説明

データ送信装置、データ受信装置、並びにデータ通信装置

【課題】 盗聴者が暗号文の解析に要する時間を著しく増大させ、天文学的な計算量に基づく秘匿性の高いデータ通信装置を提供する。
【解決手段】 カオス信号を多値識別した信号を、予め定められた所定の第1の多値化鍵情報に基づいてスクランブルして得られる多値符号列と情報データとを用いて、当該レベルが略乱数的に変化する多値信号を発生する。多値信号は、所定の変調形式の変調信号に変換され送信される。変調信号を復調して多値信号を出力し、予め定められた所定の第2の初期値(鍵情報)と多値信号とを入力し、情報データを再生する。このため、変調信号が傍受され、多値信号に再生できたとしても、多値信号から情報データの復号を困難にすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第三者による不法な盗聴・傍受を防ぐ秘密通信を行う装置に関する。より特定的には、正規の送受信者間で、特定の符号化/復号化(変調/復調)方式を選択・設定してデータ通信を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定者同志でのみ通信を行うためには、送信/受信間で符号化/復号化のための元情報(鍵情報)を共有し、当該情報に基づいて、伝送すべき情報データ(平文)を数学的に演算/逆演算することにより秘密通信を実現する構成が採用されている。図30は、当該構成に基づく、従来のデータ送信装置の構成を示すブロック図である。図30において、従来のデータ通信装置は、データ送信装置90001と、伝送路913と、データ受信装置90002とで構成される。データ送信装置90001は、符号化部911と、変調部912とからなる。データ受信装置90002は、復調部914と、復号化部915とからなる。ここで、符号化部911に情報データ90と第1の鍵情報91とを入力し、復号化部915に第2の鍵情報96を入力すると、復号化部915から情報データ98が出力される。さらに、第三者による盗聴行為を説明するため、図30は、盗聴者復調部916と、盗聴者復号化部917とからなる盗聴者データ受信装置90003を含むものとする。盗聴者復号化部917には、第3の鍵情報99が入力される。以下に、図30を参照しながら、従来のデータ通信装置の動作を説明する。
【0003】
データ送信装置90001において、符号化部911は、情報データ90を、第1の鍵情報91に基づいて符号化(暗号化)する。変調部912は、符号化部911で暗号化された情報データを所定の変調形式の変調信号94に変換して伝送路913に送出する。データ受信装置90002において、復調部914は、伝送路913を介して伝送されてきた変調信号94を所定の復調方式で復調する。復号化部915は、符号化部911との間で共有した第1の鍵情報91と同一の第2の鍵情報96に基づいて復号化(暗号解読)して、元の情報データ98を出力する。
【0004】
データ送信装置90001とデータ受信装置90002との間で伝送される変調信号(情報データ)を盗聴するに当たり、盗聴者データ受信装置90003において、盗聴者復調部916が、伝送路913を伝搬する変調信号の一部を分岐、入力し、所定の復調方式で復調し、盗聴者復号化部917が第3の鍵情報99に基づいて復号化を試みる。ここで、盗聴者復号化部917は、符号化部911との間で鍵情報を共有していないものとする。即ち、盗聴者復号化部917は、第1の鍵情報91と異なる第3の鍵情報99に基づき復号化を行うため、元の情報データを正しく再生することができない。
【0005】
このような数学的な演算に基づく数理暗号(または、計算暗号、ソフトウェア暗号とも呼ばれる)技術は、例えば特開平9−205420号公報にも記されているように、アクセスシステム等に適用できる。即ち、1つの光送信器から送出された光信号を光カプラで分岐し、複数の光加入者宅の光受信器にそれぞれ配信するPON(Passive Optical Network)構成では、各光受信器に、所望の光信号以外の他加入者に向けた信号が入力される。そこで、互いに異なる鍵情報を用いて、加入者毎の情報データを暗号化することによって、互いの情報の漏洩・盗聴を防ぎ、安全なデータ通信を実現することができる。
【特許文献1】特開平9−205420号公報
【非特許文献1】石橋啓一郎他訳、「暗号とネットワークセキュリティ:理論と実際」、ピアソン・エデュケーション、2001年
【非特許文献2】安達真弓他訳、「暗号技術大全」、ソフトバンクパブリッシング、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、数理暗号技術に基づく従来のデータ通信装置では、盗聴者は、たとえ鍵情報を共有しなくとも、暗号文(変調信号、または暗号化された情報データ)に対して、考え得る全ての組み合わせの鍵情報を用いた演算(総当たり攻撃)や、特殊な解析アルゴリズムの適用を試みれば、原理的に暗号解読が可能である。特に、近年の計算機の処理速度向上は目覚ましく、将来的に量子コンピュータ等の新しい原理による計算機が実現されれば、有限の時間内で、暗号文を盗聴できるという課題を有していた。
【0007】
それ故に、本発明の目的は、盗聴者が暗号文の解析に要する時間を著しく増大させ、天文学的な計算量に基づく秘匿性の高いデータ通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、暗号化通信を行うデータ送信装置に向けられている。そして、上記目的を達成させるために、本発明のデータ送信装置は、多値符号化部と変調部とを備える。多値符号化部は、予め定められた所定の鍵情報と情報データとを入力し、信号レベルが略乱数的に変化する多値信号を発生する。変調部は、多値信号に基づいて、所定の変調形式の変調信号を発生する。
【0009】
多値符号化部は、多値符号発生部と多値処理部とを備える。多値符号発生部は、所定の鍵情報から、信号レベルが略乱数的に変化する多値符号列を発生する。多値処理部は、所定の処理に従って、多値符号列と情報データとを合成し、多値符号列と情報データのレベルの組み合わせに一意に対応した信号レベルを有する多値信号を生成する。
【0010】
多値符号発生部は、雑音状信号発生部と多値変換部とから構成される。雑音状信号発生部は、所定の発生法則に基づいて雑音状信号を発生し出力する。多値変換部は、所定の鍵情報に基づく所定の方法により、雑音状信号を多値符号列に変換する。好ましくは、雑音状信号発生部は、所定のカオス鍵情報に基づきカオス信号を発生し出力するカオス信号発生部である。
【0011】
好ましくは、カオス信号発生部は、光を出力する半導体レーザと、半導体レーザに駆動電流を供給するレーザ駆動部と、光電変換部と、帰還部と、駆動条件設定部とから構成される。このような場合、光電変換部は、半導体レーザからの出力光を電気信号に変換しカオス信号として出力する。帰還部は、光電変換部から出力されるカオス信号の一部を分離し、所定の利得と遅延時間とを与え、レーザ駆動部が出力する駆動電流にフィードバックする。駆動条件設定部は、所定のカオス鍵情報に基づき、レーザ駆動部が出力する駆動電流と、帰還部における利得及び遅延時間とを制御する。
【0012】
また、カオス信号発生部は、光を出力する半導体レーザと、半導体レーザに駆動電流を供給するレーザ駆動部と、光電変換部と、帰還部と、駆動条件設定部とから構成されてもよい。このような場合、光電変換部は、半導体レーザからの出力光を電気信号に変換しカオス信号として出力する。帰還部は、半導体レーザからの出力光の一部を分離し、所定の利得と遅延時間とを与え、半導体レーザに再注入する。駆動条件設定部は、カオス鍵情報に基づき、レーザ駆動部が出力する駆動電流と、帰還部における利得及び遅延時間とを制御する。
【0013】
好ましくは、多値変換部から出力される多値符号列の各値の発生確率は、略均等であることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、多値変換部は、所定の鍵情報に基づき、所定の制御信号を出力する多値判定制御部と、所定の制御信号で指定される識別レベルにより、雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し多値符号列を出力する多値判定部とから構成される。
【0015】
また、多値変換部は、所定の鍵情報に基づき、所定の制御信号を出力する多値判定制御部と、雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し出力する多値判定部と、多値判定部から出力される信号に対し、制御信号で指定される複数のビットの値を入れ替え、多値符号列として出力するビット入替部とから構成されてもよい。
【0016】
また、多値変換部は、所定の鍵情報に基づき、所定の制御信号を出力する多値判定制御部と、雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し出力する多値判定部と、多値判定部から出力される信号に対し、制御信号で指定されるビットの値を反転し、多値符号列として出力するビット反転部とから構成されてもよい。
【0017】
好ましくは、多値変換部は、所定の鍵情報に基づき擬似乱数を発生させ、擬似乱数の値に基づく所定の方法により、雑音状信号を多値符号列に変換することを特徴とする。
【0018】
多値変換部は、多値判定部と、乱数信号発生部と、配列部とから構成される。多値判定部は、雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し、離散化雑音状信号として出力する。乱数信号発生部は、所定の鍵情報に基づき、2値または多値の擬似乱数である乱数信号を発生し出力する。配列部は、離散化雑音状信号と乱数信号とから、多値符号列を生成し出力する。多値符号列は、離散化雑音状信号のビット数と、乱数信号のビット数との和に等しいビット数を有し、離散化雑音状信号の各ビットの値と、乱数信号の各ビットの値とを各ビットに配列した多値信号である。
【0019】
また、本発明は、暗号通信を行うデータ受信装置にも向けられている。そして上記目的を達成させるために、本発明のデータ受信装置は、復調部と多値復号化部とを備える。復調部は、所定の変調形式の変調信号を復調し多値信号を出力する。多値復号化部は、予め定められた所定の鍵情報と多値信号とを入力し、情報データを出力する。
【0020】
好ましくは、多値復号化部は、多値符号列発生部と多値識別部とを備える。多値符号列発生部は、鍵情報から、信号レベルが略乱数的に変化する多値符号列を発生する。多値識別部は、多値符号列に基づいて多値信号を識別し、情報データを出力する。
【0021】
多値符号発生部は、雑音状信号発生部と多値変換部とから構成される。雑音状信号発生部は、所定の発生法則に基づいて雑音状信号を発生し出力する。多値変換部は、所定の鍵情報に基づく所定の方法により、雑音状信号を多値符号列に変換する。雑音状信号発生部は、変調信号とは別に受信した雑音状信号を再生し出力する。好ましくは、雑音状信号発生部は、所定のカオス鍵情報に基づきカオス信号を発生し出力するカオス信号発生部である。
【0022】
好ましくは、カオス信号発生部は、光を出力する半導体レーザと、レーザ駆動部と、光電変換部と、帰還部と、駆動条件設定部とから構成される。このような場合、レーザ駆動部は、変調信号と別に受信した第1のカオス信号と所定のバイアス電流とを加算し、半導体レーザに駆動電流として供給する。光電変換部は、半導体レーザからの出力光を電気信号に変換し、第2のカオス信号として出力する。帰還部は、光電変換部からの出力の一部に所定の利得と遅延時間とを与え、レーザ駆動部が出力する駆動電流にフィードバックする。駆動条件設定部は、カオス鍵情報に基づき、レーザ駆動部が出力する駆動電流と、帰還部における利得及び遅延時間とを制御する。
【0023】
また、カオス信号発生部は、半導体レーザと、レーザ駆動部と、光電変換部と、帰還部と、駆動条件設定部とから構成されてもよい。このような場合、半導体レーザは、変調信号と別に受信したカオス信号が光信号の状態で注入され光を出力する。レーザ駆動部は、半導体レーザに駆動電流を供給する。光電変換部は、半導体レーザからの出力光を電気信号に変換し、第2のカオス信号として出力する。帰還部は、半導体レーザからの出力光の一部に所定の利得と遅延時間とを与え、半導体レーザに再注入する。駆動条件設定部は、カオス鍵情報に基づき、レーザ駆動部が出力する駆動電流と、帰還部における利得及び遅延時間とを制御する。
【0024】
好ましくは、多値変換部から出力される多値符号列の各値の発生確率は、略均等であることを特徴とする。
【0025】
好ましくは、多値変換部は、所定の鍵情報に基づき、所定の制御信号を出力する多値判定制御部と、所定の制御信号で指定される識別レベルにより、雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し、多値符号列を出力する多値判定部とから構成される。
【0026】
また、多値変換部は、所定の鍵情報に基づき、所定の制御信号を出力する多値判定制御部と、雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し出力する多値判定部と、多値判定部から出力される信号に対し、制御信号で指定される複数のビットの値を入れ替え、多値符号列として出力するビット入替部とから構成されてもよい。
【0027】
また、多値変換部は、所定の鍵情報に基づき、所定の制御信号を出力する多値判定制御部と、雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し出力する多値判定部と、多値判定部から出力される信号に対し、制御信号で指定されるビットの値を反転し、多値符号列として出力するビット反転部とから構成されてもよい。
【0028】
好ましくは、多値変換部は、所定の鍵情報に基づき擬似乱数を発生させ、擬似乱数の値に基づく所定の方法により、雑音状信号を多値符号列に変換する。
【0029】
多値変換部は、多値判定部と、乱数信号発生部と、配列部とから構成される。多値判定部は、雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し、離散化雑音状信号として出力する。乱数信号発生部は、所定の鍵情報に基づき、2値または多値の擬似乱数である乱数信号を発生し出力する。配列部は、離散化雑音状信号と乱数信号とから多値符号列を生成し出力する。多値符号列は、離散化雑音状信号のビット数と、乱数信号のビット数との和に等しいビット数を有し、離散化雑音状信号の各ビットの値と、乱数信号の各ビットの値とを各ビットに配列した多値信号である。
【0030】
データ受信装置は、多値符号発生部の前段または後段もしくは内部に、入力される信号に遅延を与えて出力する遅延部を備えてもよい。また、データ受信装置は、復調部の前段または後段に、入力される信号に遅延を与えて出力する遅延部を備えてもよい。
【0031】
また、本発明は、暗号通信を行うデータ通信装置にも向けられている。そして上記目的を達成させるために、本発明のデータ通信装置は、データ送信装置とデータ受信装置とを備える。データ送信装置は、予め定められた所定の第1の鍵情報と情報データとを入力し、信号レベルが略乱数的に変化する第1の多値信号を発生する多値符号化部と、第1の多値信号に基づいて、所定の変調形式の変調信号を発生する変調部とからなるデータ送信装置とを備える。データ受信装置は、変調信号を復調し、第2の多値信号を出力する復調部と、予め定められた所定の第2の鍵情報と第2の多値信号とを入力し、情報データを出力する多値復号化部とからなるデータ受信装置とを備える。
【0032】
好ましくは、多値符号化部は、多値符号発生部と多値処理部とを備える。多値符号発生部は、第1の鍵情報から、信号レベルが略乱数的に変化する多値符号列を発生する。多値処理部は、所定の処理に従って、多値符号列と情報データとを合成し、両信号レベルの組み合わせに一意に対応したレベルを有する第1の多値信号に変換する。また、多値復号化部は、多値符号列発生部と多値識別部とを備える。多値符号列発生部は、第2の鍵情報から、信号レベルが略乱数的に変化する多値符号列を発生する。多値識別部は、多値符号列に基づいて、第2の多値信号を識別し、情報データを出力する。
【0033】
好ましくは、第1の多値符号発生部は、所定の発生法則に基づいて第1の雑音状信号を発生し出力する第1の雑音状信号発生部と、第1の鍵情報に基づく所定の方法により、第1の雑音状信号を多値符号列に変換する第1の多値変換部とから構成される。また、第2の多値符号発生部は、第1の雑音状信号と同じ発生法則を有する第2の雑音状信号を発生し出力する第2の雑音状信号発生部と、第2の鍵情報に基づく所定の方法により、第2の雑音状信号を多値符号列に変換する第2の多値変換部とから構成される。
【0034】
好ましくは、第2の雑音状信号発生部は、変調信号とは別に受信した雑音状信号を再生し出力することを特徴とする。第1の雑音状信号発生部は、所定の第1のカオス鍵情報に基づきカオス信号を発生し出力する第1のカオス信号発生部である。第2の雑音状信号発生部は、所定の第2のカオス鍵情報に基づきカオス信号を発生、出力する第2のカオス信号発生部である。
【0035】
好ましくは、第1または第2のカオス信号発生部は、それぞれ、光を出力する半導体レーザと、半導体レーザに駆動電流を供給するレーザ駆動部と、光電変換部と、帰還部と、駆動条件設定部とを備える。光電変換部は、半導体レーザからの出力光を電気信号に変換し第1または第2のカオス信号として出力する。帰還部は、光電変換部からの出力の一部に所定の利得と遅延時間とを与えレーザ駆動部が出力する駆動電流にフィードバックする。第1または第2のカオス鍵情報に基づき、レーザ駆動部が出力する駆動電流と、帰還部における利得及び遅延時間とを制御する。第2のカオス信号発生部に含まれるレーザ駆動部には、第1のカオス信号が入力され、駆動電流に加算されることを特徴とする。
【0036】
また、第1及び第2のカオス信号発生部は、それぞれ、光を出力する半導体レーザと、半導体レーザに駆動電流を供給するレーザ駆動部と、光電変換部と、帰還部と、駆動条件設定部とを備えてもよい。光電変換部は、半導体レーザからの出力光を電気信号に変換し、第1または第2のカオス信号として出力する。帰還部は、半導体レーザからの出力光の一部に所定の利得と遅延時間とを与え、半導体レーザに再注入する。駆動条件設定部は、第1または第2のカオス鍵情報に基づき、レーザ駆動部が出力する駆動電流と、帰還部における利得及び遅延時間とを制御する。第2のカオス信号発生部に含まれる半導体レーザには、第1のカオス信号が光信号の状態で注入されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明のデータ通信装置は、鍵情報に基づいて情報データを多値信号に符号化・変調して送信し、受信した多値信号を同一の鍵情報に基づいて復調・符号化し、多値信号の信号対雑音電力比を適正化することにより、暗号文の解析に要する時間を著しく増大させ、天文学的計算量に基づく秘匿性の高いデータ通信装置を提供することができる。
【0038】
また、本発明によれば、伝送すべき情報データを多値信号として符号化し、さらにタイミング信号に同期した振幅変動もしくはレベル変動を付与することにより、多値信号復調時の同期処理を容易にして、簡易な構成によるデータ通信装置を提供することができる。
【0039】
本発明のデータ通信装置、データ送信装置、ならびにデータ受信装置は、半導体レーザを用いて高速のカオス信号を発生させ、これを用いて情報データを多値信号に符号化・変調して送信し、受信した多値信号を同一の鍵情報に基づいて復調・符号化し、多値信号の信号対雑音電力比を適正化する。これにより、暗号文の解析に要する時間を著しく増大させ、天文学的計算量に基づく秘匿性の高い通信を高速に行うことが可能なデータ通信装置、データ送信装置、ならびにデータ受信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図である。図1において、データ通信装置は、多値符号化部111と、変調部112と、伝送路110と、復調部211と、多値復号化部212とで構成される。多値符号化部111は、第1の多値符号発生部111aと、多値処理部111bとからなる。多値復号化部212は、第2の多値符号発生部212aと、多値識別部212bとからなる。また、多値符号化部111と変調部112とでデータ送信装置10101を構成し、復調部211と多値復号化部212とでデータ受信装置10201を構成する。伝送路110には、LANケーブルや同軸ケーブル等の金属路線や、光ファイバケーブル等の光導波路を用いることができる。また、伝送路110は、LANケーブル等の有線ケーブルに限られず、無線信号を伝搬する自由な空間であってもよい。
なお、図2および図3に、変調部112から出力される変調信号波形を説明するための模式図を示す。以下に、第1の実施形態について、図2および図3を用いながら、その動作を説明する。
【0041】
第1の多値符号発生部111aは、予め定められた所定の第1の鍵情報11に基づいて、信号レベルが略乱数的に変化する多値符号列12(図2(b))を発生する。多値処理部111bは、多値符号列12と情報データ10(図2(a))とを入力し、所定の手順に従って両信号を合成し、当該信号レベルの組み合わせに一意に対応したレベルを有する多値信号13(図2(c))を生成し、出力する。例えば、図2では、多値符号列12がタイムスロットt1/t2/t3/t4に対して当該レベルがc1/c5/c3/c4と変化し、これをバイアスレベルとして、情報データ10を加算することで、L1/L8/L6/L4と変化する多値信号13を生成する。ここで、図3に示すように、情報データ10の振幅を“情報振幅”、多値信号13の全振幅を“多値信号振幅”、各バイアスレベル(多値符号列12のレベル)c1/c2/c3/c4/c5に対応して、多値信号13が取り得るレベルの組(L1、L4)/(L2、L5)/(L3、L6)/(L4、L7)/(L5、L8)を、第1〜第5の“基底”、多値信号13の最小信号点間距離を“ステップ幅”とそれぞれ呼称する。変調部112は、多値信号13を元データとして、所定の変調形式の変調信号14に変換して、伝送路110に送出する。
【0042】
復調部211は、伝送路110を介して伝送されてきた変調信号14を復調し、前記多値信号15を再生する。第2の多値符号発生部212aは、前記第1の鍵情報11と同一の第2の鍵情報16を予め共有し、当該第2の鍵情報16に基づいて、前記多値符号列12に相当する多値符号列17を発生する。多値識別部212bは、多値符号列17を閾値として、多値信号15の識別(2値判定)を行い、情報データ18を再生する。ここで、変調部112と復調部211とが、伝送路110を介して送受信する所定の変調形式の変調信号14は、電磁波(電磁界)または光波を多値信号13で変調して得られるものである。
【0043】
なお、多値処理部111bにおける多値信号13の生成については、上述のように、多値符号列12と情報データ10の加算処理による方法以外に、情報データ10に従って、多値符号列12のレベルを振幅変調/制御する方法や、あるいは、両信号レベルの組み合わせに対応した多値信号レベルを予め記憶させたメモリから、両信号レベルに応じて逐次読み出す方法等、いかなる手順であっても構わない。
【0044】
図2および図3では、多値信号の値数を“8”として表記したが、これに限定されるものではなく、それより大きくても小さくても良い。また、情報振幅を多値信号のステップ幅の3倍、もしくは整数倍として表記したが、これに限らず、いかなる奇数倍や偶数倍であっても良いし、あるいは整数倍でなくても構わない。さらに、これに関連して、図2および図3では、多値符号列の各レベル(各バイアスレベル)が、多値信号の各レベル間の略中心になるよう配置したが、これに限定されるものではなく、多値符号列の各レベルは、多値信号の各レベル間の略中心でなくても良いし、あるいは多値信号の各レベルに一致しても構わない。また、多値符号列と情報データとの変化レートが互いに等しく同期関係にあることを前提としたが、この限りではなく、一方の変化レートが他方より高速(または低速)であっても良いし、非同期であっても構わない。
【0045】
次に、第三者による、変調信号の盗聴動作について説明する。当該第三者は、正規の受信者が備えるデータ受信装置10201に準じた構成、もしくはさらに高性能なデータ受信装置(盗聴者データ受信装置)を用いて、変調信号を受信、解読することが想定され、当該復調部(盗聴者復調部)は、変調信号を復調することにより、多値信号を再生する。しかし、当該多値復号化部(盗聴者多値復号化部)は、データ送信装置10101の多値符号化部111との間で第1の鍵情報11を共有しないため、データ受信装置10201のように、当該鍵情報から発生した多値符号列を基準とした2値判定を行うことができない。このような場合に考え得る盗聴動作としては、多値信号の全レベルに対する識別を同時に行う方法(一般に「総当たり攻撃」と呼ばれる)がある。即ち、多値信号が取り得る全ての信号点間に対する閾値を用意して同時判定を行い、当該判定結果を解析することにより、正しい鍵情報または情報データを抽出する。例えば、図2に示した、多値符号列のレベルc0/c1/c2/c3/c4/c5/c6を閾値として用いて、多値信号に対する多値判定を行うことにより、当該レベルを同定する。
【0046】
しかしながら、実際の伝送系では、種々の要因により雑音が発生し、これが変調信号に重畳されることによって、多値信号のレベルは、図4に示すように時間的・瞬時的に変動する。このような場合、正規受信者(データ受信装置10201)による2値判定動作における被判定信号のSN比(信号対雑音強度比)が、多値信号中の情報振幅と雑音量の比で決まるのに対して、盗聴者データ受信装置による多値判定動作においては、多値信号のステップ幅と雑音量との比によってSN比が決まる。このため、被判定信号が有する雑音レベルが同一条件下においては、当該SN比は相対的に小さくなり、伝送特性(誤り率)が劣化することになる。即ち、第三者が、全閾値による総当たり攻撃に対して識別誤りを誘発させて、盗聴を困難にすることができる。特に、多値信号のステップ幅を、当該雑音振幅(雑音強度分布の拡がり)に対して同オーダ、もしくは、より小さく設定すれば、第三者による多値判定を事実上不可能にして、理想的な盗聴防止を実現できる。
【0047】
なお、上述のように被判定信号(多値信号、または変調信号)に重畳される雑音としては、変調信号に無線信号等の電磁波を用いた場合は、空間場や電子部品等が有する熱雑音(ガウス性雑音)を、光波を用いた場合は、熱雑音に加えて、光子が発生する際の光子数ゆらぎ(量子雑音)を、それぞれ利用できる。特に、量子雑音を伴った信号には、その記録や複製等の信号処理が適用できないことから、当該雑音量を基準に多値信号のステップ幅を設定することによって、第三者による盗聴を不可能として、データ通信の絶対的な安全性を確保することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、伝送すべき情報データを多値信号として符号化し、当該信号点間距離を、当該雑音量に対して適切に設定することにより、第三者による盗聴時の受信信号品質に対して決定的な劣化を与えて、その解読・復号化を困難にする、安全なデータ通信装置を提供することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図である。本図において、データ通信装置は、多値符号化部111と、変調部112と、伝送路110と、復調部211と、多値復号化部212と、第1のデータ反転部113と、第2のデータ反転部213とから構成され、図1の構成に対して、第1のデータ反転部113と、第2のデータ反転部213を新たに備える点が異なっている。また、多値符号化部111と、変調部112と、第1のデータ反転部113とで、データ送信装置10102を構成し、復調部211と、多値復号化部212と、第2のデータ反転部213とで、データ受信装置10202を構成する。以下に、本実施形態の動作を説明する。
【0050】
本実施形態の構成は、前述の第1の実施形態(図1)に準ずるため、同一の動作を行うブロックに関しては、同一の参照符号を付して、その説明を省略し、相違点のみを説明する。その構成において、第1のデータ反転部113は、情報データの有する“0”と“1”の情報と、LowレベルとHighレベルとの対応関係を固定せず、所定の手順で当該対応関係を略ランダムに変更する。例えば、多値符号化部111と同様、所定の初期値に基づいて発生させた乱数系列(疑似乱数列)との排他的論理和(Exclusive OR)演算を行い、その演算結果を多値符号化部111に出力する。第2のデータ反転部213は、多値復号化部212から出力されたデータについて、前記第1のデータ反転部113と逆の手順で、当該“0/1”と“Low/High”の対応関係を変更する。例えば、第1のデータ反転部113が備える初期値と同一の初期値を共有し、これに基づいて発生させた乱数のビット反転系列との排他的論理和演算を行い、その結果を情報データとして再生する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、伝送すべき情報データの反転を略ランダムに行うことにより、暗号としての多値信号の複雑性を大きくして、第三者による解読・復号化をさらに困難とし、より安全なデータ通信装置を提供することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図である。本図において、データ通信装置は、多値符号化部111と、変調部112と、伝送路110と、復調部211と、多値復号化部212と、雑音制御部114とから構成され、図1の構成に対して、雑音制御部114を新たに備える点が異なっている。さらに、雑音制御部114は、雑音発生部114aと、合成部114bとからなる。また、多値符号化部111と、変調部112と、雑音制御部114とで、データ送信装置10103を構成し、復調部211と、多値復号化部212とで、データ受信装置10201を構成する。以下に、本実施形態の動作を説明する。
【0053】
本実施形態の構成は、前述の第1の実施形態(図1)に準ずるため、同一の動作を行うブロックに関しては、同一の参照符号を付して、その説明を省略し、相違点のみを説明する。その構成において、雑音発生部114aは、所定の雑音を発生し、合成部114bが、多値信号と合成して、変調部112に出力する。即ち、図4で説明した多値信号のレベル変動を故意に生じさせて、多値信号のSN比を任意の値に制御し、これにより、多値識別部212bに入力する被判定信号のSN比を制御する。なお、前述したように、雑音発生部114aで発生する雑音としては、熱雑音や量子雑音等が利用される。また、雑音が合成(重畳)された多値信号を雑音重畳多値信号と呼ぶことにする。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、伝送すべき情報データを多値信号として符号化し、そのSN比を任意に制御することにより、第三者による盗聴時の受信信号品質に対して決定的な劣化を故意に与え、その解読・復号化をさらに困難にする、より安全なデータ通信装置を提供することができる。
【0055】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係るデータ通信装置の動作を説明する。本実施形態の構成は、前述の第1の実施形態(図1)、または第3の実施形態(図6)に準ずる。その構成において、多値符号化部111は、図7に示すように、多値信号の各ステップ幅(S1〜S7)を、各レベルの変動量、即ち各レベルに重畳されている雑音強度分布に従い設定し、出力する。具体的には、多値識別部212bに入力する被判定信号の隣り合う2つの信号点間で決まるSN比が略一致するように、当該信号点間距離を配分する。なお、各レベルに重畳される雑音量が等しい場合には、各ステップ幅を均等に設定する。
【0056】
一般に、変調部112から出力される変調信号として、半導体レーザ(LD)を光源とする光強度変調信号を想定した場合、LDに入力する多値信号のレベルに依存して当該変動幅(雑音量)は変化する。これは、半導体レーザが自然放出光を「種光」とした誘導放出の原理に基づいて発光することに起因しており、その雑音量は、誘導放出光量に対する自然放出光量の相対比で定義されている。励起率(LDに注入するバイアス電流に対応)が高い程、誘導放出光量の割合が大きくなるため、その雑音量は小さく、逆に、励起率が低い程、自然放出光量の割合が大きく、雑音量は大きくなる。そこで、図7に示すように、多値信号のレベルが小さい領域ではステップ幅を大きく、レベルが大きい領域では小さく、非線形に設定することにより、被判定信号の隣り合う信号点間のSN比を一致させる。
【0057】
また、変調信号として光変調信号を利用した場合でも、上記の自然放出光による雑音や光受信器に用いる熱雑音が充分小さい条件下では、受信信号のSN比は、主にショット雑音で決定される。当該条件下では、多値信号のレベルが大きい程、当該雑音量が大きくなるため、図7の場合とは逆に、多値信号のレベルが小さい領域ではステップ幅を小さく、レベルが大きい領域では大きく設定することにより、被判定信号の隣り合う信号点間のSN比を一致させる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、伝送すべき情報データを多値信号として符号化し、当該信号点を多値信号振幅内において略均一に配置し、あるいは、当該瞬時レベルに依らず隣り合う信号点間のSN比を略均一に設定することにより、第三者による盗聴時の受信信号品質を常に劣化させ、その解読・復号化をさらに困難にする、より安全なデータ通信装置を提供することができる。
【0059】
(第5の実施形態)
図8は、本発明の第5の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図である。図8において、データ通信装置は、送信部22105と、受信部22205と、伝送路110と、カオス伝送路148とを備える。送信部22105は、多値符号化部111及び変調部112を含む。多値符号化部111は、第1の多値符号発生部111aと、多値処理部111bとを有する。第1の多値符号発生部111aは、第1のカオス信号発生部146と、第1の多値変換部147とを有する。受信部22205は、復調部211及び多値復号化部212を含む。多値復号化部212は、第2の多値符号発生部212aと、多値識別部212bとを有する。第2の多値符号発生部212aは、第2のカオス信号発生部246と、第2の多値変換部247とを有する。
【0060】
すなわち、送信部22105は、第1の実施形態と比較して、第1のカオス信号発生部146と第1の多値変換部147とを新たに有する。受信部22205は、第2のカオス信号発生部246と第2の多値変換部247とを新たに有する。以下、第1の実施形態と異なる部分を中心に、本実施形態に係るデータ通信装置を説明する。なお、第1の実施形態のブロックと同一の動作を行うブロックには、同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0061】
本実施形態は、カオス信号を用いて多値符号列を発生させるものである。カオスとは、微分方程式で数学的に明確に記述されるシステムにおいて発生する不規則な時間発展を含む現象である。カオスにはわずかな初期値の差であっても信号の時間発展が全く異なるものになるという特性があるが、動作条件が同一の時には、一方のシステムから他方へ微小なカオス信号を送ると、二つのカオス振動が同じになるカオス同期現象が生じることが知られている。すなわち、カオス同期現象を用いることで、一見ランダムに変化するように見えるが実際は送信側と受信側とで同期したカオス信号を発生させることができる。これを多値識別することで、送信側と受信側とで同期した多値符号列を生成することができる。
【0062】
以下、図8を参照しながら本実施形態に係るデータ通信装置の各ブロックの動作を説明する。第1のカオス信号発生部146は、入力される第1のカオス鍵情報78に基づき、第1のカオス信号79を発生、出力する。第1のカオス信号79は、分岐され、一部はカオス伝送路148を介して受信部22205に伝送され、残りは第1の多値変換部147に入力される。第1の多値変換部147は、第1のカオス信号79を、第1の多値化鍵情報80に基づく所定の方法により多値符号列12に変換する。
【0063】
第2のカオス信号発生部246は、入力される第2のカオス鍵情報81に基づき、カオス伝送路148を介して伝送されてきた第1のカオス信号79に同期した第2のカオス信号82を発生、出力する。第2の多値変換部247は、第1の多値変換部147と同様に、第2のカオス信号82を、第2の多値化鍵情報83に基づく所定の方法により多値符号列17に変換する。ここで、第1の多値化鍵情報80及び第2の多値化鍵情報83、第1のカオス鍵情報78及び第2のカオス鍵情報81は、それぞれ同じものを用い、送信者と受信者との間で秘密鍵としてあらかじめ共有しておくものとする。
【0064】
カオス信号を発生する方法には様々な方法が存在するが、半導体レーザを用いることで高速なカオス信号を発生できることが知られている。この場合、半導体レーザの駆動条件に応じて、様々なカオス信号を発生させることができる。以下に、半導体レーザを使用する場合における第1及び第2のカオス信号発生部146、246の構成例を示す。
【0065】
図9は、第1のカオス信号発生部146の構成例を示すブロック図である。この構成例は、半導体レーザからの出力光を光電変換し電気的にフィードバックすることでカオス発振させるものである。図9において、第1のカオス信号発生部146は、駆動条件設定部1461と、レーザ駆動部1462と、半導体レーザ1463と、光電変換部1464と、帰還部1465とから構成される。レーザ駆動部1462は、駆動電流制御信号S11に基づき設定するバイアス電流に、入力されるフィードバック信号S14を加算して駆動電流S13として出力し、半導体レーザ1463を電流駆動する。光電変換部1464は、この時半導体レーザ1463から出力される出力光S15を光電変換し、第1のカオス信号79として出力する。第1のカオス信号79の一部は、分岐され帰還部1465に入力される。
【0066】
帰還部1465は、帰還制御信号S12に基づき設定する利得と遅延時間とを、第1のカオス信号79に与え、フィードバック信号S14としてレーザ駆動部1462に出力する。駆動条件設定部1461は、入力される第1のカオス鍵情報78に基づき、駆動条件(すなわち半導体レーザ1462に与えるバイアス電流、及び帰還部1465に与える利得と遅延時間と)を設定し、駆動電流制御信号S11及び帰還制御信号S12として出力する。
【0067】
図10は、図9の対となる第2のカオス信号発生部246の構成例を示すブロック図である。図10において、第2のカオス信号発生部246は、構成及び各ブロックの動作は基本的に図9と同一であるが、レーザ駆動部2462に第1のカオス信号79が入力され、バイアス電流及びフィードバック信号S24に加算して駆動電流S23として出力する点が異なる。また、半導体レーザ2463は、図9における半導体レーザ1463と全く同じ特性のものを用いる。第2のカオス信号発生部246は、第1のカオス鍵情報78と第2のカオス鍵情報81との値を同一にし(すなわち駆動条件を同一にし)、また第1のカオス信号79を入力することで、第1のカオス信号79に同期した第2のカオス信号82を出力する。
【0068】
図11は、第1のカオス信号発生部の別の構成例を示すブロック図である。この構成例は、半導体レーザからの出力光を光学的にフィードバックすることでカオス発振させるものである。図11において、第1のカオス信号発生部146aは、駆動条件設定部1461と、レーザ駆動部1462と、半導体レーザ1463と、光電変換部1464と、帰還部1465とから構成される。レーザ駆動部1462は、駆動電流制御信号S11に基づき設定するバイアス電流を駆動電流S13として出力し、半導体レーザ1463を電流駆動する。この時半導体レーザ1463から出力される出力光S15の一部は、分岐され帰還部1465に入力される。出力光S15の残りは、光電変換部1464で光電変換され、第1のカオス信号79として出力される。
【0069】
帰還部1465は、帰還制御信号S12に基づき設定する利得と遅延時間とを、出力光S15に与え、戻り光S16として半導体レーザ1463にフィードバックする。駆動条件設定部1461は、入力される第1のカオス鍵情報78に基づき、駆動条件(すなわち半導体レーザ133に与えるバイアス電流、及び帰還部1465に与える利得と遅延時間と)を設定し、駆動電流制御信号S11及び帰還制御信号S12として出力する。
【0070】
図12は、図11の対となる第2のカオス信号発生部の構成例である。図12において、第2のカオス信号発生部246aは、構成及び各ブロックの動作は基本的に図11と同一であるが、半導体レーザ2463に第1のカオス信号79が光信号の状態で注入される点が異なる。また、半導体レーザ2463は、図11における半導体レーザ1463と全く同じ特性のものを用いる。この場合も、第1のカオス鍵情報78と第2のカオス鍵情報81の値(すなわち駆動条件)を同一にし、第1のカオス信号79を入力することで、第2のカオス信号発生部246aは、第1のカオス信号79に同期した第2のカオス信号82を出力する。
【0071】
第1のカオス信号発生部146及び第2のカオス信号発生部246は、半導体レーザを用いてカオス信号を発生させると、半導体レーザの緩和振動周波数と同程度の上限周波数を有するカオス信号が発生させることができる。すなわち、第1のカオス信号発生部146及び第2のカオス信号発生部246は、半導体レーザの緩和振動周波数が最大で数十GHzに達するため、高速なカオス信号を発生させることができる。緩和振動周波数より低速の信号を得たい場合は、光電変換部1464、2464の後段に所望の帯域を有するローパスフィルタを設置すればよい。
【0072】
なお、図9〜図12において説明した第1カオス信号発生部146及び第2のカオス信号発生部246の構成はあくまでも一例であり、同期したカオス信号を発生させることができれば他の構成を用いても構わない。また、カオス信号を制御することのできるパラメータであれば、半導体レーザの駆動電流以外のパラメータを変化させる構成であっても構わない。さらに、第1のカオス信号79を第2のカオス信号発生部246に入力することなく、他の手段で第2のカオス信号82を第1のカオス信号79に同期させることができれば、必ずしも第1のカオス信号79をカオス伝送路148を介して伝送し、第2のカオス信号発生部246に入力する必要はない。
【0073】
なお、カオス信号を用いて多値符号列を発生させる目的は、カオスが所定の発生法則に基づいて発生する雑音状の信号であるという性質を持つためである。同様の性質を持つ雑音状の信号を発生できる方法であれば、一般にカオスと称されていないものであっても、カオス信号の代わりに用いることができる。
【0074】
図13は、第1の多値変換部147の構成例を示すブロック図である。図13において、第1の多値変換部147は、多値判定制御部1471と、多値判定部1472と、ビット入替部1473とから構成される。多値判定部1472は、あらかじめ定めた所定の識別レベルで第1のカオス信号79を多値識別し、離散化カオス信号S41として出力する。ビット入替部1473は、入力される制御信号S42に基づき、離散化カオス信号S41のビットを入れ替え、多値符号列12として出力する。多値判定制御部1471は、入力される第1の多値化鍵情報80に基づき、離散化カオス信号S41の中の入れ替えるビットを指定する制御信号S42を出力する。第2の多値変換部247の構成は、第1の多値変換部147と全く同じである。
【0075】
次に、本実施形態における信号形態について、図14を参照しながら説明する。図14(a)は、第1のカオス信号発生部146から出力される第1のカオス信号79の波形の一例である。ここでは、多値判定部1472が時刻t1〜t11のそれぞれにおいて、第1のカオス信号79を8値で識別する場合を考える。このとき、多値判定部1472から出力される離散化カオス信号S41の各ビットの値は、図14(b)に示す値となる。ここで、制御信号S42が最上位ビットと最下位ビットとを入れ替えるように指定したとすると、ビット入替部1473から出力される多値符号列12は、図14(c)に示すようになる。
【0076】
第1の多値化鍵情報80と制御信号S42との対応関係は、例えば第1の多値化鍵情報80の値が“1”の時は最上位ビットと最下位ビットとを入れ替え、“0”の時は最上位ビットと2番目のビットとを入れ替えるというように、入れ替えるビットの組合せと第1の多値化鍵情報80の値とを対応付ける。第1の多値変換部147は、このようにして第1のカオス信号79から多値符号列12の値を予測することを困難にし、安全性を確保する。
【0077】
なお、受信部22205(図8参照)において、第2の多値変換部247が第2のカオス信号82から多値符号列17を生成する方法は、図14を用いて説明した方法と全く同じである。また、図14で説明した例はあくまでも一例であり、多値数やビット入替部1473において入れ替えるビットの設定等は以上に説明したものに限定されず、任意に設定することが可能である。また、カオス伝送路148と伝送路110とは同一の経路であってもよく、さらには同一の伝送路上において変調信号14と第1のカオス信号79とを任意の多重方式で多重する構成であってもよい。例えば、変調信号14と第1のカオス信号79とに互いに異なる波長の光信号を割り当て、波長多重して伝送する構成をとることもできる。
【0078】
ところで、通信の安全性を高めるためには、多値符号列12のそれぞれの値の出現確率は全て等しいことが望ましい。そのためには、図15に示すように、多値判定部1472における識別レベルは、第1のカオス信号79のレベルの発生確率分布に対応して、離散化カオス信号のそれぞれの値の出現確率が等しくなるように設定する。
【0079】
以上のように本実施形態によれば、半導体レーザを用いて高速のカオス信号を発生させ、これを用いて高速に変化する多値符号列を容易に生成することができるため、高速の秘匿通信を実現できる。また、送信側と受信側とで同期したカオス信号を発生させることにより、同期した多値符号列を生成し、適切なタイミングで多値信号を識別することが可能になる。
【0080】
(第6の実施形態)
図16は、本発明の第6の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図である。図16において、本発明の第6の実施形態に係るデータ通信装置の全体の構成は、第5の実施形態(図8参照)で示したものと全く同じであり、第1の多値変換部147b及び第2の多値変換部247bの内部構成のみが異なる。以下、第5の実施形態と異なる部分を中心に、本実施形態に係るデータ通信装置を説明する。第5の実施形態と同じ部分に関しては、説明を省略する。
【0081】
図17は、第6の実施形態における第1の多値変換部147bの構成を示すブロック図である。本実施形態における第1の多値変換部147bは、多値判定制御部1471と、多値判定部1472とから構成される。多値判定部1472は、制御信号S42で指定される所定の識別レベルで第1のカオス信号79を多値識別し、多値符号列12として出力する。多値判定制御部1471は、入力される第1の多値化鍵情報80に基づき、多値判定部1472における識別レベルを指定する制御信号S42を出力する。第2の多値変換部247bの構成は、第1の多値変換部147bと全く同じである。
【0082】
次に、本実施形態における信号形態について、図18を参照しながら説明する。図18(a)は、第1のカオス信号発生部146から出力される第1のカオス信号79の波形の一例である。ここでは、多値判定部1472が時刻t1〜t11のそれぞれにおいて、第1のカオス信号79を8値で識別する場合を考える。このとき、多値判定部1472は、“011”と“100”との間の識別レベルを、第1の多値化鍵情報80の値に応じて切り替えるものとする。すなわち、多値判定部1472は、第1のカオス信号79の識別レベルを第1の多値化鍵情報80の値が“1”の場合は図18(a)に示す識別レベルAに、“0”の場合は識別レベルBに設定するものとする。この場合、多値判定部1472から出力される多値符号列の値は図18(b)に示すようになり、時刻t6での多値符号列が識別レベルによって異なる値となる。
【0083】
図18では簡単のため1つの識別レベルのみを変化させる例を示したが、カオス信号レベルから多値符号列12の値を予測することを困難にし、安全性を高めるためにはさらに多くの識別レベル、望ましくは全ての識別レベルを第1の多値化鍵情報80の値に応じて切り替えるとよい。また、各識別レベルにおいて切替幅を異なる量に設定すると、より安全性が高まる。
【0084】
なお、受信部22206(図16参照)において、第2の多値変換部247bが第2のカオス信号82から多値符号列17を生成する方法は、図18を用いて説明した方法と全く同じである。また、図18で説明した例はあくまでも一例であり、多値数、識別レベルの切替幅等は以上に説明したものに限定されず、任意に設定することが可能である。
【0085】
以上のように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、高速に変化する多値符号列を容易に生成することができる。
【0086】
(第7の実施形態)
図19は、本発明の第7の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図である。図19において、本発明の第7の実施形態に係るデータ通信装置の全体の構成は、第5の実施形態(図8参照)で示したものと全く同じであり、第1の多値変換部147c及び第2の多値変換部247cの内部構成のみが異なる。以下、第1の実施形態と異なる部分を中心に、本実施形態に係るデータ通信装置を説明する。第5の実施形態と同じ部分に関しては、説明を省略する。
【0087】
図20は、本発明の第7の実施形態における第1の多値変換部147cの構成例を示すブロック図である。本実施形態における第1の多値変換部147cは、多値判定制御部1471と、多値判定部1472と、ビット反転部1474とから構成される。多値判定部1472は、あらかじめ定めた所定の識別レベルで第1のカオス信号79を多値識別し、離散化カオス信号S41として出力する。ビット反転部1474は、制御信号S42で指定される離散化カオス信号S41のビットの値を反転し、多値符号列12として出力する。多値判定制御部1471は、入力される第1の多値化鍵情報80に基づき、ビット反転部1474において値を反転させる離散化カオス信号S41のビットを指定する制御信号S42を出力する。第2の多値変換部247cの構成は、第1の多値変換部147cと全く同じである。
【0088】
次に、本実施形態における信号形態について、図21を参照しながら説明する。図21(a)は、第1のカオス信号発生部146から出力される第1のカオス信号79の波形の一例である。ここでは、多値判定部1472が時刻t1〜t11のそれぞれにおいて、第1のカオス信号79を8値で識別する場合を考える。このとき、多値判定部1472から出力される離散化カオス信号S41の各ビットの値は、図21(b)に示す値となる。ここで、制御信号S42が、最上位ビットの値を反転するように指定したとすると、ビット反転部1474から出力される多値符号列12は図21(c)に示すようになる。
【0089】
第1の多値化鍵情報80と制御信号S42との対応関係は、例えば鍵情報の値が“1”の時は最上位ビットの値を反転させ、“0”の時は2番目のビットの値を反転させるというように、反転させるビットと第1の多値化鍵情報80との値を対応付ける。第1の多値変換部147cは、このようにして第1のカオス信号79から多値符号列12の値を予測することを困難にし、安全性を確保する。
【0090】
なお、受信部22207(図19参照)において、第2の多値変換部247cが第2のカオス信号82から多値符号列17を生成する方法は、図21を用いて説明した方法と全く同じである。また、図21で説明した例はあくまでも一例であり、多値数やビット反転部1474において反転させるビットの設定等は以上に説明したものに限定されず、任意に設定することが可能である。
【0091】
以上のように本実施形態によれば、第5の実施形態と同様に、高速に変化する多値符号列を容易に生成することができる。
【0092】
(第8の実施形態)
図22は、本発明の第8の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図である。図22において、本発明の第8の実施形態に係るデータ通信装置の全体の構成は、第5の実施形態(図8参照)で示したものと全く同じであり、第1の多値変換部147d及び第2の多値変換部247dの内部構成のみが異なる。以下、第5の実施形態と異なる部分を中心に、本実施形態に係るデータ通信装置を説明する。第5の実施形態と同じ部分に関しては、説明を省略する。
【0093】
図23は、第8の実施形態における第1の多値変換部147dの構成例を示すブロック図である。本実施形態における第1の多値変換部147dは、多値判定制御部1471と、多値判定部1472と、ビット反転部1474と、制御用乱数発生部1475とから構成される。多値判定部1472は、あらかじめ定めた所定の識別レベルで第1のカオス信号79を多値識別し、離散化カオス信号S41として出力する。ビット反転部1474は、制御信号S42で指定される離散化カオス信号S41のビットの値を反転し、多値符号列12として出力する。制御用乱数発生部1475は、第1の多値化鍵情報80に基づき、擬似乱数である制御用乱数S43を発生し、多値判定制御部1471に出力する。多値判定制御部1471は、入力される制御用乱数S43の値に基づき、ビット反転部1474において値を反転させる離散化カオス信号S41のビットを指定する制御信号S42を出力する。第2の多値変換部247dの構成は、第1の多値変換部147bと全く同じである。
【0094】
次に、本実施形態における信号形態について、図24を参照しながら説明する。図24(a)は、第1のカオス信号発生部146から出力される第1のカオス信号79の波形の一例である。ここでは、多値判定部1472が時刻t1〜t11のそれぞれにおいて、第1のカオス信号79を8値で識別する場合を考える。このとき、多値判定部1472から出力される離散化カオス信号S41の各ビットの値は図24(b)に示す値となる。ここで、制御用乱数S43の値が“1”の時は、ビット反転部1474において最上位ビットの値を反転するように指定する制御信号S42が多値判定制御部1471から出力される。
【0095】
一方、制御用乱数S43の値が“0”の時は、ビット反転部1474においてビットを反転させずにそのまま出力する。すなわち、制御用乱数の値が図24(b)に示す値である場合、多値符号列12は図24(c)に示すようになる。このように、制御用乱数S43を用いてビットの値をランダムに変えることで、第1のカオス信号79から多値符号列12の値を予測することを困難にし、安全性を確保する。
【0096】
なお、受信部22208(図22参照)において、第2の多値変換部247dが第2のカオス信号82から多値符号列17を生成する方法は、図24を用いて説明した方法と全く同じである。また、図24で説明した例はあくまでも一例であり、離散化カオス信号S41の多値数、制御用乱数S43のビット数、ビット反転部1474において反転させるビットの設定等は以上に説明したものに限定されず、任意に設定することが可能である。図24では擬似乱数を用いてビットを反転させる例を示したが、図14で説明したようなビットを入れ替える方法や、図18で説明したような識別レベルを切り替える方法と、擬似乱数を組み合わせる方法も可能である。すなわち、擬似乱数の値が“1”の時はビットを入れ替え、“0”の時はそのまま出力するといった方法や、擬似乱数の値に応じて識別レベルを切り替えるといった方法を取ることも可能である。
【0097】
以上のように本実施形態によれば、第5の実施形態と同様の利点に加え、擬似乱数を用いているため第1のカオス信号79から多値符号列12の値を予測することがより困難になり、安全性を高めることができる。
【0098】
(第9の実施形態)
図25は、本発明の第9の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図である。図25において、本発明の第9の実施形態に係るデータ通信装置の全体の構成は、第5の実施形態(図8参照)に示したものと全く同じであり、第1の多値変換部147e及び第2の多値変換部247eの内部構成のみが異なる。以下、第5の実施形態と異なる部分を中心に、本実施形態に係るデータ通信装置を説明する。第5の実施形態と同じ部分に関しては、説明を省略する。
【0099】
図26は、第9の実施施形態における第1の多値変換部147eの構成を示すブロック図である。本実施形態における第1の多値変換部147eは、多値判定部1472と、乱数信号発生部1476と、配列部1477とから構成される。多値判定部1472は、あらかじめ定めた所定の識別レベルで第1のカオス信号79を多値識別し、離散化カオス信号S41として出力する。乱数信号発生部1476は、第1の多値化鍵情報80に基づき、2値あるいは多値の擬似乱数である乱数信号S44を発生し出力する。配列部1477は、離散化カオス信号S41と乱数信号S44の各ビットを所定の規則により配列し、離散化カオス信号S41と乱数信号S44のビット数の和と同じビット数を有する多値信号である多値符号列12を出力する。第2の多値変換部247eの構成は、第1の多値変換部147eと全く同じである。
【0100】
次に、本実施形態における信号形態について、図27を参照しながら説明する。この例は、離散化カオス信号S41が3ビット、乱数信号S44が2ビットの信号であり、離散化カオス信号S41の値を多値符号列12の上位3ビット、乱数信号S44の値を多値符号列12の下位2ビットに配列する例である。例えば時刻t1では、離散化カオス信号S41の値が“110”、乱数信号S44の値が“01”であるとき、多値符号列12の値は“11001”となる。このように、第1のカオス信号79と乱数信号S44との双方を用いて多値符号列12の値を決定することで、第1のカオス信号79から多値符号列12の値を予測することを困難にし、安全性を確保する。
【0101】
なお、受信部22209(図25参照)において、第2の多値変換部247eが第2のカオス信号82から多値符号列17を生成する方法は、図27を用いて説明した方法と全く同じである。なお、図27で説明した例はあくまでも一例であり、離散化カオス信号S41及び乱数信号S44の多値数、配列部1477におけるビット配列の規則は以上に説明したものに限定されず、任意に設定することが可能である。例えば、多値符号列12の上位ビットに乱数信号S44の値を、下位ビットに離散化カオス信号S41の値を配列することも可能であり、また乱数信号S44と離散化カオス信号S41の各ビットの値を交互に配列することも可能である。
【0102】
以上のように本実施形態によれば、第8の実施形態と同様に、擬似乱数を用いているため第1のカオス信号79から多値符号列12の値を予測することがより困難になり、安全性を高めることができる。
【0103】
第5から第9の実施形態において、第1のカオス信号79及び第1の多値化鍵情報80から多値符号列12を生成する方法の例をそれぞれ示したが、多値符号列12の生成方法はこれらに限定されず、第1のカオス信号79から予測困難な形で多値符号列12を生成できる方法であれば、いかなる方法を用いても構わない。また、本発明のデータ通信装置は、第5から第9の実施形態で説明した方法を複数組み合わせて使用することも可能である。
【0104】
(第10の実施形態)
図28は、本発明の第10の実施形態に係るデータ通信装置の構成例を示すブロック図である。図28に示すデータ通信装置は、送信部22110と、受信部22210と、伝送路110と、カオス伝送路148とを備える。送信部22110は、多値符号化部111及び変調部112を含む。多値符号化部111は、第1の多値符号発生部111aと、多値処理部111bとを有する。第1の多値符号発生部111aは、第1のカオス信号発生部146と、第1の多値変換部147とを有する。受信部22210は、復調部211及び多値復号化部212を含む。多値復号化部212は、第2の多値符号発生部212aと、多値識別部212bと、遅延部248とを有する。第2の多値符号発生部212aは、第2のカオス信号発生部246と、第2の多値変換部247とを有する。
【0105】
すなわち、本実施形態に係るデータ通信装置は、遅延部248を備える点が、第5の実施形態と異なる。以下、第5の実施形態と異なる部分を中心に、本実施形態に係るデータ通信装置を説明する。第1の実施形態と同一の動作を行うブロックに関しては、説明を省略する。
【0106】
本実施形態に係るデータ通信装置は、復調部211から出力される多値信号15と、第2の多値符号発生部212aから出力される多値符号列17のタイミングが一致していない場合に、これらが多値識別部212bに入力されるタイミングを一致させるものである。図28において、受信部22210の構成は、多値信号15のタイミングに遅れが生じている場合にタイミング調整するためのものである。すなわち、遅延部248は、多値符号列17に遅延を与え、多値信号15と多値符号列17とが多値識別部212bに入力されるタイミングを一致させる。なお、遅延部248の位置は、多値符号発生部212aの内部や、カオス伝送路148と第2のカオス信号発生部246との間であってもよい。
【0107】
図29は、第10の実施形態の別の構成を示すブロック図である。図29は、多値符号列17のタイミングに遅れが生じている場合にタイミング調整するためのものであり、第2の多値変換部247と多値識別部212bとの間の遅延部248の代わりに、遅延部249が復調部211と多値識別部212bとの間に設置されている点が図28と異なる。図29において、遅延部249は、多値信号15に遅延を与え、多値信号15と多値符号列17とが多値識別部212bに入力されるタイミングを一致させる。なお、遅延部249の位置は、復調部211の前段であってもよい。
【0108】
以上の構成をとることにより、本実施形態のデータ伝送装置は、伝送路110とカオス伝送路148との経路長が異なり、第2のカオス信号82の発生タイミングが対応する多値信号15の受信タイミングに対して誤差が生じる場合においても、この誤差を打ち消し、適切なタイミングで識別を行うことができる。したがって、カオス伝送路148を伝送路110と異なる任意の経路に設定することにより、第1のカオス信号79が盗聴される可能性を低くすることができる。
【0109】
以上のように本実施形態によれば、伝送路とカオス伝送路の経路長差により生じる多値信号と多値符号列のタイミングの誤差を受信部の内部で打ち消すことができるため、カオス伝送路の経路を伝送路と異なる任意の経路に設定することが可能になり、盗聴の可能性を低くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明に係るデータ通信装置は、盗聴・傍受等を受けない安全な秘密通信装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施形態に係るデータ通信装置の伝送信号波形を説明する模式図
【図3】本発明の第1の実施形態に係るデータ通信装置の伝送信号波形の呼称を説明する模式図
【図4】本発明の第1の実施形態に係るデータ通信装置の伝送信号品質を説明する模式図
【図5】本発明の第2の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図
【図6】本発明の第3の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図
【図7】本発明の第4の実施形態に係るデータ通信装置の伝送信号パラメータを説明する模式図
【図8】本発明の第5の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図
【図9】第1のカオス信号発生部146の構成例を示すブロック図
【図10】第2のカオス信号発生部246の構成例を示すブロック図
【図11】第1のカオス信号発生部の別の構成例を示すブロック図
【図12】第2のカオス信号発生部の別の構成例を示すブロック図
【図13】第1の多値変換部147の構成例を示すブロック図
【図14】本発明の第5の実施形態における信号形態を説明する図
【図15】本発明の多値判定部1472における識別レベルの設定方法の一例を示す説明する図
【図16】本発明の第6の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図
【図17】第6の実施形態における第1の多値変換部147bの構成を示すブロック図
【図18】本発明の第6の実施形態における信号形態を説明する図
【図19】本発明の第7の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図
【図20】第1の多値変換部147cの構成例を示すブロック図
【図21】本発明の第7の実施形態における信号形態を説明する図
【図22】本発明の第8の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図
【図23】第1の多値変換部147dの構成例を示すブロック図
【図24】本発明の第8の実施形態における信号形態を説明する図
【図25】本発明の第9の実施形態に係るデータ通信装置の構成を示すブロック図
【図26】第1の多値変換部147eの構成を示すブロック図
【図27】本発明の第9の実施形態における信号形態を説明する図
【図28】本発明の第10の実施形態に係るデータ通信装置の構成例を示すブロック図
【図29】本発明の第10の実施形態に係るデータ通信装置の別の構成例を示すブロック図
【図30】従来のデータ通信装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0112】
10、18 情報データ
11、16 鍵情報
12、17 多値符号列
13、15 多値信号
19、20 反転情報データ
14 変調信号
22 雑音重畳多値信号
78、81 カオス鍵情報
79、82 カオス信号
80、83 多値化鍵情報
S11、S21 駆動電流制御信号
S12、S22 帰還制御信号
S13、S23 駆動電流
S14、S24 フィードバック信号
S15、S25 出力光
S16、S26 戻り光
S41 離散化カオス信号
S42 制御信号
S43 制御用乱数
S44 乱数信号
110 伝送路
111 多値符号化部
111a 第1の多値符号発生部
111b 多値処理部
112 変調部
113、213 データ反転部
114 雑音制御部
114a 雑音発生部
114b 合成部
146 第1のカオス信号発生部
147、147b〜147e 第1の多値変換部
148 カオス伝送路
1461、2461 駆動条件設定部
1462、2462 レーザ駆動部
1463、2463 半導体レーザ
1464、2464 光電変換部
1465、2465 帰還部
1471 多値判定制御部
1472 多値判定部
1473 ビット入替部
1474 ビット反転部
1475 制御用乱数発生部
1476 乱数信号発生部
1477 配列部
211 復調部
212 多値復号化部
212a 第2の多値符号発生部
212b 多値識別部
246 第2のカオス信号発生部
247、247b〜247e 第2の多値変換部
248〜249 遅延部
10101〜10103、22105〜22110 送信部
10201〜10202、22205〜22210 受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗号通信を行うデータ送信装置であって、
予め定められた所定の鍵情報と情報データとを入力し、信号レベルが略乱数的に変化する多値信号を発生する多値符号化部と、
前記多値信号に基づいて、所定の変調形式の変調信号を発生する変調部とを備えることを特徴とする、データ送信装置。
【請求項2】
前記多値符号化部は、
前記鍵情報から、信号レベルが略乱数的に変化する多値符号列を発生する多値符号発生部と、
所定の処理に従って、前記多値符号列と前記情報データとを合成し、両信号レベルの組み合わせに一意に対応したレベルを有する多値信号を生成する多値処理部とを備えることを特徴とする、請求項1に記載のデータ送信装置。
【請求項3】
前記多値符号発生部は、
所定の発生法則に基づいて雑音状信号を発生し、出力する雑音状信号発生部と、
前記所定の鍵情報に基づく所定の方法により、前記雑音状信号を多値符号列に変換する多値変換部とからなることを特徴とする、請求項2に記載のデータ送信装置。
【請求項4】
前記雑音状信号発生部は、所定のカオス鍵情報に基づきカオス信号を発生し、出力するカオス信号発生部であることを特徴とする、請求項3に記載のデータ送信装置。
【請求項5】
前記カオス信号発生部は、
光を出力する半導体レーザと、
半導体レーザに駆動電流を供給するレーザ駆動部と、
前記半導体レーザからの出力光を電気信号に変換し、カオス信号として出力する光電変換部と、
前記光電変換部から出力されるカオス信号の一部を分離し、所定の利得と遅延時間とを与え、前記レーザ駆動部が出力する駆動電流にフィードバックする帰還部と、
前記所定のカオス鍵情報に基づき、前記レーザ駆動部が出力する駆動電流と、前記帰還部における利得及び遅延時間とを制御する駆動条件設定部とからなることを特徴とする、請求項4に記載のデータ送信装置。
【請求項6】
前記カオス信号発生部は、
光を出力する半導体レーザと、
半導体レーザに駆動電流を供給するレーザ駆動部と、
前記半導体レーザからの出力光を電気信号に変換し、カオス信号として出力する光電変換部と、
前記半導体レーザからの出力光の一部を分離し、所定の利得と遅延時間とを与え、前記半導体レーザに再注入する帰還部と、
前記カオス鍵情報に基づき、前記レーザ駆動部が出力する駆動電流と、前記帰還部における利得及び遅延時間とを制御する駆動条件設定部とからなることを特徴とする、請求項4に記載のデータ送信装置。
【請求項7】
前記多値変換部から出力される多値符号列の各値の発生確率は、略均等であることを特徴とする、請求項3に記載のデータ送信装置。
【請求項8】
前記多値変換部は、
前記所定の鍵情報に基づき、所定の制御信号を出力する多値判定制御部と、
前記所定の制御信号で指定される識別レベルにより、前記雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し、多値符号列を出力する多値判定部とからなることを特徴とする、請求項3に記載のデータ送信装置。
【請求項9】
前記多値変換部は、
前記所定の鍵情報に基づき、所定の制御信号を出力する多値判定制御部と、
前記雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し、出力する多値判定部と、
前記多値判定部から出力される信号に対し、前記制御信号で指定される複数のビットの値を入れ替え、多値符号列として出力するビット入替部とからなることを特徴とする、請求項3に記載のデータ送信装置。
【請求項10】
前記多値変換部は、
前記所定の鍵情報に基づき、所定の制御信号を出力する多値判定制御部と、
前記雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し、出力する多値判定部と、
前記多値判定部から出力される信号に対し、前記制御信号で指定されるビットの値を反転し、多値符号列として出力するビット反転部とからなることを特徴とする、請求項3に記載のデータ送信装置。
【請求項11】
前記多値変換部は、
前記所定の鍵情報に基づき擬似乱数を発生させ、前記擬似乱数の値に基づく所定の方法により、前記雑音状信号を多値符号列に変換することを特徴とする、請求項3に記載のデータ送信装置。
【請求項12】
前記多値変換部は、
前記雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し、離散化雑音状信号として出力する多値判定部と、
前記所定の鍵情報に基づき、2値または多値の擬似乱数である乱数信号を発生し、出力する乱数信号発生部と、
前記離散化雑音状信号と前記乱数信号とから多値符号列を生成し、出力する配列部とからなり、
前記多値符号列は、前記離散化雑音状信号のビット数と、前記乱数信号のビット数との和に等しいビット数を有し、前記離散化雑音状信号の各ビットの値と、前記乱数信号の各ビットの値とを各ビットに配列した多値信号であることを特徴とする、請求項3に記載のデータ送信装置。
【請求項13】
暗号通信を行うデータ受信装置であって、
所定の変調形式の変調信号を復調し、多値信号を出力する復調部と、
予め定められた所定の鍵情報と前記多値信号とを入力し、情報データを出力する多値復号化部とを備えることを特徴とする、データ受信装置。
【請求項14】
前記多値復号化部は、
前記鍵情報から、信号レベルが略乱数的に変化する多値符号列を発生する多値符号発生部と、
前記多値符号列に基づいて前記多値信号を識別し、前記情報データを出力する多値識別部とを備えることを特徴とする、請求項13に記載のデータ受信装置。
【請求項15】
前記多値符号発生部は、
所定の発生法則に基づいて雑音状信号を発生し、出力する雑音状信号発生部と、
前記所定の鍵情報に基づく所定の方法により、前記雑音状信号を多値符号列に変換する多値変換部とからなることを特徴とする、請求項14に記載のデータ受信装置。
【請求項16】
前記雑音状信号発生部は、
前記変調信号とは別に受信した雑音状信号を再生し出力することを特徴とする、請求項15に記載のデータ受信装置。
【請求項17】
前記雑音状信号発生部は、所定のカオス鍵情報に基づきカオス信号を発生し、出力するカオス信号発生部であることを特徴とする、請求項15に記載のデータ受信装置。
【請求項18】
前記カオス信号発生部は、
光を出力する半導体レーザと、
前記変調信号とは別に受信した第1のカオス信号と所定のバイアス電流とを加算し、半導体レーザに駆動電流として供給するレーザ駆動部と、
前記半導体レーザからの出力光を電気信号に変換し、第2のカオス信号として出力する光電変換部と、
前記光電変換部からの出力の一部に所定の利得と遅延時間とを与え、前記レーザ駆動部が出力する駆動電流にフィードバックする帰還部と、
前記カオス鍵情報に基づき、前記レーザ駆動部が出力する駆動電流と、前記帰還部における利得及び遅延時間とを制御する駆動条件設定部とからなることを特徴とする、請求項17に記載のデータ受信装置。
【請求項19】
前記カオス信号発生部は、
前記変調信号と別に受信したカオス信号が光信号の状態で注入され、光を出力する半導体レーザと、
前記半導体レーザに駆動電流を供給するレーザ駆動部と、
前記半導体レーザからの出力光を電気信号に変換し、第2のカオス信号として出力する光電変換部と、
前記半導体レーザからの出力光の一部に所定の利得と遅延時間とを与え、前記半導体レーザに再注入する帰還部と、
前記カオス鍵情報に基づき、前記レーザ駆動部が出力する駆動電流と、前記帰還部における利得及び遅延時間とを制御する駆動条件設定部とからなることを特徴とする、請求項17に記載のデータ受信装置。
【請求項20】
前記多値変換部から出力される多値符号列の各値の発生確率は、略均等であることを特徴とする、請求項15に記載のデータ受信装置。
【請求項21】
前記多値変換部は、
前記所定の鍵情報に基づき、所定の制御信号を出力する多値判定制御部と、
前記所定の制御信号で指定される識別レベルにより、前記雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し、多値符号列を出力する多値判定部とからなることを特徴とする、請求項15に記載のデータ受信装置。
【請求項22】
前記多値変換部は、
前記所定の鍵情報に基づき、所定の制御信号を出力する多値判定制御部と、
前記雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し、出力する多値判定部と、
前記多値判定部から出力される信号に対し、制御信号で指定される複数のビットの値を入れ替え、多値符号列として出力するビット入替部とからなることを特徴とする、請求項15に記載のデータ受信装置。
【請求項23】
前記多値変換部は、
前記所定の鍵情報に基づき、所定の制御信号を出力する多値判定制御部と、
前記雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し、出力する多値判定部と、
前記多値判定部から出力される信号に対し、制御信号で指定されるビットの値を反転し、多値符号列として出力するビット反転部とからなることを特徴とする、請求項15に記載のデータ受信装置。
【請求項24】
前記多値変換部は、
前記所定の鍵情報に基づき擬似乱数を発生させ、前記擬似乱数の値に基づく所定の方法により、前記雑音状信号を多値符号列に変換することを特徴とする、請求項15に記載のデータ受信装置。
【請求項25】
前記多値変換部は、
前記雑音状信号発生部から出力される雑音状信号を多値識別し、離散化雑音状信号として出力する多値判定部と、
前記所定の鍵情報に基づき、2値または多値の擬似乱数である乱数信号を発生し、出力する乱数信号発生部と、
前記離散化雑音状信号と前記乱数信号とから多値符号列を生成し、出力する配列部とからなり、
前記多値符号列は、前記離散化雑音状信号のビット数と、前記乱数信号のビット数との和に等しいビット数を有し、前記離散化雑音状信号の各ビットの値と、前記乱数信号の各ビットの値とを各ビットに配列した多値信号であることを特徴とする、請求項15に記載のデータ受信装置。
【請求項26】
前記多値符号発生部の前段または後段もしくは内部に、入力される信号に遅延を与えて出力する遅延部を備えることを特徴とする、請求項15に記載のデータ受信装置。
【請求項27】
前記復調部の前段または後段に、入力される信号に遅延を与えて出力する遅延部を備えることを特徴とする、請求項15に記載のデータ受信装置。
【請求項28】
暗号通信を行うデータ通信装置であって、
予め定められた所定の第1の鍵情報と情報データとを入力し、信号レベルが略乱数的に変化する第1の多値信号を発生する多値符号化部と、
前記第1の多値信号に基づいて、所定の変調形式の変調信号を発生する変調部とからなるデータ送信装置と、
前記変調信号を復調し、第2の多値信号を出力する復調部と、
予め定められた所定の第2の鍵情報と前記第2の多値信号とを入力し、情報データを出力する多値復号化部とからなるデータ受信装置とを備えることを特徴とする、データ通信装置。
【請求項29】
前記多値符号化部は、
前記第1の鍵情報から、信号レベルが略乱数的に変化する多値符号列を発生する第1の多値符号発生部と、
所定の処理に従って、前記多値符号列と情報データとを合成し、両信号レベルの組み合わせに一意に対応したレベルを有する前記第1の多値信号に変換する多値処理部とからなり、
前記多値復号化部は、
前記第2の鍵情報から、信号レベルが略乱数的に変化する多値符号列を発生する第2の多値符号発生部と、
前記多値符号列に基づいて、前記第2の多値信号を識別し、情報データを出力する多値識別部とからなることを特徴とする、請求項28に記載のデータ通信装置。
【請求項30】
前記第1の多値符号発生部は、
所定の発生法則に基づいて第1の雑音状信号を発生し、出力する第1の雑音状信号発生部と、
前記第1の鍵情報に基づく所定の方法により、前記第1の雑音状信号を多値符号列に変換する第1の多値変換部とからなり、
前記第2の多値符号発生部は、
前記第1の雑音状信号と同じ発生法則を有する第2の雑音状信号を発生し、出力する第2の雑音状信号発生部と、
前記第2の鍵情報に基づく所定の方法により、前記第2の雑音状信号を多値符号列に変換する第2の多値変換部とからなることを特徴とする、請求項29に記載のデータ通信装置。
【請求項31】
前記第2の雑音状信号発生部は、
前記変調信号とは別に受信した雑音状信号を再生し出力することを特徴とする、請求項30に記載のデータ通信装置。
【請求項32】
前記第1の雑音状信号発生部は、所定の第1のカオス鍵情報に基づきカオス信号を発生、出力する第1のカオス信号発生部であり、
前記第2の雑音状信号発生部は、所定の第2のカオス鍵情報に基づきカオス信号を発生し出力する第2のカオス信号発生部であることを特徴とする、請求項30に記載のデータ通信装置。
【請求項33】
前記第1または第2のカオス信号発生部は、それぞれ、
光を出力する半導体レーザと、
前記半導体レーザに駆動電流を供給するレーザ駆動部と、
前記半導体レーザからの出力光を電気信号に変換し、第1または第2のカオス信号として出力する光電変換部と、
前記光電変換部からの出力の一部に所定の利得と遅延時間とを与え、前記レーザ駆動部が出力する駆動電流にフィードバックする帰還部と、
前記第1または第2のカオス鍵情報に基づき、前記レーザ駆動部が出力する駆動電流と、前記帰還部における利得及び遅延時間とを制御する駆動条件設定部とを備え、
第2のカオス信号発生部に含まれるレーザ駆動部には、前記第1のカオス信号が入力され、前記駆動電流に加算されることを特徴とする、請求項32に記載のデータ通信装置。
【請求項34】
前記第1及び第2のカオス信号発生部は、それぞれ、
光を出力する半導体レーザと、
前記半導体レーザに駆動電流を供給するレーザ駆動部と、
前記半導体レーザからの出力光を電気信号に変換し、第1または第2のカオス信号として出力する光電変換部と、
前記半導体レーザからの出力光の一部に所定の利得と遅延時間とを与え、前記半導体レーザに再注入する帰還部と、
前記第1または第2のカオス鍵情報に基づき、前記レーザ駆動部が出力する駆動電流と、前記帰還部における利得及び遅延時間とを制御する駆動条件設定部とを備え、
第2のカオス信号発生部に含まれる半導体レーザには、前記第1のカオス信号が光信号の状態で注入されることを特徴とする、請求項32に記載のデータ通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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