データを得る。ここで、2値検出結果に基づいて得られる等化目標信号と等化信号との等化誤差を用いて、各適応イコライザユニットの適応等化のためのタップ係数制御を行う。これにより、クロストーク成分が打ち消される演算が行われた等化信号が得られるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ検出装置、再生装置、データ検出方法に係り、特に隣接トラックからのクロストークをキャンセルする技術に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特許第3225611号明細書
【特許文献2】特許第2601174号明細書
【特許文献3】特許第4184585号明細書
【特許文献4】特開2008−108325号公報
【背景技術】
【0003】
光ディスク等の記録媒体に対する再生装置において、近接する別トラックからのクロストークによる再生信号の劣化の問題があり、これを改善するためのクロストークキャンセラの技術がある。
【0004】
例えば上記特許文献1においては、CAV(Constant-Angular-Velocity)のディスクにおいて、メモリまたは遅延素子を用いて、ディスクのラジアル方向で同期させた3本のトラックの再生信号(即ち再生トラックとその隣接トラックの再生信号)を、適当な係数をかけ、加算することで、トラック間のクロストークを削減する技術が示されている。
また、上記特許文献2や上記特許文献3においては、3ビームの光ヘッドから得られる3トラック分の再生信号間の位相差分をクロストーク演算に必要な十分な高精度に自動同期化する技術が示されている。
また、上記特許文献4においては、2トラック以上の再生信号を記憶するメモリを備え、これを相関演算器及び、位相補間器(位相調整器)により同期化し、さらに適当なフィルタを通しクロストーク信号レプリカを演算して主再生信号のクロストークをキャンセルする技術が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、高精度なクロストークキャンセルを行うためには、以下の(1)(2)が課題となる。
(1)チャネルクロック精度での隣接(または近接)トラックの再生信号の同期化
(2)隣接(または近接)トラックからメイン再生トラックへのクロストークの周波数特性の再現(すなわちクロストーク信号の生成)
【0006】
上記特許文献1〜4としての従来技術はどれもクロストークを効果的にキャンセルする事を目的とする技術であるが、特許文献1においては、その実施がCAVディスクに限られる。
また特許文献2,3においては、3ビームの再生ピックアップを持つ装置にその実施が限られる。
また、特許文献1,2,3に共通して、上記(2)対する考慮がなされていないため、十分な効果が得られないことがある。
一方で、特許文献4の技術は、上記(1)(2)の観点が考慮されているが、1クロック以下の高精度の位相誤差検出回路及び位相同期化回路を、クロストークキャンセラ前段に備えることが必要となっており、実装上の複雑さを生んでしまっている。
【0007】
本発明では、簡易な構成で、動的なクロストーク成分の変動にも対応して的確なクロストークキャンセルを行って再生データ検出が実行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のデータ検出装置は、複数の適応イコライザユニットを有し、記録媒体から読み出される再生情報信号として、データ検出対象としている対象トラックからの再生情報信号と、該再生情報信号に対してクロストーク成分となる上記対象トラックに近接する近接トラックからの再生情報信号とのそれぞれが、上記適応イコライザユニットのそれぞれに入力され、上記各適応イコライザユニットの出力を演算して等化信号として出力する多入力適応イコライザ部と、上記多入力適応イコライザ部の等化信号について2値化処理を行って2値データを得る2値化部と、上記2値化部の2値検出結果に基づいて得られる等化目標信号と、上記多入力適応イコライザ部から出力される等化信号とから等化誤差を求め、該等化誤差を、上記各適応イコライザユニットに適応等化のためのタップ係数制御信号として供給する等化誤差演算部とを備える。
また、記録媒体から読み出される再生情報信号を記憶するメモリ部を備え、各時点で、上記メモリ部から、上記対象トラックからの再生情報信号と、上記近接トラックからの再生情報信号とを読み出して、上記複数の適応イコライザユニットのそれぞれに供給する構成とする。
また、上記メモリ部から読み出されて上記複数の適応イコライザユニットに入力される各再生情報信号の位相差を検出し、検出した位相差に基づいて、上記メモリ部からの各再生情報信号の読み出しタイミングの補正のための補正信号を出力する位相差検出部を、さらに備える。
また上記多入力適応イコライザ部は、3つの適応イコライザユニットを有し、3つの各適応イコライザユニットには、上記対象トラックからの再生情報信号と、上記対象トラックの一方側に隣接する上記近接トラックからの再生情報信号と、上記対象トラックの他方側に隣接する上記近接トラックからの再生情報信号とが、それぞれ入力される構成とする。
また、上記多入力適応イコライザ部は上記対象トラックからの再生情報信号についてパーシャルレスポンス等化処理を行い、上記2値化部は上記多入力適応イコライザ部の等化信号についての2値化処理として最尤復号処理を行い、上記等化誤差演算部は上記最尤復号による2値検出結果の畳込処理で得られる等化目標信号と上記多入力適応イコライザ部から出力される等化信号とを用いた演算により等化誤差を求める。
【0009】
本発明の再生装置は、記録媒体から情報を読み出すヘッド部と、上記本発明のデータ検出装置を構成する多入力適応イコライザ部、2値化部、等化誤差演算部と、上記2値化部で得られた2値データから再生データを復調する復調部とを備える。
【0010】
本発明のデータ検出方法は、記録媒体から読み出される再生情報信号として、データ検出対象としている対象トラックからの再生情報信号と、該再生情報信号に対してクロストーク成分となる上記対象トラックに近接する近接トラックからの再生情報信号とのそれぞれを、複数の適応イコライザユニットのそれぞれに入力し、上記各適応イコライザユニットの出力を演算して等化信号として出力し、上記等化信号について2値化処理を行って2値データを得、上記2値化処理での2値検出結果に基づいて得られる等化目標信号と上記等化信号との等化誤差を用いて、上記各適応イコライザユニットの適応等化のためのタップ係数制御を行うデータ検出方法である。
【0011】
これらの本発明では、再生時の近接トラックからのクロストーク成分を、多入力適応イコライザ部によって削減し、最適な再生信号を得、再生性能を向上させるものである。
多入力適応イコライザ部では、それぞれの適応イコライザユニットの持つ位相・振幅両方の特性最適化機能を利用してクロストークキャンセルを行う。
即ち、対象トラックからの再生情報信号が入力される適応イコライザユニットでは、再生情報信号の入力信号周波数成分の誤差、位相歪みの最適化を行う。最適化のためのタップ係数制御は、等化目標信号と等化信号との等化誤差を用いて行われる。
一方、近接トラックからの再生情報信号が入力される適応イコライザユニットでは、等化目標信号が、その適応イコライザユニットへ入力される近接トラック信号と無相関である。このため、その適応イコライザユニットで等化誤差を用いてタップ係数制御が行われる場合、その出力としてクロストーク成分をキャンセルする信号を得ることができる。従って各適応イコライザユニットの出力を演算することで、クロストークキャンセルされた等化信号を得ることができる。
これにより従来必要であった位相誤差検出や位相調整を削減しつつ、動的なクロストーク成分にも追従して対応可能なクロストークキャンセルが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、比較的簡易な構成で、再生情報信号から近接トラックのクロストーク成分を非常に高精度に除去可能となり、再生データ検出能力を向上できる。特に、近接トラックからのクロストークによる劣化が深刻となりやすい高密度記録時や狭トラックピッチ記録時に再生性能の大幅な向上が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態のディスクドライブ装置のブロック図である。
【図2】第1の実施の形態のデータ検出処理部のブロック図である。
【図3】実施の形態の多入力適応イコライザ部のブロック図である。
【図4】実施の形態の適応イコライザユニットのブロック図である。
【図5】実施の形態の等化誤差演算器のブロック図である。
【図6】実施の形態のクロストークキャンセルによる効果の説明図である。
【図7】実施の形態の適応イコライザユニットのタップ係数の説明図である。
【図8】第2の実施の形態のデータ検出処理部のブロック図である。
【図9】第3の実施の形態のデータ検出処理部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。実施の形態では、本発明の再生装置の例として光ディスクに対する記録再生を行うディスクドライブ装置を挙げ、またデータ検出装置の例として、ディスクドライブ装置内に設けられているデータ検出処理部を挙げる。第1〜第3の各実施の形態は、データ検出処理部の構成が異なるものである。
説明は次の順序で行う。
<1.ディスクドライブ装置の構成>
<2.第1の実施の形態のデータ検出処理部>
<3.第2の実施の形態のデータ検出処理部>
<4.第3の実施の形態のデータ検出処理部>
<5.変形例>
【0015】
<1.ディスクドライブ装置の構成>

本実施の形態のディスクドライブ装置の構成を図1により説明する。
本実施の形態のディスクドライブ装置は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))、或いは次世代ディスク等としての再生専用ディスクや記録可能型ディスク(ライトワンスディスクやリライタブルディスク)に対応して再生や記録を行うことができるものとする。
【0016】
例えば記録可能型のブルーレイディスクの場合、波長405nmのレーザ(いわゆる青色レーザ)とNAが0.85の対物レンズの組み合わせという条件下でフェイズチェンジマーク(相変化マーク)や色素変化マークの記録再生を行うものとされ、トラックピッチ0.32μm、線密度0.12μm/bitで、64KB(キロバイト)のデータブロックを1つの記録再生単位(RUB:Recording Unit Block)として記録再生を行う。
なお再生専用ディスクについては、λ/4程度の深さのエンボスピットにより再生専用のデータが記録される。同様にトラックピッチは0.32μm、線密度は0.12μm/bitである。そして64KBのデータブロックを1つの再生単位(RUB)として扱う。
【0017】
記録再生単位であるRUBは、156シンボル×496フレームのECCブロック(クラスタ)に対して、例えばその前後に1フレームのリンクエリアを付加して生成された合計498フレームとなる。
なお、記録可能型ディスクの場合、ディスク上にはグルーブ(溝)が蛇行(ウォブリング)されて形成され、このウォブリンググルーブが記録再生トラックとされる。そしてグルーブのウォブリングは、いわゆるADIP(Address in Pregroove)データを含むものとされる。つまりグルーブのウォブリング情報を検出することで、ディスク上のアドレスを得ることができるようにされている。
【0018】
記録可能型ディスクの場合、ウォブリンググルーブによって形成されるトラック上にはフェイズチェンジマークによるレコーディングマークが記録されるが、フェイズチェンジマークはRLL(1,7)PP変調方式(RLL;Run Length Limited、PP:Parity preserve/Prohibit rmtr(repeated minimum transition runlength))等により、線密度0.12μm/bit、0.08μm/ch bitで記録される。
チャネルクロック周期を「T」とすると、マーク長は2Tから8Tとなる。
再生専用ディスクの場合、グルーブは形成されないが、同様にRLL(1,7)PP変調方式で変調されたデータがエンボスピット列として記録されているものとなる。
【0019】
このようなブルーレイディスクや、或いはDVD等の光ディスク90は、ディスクドライブ装置に装填されると図示しないターンテーブルに積載され、記録/再生動作時においてスピンドルモータ2によって一定線速度(CLV)又は一定角速度(CAV)で回転駆動される。
そして再生時には光ピックアップ(光学ヘッド)1によって光ディスク90上のトラックに記録されたマーク情報の読出が行われる。
また光ディスク90に対してのデータ記録時には、光ピックアップ1によって光ディスク90上のトラックに、ユーザーデータがフェイズチェンジマークもしくは色素変化マークとして記録される。
【0020】
なお、光ディスク90の内周エリア91等には、再生専用の管理情報として例えばディスクの物理情報等がエンボスピット又はウォブリンググルーブによって記録されるが、これらの情報の読出も光学ピックアップ1により行われる。
さらに光ディスク90に対しては、光ピックアップ1によってディスク90上のグルーブトラックのウォブリングとして埋め込まれたADIP情報の読み出しもおこなわれる。
【0021】
光ピックアップ1内には、レーザ光源となるレーザダイオードや、反射光を検出するためのフォトディテクタ、レーザ光の出力端となる対物レンズ、対物レンズを介してディスク記録面にレーザ光を照射し、またその反射光をフォトディテクタに導く光学系等が形成される。
ピックアップ1内において対物レンズは二軸機構によってトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持されている。
また光ピックアップ1全体はスレッド機構3によりディスク半径方向に移動可能とされている。
また光ピックアップ1におけるレーザダイオードはレーザドライバ13によって駆動電流が流されることでレーザ発光駆動される。
【0022】
ディスク90からの反射光情報はフォトディテクタによって検出され、受光光量に応じた電気信号とされてマトリクス回路4に供給される。
マトリクス回路4には、フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
例えば再生データに相当する再生情報信号(RF信号)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号などを生成する。
さらに、グルーブのウォブリングに係る信号、即ちウォブリングを検出する信号としてプッシュプル信号を生成する。
マトリクス回路4から出力される再生情報信号はデータ検出処理部5へ、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号は光学ブロックサーボ回路11へ、プッシュプル信号はウォブル信号処理回路15へ、それぞれ供給される。
【0023】
データ検出処理部5は、再生情報信号の2値化処理を行う。
例えばデータ検出処理部5では、RF信号のA/D変換処理、PLLによる再生クロック生成処理、PR(Partial Response)等化処理、ビタビ復号(最尤復号)等を行い、パーシャルレスポンス最尤復号処理(PRML検出方式:Partial Response Maximum Likelihood検出方式)により、2値データ列を得る。詳しくは後述する。
そしてデータ検出処理部5は、光ディスク90から読み出した情報としての2値データ列を、後段のエンコード/デコード部7に供給する。
【0024】
エンコード/デコード部7は、再生時おける再生データの復調と、記録時における記録データの変調処理を行う。即ち、再生時にはデータ復調、デインターリーブ、ECCデコード、アドレスデコード等を行い、また記録時にはECCエンコード、インターリーブ、データ変調等を行う。
再生時においては、上記データ検出処理部5で復号された2値データ列がエンコード/デコード部7に供給される。エンコード/デコード部7では上記2値データ列に対する復調処理を行い、光ディスク90からの再生データを得る。即ち、例えばRLL(1,7)PP変調等のランレングスリミテッドコード変調が施されて光ディスク90に記録されたデータに対しての復調処理と、エラー訂正を行うECCデコード処理を行って、光ディスク90からの再生データを得る。
エンコード/デコード部7で再生データにまでデコードされたデータは、ホストインターフェース8に転送され、システムコントローラ10の指示に基づいてホスト機器200に転送される。ホスト機器200とは、例えばコンピュータ装置やAV(Audio-Visual)システム機器などである。
【0025】
光ディスク90に対する記録/再生時にはADIP情報の処理が行われる。
即ちグルーブのウォブリングに係る信号としてマトリクス回路4から出力されるプッシュプル信号は、ウォブル信号処理回路6においてデジタル化されたウォブルデータとされる。またPLL処理によりプッシュプル信号に同期したクロックが生成される。
ウォブルデータはADIP復調回路16で、ADIPアドレスを構成するデータストリームに復調されてアドレスデコーダ9に供給される。
アドレスデコーダ9は、供給されるデータについてのデコードを行い、アドレス値を得て、システムコントローラ10に供給する。
【0026】
記録時には、ホスト機器200から記録データが転送されてくるが、その記録データはホストインターフェース8を介してエンコード/デコード部7に供給される。
この場合エンコード/デコード部7は、記録データのエンコード処理として、エラー訂正コード付加(ECCエンコード)やインターリーブ、サブコードの付加等を行う。またこれらの処理を施したデータに対して、RLL(1−7)PP方式等のランレングスリミテッドコード変調を施す。
【0027】
エンコード/デコード部7で処理された記録データは、ライトストラテジ部14に供給される。ライトストラテジ部では、記録補償処理として、記録層の特性、レーザ光のスポット形状、記録線速度等に対するレーザ駆動パルス波形調整を行う。そして、レーザ駆動パルスをレーザドライバ13に出力する。
【0028】
レーザドライバ13は、記録補償処理したレーザ駆動パルスに基づいて、光ピックアップ1内のレーザダイオードに電流を流し、レーザ発光駆動を実行させる。これにより光ディスク90に、記録データに応じたマークが形成されることになる。
なお、レーザドライバ13は、いわゆるAPC回路(Auto Power Control)を備え、光ピックアップ1内に設けられたレーザパワーのモニタ用ディテクタの出力によりレーザ出力パワーをモニタしながらレーザの出力が温度などによらず一定になるように制御する。
記録時及び再生時のレーザ出力の目標値はシステムコントローラ10から与えられ、記録時及び再生時にはそれぞれレーザ出力レベルが、その目標値になるように制御する。
【0029】
光学ブロックサーボ回路11は、マトリクス回路4からのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号から、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボドライブ信号を生成しサーボ動作を実行させる。
即ちフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に応じてフォーカスドライブ信号、トラッキングドライブ信号を生成し、二軸ドライバ18によりピックアップ1内の二軸機構のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することになる。これによってピックアップ1、マトリクス回路4、光学ブロックサーボ回路11、二軸ドライバ18、二軸機構によるトラッキングサーボループ及びフォーカスサーボループが形成される。
また光学ブロックサーボ回路11は、システムコントローラ10からのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし、ジャンプドライブ信号を出力することで、トラックジャンプ動作を実行させる。
また光学ブロックサーボ回路11は、トラッキングエラー信号の低域成分として得られるスレッドエラー信号や、システムコントローラ10からのアクセス実行制御などに基づいてスレッドドライブ信号を生成し、スレッドドライバ19によりスレッド機構3を駆動する。スレッド機構3には、図示しないが、ピックアップ1を保持するメインシャフト、スレッドモータ、伝達ギア等による機構を有し、スレッドドライブ信号に応じてスレッドモータを駆動することで、ピックアップ1の所要のスライド移動が行なわれる。
【0030】
スピンドルサーボ回路12はスピンドルモータ2をCLV回転させる制御を行う。
スピンドルサーボ回路12は、ウォブル信号に対するPLL処理で生成されるクロックを、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報として得、これを所定のCLV基準速度情報と比較することで、スピンドルエラー信号を生成する。
またデータ再生時においては、データ信号処理回路5内のPLLによって生成される再生クロックが、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報となるため、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成することもできる。
そしてスピンドルサーボ回路12は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルドライバ17によりスピンドルモータ2のCLV回転を実行させる。
またスピンドルサーボ回路12は、システムコントローラ10からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモータ2の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
なおスピンドルモータ2には、例えばFG(Freqency Generator)やPG(Pulse Generator)が設けられ、その出力がシステムコントローラ10に供給される。これによりシステムコントローラ10はスピンドルモータ2の回転情報(回転速度、回転角度位置)を認識できる。
【0031】
以上のようなサーボ系及び記録再生系の各種動作はマイクロコンピュータによって形成されたシステムコントローラ10により制御される。
システムコントローラ10は、ホストインターフェース8を介して与えられるホスト機器200からのコマンドに応じて各種処理を実行する。
例えばホスト機器200から書込命令(ライトコマンド)が出されると、システムコントローラ10は、まず書き込むべきアドレスにピックアップ1を移動させる。そしてエンコード/デコード部7により、ホスト機器200から転送されてきたデータ(例えばビデオデータやオーディオデータ等)について上述したようにエンコード処理を実行させる。そして上記のようにエンコードされたデータに応じてレーザドライバ13がレーザ発光駆動することで記録が実行される。
【0032】
また例えばホスト機器200から、光ディスク90に記録されている或るデータの転送を求めるリードコマンドが供給された場合は、システムコントローラ10はまず指示されたアドレスを目的としてシーク動作制御を行う。即ち光学ブロックサーボ回路11に指令を出し、シークコマンドにより指定されたアドレスをターゲットとするピックアップ1のアクセス動作を実行させる。
その後、その指示されたデータ区間のデータをホスト機器200に転送するために必要な動作制御を行う。即ちディスク90からのデータ読出を行い、データ検出処理部5、エンコード/デコード部7における再生処理を実行させ、要求されたデータを転送する。
【0033】
なお図1の例は、ホスト機器200に接続されるディスクドライブ装置として説明したが、ディスクドライブ装置としては他の機器に接続されない形態もあり得る。その場合は、操作部や表示部が設けられたり、データ入出力のインターフェース部位の構成が、図1とは異なるものとなる。つまり、ユーザーの操作に応じて記録や再生が行われるとともに、各種データの入出力のための端子部が形成されればよい。もちろんディスクドライブ装置の構成例としては他にも多様に考えられる。
【0034】
<2.第1の実施の形態のデータ検出処理部>

第1の実施の形態としてのデータ検出処理部5の構成を図2に示す。
上述のようにデータ検出処理部5は、マトリクス回路4から供給される再生情報信号の2値化処理を行う。
図2に示すようにデータ検出処理部5は、多入力適応イコライザ部51、二値化検出器52、PR畳込器53、等化誤差演算器54、メモリ55、A/D変換器56、PLL回路57、メモリコントローラ58が設けられる。
【0035】
マトリクス回路4から供給される再生情報信号はA/D変換器56でデジタルデータに変換される。
A/D変換器56でデジタルデータ化された再生情報信号はPLL回路57に供給されてPLL処理により再生クロックが生成される。再生クロックはA/D変換器56のサンプリングクロックとして用いられ、また図示していないが、後段の各回路部の処理のためのクロックとして用いられる。
【0036】
本実施の形態の場合、A/D変換器56から出力される再生情報信号は、メモリ55に記憶されていく。
メモリ55に記憶された再生情報信号は、メモリコントローラ58からの読出アドレスadに基づいて読み出されて多入力適応イコライザ部51に供給される。
メモリコントローラ58には、ディスク回転同期信号SRが供給されている。これは、例えばスピンドルモータ2のFGパルス或いはPGパルスに基づいてシステムコントローラ10から供給される信号であり、ディスク90の回転角度(回転位相)を示す信号である。
【0037】
メモリコントローラ58がディスク回転同期信号SRに基づいて読出アドレスadを供給することで、メモリ55からは、各時点で、2値化処理の対象とする対象トラックから読み出された再生情報信号と、その対象トラックに隣接する2つの近接トラックからの再生情報信号が、それぞれ同時的に読み出される。
2つの近接トラックとは、その時点の対象トラックより1トラックだけディスク内周側のトラックと、1トラックだけディスク外周側のトラックである。即ち2つの近接トラックからの再生情報信号とは、現時点の対象トラックの再生情報信号に対してクロストーク成分となる再生情報信号である。
図2では、メモリ55から読み出される対象トラックの再生情報信号を再生情報信号Stk0、2つの隣接するトラックの再生情報信号を再生情報信号Stk+、Stk−と示している。例えば再生情報信号Stk+は外周側に隣接するトラックについての、また再生情報信号Stk−は内周側に隣接するトラックについての再生情報信号である。
【0038】
再生情報信号Stk+、Stk−はクロストーク成分となる再生情報信号であるから、光ピックアップ1からのレーザスポットが対象トラックのピット列(又はマーク列)に照射されているときに、その両側に隣接するトラックのピット列(又はマーク列)からの再生情報信号とする。
本例では、このような両隣のピット列の再生情報信号Stk+、Stk−を、処理対象としている対象トラックのピット列の再生情報信号Stk0の2値化の際に同時的に得られるようにするため、A/D変換器56からの再生情報信号を一旦メモリ55に記憶する。そして、ディスク90の回転位相に粗く同期した状態で読み出す。
【0039】
メモリ55からは、光ピックアップ1でのレーザスポットによる再生走査が、対象トラックより1つ外周側のトラックに進み、その外周側のトラックの再生情報信号がメモリ55に記憶された時点で、3つの再生情報信号Stk0、Stk+、Stk−を読み出すことができる。つまり、或る時点で記憶した再生情報信号を再生情報信号Stk+とすると、その1周回前の再生情報信号を対象トラックの再生情報信号Stk0、2周回前の再生情報信号を再生情報信号Stk−として読み出せばよい。このような読出をメモリコントローラ58が制御することになる。
なお、再生情報信号Stk+、Stk−は、再生情報信号Stk0に対するクロストークキャンセルのための信号であるため、本来は、高精度に回転位相(回転角度位置)の同期がとられていることが重要である。つまり実際にクロストーク成分となる隣接するピット列の情報であることが重要とされる。ところが本実施の形態の場合、後述するように多入力適応イコライザ部51の処理でクロストークキャンセルを行うことで、再生情報信号Stk+、Stk−は、再生情報信号Stk0に対して例えば数10クロック精度程度の低精度の同期状態でよい。
【0040】
多入力適応イコライザ部51では、再生情報信号Stk0に対してPR適応等化処理を行う。即ち再生情報信号Stk0が目標とするPR波形に近似するように等化される。また多入力適応イコライザ部51は同時に再生情報信号Stk+、Stk−に対しても適応等化処理を行う。そして各等化出力の演算を行って等化信号y0を出力する。
【0041】
二値化検出器52は例えばビタビデコーダとされ、PR等化された等化信号y0に対して最尤復号処理を行って2値化データDTを得る。この2値化データDTは、図1に示したエンコード/デコード部7に供給されて再生データ復調処理が行われることになる。
またPR畳込器53では、2値化結果の畳み込み処理を行って目標信号Zkを生成する。この目標信号Zkは、二値検出結果を畳み込んだものであるためノイズのない理想信号である。
等化誤差演算器54は、多入力適応イコライザ部51からの等化信号y0と、目標信号Zkから、等化誤差ekを求め、この等化誤差ekを多入力適応イコライザ部51にタップ係数制御のために供給する。
図5に等化誤差演算器54の構成例を示す。等化誤差演算器54は減算器90と係数乗算器91を備える。減算器90では等化信号y0から目標信号Zkを減算する。この減算結果に対して、係数乗算器91で所定の係数を乗算することで等化誤差ekが生成される。
【0042】
多入力適応イコライザ部51の構成を図3に示す。
多入力適応イコライザ部51は、適応イコライザユニット71,72,73と加算器74を備える。
上述した再生情報信号Stk0は適応イコライザユニット72に、再生情報信号Stk+は適応イコライザユニット71に、再生情報信号Stk−は適応イコライザユニット73に、それぞれ入力される。
適応イコライザユニット71,72,73の各々は、FIRフィルタタップ数、その演算精度(ビット分解能)、適応演算の更新ゲインのパラメーターを持ち、各々に最適な値が設定されている。
適応イコライザユニット71,72,73の各々には、適応制御のための係数制御値として等化誤差ekが供給される。
【0043】
各適応イコライザユニット71,72,73の出力y1,y2,y3は加算器74で加算されて多入力適応イコライザ部51の等化信号y0として出力される。
この多入力適応イコライザ部51の出力目標は、二値検出結果をPR(パーシャルレスポンス)に畳みこんだ理想PR波形となっている。
【0044】
各適応イコライザユニット71,72,73は、例えば図4に示すようなFIRフィルタで構成される。
即ち各適応イコライザユニット71,72,73は、遅延素子80−1〜80−n、係数乗算器81−0〜81−n、加算器84を有するn+1段のタップを有するフィルタとされる。
係数乗算器81−0〜81−nでは、それぞれ各時点の入力xに対してタップ係数C0〜Cnの乗算を行う。
係数乗算器81−0〜81−nの出力が加算器84で加算されて出力yとなる。
【0045】
適応型の等化処理を行うため、タップ係数C0〜Cnの制御が行われる。このために、等化誤差ekと、各タップ入力が入力されて演算を行う演算器82−0〜82−nが設けられる。また各演算器82−0〜82−nの出力を積分する積分器83−0〜83−nが設けられる。
各演算器82−0〜82−nでは、例えば−1×ek×xの演算が行われる。この演算器82−0〜82−nの出力は積分器83−0〜83−nで積分され、その積分結果により係数乗算器81−0〜81−nのタップ係数C0〜Cnが変更制御される。なお積分器83−0〜83−nの積分を行うのは、適応係数制御の応答性を調整するためである。
【0046】
以上の構成のデータ検出処理部5では、クロストークキャンセルが行われたうえで2値化データの復号が行われることになる。
【0047】
適応イコライザユニット71,72,73は、同様の図4の構成で、同じ等化誤差ekが供給されて適応等化が行われる。
まず処理対象のトラックの再生情報信号Stk0が入力されている適応イコライザユニット72では、再生情報信号Stk0の入力信号周波数成分の誤差、位相歪みを最適化、すなわち適応PR等化をおこなう。これは通常の適応イコライザの働きと同じである。即ち各演算器82−0〜82−nでの−1×ek×xの演算結果に応じてタップ係数C0〜Cnが調整されることは、等化誤差を解消していく方向にタップ係数C0〜Cnが調整されるものとなる。
【0048】
一方、他の2つの適応イコライザユニット71,73では、出力目標が、近接トラックの再生情報信号Stk+、Stk−と無相関である。このことから、適応イコライザユニット71,73では、相関成分、即ちクロストーク成分を打ち消すような演算が行われる事になる。
即ち適応イコライザユニット71,73の場合、各演算器82−0〜82−nでの−1×ek×xの演算結果に応じてタップ係数C0〜Cnが調整されることは、図3の加算器74の加算結果においてクロストーク成分を解消していく方向の周波数特性が得られるようにタップ係数C0〜Cnが調整されるものとなる。
【0049】
このように、適応イコライザユニット72では、等化誤差ekを用いてタップ係数C0〜Cnが、目標の周波数特性となる方向に適応制御される一方、適応イコライザユニット71,73では、同じく等化誤差ekを用いてタップ係数C0〜Cnがクロストークキャンセルのための周波数特性となる方向に自動的に制御される。これによって、各適応イコライザユニット71,72,73の出力y1,y2,y3が加算器74で加算されて得られる多入力適応イコライザ部51の等化信号y0は、クロストークキャンセルされた信号となる。
【0050】
また図4に示されるような適応イコライザユニット71,72,73には、周波数軸上の振幅成分だけでなく、位相成分の調整機能も持つため、そもそも粗くしか同期が取られていない再生情報信号Stk0、Stk+、Stk−の同期化も、多入力適応イコライザ部51内部にて最適補正がなされる。それゆえ、本来、再生情報信号Stk0、Stk+、Stk−に必要な、1チャネルクロック精度での位相調整を前段にて行う必要が不要となる。このため上述のように、メモリ55からは粗い精度で再生情報信号Stk0、Stk+、Stk−を読み出せばよい。
【0051】
本実施の形態によれば、再生情報信号Stk0から隣接トラックのクロストーク成分を非常に高精度に除去可能となる。このために、特に隣接トラックからのクロストークによる劣化が深刻となる、高密度記録時や狭トラックピッチ記録時に再生性能の大幅な向上が実現できる。
【0052】
図6(a)は、ブルーレイディスクに一層あたり33.4GBの高密度記録し、各ラジアルチルト状態(−0.6°、0°、+0.6°)での実験結果であり、本実施の形態の効果を示すものである。
ここでいう比較例とは、クロストークキャンセルを行わない構成の場合である。即ち図2におけるA/D変換器56の出力が、そのまま適応イコライザでPR等化され、二値化検出器52でビタビデコードされる構成の場合である。
この比較例の場合、ラジアルチルトが−0.6°、0°、+0.6°の各状態においてビットエラーレートが、2.63×10-4、4.51×10-6、9.54×10-4となっている。
一方、本実施の形態の場合、ラジアルチルトが−0.6°、0°、+0.6°の各状態においてビットエラーレートが、6.25×10-6、3.13×10-6、3.13×10-6となっている。
【0053】
図6(b)は、この数値をグラフで示したもので、破線が比較例、実線が実施の形態の場合である。
ディスク再生時、ラジアルチルト存在下では隣接トラックからのクロストークが大幅に増加し、これによる再生性能の劣化が引き起こされ、比較例の再生信号処理の結果ではエラーレートが後段のECC(エラー訂正)を用いても、実用上の限界に近いところまで大幅に増加してしまっている。
一方本実施の形態の場合には、ラジアルチルトがある条件下でもエラーレートの増加がほとんど起こっておらず、クロストーク増大時の再生性能が大幅に拡大している事が分かる。
図6(a)のレシオ(%)は、比較例に対しての実施の形態のエラー低減効果を示したもので、実施の形態の場合のエラーレートから比較例のエラーレートを除算した値である。実施の形態での、ラジアルチルト下でのエラーレート向上効果が示されている。
【0054】
本実験はラジアルチルトを印加する内容であったが、トラックピッチをより狭めていった場合にも同様の効果が期待できる。トラックピッチを詰めることは、一記録層当たりのディスク容量の拡大に直結するため、本実施の形態により、記録ディスクの大幅な高容量化が期待できることを示している。
【0055】
また本実施の形態にはクロストーク成分の位相歪み及び周波数軸上の振幅成分の最適化の効果がある。図7(a)(b)は上記実験における多入力適応イコライザ部51の、隣接トラックの再生情報信号Stk+、Stk−が入力される適応イコライザユニット71,73の収束後のタップ係数とその係数値から求められる周波数特性(振幅)を示したものである。
図7(a)の横軸は、タップ段数を256としたときの、タップ段0〜タップ段255としており、縦軸は、各タップ段のタップ係数である。
また図7(b)の横軸は、サンプリング周波数=1として正規化した正規化周波数fnで、縦軸はゲインである。
図7(a)(b)いずれも、破線が適応イコライザユニット71、実線が適応イコライザユニット73の各タップ係数を示している。
【0056】
ラジアルチルトは隣接トラックに非対称な収差をもたらすため、各々のクロストーク成分には予期困難な位相歪み、周波数特性が表れる。
それを裏付けるように図7(a)のタップ係数には非対称かつ、位相誤差を補正するように若干ずれた位置に大きな成分を持つ係数が現れ、またその周波数特性も、図7(b)のようにフラットな特性ではなく、非常に複雑な様相を示している。
【0057】
周波数特性の複雑さは、チルトによるビームスポットのコマ収差により、ビーム強度に非対称なサイドローブ成分が現れ、これによる光学的フィルタリングの効果を反映しているものと思われる。
またこれらはディスク回転に応じて、ディスク反り等でチルト角が変化するに応じて変化していくため、最適なクロストークキャンセル効果を得るには、本実施の形態のような入力信号適応機能のある補正機構を用いなければ実現困難であると考えられる。
換言すれば、本実施の形態において、各々の適応イコライザユニット71,72,73の各パラメーターを適切に設定することで、動的なクロストーク成分にも追従可能であり、従来技術ではなしえなかった安定かつ高性能なクロストーク除去機能を実現することができる。
【0058】
以上のように本実施の形態では、処理対象の再生情報信号の適応イコライザに対し、隣接する別トラックの再生情報信号もイコライザ入力信号として加える。そして適応イコライザの周波数特性(振幅・位相)の自動最適化機能を利用し、再生時のディスクチルトやフォーカスずれ、球面収差ずれ、記録および再生時のトラックオフセット等様々な光学的収差、スキュー条件下においても、近接トラックからのクロストーク成分を高精度に取り除き、再生性能を向上させることができる。
【0059】
また本実施の形態では、複数トラックの再生情報信号を一度メモリ55に記憶し、ディスク回転同期信号SR等の簡易な同期手法により、近接する複数トラックの再生情報信号Stk0、Stk+、Stk−を半同期化(数〜数10チャネルクロック程度の誤差は許容する)した状況で読み出す。そしてこれを多入力適応イコライザ部51の機能により、位相成分のずれ及びクロストーク成分の周波数特性の最適化を行い、最適なクロストーク除去信号生成し、再生性能を向上させる。
これにより、同時には1トラックの再生信号しか得られない簡易な再生ピックアップを用いる装置でも、複雑な同期化回路を必要とせず、高精度なクロストークキャンセルが実現される。
【0060】
<3.第2の実施の形態のデータ検出処理部>

第2の実施の形態のデータ検出処理部5の構成を図8に示す。なお、図2と同一部分は同一符号を付し、説明を省略する。
この図8の構成は図2の構成に加えて位相検出部59を設けたものである。
【0061】
位相検出部59は、多入力適応イコライザ部51の各適応イコライザユニット71,72,73のTap係数の収束値から、近接トラックの再生情報信号Stk+,Stk−と、対象トラックの再生情報信号Stk0の位相差(時間差)を求める。そして位相差が小さくなるような補正信号HDをメモリコントローラ58に供給する。
メモリコントローラ58は、補正信号HDに応じて、メモリ55からの読出動作を調整する。具体的には例えば読出アドレスadを増減する。これによってメモリ55からの再生情報信号Stk0,Stk+,Stk−において位相差を低減させる。
また位相検出部59は同時に、近接トラックに対する適応イコライザユニット71,73のタップ係数および積分器83−0〜83−nの積分値を、位相補正動作に応じてシフトさせる。
【0062】
このようにすることで、各適応イコライザユニット71,72,73のタップ数の削減を実現できる。これによってイコライザ構成の簡易化、実装面積の縮小等の効果が得られる。これは、位相が動的に変化する状況下でも、再生情報信号Stk0,Stk+,Stk−の位相調整が追従して行われることで、より少ないイコライザタップ数の範囲で、クロストークキャンセルの演算が可能となるためである。
または、一定のタップ数の条件下で考えれば、より安定してクロストークキャンセル性能を引き出せるものともなる。
【0063】
<4.第3の実施の形態のデータ検出処理部>

第3の実施の形態のデータ検出処理部5の構成を図9に示す。なお、図2と同一部分は同一符号を付し、説明を省略する。
この図9の構成は図2の構成からメモリ55,メモリコントローラ58を除いたものである。
【0064】
この場合、例えば光ピックアップ1は、3スポットレーザ照射を行い、メインスポットで処理対象とするトラックを走査するときに、両側のサイドスポットで、対象トラックの両側のトラックの走査も行うようにする。そして3つの各レーザスポット照射による各反射光を、3系統のフォトディテクタで検出することで、マトリクス回路4を介して、対象トラックと、その両側の近接トラックの再生情報信号が同時に得られるようにする。
【0065】
このような構成の場合、各再生情報信号をA/D変換器56でデジタルデータ化し、それぞれを再生情報信号Stk0,Stk+,Stk−として多入力適応イコライザ部51に供給すればよい。
クロストークキャンセル動作は第1の実施の形態と同様である。
光ピックアップ1及びマトリクス回路4が、3トラック分の再生情報信号を独立して読み出せる構成の場合、データ検出処理部5は、この図9のような構成で、クロストークキャンセル機能を備えた2値化処理を行うことができ、データ検出処理部5としての構成の簡略化が可能となる。
【0066】
<5.変形例>

以上、実施の形態について説明してきたが、本発明としては多様な変形例が考えられる。
例えば実施の形態では、近接トラックの再生情報信号として、対象トラックの内周側及び外周側に隣接する2つのトラックの再生情報信号を多入力適応イコライザ部51に入力したが、さらに、4つのトラックの再生情報信号を多入力適応イコライザ部51に入力するようにしてもよい。
即ち対象トラックに対して外周側に近接する2つのトラック、及び内周側に近接する2つのトラックを、それぞれ近接トラックとする。そして多入力適応イコライザ部51は、5つの適応イコライザユニットを設け、対象トラックの再生情報信号と、4つの近接トラックの各再生情報信号が、それぞれの適応イコライザユニットに入力されるようにする。
例えば狭トラックピッチ化が進むと、隣接トラックと、さらにその次のトラックの再生情報信号が、対象トラックに対するクロストーク成分となる場合がある。そのようなシステムでは、近接する4つのトラックに対応してクロストークキャンセル動作を行うことが適切である。
【0067】
逆に、近接トラックとは、対象トラックに対して外周側又は内周側の一方に隣接する1つのトラックのみとする場合もあり得る。その場合、多入力適応イコライザ部51は2つの適応イコライザユニットを設ければよい。
同様の考え方で、近接トラックを3つのトラック、6以上のトラックなどとすることも考えられる。いずれにしても、再生装置や記録媒体の特性や動作に応じて、クロストーク成分となるトラックの再生情報信号が、対象トラックの再生情報信号とともに多入力適応イコライザ部51に入力される構成とすればよい。
【0068】
また実施の形態は光ディスクに対するディスクドライブ装置を例にしたが、ディスク以外の光記録媒体や、ディスク型或いは他の種の磁気記録媒体に対する再生装置、データ検出装置でも本発明は適用できる。即ち記録媒体においてトラックが並んで形成され、近接トラックからのクロストークが生じる場合に本発明は有効である。
【符号の説明】
【0069】
1 光ピックアップ、4 マトリクス回路、5 データ検出処理部、51 多入力適応イコライザ部、52 二値化検出器、53 PR畳込器、54 等化誤差演算器、55 メモリ、56 A/D変換器、57 PLL回路、58 メモリコントローラ、59 位相差検出部、71,72,73 適応イコライザユニット、74 加算器、80−1〜80−n 遅延素子、81−0〜81−n 係数乗算器、82−0〜82−n 演算器、83−0〜83−n 積分器、84 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の適応イコライザユニットを有し、記録媒体から読み出される再生情報信号として、データ検出対象としている対象トラックからの再生情報信号と、該再生情報信号に対してクロストーク成分となる上記対象トラックに近接する近接トラックからの再生情報信号とのそれぞれが、上記適応イコライザユニットのそれぞれに入力され、上記各適応イコライザユニットの出力を演算して等化信号として出力する多入力適応イコライザ部と、
上記多入力適応イコライザ部の等化信号について2値化処理を行って2値データを得る2値化部と、
上記2値化部の2値検出結果に基づいて得られる等化目標信号と、上記多入力適応イコライザ部から出力される等化信号とから等化誤差を求め、該等化誤差を、上記各適応イコライザユニットに適応等化のためのタップ係数制御信号として供給する等化誤差演算部と、
を備えたデータ検出装置。
【請求項2】
記録媒体から読み出される再生情報信号を記憶するメモリ部を備え、
各時点で、上記メモリ部から、上記対象トラックからの再生情報信号と、上記近接トラックからの再生情報信号とを読み出して、上記複数の適応イコライザユニットのそれぞれに供給する構成とされている請求項1に記載のデータ検出装置。
【請求項3】
上記メモリ部から読み出されて上記複数の適応イコライザユニットに入力される各再生情報信号の位相差を検出し、検出した位相差に基づいて、上記メモリ部からの各再生情報信号の読み出しタイミングの補正のための補正信号を出力する位相差検出部を、さらに備えた請求項2に記載のデータ検出装置。
【請求項4】
上記多入力適応イコライザ部は、3つの適応イコライザユニットを有し、
3つの各適応イコライザユニットには、上記対象トラックからの再生情報信号と、上記対象トラックの一方側に隣接する上記近接トラックからの再生情報信号と、上記対象トラックの他方側に隣接する上記近接トラックからの再生情報信号とが、それぞれ入力される請求項1に記載のデータ検出装置。
【請求項5】
上記多入力適応イコライザ部は、上記対象トラックからの再生情報信号についてパーシャルレスポンス等化処理を行い、
上記2値化部は、上記多入力適応イコライザ部の等化信号についての2値化処理として最尤復号処理を行い、
上記等化誤差演算部は、上記最尤復号による2値検出結果の畳込処理で得られる等化目標信号と、上記多入力適応イコライザ部から出力される等化信号とを用いた演算により等化誤差を求める請求項1に記載のデータ検出装置。
【請求項6】
記録媒体から情報を読み出すヘッド部と、
複数の適応イコライザユニットを有し、上記ヘッド部により記録媒体から読み出される再生情報信号として、データ検出対象としている対象トラックからの再生情報信号と、該再生情報信号に対してクロストーク成分となる上記対象トラックに近接する近接トラックからの再生情報信号とのそれぞれが、上記適応イコライザユニットのそれぞれに入力され、上記各適応イコライザユニットの出力を演算して等化信号として出力する多入力適応イコライザ部と、
上記多入力適応イコライザ部の等化信号について2値化処理を行って2値データを得る2値化部と、
上記2値化部の2値検出結果に基づいて得られる等化目標信号と、上記多入力適応イコライザ部から出力される等化信号とから等化誤差を求め、該等化誤差を、上記各適応イコライザユニットに適応等化のためのタップ係数制御信号として供給する等化誤差演算部と、
上記2値化部で得られた2値データから再生データを復調する復調部と、
を備えた再生装置。
【請求項7】
記録媒体から読み出される再生情報信号として、データ検出対象としている対象トラックからの再生情報信号と、該再生情報信号に対してクロストーク成分となる上記対象トラックに近接する近接トラックからの再生情報信号とのそれぞれを、複数の適応イコライザユニットのそれぞれに入力し、
上記各適応イコライザユニットの出力を演算して等化信号として出力し、
上記等化信号について2値化処理を行って2値データを得、
上記2値化処理での2値検出結果に基づいて得られる等化目標信号と上記等化信号との等化誤差を用いて、上記各適応イコライザユニットの適応等化のためのタップ係数制御を行うデータ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−79385(P2012−79385A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224930(P2010−224930)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】