説明

トナー吸引装置及び画像形成装置

【課題】静電電位の差による潜像を可視化するためのトナーが飛散するのを吸引し、吸引したトナーが滞留して落下することによる画像の汚れや機内の汚れを低減する。
【解決手段】トナー層を周面上に保持して感光体ドラム1との対向位置に搬送するトナー層搬送部材11へ現像部材12からトナーを転移する位置と対向して吸引管21の開口22を設け、トナーが転移する位置付近で飛散するトナーを吸引する。上記開口は、トナー層搬送部材と対向する部分の形状が、トナーが転移される位置へ接近する方向に向かってトナー層搬送部材が有する周面の幅方向の寸法が拡大するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー吸引装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電電位の差による潜像にトナーを付着させて画像を形成する画像形成装置では、潜像が形成された像保持体に対向して無端状の周面上にトナーを保持した部材を配置し、像保持体上にトナーを転移して現像を行う。上記像保持体と対向させる部材は、一成分現像剤又は二成分現像剤を保持する現像部材が広く用いられている。また、像保持体と対向させる部材として、二成分現像剤を保持した現像部材からトナーが転移されたトナー層搬送部材が用いられることもある。
【0003】
上記のように現像部材から像保持体にトナーを転移する位置、又は現像部材からトナー層搬送部材に転移する位置では、トナーが飛散することがある。例えば、いわゆるトナークラウドとなってトナーが飛散するものである。このような飛散するトナーを吸引して除去する装置が、例えば特許文献1又は特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−194271号公報
【特許文献2】特開平03−127087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、吸引したトナーが滞留して落下することによる画像の汚れや機内の汚れを低減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 静電電位の差による潜像に付着させて可視像を形成するためのトナーを互いに対向する部材間で転移させる位置と対向して開口が設けられ、トナーが転移する位置で飛散するトナーを吸引する吸引管と、 前記開口を経て前記吸引管へ空気を吸い込むように空気流を発生させる空気流発生手段と、を有し、 前記開口の形状が、トナーが転移される位置へ接近する方向に向かって該方向に対する幅方向の寸法が拡大するものであるトナー吸引装置を提供する。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のトナー吸引装置において、 前記吸引管の前記開口は、無端状の周面を有する像保持体へ現像部材からトナーを転移する位置、又はトナー層を無端状の周面上に保持して像保持体との対向位置に搬送するトナー層搬送部材へ現像部材からトナーを転移する位置と対向して設けられ、 該開口の前記像保持体又は前記トナー層搬送部材と対向する部分の形状が、トナーが転移される位置へ接近する方向に向かって像保持体又はトナー層搬送部材が有する周面の幅方向の寸法が拡大するものとする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のトナー吸引装置において、 前記開口は、前記吸引管の前記像保持体又は前記トナー層搬送部材と対向する部分から前記現像部材と対向する部分に連続して設けられ、 前記開口の前記現像部材と対向する部分の、前記トナーが転移する位置から離れた側の端縁は、前記現像部材の周面の上方となる位置にあるものとする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項2又は請求項3に記載のトナー吸引装置において、 前記吸引管は、 間隔を開けて対向配置されて両側縁部が互いに連結された2つの板状部材と、該板状部材の先端部に取り付けられ、2つの前記板状部材の間隙を塞ぐように取り付けられた薄板部材と、を有し、 前記薄板部材は、前記像保持体又は前記トナー層搬送部材が有する周面の幅方向の折り曲げ線で折り曲げられ、該折り曲げ線の両側がそれぞれ前記現像部材及び前記像保持体又は前記トナー層搬送部材と対向するように取り付けられ、 前記開口は、前記薄板部材の前記折り曲げ線と隣接する位置に設けられているものとする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のトナー吸引装置において、 前記板状部材は、前記現像部材の周面に沿った位置に支持され、 前記薄板部材の前記現像部材と対向する部分は前記板状部材の前記現像部材と対向する面に取り付けられ、 該板状部材の、前記薄板部材に設けられた前記現像部材と対向する前記開口の周囲は、該開口の縁より後退した位置まで切り欠きが設けられているものとする。
【0011】
請求項6に係る発明は、 無端状の周面上に静電電位の差による潜像を保持する像保持体と、 前記像保持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、 無端状の周面上に保持したトナーを前記像保持体と対向する位置に搬送する現像部材を備え、前記像保持体上に形成された潜像にトナーを転移して前記潜像を現像する現像装置と、 前記像保持体上に転移されたトナーを記録媒体に、又は中間転写体を介して記録媒体に転写する転写装置と、 前記現像装置が備える現像部材から前記像保持体へトナーを転移する位置から飛散するトナーを吸引する、請求項1から請求項5までのいずれかに記載のトナー吸引装置と、を有する画像形成装置を提供するものである。
【0012】
請求項7に係る発明は、 無端状の周面上に静電電位の差による潜像を保持する像保持体と、 前記像保持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、 無端状の周面上にトナー層を保持して前記像保持体と対向する位置に搬送するトナー層搬送部材、及び前記トナー層搬送部材の周面上にトナーを転移する現像部材を備え、前記像保持体上の潜像を現像する現像装置と、 前記像保持体上に転移されたトナーを記録媒体に、又は中間転写体を介して記録媒体に転写する転写装置と、 前記現像装置が備える現像部材から前記トナー層搬送部材へトナーを転移する位置から飛散するトナーを吸引する、請求項1から請求項5までのいずれかに記載のトナー吸引装置と、を有する画像形成装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明のトナー吸引装置では、本発明の構成を備えていないものと比較して、吸引したトナーが滞留して落下することによる画像の汚れや機内の汚れを低減することができる。
【0014】
請求項2に係る発明のトナー吸引装置では、本発明の構成を備えていないものと比較して、吸引したトナーが滞留して落下することによる画像の汚れや機内の汚れを低減することができる。
【0015】
請求項3に係る発明のトナー吸引装置では、本発明の構成を備えていないものと比較して、開口の端縁から落下するトナーによる画像への影響を低減することができる。
【0016】
請求項4に係る発明のトナー吸引装置では、本発明の構成を備えていないものと比較して、トナーが転移される位置に近接して飛散するトナーを吸引することができる。
【0017】
請求項5に係る発明のトナー吸引装置では、本発明の構成を備えていないものと比較して、開口から吸引管内に吸引されたトナーを保持して、吸引管の外部に落下するのを抑制することができる。
【0018】
請求項6に係る発明の画像形成装置では、本発明の構成を備えていないものと比較して、吸引したトナーが滞留して落下することによる画像の汚れや機内の汚れを低減することができる。
【0019】
請求項7に係る発明の画像形成装置では、本発明の構成を備えていないものと比較して、吸引したトナーが滞留して落下することによる画像の汚れや機内の汚れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願に係る発明の一実施形態である画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す画像形成装置で用いられる現像装置及びトナー吸引装置の拡大断面図である。
【図3】図2に示す現像装置の概略構成とトナー吸引装置の位置を示す概略平面図である。
【図4】図1に示す画像形成装置で用いられるトナー吸引装置の概略平面図である。
【図5】図2に示すトナー吸引装置が有する吸引管の開口が設けられた先端部を示す拡大断面図である。
【図6】図5中におけるA−A矢視及びB−B矢視を示す概略図である。
【図7】図2に示すトナー吸引装置のトナーを吸引する開口の周囲におけるトナーの付着状態を説明する概略図である。
【図8】吸引管に設けられた開口の形状の他の例を示す概略図である。
【図9】図4に示すトナー吸引装置のトナーを吸引する開口付近における負圧の分布を示す概略図である。
【図10】本発明に係るトナー吸引装置を用いることができる画像形成装置の他の例を示す概略図である。
【図11】本発明に係るトナー吸引装置を用いることができる画像形成装置の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願に係る発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願に係る発明の一実施形態である画像形成装置を示す概略構成図である。また、図2は、図1に示す画像形成装置で用いられる現像装置の拡大断面図であり、図3は、図2に示す現像装置の概略構成とトナー吸引装置の位置を示す概略平面図である。
この画像形成装置は、帯電後に像光を照射することにより表面に潜像が形成される円筒状の感光体ドラム1を備えており、この感光体ドラム1の周囲に、感光体ドラム1の表面の画像形成領域を帯電させる帯電装置2と、感光体ドラム1に像光を照射して表面に潜像を形成する露光装置3と、感光体ドラム1上の静電潜像をトナーの選択的な付着によって可視化する現像装置4と、感光体ドラム1との間に転写バイアス電圧が印加し、形成される電界によって感光体ドラム上のトナー像を記録媒体に転写する転写装置5と、トナー像を転写した後の感光体ドラム1上に残留するトナーを除去するクリーニング装置6と、を備えている。
また、上記感光体ドラム1の周面の移動方向における上記現像装置4が設けられた位置の上流側と下流側とには、飛散するトナーを吸引するトナー吸引装置7,8が設けられている。
【0022】
一方、トナー像が転写される記録媒体Pを供給する記録媒体供給部9が設けられ、この記録媒体供給部9から画像を記録する記録媒体Pが、感光体ドラム1と転写装置5とが対向する転写部5aに一枚ずつ供給されるものとなっている。記録媒体の搬送方向における転写部5aの下流側には、記録媒体に転写されたトナー像を加熱して圧着する定着装置10が設けられている。
【0023】
上記感光体ドラム1は、像保持体として機能するものであり、金属製の円筒体の表面に感光体層を形成したものを用いることができる。この感光体ドラム1は、中心軸線回りに回転駆動され、移動する周面上で帯電、露光、現像等の工程が順次に行われる。
【0024】
上記帯電装置2は、感光体ドラム1と間隔を開けて張架された電極ワイヤを備えるコロナ放電器であり、電極ワイヤと感光体ドラム1との間に電圧を印加し、コロナ放電を発生させて感光体ドラム1の表面を帯電するものである。
【0025】
露光装置3は、画像信号に基づいて点滅するレーザ光を射出するものであり、周回移動する感光体ドラム1の周面に対して軸線方向に露光走査するものである。これにより感光体ドラム1の周面上で露光部の電位が減衰し、静電電位の差による潜像が形成される。
【0026】
上記現像装置4は、感光体ドラム1と間隔を開けて対向するように設けられたトナー層搬送部材であるトナー層搬送ロール11(ドナーロールと称されることもある)と、このトナー層搬送ロール11と近接して対向する位置に支持された現像部材である現像ロールと12を備えている。現像ロール12は周面上に二成分現像剤を磁気的に吸着して現像剤層が形成される。現像ロール12は回転して周面上の現像剤層をトナー層搬送ロール11との対向位置に搬送し、二成分現像剤中のトナーをトナー層搬送ロール11に転移するものとなっている。トナー層搬送ロール11は周面上に転移されたトナーを電気的に吸着し、回転することによって感光体ドラム1との対向位置に搬送する。そして、このトナー層搬送ロール11と感光体ドラム1との間に形成された電界内で、潜像にトナーを転移して可視像を形成するものである。
【0027】
上記現像ロール12の後方には、現像ロール12の表面に供給される二成分現像剤を収容する第1の現像剤収容室13と第2の現像剤収容室14とを備え、それぞれには第1の攪拌搬送部材15と第2の攪拌搬送部材16とが備えられている。第1の攪拌搬送部材15と第2の攪拌搬送部材16とは、図3に示すように、隔壁17で仕切られた第1の現像剤収容室13と第2の現像剤収容室14とで逆方向に二成分現像剤を搬送するものとなっており、両端で現像剤の移動が可能となっている第1の現像剤収容室13と第2の現像剤収容室14とを循環するように二成分現像剤を搬送する。
【0028】
上記トナー吸引装置7,8については、後に詳述する。
【0029】
上記転写装置5は、搬送される記録媒体の背面から電荷を付与するコロナ放電器であり、この転写装置5と感光体ドラム1との間に形成された電界の作用によって電荷を有するトナーを記録媒体上に転移させるものである。
【0030】
上記記録媒体供給部9は、記録媒体Pを積層して収容する収容部9aと、収容部9aから送り出された記録媒体を転写部5aへ搬送する搬送路9bとを有するものである。収容部9aは、収容された記録媒体Pを最上層のものから一枚ずつ順次に取り出して搬送路9bに送り出す。そして、搬送路9bは記録媒体Pを搬送し、感光体ドラム1上で形成されたトナー像が搬送されるのに合わせて転写部5aへ送り込むものとなっている。
【0031】
上記定着装置10は、加熱源を内蔵した定着ロール10aと、この定着ロール10aと圧接される加圧ロール10bとを備え、定着ロール10aと加圧ロール10bとの間を通過して搬送される記録媒体を加熱及び加圧してトナー像を記録媒体上に圧着するものである。
【0032】
上記のような画像形成装置では、感光体ドラム1が帯電装置2によって負極性に帯電される。露光装置3は画像データに基づき、帯電された感光体ドラム1の周面に像光を照射し、感光体ドラム1の表面の露光された部分の帯電電位が減衰して非露光部との電位差による潜像が形成される。現像装置4は、負の電荷を有するトナーを現像ロール12からトナー層搬送ロール11に転移し、感光体ドラム1の周面と対向する位置に搬送する。感光体ドラム1とトナー層搬送ロール11との間には、現像バイアス電圧による電界が形成されており、負電荷を有するトナーが露光部に転移する。
【0033】
このようにして形成されたトナー像は、感光体ドラム1の回転により、転写装置5が設けられた転写部5aへと搬送される。
一方、記録媒体供給部9から一枚ずつ供給された記録媒体は、感光体ドラム1上のトナー像と重ね合わされるように転写部5aへ送り込まれる。そして、転写バイアス電圧によってトナー像は記録媒体に転写される。
【0034】
トナー像が転写された記録媒体は、トナー像を保持した状態で定着装置10へと送られ、記録媒体上のトナー像は加熱及び加圧されて該記録媒体に定着される。
【0035】
次に、上記トナー吸引装置7,8について説明する。
感光体ドラム1の回転方向における現像装置4の上流側に設けられたトナー吸引装置7は、感光体ドラム1に向かって支持された現像装置4の後方から現像ロール12とトナー層搬送ロール11とが対向する位置に向かって吸引管21が設けられ、その先端部にトナーを吸引する開口22が形成されている。吸引管21は、図2及び図5に示すように、トナー層搬送ロール11の軸線方向に先端縁を有する第1の板状部材23と、この第1の板状部材23と間隔をあけて重ねるように配置された第2の板状部材24とを有し、これらの間隙を扁平な形状の吸引路とするものである。そして、図4に示すように第1の板状部材23と第2の板状部材24との後端部が筒状部25に接続され、両側縁部26,27は先端から後端にかけて第1の板状部材23と第2の板状部材24とが連結されている。筒状部25はトナー層搬送ロール11の軸線方向に沿った方向に軸線を有するものであり、軸線方向の一端25aは閉塞され、他端は空気流発生手段であるブロア28に接続されてトナーを吸引するための空気流を形成するものとなっている。
【0036】
上記第1の板状部材23の現像ロール12と対向する部分は、現像ロール12の周面に沿って曲面となり、先端がトナー層搬送ロール11の周面と対向するように配置される。そして、第2の板状部材24は第1の板状部材23に沿って配置され、先端がトナー層搬送ロール11と対向する。第2の板状部材24の先端はトナー層搬送ロール11の周面に沿って曲折された部分24aを有し、トナー層搬送ロール11と対向する先端対向面24bを形成している。
【0037】
上記吸引管21の先端部には、図5に示すように、合成樹脂の薄板部材29つまりフィルム状の部材が、第1の板状部材23及び第2の板状部材24の幅方向に双方の間隙を塞ぐように取り付けられ、この薄板部材29に上記開口22が設けられている。この薄板部材29は、トナー層搬送ロール11の軸線方向の折り曲げ線によって折り曲げられた形状となっており、折り曲げ線の片側が第1の板状部材23の現像ロール12と対向する面23a、つまり吸引路の外側に貼り付けられている。また、折り曲げ線の反対側は、第2の板状部材24の先端から曲折された先端対向面24bに貼り付けられている。したがって、折り曲げ線がトナー層搬送ロール11と現像ロール12とが対向してトナーの転移が行われる位置Dに向かって最も接近するようになっている。
【0038】
この薄板部材29に設けられた開口22は、図6に示すように、トナー層搬送ロール11の軸線方向に間隔を開けて複数が設けられている。これらの開口22は、図5及び図6に示すように折り曲げ線の両側にわたって形成され、折り曲げ線から第2の板状部材24に支持された側でトナー層搬送ロール11と対向する部分は折り曲げ線上が底辺となる台形となっている。また、折り曲げ線から第1の板状部材23に支持された側で現像ロール12と対向する部分では、折り曲げ線上に一辺がある長方形となっている。そして、折り曲げ線から最も離れた辺22aは、直下が現像ロール12の周面となる位置に設定されている。
このような開口22が設けられていない位置では、図5(b)に示すように第1の板状部材23から第2の板状部材24にわたって貼り付けられた薄板部材29によって、第1の板状部材23と第2の板状部材24との間隙が閉鎖されている。
【0039】
このように薄板部材29に開口22が設けられるのにともない、第1の板状部材23は、図6(b)に示すように開口22が設けられた位置及びその周囲にわたって切り欠き23bが設けられている。したがって、図5(a)に示すように現像ロール12と対向する位置に設けられた開口22の周囲には薄板部材29のみが現像ロール12と対向する部分があり、この部分では第1の板状部材23が第2の板状部材24と対向する部分より吸引路が拡大されている。
【0040】
上記開口22のトナー層搬送ロール11と対向する部分の形状は、上記のように折り曲げ線上が底辺となる台形となっており、トナーが転移される位置Dへ接近するにしたがってトナー層搬送ロール11の軸線方向の寸法が拡大されるものとなっている。つまり、図7(b)に示すように開口22の折り曲げ線上の辺と隣接する他の辺とのなす角度θが90度以下となっている。図7(a)に示すように開口の形状を矩形とし、折り曲げ線上の辺と隣接する辺とのなす角度を90度とすると、トナー層搬送ロール11の周辺部から開口に吸引される空気流が、折り曲げ線上の辺と隣接する辺とが形成する隅角部の周辺において開口の外側にトナーの滞留を生じさせる。そして、滞留トナーがトナー層搬送ロール11上に落下すると画像の汚れを生じされることになる。これに対し、図7(b)に示すようにトナーを吸引する開口22のトナーが転移される位置に近い辺、この実施形態では折り曲げ線上の辺と、これに隣接する他の辺とのなす角度θが90度以下となっていると、吸引される空気流によるトナーの滞留が抑制され、薄板部材29に付着したトナーの落下による画像の汚れ、又は機内の汚れが低減される。
なお、上記開口の折り曲げ線上の辺、つまりトナーが転移される位置Dに近い辺と、これに隣接する他の辺とのなす角度θが、90度以下となることによって徐々に効果を生じるものであるが、この角度θは30度から60度程度とするのが望ましい。
【0041】
一方、上記のような吸引管21内では、トナーに混ざって磁性キャリアが吸引されると現像ロール12と対向する部分で現像ロール12の磁石による吸着力が作用し、磁性キャリアを含むトナーが吸引管21の壁面に付着しやすくなる。上記トナー吸引装置7では、現像ロール12と対向する部分で吸引管21内に付着するトナー又は磁性キャリアは、図5(a)に示すように開口22の周囲の薄板部材29上に保持されやすくなっている。そして、この薄板部材29上に保持されたトナーT又は磁性キャリアが開口22から落下するようなことがあっても、図5(a)に示すように現像ロール12の周面上に落下するものとなっている。現像ロール12の周面上には、磁性キャリアが穂状に起立した磁気ブラシが形成されており、これらの磁性キャリアにトナーが付着している。したがって、落下したトナー又は磁性キャリアは現像ロール12上の現像剤層に取り込まれ、トナー層搬送ロール11上のトナー層への影響は低減される。
【0042】
なお、上記開口22のトナー層搬送ロール11と対向する部分の形状を台形としたが、図8(a)に示すように三角形としてもよい、このような形状でも開口31のトナー転移位置Dに近い辺31aと、これに隣接する他の辺31bとのなす角度が90度以下となり、同様にトナーの付着が低減される。また、図8(b)に示すように開口31はトナー層搬送ロール11と対向する部分のみに設け、現像ロール12と対向する部分まで及ばないものとしてもよい。ただし、開口31が設けられた部分では、第1の板状部材32に切り欠き32aを設けておき、開口31から吸引された空気の流路を確保しておくのが望ましい。
【0043】
また、開口22の間隔は、上記実施の形態でトナー層搬送ロール11の軸線方向に等間隔としたが、異なる間隔で開口を設けることもできる。
第1の板状部材23及び第2の板状部材24とで形成された扁平な吸引路の後端に、筒状部25がトナー層搬送ロール11の軸線に沿った方向に設けられ、この筒状部25の一方から吸引されると、吸引管21の先端部ではトナー層搬送ロール11の軸線方向に吸引する負圧が一定とならない。つまり、図9に示すように、吸引する方向と反対側の端部では吸引したときの負圧の絶対値が小さくなり、吸引管21が後方で幅が縮小されていることによって吸引する方向の端部でも負圧の絶対値は小さくなる。これに対して、開口の間隔を調整することにより、トナー層搬送ロール11の軸線方向に吸引能力を調整することが可能となる。たとえば、両端部の負圧の絶対値が小さくなる流域では開口の間隔を小さくし、負圧の絶対値が大きくなる位置では開口の間隔を大きくすることができる。
【0044】
また、トナー搬送ロール11の軸線方向における一方の端部領域でトナーを吸引する能力が高くなるように調整することもできる。
図3に示すように現像装置4に内に配置された攪拌搬送部材15,16が現像剤を攪拌しながら循環するように搬送するとき、現像ロールの軸線方向における一方の端部にトナーの補給口18が設けられていると、現像ロール12に供給されるトナーの帯電が一方の端部領域、この実施の形態ではトナー補給口18が設けられた端部と反対側の端部領域で不十分になることがある。このようにトナーの帯電が不十分な領域ではトナーの飛散が生じ易く、この領域で開口22の間隔を調整し、トナー吸引装置の吸引する能力を大きくすることができる。
【0045】
感光体ドラム1の回転方向における現像装置4の下流側に設けられたトナー吸引装置8は、上流側に設けられたトナー吸引装置7と同じ構成を有するものを用いてもよいが、トナーの飛散が少ないときには他の構成とすることもできる。上記実施の形態では、上流側に設けられたトナー吸引装置7と同様に吸引管が2つの板状部材によって形成された扁平な形状となっているが、吸引管の先端部には薄板部材が取り付けられておらず、トナー層搬送ロール11の軸線方向に連続した開口を有するものを用いている。
【0046】
以上に説明した実施の形態では、現像装置4が現像ロール12とトナー層搬送ロール11とを有するものであって、トナー吸引装置7は現像ロール12からトナー層搬送ロール11にトナーを転移する位置で飛散するトナーを吸引するものであったが、トナー層搬送ロール11から像保持体である感光体ドラム1にトナーを転移する位置で飛散するトナーを吸引するように設けることもできる。また、図10に示すように現像装置41が現像ロール42から像保持体1にトナーを転移させるものである画像形成装置について、現像ロール42と像保持体1との対向位置で発生する飛散トナーを吸引するように本発明のトナー吸引装置を設けることもできる。図10に示す画像形成装置で用いられるトナー吸引装置43,44は、像保持体1と対向して、又は像保持体1と現像ロール42とに対向してトナーを吸引する開口が設けられるものであるが、このトナー吸引装置43,44の各部分の構成は図2,図3,又は図4に示すものと同様の構成とすることができる。また、画像形成装置の像保持体である感光体ドラム1、帯電装置2,露光装置3、転写装置5、クリーニング装置6、記録媒体供給部9、定着装置10等も同様のものを用いることができる。
【0047】
また、図1及び図10示す画像形成装置は、いずれも1台の現像装置を備えた単色の画像を形成するものであるが、図11に示すように複数台の現像装置を備えたカラーの画像を形成する装置に適用することもできる。この画像形成装置では、像保持体51がベルト状となっており、現像装置52のトナー層搬送ロール53からトナーが転移されるものである。そして、各現像装置52の現像ロール54からトナー層搬送ロール53へトナーが転移される位置で飛散するトナーを吸引するように各現像装置についてトナー吸引装置55,56が設けられている。また、各現像装置は現像ロールから直接に像保持体51にトナーを転移させるものであっても同様に本発明のトナー吸引装置を用いることができるし、像保持体はドラム状の部材を用いることもできる。
なお、図11中の符号61は帯電装置、符号62は露光装置、符号63は転写装置、符号64はクリーニング装置、符号65は定着装置、符号66は記録媒体供給部を示すものである。
【0048】
さらに、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他の形態として実施することもできる。
【符号の説明】
【0049】
1:感光体ドラム, 2:帯電装置, 3:露光装置, 4:現像装置, 5:転写装置, 6:クリーニング装置, 7,8:トナー吸引装置, 9:記録媒体供給部, 9a:記録媒体の収容部、 9b:搬送路、
11:トナー層搬送ロール, 12:現像ロール, 13:第1の現像剤収容室, 14:第2の現像剤収容室, 15:第1の攪拌搬送部材, 16:第2の攪拌搬送部材, 17:隔壁, 18:トナー補給口,
21:吸引管, 22:開口, 22a:開口の現像ロールと対向する部分の折り曲げ線から離れた側の辺, 23:第1の板状部材, 23a:第1の板状部材の現像ロールと対向する面, 24:第2の板状部材, 24a:第2の板状部材の先端の曲折された部分, 24b:第2の板状部材の先端対向面, 25:筒状部, 26,27:板状部材の側縁部, 28:ブロア, 29:薄板部材,
31:開口, 31a:開口のトナー転移位置Dに近い辺, 31b:開口のトナー転移位置Dに近い辺と隣接する他の辺, 32:第1の板状部材, 32a:第1の板状部材の切り欠き,
41:現像装置, 42:現像ロール, 43,44:トナー吸引装置,
51:ベルト状の像保持体, 52:現像装置, 53:トナー層搬送ロール, 54:現像ロール, 55:トナー吸引装置, 56:トナー吸引装置,
61:帯電装置, 62:露光装置, 63:転写装置, 64:クリーニング装置, 65:定着装置, 66:記録媒体供給部






【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電電位の差による潜像に付着させて可視像を形成するためのトナーを互いに対向する部材間で転移させる位置と対向して開口が設けられ、トナーが転移する位置で飛散するトナーを吸引する吸引管と、
前記開口を経て前記吸引管へ空気を吸い込むように空気流を発生させる空気流発生手段と、を有し、
前記開口の形状が、トナーが転移される位置へ接近する方向に向かって該方向に対する幅方向の寸法が拡大するものであることを特徴とするトナー吸引装置。
【請求項2】
前記吸引管の前記開口は、無端状の周面を有する像保持体へ現像部材からトナーを転移する位置、又はトナー層を無端状の周面上に保持して像保持体との対向位置に搬送するトナー層搬送部材へ現像部材からトナーを転移する位置と対向して設けられ、
該開口の前記像保持体又は前記トナー層搬送部材と対向する部分の形状が、トナーが転移される位置へ接近する方向に向かって像保持体又はトナー層搬送部材が有する周面の幅方向の寸法が拡大するものであることを特徴とする請求項1に記載のトナー吸引装置。
【請求項3】
前記開口は、前記吸引管の前記像保持体又は前記トナー層搬送部材と対向する部分から前記現像部材と対向する部分に連続して設けられ、
前記開口の前記現像部材と対向する部分の、前記トナーが転移する位置から離れた側の端縁は、前記現像部材の周面の上方となる位置にあることを特徴とする請求項2に記載のトナー吸引装置。
【請求項4】
前記吸引管は、 間隔を開けて対向配置されて両側縁部が互いに連結された2つの板状部材と、該板状部材の先端部に取り付けられ、2つの前記板状部材の間隙を塞ぐように取り付けられた薄板部材と、を有し、
前記薄板部材は、前記像保持体又は前記トナー層搬送部材が有する周面の幅方向の折り曲げ線で折り曲げられ、該折り曲げ線の両側がそれぞれ前記現像部材及び前記像保持体又は前記トナー層搬送部材と対向するように取り付けられ、
前記開口は、前記薄板部材の前記折り曲げ線と隣接する位置に設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のトナー吸引装置。
【請求項5】
前記板状部材は、前記現像部材の周面に沿った位置に支持され、
前記薄板部材の前記現像部材と対向する部分は前記板状部材の前記現像部材と対向する面に取り付けられ、
該板状部材の、前記薄板部材に設けられた前記現像部材と対向する前記開口の周囲は、該開口の縁より後退した位置まで切り欠きが設けられていることを特徴とする請求項4に記載のトナー吸引装置。
【請求項6】
無端状の周面上に静電電位の差による潜像を保持する像保持体と、
前記像保持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、
無端状の周面上に保持したトナーを前記像保持体と対向する位置に搬送する現像部材を備え、前記像保持体上に形成された潜像にトナーを転移して前記潜像を現像する現像装置と、
前記像保持体上に転移されたトナーを記録媒体に、又は中間転写体を介して記録媒体に転写する転写装置と、
前記現像装置が備える現像部材から前記像保持体へトナーを転移する位置から飛散するトナーを吸引する、請求項1から請求項5までのいずれかに記載のトナー吸引装置と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
無端状の周面上に静電電位の差による潜像を保持する像保持体と、
前記像保持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、
無端状の周面上にトナー層を保持して前記像保持体と対向する位置に搬送するトナー層搬送部材、及び前記トナー層搬送部材の周面上にトナーを転移する現像部材を備え、前記像保持体上の潜像を現像する現像装置と、
前記像保持体上に転移されたトナーを記録媒体に、又は中間転写体を介して記録媒体に転写する転写装置と、
前記現像装置が備える現像部材から前記トナー層搬送部材へトナーを転移する位置から飛散するトナーを吸引する、請求項1から請求項5までのいずれかに記載のトナー吸引装置と、を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−3169(P2012−3169A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140150(P2010−140150)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】