説明

データ管理システム

【課題】データの収集にかかる時間を短縮し、且つデータ収集のための通信量を抑制することができるデータ管理システムを提供する。
【解決手段】親機1は、マルチホップ通信のホップ数が最大となるノードID「1−n」の子機2に対し、データを取得するためのデータ要求を送信する。ノードID「1−n」の子機2は、データ要求を受けると、自身が保持するデータをデータ応答として、ノードID「1−2」の子機2に返信する。ノードID「1−2」の子機2は、データを中継する際、ノードID「1−n」の子機2からのデータ応答に自身の保持するデータを付加して新たなデータ応答として、ノードID「1−1」の子機2に転送する。ノードID「1−1」の子機2は、データを中継する際、ノードID「1−2」の子機2からのデータ応答に自身の保持するデータを付加して新たなデータ応答として、親機1に転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親機と複数の子機とを備え、親機が複数の子機からデータを収集するデータ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、遠隔検針システムとして、集合住宅の各戸等に設置される積算電力量計に子機(子機側通信器)を内蔵し、親機(親機側通信器)が子機との電力線搬送通信により検針結果を収集するように構成されたシステムが提案されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1に記載のシステムでは、親機は、通信網を介して電力会社側の集計装置に接続されており、検針結果を集計装置に送信する。
【0003】
このようなシステムでは、親機は、複数の子機が保持しているデータ(たとえば検針結果)を確実に収集する必要があるが、電力線搬送通信や無線通信等においては、伝送距離やノイズ等の影響により、全ての子機と直接通信ができるとは限らない。そこで、親機と子機との間の通信にマルチホップ通信を用いることにより、データの収集率を向上させることも考えられている(たとえば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−180021号公報
【特許文献2】特開2010−4263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したシステムでは、子機の数が多く、また伝送環境があまり良くなくマルチホップ通信を用いてデータを収集する場合に、親機が全ての子機からデータを収集するのに時間が掛かり過ぎる可能性があり、定期的なデータ収集には支障がある。
【0006】
また、マルチホップ通信が行われる場合、親機は、1台の子機からデータを収集するだけでも、他の子機がデータを中継することにより複数の経路で通信が発生し、1つのデータの収集だけで多くの通信帯域を使用することがある。したがって、子機の数が多くなるとデータ収集のための通信量が膨大になり、たとえば電力会社側の管理サーバが子機に設けられている開閉器の制御を行う場合のように、データ収集以外の通信が必要となった場合に、不都合を生じる可能性がある。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、データの収集にかかる時間を短縮し、且つデータ収集のための通信量を抑制することができるデータ管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のデータ管理システムは、データを記憶する子機側記憶部を個別に有する複数の子機と、マルチホップ通信を用いて前記複数の子機から前記子機側記憶部内のデータを収集する親機とを備え、前記複数の子機の各々は、他の子機と前記親機との間でデータを中継する際、前記他の子機から取得したデータに、自身の前記子機側記憶部内のデータを付加して前記親機に送信する付加中継部を有し、前記親機は、前記複数の子機の各々についてホップ数を管理する親機側記憶部と、前記複数の子機の各々に対してデータ要求を送信し当該データ要求への返信として前記子機側記憶部内のデータを取得する取得部とを有し、前記取得部は、データを取得する際に、前記複数の子機のうち前記ホップ数の多い子機を優先してデータを取得することを特徴とする。
【0009】
このデータ管理システムにおいて、前記付加中継部は、前記親機からの前記データ要求を前記他の子機に中継した後の所定期間に当該他の子機からのデータの返信がなかった場合、当該他の子機とのデータ通信を失敗したことを表すエラー通知に、自身の前記子機側記憶部内のデータを付加して前記親機に送信することが望ましい。
【0010】
このデータ管理システムにおいて、前記複数の子機の各々は、前記他の子機から取得したデータの種別を判断する種別判断部を有しており、前記付加中継部は、前記種別判断部での判断結果に応じて、前記子機側記憶部内のデータを付加するか否かを切り替えることがより望ましい。
【0011】
このデータ管理システムにおいて、前記複数の子機の各々は、前記他の子機と前記親機との間でデータを中継するとき以外で前記他の子機からのデータを受信した場合に当該データを一時的に記憶する一時記憶部を有しており、前記親機から前記データ要求を受けた際に、前記子機側記憶部内のデータに前記一時記憶部内のデータを付加して前記親機に送信することがより望ましい。
【0012】
このデータ管理システムにおいて、前記複数の子機のうちの一部の子機は、前記親機の代わりに他の子機から前記子機側記憶部内のデータを収集して記憶する管理用記憶部を有しており、前記親機から前記データ要求を受けた際に、前記子機側記憶部内のデータに前記管理用憶部内のデータを付加して送信することがより望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、データの収集にかかる時間を短縮し、且つデータ収集のための通信量を抑制することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1に係るデータ管理システムの動作例を示すシーケンス図である。
【図2】実施形態1に係るデータ管理システムを示すシステム構成図である。
【図3】実施形態1に係るデータ管理システムの親機および子機の構成を示す概略ブロック図である。
【図4】実施形態2に係るデータ管理システムの動作例を示すシーケンス図である。
【図5】実施形態3に係るデータ管理システムの動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
本実施形態のデータ管理システム10は、図2に示すように、1台の親機1と、親機1との間で通信可能な複数の子機2とを備えており、親機1が通信によって複数の子機2からデータを収集して管理するシステムである。本実施形態では、一例として、データ管理システム10が、通信によって各需要家(ここでは集合住宅の各住戸、オフィスビルのテナント等を想定する)の電気使用量(電力量)を検針する遠隔検針システムである場合について説明する。ただし、データ管理システム10は、遠隔検針システムに限らず、親機1が通信によって複数の子機2からデータを収集して管理するシステムであればよい。
【0016】
本実施形態では、親機1は、建物ごとに設置され、建物の電気室または柱上トランス(図示せず)の配下に接続されており、各子機2は、需要家ごとに設置され各需要家の電力メータ(図示せず)に接続されている。各子機2は、電力メータと別体に設けられる構成に限らず、電力メータに内蔵されていてもよい。ここで、親機1と子機2とは、電力線搬送通信を行うことにより、専用の通信線を用いることなく、電力供給用の電力線をデータ伝送用の通信路に兼用して互いに通信することができる。なお、データ管理システム10は、親機1と子機2との通信に電力線搬送通信を用いることは必須ではなく、たとえば無線通信を用いてもよい。
【0017】
親機1には「Node0」、複数の子機2には「Node1−1」、「Node1−2」、・・・「Nodem−n」というように、電力線搬送通信で使用するノードID(識別子)が予め親機1、子機2ごとに個別に割り当てられている。ここでは、複数の子機2は、たとえば集合住宅の階ごとに複数系統に分けられている。ノードIDは、第1系統の子機2に「1−1」、「1−2」、・・・「1−n」が割り当てられ、第m系統の子機2に「m−1」、「m−2」、・・・「m−n」が割り当てられるように、系統ごとに割り当てられる。親機1は、自身に割り当てられたノードIDに加えて、通信可能な複数の子機2のノードIDを後述の親機側記憶部13に記憶しており、各子機2は、自身に割り当てられたノードIDを後述の子機側記憶部23に記憶している。
【0018】
また、図2のデータ管理システム10では、親機1は、インターネットなどの公衆網3を介して電力会社等に設置された上位管理サーバ4に接続されており、複数の子機2から収集したデータ(検針データ)を集約し上位管理サーバ4に提供する。これにより、電力会社等の上位管理サーバ4は各需要家の検針データを管理することが可能となる。
【0019】
ところで、データ管理システム10は、親機1と子機2との通信に、複数の端末(子機2)を中継してデータを伝送するマルチホップ通信を用いている。これにより、親機1は子機2と通信を行う際、伝送距離やノイズ等の影響により、全ての子機2と直接通信できる環境になくても、全ての子機2からデータを収集することが可能になる。具体的には、親機1は子機2との間で、マルチホッププロトコルに従い通信ルートを構築するための伝送状況の情報のやりとりを行い、その情報を元に通信ルートを決定している。
【0020】
次に、親機1および子機2の構成について図3を参照して説明する。図3では、1台の子機2のみを例示しているが、他の子機2も同様の構成を採用している。
【0021】
親機1は、公衆網3に接続される上位系通信インターフェース11と、子機2が接続される親機側通信インターフェース12と、複数の子機2から収集したデータを記憶する親機側記憶部13と、これらを制御する親機側制御部14とを有している。
【0022】
親機側制御部14は、ノードIDを指定して複数の子機2の各々に対してデータ要求を送信し、データ要求への返信として子機2からデータを取得する取得部15を具備している。取得部15は、定期的(たとえば1時間周期)にポーリングを行って子機2が保持しているデータ(検針データ)を取得し、取得したデータを取得時刻に対応付けて子機2ごとに親機側記憶部13に記憶する。
【0023】
また、上位系通信インターフェース11は、光回線を用いて上位管理サーバ4と通信するためのモデムを具備している。親機側制御部14は、マルチホップ通信の通信ルートを確立するための処理も行っており、親機側記憶部13は、マルチホップ通信における親機1−子機2間の通信ルートについての情報(たとえばホップ数など)も管理している。
【0024】
子機2は、電力メータに接続される端末用通信インターフェース21と、親機1が接続される子機側通信インターフェース22と、電力メータから取得したデータを記憶する子機側記憶部23と、これらを制御する子機側制御部24とを有している。
【0025】
子機側制御部24は、電力メータが計測したデータ(積算電力量)を、定期的(たとえば30分周期)に電力メータから取得し、取得時刻に対応付けて子機側記憶部23に記憶する。さらに、子機側制御部24は、親機1から子機側記憶部23に記憶されている自身のノードID宛のデータ要求を受けると、子機側記憶部23内のデータを読み出して親機1に返信する。これにより、電力メータが計測したデータを親機1が収集することになる。
【0026】
また、子機側制御部24は、マルチホップ通信の通信ルートを確立するための処理も行っている。具体的には、子機側制御部24は、他の子機2と親機1とがマルチホップ通信を行う際に、親機1から子機2へのデータ要求や、子機2から親機1へのデータを中継する付加中継部25の機能を具備している。さらに、子機側制御部24は、他の子機2から取得したデータの種別を判断する種別判断部26の機能を具備している。
【0027】
なお、子機2は、電力線上の電力供給路を開閉する開閉器(図示せず)を有しており、親機1から送信される指示に従って子機側制御部24が開閉器を開閉制御する。親機1から子機2への指示は、上位管理サーバ4から親機1に通知される。これにより、上位管理サーバ4を管理する電力会社等において、各需要家への給電の開始と停止を管理することが可能になる。
【0028】
ここにおいて、付加中継部25は、他の子機2から親機1へのデータを中継する際、他の子機2から取得したデータに、自身の子機側記憶部23内のデータを付加して親機1に送信する。つまり、付加中継部25は、単に他の子機2からのデータを中継するのではなく、中継するデータと併せて自身の子機側記憶部23内のデータを親機1に送信する。これにより、親機1は、ある子機2からデータを収集する際に、マルチホップ通信の通信ルートを構築する他の子機2からのデータも併せて収集することが可能になる。
【0029】
また、付加中継部25は、他の子機2との間で通信を失敗した場合には、他の子機2との通信を失敗したことを表すエラー通知に、自身の子機側記憶部23内のデータを付加して親機1に送信する。ここで、付加中継部25は、親機1からのデータ要求を他の子機2に中継した後の所定期間に、他の子機2からのデータの返信がなかった場合、他の子機2とのデータ通信を失敗したと判断する。
【0030】
この場合において、親機1は、全ての子機2に対してデータ要求を送信することなく、全ての子機2からデータを取得することが可能である。つまり、親機1は、たとえば(ノードIDが)「1−2」の子機2と通信するときに「1−1」の子機2を中継するのであれば、「1−2」の子機2からデータを収集する際に、「1−1」の子機2のデータも併せて収集することができる。したがって、親機1は、「1−2」の子機2にデータ要求を送信するだけで、改めて「1−1」の子機2にデータ要求を送信する必要はなく、「1−1」、「1−2」の両方の子機2からデータを収集することができる。
【0031】
そこで、本実施形態では、取得部15は、複数の子機2のうちホップ数の多い子機2(システム内の最大ホップ数が5であれば、5ホップで通信可能な子機2)から優先的にデータを取得する。これにより、親機1は、既にデータ取得を完了した子機2からは重複してデータを取得しないようにすることで、既にデータを取得した子機2へのデータ要求を極力削減することができ、データを収集するために必要な通信の回数を少なく抑えることができる。ここでいうホップ数は、親機1と子機2とのマルチホップ通信時に、親機1と子機2との間でデータを中継する子機2の数に相当する(実際には、子機2間または親機1と子機2との間の経路数)。本実施形態では、親機側制御部14は、マルチホップ通信の通信ルートを確立するための処理を行う際に、親機側記憶部13に複数の子機2の各々についてのホップ数を記憶することで、各子機2のホップ数を管理している。
【0032】
たとえば、親機1は、上述のように「1−1」、「1−2」の2台の子機2からデータを収集する場合、ホップ数が1である「1−1」の子機2よりもホップ数が2である「1−2」の子機2を優先して、データの取得を行う。これにより、親機1は、「1−2」の子機2からデータを取得する際に「1−1」の子機2のデータも併せて取得できるので、「1−2」の子機2からデータを取得した後で改めて「1−1」の子機2にデータ要求を送信することはない。したがって、親機1は、1回の通信で「1−1」、「1−2」の両方の子機2からデータを収集することができ、データを収集するために必要な通信の回数を少なく抑えることができる。
【0033】
次に、本実施形態のデータ管理システム10の動作について、図1の例を参照して説明する。ここでは、親機1が、所定の定期検針時刻に、第1系統に属する(ノードIDが「1−1」、「1−2」、・・・「1−n」の)複数の子機2からデータ(検針データ)の取得を行う場合を例示する。また、図1の例では、親機1と「1−n」の子機2との通信は、「1−1」の子機2と「1−2」の子機2とで中継されることとする。
【0034】
親機1は、現在時刻が定期検針時刻(たとえば0:00)に一致すると、第1系統に属する複数の子機2のうち、ホップ数が最大となる子機2に対し、検針データを取得するための検針データ要求を送信する。ここでは、親機1と「1−n」の子機2との通信が「1−1」、「1−2」の2台の子機2で中継されるため、「1−n」の子機2のホップ数が3で最大となる。そこで、親機1は「1−n」の子機2に対して、「1−1」の子機2、「1−2」の子機2を中継してデータ要求(検針データ要求)を送信する(図1のS1〜S3)。
【0035】
「1−n」の子機2は、データ要求を受けると、自身の子機側記憶部23に記憶されているデータ(検針データ)を検針データ応答として、「1−2」の子機2に返信する(S4)。「1−2」の子機2は、「1−n」の子機2からのデータを中継する際、「1−n」の子機2からの検針データ応答に自身の子機側記憶部23に記憶されているデータを付加して新たな検針データ応答として、「1−1」の子機2に転送する(S5)。同様に、「1−1」の子機2は、「1−n」の子機2からのデータを中継する際、「1−2」の子機2からの検針データ応答に自身の子機側記憶部23に記憶されているデータを付加して新たな検針データ応答として、親機1に転送する(S6)。
【0036】
これにより、親機1は、「1−n」の子機2に対してデータ要求を送るだけで、その返信として「1−1」、「1−2」、「1−n」の3台の子機2のデータを収集することができる。親機1は、子機2から取得した検針情報を親機側記憶部13に子機2ごとに記憶する。
【0037】
それから、親機1は、第1系統に属する複数の子機2のうち、「1−1」、「1−2」、「1−n」の子機2を除いた子機2の中でホップ数が最大となる子機2に対し、検針データ要求を送信してデータの収集を行う。親機1は、このようにして全ての子機2からデータを取得すれば、親機側記憶部13に記憶したデータを上位管理サーバ4に通知する。
【0038】
その後、親機1は、現在時刻が次の定期検針時刻に一致すると、上述の例と同様に、まずホップ数が最大となる「1−n」の子機2に対して、「1−1」の子機2、「1−2」の子機2を中継してデータ要求を送信する(S7〜S9)。このとき、「1−2」の子機2と「1−n」の子機2との間で通信エラーが生じているので、「1−2」の子機2は、付加中継部25にて「1−n」の子機2との通信を失敗したと判断する(S10)。
【0039】
そのため、「1−2」の子機2は、「1−n」の子機2との通信エラーを表すエラー通知に自身の子機側記憶部23に記憶されているデータを付加して検針データ応答として、「1−1」の子機2に送信する(S11)。「1−1」の子機2は、「1−2」の子機2からの検針データ応答に自身の子機側記憶部23に記憶されているデータを付加して新たな検針データ応答として、親機1に転送する(S12)。
【0040】
これにより、親機1は、「1−n」の子機2に対してデータ要求を送るだけで、「1−2」の子機2と「1−n」の子機2との間で通信エラーが生じた場合でも、その返信として「1−1」、「1−2」の2台の子機2のデータについては収集することができる。また、親機1は、データの収集に失敗した「1−n」の子機2に対しては、取得部15のバックアップ検針機能により個別にデータの取得を試みる。ここでいうバックアップ検針機能とは、親機1が、定期検針時刻になって子機2からのデータ収集が一通り完了した後、一定の時間を空けて、データの取得に失敗した子機2(上記例では「1−n」の子機2)から個別にデータを取得する機能である。また、親機1は、子機2からのデータ収集が一通り完了するのを待たずに、ある子機2からのデータの取得に失敗した場合にはすぐに、この子機2からのデータの取得を再度試みてもよい。
【0041】
以上説明した本実施形態のデータ管理システム10によれば、親機1は、ある子機2からデータを収集する際に、マルチホップ通信の通信ルートを構築する他の子機2からのデータも併せて収集することが可能になる。したがって、親機1は、全ての子機2からデータを収集するために要する時間を短縮することができ、データの収集効率が向上する。
【0042】
しかも、親機1は、ホップ数が多い子機2から優先的にデータを収集するので、既にデータ取得を完了した子機2へのデータ要求を可能な限り削減することができ、データを収集するために必要な通信の回数を少なく抑えることができる。したがって、親機1は、マルチホップ通信によって子機2からデータを収集しながらも、1つのデータを収集するために使用されるパケット数が減り、全子機2からデータを収集する際に通信系にかかる負荷率(通信負荷率)を低減できる。要するに、本実施形態のデータ管理システム10によれば、データ収集のための通信量を抑制することができるという利点がある。
【0043】
また、親機1は、ホップ数が多い子機2から順にデータを収集しながら、既にデータ取得を完了した子機2からも重複してデータを取得してもよい。これにより、親機1は、同一の子機2からのデータを重複して取得することができるので、最初の通信でエラーが生じた場合でも、次の通信でデータを取得可能となり、データ取得の信頼性が向上する。
【0044】
また、各子機2の付加中継部25は、種別判断部26での判断結果に応じて、自身の子機側記憶部23内のデータを付加するか否かを切り替える機能を有し、特定の種別のデータを中継する場合にのみ、自身のデータを付加するように構成されていてもよい。すなわち、付加中継部25は、自身の子機側記憶部23内のデータを付加する機能を、常に有効とするのではなく、特定の種別のデータを中継する場合にのみ有効とする。
【0045】
たとえば、付加中継部25は、種別判断部26で判断されたデータの種別が「検針データ」の場合のみ、検針データ応答にデータに自身の子機側記憶部23内のデータを付加する。そのため、親機1が取得部15のバックアップ検針機能によりデータ取得に失敗した他の子機2から個別にデータを取得する場合には、付加中継部25は、自身の子機側記憶部23内のデータを付加する処理を行わない。また、子機2は、中継するデータがたとえば他の子機2の設定情報や、他の子機2に設けられている開閉器の監視制御のための情報であっても、自身の子機側記憶部23内のデータを付加する処理を行わない。
【0046】
これにより、子機2は、データを中継する際の処理を必要最小限に抑えることができ、データの中継に起因する処理負荷の増加を抑えることが可能になる。
【0047】
(実施形態2)
本実施形態のデータ管理システム10は、子機2が、他の子機2からのデータを一時的に記憶する一時記憶部(図示せず)を有する点が実施形態1のデータ管理システム10と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して説明を適宜省略する。
【0048】
子機2は、他の子機2と親機1との間でデータを中継するとき以外で、他の子機2からのデータを受信した場合に、受信したデータを一時記憶部に一時的に記憶する。すなわち、ある子機2から送信された信号は、宛先が親機1であっても、実際には周辺の子機2に届く場合があるので、各子機2は、このようにして他の子機2から届いたデータを一時記憶部に一時的に記憶する。一時記憶部にデータを記憶した子機2は、親機1からデータ要求を受けた際には、子機側記憶部23内に記憶した自身のデータに、一時記憶部内のデータを付加して親機1に送信する。
【0049】
次に、本実施形態のデータ管理システム10の動作について、図4を参照して説明する。図4では、(ノードIDが)「1−1」の子機2からの信号が、図中の破線で囲った範囲に存在する「1−2」の子機2および親機1に届く場合を想定している。
【0050】
この場合、親機1が「1−1」の子機2にデータ要求を送信し(図4のS21)、これに対して「1−1」の子機2がデータを親機1に返信すると(S22)、「1−2」の子機2は、「1−1」からのデータを受信し一時記憶部に一時的に記憶する(S23)。その後、親機1から「1−2」の子機2に対してデータ要求が送信されると(S24)、この子機2は、自身の子機側記憶部23内のデータに、先程一時記憶部に記憶した「1−1」の子機2のデータを付加して、検針データ応答として親機1に送信する(S25)。つまり、「1−2」の子機2は、自身のデータと他の子機2のデータとを二重化して親機1に送信することになる。
【0051】
上述した構成によれば、親機1は、たとえば先に行った「1−1」の子機2からのデータ収集を一時的な伝送環境劣化等により失敗していたとしても、別の(「1−2」の)子機2からのデータ収集の際に、「1−1」の子機2のデータも併せて取得することができる。したがって、親機1は、「1−1」の子機2に対して改めてデータ要求を送信するまでもなく、「1−1」の子機2からデータを収集することができる。要するに、親機1は、子機2からデータを二重化して収集することにより、ある子機2からのデータ収集を失敗した場合のデータ要求の再送回数を削減でき、結果として、全子機2分のデータ収集に要する時間を短縮することが可能になる。
【0052】
なお、信号が届く範囲の全ての子機2が上述したデータの二重化を行うと、子機2のメモリ容量が多く必要になると共に、通信時のデータ長が必要以上に長くなり、結果的に、通信負荷率が増大する可能性がある。そこで、子機2は、たとえば一時記憶部へのデータの記憶対象とする子機2の台数を制限したり、他の子機2からの信号を検知したときの受信品質に基づいて、所定の受信品質以上のデータのみ一時記憶部へ記憶するようにしたりすることが望ましい。
【0053】
また、子機2は、一時記憶部に記憶されているデータの保存時間を一定時間(たとえば3時間)とし、一時記憶部に記憶してから一定時間が経過したデータについては消去するように構成されていてもよい。たとえば、親機1が定期検針時刻からデータ収集を開始した場合において、ある子機2が他の子機2から受信して一時記憶部に記憶したデータは、定期検針時刻から一定時間経過後に消去されることになる。
【0054】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0055】
(実施形態3)
本実施形態のデータ管理システム10は、複数の子機2のうちの一部の子機2が、親機1の代わりに他の子機2からデータを収集して記憶する管理用記憶部(図示せず)を有する点が実施形態1のデータ管理システム10と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して説明を適宜省略する。
【0056】
ここでは、複数の子機2のうち所定の方法により選択された子機2は、信号の届く範囲に存在する他の子機2と直接通信を行うことにより他の子機2からデータを子機側制御部24にて収集し、管理用記憶部に記憶する。管理用記憶部にデータを記憶した子機2は、親機1からデータ要求を受けた際には、子機側記憶部23内に記憶した自身のデータに、管理用記憶部内のデータを付加して親機1に送信する。
【0057】
次に、本実施形態のデータ管理システム10の動作について、図5を参照して説明する。図5では、親機1が、第1系統に属する子機2のうち(ノードIDが)「1−1」の子機2とは直接通信可能であって、「1−2」の子機2とは「1−1」の子機2を中継してマルチホップ通信(つまり2ホップ通信)可能である場合を想定している。「1−3」〜「1−n」の子機2は、いずれも「1−2」の子機2と直接通信可能であって、親機1とは、「1−1」、「1−2」の2台の子機2を中継してマルチホップ通信(つまり3ホップ通信)可能である。
【0058】
ここで、データ管理システム10の管理者は、予め、親機1と直接通信できない「1−2」の子機2を、親機1の代わりに他の子機2からのデータ収集を行う子機2として選定しておく。なお、管理者は、別系統の子機2についても、同様に親機1の代わりに他の子機2からのデータ収集を行う子機2を予め選定しておく。
【0059】
この場合、「1−2」の子機2は、現在時刻が定期検針時刻に一致すると(図5のS31)、他の子機2に対しデータ要求(検針データ要求)を送信し、検針データ応答として他の各子機2からデータを取得して子機2ごとに管理記憶部に記憶する(S32〜37)。このとき、「1−2」の子機2は、直接通信可能な範囲の(「1−3」〜「1−n」の)子機2を対象として、順次データ要求を送信しデータを収集する。
【0060】
その後、親機1は、「1−2」の子機2に対して、「1−1」の子機2を中継してデータ要求を送信する(S38,S39)。これにより、「1−2」の子機2は、自身の子機側記憶部23内のデータに、先程管理記憶部に記憶した「1−3」〜「1−n」の各子機2のデータを付加して、検針データ応答として「1−1」の子機2に送信する(S40)。「1−1」の子機2は、「1−n」の子機2からのデータを中継する際、「1−2」の子機2からの検針データ応答に自身の子機側記憶部23に記憶されているデータを付加して新たな検針データ応答として、親機1に転送する(S41)。
【0061】
上述した構成によれば、管理記憶部を有する子機2は、親機1がある子機2からデータ取得を行っている間に、空いている通信帯域を利用して他の子機2から予めデータ収集を行っておくことができる。そのため、親機1は、各子機2と個別に通信を行うことなく、管理記憶部を有する子機2から、複数の子機2のデータをまとめて収集することができるので、通信帯域を効率的に利用することができ、且つ通信負荷率を分散させることが可能となる。
【0062】
なお、親機1の代わりに他の子機2からのデータ収集を行う子機2の選定方法については、予めシステムの管理者が決定する方法に限らず、たとえば親機1が特定の子機2に対して通信により要求を出すことにより選定してもよい。この場合、親機1は、最も離れた(受信品質の悪い)子機2を選んだり、マルチホップ通信の中継を行う子機2のうち、親機1とは直接通信できないものの親機1に最も近い子機(つまり、親機1から2つ目の子機)2を選んだりすることが望ましい。
【0063】
なお、本実施形態の構成は、実施形態2で説明したように子機2が一時記憶部を有する構成と組み合わされてもよい。その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0064】
1 親機
2 子機
13 親機側記憶部
15 取得部
23 子機側記憶部
25 付加中継部
26 種別判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶する子機側記憶部を個別に有する複数の子機と、マルチホップ通信を用いて前記複数の子機から前記子機側記憶部内のデータを収集する親機とを備え、
前記複数の子機の各々は、他の子機と前記親機との間でデータを中継する際、前記他の子機から取得したデータに、自身の前記子機側記憶部内のデータを付加して前記親機に送信する付加中継部を有し、
前記親機は、前記複数の子機の各々についてホップ数を管理する親機側記憶部と、前記複数の子機の各々に対してデータ要求を送信し当該データ要求への返信として前記子機側記憶部内のデータを取得する取得部とを有し、
前記取得部は、データを取得する際に、前記複数の子機のうち前記ホップ数の多い子機を優先してデータを取得することを特徴とするデータ管理システム。
【請求項2】
前記付加中継部は、前記親機からの前記データ要求を前記他の子機に中継した後の所定期間に当該他の子機からのデータの返信がなかった場合、当該他の子機とのデータ通信を失敗したことを表すエラー通知に、自身の前記子機側記憶部内のデータを付加して前記親機に送信することを特徴とする請求項1に記載のデータ管理システム。
【請求項3】
前記複数の子機の各々は、前記他の子機から取得したデータの種別を判断する種別判断部を有しており、前記付加中継部は、前記種別判断部での判断結果に応じて、前記子機側記憶部内のデータを付加するか否かを切り替えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデータ管理システム。
【請求項4】
前記複数の子機の各々は、前記他の子機と前記親機との間でデータを中継するとき以外で前記他の子機からのデータを受信した場合に当該データを一時的に記憶する一時記憶部を有しており、前記親機から前記データ要求を受けた際に、前記子機側記憶部内のデータに前記一時記憶部内のデータを付加して前記親機に送信することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のデータ管理システム。
【請求項5】
前記複数の子機のうちの一部の子機は、前記親機の代わりに他の子機から前記子機側記憶部内のデータを収集して記憶する管理用記憶部を有しており、前記親機から前記データ要求を受けた際に、前記子機側記憶部内のデータに前記管理用憶部内のデータを付加して送信することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のデータ管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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