説明

トナー撹拌機構、トナーカートリッジ、および画像形成装置

【課題】効率的なトナーの撹拌を行えるトナー撹拌機構を提供すること。
【解決手段】トナー収納容器300に設けられ、収納されたトナーを攪拌するトナー攪拌機構(200,330)であって、トナー撹拌機構は、回転部材(210,220)と、回転部材に根元側縁部が保持された回転羽根22aとを有しており、回転羽根22aの側縁の根元側に設けられた当接部(212,213)と、トナー収納容器の内壁に設けられた、当接部がその外周面に接触するリング状ガイド部材330とを備え、回転部材は、回転軸221と、その回転軸に固定された回転フレーム220とを有し、回転羽根は回転フレームに回動自在に保持されており、リング状ガイド部材は、回転軸を支持する軸受け部320を囲むように設けられており、当接部が接触しながら移動するリング状ガイド部材330の外周面と、回転軸221の中心との距離が、当接部の移動場所によって異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、およびファクシミリなどの画像形成装置、および画像形成装置に用いる、トナー撹拌機構、トナーカートリッジ、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置等の画像形成装置に使用される、トナーカートリッジ用アジテータ(トナー撹拌機構)を内蔵したトナーカートリッジが広く知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0003】
このような従来のトナーカートリッジのアジテータとしては、トナーカートリッジの内壁面に接触しながら移動する撹拌羽根を、トナーカートリッジ内に回転自在に配置された回転軸に固定した構成が一般的である。また、トナーカートリッジの奥側の外壁部には、アジテータを回転駆動させる動力を画像形成装置の駆動源から伝達するためのギア等の動力伝達部が設けられている。更に、トナーカートリッジの側壁には、現像装置側にトナーを補給するためのトナー補給口が設けられている。
【0004】
上記構成の下で、上記動力伝達部からの回転力により、上記回転軸がトナーカートリッジの内部で回転する。それに伴い、上記回転軸に固定された可撓性を有する撹拌羽根が、トナーカートリッジの内壁面と接触して湾曲しながら回転移動する。その撹拌羽根の回転移動により、トナーカートリッジの内部に収容されたトナーが撹拌されながら、トナー補給口側へと搬送される。一方、撹拌羽根の先端部は、トナー補給口の近くまで来ると、上記回転による湾曲状態から開放されて元の形状に戻ろうとして、再び、トナーカートリッジの内側の天井部分に接触する。そのときに、撹拌羽根で撹拌されていたトナーが、湾曲状態が開放された反動で上記トナー補給口側へと掻き上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−178698号公報
【特許文献2】特開2008−58814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のトナーカートリッジの構成では、撹拌羽根が、トナー補給口の近くで湾曲状態から開放されて元の形状に戻ろうとする反動でトナーを掻き上げた後、撹拌羽根の先端部分が再びトナーカートリッジの内側の天井部分に接触する際に、撹拌羽根と天井部分との間で「はたき音」が発生する。このはたき音は、トナーカートリッジ内のトナーの残量が少なくなるにつれて顕著になり、装置本体の騒音の一因になるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記従来のトナーカートリッジの課題を考慮して、従来に比べて騒音を低減できるトナーカートリッジ、及び、それを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本願発明は、
トナー収納部に設けられ、収納されたトナーを攪拌するトナー攪拌機構であって、
前記トナー撹拌機構は、回転部材と、前記回転部材に根元側縁部が保持された板状部材とを有しており、
前記板状部材の側縁の根元側に設けられた当接部と、
前記トナー収納部の内壁に設けられた、前記当接部がその外周面に接触するガイド部とを備え、
前記回転部材は、軸部と、その軸部に固定された回転フレームとを有し、
前記板状部材は前記回転フレームに回動自在に保持されており、
前記ガイド部は、前記軸部を支持する軸受け部を囲むように設けられており、
前記当接部が接触しながら移動する前記ガイド部の前記外周面と、前記軸部の中心との距離が、前記当接部の移動場所によって異なることを特徴とするトナー攪拌機構である。
【0009】
また、請求項2に係る本願発明は、
前記板状部材は可撓性を有しており、前記回転部材の回転により、前記板状部材の先端側縁部が、前記トナー収納部の内壁面と接触して湾曲しながら回転移動することを特徴とする請求項1に係る本願発明のトナー攪拌機構である。
【0010】
また、請求項3に係る本願発明は、
トナーを収納するためのトナー収納部と、
前記収納されたトナーを現像装置側に補給するためのトナー補給口と、
請求項1又は2に係る本願発明のトナー撹拌機構と、を備えたことを特徴とするトナーカートリッジである。
【0011】
また、請求項4に係る本願発明は、
像担持体と、
前記像担持体の表面にトナー画像を形成する現像装置と、
前記現像装置に供給するトナーを収納する請求項3に係る本願発明のトナーカートリッジと、
記録媒体に転写された前記トナー画像を定着させる定着部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0012】
上述した課題を解決するために、第1の本発明は、
トナーを収納するためのトナー収納部と、
前記収納されたトナーを現像装置側に補給するためのトナー補給口と、
前記収納されたトナーを撹拌しながら前記トナー補給口に搬送するための撹拌部と、を備え、
前記撹拌部は、回転部材と、前記回転部材に根元側縁部が保持された可撓性を有する板状部材とを有しており、
前記回転部材の回転により、前記板状部材の先端側縁部が、前記トナー収納部の内壁面と接触して湾曲しながら回転移動し、前記内壁面から離れて開放された後、前記内壁面と再び接触する部分に、前記回転部材の回転軸の方向に凹凸が形成されている、トナーカートリッジであって、
前記板状部材の側縁の根元側に設けられた当接部と、
前記トナー収納部の内壁に設けられた、前記当接部がその外周面と接触するガイド部とを備え、
前記回転部材は、軸部と、その軸部に固定された回転フレームとを有し、
前記板状部材は前記回転フレームに回動自在に保持されており、
前記ガイド部は、前記軸部を支持する軸受け部を囲むように設けられており、
前記当接部が接触しながら移動する前記ガイド部の前記外周面と、前記軸部の中心との距離が、前記当接部の移動場所によって異なる、トナーカートリッジである。
【0013】
また、第2の本発明は、前記内壁面と再び接触する部分は、前記板状部材の先端側縁部が湾曲状態から開放されたときの復元力により前記内壁面を弾く部分である、上記第1の本発明のトナーカートリッジである。
【0014】
また、第3の本発明は、
前記内壁面と再び接触する部分は、前記トナー補給口の近傍の前記トナー収納部の天井部分である、上記第1又は第2の本発明のトナーカートリッジである。
【0015】
また、第4の本発明は、
前記先端側縁部から前記根元側縁部に向けて複数のスリットが設けられており、
前記凹凸の凸部は、前記先端側縁部が前記開放された後、前記スリットとスリットの間の前記板状部材の中央部と接触する位置に配置されている、上記第1、第2又は第3の本発明のトナーカートリッジである。
【0016】
また、第5の本発明は、
前記先端側縁部は、少なくとも一部に曲線部又は折れ曲がり部を有している、上記第4の本発明のトナーカートリッジである。
【0017】
また、第6の本発明は、
像担持体と、
前記像担持体の表面にトナー画像を形成する現像装置と、
前記現像装置に供給するトナーを収納する上記第1〜5の何れかの本発明のトナーカートリッジと、
記録媒体に転写された前記トナー画像を定着させる定着部と、
を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、従来に比べて騒音を低減できるトナーカートリッジ、及び、それを用いた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1におけるトナーカートリッジ1の内部構造を説明するためのトナーカートリッジ本体の斜視図
【図2】図1に示したトナーカートリッジ本体を奥側から見た斜視図
【図3】図1のトナーカートリッジ本体20の天井部分を覆うための蓋30の内側の構造を説明する斜視図
【図4】本発明の実施の形態1におけるトナーカートリッジ1の奥側の分離羽根22a1、22b1の位置で切断して、手前側から見た概略断面図
【図5】本実施の形態2における撹拌部200の構造を説明するための斜視図
【図6】(a)本実施の形態2におけるトナー収納容器300の内側壁の構造を説明するための斜視図:(b)図6(a)のトナー収納容器300に図5で説明した撹拌部200を取り付けた状態を示す斜視図
【図7】本発明の実施の形態2における撹拌部200の動作原理を示す、図6(b)の図中左斜め上奥側から図中右斜め下手前側を見た状態での説明図
【図8】(a)〜(c)本発明の実施の形態における分離羽根の先端側縁部の変形例を示す説明図
【図9】本実施の形態におけるトナーカートリッジに形成された突起の変形例を説明するための断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかるトナーカートリッジ、及びそれを用いた画像形成装置の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
まず最初に本実施の形態1のトナーカートリッジ1の構成について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態1におけるトナーカートリッジ1の内部構造を説明するためのトナーカートリッジ本体の斜視図である。
【0023】
図1に示す様に、本実施の形態のトナーカートリッジ本体20は、現像装置(図示省略)へ適宜補給するためのトナーを収納するトナー収納容器10を備えている。また、トナーカートリッジ本体20は、その内部に回転自在に配置された回転部材21a、21bと、その回転部材21a、21bに固定された、PETフィルムなどを用いた可撓性を有する撹拌羽根22a、22bを備えている。また、トナーカートリッジ本体20の側壁には、現像装置側へトナーを補給するためのトナー補給口23と、そのトナー補給口23にトナーを送り込むための螺旋状の羽根を有する補給スクリュー24を備えている。また、トナーカートリッジ本体20は、その上面が大きく開口しており、その開口部分を取り囲む様に、後述する蓋30(図3参照)を取り付けるフランジ部29が設けられている。
【0024】
また、撹拌羽根22a、22bには、トナーの撹拌性能を調整するためのスリット25及び開口部26が設けられている。また、撹拌羽根22aの先端側縁部は、スリット25により分離されて、分離羽根22a1〜22a7を形成している。同様に、撹拌羽根22bの先端側縁部は、分離羽根22b1〜22b7を形成している。尚、この様に、スリット25や開口部26が設けられていることにより、撹拌羽根22a、22bに掛かる撹拌時のトルクを分散することが可能である。
【0025】
図2は、図1に示したトナーカートリッジ本体を奥側上部から見た斜視図である。
【0026】
図2に示す様に、トナーカートリッジ本体20の奥側(図中では手前側)の外壁部には、回転部材21a、21bの軸に回転力を伝達するための、画像形成装置(図示省略)の駆動部と嵌合する嵌合突起27を有するギア機構28が設けられている。また、トナーカートリッジ本体20の奥側の外壁部の端から突き出している嵌合軸24aは、補給スクリュー24の端部と繋がっており、画像形成装置の駆動部と嵌合されて、補給スクリュー24に回転力を伝達するためのものである。
【0027】
図3は、図1のトナーカートリッジ本体20の天井部分を覆うための蓋30の内側の構造を説明する斜視図である。
【0028】
蓋30には、図3に示す様に、トナーカートリッジ本体20のフランジ部29と接合する平面部35と、トナーカートリッジ本体20側に飛び出した補強用凸部36a〜36eが設けられており、更に、その補強用凸部36a〜36eに囲まれた蓋の内壁面には長手補強用リブ37L1、37L2、及び短手補強用リブ38S1、38S2、・・・38S10が格子状に設けられている。
【0029】
また、図3に示す様に、蓋30の内壁面には、トナーカートリッジ本体20の補給スクリュー24に近い方から順に、第1の突起31a1〜31a7の列と、第2の突起32a1〜32a7の列と、第3の突起33b1〜33b7の列が設けられている。これら各突起は、図1に示した回転羽根の各分離羽根の先端部の幅方向(撹拌羽根の回転軸に平行な方向)の中央部が接触する位置に配置されている。即ち、第1の突起31a1〜31a7は、それぞれ撹拌羽根22aの各分離羽根22a1〜22a7の中央部と最初に接触(衝突を含む)する位置に設けられており、第2の突起32a1〜32a7は、それぞれ撹拌羽根22aの各分離羽根22a1〜22a7の中央部と接触する位置に設けられている。
また、第3の突起33b1〜33b7は、それぞれ撹拌羽根22bの各分離羽根22b1〜22b7の中央部と接触する位置に設けられている。更に、各突起の高さ、形状及び位置は、各分離羽根との接触により発生する「はたき音」や「摺擦音」が少なくなる様に調整されている。
【0030】
尚、本発明のトナー収納部の一例が、本実施の形態のトナー収納容器10と蓋30を含む概念に相当する。本発明の板状部材の一例が、本実施の形態の撹拌羽根22aに相当し、本発明の撹拌部の一例が、本実施の形態の撹拌羽根22aと回転部材21aを含む概念に相当する。また、本実施の形態の第1の突起の列は、各突起が凸部であり、突起の無いところ(例えば、突起31a1と突起31a2の間)が凹部であると見れば、これら凸部と凹部は、撹拌羽根22aが湾曲状態から開放されて最初に衝突する蓋30の内壁面の部分に、回転部材21aの回転軸の方向に交互に形成されていると言える。よって、本実施の形態の第1の突起31a1〜31a7の列が形成されている構成は、本願発明の、「前記内壁面と再び接触する部分に、前記回転部材の回転軸の方向に凹凸が形成されている」構成の一例である。
【0031】
次に、本実施の形態のトナーカートリッジ1の動作について、主として図4を参照しながら説明する。
【0032】
図4は、トナーカートリッジ1を、その奥側に配置された分離羽根22a1、22b1の位置で切断して、手前側から見た概略断面図である。尚、説明の都合上、トナーの図示を省略した。
【0033】
画像形成装置の駆動部からの回転力が、ギア機構28(図2参照)を介して回転部材21a、21bに伝達されると、各回転部材は矢印Rで示す様に右回りに回転する。この回転動作に伴って、撹拌羽根22aの一部である分離羽根22a1は、例えば、位置P1では、トナーカートリッジ本体20の内壁面と接触しながらトナーを撹拌しているため、蓋30側に凸になる様に反った湾曲状態に変形している。その後、分離羽根22a1が更に回転してその先端部が位置P2を越え、内壁面から離れ湾曲状態から開放されると、その復元力によりトナーを補給スクリュー24の方に掻き上げる。それと同時に、分離羽根22a1の先端側縁部の幅方向の中央部が、蓋30の内壁に形成された第1の突起31a1と位置Qにおいて、最初に衝突する。ここで、本発明の動作の理解を容易にするために、従来の構成の動作と比較しながら説明する。
【0034】
即ち、従来のトナーカートリッジの構成では、第1の突起31a1〜31a7が設けられていないので、撹拌羽根が図4の位置P2を越えたあたりで湾曲状態から開放されてトナーを掻き上げると同時に補強用凸部36aと長手方向(撹拌羽根の回転軸の沿った方向)に亘って広い範囲で衝突する。その為に、その衝突により発生するはたき音が問題となる。
【0035】
これに対して、上述した様に、本実施の形態のトナーカートリッジ1の第1の突起31a1〜31a7は、その各突起の先端部が、各分離羽根22a1〜22a7と最初に衝突する様に、補強用凸部36aの長手方向に沿って飛び飛びに形成されている。そのため、各分離羽根の中央部が、図4の位置P2を越えたあたりで湾曲状態から開放されてトナーを掻き上げると同時に、補強用凸部36aの長手方向に沿って飛び飛びに形成された第1の突起31a1〜31a7と最初に衝突するので、その衝突の範囲が、従来のトナーカートリッジに比べて大幅に小さくでき、はたき音の発生を抑制できる。また、第1の突起31a1〜31a7がトナーカートリッジ本体20の底面側に向けて突き出すように形成されているため、分離羽根22a1〜22a7が湾曲状態から開放されると直ぐに各突起の先端部と最初に衝突するので、そのような突起が形成されていない従来の場合と比べて、分離羽根が開放されたときの戻りの速度を抑え、衝撃を小さくすることが出来る。
【0036】
また、分離羽根22a1の先端側縁部の中央部が各突起と最初に衝突した後、その中央部以外の分離羽根の部分が、時間的に少し遅れて蓋30の内壁面と接触したとしても、分離羽根22a1の戻りの速度が既に十分抑制されているので、中央部の最初の衝突に比べて緩やかであり、はたき音として問題になることは無い。他の分離羽根22a2〜22a7と、第1の突起31a2〜31a7との衝突についても、上記説明と同様である。
【0037】
従って、本実施の形態の分離羽根22a1〜22a7の衝突により発生する「はたき音」は、この様な突起31a〜31a7が形成されていない従来のトナーカートリッジに比べて低減される。
【0038】
尚、第1の突起を、分離羽根の先端側部分よりも根元側部分で衝突する様に形成しておくことにより、更に戻りの速度を抑えることが出来る。
【0039】
次に、第2の突起32a1〜32a7の効果について説明する。
【0040】
分離羽根22a1が上記回転動作を更に続けると、分離羽根22a1の先端側縁部の中央部が第2の突起32a1と線状接触しながら移動することにより、分離羽根22a1の先端が長手補強用リブ37L1の先端エッジから遠ざかる方向に持ち上げられる。そのため分離羽根22a1の先端部が、長手補強用リブ37L1に引っかかることが防止でき、その時に生じる摺擦音の発生を防止できると共に、分離羽根22a1の回転をスムーズに出来る。更に、第2の突起32a1によって、分離羽根22a1の先端部が、長手補強用リブ37L1と37L2の間の短手補強用リブ38S1と摺擦することなく湾曲状態から開放される様に案内される。他の分離羽根22a2〜22a7と、第2の突起32a2〜32a7との関係についても、上記説明と同様である。
【0041】
従って、本実施の形態では、この様に各分離羽根22a1〜22a7の中央部が第2の突起32a1〜32a7と線状接触する構成であるため、分離羽根と長手補強用リブ37L1や短手補強用リブ38S1との接触により発生する摺擦音が低減される。
【0042】
次に、第3の突起33b1〜33b7の効果について説明する。
【0043】
撹拌羽根22bの一部である分離羽根22b1は、仮に第3の突起33b1が形成されていないとすると、蓋30の内壁面から、トナーカートリッジ本体20の内壁面へと移動する際に、湾曲状態から開放されてカートリッジ本体20の内壁面と衝突することではたき音を発生する。しかし、本実施の形態では、第3の突起33b1が形成されているために、分離羽根22b1が、蓋30の内壁面から、トナーカートリッジ本体20の内壁面へと移動する際に、常に第3の突起33b1と線状接触しており、湾曲状態から開放されることがないので、はたき音が発生することが無い。他の分離羽根22b2〜22b7と、第3の突起33b2〜33b7との関係についても、上記説明と同様である。
【0044】
従って、本実施の形態では、この様に各分離羽根22b1〜22b7の中央部が第3の突起33b1〜33b7と線状接触する構成であるため、主としてはたき音が低減される。
【0045】
(実施例1)
次に、本実施の形態の図1〜4で説明した構成のトナーカートリッジ1と、トナーカートリッジの蓋に第1の突起の列〜第3の突起の列が形成されていないことを除いては本実施の形態と全く同じ形状のトナーカートリッジを比較例として用いて行った騒音測定の結果を説明する。
【0046】
本実施の形態のトナーカートリッジ1と、比較例のトナーカートリッジをそれぞれ、同じ構造の画像形成装置にセットして、画像形成装置の前面側からそれぞれ3回測定した。各回の測定値は、30秒間の平均音圧である。尚、何れのトナーカートリッジもトナーを入れてない状態で動作させた。
【0047】
上記の条件の下での騒音測定結果を(表1)に示す。
【0048】
【表1】

表1から分かる通り、比較例における、1回目〜3回目の測定値の平均が68.80dB(A)であるのに対して、本実施の形態のトナーカートリッジ1における、1回目〜3回目の測定値の平均は67.68dB(A)であり、1.12dB(A)の改善効果があることが確認できた。
(実施の形態2)
次に、本実施の形態2のトナーカートリッジ100の構成について図面を参照しながら説明する。
【0049】
本実施の形態2と上記実施の形態1との相違点は、撹拌部200の構造と、それに対応するトナー収納容器300の内側壁の構造である。その他の構造は基本的に実施の形態1と同じであるので同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
図5は、本実施の形態2における撹拌部200の構造を説明するための斜視図である。
【0051】
図5に示す様に、撹拌部200は、撹拌羽根22aと、撹拌羽根22aを固定する羽根固定部材210と、撹拌羽根22aが固定された羽根固定部材210を、後述する貫通孔214により回動可能に保持する回転フレーム220を備える。尚、図5では、撹拌羽根22aを備えた撹拌部200を示しているが、撹拌羽根22bを備えた撹拌部も図5と同じ構成であるのでその説明は省略する。
【0052】
また、羽根固定部材210の両端には軸部211が設けられており、回転フレーム220の側面に設けられた貫通孔214により回動可能に支持されている。また、羽根固定部材210の一方の端部(図5中の手前側)には、円筒形状のガイドピン213を先端に回転自在に保持したアーム212が設けられている。ガイドピン213については、図6(b)を参照しながら更に後述する。
【0053】
また、回転フレーム220には、後述するトナー収納容器300の側壁面に形成された軸受け部320(図6(a)参照)により支持される回転軸221が設けられている。尚、本発明の軸部の一例が、本実施の形態の回転軸221に相当する。
【0054】
図6(a)は、本実施の形態2におけるトナー収納容器300の内側壁の構造を説明するための斜視図である。また、図6(b)は、図6(a)のトナー収納容器300に図5で説明した撹拌部200を取り付けた状態を示す斜視図である。これらの図は、図1のトナーカートリッジ本体20を図1中の奥側から手前側を見た図に相当する。
【0055】
図6(a)に示す様に、トナー収納容器300の内壁部310には、回転フレーム220に設けられた回転軸221(図5参照)を支持する軸受け部320と、その軸受け部320を円形に取り囲む様に形成されたリング状ガイド部材330とが、それぞれの中心が重ならないように偏芯させて設けられている。即ち、リング状ガイド部材330の外形の中心が、軸受け部320の中心に対して、補給スクリュー24側(図6(a)中の−X方向)にずれている。尚、トナー収納容器300の内壁部310には、図1で説明した補給スクリュー24の軸を支持するための支持部340が形成されている。
【0056】
図6(b)に示す様に、ガイドピン213は、アーム212の先端から、トナー収納容器300の内壁部310側に突き出して回転自在に配置されており、且つ、回転フレーム220が軸受け部320に支持されて回転すると、リング状ガイド部材330の外周面によって案内されて移動する様に構成されている。
【0057】
上記構成により、羽根固定部材210に固定された撹拌羽根22aは、後述するガイドピン213の動きに連動して特有の動きを示すことになる。
【0058】
次に、本実施の形態のトナーカートリッジ100の動作について、主として図7を参照しながら説明する。
【0059】
図7は、撹拌部200の動作原理を示す、図6(b)の図中左斜め上奥側から図中右斜め下手前側を見た状態での説明図である。図7では、回転フレーム220の回転に伴ってガイドピン213及び分離羽根22a7がどの様な動きをするのかを理解するために、回転フレーム220が5方向(それぞれほぼ、−X方向、Y方向、X方向、−Y方向、及び−X方向と−Y方向の中間方向)の回転位置にある場合を例に挙げて描くことにより、分離羽根22a7の先端部の動きの軌跡90を表している。尚、回転フレーム220の方向とは、回転軸221から軸部211側を見たときの方向を言う。また、図面の理解を容易にするために、回転フレーム220がほぼ−X方向の回転位置にある場合を実線で示し、その他の位置にある場合は破線で示した。また、リング状ガイド部材330の外周面を二点鎖線で表し、軌跡90を破線で表した。また、回転フレーム220の回転の中心に符号Oを付し、リング状ガイド部材330の外形の中心に符号O’を付した。
【0060】
本実施の形態のトナーカートリッジ100の構成によれば、R方向に回転する分離羽根22a7に対して、トナーの存在やトナー収納容器300及び蓋30の内壁面との接触等により逆向きの力が作用するため、ガイドピン213は、図7に示す様にリング状ガイド部材330の外周面に沿って移動する。ただし、図7では、その逆向きの力の作用による分離羽根22a7の湾曲を考慮しない場合における動きを示している。
【0061】
図7に示す様に、回転フレーム220の回転により、回転フレーム220が左方向(−X方向)を向いている状態では分離羽根22a7の先端が位置Aに、回転フレーム220が上方向(Y方向)を向いている状態では分離羽根22a7の先端が位置Bに、回転フレーム220が右方向(X方向)を向いている状態では分離羽根22a7の先端が位置Cに、回転フレーム220が下方向(−Y方向)を向いている状態では分離羽根22a7の先端が位置Dに、そして、回転フレーム220が斜め左下方向を向いている状態では分離羽根22a7の先端が位置Eに、それぞれ来る様にリング状ガイド部材330、ガイドピン213、及びアーム212等の形状、配置が調整されている。尚、回転フレーム220が上方向(Y方向)を向いている状態が、図6(b)に示す斜視図に対応している。
【0062】
従って、分離羽根22a7の先端と回転軸221の中心Oとの距離は、位置A近傍で最も長く、位置C近傍で最も短くなる。即ち、回転フレーム220が概ねX方向から−Y方向を経て−X方向に回転移動する間(言い換えれば、軌跡90の下半分の領域)は、分離羽根22a7の先端と回転軸221の中心Oとの距離は、概ね増加する傾向にあり、−X方向からY方向を経てX方向に回転移動する間(言い換えれば、軌跡90の上半分の領域)は、分離羽根22a7の先端と回転軸221の中心Oとの距離は、概ね減少する傾向にある。軌跡90の下半分の領域は、トナー収納容器300の収納スペースに対応し、軌跡90の上半分の領域は、蓋30の内壁面に対応している。この様な特有の動きが生じるのは、図7に示す中心OとO’の位置が偏芯していることに起因している。
【0063】
この様に構成したことにより、撹拌羽根22a、22bを強く接触させる必要があるトナー収納容器300の底面側の内壁面には強く接触させることが出来、且つ、その必要が無い蓋30の内壁面では、弱く接触させることが出来る。この様に、撹拌羽根22a、22bの内壁面への当て方を適切に変化させているので、より一層効率的にトナーの撹拌及び搬送を行うことができ、且つ、実施の形態1で述べたはたき音や、摺擦音等の騒音を低減することも可能である。
【0064】
尚、上記実施の形態では、各分離羽根22a1〜22a7等の先端側縁部の端は直線状に揃っている場合について説明したが、これに限らず例えば、図8(a)に示す様に、各分離羽根のスリット25に近い側に複数の切り込み51を入れた構成でも良い。この様に、トナーの撹拌性能などに影響を与えない程度の切り込み51を入れることにより、分離羽根22a1〜22a7等の先端側縁部のこしが少し弱くできるので、蓋30の内壁面と接触する時の衝撃が吸収されやすくなり、はたき音が低減される。ここで、分離羽根の先端側縁部の中央部には、蓋30の内壁面に形成された本実施の形態の突起31a〜31a7などが接触する部分であるので、切り込みは入れない。
【0065】
また、上記実施の形態では、各分離羽根22a1〜22a7の先端側縁部の端は直線状に揃っている場合について説明したが、これに限らず例えば、トナーの撹拌性能などに影響を与えない範囲内において、図8(b)に示す様に、分離羽根の先端側縁部の端の中央部を除いて、スリット25に向けて緩やかな傾斜52を持たせても良いし、図8(c)に示す様に、分離羽根の先端側縁部の端の中央部を含めて、緩やかなカーブ53を持たせても良い。また、これらの構造と、図8(a)に示す切り込み51を組み合わせた構造でも良い。この様に、トナーの撹拌性能などに影響を与えない程度に分離羽根の形状を整形することにより、分離羽根22a1〜22a7の先端側縁部の端と蓋30の内壁面との接触が少なく出来るので、摺擦音等が低減される。
【0066】
また、上記実施の形態では、撹拌羽根にスリットが設けられている場合について説明したが、これに限らず例えば、スリットが形成されていない構成でも良い。
【0067】
また、上記実施の形態では、蓋30に第1〜第3の突起を設けた構成について説明したが、これに限らず例えば、少なくとも第1の突起31a1〜31a7を設けた構成でも良い。これにより、少なくとも撹拌羽根22aによるはたき音を低減できる。
【0068】
また、上記実施の形態では、第3の突起33b1〜33b7を蓋30に設けた構成について説明したが、これに限らず例えば、図9に示す様に、分離羽根22b1〜22b7の先端側縁部が、湾曲しながら蓋30の内壁面と接触しつつ移動して、その湾曲状態が開放されて後、トナー収納容器10の内壁面に設けられた複数の突起11b1に接触する構成としても良い。これにより、撹拌羽根22bがトナーカートリッジ本体の内壁面と接触する際に発生するはたき音を低減することが出来る。尚、図9では、分離羽根22b1の先端側縁部が接触する突起11b1のみを表したが、この突起と同じ形状の6つの突起が、残りの分離羽根22b2〜22b7に対応する様に、回転部材21bの回転軸の方向に所定の間隔で形成されている。
【0069】
また、上記実施の形態では、リング状ガイド部材330の外形が円形状である場合について説明したが、これに限らず例えば、その外形が円形以外の曲線で、軸受け部320を取り囲む様に形成されていても良い。要するに、リング状ガイド部材の形状は、ガイドピン213が接触しながら移動するリング状ガイド部材の外周面と、回転軸221の中心との距離が、ガイドピン213の移動場所によって異なる様に構成されておりさえすれば良い。
【0070】
また、上記実施の形態で述べたトナーカートリッジと、像担持体の一例としての感光体ドラムと、その感光体ドラムの表面にトナー画像を形成する現像装置と、記録媒体の一例としての紙に感光体ドラムから転写されたトナー画像を定着させる定着部とを備えた画像形成装置は、本発明の画像形成装置の一例である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係るトナーカートリッジ、及び画像形成装置は、従来に比べて騒音を低減できるという効果を有し、プリンタ、複写機およびファクシミリなどの画像形成装置、およびそれらに用いるトナーカートリッジ等として有用である。
【符号の説明】
【0072】
1、100 トナーカートリッジ
10、300 トナー収納容器
20 トナーカートリッジ本体
21a、21b 回転部材
22a、22b 撹拌羽根
24 補給スクリュー
25 スリット
26 開口部
27 嵌合突起
28 ギア機構
30 蓋
31a1〜31a7 第1の突起
32a1〜32a7 第2の突起
33b1〜33b7 第3の突起
200 撹拌部
210 羽根固定部材
211 軸部
212 アーム
213 ガイドピン
220 回転フレーム
221 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー収納部に設けられ、収納されたトナーを攪拌するトナー攪拌機構であって、
前記トナー撹拌機構は、回転部材と、前記回転部材に根元側縁部が保持された板状部材とを有しており、
前記板状部材の側縁の根元側に設けられた当接部と、
前記トナー収納部の内壁に設けられた、前記当接部がその外周面に接触するガイド部とを備え、
前記回転部材は、軸部と、その軸部に固定された回転フレームとを有し、
前記板状部材は前記回転フレームに回動自在に保持されており、
前記ガイド部は、前記軸部を支持する軸受け部を囲むように設けられており、
前記当接部が接触しながら移動する前記ガイド部の前記外周面と、前記軸部の中心との距離が、前記当接部の移動場所によって異なることを特徴とするトナー攪拌機構。
【請求項2】
前記板状部材は可撓性を有しており、前記回転部材の回転により、前記板状部材の先端側縁部が、前記トナー収納部の内壁面と接触して湾曲しながら回転移動することを特徴とする請求項1に記載のトナー攪拌機構。
【請求項3】
トナーを収納するためのトナー収納部と、
前記収納されたトナーを現像装置側に補給するためのトナー補給口と、
請求項1又は2に記載のトナー撹拌機構と、を備えたことを特徴とするトナーカートリッジ。
【請求項4】
像担持体と、
前記像担持体の表面にトナー画像を形成する現像装置と、
前記現像装置に供給するトナーを収納する請求項3に記載のトナーカートリッジと、
記録媒体に転写された前記トナー画像を定着させる定着部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−84003(P2013−84003A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−283255(P2012−283255)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2009−13678(P2009−13678)の分割
【原出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】