説明

トナー容器およびその製造方法

【課題】環境に対する負荷が小さく、さらに、トナー容器の大容量化を伴う場合であっても、ブロー成形による成形性を確保することができて優れた強度を有するトナー容器およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】トナー容器は、発酵法により得られた原料から得られるポリエチレンおよびポリプロピレンのうち少なくとも一方を含有する樹脂により形成されていることを特徴とする。また、トナー容器の製造方法は、ブロー成形によりトナー容器を成形するトナー容器の製造方法であって、前記トナー容器を成形する材料として、発酵法により得られた原料から得られるポリエチレンおよびポリプロピレンのうち少なくとも一方を含有する樹脂を用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トナーを用いた電子写真方式による画像形成方法によって画像を形成するに際して、複写機における画像を形成する速度の高速化に伴い、トナーが消費される速度が速くなってきている。そのため、トナーを現像装置へ供給する速度の高速化が求められており、それに伴いトナーを収容するトナー容器の大容量化が求められている。
【0003】
一般に、トナー容器はブロー成形法により製造されることが好ましく、良好な成形性を有することから、トナー容器を形成する樹脂としては、オレフィン系樹脂が好ましく、そのうちポリエチレンがより好ましく、特に高密度ポリエチレンが好ましいとされている。
【0004】
しかしながら、このようなオレフィン系樹脂により形成されるトナー容器は、当該トナー容器が大容量化、すなわち大型化されると、一般的に高い耐久性を有するポリカーボネートやABS樹脂などの樹脂に比べ、強度が劣るという欠点がある。そこで、トナー容器の肉厚を大きくすることにより、強度を大きくすることが考えられるが、ブロー成形法による製造方法においては、成形性の観点から、トナー容器の肉厚を大きくすることが難しい、という問題がある。
【0005】
そこで、例えば特許文献1には、高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンを含有する樹脂により形成されることにより、ブロー成形による成形性を確保すると共に、優れた強度を有するプラスティック容器が開示されている。
【0006】
一方、環境保護に対する意識の高まりから、石油から得られた原料ではなく植物などから得られた原料から得られる樹脂、特に、ポリ乳酸や非石油由来のポリエチレン、非石油由来のポリプロピレンなどの非石油由来のオレフィン系樹脂の研究が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−313425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、環境に対する負荷が小さく、さらに、トナー容器の大容量化を伴う場合であっても、ブロー成形による成形性を確保することができて優れた強度を有するトナー容器およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のトナー容器は、発酵法により得られた原料から得られるポリエチレンおよびポリプロピレンのうち少なくとも一方を含有する樹脂により形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のトナー容器においては、当該トナー容器が、ブロー成形により成形されたものであることが好ましい。
【0011】
本発明のトナー容器の製造方法は、ブロー成形によりトナー容器を成形するトナー容器の製造方法であって、
前記トナー容器を成形する材料として、発酵法により得られた原料から得られるポリエチレンおよびポリプロピレンのうち少なくとも一方を含有する樹脂を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のトナー容器によれば、当該トナー容器が発酵法により得られた原料から得られるポリエチレンおよびポリプロピレンのうち少なくとも一方を含有する樹脂により形成されていることにより、当該トナー容器を構成する樹脂の原料として、植物などを発酵させる発酵法による非石油由来のものを用いるので、基本的に環境に対する負荷が小さく、さらに、トナー容器の大容量化を伴う場合であっても、ブロー成形による成形性を確保することができて優れた強度を得ることができる。
【0013】
本発明のトナー容器が、優れた強度を有する理由は定かではないが、石油由来の原料から得られるポリエチレンやポリプロピレンよりなる樹脂に比べ、発酵法により得られた原料から得られるポリエチレンやポリプロピレンよりなる樹脂は、当該樹脂に含有される不純物の濃度が低いからであると推定される。すなわち、本発明のトナー容器を構成する樹脂に含有されるポリエチレンまたはポリプロピレンは、当該ポリエチレンまたはポリプロピレンの原料単量体であるエチレンまたはプロピレンを植物などから得られる非石油由来のエタノールから生成するので、原油を分留することによるナフサの熱分解で得られるエチレンまたはプロピレンに比べ、不純物の濃度が低いからであると推定される。少なくとも、非石油由来のエチレンまたはプロピレンと、石油由来のエチレンまたはプロピレンとでは、それぞれに含有される不純物の種類や含有量が異なると推定される。この不純物は、エチレンまたはプロピレンを重合させてポリマーを得る重合工程を経た後においても、重合体樹脂中に残存するので、この樹脂をトナー容器に成形する成形工程を行う場合において、樹脂の結晶化に乱れが生じ、それが起点となって、ひびや外観変化などが生じると推定している。
一方、発酵法により得られた原料から得られる樹脂により形成されるトナー容器は、このような問題がなく、大容量のトナー容器をブロー成形により成形する場合においても、樹脂の性質が均一となり、当該トナー容器が優れた強度を有するものとなる。
【0014】
また、本発明のトナー容器の製造方法によれば、基本的に環境に対する負荷が小さく、さらに、トナー容器の大容量化を伴う場合であっても、ブロー成形法による成形性を確保することができて優れた強度を有するトナー容器を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のトナー容器の一例を示す説明用概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
〔トナー容器〕
本発明のトナー容器は、発酵法により得られた原料から得られるポリエチレン(以下、「非石油由来ポリエチレン」ともいう。)およびポリプロピレン(以下、「非石油由来ポリプロピレン」ともいう。)のうち少なくとも一方を含有する樹脂により形成されるものである。
トナー容器を構成する樹脂については、非石油由来ポリエチレン、非石油由来ポリプロピレン以外の樹脂が含有されていてもよい。
【0018】
本発明のトナー容器を構成する樹脂に含有される非石油由来ポリエチレンおよび/または非石油由来ポリプロピレンは、発酵法により得られた原料から得られるものである。
発酵法により得られた原料としては、例えばバイオエタノールが挙げられ、このバイオエタノールは、糖、でんぷんを多く含むとうもろこしやさとうきび、あるいは、セルロースなどの植物資源から、糖質を抽出し、酵母によるエタノール発酵により生成される。そして、非石油由来ポリエチレンは、発酵法により得られたバイオエタノールを適正な触媒下で加熱させ、脱水反応により、エチレンと水とを生成し、得られたエチレンを重合させることにより得られる。また、非石油由来ポリプロピレンについても、上記と同様にしてバイオエタノールを生成し、このバイオエタノールからプロピレンと水とを生成し、得られたプロピレンを重合させることにより得られる。
【0019】
本発明のトナー容器を構成する樹脂において、非石油由来ポリエチレンのメルトインデックス(以下、「MI」ともいう。)は、0.2〜1.0(g/10min)であることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.6(g/10min)である。非石油由来ポリプロピレンのMIは、0.8〜3.0(g/10min)であることが好ましく、より好ましくは0.8〜2.5(g/10min)である。MIが過小である場合においては、樹脂が流動性の低いものとなることから、成形機における押出性の悪いものとなるおそれがある。一方、MIが過大である場合においては、樹脂が流動性の高いものとなることから、得られるトナー容器について、肉厚が均一にならないなど成形性の悪いものとなるおそれがある。
このMIは、ASTM D−1238(非石油由来ポリエチレンは190℃/2.16kg、非石油由来ポリプロピレンは230℃/2.16kg)に準拠してメルトインデクサーを用いて測定されるものである。
【0020】
本発明のトナー容器を構成する樹脂において、非石油由来ポリエチレンの密度は、0.940〜0.980(g/cm3 )であることが好ましく、より好ましくは0.943〜0.968(g/cm3 )である。非石油由来ポリプロピレンの密度は、0.890〜0.950(g/cm3 )であることが好ましく、より好ましくは0.890〜0.920(g/cm3 )である。密度が上記範囲であることにより、得られるトナー容器が所望の強度を有するものとなる。
この密度は、ASTM D−792に準拠して測定されるものである。
【0021】
本発明のトナー容器の形状は、特に限定されないが、例えば、図1に示すような形状のものが挙げられる。
図1において、トナー容器10は、トナー容器本体11の外周面に螺旋状の溝12と、トナー容器本体11の長手方向に沿った直線状の溝13とを有し、この直線状の溝13と、画像形成装置のトナー容器格納空間に設けられた突起部とを嵌合し、挿入することにより、画像形成装置内に装着される。トナー容器10は、トナー容器本体11の一端に設けられたキャップ14が取り外された状態でトナー容器格納空間に装着される。
【0022】
本発明のトナー容器の肉厚は、0.5〜5.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜4.0mmである。
トナー容器の肉厚が5.0mmより大きい場合においては、当該トナー容器をブロー成形により成形するに際して、得られるトナー容器について、肉厚が均一にならないなど成形性の悪いものとなるおそれがある。一方、トナー容器の肉厚が0.5mmより小さい場合においては、得られるトナー容器が必要とされる強度を確保できなくなるおそれがある。
【0023】
本発明のトナー容器の容量は、特に限定されないが、1〜10リットルが好ましく、より好ましくは2〜8リットルである。
【0024】
本発明のトナー容器は、ブロー成形により成形されたものであることが好ましい。
ブロー成形は、パリソンと呼ばれる熱可塑性樹脂を加熱溶融させてパイプ状としたものを、分割された一対の成形用金型に押し出して、一対の成形用金型で挟み込み、パリソンに針状の空気吹き込み口を設け、この空気吹き込み口から空気を一気に送り込むことにより成形する方法である。そして、このパリソンは空気圧により膨らみ、成形用金型に押しつけられ、冷却されて中空状に固化し、その後成形用金型を開いて製品を取り出す作業が行われる。
【0025】
〔トナー容器の製造方法〕
本発明のトナー容器の製造方法は、トナー容器がブロー成形により成形される方法であって、トナー容器を成形する材料として、非石油由来ポリエチレンおよび非石油由来ポリプロピレンのうち少なくとも一方を含有する樹脂を用いる方法である。以下に、ブロー成形による具体的な製造工程を示す。
(1)非石油由来ポリエチレンおよび非石油由来ポリプロピレンのうち少なくとも一方を含有する樹脂を材料として加熱溶融し、この溶融された樹脂(パリソン)を成形用金型に注入する工程
(2)成形用金型に注入されたパリソンに空気を吹き込み、パリソンを膨らませて成形用金型に密着させる工程
(3)成形用金型に密着させたパリソンを冷却する工程
【0026】
〔トナー〕
本発明のトナー容器に収容されるトナーとしては、特に限定されず、従来公知の種々のものを用いることができる。
【0027】
本発明のトナー容器によれば、当該トナー容器が非石油由来ポリエチレンおよび非石油由来ポリプロピレンのうち少なくとも一方を含有する樹脂により形成されていることにより、当該トナー容器を構成する樹脂の原料として、植物などを発酵させる発酵法による非石油由来のものを用いるので、基本的に環境に対する負荷が小さく、さらに、トナー容器の大容量化を伴う場合であっても、ブロー成形による成形性を確保することができて優れた強度を得ることができる。また、本発明によれば、基本的に環境に対する負荷が小さく、トナー容器の大容量化を伴う場合であっても、ブロー成形法による成形性を確保することができて優れた強度を有するトナー容器を製造することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
〔実施例1〕
上述した発酵法により得られたバイオエタノールを原料とする非石油由来ポリエチレン〔1〕を製造し、この非石油由来ポリエチレン〔1〕の含有割合が100質量%である樹脂(MI:0.35(g/10min)、密度:0.957(g/cm3 ))により、ブロー成形法によって、図1に示すトナー容器〔1〕を作製した。このトナー容器〔1〕の肉厚は2.1mmであった。
このトナー容器〔1〕に1000gのトナーを収容し、下記に示す落下テストによる落下強度の評価を行った。結果を表1に示す。
【0030】
〔落下テスト〕
落下テストとしては、トナー容器の両端を手で保持し、高さ1.5mの地点からコンクリート床へ20回落下させ、トナー容器の外観の異常(ひびや破損、へこみなど)の有無を目視にて観察した。10回終了時点で異常が確認できなければ、実用上問題ないとする。
【0031】
〔実施例2〕
実施例1において、非石油由来ポリエチレン〔1〕の代わりに発酵法により得られたバイオエタノールを原料とする非石油由来ポリプロピレン〔2〕を用いたことの他は、実施例1と同様にして、トナー容器〔2〕を作製した。このトナー容器〔2〕の肉厚は1.9mmであった。また、実施例1と同様にして落下強度の評価を行った。結果を表1に示す。
【0032】
〔比較例1〕
実施例1において、非石油由来ポリエチレン〔1〕の代わりに石油由来の原料による石油由来ポリエチレン〔1〕を用いたことの他は、実施例1と同様にして、比較用トナー容器〔1〕を作製した。この比較用トナー容器〔1〕の肉厚は2.0mmであった。また、実施例1と同様にして落下強度の評価を行った。結果を表1に示す。
【0033】
なお、表1に示す樹脂のMIおよび密度は、上述した方法により測定されたものである。
【0034】
【表1】

【0035】
本発明に係る実施例1および2によれば、優れた強度を有するトナー容器を得ることができることが確認された。
【符号の説明】
【0036】
10 トナー容器
11 トナー容器本体
12 螺旋状の溝
13 直線状の溝
14 キャップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵法により得られた原料から得られるポリエチレンおよびポリプロピレンのうち少なくとも一方を含有する樹脂により形成されていることを特徴とするトナー容器。
【請求項2】
当該トナー容器が、ブロー成形により成形されたものであることを特徴とする請求項1に記載のトナー容器。
【請求項3】
ブロー成形によりトナー容器を成形するトナー容器の製造方法であって、
前記トナー容器を成形する材料として、発酵法により得られた原料から得られるポリエチレンおよびポリプロピレンのうち少なくとも一方を含有する樹脂を用いることを特徴とするトナー容器の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2010−260638(P2010−260638A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56994(P2010−56994)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】