説明

データ生成装置、受信装置、プログラム、及び変位計測システム

【課題】GPS/GNSS衛星測位システムにおける複数の受信装置と測位装置との間の通信データ量を削減することができるようにする。
【解決手段】測位用データ生成部52によって、受信機から出力される観測データから抽出された、受信時刻、衛星ID、及び搬送波位相の小数部を含んで構成される測位用データを生成し、測位用データ記憶部53に記憶させる。圧縮データ生成部52によって、連続する複数の測位用データについて、圧縮単位期間の測位用データ毎に、代表の受信時刻、衛星ID、同一の衛星IDに対する搬送波位相の総和の小数部を含んで構成される圧縮データを各々生成して、測位用データ記憶部53に記憶させる。送信制御部55によって、測位対象期間の複数の圧縮データ、及び最初の圧縮単位期間分の測位用データを、無線通信装置33を介して変位解析装置20に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ生成装置、受信装置、プログラム、及び変位計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、構造物の建設時や建設後における沈下量の計測や、地震直後における空港滑走路や高速道路等の重要構造物の残留変位の計測は非常に重要である。このような計測を目的とした変位計測システムとして、例えば、光ファイバケーブルや測量用のGPS(Global Positioning System)を用いたシステムが知られている(非特許文献1)。しかし、非特許文献1に示される変位計測システムは、システムに必要な機器のコストが高いうえに、有線による通信が必要となるため、広範囲を高密度で計測する用途には不向きである。
【0003】
そこで、安価な1周波GPS受信機と無線通信装置とを備える複数の受信装置と、複数の受信装置から無線で送信されてくるデータに基づいて変位を解析する変位解析装置とを用いた測位システムが提案されている(非特許文献2)。
【0004】
また、複数の受信装置と変位解析装置との間の通信データ量を削減する変位計測システムが知られている(特許文献1)。この変位計測システムでは、受信装置において、GPS受信機からの観測データから抽出された受信時刻、衛星ID、及び搬送波位相の小数部を含んで構成される測位用データを生成し、時系列の測位用データを、変位解析装置に送信している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】堀宗朗、外3名,「RTK−GPSを用いた地盤大変状の計測と精度の検証」,土木学会論文集,社団法人土木学会,平成15年3月,第729巻,第III−62号,p.177−183
【非特許文献2】佐伯昌之、外2名,「1周波GPS受信機と無線LANを用いた多点変位計測システムの開発」,応用力学論文集,社団法人土木学会,平成17年8月,第8巻,p.645−652
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−122293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
GPSを用いて数ミリ〜数センチの精度で変位を計測するためには、干渉測位を行う必要がある。干渉測位を実施するには、参照点と移動点で受信されたデータを合わせて解析する必要があることから、必ず一方のデータを他方に送信するか、もしくは両者のデータを変位解析装置へ送信する必要がある。上記の非特許文献2に示される受信装置では、GPS受信機から出力される観測データを、無線通信装置を介して変位解析装置に送信しているため、通信データ量が増大してしまう、という問題がある。この問題は、データ通信時間の増大と消費電力の増大をもたらしている。
【0008】
上記の特許文献1に記載の技術では、上記の問題を解決するために、時系列に生成された観測データのうち、本当に必要なデータのみを抽出して測位用データを生成し、生成された測位用データのみを変位解析装置へ送信するため、通信データ量を大幅に削減することに成功している。特許文献1に記載の技術のように、通信データ量を削減することができれば、無線通信時間を短縮することが可能である。また、このことは無線通信装置の通電時間を短縮することを可能とするため、無線通信装置の消費電力を低減することができる。
【0009】
本発明は、上記のデータ量削減技術をさらに発展させ、無線通信装置によるデータ通信量をさらに大幅に圧縮するものであり、GPS変位計測における複数の受信装置と変位解析装置との間の通信データ量を削減することができるデータ生成装置、受信装置、プログラム、及び変位計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために第1の発明に係るデータ生成装置は、GPS受信機から出力される観測データに含まれる、衛星からの搬送波の受信時刻と、前記衛星を識別する衛星IDと、搬送波位相の小数部とを抽出し、抽出された前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部を含んで構成される測位用データを生成する測位用データ生成手段と、連続する複数の測位用データについて、連続する所定個の測位用データ毎に、各測位データに含まれる受信時刻に基づく受信時刻、前記衛星ID、及び各測位データに含まれる同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の総和の小数部又は同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の平均の小数部を含んで構成される圧縮データを各々生成する圧縮データ生成手段と、を含んで構成されている。
【0011】
第2の発明に係る受信装置は、衛星からの搬送波をアンテナを介して受信し、観測データを出力するGPS受信機と、無線通信装置と、前記GPS受信機から出力される前記観測データに含まれる、前記衛星からの前記搬送波の受信時刻と、前記衛星を識別する衛星IDと、搬送波位相の小数部とを抽出し、抽出された前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部を含んで構成される測位用データを生成する測位用データ生成手段と、連続する複数の測位用データについて、連続する所定個の測位用データ毎に、各測位データに含まれる受信時刻に基づく受信時刻、前記衛星ID、各測位データに含まれる同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の総和の小数部又は同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の平均の小数部を含んで構成される圧縮データを各々生成する圧縮データ生成手段と、前記圧縮データ生成手段によって生成された複数の圧縮データと、前記測位用データ生成手段によって生成された少なくとも1個の前記測位用データとを、前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部に基づいて複数の前記GPS受信機間の相対位置関係を計算可能な変位解析装置に、前記無線通信装置を介して送信するデータ送信手段と、を含んで構成されている。
【0012】
第3の発明に係るプログラムは、コンピュータを、GPS受信機から出力される観測データに含まれる、衛星からの搬送波の受信時刻と、前記衛星を識別する衛星IDと、搬送波位相の小数部とを抽出し、抽出された前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部を含んで構成される測位用データを生成する測位用データ生成手段、前記生成された前記測位用データをメモリに記憶させる測位用データ記憶制御手段、連続する複数の測位用データについて、連続する所定個の測位用データ毎に、各測位データに含まれる受信時刻に基づく受信時刻、前記衛星ID、各測位データに含まれる同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の総和の小数部又は同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の平均の小数部を含んで構成される圧縮データを各々生成する圧縮データ生成手段、前記生成された複数の圧縮データをメモリに記憶させる圧縮データ記憶制御手段、及び前記メモリに記憶された、前記複数の圧縮データ、及び少なくとも1個の前記測位用データを、前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部に基づいて複数の前記GPS受信機間の相対位置関係を計算可能な変位解析装置に、無線通信装置を介して送信するデータ送信手段として機能させるためのプログラムである。
【0013】
第4の発明に係るプログラムは、コンピュータを、GPS受信機から出力される観測データから抽出された、衛星からの搬送波の受信時刻と、前記衛星を識別する衛星IDと、搬送波位相の小数部とを含んで構成される測位用データ、及び連続する複数の測位用データについて、連続する所定個の測位用データ毎に得られた、各測位データに含まれる受信時刻に基づく受信時刻、前記衛星ID、各測位データに含まれる同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の総和の小数部又は同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の平均の小数部を含んで構成される複数の圧縮データが、前記GPS受信機ごとに記憶されたメモリから、干渉測位における参照点となる前記GPS受信機及び測位対象期間に対応する少なくとも1個の前記測位用データ及び複数の前記圧縮データと、未知点となる前記GPS受信機及び前記測位対象期間に対応する少なくとも1個の前記測位用データ及び複数の前記圧縮データを読み出す読み出し手段、前記未知点となる前記GPS受信機の座標値を所定の値として、前記参照点及び前記未知点の前記GPS受信機における複数の前記圧縮データに基づいて、搬送波位相の二重差を前記GPS受信機の近似位置と前記衛星との間の距離の二重差で修正した修正値を各々算出すると共に、前記参照点及び前記未知点の前記GPS受信機における前記測位用データに基づいて、搬送波位相の二重差の修正値を算出する二重差算出手段、前記測位用データに基づいて算出された前記搬送波位相の二重差の修正値を用いて、前記圧縮データに基づいて算出された前記搬送波位相の二重差の修正値の各々におけるサイクルスリップを各々修正するサイクルスリップ修正手段、前記サイクルスリップが修正された前記搬送波位相の二重差の修正値に基づいて、前記参照点となる前記GPS受信機に対する前記未知点となる前記GPS受信機の相対位置を算出する相対位置算出手段として機能させるためのプログラムである。
【0014】
第5の発明に係る変位計測システムは、衛星からの搬送波をアンテナを介して受信して、測位用データ及び圧縮データを無線で送信する複数の受信装置と、前記複数の受信装置から送信される前記測位用データ及び前記圧縮データに基づいて変位を算出する変位解析装置とを含んで構成される変位計測システムであって、前記受信装置は、前記搬送波を受信して観測データを出力するGPS受信機と、無線通信装置と、前記GPS受信機から出力される前記観測データに含まれる、衛星からの搬送波の受信時刻と、前記衛星を識別する衛星IDと、搬送波位相の小数部とを抽出し、抽出された前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部を含んで構成される前記測位用データを生成する測位用データ生成手段と、連続する複数の測位用データについて、連続する所定個の測位用データ毎に、各測位データに含まれる受信時刻に基づく受信時刻、前記衛星ID、各測位データに含まれる同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の総和の小数部又は同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の平均の小数部を含んで構成される前記圧縮データを各々生成する圧縮データ生成手段と、前記圧縮データ生成手段によって生成された複数の圧縮データと、前記測位用データ生成手段によって生成された少なくとも1個の前記測位用データとを、前記変位解析装置に、前記無線通信装置を介して送信する測位用データ送信手段とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のデータ生成装置、受信装置、プログラム、及び変位計測システムによれば、GPS受信機の観測データから抽出された受信時刻、衛星ID、及び搬送波位相の小数部を含んで構成される測位用データを生成すると共に、連続する所定個の測位用データ毎に、搬送波位相の総和の小数部又は平均の小数部を含んで構成される圧縮データを生成して、複数の圧縮データ、及び少なくとも1個の測位用データを変位解析装置に送信することにより、複数の受信装置と変位解析装置との間の通信データ量を削減することができる、という効果が得られる。この受信装置と変位解析装置との間の通信データ量を削減することができるということは、換言すると受信装置の電源の省電力化がもたらされることになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る変位計測システムの構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る変位計測システムの受信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る変位計測システムの受信装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る変位計測システムの受信装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】測位用データの例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る変位計測システムの受信装置の無線通信装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る変位計測システムの変位解析装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る変位計測システムの変位解析装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る受信装置の制御部における送信制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る変位解析装置における初期段階算出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】搬送波位相の二重差を説明するための図である。
【図12】測位用データから算出された搬送波位相の二重差の修正値の変化を示すグラフである。
【図13】サイクルスリップが修正された搬送波位相の二重差の修正値の変化を示すグラフである。
【図14】サイクルスリップが再修正された搬送波位相の二重差の修正値の変化を示すグラフである。
【図15】(A)サイクルスリップが適切に修正された、圧縮データに基づく搬送波位相の二重差の修正値の変化を示すグラフ、及び(B)サイクルスリップが誤って修正された、圧縮データに基づく搬送波位相の二重差の修正値の変化を示すグラフである。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係る変位解析装置における相対位置算出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る変位計測システムは、複数の受信装置10と、変位解析装置20とを含んで構成されている。各受信装置10は、空港や港湾施設、高速道路、盛土など、準静的な変位の計測対象となる構造物上に設置され、受信装置10と変位解析装置20、及び受信装置10と受信装置10は、無線で通信可能となっている。変位計測システムでは、各受信装置10から送信されるデータ(測位用データ及び圧縮データ)に基づいて、変位解析装置20において、受信装置10間の相対位置が算出される。そして、変位解析装置20では、過去のある時点における受信装置10間の相対位置と、現在の受信装置10間の相対位置とを比較することにより、受信装置10が設置された点の変位が解析される。
【0019】
各受信装置10は、衛星からの電波(搬送波:例えばL1搬送波)を受信し、受信装置10間の相対位置の測位解析に必要となる測位用データ及び圧縮データを、無線で変位解析装置20に送信する。受信装置10は、例えば、図2に示すように、パッチアンテナ30、GPS受信機31、制御部32、無線通信装置33、電源34、及び電源制御部35を含んで構成されている。制御部32は、本発明のデータ生成装置及びコンピュータに対応している。
【0020】
パッチアンテナ30は、衛星からの電波(搬送波)を受信する。GPS受信機31は、パッチアンテナ30を介して受信される複数の衛星からの電波(搬送波)を所定間隔(例えば1秒間隔)でサンプリングし、例えばBINARY形式の観測データを、サンプリング(エポック)ごとに出力する。なお、本実施形態においては、GPS受信機31は、L1搬送波等の1周波を受信可能であれば良い。本実施形態において示される実測結果は、古野電気株式会社製のGPS受信機GT−8032をGPS受信機31として用いたものである。GT−8032は、衛星からの電波を16チャンネルで同時に探索可能であり、最大で12の衛星を捕捉可能である。
【0021】
制御部32は、GPS受信機31から出力される観測データを、受信装置10間の相対位置の解析に必要な測位用データ及び圧縮データに変換し、無線通信装置33を介して変位解析装置20に送信する。無線通信装置33は、制御部32から出力される測位用データ及び圧縮データを変位解析装置20に対して無線で送信可能な装置であり、例えばIEEE802.11b規格の無線LANカードや特定小電力無線等により実現することができる。
【0022】
電源34は、受信装置10の動作に必要となる電力の供給源であり、電池等を用いて実現することができる。なお、電源34を太陽電池とする場合には、受信装置10の筐体の表面に太陽電池パネルを設けることも可能である。なお、電源34には、受信装置10内の各部で必要となる電圧を生成するための降圧/昇圧スイッチングレギュレータ等も含まれる。電源制御部35は、制御部32からの制御により、GPS受信機31及び無線通信装置33に対する電源の投入/切断を制御する。電源制御部35は、例えば、フォトMOSリレー等のMOSFETによるスイッチ回路により実現することができる。
【0023】
また、制御部32は、電源制御部35を介さずに、GPS受信機31や無線通信装置33を制御してスリープモードに移行させ、又はスリープモードから復帰させてもよい。スリープモードは、電源を切断する場合に比べて電力消費が大きいが、起動が速いというメリットがある。
【0024】
制御部32のハードウェア構成について説明する。制御部32は、例えば、図3に示すように、CPU40、プログラムメモリ41、データメモリ42、及び通信インタフェース(I/F)43を含んで構成される。CPU40は、プログラムメモリ41に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。プログラムメモリ41は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性の書き換え可能な記憶デバイスである。データメモリ42は、例えばRAM(Random Access Memory)等の記憶デバイスであり、CPU40によって生成されたデータ等の一時的な記憶領域として用いられる。通信インタフェース43は、GPS受信機31、無線通信装置33、及び電源制御部35との間における信号送受信の制御を行う。通信インタフェース43は、GPS受信機31からのデータ受信、及び無線通信装置33へのデータ送信を、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)による通信機能を有する回路により実現することができる。また、通信インタフェース43は、無線通信装置33からの制御信号の受信、電源制御部35への制御信号の送信を行うことができる。また、通信インタフェース43とGPS受信機31、無線通信装置33、及び電源制御部35の各々とは、双方向のやり取りをすることができる。例えば、通信インタフェース43は、制御信号に対する応答や、現在の状態を知るための信号を受け取ることができる。
【0025】
制御部32の機能構成について説明する。制御部32は、例えば、図4に示すように、観測データ取得部51、測位用データ生成部52、測位用データ記憶部53、圧縮データ生成部54、及び送信制御部55を含んで構成される。なお、測位用データ記憶部53は、データ記憶手段の一例であり、送信制御部55は、データ送信手段の一例である。測位用データ生成部52は、測位用データ生成手段及び測位用データ記憶制御手段の一例である。
【0026】
観測データ取得部51は、予め設定された観測開始時刻(例えば、1日2回の所定時刻)になると、GPS受信機31から観測データを取得する前に、電源制御部35に対して制御信号を出力することにより、GPS受信機31の電源を投入させる。また、観測データ取得部51は、観測開始時刻から予め設定された観測期間(例えば、5分間)が経過すると、電源制御部35に対して制御信号を出力することにより、GPS受信機31の電源を切断する。これによって、観測データ取得部51は、観測開始時刻から観測期間が経過するまでの間、GPS受信機31から出力された観測データを取得する。
【0027】
なお、観測開始時刻は、例えば、変位解析装置20から送信された「x秒後に観測」という命令を受信することにより、設定してもよい。
【0028】
測位用データ生成部52は、GPS受信機31から送信されてくるBINARY形式等の観測データのうち、変位解析装置20における各受信装置10間の相対位置の解析に必要な情報を抽出して測位用データを生成し、測位用データ記憶部53に格納する。
【0029】
圧縮データ生成部54は、測位用データ記憶部53に格納された時系列の測位用データを基に時系列の圧縮データを生成し、測位用データ記憶部53に格納する。なお、圧縮データ生成部54によって生成された圧縮データは、測位用データ記憶部53に記憶されずに、そのまま送信制御部55によって送信されるようにしてもよい。
【0030】
送信制御部55は、受信装置10の位置観測を開始した初期段階において、測位用データ記憶部53に記憶されている時系列の測位用データを、無線通信装置33に出力して、送信させる。この際、送信制御部55は、無線通信装置33に対してデータ出力を開始する前に、電源制御部35に対して制御信号を出力することにより、無線通信装置33の電源を投入させる。また、送信制御部55は、無線通信装置33から変位解析装置20へのデータ送信の完了信号を受信すると、電源制御部35に対して制御信号を出力することにより、無線通信装置33の電源を切断する。
【0031】
また、送信制御部55は、受信装置10の位置が変位解析装置20によって計算され、初期段階が過ぎた場合、測位用データ記憶部53に記憶されている、例えば、最初の3秒間(3エポック)の測位用データを、無線通信装置33に出力して、送信させる。この際、送信制御部55は、無線通信装置33に対してデータ出力を開始する前に、電源制御部35に対して制御信号を出力することにより、無線通信装置33の電源を投入させる。また、送信制御部55は、測位用データ記憶部53に記憶されている、時系列の圧縮データを、無線通信装置33に出力して、送信させる。送信制御部55は、無線通信装置33から変位解析測位装置20へのデータ送信の完了信号を受信すると、電源制御部35に対して制御信号を出力することにより、無線通信装置33の電源を切断する。
【0032】
受信装置10における測位用データ生成部52、圧縮データ生成部54、及び送信制御部55の動作の詳細については後述する。なお、測位用データ記憶部53は、データメモリ42を用いて実現される。また、測位用データ生成部52、圧縮データ生成部54、及び送信制御部55は、CPU40がプログラムメモリ41に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0033】
ここで、測位用データ生成部52によって生成される測位用データの構成について説明する。測位用データの元となるGPS受信機31から出力される観測データには、測位解析に用いられる主なデータとして、(a)受信装置のおおまかな座標値(例えば12バイト)、(b)受信時刻(例えば4バイト)、(c)捕捉衛星数(例えば1バイト)、(d)衛星ID(例えば1バイト/衛星)、(e)搬送波位相(例えば4バイト/位相)、(f)コード擬似距離(例えば4バイト/衛星)が含まれている。なお、各データの括弧内に示した数値は、データをバイナリ形式で表した際に必要となるバイト数の例である。GPS受信機31において1度に捕捉される衛星の数は最大で10〜12程度であるため、1エポックにおける(a)〜(f)の合計データ量は、最大で107〜125バイト程度となる。
【0034】
「(a)受信装置のおおまかな座標値」は、受信装置10の正確な位置を推定する際に必要となる。測位解析をする際には、測位対象となる受信装置10の座標は未知である。そして、観測方程式は未知点の座標について非線形であるため、摂動法を用いて方程式を線形化してから座標値を推定することが一般的である。この際に、未知点となる受信装置10の座標値を仮定する必要があるが、この仮定値の精度は数メートルもあれば十分である。図1に示したような多点での計測による測位システムでは、隣り合う受信装置10間の距離は、例えば50メートル程度であることが多い。そこで、本実施形態では、受信装置10の初期段階において、相対位置を算出する際の参照点となる受信装置10の座標値を、未知点となる受信装置10の座標値として仮定することとし、測位用データにおいてはデータ(a)を不要としている。
【0035】
「(b)受信時刻」は、データ(c)〜(f)が取得された時刻を表している。この受信時刻は、衛星の位置を計算するために必要であるため、本実施形態における測位用データにおいても必要となる。
【0036】
「(c)捕捉衛星数」は、あるエポックにおいて電波(搬送波)を受信した衛星の数を示している。そして、「(d)衛星ID」は、あるエポックにおいて電波(搬送波)を受信した衛星を識別するための識別子である。捕捉衛星数は、衛星IDの情報があれば後から数えることが可能であるため、不要とすることが可能である。なお、衛星IDの情報は測位解析において必ず必要となる。
【0037】
「(e)搬送波位相」は、受信装置10で捕捉されている衛星から送信された電波(搬送波)の受信時刻における位相の値であり、衛星と受信装置10との間の距離を数ミリメートル〜数センチメートルの精度で計測したデータである。搬送波位相は位相情報であるため、2πNのアンビギュイティを持っている。このアンビギュイティにより、衛星と受信装置10に接続されているパッチアンテナ30間の距離は不明であるが、Nはサイクルスリップを起こさない限り一定である。そして、一般的な測位解析では、Nのこのような性質が利用されており、搬送波位相の整数部分が重要な情報となっている。一方、本実施形態においては、後述する手法により変位解析装置20においてサイクルスリップを修正可能であるため、搬送波位相の整数部分(例えば3バイト)は不要とし、小数部分(例えば1バイト)のみを用いることとしている。
【0038】
「(f)コード擬似距離」は、受信装置10のおおまかな座標値を計算したり、受信装置10が衛星からの電波(搬送波)を捕捉した本当の時刻を計算したりするために必要となる。ただし、本実施形態のGPS受信機31は、観測データを制御部32に出力する前に電波(搬送波)の捕捉時刻を補正する機能を有しており、コード擬似距離は不要となる。
【0039】
本実施形態では、測位用データ生成部52によって生成される測位用データの構成を、図5に例示されるものとした。図5に示すように、測位用データは、スタートフラグ(2バイト)、捕捉衛星数(1バイト)、受信時刻(4バイト)、搬送波位相データ(2バイト/衛星×10)、及びチェックサム(2バイト)の計29バイトとなっている。スタートフラグは、測位用データ(パケット)の始まりを示すフラグである。搬送波位相データには、各衛星の搬送波位相等の情報(2バイト)が10個含まれている。そして、各衛星の情報には、搬送波位相(8ビット)、SN比(3ビット)、衛星ID(5ビット)が含まれている。SN比は、受信された電波(搬送波)における信号と雑音の比率を示すものであり、変位解析装置20における測位解析の精度を向上させるために用いることができる。チェックサムは、測位用データの誤りを検出するためのものである。また、圧縮データ生成部54によって生成される圧縮データも、上記の測位用データと同様の構成となっている。
【0040】
圧縮データ生成部54によって生成される圧縮データは、圧縮単位期間(例えば3秒間)に対応する複数の測位用データ(例えば、3エポックの測位用データ)を圧縮した圧縮データであり、搬送波位相データの各衛星の搬送波位相として、圧縮単位期間(例えば3秒間)の測位用データにおける同一の衛星IDに対する搬送波位相の和が格納されている。また、搬送波位相データの各衛星の搬送波位相として、搬送波位相の小数部分のみが格納されている。
【0041】
また、圧縮単位期間に対応する複数の測位用データでは、一般的に、衛星ID、SN比は共通であるため、圧縮データには、共通の衛星ID、SN比が格納されている。また、圧縮データの受信時刻として、複数の測位用データの各々の受信時刻の代表時刻(例えば、中央のデータの受信時刻)が格納されている。なお、圧縮データの受信時刻として、複数の測位用データの各々の受信時刻の平均時刻を格納するようにしてもよい。
【0042】
本実施形態の測位用データ及び圧縮データの1パケットは29バイトとなっている。なお、前述したように、捕捉衛星数は衛星IDを数えることによって後から計算することができるため、測位用データ及び圧縮データから削除することも可能である。また、変位解析装置20においてSN比を用いない場合であれば、測位用データ及び圧縮データからSN比を削除することも可能である。また、SN比を削除せずに、3ビットではなく1バイトで保存して分解能を上げることも可能である。例えば、SN比が、30dB〜50dB程度の値をとり、3ビットでは収まらない場合には、衛星ID1バイト、SN比1バイトで送信する。この場合、パケットサイズは、38バイト(捕捉衛星数を除く)になる。
【0043】
無線通信装置33の構成について説明する。無線通信装置33は、例えば、図6に示すように、通信インタフェース(I/F)60、メモリ61、及びアンテナ62を含んで構成される。
【0044】
通信インタフェース60は、制御部32との間でデータの送受信を行うインタフェース回路である。通信インタフェース60は、制御部32から送信されてくる測位用データ及び圧縮データをメモリ61に一時的に格納する。メモリ61に、測位用データ、又は測位用データ及び圧縮データが格納されると、通信インタフェース60は、変位解析測位装置20との間の通信を確立し、メモリ61に格納された測位用データ、又は測位用データ及び圧縮データを変位解析装置20に送信する。また、通信インタフェース60は、変位解析装置20へのデータ送信が完了すると、データ送信が完了したことを示す制御信号を制御部32に送信する。メモリ61は、通信インタフェース60が制御部32から受信したデータ等が一時的に格納される記憶領域である。アンテナ62は、通信インタフェース60が変位解析装置20との間で通信するデータを無線で送受信するためのものである。なお、無線通信装置33には、電源制御部35を介して電源が供給されている。
【0045】
変位解析装置20のハードウェア構成について説明する。変位解析装置20は、パーソナルコンピュータやPCサーバ、ワークステーション等の情報処理装置である。そして、変位解析装置20は、例えば図7に示すように、CPU70、メモリ71、記憶装置72、表示インタフェース(I/F)73、入力インタフェース(I/F)74、通信インタフェース(I/F)75、及び記録媒体読取装置76を含んで構成されている。
【0046】
CPU70は、メモリ71に格納されたプログラムを実行することにより、変位解析装置20を統括制御し、変位解析装置20における様々な機能を実現する。メモリ71は、例えばRAM(Random Access Memory)等であり、プログラムやデータ等の一時的な記憶領域として用いられる。記憶装置72は、例えばハードディスク等の記憶デバイスであり、プログラムや様々なデータ等が格納される。表示インタフェース73は、ディスプレイ等の表示装置77に画像を表示させるためのビデオカード等のインタフェース装置である。入力インタフェース74は、キーボードやマウス等の入力装置78からデータを入力するためのUSB(Universal Serial Bus)やPS/2(Personal System/2)等のインタフェース装置である。通信インタフェース75は、アンテナ79を介して受信装置10との間でデータの送受信を行うためのネットワークカード等のインタフェース装置である。記録媒体読取装置76は、CD−ROMやメモリカード等の記録媒体80に格納されたプログラムや各種データを読み取るためのCD−ROMドライブやメモリカードインタフェース等のインタフェース装置である。
【0047】
変位解析装置20の機能構成について説明する。変位解析装置20は、例えば、図8に示すように、受信データ取得部81、受信データ記憶部82、測位用データ抽出部83、第1二重差算出部84、第1サイクルスリップ修正部85、未知点座標値算出部86、第2二重差算出部87、第2サイクルスリップ修正部88、第1相対位置算出部89、圧縮データ抽出部90、第3二重差算出部91、第3サイクルスリップ修正部92、及び第2相対位置算出部93を含んで構成される。なお、圧縮データ抽出部90は、読み出し手段の一例であり、第3二重差算出部91は、二重差算出手段の一例である。第3サイクルスリップ修正部92は、サイクルスリップ修正手段の一例であり、第2相対位置算出部93は、相対位置算出手段の一例である。
【0048】
受信データ取得部81は、アンテナ79を介して各受信装置10から受信した、測位用データ、又は測位用データ及び圧縮データを取得する。
【0049】
受信データ記憶部82には、各受信装置10から送信されてくる測位用データ、又は測位用データ及び圧縮データが、受信装置10ごとに記憶される。例えば、測位用データ、又は測位用データ及び圧縮データは、受信装置10を識別する受信装置IDと対応付けられて、受信データ記憶部82に記憶される。なお、受信データ記憶部82は、メモリ71又は記憶装置72を用いて実現される。
【0050】
測位用データ抽出部83は、受信装置10の位置観測を開始した初期段階である場合に、搬送波位相の二重差から、GPS受信機の近似位置と衛星との間の距離の二重差を引いて修正した値(以下、搬送波位相の二重差の修正値と称する。)による測位解析における参照点となる受信装置10及び測位対象期間に対応する測位用データと、未知点となる受信装置10及び測位対象期間に対応する測位用データを受信データ記憶部82から読み出す。
【0051】
第1二重差算出部84は、未知点となる受信装置10の座標値(近似値)を、参照点となる受信装置10の座標値(所定の値)と仮定して、参照点及び未知点の受信装置10における測位用データに基づいて、搬送波位相の二重差の修正値を算出する。なお、受信装置10間の距離が100mを超えるような場合には、参照点の座標値以外の所定の近似値を設定するようにしてもよい。
【0052】
第1サイクルスリップ修正部85は、第1二重差算出部84によって算出された搬送波位相の二重差の修正値において発生しているサイクルスリップを修正する。
【0053】
未知点座標値算出部86は、第1サイクルスリップ修正部85によってサイクルスリップが修正された搬送波位相の二重差の修正値に基づいて、未知点となる受信装置10の座標値を算出する。
【0054】
第2二重差算出部87は、未知点となる受信装置10の算出された座標値と、参照点及び未知点の受信装置10における測位用データとに基づいて、搬送波位相の二重差の修正値を再算出する。
【0055】
第2サイクルスリップ修正部88は、第2二重差算出部87によって再算出された搬送波位相の二重差の修正値において発生しているサイクルスリップを再修正する。
【0056】
第1相対位置算出部89は、第2サイクルスリップ修正部88によってサイクルスリップが再修正された搬送波位相の二重差の修正値に基づいて、参照点となる受信装置10に対する未知点となる受信装置10の相対位置を算出する。
【0057】
圧縮データ抽出部90は、受信装置10の位置観測を開始した初期段階を過ぎて、受信装置10の座標値を測定済みである場合に、搬送波位相の二重差の修正値による測位解析における参照点となる受信装置10及び測位対象期間に対応する測位用データ及び圧縮データと、未知点となる受信装置10及び測位対象期間に対応する測位用データ及び圧縮データを受信データ記憶部82から読み出す。
【0058】
第3二重差算出部91は、未知点となる受信装置10の座標値(近似値)を、前回算出された未知点となる受信装置10の座標値(所定の値)と仮定して、参照点及び未知点の受信装置10における測位用データに基づいて、搬送波位相の二重差の修正値を算出する。また、第3二重差算出部91は、参照点及び未知点の受信装置10における圧縮データに基づいて、搬送波位相の二重差の修正値を算出する。
【0059】
第3サイクルスリップ修正部92は、第3二重差算出部91によって算出された測位用データに基づく搬送波位相の二重差の修正値を用いて、圧縮データに基づいて算出された搬送波位相の二重差の修正値において発生しているサイクルスリップを修正する。
【0060】
第2相対位置算出部93は、第3サイクルスリップ修正部92によってサイクルスリップが修正された搬送波位相の二重差の修正値に基づいて、参照点となる受信装置10に対する未知点となる受信装置10の相対位置を算出する。
【0061】
変位解析装置20におけるこれらの機能ブロック83〜93の動作の詳細については後述する。なお、機能ブロック83〜93は、CPU70がメモリ71に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0062】
次に、受信装置10における処理について説明する。各受信装置10の制御部32は、予め設定された観測開始時刻になると、GPS受信機31の電源をオンさせると共に、図9に示す送信制御処理ルーチンを実行する。
【0063】
まず、ステップ100において、観測データ取得部51によって、GPS受信機31から、観測データを取得したか否かを判定する。GPS受信機31が、衛星からの電波(搬送波)をパッチアンテナ30経由で受信し、観測データを制御部32に出力すると、ステップ102へ進む。
【0064】
そして、ステップ102において、測位用データ生成部52は、GPS受信機31から取得した観測データから必要なデータを抽出して、上記図5に例示した測位用データを生成し、生成した測位用データを測位用データ記憶部53に格納する。
【0065】
次のステップ104では、観測データ取得部51は、観測開始時刻から、予め設定された観測期間を経過したかを判定し、観測期間を経過していない場合には、上記ステップ100へ戻るが、一方、観測期間を経過した場合には、ステップ106へ進む。
【0066】
ステップ106では、GPS受信機31の電源をオフさせる。ステップ108では、受信装置10の位置観測を開始した初期段階であるか否かを判定し、受信装置10の位置観測の開始時で、受信装置10の座標値が不明である場合(受信装置10の座標値の近似値と真値とが遠い場合)には、初期段階であると判定し、ステップ110へ移行する。
【0067】
ステップ110では、送信制御部55は、無線通信装置33の電源を投入する制御信号を電源制御部35に出力し、無線通信装置33の電源が投入させる。そして、ステップ112において、送信制御部55は、測位用データ記憶部53に格納されている時系列の測位用データを無線通信装置33に出力して、ステップ122へ移行する。これによって、無線通信装置33は、制御部32から出力された時系列の測位用データをメモリ61に格納し、その後、変位解析装置20との間の通信を確立し、メモリ61に格納されている測位用データを変位解析装置20に送信する。また、メモリ61から時系列の測位用データが消去される。
【0068】
一方、上記ステップ108で、受信装置10の座標値が既に測定されており、初期段階を過ぎていると判定された場合には、ステップ114へ移行する。ステップ114では、測位用データ記憶部53に格納されている時系列の測位用データを読み出し、圧縮単位期間の複数の測位用データ毎に、圧縮データを各々生成し、測位用データ記憶部53に格納する。
【0069】
そして、ステップ116では、送信制御部55は、無線通信装置33の電源を投入する制御信号を電源制御部35に出力し、無線通信装置33の電源が投入させる。そして、ステップ118において、送信制御部55は、測位用データ記憶部53に格納されている各衛星について得られた時系列の測位用データのうち、最初の圧縮単位期間の測位用データ(例えば、連続した3つの測位用データ)を無線通信装置33に出力して、次のステップ120において、送信制御部55は、測位用データ記憶部53に格納されている時系列の圧縮データを無線通信装置33に出力して、ステップ122へ移行する。これによって、無線通信装置33は、制御部32から出力された3つの測位用データ、及び複数の圧縮データをメモリ61に格納し、その後、変位解析装置20との間の通信を確立し、メモリ61に格納されている測位用データ及び圧縮データを変位解析装置20に送信する。また、メモリ61から時系列の測位用データ及び時系列の圧縮データが消去される。
【0070】
ステップ122では、無線通信装置33により変位解析装置20へのデータ送信が完了したか否かを判定する。無線通信装置33により変位解析装置20へのデータ送信が完了し、送信完了を示す信号を制御部32に出力すると、ステップ124において、送信制御部55は、無線通信装置33の電源を切断する制御信号を電源制御部35に出力し、無線通信装置33の電源を切断させる。
【0071】
このように、受信装置10は、受信装置10の位置観測を開始した初期段階において、観測データの中から変位解析装置20での測位解析に必要なデータを抽出して測位用データを生成し、生成した測位用データを変位解析装置20に送信している。測位用データは、上記図5にも例示したように、GPS受信機31から出力される観測データと比較してデータ量が大幅に削減されている。そのため、変位解析装置20との間のデータ通信量が削減され、観測データをそのまま変位解析装置20に送信する場合と比較して無線通信時の電力消費量を少なくすることができる。
【0072】
また、受信装置10は、初期段階を過ぎた段階において、観測データの中から変位解析装置20での測位解析に必要なデータを抽出して測位用データを生成すると共に、圧縮データを生成し、圧縮単位期間分の測位用データ及び時系列の圧縮データを変位解析装置20に送信している。時系列の圧縮データは、時系列の測位用データと比較してデータ量が大幅に削減されている。例えば、3つの測位用データから、1つの圧縮データを生成する場合には、変位解析装置20との間のデータ通信量がほぼ1/3に削減され、無線通信時の電力消費量を少なくすることができる。
【0073】
また、受信装置10では、無線通信が行われている時以外は、無線通信装置33の電源が切断されている。これにより、受信装置10における電力消費量が更に削減されることとなる。なお、無線通信装置33の電源の切断は、無線通信装置33への電源供給を完全に切断するのではなく、無線通信装置33をスリープモード等の待機状態へ移行させることにより行われることとしてもよい。
【0074】
次に、変位解析装置20における処理について説明する。変位解析装置20は、各受信装置10から送信されてくる測位用データ、又は測位用データ及び圧縮データを受信し、受信データ取得部81によって、受信した測位用データ、又は測位用データ及び圧縮データを、受信装置10と対応付けて受信データ記憶部82に格納する。
【0075】
そして、変位解析装置20は、受信装置10を位置観測を開始した初期段階である場合、設定された測位対象の受信装置10のペア及び測位対象期間について、図10に示す初期段階算出処理ルーチンを実行する。
【0076】
ステップ130において、測位用データ抽出部83によって、干渉測位における参照点となる受信装置10及び未知点となる受信装置10(測位対象の受信装置10のペア)に対する測位対象期間の測位用データを、受信データ記憶部82から読み出す。そして、ステップ132において、第1二重差算出部84によって、未知点となる受信装置10の座標値(近似値)を所定の値に設定する。なお、本実施形態では、未知点の受信装置10の座標値(近似値)として、参照点の座標値が設定される。
【0077】
そして、ステップ134において、第1二重差算出部84によって、各衛星の組み合わせについて、搬送波位相の二重差の修正値を算出する。具体的には、第1二重差算出部84は、以下に示す(1)式のように、搬送波位相の二重差と、受信装置10の座標値(近似値)と衛星間の距離の二重差との差の時間変化であるUijkl(t)を、衛星ペア(i,j)の各々について算出する。
【0078】
【数1】

【0079】
ただし、i,jは2つの受信装置10を示すものであり、k,lは2つの衛星を示すものである。また、λは搬送波の波長であり、φ(t)は、時刻tにおいて受信装置iで観測された衛星kからの搬送波位相である(図11参照)。ρ(t)は、時刻tにおける受信装置iの座標値(近似値)と衛星k間の距離である。
【0080】
ここで、上記(1)式で計算されるUijkl(t)のモデル化について説明する。まず、搬送波位相φ(t)は、一般に以下の(2)式で表される。
【0081】
【数2】

【0082】
ただし、Nikは、搬送波位相における整数値バイアスであり、eik(t)は、誤差である。
【0083】
また、搬送波位相の二重差φijklは、以下の(3)式で表される。
【0084】
【数3】

【0085】
上記(2)式、(3)式より、以下の(4)式が得られる。
【0086】
【数4】

【0087】
ただし、Nijklは、搬送波位相における整数値バイアスの二重差を示すものであり、未知変数である。また、eijkl(t)は、二重差の計算によって除去できなかった誤差である。
【0088】
ρは以下の(5)式で表わされ、受信装置iの座標値(x,y,z)は、近似値(x,y,z)を用いて、以下の(6)式で表される。
【0089】
【数5】

【0090】
ただし、Δx、Δy、Δzは、未知点の受信装置10の正確な座標値と近似値との摂動を示すものであり、未知変数である。すなわち、未知点の受信装置10の正確な座標値がわかっている場合は、Δx=Δy=Δz=0となる。
【0091】
上記(4)式について、ρijkl(t)をΔx、Δy、Δzについてテーラー展開すると、以下の(7)式、(8)式が得られる。
【0092】
【数6】

【0093】
上記(1)式で計算されるUijkl(t)は、上記(8)式より、以下の(9)式のように変数を置きなおすことができる。
【0094】
【数7】

【0095】
ここで、Xijkl(t)、Yijkl(t)、Zijkl(t)は、上記(8)式のように方程式を線形化したときに出てくる係数で、衛星の位置と未知点の受信装置10の座標値の近似値のみに依存する関数である。
【0096】
上記(9)式によれば、サイクルスリップが発生せず、ノイズを無視可能であり、未知点となる受信装置10の位置が正確に分かっている場合(Δx=Δy=Δz=0)、Uijkl(t)はある一定の整数値Nijklに等しくなることがわかる。また、Δx、Δy、Δzがゼロでない場合には、Xijkl(t)、Yijkl(t)、Zijkl(t)が短時間では直線に近似できるため、Uijkl(t)も直線に近似できる。この場合、直線の傾きはΔx、Δy、Δzの大きさのみに依存することが(9)式より明らかである。
【0097】
受信装置10から送信されてきた測位用データを用いてUijkl(t)を算出した一例が、図12の実線に示されている。図12では、対象とした時間は180秒であり、未知点の受信装置10の座標値(近似値)は、正確な座標値から(x,y,z)方向にそれぞれ50メートルほど離れた地点に設定されている。
【0098】
図12の点線は、サイクルスリップがない場合のUijkl(t)を示している。図12において実線と点線を比較すると、実線では各エポックでサイクルスリップが発生していることがわかる。これは、受信装置10から送信されてくる測位用データでは、搬送波位相の整数部分が削除されているからである。このサイクルスリップを修正しなければ、未知点の受信装置10の正確な位置を推定することができない。
【0099】
そこで、ステップ136において、第1サイクルスリップ修正部85は、図12に示すような搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)のサイクルスリップを修正する。各衛星ペア(i,j)について算出された搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)のサイクルスリップが各々修正される。具体的には、各衛星ペア(i,j)について、時系列的に隣接した2つの搬送波位相差の二重差の差Uijkl(t)−Uijkl(t−Δt)が最小となるようにUijkl(t)が整数値だけ修正される。このようにしてサイクルスリップが修正されたUijkl(t)が、図13に示されている。図13を見ると、60秒付近までは、実線が点線とほぼ一致しており、サイクルスリップが適切に修正されていることがわかる。ただし、60秒付近のデータ欠損箇所では、サイクルスリップが適切に修正されていない。これは、未知点の受信装置10の座標値(近似値)と正確な座標値との差が大きく、直線の傾きが大きいためである。
【0100】
次に、ステップ138において、未知点座標値算出部86によって、サイクルスリップが修正された搬送波位相の二重差の修正値に基づいて、未知点の受信装置10の座標値を算出する。具体的には、図13の実線に示される、サイクルスリップが修正された搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)を、各衛星ペア(i,j)について代入した、上記(9)式の連立方程式を解くことにより、(Δx,Δy,Δz)を算出する。未知点座標値算出部86は、算出された(Δx,Δy,Δz)と、上記ステップ132で設定された未知点の受信装置10の座標値(近似値)とに基づいて、未知点の受信装置10の座標値を算出する。
【0101】
上記図13に示した例を用いて解析した結果では、(Δx,Δy,Δz)=(−45.7,−46.0,−48.9)が算出された。前述したように、初めは未知点の受信装置10の座標値(近似値値)を、正確な座標値から(x,y,z)方向にそれぞれ50メートルほど離れた地点としていたため、直線の傾きが大きく、サイクルスリップが完全には修正されていなかった。算出された(Δx,Δy,Δz)を見ると、その場合でも、数メートルの精度で受信装置10の座標値を推定できていることがわかる。
【0102】
続いて、ステップ140において、第2二重差算出部87は、未知点座標値算出部86によって算出された、未知点の受信装置10の座標値を、近似値として設定して、衛星ペア(i,j)の各組み合わせについて、搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)を再算出する。そして、ステップ142において、第2サイクルスリップ修正部88によって、再算出された搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)におけるサイクルスリップを再修正する。
【0103】
ここで、サイクルスリップの再修正処理について、詳細に説明する。まず、以下の(10)式に示すように、搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)を搬送波の波長λで除すことにより、整数値バイアスの時系列Nijkl(t)を求める。
【0104】
【数8】

【0105】
上記(10)式からもわかるように、未知点の受信装置10の正確な座標値がわかっており、サイクルスリップが発生していない場合には、Nijkl(t)は時間によらず一定の整数値となる。一方、未知点の受信装置10の正確な座標値がわかっていない場合には、Nijkl(t)は時間と共に変化する関数となる。
【0106】
上記(10)式によって得られるNijkl(t)に含まれる誤差には、対流圏遅延、電離層遅延、衛星の時計誤差、衛星の位置誤差、受信装置10(GPS受信機31)の時計誤差、マルチパスによる誤差、電気的なホワイトノイズがある。これらのうち、受信装置10同士が近い場合には、マルチパスによる誤差と電気的なホワイトノイズ以外の誤差は二重差の計算によってほぼ完全に除去される。また、一般的に用いられるGPS受信機においては搬送波位相の計測精度は高く、電気的なホワイトノイズの影響は無視可能な場合が多い。例えば、本実施形態で用いるGPS受信機31では、搬送波位相の計測精度が2ミリメートル程度であり、電気的なホワイトノイズによる誤差は2.0/λ〜0.01程度となるため無視可能である。また、マルチパスによる誤差は、その仕組みから最大でも1/4を超えないことが知られている。これより、サイクルスリップが生じた場合でも、Nijkl(t)の値を1/4以下の誤差で推定することができれば、その推定値との差が最小となるようにNijkl(t)の値を整数値だけ修正することにより、サイクルスリップを修正することが可能となる。
【0107】
ここで、Nijkl(t)の値の推定にはカルマンフィルタを用いることとする。十分に短い時間では、Nijkl(t)はほぼ直線とみなせることから、Nijkl(t+Δt)は、以下の(11)式のようにモデル化することができる。
【0108】
【数9】

【0109】
上記(11)式において、a,bは時間と共に徐々に変化する値であり、短時間では一定値とみなすことができる。これより、以下の(12)式に示す方程式を得ることができる。
【0110】
【数10】

【0111】
ここで、yk、H、xkは、以下の(13)式により示されるものである。また、通常のカルマンフィルタを用いることにより、過去のデータからxkを推定することができる。
【0112】
【数11】

【0113】
いま、時刻tまでのデータがあるとする。このとき、第2サイクルスリップ修正部88は、その観測データからxk-1を推定する。続いて、第2サイクルスリップ修正部88は、xk-1を用いてNijkl(t+Δt)の予測値N'ijkl(t+Δt)を算出する。そして、第2サイクルスリップ修正部88は、上記(10)式に基づいて計算されるNijkl(t+Δt)と、予測値N'ijkl(t+Δt)との差が0.5以上ある場合にはサイクルスリップが発生していると判定し、N'ijkl(t+Δt)との差が最小となるようにNijkl(t+Δt)を整数値だけ修正する。このようにNijkl(t+Δt)が修正された結果、搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)は、図14に示すようになる。図14を見ると、直線の傾きが小さくなっており、サイクルスリップが適切に修正されていることがわかる。
【0114】
そして、ステップ144において、第1相対位置算出部89によって、未知点座標値算出部86と同様に、サイクルスリップが再修正された搬送波位相の二重差の修正値に基づいて、未知点の受信装置10の座標値を算出する。
【0115】
次のステップ146では、上記ステップ144で算出された未知点の受信装置10の座標値と、参照点の受信装置10の座標値とに基づいて、参照点となる受信装置10に対する未知点の受信装置10の座標値(相対位置)を算出し、メモリ71に格納する。
【0116】
上述したように、変位解析装置20は、受信装置10の位置観測を開始した初期段階である場合、受信装置10のペアの各組み合わせを、測位対象として設定して、上記の初期段階算出処理ルーチンを実行して、受信装置10のペアの相対位置を算出する。
【0117】
次に、本発明の原理について説明する。
【0118】
GPS静的測位解析における標準的な方法では、ノイズ削減のために、搬送波位相の二重差の修正値を計算する。観測点間の相対位置がほぼ既知の場合には、搬送波位相の二重差の修正値は、時間に対して非常に傾きの小さい直線となることが知られている。この性質を利用することで、サイクルスリップを修正することができ、本発明では、準静的な変位を対象としているため、この性質を利用することができる。例えば、サイクルスリップが修正された搬送波位相の二重差の修正値は、その値がゼロ付近にある、傾きの小さな直線に、観測ノイズをのせた状態で表される。このように、サイクルスリップが修正された搬送波位相の二重差の修正値は、直線に近似することができ、意味のある情報は、直線の傾きと切片だけとなるため、データ通信量を更に削減可能であることがわかる。
【0119】
本実施の形態では、受信装置10の位置観測を開始した初期段階を過ぎた場合に、圧縮データを用いて、サイクルスリップを修正すると共に、受信装置10の位置を算出する。
【0120】
この圧縮データを用いた算出方法を適用していた場合においても、圧縮データにおける搬送波位相データは、3つの時間的に連続する搬送波位相の和を計算しているだけなので、搬送波位相の二重差の修正値の時系列データは、傾きが小さな直線となる、という性質をそのまま利用することができる。ただし、その直線の切片の値は、不確定である。
【0121】
例えば、圧縮データが表わす搬送波位相を使って、搬送波位相の二重差の修正値を計算した結果、搬送波位相の二重差の修正値の値が0.2だったとすると、本実施の形態では、3つの連続するデータを足した上で、小数点以下に相当する部分のみをデータとして残しているため、0.2の元々のデータが、以下のa)とb)のどちらかであるが不明となる。
a)0.066+0.066+0.066=0.2 (元々のデータは0.066近辺)
b)0.4+0.4+0.4=1.2→0.2 (元々のデータは0.4近辺)
【0122】
従って、例えば、3秒だけずれた2つの測位対象期間について、サイクルスリップの修正を行うと、図15(A)に示すように、正しくサイクルスリップが修正された場合と、図15(B)に示すように、全体として値が1ずれており、正しくサイクルスリップが修正されなかった場合とが発生する。
【0123】
そこで、本実施の形態では、第3サイクルスリップ修正部92によって、後述するように、圧縮データに基づいて算出された搬送波位相の二重差の修正値と、圧縮前の測位用データに基づいて算出された搬送波位相の二重差の修正値とを用いて、0.2なのか1.2なのかを区別することにより、正しくサイクルスリップを修正し、圧縮していない測位用データに基づく搬送波位相の二重差の修正値についてサイクルスリップを修正した場合と同様の結果を得る。
【0124】
以下に、初期段階を過ぎて、受信装置10の位置が測定済みである場合における変位解析装置20の処理について説明する。
【0125】
変位解析装置20は、受信装置10の位置観測を開始した初期段階を過ぎた場合、設定された測位対象の受信装置10のペア及び測位対象期間について、図16に示す相対位置算出処理ルーチンを実行する。
【0126】
まず、ステップ150において、圧縮データ抽出部90によって、干渉測位における参照点となる受信装置10及び未知点となる受信装置10(測位対象の受信装置10のペア)に対する、測位対象期間の最初の所定エポック(例えば、3エポック)の測位用データを、受信データ記憶部82から読み出すと共に、測位対象の受信装置10のペアの測位対象期間の時系列の圧縮データを、受信データ記憶部82から読み出す。
【0127】
そして、ステップ152において、第3二重差算出部91によって、未知点となる受信装置10の座標値(近似値)を、上記ステップ144又は後述するステップ162で前回算出された前回算出位置に設定する。なお、前回算出位置から例えば5センチ以上変位したような場合には、なんらかの真の位置に近い位置を設定する。
【0128】
次のステップ154では、第3二重差算出部91によって、上記ステップ150で読み出した測位用データに基づいて、上記第1二重差算出部84と同様に、衛星ペアの各組み合わせについて、搬送波位相の二重差の修正値を算出する。そして、ステップ156において、第3二重差算出部91によって、上記ステップ150で読み出した圧縮データに基づいて、上記第1二重差算出部84と同様に、衛星ペアの各組み合わせについて、搬送波位相の二重差の修正値を算出する。
【0129】
次のステップ158において、第3サイクルスリップ修正部92は、上記第1サイクルスリップ修正部85と同様に、上記ステップ154で算出された搬送波位相の二重差の修正値のサイクルスリップを修正する。搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)の整数値だけが修正される。例えば、U(t)=−3.208、U(t)=−4.168、U(t)=−4.212である場合、U(t)=−0.208、U(t)=−0.168、U(t)=−0.212に修正される。この場合、整数値が+3、+4、+4だけ各々修正されている。
【0130】
そして、ステップ160において、第3サイクルスリップ修正部92は、上記ステップ150で読み出した3エポックの測位用データと時間的に対応する圧縮データに基づいて上記ステップ156で算出された、搬送波位相の二重差の修正値のサイクルスリップを修正する。3エポック分の測位用データを用いて計算された搬送波位相の二重差の修正値で、そのサイクルスリップを修正した後に、3エポック分の和を計算した値と、圧縮データによる搬送波位相の二重差の修正値とが等しくなるように、サイクルスリップを修正する。例えば、連続する3エポックの測位用データに対応する圧縮データから算出される搬送波位相の二重差の修正値U(t)が、−11.588である場合、上記ステップ158における修正分が+11であるため、整数値が+11だけ修正される。これによって、圧縮データに基づく搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)が、−0.588に修正される。
【0131】
また、第3サイクルスリップ修正部92は、整数値が修正された搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)に隣接する、搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)から順に、時系列的に隣接した2つの搬送波位相差の二重差の差Uijkl(t)−Uijkl(t−Δt)が最小となるように、上記ステップ156で算出されたUijkl(t)の整数値だけを各々修正する。
【0132】
次に、ステップ162において、第2相対位置算出部93によって、サイクルスリップが修正された搬送波位相の二重差の修正値に基づいて、未知点の受信装置10の座標値を算出する。具体的には、サイクルスリップが修正された、圧縮データに基づく搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)を、衛星ペア(i,j)の各組み合わせについて代入した、上記(9)式と同様の式の連立方程式を解くことにより、(Δx,Δy,Δz)を算出する。算出された(Δx,Δy,Δz)と、上記ステップ152で設定された未知点の受信装置10の座標値(近似値)とに基づいて、未知点の受信装置10の座標値を算出する。なお、上記の連立方程式では、上記(9)式と同様の式であって、搬送波位相の二重差の修正値の和に適した式となるように作成された式を用いればよい。
【0133】
次のステップ164では、上記ステップ144で算出された未知点の受信装置10の座標値と、参照点の受信装置10の座標値とに基づいて、参照点となる受信装置10に対する未知点の受信装置10の座標値(相対位置)を算出し、メモリ71に格納する。
【0134】
上述したように、変位解析装置20は、受信装置10の位置観測を開始した初期段階を過ぎた場合、受信装置10のペアの各組み合わせについて、上記の相対位置算出処理ルーチンを実行して、相対位置を算出する。また、種々の測位対象期間について、上記の相対位置算出処理ルーチンが実行され、相対位置が各々算出される。
【0135】
また、変位解析装置20では、メモリ71に記憶された、ある時点に算出された相対位置と、別の時点に算出された相対位置との比較により、受信装置10が設置された場所の変位が求められる。
【0136】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る変位計測システムによれば、測位対象期間におけるGPS受信機の観測データから抽出された受信時刻、衛星ID、及び搬送波位相の小数部を含んで構成される測位用データを生成すると共に、圧縮単位期間分の測位用データ毎に、搬送波位相の総和の小数部を含んで構成される圧縮データを生成する。測位対象期間に対する複数の圧縮データ、及び測位対象期間の最初の圧縮単位期間分の測位用データを変位解析装置に送信することにより、複数の受信装置と変位解析装置との間の通信データ量を削減することができる。この通信データ量の削減は、受信装置におけるデータ通信時の電力消費量を低減する。
【0137】
また、受信装置から受信した、測位用データに基づいて算出された搬送波位相の二重差の修正値を用いて、圧縮データに基づいて算出された搬送波位相の二重差の修正値におけるサイクルスリップを適切に修正することにより、通信データ量を削減した場合においても、GPS受信機の相対位置を精度よく算出することができる。
【0138】
また、受信装置では、測位対象期間の時系列の測位用データを生成すると、無線通信装置の電源を投入して測位用データを送信し、測位用データの送信完了後には無線通信装置の電源を切断している。これにより、無線通信装置の電源が投入されている時間が短くなり、受信装置における電力消費量が更に抑えられる。
【0139】
また、変位解析装置では、受信装置の位置観測を開始した初期段階において、未知点の受信装置の座標値(近似値)を所定の値(参照点の座標値)に設定して搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)を算出し、算出されたUijkl(t)のサイクルスリップを修正した上で、未知点の受信装置10の座標値を算出している。そして、未知点の受信装置10の算出された座標値に基づいて、Uijkl(t)を再算出し、その後、Uijkl(t)のサイクルスリップを再修正している。これにより、受信装置の大まかな座標値及び搬送波位相の整数部分が含まれていない測位用データに基づいて、受信装置間の相対位置を精度良く求めることが可能となる。すなわち、受信装置と変位解析装置との間の通信データ量を削減することが可能となる。
【0140】
なお、上記の実施の形態では、初期段階における初期段階算出処理ルーチンの二度目のサイクルスリップ修正処理(ステップ142)で、Nijkl(t)を上記(10)式に示したように直線近似することにより、サイクルスリップを修正する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、二度目のサイクルスリップ修正処理(ステップ142)を、一度目のサイクルスリップ修正処理(ステップ136)と同じ方法により行うようにしてもよい。ただし、電波状態の不良等により整数値バイアスが整数値ではなく1/2ほどずれてしまった場合や、データ欠損の時間が長い場合等においては、一度目のサイクルスリップ修正処理(ステップ136)の方法では値がずれてしまう可能性がある。そのため、このような場合には、前述したように近似直線に基づいてサイクルスリップの修正を行う方が、サイクルスリップを適切に修正することができる。
【0141】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0142】
第2の実施の形態では、受信装置の位置の変化がゆっくりで、測位済みの座標位置が真の位置と極めて近い段階において、圧縮データに基づく送波位相の二重差の各々が、ゼロに最も近くなるように整数値だけ修正して、サイクルスリップを修正している点が、第1の実施の形態と主に異なっている。
【0143】
第2の実施の形態に係る変位解析装置20では、第2圧縮データ抽出部、第4二重差算出部、第4サイクルスリップ修正部、及び第3相対位置算出部を更に備えている。
【0144】
第2圧縮データ抽出部は、受信装置10の位置観測を開始した初期段階を過ぎ、受信装置10の位置が測定済みである段階であって、受信装置10の位置がゆっくりと変化し、測位されている受信装置10の座標値が真値と極めて近い安定段階において、干渉測位における参照点となる受信装置10及び測位対象期間に対応する圧縮データと、未知点となる受信装置10及び測位対象期間に対応する圧縮データを受信データ記憶部82から読み出す。
【0145】
第4二重差算出部は、未知点となる受信装置10の座標値(近似値)を、前回算出された未知点となる受信装置10の座標値(所定の値)と仮定し、第2圧縮データ抽出部によって抽出した、参照点及び未知点の受信装置10における圧縮データに基づいて、搬送波位相の二重差の修正値を算出する。
【0146】
第4サイクルスリップ修正部は、第4二重差算出部によって算出された圧縮データに基づいて算出された搬送波位相の二重差の修正値において発生しているサイクルスリップを修正する。
【0147】
第3相対位置算出部は、第4サイクルスリップ修正部によってサイクルスリップが修正された搬送波位相の二重差の修正値に基づいて、参照点となる受信装置10に対する未知点となる受信装置10の相対位置を算出する。
【0148】
受信装置10の位置観測を開始した初期段階では、変位解析装置20において、上記第1の実施の形態で説明したように、初期段階算出処理ルーチンが実行される。
【0149】
受信装置10の位置観測を開始した初期段階を過ぎて、受信装置10の位置が測定済みである段階になると、変位解析装置20において、上記第1の実施の形態で説明したように、相対位置算出処理ルーチンが実行される。
【0150】
また、受信装置10の位置がゆっくりと変化(例えば、1日あたり1mm程度の変化)している安定段階になると、受信装置10の座標位置の前回算出値が、真の位置と極めて近い状態となっており、この安定段階では、変位解析装置20において、以下に説明する第2の相対位置算出処理ルーチンが実行される。
【0151】
まず、第2圧縮データ抽出部によって、搬送波位相の二重差の修正値による測位解析における参照点となる受信装置10及び未知点となる受信装置10(測位対象の受信装置10のペア)に対する測位対象期間の圧縮データを、受信データ記憶部82から読み出す。
【0152】
そして、第4二重差算出部によって、未知点となる受信装置10の座標値(近似値)を、前回算出された前回算出位置に設定する。次に、第4二重差算出部によって、上記読み出した圧縮データに基づいて、上記第1二重差算出部84と同様に、衛星ペアの各組み合わせについて、搬送波位相の二重差の修正値を算出する。
【0153】
そして、第4サイクルスリップ修正部は、上記で算出された搬送波位相の二重差の修正値の各々が、ゼロに最も近くなるように、搬送波位相の二重差の修正値Uijkl(t)の整数値だけを修正する。
【0154】
次に、第3相対位置算出部によって、サイクルスリップが修正された搬送波位相の二重差の修正値に基づいて、未知点の受信装置10の座標値を算出する。そして、上記算出された未知点の受信装置10の座標値と、参照点の受信装置10の座標値とに基づいて、参照点となる受信装置10に対する未知点の受信装置10の座標値(相対位置)を算出し、メモリ71に格納する。
【0155】
上述したように、変位解析装置20は、安定段階である場合、受信装置10のペアの各組み合わせについて、上記の第2相対位置算出処理ルーチンを実行して、相対位置を算出する。
【0156】
なお、第2の実施の形態に係る変位計測システムの他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0157】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る測位システムによれば、受信装置の変位が非常にゆっくりとした段階において、受信装置から受信した圧縮データに基づいて算出された搬送波位相の二重差の修正値の各々を、ゼロに最も近くなるように整数値だけを修正して、サイクルスリップを修正することにより、搬送波位相の二重差の修正値におけるサイクルスリップを適切に修正することができる。このため、GPS測位における通信データ量を削減しても、GPS受信機の相対位置を精度よく算出することができる。
【0158】
第2の実施の形態に係るサイクルスリップの修正方法は、GPS受信機間の相対位置が精度よく分かっていて、かつ搬送波位相の二重差の修正値に含まれるノイズが十分に小さいときに使用可能である。なお、搬送波位相の二重差の修正値に含まれるノイズを小さくする方法としては、アンテナや受信機を高性能なものを使用するか、ソフトウェアにおいて何らかの手法を用いてノイズを抑える方法がある。また、計測対象としては、地盤沈下などが考えられる。
【0159】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0160】
第3の実施の形態では、変位解析装置がデータ送信コマンドを無線で送信している点と、受信装置が、受信したデータ送信コマンドに応じて、測位用データ及び圧縮データを送信している点とが、第1の実施の形態と異なっている。
【0161】
第3の実施の形態に係る受信装置10は、生成した測位用データ及び圧縮データを、測位用データ記憶部53に記憶しておく。
【0162】
変位解析装置20は、「x番目のセンサノード(受信装置10)、y番目のデータ(測位用データ又は圧縮データ)を送信しなさい」というデータ送信コマンドを無線でブロードキャストする。
【0163】
受信装置10では、無線通信装置33がオンされているときに無線通信装置33によってデータ送信コマンドを受信すると、制御部32へデータ送信コマンドを出力する。制御部32はデータ送信コマンドの指示に従って、測位用データ記憶部53から、該当する測位用データ又は圧縮データを読み出し、無線通信装置33に送信する。無線通信装置33は、読み出した測位用データ又は圧縮データを変位解析装置20へ無線で送信する。
【0164】
また、受信装置10は、次のデータ送信コマンドが送信されるのを数秒待ち、さらにデータ送信コマンドが送信されてくれば、そのままデータ送信を続け、一方、変位解析装置20から数秒待ってもデータ送信コマンドが受信されなければ、無線通信装置33をオフする。
【0165】
なお、第3の実施の形態に係る測位システムの他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0166】
このように、受信装置10の制御部32は、変位解析装置20からの指示に従って、測位用データ及び圧縮データを1パケットずつ送信することができる。
【0167】
なお、上記の第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、初期段階を過ぎた段階で、圧縮データと共に、連続する測位用データを圧縮単位期間分だけ送信する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、圧縮データと共に、少なくとも1つの測位用データを送信するようにすればよい。この場合には、送信された少なくとも1つの測位用データに基づく搬送波位相の二重差の修正値におけるサイクルスリップを修正し、この修正した搬送波位相の二重差の修正値に基づいて、送信された少なくとも1つの測位用データに対応する圧縮データに基づく搬送波位相の二重差の修正値について、サイクルスリップを修正するようにすればよい。
【0168】
また、圧縮単位期間分の測位用データとして、3エポックの測位用データ毎に、圧縮データを生成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、圧縮単位期間分の測位用データを、2エポック以上の所定数の測位用データとして、所定数のエポックの測位用データ毎に、圧縮データを生成するようにすればよい。
【0169】
また、測位対象期間の圧縮データと共に、測位対象期間の各衛星について得られた最初の3エポックの測位用データを送信する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、測位対象期間の圧縮データと共に、測位対象期間内の各衛星について得られた特定時点の測位用データを送信するようにすればよい。例えば、測位対象期間の各衛星について得られた最後の3エポックの測位用データを送信するようにしてもよい。また、測位対象期間内の各衛星について得られた任意の時点の測位用データを送信するようにしてもよい。この場合には、どのタイミングの測位用データであるかを示すデータも一緒に送信する必要がある。
【0170】
また、受信装置の位置観測を開始した初期段階を過ぎた段階では、前回測定値を近似値として用いて、搬送波位相の二重差の修正値を算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、初期段階算出処理ルーチンにより最初に測定された初期位置を、近似値として用いてもよい。この場合には、得られたΔx、Δy、Δzが、変位量そのものを表わしている。
【0171】
また、受信装置の位置観測を開始したときを初期段階とした場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、地震等が発生して、受信装置の位置が大きく変化し、受信装置の位置が不明となった場合も、初期段階とし、変位解析装置において、上述した初期段階算出処理ルーチンを実行するようにしてもよい。これによって、地震発生直後等における受信装置10が設置された場所の変位を精度良く計測することが可能となる。
【0172】
また、受信装置と変位解析装置との間で、通信を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、マルチホップ通信のように、受信装置と受信装置との間でも通信を行うようにしてもよい。例えば、受信装置から直接、変位解析装置へ測位用データ及び圧縮データを送信することができない場合、近くの受信装置に測位用データ及び圧縮データを送信し、受信装置間で、測位用データ及び圧縮データを転送するようにしてもよい。
【0173】
また、受信装置において、GPS受信機と制御部とが双方向で通信するように構成してもよい。また、GPS受信機専用の制御部(マイクロコントローラを使用)と無線通信装置専用の制御部を備え、2つの制御部同士で仕事を割り振るように構成してもよい。この場合、2つの制御部は、1つのメモリを共有することで、データの受け渡しをすればよい。
【0174】
また、変位解析装置は、初期段階において、搬送波位相の二重差の修正値の算出、サイクルスリップの修正、及び未知点の座標値の算出からなる一連の処理を2回繰り返す場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、状況によっては、2回以上繰り返しても良い。
【0175】
また、GPS受信機によってGPSデータを観測している間、無線通信装置を使用しない場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、GPSデータを観測している間に、連続的にデータを変位解析装置に送信するようにしてもよい。例えば、観測開始時刻になったときに、GPS受信機及び無線通信装置の各々の電源をONし、観測データを受信しつつ、連続的に無線で測位用データ及び圧縮データを変位解析装置へ送信すればよい。所定の観測期間が終了した後、GPS受信機及び無線通信装置の各々の電源をOFFするようにすればよい。
【0176】
また、無線通信装置が送信完了を示す信号を出力する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、無線通信装置が送信完了を示す信号を出力しない構成であってもよい。この場合には、制御部が、データ送信が完了したか否かを無線通信装置に対して問い合わせるようにすればよい。
【0177】
また、本実施形態では、衛星測位システムとしてGPS衛星を用いた例を挙げて説明したが、本発明は、衛星測位システムとしてはGPSを含むGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星測位システムへ適用することも可能であり、本発明の実施形態においてGPSなる記載をGNSSと読み替えて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0178】
10 受信装置
20 変位解析装置
30 パッチアンテナ
31 GPS受信機
32 制御部
33 無線通信装置
34 電源
35 電源制御部
51 観測データ取得部
52 測位用データ生成部
53 測位用データ記憶部
54 圧縮データ生成部
55 送信制御部
71 メモリ
72 記憶装置
81 受信データ取得部
82 受信データ記憶部
83 測位用データ抽出部
84 第1二重差算出部
85 第1サイクルスリップ修正部
86 未知点座標値算出部
87 第2二重差算出部
88 第2サイクルスリップ修正部
89 第1相対位置算出部
90 圧縮データ抽出部
91 第3二重差算出部
92 第3サイクルスリップ修正部
93 第2相対位置算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS受信機から出力される観測データに含まれる、衛星からの搬送波の受信時刻と、前記衛星を識別する衛星IDと、搬送波位相の小数部とを抽出し、抽出された前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部を含んで構成される測位用データを生成する測位用データ生成手段と、
連続する複数の測位用データについて、連続する所定個の測位用データ毎に、各測位データに含まれる受信時刻に基づく受信時刻、前記衛星ID、及び各測位データに含まれる同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の総和の小数部又は同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の平均の小数部を含んで構成される圧縮データを各々生成する圧縮データ生成手段と、
を含むデータ生成装置。
【請求項2】
前記圧縮データ生成手段によって生成された複数の圧縮データと、前記測位用データ生成手段によって生成された少なくとも1個の前記測位用データとを、前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部に基づいて複数の前記GPS受信機間の相対位置関係を計算可能な変位解析装置に、無線通信装置を介して送信するデータ送信手段と、
前記測位用データ生成手段によって生成された前記測位用データと、前記圧縮データ生成手段によって生成された前記複数の圧縮データとが記憶されるデータ記憶手段を更に備え、
前記データ送信手段は、前記無線通信装置の電源を投入すると共に、前記測位用データ記憶手段に記憶されている、前記複数の圧縮データ、及び少なくとも1個の前記測位用データを前記無線通信装置を介して前記変位解析装置に送信し、
前記無線通信装置による前記複数の圧縮データ及び前記測位用データの送信が完了したときに、前記無線通信装置の電源を切断する請求項1記載のデータ生成装置。
【請求項3】
前記圧縮データ生成手段によって生成された複数の圧縮データと、前記測位用データ生成手段によって生成された少なくとも1個の前記測位用データとを、前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部に基づいて複数の前記GPS受信機間の相対位置関係を計算可能な変位解析装置に、無線通信装置を介して送信するデータ送信手段と、
前記測位用データ生成手段によって生成された前記測位用データと、前記圧縮データ生成手段によって生成された前記複数の圧縮データとが記憶されるデータ記憶手段を更に備え、
前記データ送信手段は、前記無線通信装置を省電力状態から復帰させると共に、前記測位用データ記憶手段に記憶されている、前記複数の圧縮データ、及び少なくとも1個の前記測位用データを前記無線通信装置を介して前記変位解析装置に送信し、
前記無線通信装置による前記複数の圧縮データ及び前記測位用データの送信が完了したときに、前記無線通信装置を省電力状態に移行させる請求項1記載のデータ生成装置。
【請求項4】
衛星からの搬送波をアンテナを介して受信し、観測データを出力するGPS受信機と、
無線通信装置と、
前記GPS受信機から出力される前記観測データに含まれる、前記衛星からの前記搬送波の受信時刻と、前記衛星を識別する衛星IDと、搬送波位相の小数部とを抽出し、抽出された前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部を含んで構成される測位用データを生成する測位用データ生成手段と、
連続する複数の測位用データについて、連続する所定個の測位用データ毎に、各測位データに含まれる受信時刻に基づく受信時刻、前記衛星ID、各測位データに含まれる同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の総和の小数部又は同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の平均の小数部を含んで構成される圧縮データを各々生成する圧縮データ生成手段と、
前記圧縮データ生成手段によって生成された複数の圧縮データと、前記測位用データ生成手段によって生成された少なくとも1個の前記測位用データとを、前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部に基づいて複数の前記GPS受信機間の相対位置関係を計算可能な変位解析装置に、前記無線通信装置を介して送信するデータ送信手段と、
を含む受信装置。
【請求項5】
前記測位用データ生成手段によって生成された前記測位用データと、前記圧縮データ生成手段によって生成された複数の圧縮データとが記憶されるデータ記憶手段を更に備え、
前記データ送信手段は、前記無線通信装置の電源を投入すると共に、前記データ記憶手段に記憶されている、前記複数の圧縮データ、及び少なくとも1個の前記測位用データを前記無線通信装置を介して前記変位解析装置に送信し、
前記無線通信装置による前記複数の圧縮データ及び前記測位用データの送信が完了したときに、前記無線通信装置の電源を切断する請求項4記載の受信装置。
【請求項6】
前記測位用データ生成手段によって生成された前記測位用データと、前記圧縮データ生成手段によって生成された複数の圧縮データとが記憶されるデータ記憶手段を更に備え、
前記データ送信手段は、前記無線通信装置を省電力状態から復帰させると共に、前記データ記憶手段に記憶されている、前記複数の圧縮データ、及び少なくとも1個の前記測位用データを前記無線通信装置を介して前記変位解析装置に送信し、
前記無線通信装置による前記複数の圧縮データ及び前記測位用データの送信が完了したときに、前記無線通信装置を前記省電力状態へ移行させる請求項4記載の受信装置。
【請求項7】
コンピュータを、
GPS受信機から出力される観測データに含まれる、衛星からの搬送波の受信時刻と、前記衛星を識別する衛星IDと、搬送波位相の小数部とを抽出し、抽出された前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部を含んで構成される測位用データを生成する測位用データ生成手段、
前記生成された前記測位用データをメモリに記憶させる測位用データ記憶制御手段、
連続する複数の測位用データについて、連続する所定個の測位用データ毎に、各測位データに含まれる受信時刻に基づく受信時刻、前記衛星ID、各測位データに含まれる同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の総和の小数部又は同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の平均の小数部を含んで構成される圧縮データを各々生成する圧縮データ生成手段、
前記生成された複数の圧縮データをメモリに記憶させる圧縮データ記憶制御手段、及び
前記メモリに記憶された、前記複数の圧縮データ、及び少なくとも1個の前記測位用データを、前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部に基づいて複数の前記GPS受信機間の相対位置関係を計算可能な変位解析装置に、無線通信装置を介して送信するデータ送信手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
コンピュータを、
GPS受信機から出力される観測データから抽出された、衛星からの搬送波の受信時刻と、前記衛星を識別する衛星IDと、搬送波位相の小数部とを含んで構成される測位用データ、及び連続する複数の測位用データについて、連続する所定個の測位用データ毎に得られた、各測位データに含まれる受信時刻に基づく受信時刻、前記衛星ID、各測位データに含まれる同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の総和の小数部又は同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の平均の小数部を含んで構成される複数の圧縮データが、前記GPS受信機ごとに記憶されたメモリから、干渉測位における参照点となる前記GPS受信機及び測位対象期間に対応する少なくとも1個の前記測位用データ及び複数の前記圧縮データと、未知点となる前記GPS受信機及び前記測位対象期間に対応する少なくとも1個の前記測位用データ及び複数の前記圧縮データを読み出す読み出し手段、
前記未知点となる前記GPS受信機の座標値を所定の値として、前記参照点及び前記未知点の前記GPS受信機における複数の前記圧縮データに基づいて、搬送波位相の二重差を前記GPS受信機の近似位置と前記衛星との間の距離の二重差で修正した修正値を各々算出すると共に、前記参照点及び前記未知点の前記GPS受信機における前記測位用データに基づいて、前記搬送波位相の二重差の修正値を算出する二重差算出手段、
前記測位用データに基づいて算出された前記搬送波位相の二重差の修正値を用いて、前記圧縮データに基づいて算出された前記搬送波位相の二重差の修正値の各々におけるサイクルスリップを各々修正するサイクルスリップ修正手段、及び
前記サイクルスリップが修正された前記搬送波位相の二重差の修正値に基づいて、前記参照点となる前記GPS受信機に対する前記未知点となる前記GPS受信機の相対位置を算出する相対位置算出手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
衛星からの搬送波をアンテナを介して受信して、測位用データ及び圧縮データを無線で送信する複数の受信装置と、前記複数の受信装置から送信される前記測位用データ及び前記圧縮データに基づいて変位を解析する変位解析装置とを含んで構成される変位計測システムであって、
前記受信装置は、
前記搬送波を受信して観測データを出力するGPS受信機と、
無線通信装置と、
前記GPS受信機から出力される前記観測データに含まれる、衛星からの搬送波の受信時刻と、前記衛星を識別する衛星IDと、搬送波位相の小数部とを抽出し、抽出された前記受信時刻、前記衛星ID、及び前記搬送波位相の小数部を含んで構成される前記測位用データを生成する測位用データ生成手段と、
連続する複数の測位用データについて、連続する所定個の測位用データ毎に、各測位データに含まれる受信時刻に基づく受信時刻、前記衛星ID、各測位データに含まれる同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の総和の小数部又は同一の衛星IDに対する前記搬送波位相の平均の小数部を含んで構成される前記圧縮データを各々生成する圧縮データ生成手段と、
前記圧縮データ生成手段によって生成された複数の圧縮データと、前記測位用データ生成手段によって生成された少なくとも1個の前記測位用データとを、前記変位解析装置に、前記無線通信装置を介して送信する測位用データ送信手段とを含む、
ことを特徴とする変位計測システム。
【請求項10】
前記変位解析装置は、
前記複数の受信装置から受信した前記測位用データ及び前記圧縮データが前記GPS受信機ごとに記憶されたメモリと、
前記メモリから、干渉測位における参照点となる前記GPS受信機及び測位対象期間に対応する少なくとも1個の前記測位用データ及び複数の前記圧縮データと、未知点となる前記GPS受信機及び前記測位対象期間に対応する少なくとも1個の前記測位用データ及び複数の前記圧縮データを読み出す読み出し手段と、
前記未知点となる前記GPS受信機の座標値を所定の値として、前記参照点及び前記未知点の前記GPS受信機における複数の前記圧縮データに基づいて、搬送波位相の二重差を前記GPS受信機の近似位置と前記衛星との間の距離の二重差で修正した修正値を各々算出すると共に、前記参照点及び前記未知点の前記GPS受信機における前記測位用データに基づいて、前記搬送波位相の二重差の修正値を算出する二重差算出手段と、
前記測位用データに基づいて算出された前記搬送波位相の二重差の修正値を用いて、前記圧縮データに基づいて算出された前記搬送波位相の二重差の修正値の各々におけるサイクルスリップを修正するサイクルスリップ修正手段と、
前記サイクルスリップが修正された前記搬送波位相の二重差の修正値に基づいて、前記参照点となる前記GPS受信機に対する前記未知点となる前記GPS受信機の相対位置を算出する相対位置算出手段とを含む、
ことを特徴とする請求項9記載の変位計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−27468(P2011−27468A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171316(P2009−171316)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】