説明

トナーバインダーおよびトナー

【課題】 高温高湿度下でのトナーの耐ブロッキング性、低温定着性に優れるとともに、色再現性にも優れるポリエステル樹脂を含有するトナーバインダー、およびトナーを提供する。
【解決手段】 酸価が5〜60mgKOH/gかつ水酸基価が0〜50mgKOH/gである重縮合ポリエステル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、(A)のチタン元素含有量が5〜1000ppm、かつ(A)の1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度が5以下であることを特徴とするナーバインダー、およびそれを用いたトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる乾式トナー用として有用なトナーバインダー、およびそれを用いたトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
高温高湿度下でのトナーの耐ブロッキング性と低温定着性を両立させる目的で、特定のチタン触媒の存在下で形成された重縮合ポリエステル樹脂を含有するトナーバインダーを用いることが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、このトナーバインダーをカラー用として使用した場合、色再現性に劣る場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−284836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高温高湿度下でのトナーの耐ブロッキング性、低温定着性に優れるとともに、色再現性にも優れるポリエステル樹脂を含有するトナーバインダー、およびトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの問題点を解決するべく鋭意検討した結果、特定のチタン元素含有量を有し、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度が5以下である重縮合ポリエステル樹脂を含有するトナーバインダーを用いることで解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、下記3発明である。
(I) 酸価が5〜60mgKOH/gかつ水酸基価が0〜50mgKOH/gである重縮合ポリエステル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、(A)のチタン元素含有量が5〜1000ppm、かつ(A)の1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度が5以下であることを特徴とするトナーバインダー。
(II) ポリオール成分とポリカルボン酸成分とを、下記式(1)〜(4)をすべて満たす条件で重縮合反応して酸価が6mgKOH/g以下かつ水酸基価が10〜70mgKOH/gの重縮合ポリエステル樹脂(a)を製造し、さらに(a)に、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ならびにそれらの酸無水物および低級アルキル(炭素数1〜4)エステルからなる群から選ばれる1種以上のカルボン酸(b)を反応させるトナーバインダー用ポリエステル樹脂の製造方法。
0℃≦T1≦180℃ (1)
100℃≦T2≦180℃ (2)
100℃≦T3≦260℃ (3)
0kPa≦P≦15kPa (4)
[式中、T1は(a)の原料の混合温度、T2は減圧反応の開始温度、T3は減圧反応時の温度、Pは減圧反応時の系内の圧力である。]
(III) 上記(I)のトナーバインダーと着色剤(B)を含有するトナー。
【発明の効果】
【0006】
本発明の重縮合ポリエステル樹脂を含有するトナーバインダーを用いた本発明のトナーは、高温高湿度下における耐ブロッキング性と低温定着性が共に優れ、色再現性も良好である。また、環境上問題のあるスズ化合物を触媒として使用しない場合でも、良好な樹脂性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳述する。
本発明のトナーバインダーは、酸価が5〜60(mgKOH/g、以下の酸価も同様)かつ水酸基価が0〜50(mgKOH/g、以下の水酸基価も同様)である重縮合ポリエステル樹脂(A)を主成分として含有する。
(A)の酸価は、好ましくは7〜50であり、さらに好ましくは8〜48、とくに好ましくは10〜45、最も好ましくは13〜40である。(A)の水酸基価は、好ましくは5〜40であり、さらに好ましくは6〜35、とくに好ましくは10〜30である。(A)の酸価が5未満であると定着の強度が弱まり、酸価が60を超える、あるいは水酸基価が50を超えると環境条件の影響を受けやすくなり、安定性が悪化する。
本発明におけるポリエステル樹脂の酸価および水酸基価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定される。
なお、試料に架橋にともなう溶剤不溶解分がある場合は、以下の方法で溶融混練後のものを試料として用いる。
混練装置 : 東洋精機(株)製 ラボプラストミル MODEL4M150
混練条件 : 130℃、70rpmにて30分
【0008】
本発明において、色再現性の観点から、ポリエステル樹脂(A)のチタン元素含有量は5〜1000ppmであり、好ましくは20〜900ppm、さらに好ましくは40〜700ppmである。チタン元素含有量が1000ppmを超えると(A)の着色が大きくなり、トナーとしたときの色再現性が悪くなる。また、チタン元素含有量が5ppm未満であると、重縮合に要する時間が長くなることがある。
チタン元素含有量を上記範囲に調整する方法としては、(A)を得る際の重縮合反応時に1種以上のチタン含有触媒を用い、その使用量で調整する方法が好ましい。
上記樹脂中のチタン元素の分析は、原子吸光分析法やプラズマ発光分析法等、公知の金属分析方法を用いることにより測定できる。
【0009】
ポリエステル樹脂(A)の1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は5以下であり、好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。濁度が5を越えると画像光沢が低下し、結果として色再現性が悪くなる。
濁度は、積分球式光電光度法(JIS K0101−1998、9.4.積分球濁度 )で測定することができる。
濁度を小さくして上記範囲に調整する方法としては、濁度が5以下となる方法であれば、特に限定されない。例えば、(A)の重縮合反応条件として適切な条件を選択する〔例えば、後述するポリエステル樹脂(a)の製造条件〕方法、重縮合触媒として適切なものを選択する〔例えば、後述するチタン含有触媒(z)〕方法、(A)をテトラヒドロフラン、キシレンなどの有機溶剤に溶解し、ミクロフィルターでろ過後、(A)を含むろ液を脱溶剤して精製する方法等が挙げられる。これらの中では、(A)の重縮合反応条件として適切な条件を選択する方法と重縮合触媒として適切なものを選択する方法の組み合わせが好ましい。
【0010】
本発明においては、上記のように、重縮合反応時にチタン含有触媒を用いたポリエステル樹脂(A)を用いるのが好ましい。
チタン含有触媒としては特に限定されないが、好ましくは、チタンアルコキシド(チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド等)、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、および下記一般式(I)または(II)で表されるチタン含有触媒(z)であり、さらに好ましくは、シュウ酸チタン酸カリウム、および(z)であり、とくに好ましくは(z)である。
Ti(−X)m(−OH)n (I)
O=Ti(−X)p(−OR)q (II)
[式中、Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基であり、ポリアルカノールアミンの他のOH基が同一のTi原子に直接結合したOH基と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく、他のTi原子に直接結合したOH基と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2〜5である。RはH、または1〜3個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜8のアルキル基である。mは1〜4の整数、nは0〜3の整数、mとnの和は4である。pは1〜2の整数、qは0〜1の整数、pとqの和は2である。mまたはpが2以上の場合、それぞれのXは同一であっても異なっていてもよい。]
【0011】
一般式(I)および(II)において、Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のH原子を除いた残基であり、窒素原子の数、すなわち、1級、2級、および3級アミノ基の合計数は、通常1〜2個、好ましくは1個である。
上記モノアルカノールアミンとしては、エタノールアミン、およびプロパノールアミンなどが挙げられる。ポリアルカノールアミンとしては、ジアルカノールアミン(ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、およびN−ブチルジエタノールアミンなど)、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミン、およびトリプロパノールアミンなど)、およびテトラアルカノールアミン(N,N,N’,N’−テトラヒドロキシエチルエチレンジアミンなど)が挙げられる。
ポリアルカノールアミンの場合、Ti原子とTi−O−C結合を形成するのに用いられるHを除いた残基となるOH基以外にOH基が1個以上存在し、それが同一のTi原子に直接結合したOH基と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく、他のTi原子に直接結合したOH基と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2〜5である。重合度が6以上の場合、触媒活性が低下するためオリゴマー成分が増え、トナーのブロッキング性悪化の原因になる。
Xとして好ましいものは、モノアルカノールアミン(とくにエタノールアミン)、ジアルカノールアミン(とくにジエタノールアミン)の残基、およびトリアルカノールアミン(とくにトリエタノールアミン)の残基であり、特に好ましいものはトリエタノールアミンの残基である。
RはH、または1〜3個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜8のアルキル基である。炭素数1〜8のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、β−メトキシエチル基、およびβ−エトキシエチル基などが挙げられる。これらRのうち好ましくは、H、およびエーテル結合を含まない炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくは、H、エチル基、およびイソプロピル基である。
【0012】
式(I)中、mは1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。nは0〜3の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。mとnの和は4である。
式(II)中、pは1〜2の整数、qは0〜1の整数であり、pとqの和は2である。mまたはpが2以上の場合、複数存在するXは同一であっても異なっていてもよいが、すべて同一である方が好ましい。
【0013】
上記チタン含有触媒(z)のうち、一般式(I)で表されるものの具体例としては、チタニウムテトラキス(モノエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリヒドロキシトリエタノールアミネート、チタニウムジヒドロキシビス(ジエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(モノエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(モノプロパノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(N−メチルジエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(N−ブチルジエタノールアミネート)、テトラヒドロキシチタンとN,N,N’,N’−テトラヒドロキシエチルエチレンジアミンとの反応生成物、およびこれらの分子内または分子間重縮合物が挙げられる。
分子内または分子間重縮合物の例としては、下記一般式(I−1)、(I−2)、または(I−3)で表される少なくとも1種の化合物などが挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
[式中、Q1およびQ6はH、または炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。Q2〜Q5およびQ7〜Q9は炭素数1〜6のアルキレン基である。Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基である。]
一般式(II)で表されるものの具体例としては、チタニルビス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(ジエタノールアミネート)、チタニルビス(モノエタノールアミネート)、チタニルヒドロキシエタノールアミネート、チタニルヒドロキシトリエタノールアミネート、チタニルエトキシトリエタノールアミネート、チタニルイソプロポキシトリエタノールアミネート、およびこれらの分子内または分子間重縮合物が挙げられる。
分子内または分子間重縮合物の例としては、下記一般式(II−1)または(II−2)で表される少なくとも1種の化合物などが挙げられる。
【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

【0020】
[式中、Q1およびQ6はH、または炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。Q2〜Q5は炭素数1〜6のアルキレン基である。]
【0021】
これらのうちで好ましいものは、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(ジエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニウムテトラキス(エタノールアミネート)、チタニルヒドロキシトリエタノールアミネート、チタニルビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)の分子内もしくは分子間重縮合物〔下記(z1)および(z3)〕、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)の分子内重縮合物〔下記(z2)〕、およびこれらの併用であり、さらに好ましくは、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、それらの分子内重縮合物〔(z1)および(z2)〕、とくに(z1)である。
【0022】
【化6】

【0023】
【化7】

【0024】
【化8】

【0025】
これらのチタン含有触媒(z)は、例えば市販されているチタニウムジアルコキシビス(アルコールアミネート)(Dupont製など)を、水存在下で70〜90℃にて反応させることで安定的に得ることができる。また、重縮合物は、更に100℃にて縮合水を減圧留去することで得ることができる。
【0026】
チタン含有触媒の添加量は、重合活性および色再現性の観点から、得られる重合体の重量に対して、好ましくは0.005〜0.8重量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.75重量%、とくに好ましくは0.015〜0.7重量%である。上記触媒量とすることで、重合活性と透明性を両立できるので好ましい。
また、チタン含有触媒の触媒効果を損なわない範囲で他のエステル化触媒を併用することもできる。他のエステル化触媒の例としては、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、ゲルマニウム含有触媒、アルカリ(土類)金属触媒(例えばアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のカルボン酸塩:酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、および安息香酸カリウムなど)、および酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの他の触媒の添加量としては、得られる重合体に対して、0〜0.6重量%が好ましい。0.6重量%以内とすることで、ポリエステル樹脂の着色が少なくなり、カラー用のトナーに用いるのに好ましい。添加された全触媒中のチタン含有触媒の含有率は、50〜100重量%が好ましく、100重量%がさらに好ましい。
【0027】
ポリエステル樹脂(A)の製造方法としては、特に限定されず、1種以上のポリカルボン酸成分と1種以上のポリオール成分とを重縮合する方法であれば特に限定されない。例えば、ジカルボン酸、ジオール、および必要により3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを一括で投入して重縮合する方法でもよく、ジカルボン酸とジオールを主成分とするポリカルボン酸成分とポリオール成分とを先に重縮合した後に、3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを投入してさらに重縮合を行う方法でもよい。好ましくは後者である。
定着性の観点から、後者の方法で得られる樹脂の中でも、酸価が6mgKOH/g以下かつ水酸基価が10〜70mgKOH/gのポリエステル樹脂(a)と、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ならびにそれらの酸無水物および低級アルキル(炭素数1〜4)エステルからなる群から選ばれる1種以上のカルボン酸(b)が反応されてなるポリエステル樹脂(A1)を、(A)の少なくとも一部として含有することが好ましい。
ポリエステル樹脂(a)としては、1種以上のポリオール成分と、1種以上のポリカルボン酸成分を重縮合して得られるものが好ましい。
【0028】
ポリエステル樹脂(a)〔(A)全体としても同様〕を構成するポリオール成分のうち2価アルコール(ジオール)としては、炭素数2〜36の脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,7−ヘプタンジオールおよびドデカンジオール等);炭素数4〜36のポリアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等);上記炭素数2〜36の脂肪族ジオールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド(以下AOと略記する)〔エチレンオキシド(以下EOと略記する)、プロピレンオキシド(以下POと略記する)およびブチレンオキシド等〕付加物(付加モル数2〜30);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび水素添加ビスフェノールA等);上記脂環式ジオールの炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールS等)の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0029】
ポリオール成分のうち3〜8価またはそれ以上のポリオールとしては、炭素数3〜36の3〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコール(グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびソルビトール等);上記脂肪族多価アルコールの炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラックおよびクレゾールノボラック等:平均重合度3〜60)の炭素数2〜4のAO付加物(付加モル数2〜30)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
これらのポリオール成分の中で、(a)を構成するものとして好ましくは、炭素数2〜6の脂肪族ジオール、炭素数4〜36のポリアルキレンエーテルグリコール、炭素数6〜36の脂環式ジオール、炭素数6〜36の脂環式ジオールの炭素数2〜4のAO付加物、ビスフェノール類の炭素数2〜4のAO付加物、およびノボラック樹脂の炭素数2〜4のAO付加物であり、さらに好ましくビスフェノール類の炭素数2〜3のAO(EOおよび/またはPO)付加物、およびノボラック樹脂の炭素数2〜3のAO(EOおよび/またはPO)付加物である。
【0030】
ポリエステル樹脂(a)〔(A)全体としても同様〕を構成するポリカルボン酸成分のうち脂肪族(脂環式を含む)ジカルボン酸としては、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸、およびセバシン酸等)、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、およびグルタコン酸等)、などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸等)などが挙げられる。
【0031】
ポリカルボン酸成分のうち、3〜6価またはそれ以上の脂肪族(脂環式を含む)ポリカルボン酸としては、炭素数6〜36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)、不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(以下Mnと記載、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による):450〜10000](α−オレフィン/マレイン酸共重合体等)等が挙げられる。
ポリカルボン酸成分のうち、3〜6価またはそれ以上の芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、およびピロメリット酸等)、不飽和カルボン酸のビニル重合体[Mn:450〜10000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、およびスチレン/フマル酸共重合体等)等が挙げられる。
ポリカルボン酸成分として、これらのポリカルボン酸の、無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)を用いてもよい。
【0032】
これらのポリカルボン酸成分のうち、(a)を構成するものとして好ましいものは、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸、および炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸であり、さらに好ましくは、アジピン酸、炭素数16〜50のアルケニルコハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、およびこれらの併用であり、とくに好ましくは、アジピン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、およびこれらの併用である。これらの酸の無水物や低級アルキルエステルも、同様に好ましい。
【0033】
また、ポリカルボン酸成分としては、芳香族ポリカルボン酸、および必要により脂肪族ポリカルボン酸からなり、芳香族ポリカルボン酸を60モル%以上含有するものが好ましい。芳香族ポリカルボン酸の含有量は、さらに好ましくは70〜100モル%、とくに好ましくは80〜100モル%である。芳香族ポリカルボン酸が60モル%以上含有されていることで、樹脂強度が上がり、低温定着性がさらに向上する。
【0034】
ポリエステル樹脂(a)は、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、触媒(好ましくはチタン含有触媒)の存在下、通常のポリエステル製造法と同様にして製造することができるが、重合体の透明性の観点から、重縮合の反応条件は、下記式(1)〜(4)を満たすことが好ましく、下記式(1’)〜(4’)を満たすことがさらに好ましい。
0℃≦T1≦180℃ (1)
100℃≦T2≦180℃ (2)
100℃≦T3≦260℃ (3)
0kPa≦P≦15kPa (4)

0℃≦T1≦170℃ (1’)
100℃≦T2≦170℃ (2’)
100℃≦T3≦245℃ (3’)
0.1kPa≦P≦10kPa (4’)
[式中、T1は(a)の原料の混合温度、T2は減圧反応の開始温度、T3は減圧反応時の温度、Pは減圧反応時の系内の圧力である。]
すなわち、ポリオール成分、ポリカルボン酸成分、および触媒等の(a)の原料を0〜180℃で混合し、攪拌下、必要により昇温し、必要により常圧(大気圧)で反応させた後、100〜180℃で減圧開始し、必要によりさらに昇温して、100〜260℃で、0〜15kPaの減圧下、重縮合反応を完了させる。減圧反応時の最高温度は200〜260℃が好ましく、210〜245℃がさらに好ましい。また、減圧反応を開始する前に必要により行う、常圧下の100℃以上180℃以下での反応時間は5時間以下が好ましい。、
なお、表記圧力は絶対圧力であり、1kPa=7.5mmHgである。また、減圧反応時の系内の圧力とは、反応系内を減圧開始直後の常圧から所望の圧力まで達するまでの圧力等を除いた、減圧反応時間の90%以上の時間における圧力を意味する。
【0035】
T1が式(1)の範囲であると、原料混合時に重縮合反応の進行がないため、縮合水が発生せず、触媒が失活しにくく好ましい。また、T2が式(2)を満たし、T3が式(3)を満たし、かつPが式(4)を満たす、すなわち、重縮合反応のすべてもしくは大部分を、特定の温度範囲かつ特定の減圧条件下で行うことで、触媒の失活が少なく、また、得られるポリエステル樹脂の触媒由来の不溶解分や着色が大幅に改善されるので好ましい。
【0036】
ポリエステル樹脂(a)を得る際の、ポリオール成分とポリカルボン酸成分との反応比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは1.4/1〜1/1、さらに好ましくは1.35/1〜1.1/1、とくに好ましくは1.35/1〜1.2/1である。なお、上記反応比率は、反応中に系外へ除去される成分があるときは、その分を除外した比率である。
【0037】
ポリエステル樹脂(a)は、酸価が6以下かつ水酸基価が10〜70である。酸価は、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下であり、水酸基価は、好ましくは15〜65、さらに好ましくは20〜60である。酸価が6以下、あるいは水酸基価が70以下であると、ポリエステル樹脂(a)の重縮合が十分行われ、低分子量成分が少ないくなる。また水酸基価が10以上であると、カルボン酸(b)との反応効率が良好である。
ポリエステル樹脂(a)の酸価、水酸基価をこれらの範囲とするには、ポリオール成分とポリカルボン酸成分との反応比率で調整するのが有効である。
【0038】
ポリエステル樹脂(a)の分子量は、ピークトップ分子量(以下Mpと記載)が2000〜10000であることが好ましく、Mpが3000〜8000であることがさらに好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂の分子量〔Mp、Mn、および重量平均分子量(以下Mwと記載)〕は、GPCを用いて以下の条件で測定される。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF(テトラヒドロフラン)溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点 (分子量 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000 4480000)
得られたクロマトグラム上最大のピーク高さを示す分子量をピークトップ分子量(Mp)と称する。また、ポリエステル樹脂をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とした。
【0039】
ポリエステル樹脂(A1)は、ポリエステル樹脂(a)と、カルボン酸(b)を、反応時の混合比が、(a)に由来する水酸基の当量をOHa、(b)に由来するカルボキシル基の当量をCOOHbとするとき、OHa/COOHb=0.1〜1.0の当量比で反応させて得られるものが好ましい。OHa/COOHbは、さらに好ましくは0.2〜0.9であり、とくに好ましくは0.3〜0.8である。OHa/COOHbが0.1以上であると分子量が十分大きくなり、トナー化時の耐ホットオフセット性が向上する。1.0以下であると樹脂の流動性が良好となり、トナー化時の低温定着性、光沢発現性が向上する。
【0040】
カルボン酸(b)としては、モノカルボン酸、ポリカルボン酸のいずれも使用可能であるが、モノカルボン酸とポリカルボン酸の比率は、反応に使用するカルボン酸の全カルボキシル基の当量を100とするとき、モノカルボン酸由来のカルボキシル基とポリカルボン酸由来のカルボキシル基の当量比が、(0〜50)/(50〜100)が好ましく、(0〜20)/(80〜100)がさらに好ましい。モノカルボン酸由来のカルボキシルの比率が50以下であると架橋が不足せず、樹脂の強度が十分に得られる。また、反応生成物の酸価を所定範囲に調整しやすい。
【0041】
カルボン酸(b)として用いるモノカルボン酸のうち、脂肪族(脂環式を含む)モノカルボン酸としては、炭素数1〜50のアルカンモノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸等)、炭素数3〜50のアルケンモノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸等)などが挙げられる。
芳香族モノカルボン酸としては、炭素数7〜36の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、メチル安息香酸、フェニルプロピオン酸、およびナフトエ酸等)などが挙げられる。
【0042】
(b)として用いるポリカルボン酸のうち、脂肪族(脂環式を含む)ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3〜6価またはそれ以上の脂肪族(脂環式を含む)ポリカルボン酸、および3〜6価またはそれ以上の芳香族ポリカルボン酸としては、前記ポリエステル樹脂(a)に用いるものと同様のものが挙げられる。
これらの中で、2価以上の芳香族カルボン酸が好ましく、3〜6価またはそれ以上の芳香族ポリカルボン酸がさらに好ましく、トリメリット酸、および無水トリメリット酸がとくに好ましい。
【0043】
ポリエステル樹脂(A1)を構成するカルボン酸成分中の3〜6価またはそれ以上の芳香族ポリカルボン酸の含有量は、好ましくは1〜30モル%、さらに好ましくは1〜20モル%である。30モル%以下であると、樹脂の流動性が良好で、トナー化時の低温定着性が向上する。
【0044】
ポリエステル樹脂(A1)は、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、触媒(好ましくはチタン含有触媒)の存在下、通常のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。
【0045】
ポリエステル樹脂(A1)の軟化点は、120〜180℃であり、好ましくは122〜170℃である。(A1)の軟化点が120〜180℃であると、トナー化時の耐ホットオフセット性が良好である。
なお、フローテスターを用いて下記条件で等速昇温し、その流出量が1/2になる温度をもって軟化点とした。
装置 : 島津(株)製 フローテスター CFT−500
荷重 : 20kg
ダイ : 1mmΦ−1mm
昇温速度 : 6℃/min.
【0046】
(A1)のTHF不溶解分と軟化点は、次式(5)の関係を満たすことが好ましい。
THF不溶解分(重量%)/軟化点(℃)≦0.2 ・・・式(5)
THF不溶解分/軟化点が0.2以下であると、低温定着性と耐ホットオフセット性が両立でき、また光沢度発現温度や定着温度域における光沢度が良好である。THF不溶解分/軟化点は、好ましくは0.01〜0.19である。
尚、式(5)を満たすポリエステル樹脂(A1)を製造するためには、(a)の水酸基価を10〜70とし、かつ(a)と(b)の反応比率を調整することで達成できる。
【0047】
ポリエステル樹脂(A1)の酸価は、好ましくは15〜80であり、さらに好ましくは18〜60である。また水酸基価は、好ましくは40以下であり、さらに好ましくは25以下である。
酸価が15以上であると定着の強度が十分である。また水酸基価が40以下である、あるいは酸価が80以下であると、環境条件の影響を受けにくく、安定性が良好なので好ましい。
(A1)の酸価と水酸基価の比は、特に限定されないが、好ましくは次式(6)の関係を満たす場合である。
酸価/水酸基価≧1(好ましくは、酸価=15〜80) ・・・式(6)
酸価/水酸基価が1以上であると、光沢度発現温度や定着温度域における光沢度が良好である。酸価/水酸基価は、さらに好ましくは2以上である。尚、式(6)を満たすポリエステル樹脂(A1)を製造するためには、ポリエステル樹脂(a)とカルボン酸(b)との反応比率を調整することにより達成できる。
【0048】
ポリエステル樹脂(A1)のTHF不溶解分は、好ましくは1〜36重量%であり、さらに好ましくは2〜33重量%である。THF不溶解分が1重量%以上であると耐ホットオフセット性が良好であり、36重量%以下であると低温定着性が良好である。
【0049】
上記および以下においてポリエステル樹脂のTHF不溶解分は、以下の方法で求めたものである。
試料0.5gに50mlのTHFを加え、3時間撹拌還流させる。冷却後、グラスフィルターにて不溶解分をろ別し、グラスフィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧乾燥する。グラスフィルター上の乾燥した樹脂分の重量と試料の重量比から、不溶解分を算出する。
【0050】
ポリエステル樹脂(A1)の分子量は、Mpが5000〜20000であることが好ましく、5500〜15000であることがさらに好ましい。Mwは30000〜300000であることが好ましく、40000〜250000であることがさらに好ましい。また、分子量分布を示すMwとMnの比(以下Mw/Mnと記載)は、15〜100であることが好ましく、20〜90であることがさらに好ましい。
Mp、Mw、およびMw/Mnが上記範囲内であると、耐ホットオフセット性と低温定着性のバランスが良好である。
【0051】
ポリエステル樹脂(A1)のチタン元素含有量は、ポリエステル樹脂(A)全体としてのチタン元素含有量が前記範囲となる量であれよいが、好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは5〜1000ppm、とくに好ましくは20〜900ppmである。
また、(A1)の1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は、ポリエステル樹脂(A)全体としての濁度が前記範囲となればよいが、好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
【0052】
本発明に用いる重縮合ポリエステル樹脂(A)としては、ポリエステル樹脂(A1)と共に、軟化点が70℃〜120℃未満のポリエステル樹脂(A2)を含有するものも好ましい。ポリエステル樹脂(A2)は、通常、1種以上の前記ポリオール成分と、1種以上の前記ポリカルボン酸成分を重縮合して得られる。
【0053】
(A2)を構成するポリオール成分中好ましいものは、前記の炭素数2〜6の脂肪族ジオール、炭素数4〜36のポリアルキレンエーテルグリコール、炭素数6〜36の脂環式ジオール、炭素数6〜36の脂環式ジオールの炭素数2〜4のAO付加物、ビスフェノール類の炭素数2〜4のAO付加物、およびノボラック樹脂の炭素数2〜4のAO付加物であり、さらに好ましくは、炭素数2〜6の脂肪族ジオール、ビスフェノール類の炭素数2〜3のAO(EOおよびPO)付加物、およびノボラック樹脂の炭素数2〜3のAO(EOおよびPO)付加物である。
ポリカルボン酸成分のうち好ましいものは、前記ポリエステル樹脂(a)に用いるポリカルボン酸と同様である。
【0054】
ポリエステル樹脂(A2)の軟化点は70℃〜120℃未満であり、好ましくは75〜110℃である。
(A2)の酸価は、5〜80が好ましく、8〜50がさらに好ましく、10〜30がとくに好ましい。
また水酸基価は、60以下が好ましく、50以下がさらに好ましく、5〜45がとくに好ましい。
(A2)の分子量は、Mpが3000〜10000であることが好ましく、Mpが3500〜9000であることがさらに好ましい。
【0055】
ポリエステル樹脂(A2)のチタン元素含有量は、ポリエステル樹脂(A)全体としてのチタン元素含有量が前記範囲となる量であれよいが、好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは5〜1000ppm、とくに好ましくは20〜900ppmである。
また、(A2)の1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は、ポリエステル樹脂(A)全体としての濁度が前記範囲となればよいが、好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
【0056】
ポリエステル樹脂(A2)は、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、触媒(好ましくはチタン含有触媒)の存在下、通常のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。
(A2)の製造方法としては、(A1)と同様の製造方法であることが好ましく、第1段階のポリオール成分とポリカルボン酸成分の反応条件が、ポリエステル樹脂(a)と同様に、式(1)〜(4)を満たすことがさらに好ましい。
また、第1段階のポリオール成分とポリカルボン酸成分の反応におけるポリオール成分とポリカルボン酸成分との反応比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/1、さらに好ましくは1.7/1〜1/1、とくに好ましくは1.5/1〜1/1である。
【0057】
本発明のトナーバインダー中のポリエステル樹脂(A)としては、ポリエステル樹脂(A1)単独でも優れた定着性を示すが、ポリエステル樹脂(A1)と共に上記ポリエステル樹脂(A2)を含有することでさらに優れた定着性が得られる。この時、(A1)と(A2)の重量比は、(A1)と(A2)の合計を100としたとき、(20〜100)/(0〜80)が好ましく、(30〜99)/(1〜70)がさらに好ましく、(40〜90)/(10〜60)がとくに好ましい。ポリエステル樹脂(A1)の比率が、20以上であると樹脂強度が上昇し、高温域での定着性が良好である。
【0058】
本発明のトナーバインダーは、ポリエステル樹脂(A1)のみ、またはポリエステル樹脂(A1)とポリエステル樹脂(A2)のみからなることが好ましいが、本発明のトナーバインダーの特性を損なわない範囲で、(A1)と(A2)以外の他の樹脂を含有してもよい。他の樹脂としては、(A1)、(A2)以外のポリエステル樹脂、ビニル系樹脂[スチレンとアルキル(メタ)アクリレートの共重合体、スチレンとジエン系モノマーとの共重合体等]、エポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル開環重合物等)、ウレタン樹脂(ジオールおよび/または3価以上のポリオールとジイソシアネートの重付加物等)などが挙げられる。
他の樹脂のMnは、300〜10万が好ましい。
トナーバインダー中の他の樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、とくに好ましくは0重量%である。
【0059】
ポリエステル樹脂を2種以上併用する場合、および少なくとも1種のポリエステル樹脂と他の樹脂を混合する場合、予め粉体混合または溶融混合してもよいし、トナー化時に混合してもよい。
溶融混合する場合の温度は、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは100〜170℃、とくに好ましくは120〜160℃である。
混合温度が低すぎると充分に混合できず、不均一となることがある。2種以上のポリエステル樹脂を混合する場合、混合温度が高すぎると、エステル交換反応による平均化などが起こるため、トナーバインダーとして必要な樹脂物性が維持できなくなる場合がある。
【0060】
溶融混合する場合の混合時間は、好ましくは10秒〜30分、さらに好ましくは20秒〜10分、とくに好ましくは30秒〜5分である。2種以上のポリエステル樹脂を混合する場合、混合時間が長すぎると、エステル交換反応による平均化などが起こるため、トナーバインダーとして必要な樹脂物性が維持できなくなる場合がある。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽などのバッチ式混合装置、および連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続式混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダー、3本ロールなどが挙げられる。これらのうちエクストルーダーおよびコンティニアスニーダーが好ましい。
粉体混合する場合は、通常の混合条件および混合装置で混合することができる。
粉体混合する場合の混合条件としては、混合温度は、好ましくは0〜80℃、さらに好ましくは10〜60℃である。混合時間は、好ましくは3分以上、さらに好ましくは5〜60分である。混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、およびバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
【0061】
本発明のトナーは、バインダー樹脂となる本発明の重縮合ポリエステル樹脂(A)を含有するトナーバインダーと、着色剤(B)、および必要により、離型剤(C)、荷電制御剤(D)、流動化剤(E)等の1種以上の添加剤を含有する。
【0062】
着色剤(B)としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンBおよびオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100部に対して、好ましくは1〜40部、さらに好ましくは3〜10部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150部、さらに好ましくは40〜120部である。上記および以下において、部は重量部を意味する。
【0063】
離型剤(C)としては、軟化点が50〜170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、天然ワックス、炭素数30〜50の脂肪族アルコール、炭素数30〜50の脂肪酸およびこれらの混合物等が挙げられる。ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるものおよび熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素および/またはオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸およびその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸および無水マレイン酸等]および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステルおよびマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体、およびサゾールワックス等が挙げられる。
【0064】
天然ワックスとしては、例えばカルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックスおよびライスワックスが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪族アルコールとしては、例えばトリアコンタノールが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪酸としては、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
【0065】
荷電制御剤(D)としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
【0066】
流動化剤(E)としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末等が挙げられる。
【0067】
本発明のトナーの組成比は、トナー重量に基づき、本発明のトナーバインダーが、好ましくは30〜97重量%、さらに好ましくは40〜95重量%、とくに好ましくは45〜92重量%;着色剤が、好ましくは0.05〜60重量%、さらに好ましくは0.1〜55重量%、とくに好ましくは0.5〜50重量%;添加剤のうち、離型剤が、好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%、とくに好ましくは1〜1重量%;荷電制御剤が、好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%、とくに好ましくは0.5〜7.5重量%;流動化剤が、好ましくは0〜1重量%、さらに好ましくは0〜5重量%、とくに好ましくは0.1〜4重量%である。また、添加剤の合計含有量は、好ましくは3〜70重量%、さらに好ましくは4〜58重量%、とくに好ましくは5〜50重量%である。トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
【0068】
本発明のトナーは、混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、さらに分級することにより、体積平均粒径(D50)が好ましくは5〜20μmの微粒子とした後、流動化剤を混合して製造することができる。なお、粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解または分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
【0069】
本発明のトナーは、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイトおよび樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリアー粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。トナーとキャリアー粒子との重量比は、通常1/99〜100/0である。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
【0070】
本発明のトナーは、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる。
【実施例】
【0071】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、ポリエステル樹脂のチタン元素含有量はプラズマ発光分光法で、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は前記積分球式光電光度法で測定した。
【0072】
製造例1
[チタン含有触媒の合成]
冷却管、撹拌機及び液中バブリング可能な窒素導入管の付いた反応槽中に、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)1617部とイオン交換水126部を入れ、窒素にて液中バブリング下、90℃まで徐々に昇温し、90℃で4時間反応(加水分解)させることで、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)を得た。さらに、100℃にて、2時間減圧下で反応(脱水縮合)させることで、その分子内重縮合物(z1)を得た。
また、同様にして、チタニウムジヒドロキシビス(ジエタノールアミネート)(z4)を得た。
【0073】
実施例1
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物41部(0.13モル)、ビスフェノールA・PO3モル付加物457部(1.14モル)、フェノールノボラック樹脂(平均官能基数5.6)のPO6モル付加物9部(0.01モル)、テレフタル酸166部(1.0モル)、および縮合触媒としてチタン含有触媒(z−1)3部を入れ、120℃に温調し1時間攪拌混合した。攪拌しながら225℃まで、5時間かけて昇温し、170℃になったところで減圧を開始した。その後、225℃、4〜9kPaの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(a−1)とする。
ポリエステル樹脂(a−1)の酸価は2、水酸基価は46、Mnは2500、Mpは5500であった。
【0074】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(a−1)622部、無水トリメリット酸41部(0.21モル)、および触媒としてチタン含有触媒(z1)2部を入れ、系内の気相を窒素置換したのち、180℃で常圧密閉下2時間反応後、昇温し200℃で、4〜9kPaの減圧下に反応させ、軟化点が135℃になった時点でベルトクーラーを通して取り出し、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A1−1)とする。
ポリエステル樹脂(A1−1)の酸価は20、水酸基価は10、軟化点は135℃、Mwは120000、Mpは10000、THF不溶解分は6重量%、チタン元素含有量は600ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は4.0であった。
【0075】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物379部(1.2モル)、ビスフェノールA・PO2モル付加物447部(1.3モル)、テレフタル酸332部(2.0モル)および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)5部を入れ、140℃に温調し1時間攪拌混合した。攪拌しながら230℃まで、5時間かけて昇温し、150℃になったところで減圧を開始した。その後、230℃、4〜9kPaの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で180℃に冷却し、無水トリメリット酸40部(0.21モル)を加え、常圧密閉下2時間反応後取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A2−1)とする。
ポリエステル樹脂(A2−1)の酸価は21、水酸基価は37、軟化点は95℃、Mnは2000、Mpは4200、THF不溶解分は0重量%、チタン元素含有量は600ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は2.0であった。
【0076】
ポリエステル樹脂(A1−1)700部とポリエステル樹脂(A2−1)300部を、コンティニアスニーダーにて、ジャケット温度150℃、滞留時間3分で溶融混合した。溶融樹脂を室温まで冷却後、粉砕機にて粉砕し、粒子化して重縮合ポリエステル樹脂(A−1)を得た。(A−1)の酸価は20、水酸基価は18、チタン元素含有量は600ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は3.0であった。
【0077】
実施例2
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物37部(0.11モル)、ビスフェノールA・PO3モル付加物407部(1.01モル)、フェノールノボラック樹脂(平均官能基数5.6)のPO6モル付加物22部(0.03モル)、テレフタル酸166部(1.0モル)、および縮合触媒としてチタン含有触媒(z4)0.3部を入れ、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂(a−2)を得た。
ポリエステル樹脂(a−2)の酸価は2、水酸基価は38、Mnは3000、Mpは5800であった。
【0078】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(a−2)596部、無水トリメリット酸31部(0.1モル)、および触媒としてチタン含有触媒(z4)0.2部を入れ、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂(A1−2)を得た。
ポリエステル樹脂(A1−2)の酸価は30、水酸基価は12、軟化点は135℃、Mwは70000、Mpは7600、THF不溶解分は20重量%、チタン元素含有量は65ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は1.5であった。
【0079】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物392部(1.2モル)、ビスフェノールA・PO2モル付加物452部(1.3モル)、テレフタル酸332部(2.0モル)および縮合触媒としてチタン含有触媒(z4)0.5部を入れ、120℃に温調し1時間攪拌混合した。攪拌しながら230℃まで、5時間かけて昇温し、170℃になったところで減圧を開始した。その後、230℃、4〜9kPaの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で180℃に冷却し、無水トリメリット酸129部(0.67モル)を加え、常圧密閉下2時間反応後取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A2−2)とする。
ポリエステル樹脂(A2−2)の酸価は60、水酸基価は21、軟化点は97℃、Mnは2000、Mpは4200、THF不溶解分は0重量%、チタン元素含有量は60ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は0.3であった。
【0080】
ポリエステル樹脂(A1−2)700部とポリエステル樹脂(A2−2)300部を、コンティニアスニーダーにて、ジャケット温度150℃、滞留時間3分で溶融混合した。溶融樹脂を室温まで冷却後、粉砕機にて粉砕し、粒子化して重縮合ポリエステル樹脂(A−2)を得た。(A−2)の酸価は39、水酸基価は15、チタン元素含有量は60ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は1.2であった。
【0081】
実施例3
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物392部(1.2モル)、ビスフェノールA・PO2モル付加物452部(1.3モル)、テレフタル酸332部(2.0モル)および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)1部を入れ、130℃に温調し1時間攪拌混合した。攪拌しながら210℃まで、5時間かけて昇温し、180℃になったところで減圧を開始した。その後、210℃、4〜9kPaの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A2−3)とする。
ポリエステル樹脂(A2−3)の酸価は1、水酸基価は51、軟化点は93℃、Mnは1800、Mpは4000、THF不溶解分は0重量%、チタン元素含有量は110ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は0.9であった。
【0082】
ポリエステル樹脂(A1−1)500部とポリエステル樹脂(A2−3)500部を、コンティニアスニーダーにて、ジャケット温度150℃、滞留時間3分で溶融混合した。溶融樹脂を室温まで冷却後、粉砕機にて粉砕し、粒子化して重縮合ポリエステル樹脂(A−3)を得た。(A−3)の酸価は13、水酸基価は23、チタン元素含有量は310ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は2.3であった。
【0083】
実施例4
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物41部(0.13モル)、ビスフェノールA・PO3モル付加物457部(1.14モル)、フェノールノボラック樹脂(平均官能基数5.6)のPO6モル付加物9部(0.01モル)、テレフタル酸166部(1.0モル)、および縮合触媒としてシュウ酸チタン酸カリウム3部を入れ、120℃に温調し1時間攪拌混合した。攪拌しながら235℃まで、5時間かけて昇温し、150℃になったところで減圧を開始した。その後、235℃、1〜5kPaの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(a−3)とする。
ポリエステル樹脂(a−3)の酸価は2、水酸基価は46、Mnは2500、Mpは5500であった。
【0084】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(a−3)622部、無水トリメリット酸41部(0.21モル)、および触媒としてシュウ酸チタン酸カリウム2部を入れ、系内の気相を窒素置換したのち、180℃で常圧密閉下2時間反応後、昇温し200℃で、4〜9kPaの減圧下に反応させ、軟化点が135℃になった時点でベルトクーラーを通して取り出し、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A1−3)とする。
ポリエステル樹脂(A1−3)の酸価は21、水酸基価は9、軟化点は135℃、Mwは118000、Mpは9000、THF不溶解分は7重量%、チタン元素含有量は570ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は2.9であった。
【0085】
ポリエステル樹脂(A1−3)700部とポリエステル樹脂(A2−1)300部を、コンティニアスニーダーにて、ジャケット温度150℃、滞留時間3分で溶融混合した。溶融樹脂を室温まで冷却後、粉砕機にて粉砕し、粒子化して重縮合ポリエステル樹脂(A−4)を得た。(A−4)の酸価は21、水酸基価は18、チタン元素含有量は560ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は2.7であった。
【0086】
実施例5
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物38部(0.12モル)、ビスフェノールA・PO3モル付加物421部(1.05モル)、フェノールノボラック樹脂(平均官能基数5.6)のPO6モル付加物22部(0.03モル)、テレフタル酸166部(1.0モル)、および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)0.07部を入れ、50℃に温調し1時間攪拌混合した。攪拌しながら245℃まで、5時間かけて昇温し、110℃になったところで減圧を開始した。その後、245℃、1〜5kPaの減圧下に反応させ、酸価が4以下になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(a−4)とする。
ポリエステル樹脂(a−4)の酸価は4、水酸基価は57、Mnは1800、Mpは4900であった。
【0087】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(a−4)606部、無水トリメリット酸56部(0.29モル)を入れ、系内の気相を窒素置換したのち、180℃で常圧密閉下2時間反応後、昇温し200℃で、4〜9kPaの減圧下に反応させ、軟化点が155℃になった時点でベルトクーラーを通して取り出し、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A1−4)とする。
ポリエステル樹脂(A1−4)の酸価は43、水酸基価は1、軟化点は155℃、Mwは92000、Mpは8100、THF不溶解分は10重量%であった。
【0088】
ポリエステル樹脂(A1−4)700部とポリエステル樹脂(A2−2)300部を、コンティニアスニーダーにて、ジャケット温度150℃、滞留時間3分で溶融混合した。溶融樹脂を室温まで冷却後、粉砕機にて粉砕し、粒子化して重縮合ポリエステル樹脂(A−5)を得た。(A−5)の酸価は48、水酸基価は7、チタン元素含有量は25ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は1.0であった。
【0089】
実施例6
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物38部(0.12モル)、ビスフェノールA・PO3モル付加物421部(1.05モル)、フェノールノボラック樹脂(平均官能基数5.6)のPO6モル付加物22部(0.03モル)、テレフタル酸166部(1.0モル)、および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)0.14部を入れ、60℃に温調し1時間攪拌混合した。攪拌しながら220℃まで、5時間かけて昇温し、130℃になったところで減圧を開始した。その後、220℃、1〜5kPaの減圧下に反応させ、酸価が5以下になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(a−5)とする。
ポリエステル樹脂(a−5)の酸価は4、水酸基価は53、Mnは2200、Mpは5100であった。
【0090】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(a−5)606部、無水トリメリット酸68部(0.35モル)を入れ、系内の気相を窒素置換したのち、180℃で常圧密閉下2時間反応後、昇温し200℃で、4〜9kPaの減圧下に反応させ、軟化点が125℃になった時点でベルトクーラーを通して取り出し、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A1−5)とする。
ポリエステル樹脂(A1−5)の酸価は41、水酸基価は7、軟化点は125℃、Mwは65000、Mpは7000、THF不溶解分は3重量%であった。
【0091】
ポリエステル樹脂(A1−5)700部とポリエステル樹脂(A2−2)300部を、コンティニアスニーダーにて、ジャケット温度150℃、滞留時間3分で溶融混合した。溶融樹脂を室温まで冷却後、粉砕機にて粉砕し、粒子化して重縮合ポリエステル樹脂(A−6)を得た。(A−6)の酸価は47、水酸基価は11、チタン元素含有量は35ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は0.5であった。
【0092】
比較例1
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物41部(0.13モル)、ビスフェノールA・PO3モル付加物457部(1.14モル)、フェノールノボラック樹脂(平均官能基数5.6)のPO6モル付加物9部(0.01モル)、テレフタル酸166部(1.0モル)、および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)8部を入れ、120℃に温調し1時間攪拌混合した。攪拌しながら230℃まで、5時間かけて昇温し、170℃になったところで減圧を開始した。その後、230℃、4〜9kPaの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(a’−1)とする。
ポリエステル樹脂(a’−1)の酸価は2、水酸基価は45、Mnは2600、Mpは5600であった。
【0093】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(a’−1)622部、無水トリメリット酸41部(0.21モル)、および触媒としてチタン含有触媒(z1)2部を入れ、系内の気相を窒素置換したのち、180℃で常圧密閉下2時間反応後、昇温し200℃で、4〜9kPaの減圧下に反応させ、軟化点が135℃になった時点でベルトクーラーを通して取り出し、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A1’−1)とする。
ポリエステル樹脂(A1’−1)の酸価は19、水酸基価は11、Mwは90000、Mpは8500、THF不溶解分は9重量%、チタン元素含有量は1300ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は5.2であった。
【0094】
ポリエステル樹脂(A1’−1)700部とポリエステル樹脂(A2−1)300部を、コンティニアスニーダーにて、ジャケット温度150℃、滞留時間3分で溶融混合した。溶融樹脂を室温まで冷却後、粉砕機にて粉砕し、粒子化して重縮合ポリエステル樹脂(A’−1)を得た。(A’−1)の酸価は19、水酸基価は18、チタン元素含有量は1100ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は4.0であった。
【0095】
比較例2
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物41部(0.13モル)、ビスフェノールA・PO3モル付加物457部(1.14モル)、フェノールノボラック樹脂(平均官能基数5.6)のPO6モル付加物9部(0.01モル)、テレフタル酸166部(1.0モル)、および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)2部を入れ、常圧下攪拌しながら昇温し、生成する縮合水を除去しながら、常圧下230℃で5時間反応させた。次に(z1)1部を追加し、液面上昇に注意しながら減圧し、4〜9kPaの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(a’−2)とする。
ポリエステル樹脂(a’−2)の酸価は3、水酸基価は48、Mnは2400、Mpは5300であった。
【0096】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ポリエステル樹脂(a’−2)622部、無水トリメリット酸41部(0.21モル)、および触媒としてチタン含有触媒(z1)2部を入れ、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(A1’−2)を得た。
ポリエステル樹脂(A1’−2)の酸価は20、水酸基価は11、Mwは115000、Mpは11000、THF不溶解分は6重量%、チタン元素含有量は530ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は9.6であった。
【0097】
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物379部(1.2モル)、ビスフェノールA・PO2モル付加物447部(1.3モル)、テレフタル酸332部(2.0モル)および縮合触媒としてチタン含有触媒(z1)5部を入れ、常圧下攪拌しながら昇温し、生成する縮合水を除去しながら、常圧下230℃で5時間反応させた。次に(z1)1部を追加し、液面上昇に注意しながら減圧し、4〜9kPaの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で180℃に冷却した。次に、無水トリメリット酸40部(0.21モル)を加え、常圧密閉下2時間反応後取り出し、室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これをポリエステル樹脂(A2’−1)とする。
ポリエステル樹脂(A2’−1)の酸価は20、水酸基価は38、軟化点は95℃、Mnは2000、Mpは4100、THF不溶解分は0重量%、チタン元素含有量は630ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は5.0であった。
【0098】
ポリエステル樹脂(A1’−2)700部とポリエステル樹脂(A2’−1)300部を、コンティニアスニーダーにて、ジャケット温度150℃、滞留時間3分で溶融混合した。溶融樹脂を室温まで冷却後、粉砕機にて粉砕し、粒子化して重縮合ポリエステル樹脂(A’−2)を得た。(A’−2)の酸価は20、水酸基価は17、チタン元素含有量は600ppm、1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度は8.0であった。
【0099】
実施例〔7〜12〕・比較例〔3〜4〕
重縮合ポリエステル樹脂(A−1)〜(A−6)からなる本発明のトナーバインダーおよびポリエステル樹脂(A’−1)〜(A’−2)からなる比較のトナーバインダーそれぞれ100部に対して、カーボンブラックMA−100[三菱化学(株)製]8部、カルナバワックス5部、荷電制御剤T−77[保土谷化学(製)]1部を加え下記の方法でトナー化した。
まず、ヘンシェルミキサー[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I]で分級し、粒径D50が8μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部にコロイダルシリカ(アエロジルR972:日本アエロジル製)0.5部をサンプルミルにて混合して、本発明のトナー(T1)〜(T6)、および比較用のトナー(T’1)〜(T’2)を得た。
下記評価方法で評価した評価結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
[評価方法]
〔1〕最低定着温度(MFT)
市販複写機(AR5030;シャープ製)を用いて現像した未定着画像を、市販複写機(AR5030;シャープ製)の定着機を用いて評価した。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって最低定着温度とした。
〔2〕トナーの耐ブロッキング性試験
上記トナーを、50℃・85%R.H.の高温高湿環境下で、48時間調湿した。同環境下において該現像剤のブロッキング状態を目視判定し、さらに市販複写機(AR5030:シャープ製)でコピーした時の画質を観察した。
判定基準
◎:トナーのブロッキングがなく、3000枚複写後の画質も良好。
○:トナーのブロッキングはないが、3000枚複写後の画質に僅かに乱れが観察さ
れる。
△:トナーのブロッキングが目視でき、3000枚複写後の画質に乱れが観察される

×:トナーのブロッキングが目視でき、3000枚までに画像が出なくなる
〔3〕色再現性
市販複写機(AR5030;シャープ製)を用いて、テストパターン画像をOHPシートに印刷した。これをOHPプロジェクターでスクリーン上に投影した。投影像の鮮明さ、色のかすみに関する目視評価を行った。
◎:投影像鮮明。色のくすみ無し。
○:投影像鮮明。わずかに色のくすみあり。
△:投影像やや不鮮明。わずかに色のくすみあり。
×:投影像不鮮明。色のくすみあり。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のトナーおよびトナーバインダーは、低温定着性、耐ブロッキング性、色再現性に優れるトナーおよびトナーバインダーとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価が5〜60mgKOH/gかつ水酸基価が0〜50mgKOH/gである重縮合ポリエステル樹脂(A)を含有するトナーバインダーであって、(A)のチタン元素含有量が5〜1000ppm、かつ(A)の1重量%テトラヒドロフラン溶液の濁度が5以下であることを特徴とするトナーバインダー。
【請求項2】
(A)が、下記一般式(I)または(II)で表される少なくとも1種のチタン含有触媒(z)の存在下に形成されてなるポリエステル樹脂である請求項1記載のトナーバインダー。
Ti(−X)m(−OH)n (I)
O=Ti(−X)p(−OR)q (II)
[式中、Xは炭素数2〜12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個のOH基のHを除いた残基であり、ポリアルカノールアミンの他のOH基が同一のTi原子に直接結合したOH基と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく、他のTi原子に直接結合したOH基と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2〜5である。RはH、または1〜3個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜8のアルキル基である。mは1〜4の整数、nは0〜3の整数、mとnの和は4である。pは1〜2の整数、qは0〜1の整数、pとqの和は2である。mまたはpが2以上の場合、それぞれのXは同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項3】
(A)の少なくとも一部が、酸価が6mgKOH/g以下かつ水酸基価が10〜70mgKOH/gの重縮合ポリエステル樹脂(a)と、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ならびにそれらの酸無水物および低級アルキル(炭素数1〜4)エステルからなる群から選ばれる1種以上のカルボン酸(b)が反応されてなり、軟化点が120〜180℃であるポリエステル樹脂(A1)である請求項1または2記載のトナーバインダー。
【請求項4】
(a)の重縮合反応条件が下記(1)〜(4)をすべて満たす請求項3記載のトナーバインダー。
0℃≦T1≦180℃ (1)
100℃≦T2≦180℃ (2)
100℃≦T3≦260℃ (3)
0kPa≦P≦15kPa (4)
[式中、T1は(a)の原料の混合温度、T2は減圧反応の開始温度、T3は減圧反応時の温度、Pは減圧反応時の系内の圧力である。]
【請求項5】
ポリオール成分とポリカルボン酸成分とを、下記式(1)〜(4)をすべて満たす条件で重縮合反応して酸価が6mgKOH/g以下かつ水酸基価が10〜70mgKOH/gの重縮合ポリエステル樹脂(a)を製造し、さらに(a)に、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ならびにそれらの酸無水物および低級アルキル(炭素数1〜4)エステルからなる群から選ばれる1種以上のカルボン酸(b)を反応させるトナーバインダー用ポリエステル樹脂の製造方法。
0℃≦T1≦180℃ (1)
100℃≦T2≦180℃ (2)
100℃≦T3≦260℃ (3)
0kPa≦P≦15kPa (4)
[式中、T1は(a)の原料の混合温度、T2は減圧反応の開始温度、T3は減圧反応時の温度、Pは減圧反応時の系内の圧力である。]
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか記載のトナーバインダーと着色剤(B)を含有するトナー。
【請求項7】
さらに、離型剤(C)、荷電制御剤(D)、および流動化剤(E)から選ばれる1種以上の添加剤を含有する請求項6記載のトナー。

【公開番号】特開2009−193068(P2009−193068A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8992(P2009−8992)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】