説明

トモグラフィデータ収集及び画像再構成のためのシステム及び方法

【課題】トモグラフィ撮像データを収集し時間分解能を改良したトモグラフィ画像を再構成する装置及び方法を提供する。
【解決手段】トモグラフィシステムは、スキャン対象の物体(214)を受け容れるための開口部を有するガントリ(202)と、放射線源(204)と、該線源(204)から物体(214)を通過した放射線を受け取るように位置決めされた検出器(206)と、コンピュータ(224)と、を含む。コンピュータ(224)は、物体の複数の投影データ組を収集すること、該複数の投影データ組から投影データ組の時間部分組を規定すること、複数の投影データ組を用いて物体の作業画像を再構成すること、作業画像内で運動領域を特定すること、及び投影データ組の時間部分組を用いて作業画像の運動領域内にある運動アーチファクトを最小化すること、を行うようにプログラムされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は全般的にはトモグラフィ撮像に関し、またさらに詳細には、トモグラフィ撮像データを収集し時間分解能を改良したトモグラフィ画像を再構成する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層(CT)撮像システムなどのX線システムでは典型的には、患者、手荷物やその他任意の関心対象物などの対象に向けてX線源によりファン(fan)形状またはコーン(cone)形状のビームが放出される。本明細書の以下において、「対象(subject)」及び「物体(object)」という用語は撮像を受けることが可能な任意のものを含むものとする。ビームは対象により減衰を受けた後、放射線検出器のアレイ上に入射する。検出器アレイの位置で受け取った減衰した放射線ビームの強度は典型的には、対象によるX線ビームの減衰に依存する。検出器アレイの各検出器素子は、検出器素子により受け取った減衰ビームを表した電気信号を発生させる。この電気信号は、ディジタル信号に変換されて解析のためにデータ処理システムに送られ、データ処理システムにより最終的に画像が作成される。
【0003】
一般にX線源と検出器アレイは、撮像面内のガントリの周りでかつ対象を取り囲んで回転させている。X線源は典型的には、焦点からX線ビームを放出するX線管を含む。X線検出器は典型的には、検出器の方向に向けてX線ビームをコリメートさせるためのコリメータと、該コリメータに隣接させたX線を光エネルギーに変換するためのシンチレータと、該光エネルギーをシンチレータから受け取りこれから電気信号を生成するためのフォトダイオードと、を含む。典型的にはシンチレータアレイの各シンチレータは、X線を光エネルギーに変換すると共に、これに隣接させたフォトダイオードに対してこの光エネルギーを排出している。各フォトダイオードは、光エネルギーを検出し、対応する電気信号を発生させている。フォトダイオードの出力はディジタル化された後、画像再構成のためにデータ処理システムに送られる。X線検出器は、周回方向の角度レンジまたはファン角度(典型的には、60°のことが多い)にわたって広がっている。
【0004】
一般用語としての「CT撮像」は複数の構成を包含している。例えばその構成は、例えば心臓撮像に利用し得るようなマルチスライス型撮像システムまたはマルチ検出器CT(MDCT)撮像システムを含むことが可能である。こうしたシステムは、心拍サイクルの一部または1つのフェーズにわたって取得した撮像データを用いた心臓画像の作成のために使用されることがある。従来では、画像再構成のための撮像データの最小投影角度はガントリ回転の180°にX線検出器ファン角度を加えたものであった。したがって典型的な60°のファン角度では、画像再構成のための最小投影角度または時間アパーチャは240°の投影データであった。この投影データは、「ハーフスキャン」または「短縮スキャン」のカバー範囲にわたって取得されており、また周知の再構成技法を用いて再構成されることがある。この従来の例では、このハーフスキャン投影データ組の取得と再構成アルゴリズムを含めた所要時間によって撮像システムの時間分解能が規定される。換言すると時間分解能は、画像再構成のために最小限適するデータと再構成に実際に使用されるデータとを取得するのに要する時間であると規定される。あるケースでは、当技術分野で理解されているように、あるタイプの荷重関数を用いて240°のガントリ回転にわたって短縮スキャンデータが取得されている。
【0005】
角度カバー範囲(または、時間アパーチャ)とガントリ回転速度はしたがって、MDCTスキャナにおいて時間分解能を規定する主要な要因である。典型的な単一線源MDCTスキャナでは、時間分解能はしたがって例えば、270msのガントリ回転速度では概ね135msであり、またParkerタイプの重み付けを用いた350msのガントリ回転速度では概ね175msである。多くの撮像用途ではこうした時間分解能は、受容可能な運動アーチファクトを伴う画像を提供するのに適する。
【0006】
しかし、この短縮スキャンデータが収集されている240°のガントリ回転の間では心臓は動くために、短縮スキャンデータにより再構成した画像ではボケ、ストリーキングまたは別の撮像アーチファクトを来す可能性がある点でこの時間分解能は不適当となり得る。このことは基本的に、典型的な心拍数、ガントリ速度、その他に基づいたこの240°収集の間に生じた心臓の運動に由来する。しかし、心拍サイクルの休止期(quiescent period)は概ね90°〜130°のガントリ回転の間に生じている。心臓撮像用途並びに240°のガントリ回転にわたる場合に物体の運動に由来して撮像アーチファクトが生じ得るような一般用途においては、時間分解能を上昇させることが望ましい。画像を向上させるためや画像アーチファクトを低減または排除するために、典型的な心拍数に基づいて時間分解能を2倍まであるいはこれ以上に上昇させることが望ましい。
【0007】
ガントリ速度を増大させることにより全体の収集時間を短縮することあるいは追加的な線源や検出器の追加などハードウェアを変更することによって、時間分解能が改善される可能性がある。より短い時間期間で取得したデータを用いて再構成が実施されるために、アーチファクトが低減または排除されることがある。
【0008】
しかし、ガントリに作用するガントリ重量やその他の力によってガントリが動作できる速度は制限される。当技術分野で周知のように、ガントリにかかる荷重は一般に、ガントリ回転速度に対する2乗の率で増大する。したがってある速度になった後で収集時間をさらに短縮するには、改良した画質を達成するためにより強力なX線管が必要となるのが一般的である。したがって、寿命、信頼度及び動作性能の観点を考慮しなければならず、またガントリ上のコンポーネントの安定性及び機能を大きなガントリ速度で維持することが極めて重要である。
【0009】
時間分解能を改善するための別の技法は、デュアル管球/検出器構成を含む。こうしたシステムでは、2つの管球を同時に動作させ、これにより単一線源システムと比較して全体の収集時間を短縮させかつ時間分解能を上昇させている。分解能は改善されるが、これに伴って受け入れがたい上昇が生じる。さらに、ガントリ上のスペースが限られているため、単一の小型ガントリ内における2つのX線管と2つのフルFOV検出器の配置の制約となる可能性がある。したがって多くの場合、第2の検出器は所望のスキャンFOVの一部のみしかカバーしていない。さらにデュアル管球/検出器CTシステムは、単一管球システムと比較したときにかなり多くの共用リソース(すなわち、冷却剤フロー、電気回路)を含む可能性がある。
【0010】
したがって、こうしたシステムを包含する撮像部一式には、この追加の共用リソースを提供するように大規模で高コストの拡張が必要となることが多い。さらに主要なコンポーネント(すなわち、管球、検出器及びDAS)の数が2倍になるために、動作コンポーネントの数が多くなることによってシステム全体の信頼度が損なわれることがある。したがって、こうしたシステムでは時間分解能が改善され得るものの、この時間分解能の上昇は、単一線源システムと比較したときのシステムの初期費用や進行中の動作のコストの増大、費用が高くつく拡張、並びに信頼度の低下の可能性という犠牲において得られるものである。
【0011】
単一光子放出コンピュータ断層(SPECT)や陽電子放出断層(PET)などの他の撮像様式でも、心臓運動や呼吸運動に由来するボケその他の画像アーチファクトを改善させるための分解能上昇からの恩恵を得ることが可能であることも知られている。こうしたボケは所与の収集中の不適当なデータ収集によって生じることや、トモグラフィ撮像データを取得するための時間が過度に長いことによって生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7221728号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、ハードウェアの2倍化に関連したコスト追加を伴うことなく費用対効果がよくかつ全体効率が高い方式でトモグラフィ撮像における運動ボケを最小化するようなシステム及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施形態は、時間分解能を改良した撮像データの収集及び画像の再構成のための方法及び装置を目的とする。
【0015】
本発明の一態様によるトモグラフィシステムは、スキャン対象の物体を受け容れるための開口部を有するガントリと、放射線源と、該線源から物体を通過した放射線を受け取るように位置決めされた検出器と、コンピュータと、を含む。このコンピュータは、物体の複数の投影データ組を収集すること、該複数の投影データ組から投影データ組の時間部分組を規定すること、複数の投影データ組を用いて物体の作業画像を再構成すること、該作業画像内で運動領域を特定すること、並びに投影データ組の時間部分組を用いて作業画像の運動領域内にある運動アーチファクトを最小化すること、を行うようにプログラムされている。
【0016】
本発明の別の態様による画像再構成方法は、物体の複数の投影データ組を取得するステップと、該複数の投影データ組から投影データ組の時間部分組を規定するステップと、該複数の投影データ組を用いて物体の画像を再構成するステップと、投影データ組の時間部分組を用いて画像の少なくとも1つの特定済みボクセル内の運動アーチファクトを補正するステップと、を含む。
【0017】
本発明のさらに別の態様によるコンピュータ読み取り可能記憶媒体は、コンピュータにより実行させたときに該コンピュータに対して、物体の複数のトモグラフィ像データ組にアクセスすること、複数のトモグラフィ像データ組の時間部分組を特定すること、複数のトモグラフィ像データ組を用いて物体の処理用画像を再構成すること、並びにトモグラフィ像データ組の時間部分組のうちの少なくとも1つのトモグラフィ像データ組を用いて処理用画像の特定済みの運動領域内にある少なくとも1つの画像ボクセルを改訂すること、を行わせる命令を含んだコンピュータプログラムをその上に保存して有する。
【0018】
これらの利点及び特徴、並びにその他の利点及び特徴については、添付の図面と関連して提供している本発明の実施形態に関する以下の詳細な説明からより容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態によるトモグラフィ撮像システムにとって一般的なデータ収集及び画像再構成を表した流れ図である。
【図2】本発明の実施形態を組み込んだCT撮像システムの外観図である。
【図3】本発明の実施形態を組み込んだ図1に示すシステムのブロック概要図である。
【図4】本発明の一実施形態による作業画像内で運動領域を特定するために使用されるハーフスキャンデータを表した図である。
【図5】本発明の一実施形態によるスキャンデータ内で運動を特定するための技法を表した流れ図である。
【図6】図5の技法に関連する例示的な時間期間を表した例示的なタイムラインである。
【図7】本発明の一実施形態による運動マップを作成するための技法を表した流れ図である。
【図8】本発明の別の実施形態による運動マップを作成するための技法を表した流れ図である。
【図9】本発明の実施形態を組み込んだSPECT撮像システムの外観図である。
【図10】本発明の実施形態を組み込んだPETシステムの外観図及びブロック図である。
【図11】図10のPETシステムの検出器リングを表した図である。
【図12】本発明の実施形態を組み込んだ手荷物スキャン装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
トモグラフィ撮像デバイスは、X線システム、磁気共鳴(MR)システム、超音波システム、コンピュータ断層(CT)システム、陽電子放出断層(PET)システム、超音波、核医学、単一光子放出コンピュータ断層(SPECT)システム、C字アームを有するX線システム、及び別のタイプの撮像システムを含む。X線の用途には、医学分野、セキュリティ用途、工業検査用途を含む様々な撮像、検査及び解析用途を含むことが可能である。本明細書においては、少なくともCT、SPECT及びPETを含むトモグラフィ撮像システムに関連して、本発明の実施形態を記載することにする。しかし本発明の実施形態は、時間再構成ウィンドウの外部にデータが存在しており、かつこれを利用して画像再構成を改善させると共にその内部にあるボケその他のアーチファクトが低減されるような、時間ウィンドウからデータを再構成しているX線システムなどの任意の撮像システムに概して適用可能であることを理解されたい。
【0021】
心臓冠動脈撮像は、本発明の実施形態に従って高い心拍数(例えば、毎分90回を超える心拍数)で首尾よく実施することが可能である。例えば心臓CT撮像の時間分解能は、従来の技法に対してスキャナハードウェアを全く変更することなく有効に概ね2倍改善することが可能である。したがって本発明の実施形態は、70bpmという心拍数の目下の限界及び従来の限界と比べてより高い心拍数において患者に対する高信頼の冠動脈CT撮像を実現可能な単一線源MDCTスキャナを含む。本発明の実施形態はまた、例えば本発明の実施形態を用いないデュアル線源MDCTスキャナに対するハードウェア修正を伴わないデュアル線源MDCTスキャナによるさらに高い時間分解能の達成を可能にする。SPECT及びPETの時間分解能に関連する改善も同様に達成される。
【0022】
図1は、多くのトモグラフィ撮像システムにとって一般的な本発明の実施形態による時間分解能を改良した画像を取得するためのデータ収集、画像再構成及び画像の改訂を表した流れ図である。したがって一般的にまた本発明の実施形態によれば技法100は、画像を再構成するステップと、その時間分解能を改善させるように画像を改訂するステップと、を含む。技法100は、物体に関するスキャンデータが収集されるステップ102で開始されており、このデータは典型的には所与の時間レンジにわたる、あるいは与えられた撮像システムにとって特有となり得る期間中の複数の投影データ組104を含む。例えばCT撮像ではステップ104において、当技術分野において理解されているように180°プラス検出器ガントリ回転角を成すのが典型的であるような短縮スキャンデータ組が収集されることがある。しかし本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ステップ104において短縮スキャンを超えるデータが収集されることがある。別の例ではステップ104において、規定の短縮スキャンレンジのガントリ運動を超えてスキャンデータが取得される。SPECTでは、例えば10分間の期間にわたりまた180°のガントリ回転にわたってデータが取得されることがある。PETでは例えば、5分間にわたって撮像データが取得されることがある。
【0023】
しかし記載したように、これらの収集期間にわたって収集したデータを用いて再構成された画像は、時間分解能が不十分なことがあり、またその領域内に運動アーチファクトを有することがある。したがって本発明の実施形態は、これから再構成された画像内で運動領域(または、運動を有する画像ボクセル)を特定するステップと、収集データの時間短縮した部分組を用いてこの運動領域を改訂するステップと、を含む。ステップ106では、複数の投影データ組から収集データの部分組が時間的に規定される。CTのケースではその収集データの時間部分組は、ガントリ回転の概ね90°〜130°の範囲であり、また一実施形態では概ね120°である。SPECTでは、収集データ組のうちの所望の時間分布を有する一部を含むようにして収集データ組に関する時間短縮した部分組が規定される。PETでも同様に、画像再構成用にデータの時間短縮した部分組が規定される。
【0024】
収集データ内で運動を特定するステップや運動マップを作成するステップを点線の枠108で表している。枠108内のステップはステップ110において、ステップ104で収集したスキャンデータ組またはその部分組を用いて第1の処理用画像または作業画像を再構成するステップを含む。当技術分野において理解されているようにこの第1の作業画像は、モデルベースの逐次再構成法(MBIR)、代数的再構成法(ART)、同時代数的再構成法(SART)、組織的部分組期待値最大化法(ordered subset expectation maximization:OSEM)及び運動学的パラメータ逐次再構成法(KPIR)(ただし、これらに限らない)を含む任意の多くの周知の技法によって再構成されることがある。ステップ112では、本発明の実施形態に従ってスキャンデータ組を用いて第1の作業画像内で運動領域が特定される。画像または投影データを用いて第1の作業画像内で1つまたは複数の運動領域が特定されることがある(これについては、さらに詳細に図示し検討することにする)。1つまたは複数の運動領域が特定された後、この特定された1つまたは複数の運動領域は、ステップ114においてデータの規定済み時間部分組を用いて改訂されることがある。ステップ114での運動領域(複数のこともある)の改訂後に、ステップ116において改訂された画像が再構成されると共に、ステップ118において技法100は終了する。
【0025】
以下ではCTスキャナに適用した場合の技法100について図示し説明することにする。しかし記載したようにまたこれから例証するように、技法100はSPECT及びPET(ただし、これらに限らない)を含む別の撮像様式にも等しく当てはまる。
【0026】
図2及び3はそれぞれ、CTシステム200の外観図とそのブロック概要図を表している。図2を参照すると、「第3世代」のCTスキャナに代表的なガントリ202を含むようなCT撮像システム200を示している。ガントリ202は、X線ビームをガントリ202の反対側にある検出器アセンブリ206に向けて投射するX線源204を有する。ここで図3を参照すると、検出器アセンブリ206は複数の検出器208及びデータ収集システム(DAS)210によって形成されている。投射され患者214(一実施形態では、心電計(ECG)デバイスなどの運動モニタ216が取り付けられている)を通過したX線212は、複数の検出器208によって検知される。DAS210は、複数の検出器208からのデータを後続の処理のためにディジタル信号に変換している。各検出器208は、入射するX線ビームまたしたがって患者214を通過して減衰したビームの強度を示すアナログ電気信号を発生させる。X線投影データを収集するスキャンの間に、ガントリ202及びこの上に装着されたコンポーネントは回転中心218の周りを回転する。
【0027】
ガントリ202の回転及びX線源204の動作は、CT撮像システム200の制御機構220によって統御される。一実施形態では制御機構220は、運動モニタ216からデータを収集し患者運動情報をコンピュータ224に送るように構成された運動監視システム222を含む。この患者運動情報の例には、呼吸及び心臓フェーズ情報が含まれる。制御機構220は、X線源204及びガントリモータ制御器228に対してパワー及びタイミング信号を提供するX線制御器226を含んでおり、またガントリモータ制御器228によってガントリ202の回転速度及び位置が制御されている。画像再構成装置230は、データ収集システム(DAS)210からサンプリングされディジタル化されたX線データを受け取り、高速の再構成を実施する。再構成された画像はコンピュータ224に入力として与えられ、コンピュータ224はこの画像を大容量記憶装置232内に保存する。
【0028】
コンピュータ224はさらに、キーボード、マウス、音声作動制御器や別の任意の適当な入力装置などのオペレータインタフェースを含むオペレータコンソール234を介して、オペレータからのコマンド及びスキャンパラメータを受け取る。付属のディスプレイ236によってオペレータは、コンピュータ224からの再構成画像やその他のデータの観察が可能となる。コンピュータ224はオペレータが与えたコマンドやパラメータを用いて、データ収集システム(DAS)210、X線制御器226及びガントリモータ制御器228に対して制御信号及び情報を提供する。さらにコンピュータ224は、モータ式テーブル240を制御して患者214及びガントリ202を位置決めするテーブルモータ制御器238を操作する。具体的にはモータ式テーブル240は、図2のガントリ開口242の全体またはその一部の中に患者214を通過させている。一実施形態ではCT撮像システム200は追加の撮像データを取得するために、第2のX線源244と、患者214を通過するX線を受け取るように位置決めされた対応する第2の検出器アセンブリ246と、を含む。第2の線源/検出器の組み合わせ244/246は、X線源204及び検出器アセンブリやコリメータ206に関連して例証したのと同様にして撮像データを取得するように制御され使用されることがあり、また例えば本発明の実施形態を組み込みながらCT撮像システム200の全体時間分解能を改善するために使用されることがある。
【0029】
本発明の実施形態では心臓トモグラフィ画像内の運動を、90°〜130°のCTガントリ角度レンジ(また一実施形態では、概ね120°)にわたって収集した投影データを用いて低減または排除することが可能である。このためMDCT心臓撮像の時間分解能は、従来の短縮スキャンデータ収集を使用した画像再構成と比較した場合に例外なく概ね2倍改善することが可能である。本発明の実施形態は、収集した短縮スキャンCTデータの概ね半分を用いて第1の作業画像内の時間分解能を改善することを含む。記載したように短縮スキャン角度レンジは、概ね180°プラスガントリ回転の検出器ファン角度(すなわち、60°の検出器ファン角度では240°)である。このことは、従来のCT再構成技法を用いてスキャン撮像域内部の断面全体を再構成するような最小データ十分条件であると考えるのが一般的である。心臓ウィンドウを短縮スキャンウィンドウの半分まで狭めると、利用可能な≒120°の角度レンジでは通常は正確な画像再構成が可能でなく、またこれから再構成された画像はビュー角度限定のシェーディングアーチファクトを受ける。したがって追加の情報がないとこのタイプの画像再構成では、正確な画像再構成を可能とさせるアルゴリズムを通常は有しないという旧来のトモシンセシス再構成の問題が提起される。
【0030】
しかし図1に関連して記載したように、本発明の実施形態によれば分解能を改善した画像が再構成されることがある。ハーフスキャンデータを用いて第1の作業画像が再構成されており、ここで角度レンジは240°でありまたビュー角度の数は典型的には600〜700である。短縮スキャンデータの時間部分組は、90°〜130°の短縮スキャンデータ、あるいは概ね300〜350のビュー角度から規定され使用される。第1の作業画像は、モデルベースの逐次再構成法(MBIR)、代数的再構成法(ART)、同時代数的再構成法(SART)、組織的部分組期待値最大化法(OSEM)及び運動学的パラメータ逐次再構成法(KPIR)(ただし、これらに限らない)を含む任意の多くの周知の技法によってハーフスキャンデータから再構成されることがある。
【0031】
第1の作業画像内の運動は、本発明に従った多くの手段によって特定されることがある。一実施形態では図4に示すように、第1の作業画像はハーフスキャン投影データを用いて運動領域を特定するように評価されることがあり、またこの特定済み運動領域は本発明の実施形態に従って補正することが可能である。別の実施形態では図5〜8に示すように、第2の作業画像を作成するために投影データの部分組を特定することが可能であり、またこの第1及び第2の作業画像から運動を特定しかつ補正することがある。
【0032】
ここで図4を参照すると、技法100のステップ104で収集したハーフスキャンデータから周知の技法を用いてステップ110で示したように第1の作業画像300が再構成される。弧部302は、作業画像300を再構成するのに使用した概ね240°の角度レンジにわたって収集したデータを示しており、したがって弧部302はハーフスキャン中に収集される典型的には600〜700のビュー角度のスキャンデータに関する線源位置を意味している。第1の作業画像300から、例えばECGを用いて取得したデータに基づいて運動がほとんどまたは全く生じていない期間である時間ウィンドウを決定することによって、画像内の運動を特定することがある。収集データ組の時間部分組はしたがって、部分弧部304の周りに位置決めされた線源により取得される画像データと規定され、技法100のステップ106に対応するような90°〜130°の短縮スキャンデータ、あるいは概ね300〜350のビュー角度からなる。部分弧部304に対応する投影データは時間部分組と規定されるため、このデータの収集中にはほとんどまたは全く運動が生じていない。部分弧部304内部の線源箇所からまた例えば第1の点306で収集した投影データはしたがって、心拍サイクルの休止期中にあると推定することが可能である。したがって、これから生成される画像データは、ほとんどまたは全く運動を有しないと見なされる。
【0033】
しかし、第1の作業画像300は弧部302にわたって収集した撮像データを用いて作成したものであるため、第1の作業画像300内の運動は、弧部302からの投影データのうち部分弧部304の外部の領域308で取得した投影データを用いて特定することが可能である。したがって例えば第2の点310にある線源箇所で収集した投影データを用いて、第1の作業画像300内の運動領域が特定されることがある。換言すると第1の作業画像300が例えば4つの運動箇所312、314、316及び318を含む場合、投影320及び322が規定された時間ウィンドウ中かつ心拍サイクルの休止期中に収集されたものであるため投影320または322からは運動が生じなかったと見なすことができる。一方、箇所312〜318で実際に運動が生じていたが線源が位置310にあった場合は投影324、326を用いて箇所312〜318での運動が特定されることがある。実際にはここで、弧部302にわたって収集した典型的には600〜700のビュー角度のスキャンデータを合成することによって第1の作業画像300内の運動を特定し得ることは、当業者であれば理解されよう。したがって上で技法100に関連して記載したように、ステップ112において第1の作業画像内で1つまたは複数の運動領域が図4に関連して検討したようにして特定されることがある。このために、技法100のステップ108は、弧部302にわたって収集した撮像データを用いて第1の作業画像300を再構成すること、並びに時間ウィンドウ304の外部かつ領域308内で取得した投影データを用いてその中で生成された運動を特定し得るという前提の下に弧部302にわたって収集した撮像データを合成することによって投影データ組を用いて第1の作業画像300内の運動領域を特定すること、を含む。
【0034】
技法100の点線の枠108内にあるステップは、別の本発明の実施形態に従って画像の運動マップを作成することがある。一般にこれらの実施形態は、CTデータの第1及び第2の部分組を特定すること、これから作業画像を再構成すること、並びに特定された2つの部分組の間の差をマッピングしこれから運動マップを作成すること、を含む。ここで図5及び6を参照すると、図1の枠108のステップは第1の作業画像内で運動領域を特定するために以下のようにして強化されている。図5はステップ400においてCTデータの第1の部分組を特定するステップを表しており、またステップ402においてこれから第1の作業画像が作成されることがある。CTデータの第1の部分組内には概ね1ハーフスキャン分またはこれを超えるだけのデータが表されていることが企図される。ステップ404に進むとCTデータの第2の部分組が特定されており、またステップ406においてこれから第2の作業画像が作成されることがある。CTデータの第1の部分組と同様に、CTデータの第2の部分組内には概ね1ハーフスキャン分またはこれを超えるだけのデータが表されていることが企図される。ステップ408では以下で説明するような差分マップを作成することがある。
【0035】
一実施形態では、作業画像内で運動領域を特定するために1ハーフスキャンを超えるだけのデータを含むスキャンデータ組が収集されることがある。図6を参照すると、第1のハーフスキャン収集は開始時間500あるいは開始時間500の若干前または後から第1のハーフスキャン終了時間502までで収集したCTデータの第1の部分組を含む一方、第2のハーフスキャン収集は第2のハーフスキャン開始時間504から停止時間506あるいは停止時間506の若干前または後までで収集したCTデータの第2の部分組を含む。時間期間508のうち開始時間500から第1のハーフスキャン終了時間502までの部分は時間期間508の第1の部分組時間期間510と呼ぶことが可能であり、また時間期間508のうち第2のハーフスキャン開始時間504から停止時間506までの部分は時間期間508の第2の部分組時間期間512と呼ぶことが可能である。この例では、時間期間508は図1のステップ104に対応する。
【0036】
したがってCTデータの第1の部分組は第1の部分組時間期間510にわたって収集したCTデータを含む一方、CTデータの第2の部分組は第2の部分組時間期間512にわたって収集したCTデータを含む。図6に示したように、第1の部分組時間期間510は第2の部分組時間期間512の一部分と重複している。このために、CTデータの第1の部分組はCTデータの第2の部分組と一部の共通データを共有している。しかしこのことは必ずしもそうなるとは限らないことが企図される。すなわち、一実施形態では第1の部分組時間期間510と第2の部分組時間期間512が共通の収集を共有しないことが企図される。こうした実施形態では、第1の部分組時間期間が第2の部分組時間期間と重複しないことになる。
【0037】
図5に戻ると、ステップ404でCTデータの第2の部分組が特定されかつステップ406で第2の作業画像が再構成された後、処理制御は差分画像またはマップが決定されるステップ408に進む。この差分マップは、CTデータの第1と第2の部分組の間の差(複数のこともある)に基づいて物体内部の1つまたは複数の運動領域を特定または位置特定する。こうした差は、画像空間で決定されることや投影空間で決定されることがある。例えば画像空間で利用される本発明の一実施形態では、CTデータの第1の部分組に基づく第1の画像とCTデータの第2の部分組に基づく第2の画像との差が決定される。このため、差分または運動マップが決定される。運動マップ内の非ゼロ値(または、実質的に非ゼロ値)の箇所は、第1及び第2の画像内部でCTデータの収集中に物体運動が生じた箇所に対応する。逆に、ゼロ値(または、実質的にゼロ値)の箇所は、第1及び第2の画像内でCTデータの収集中に物体が静止(または、少なくとも実質的に静止)していた箇所(複数のこともある)に対応する。
【0038】
別法として投影空間で利用される別の実施形態では、CTデータの第1と第2の部分組の間の差が投影空間において決定される。しかし画像空間で決定される運動マップの場合と同様に、投影空間で決定される差によっても、物体内部のある領域により生じた1つまたは複数の運動領域をその中で特定または位置特定するための運動マップ(すなわち、投影ドメイン運動マップ)が得られる。この投影ドメイン運動マップは、例えば周知の逆投影演算としきい値処理演算の組み合わせを実行することによって画像ドメイン(すなわち、差分画像マップ)を照会することが可能である。
【0039】
投影空間における別の手法は、投影データとハーフスキャンデータを用いて再構成した画像の前方投影から取得した投影との間の誤差を計算することとすることが可能である。運動マップは、誤差の周知の逆投影としきい値処理演算を組み合わせることによって計算することが可能である。
【0040】
投影データに基づく別の手法は、KPIRを用いて運動マップを作成することとすることが可能である。KPIRは原理的に、ボクセルを時変動する関数としてモデル化する。KPIRを用いてハーフスキャンデータを再構成することが可能であり、また時変動する有意の成分を有するボクセルを運動マスクにおいて考慮することが可能であり、また単純なしきい値処理演算によってマスクを作成することが可能である。
【0041】
図1に戻ると、運動マップ112から作業画像または運動領域内の運動を生成または決定した後に処理制御は、以前に特定した運動箇所または領域に対応する画像データが逐次再構成技法によって反復更新されるステップ114に進む。この画像データは、CTデータの第1の部分組の第1の部分に対応する。このために、1つまたは複数の非ゼロ差値の箇所に対応するCTデータの第1の部分組の第1の部分に対応する画像データまたはボクセルが、逐次再構成技法によって更新される。
【0042】
反復更新されるのは画像データのすべてではないことに留意されたい。換言すると、運動マップ上で位置特定された物体運動に対応する画像データだけが反復更新される。したがって画像更新がより高効率な方式で実施される。画像データの一部分を更新(114)した後に処理制御は、反復更新した画像データと反復更新していない画像データとからCT画像が再構成されるステップ116に進む。特定された運動箇所(複数のこともある)の外部にある画像ボクセルは、こうした箇所(複数のこともある)では運動の影響が決定的ではないため、1ハーフスキャンを超えるだけの収集を用いて再構成することが可能であることに留意されたい。
【0043】
したがって技法100に列挙したように、物体内の運動の影響を受けた箇所に対応するCT画像データは反復して更新を受ける一方、位置特定された運動エリアの外部の領域に対応するCT画像データは逐次再構成にかけていない。反復して更新される領域は画像データのうちCTデータ組の第1の部分組に対応する部分だけに切り離されているため、より少ないビューだけを用いて最終的なCT画像を定式化することが可能である。すなわち更新過程では、画像データのうちデータの規定された時間部分組に対応する部分だけが用いられる。その結果、画像データのすべてをこうした逐次再構成にかけていないため画像処理時間が短縮される。さらに、得られるCT画像では運動の影響が除去または低減されるため、未更新の画像データのみに基づいた画像と比較して時間分解能の上昇が得られる。例えば、投影ビューの半分のみを使用して最終画像を作成すれば、その時間分解能を2倍改善することができる。
【0044】
時間部分組の選択は、ハーフスキャン内の運動パターンに基づいて決定される。この選択は、画像空間ベースのアルゴリズムや投影空間ベースのアルゴリズムに基づくことが可能である。この選択基準は、包括的とすることや、冠動脈の箇所に基づき局所的とすることが可能である。この局所的手法は、血管特異的な手法となる。画像空間ベースの手法では、ある種の方向フィルタを局所的領域内で適用し、ハーフスキャン中の運動を推定することが可能である。この運動情報に基づいて適当な時間部分組を決定することが可能である。複数のハーフスキャン画像を用いた血管の切り出し及び血管の動きの追跡に基づく手法を使用し、血管の運動を決定し、これにより当該ハーフスキャンデータにおける時間部分組の選択を支援することがある。
【0045】
投影空間ベースの手法では、包括的計測基準は、各ビューごとの質量中心の動きの追跡、あるいはビュー同士の相関、あるいは複数の基準の組み合わせとした計測基準によって決定されることがある。静止時間部分組は、質量中心の動きが最小のまたは相関が最大のフェーズとなる。局所的手法はまた投影空間において策定することも可能である。このケースでは、具体的なある血管に対応する投影データ内の領域がその箇所に基づいて決定されることがあると共に、ハーフスキャンデータ内部で静止時間フェーズを決定するために上述した同様の計測基準を利用することが可能である。
【0046】
CTデータの第1の部分組の第1の部分に対応する画像データの更新に代えてまたはこうした更新に加えて、CTデータの第2の部分組のうち運動マップを介して特定された箇所に対応する部分を対応させている画像データを逐次再構成技法によって更新することが可能であることに留意されたい。こうした実施形態では、第2の部分組に対応する画像データのうちの更新済み部分(複数のこともある)と第2の部分組に対応する画像データのうちの未更新の部分(複数のこともある)とから、時間分解能を上昇させたCT画像が再構成されることになる。
【0047】
さらに、ステップ408で生成した運動マップをさらに強化するためにCTデータの第1及び/または第2の部分組に対して、中心ビューにある線源の箇所とアイソセンタとを結ぶ半直線と平行な方向で高域通過フィルタ処理を適用することが可能であることが企図される。したがって、冠動脈など動きのある微小な構造の近くにある画素を選択可能とするために、高域通過フィルタ処理によって不用な画素の選択を低減させる、かつ/またはしきい値の低減を可能にすることができる。
【0048】
技法100の実施形態は例えば、心臓画像内に存在することが多い運動アーチファクトを低減するように実現されることがある。すなわち、心臓領域内で運動領域を特定するように運動マップが決定されることがある。例えば図6に戻ると、第1の部分組時間期間510にわたって収集した投影ビューがある心臓フェーズと概ね相関することがある一方、第2の部分組時間期間512にわたって収集した投影ビューは別の心臓フェーズと相関することがあることが企図される。したがって図1の技法100は、そのままでは心臓画像内に出現する可能性がある心臓アーチファクトを低減するように実現されることがある。
【0049】
技法100により検出される運動の面積は、運動マップの作成に使用した2組の投影ビュー同士の時間オフセット(すなわち、CTデータの第1と第2の部分組の間の時間オフセット)に依存することがあることに留意されたい。例えば再度図6に戻ると、第1の部分組時間期間510と第2の部分組時間期間512にわたって収集した投影ビュー間の時間オフセット514は、運動マップ内で特定された非ゼロ値の大きさに影響を及ぼすことがあり、さらには運動マップ内に存在する非ゼロ箇所の数にも影響を及ぼすことがある。
【0050】
さらに、異なるオフセットをもつ複数組の投影ビューの比較から生成された複数の運動マップからの情報を組み合わせることによって、局所的運動推定を改善し得ることが企図される。このためには、追加の運動マップを作成するように技法100が1回または複数回反復されることがあることが企図される。例えば、0.5秒にわたって1回の全回転データが得られると仮定してみる。すると、単一ハーフスキャン画像は0.25s分のデータから作成し得る。時間ウィンドウ(例えば、第1の部分組時間期間510及び第2の部分組時間期間512参照)間の時間オフセット(例えば、図6のオフセット514参照)が50msであると、全体で6枚のハーフスキャン画像と、その各々がある具体的な角度フォーカスをもつ各画像内の未相関投影ビュー間の時間差から推定される運動箇所を示している5つの運動マップを作成することが可能である。各運動マップ内の情報を組み合わせることによって、スキャン対象の物体全体内の局所運動の希薄な領域を推定するための改良型の技法を提供することができる。
【0051】
別の実施形態では、第1の部分組時間期間510に関連する投影の「中心ビュー」が第2の部分組時間期間512に関連する投影の中心ビューから実質的に180°離れるようにその時間オフセット514が構成されることがある。このため、角度カバー範囲を基準とした運動の向きと関連が濃いアーチファクトを抑制し、これにより運動マップ内で特定される運動箇所(複数のこともある)の特定を向上させることがある。こうした実施形態ではCTデータの第1と第2の部分組の各々を、それぞれが低域通過フィルタ処理された平方2乗平均(RMS)誤差画像によって表現することがある。
【0052】
別の実施形態では、CTデータの第1及び第2の部分組に関連する収集投影データの重み付け差を利用して計算効率を上昇させ、これにより運動アーチファクトを低減した時間分解性のCT画像の再構成を可能とさせるようにその率を増大させることがある。こうした実施形態では、運動マップを作成するために逆投影過程を実行することが可能である。
【0053】
上で検討したように、差領域または運動のマップは投影空間でも画像空間でも決定することが可能である。したがって、点線の枠108で示した運動マップ成分の生成は多種多様な実施形態によって実行することが可能である。図7〜8並びにこれらに関する付属の記述では、運動マップを作成する幾つかの実施形態について説明している。
【0054】
図7を参照すると、画像空間において運動マップを作成するための技法600(図5のステップ400〜406に対応する)を示した本発明の一実施形態による流れ図を表している。技法600は、CTデータ内で表された1組の平行投影(したがって、図5のステップ400で特定されるCTデータの第1の部分組を示す)が特定されているステップ602において開始される。CTデータ内に表された平行投影を特定するにはファン対平行ビームのビン変更(rebinning)などの技法を実現し得ることが企図される。処理制御は次いで、特定された平行投影に対応するデータ(すなわち、CTデータの第1の部分組)から第1の画像が再構成されている図7のステップ604に進む。
【0055】
第1の画像が再構成(604)された後、ステップ606においてファン対平行のビン変更技法などの技法を用いて共役投影に対応するCTデータが特定される。これらの共役投影は図5のステップ404で特定したCTデータの第2の部分組を表している。処理制御は次いで、共役投影を表しているデータ(すなわち、CTデータの第2の部分組)に基づいて第2の画像が再構成されている図7のステップ608に進む。このためには技法600に従って、平行投影に基づいた第1の画像が再構成され、かつ共役投影に基づいた第2の画像が再構成される。これら第1及び第2の画像から、運動マップを決定することが可能である。
【0056】
図7の技法600は、平行投影データの特定から、平行投影データに基づく第1の画像再構成まで、共役投影データの特定まで、さらに共役投影データに基づく第2の画像の再構成まで進行するシーケンスを表している。しかし、技法600の処理(すなわち、ステップ602〜608)を実施する順序は様々とし得ることが企図される。例えば第1の画像の再構成は、共役投影データの特定後に実施されることや、第2の画像の再構成後に実施されることがある。
【0057】
ここで図8を参照すると、画像空間において運動マップを作成するための技法700(図5のステップ400〜406に対応する)を示した本発明の一実施形態による流れ図を表している。技法700は、CTデータ内で表された1組の平行投影(したがって、図5のステップ400で検討したCTデータの第1の部分組を示す)が特定されているステップ702において開始される。処理制御は次いで、特定された平行投影を示すCTデータから第1の画像が再構成され、これにより平行ビームCT画像が再構成されている図8のステップ704に進む。こうした再構成の間にビューベースの荷重関数を利用することがあることが企図される。
【0058】
処理制御は次いで、CT投影データからファンビーム投影を示すCTデータ(したがって、図5のステップ404で検討したCTデータの第2の部分組を示す)が特定されているステップ706に進む。ファンビーム投影を示すCTデータを特定(706)した後に図8のステップ708において、特定されたファンビーム投影CTデータから第2の画像が再構成され、これによりファンビームCT画像を再構成している。ファンビームCT画像の再構成の間にチャンネル及びビューベースの荷重関数を利用することがあることが企図される。
【0059】
図4に関して特定した運動領域から、あるいは図7または8に関して作成した平行ビームCT画像運動マップから、その運動領域が改訂されることがある(例えば、図1のステップ114参照)。こうした実施形態では、運動マップのうちの実質的に非ゼロの部分は、平行ビームのうちの低い方の時間分解能とリンクされる可能性が高い、したがって運動とリンクされる可能性が高いことが企図される。技法700の処理(すなわち、図8のブロック702〜708)を実施する順序は図8に示した順序と異なることがあることが企図される。
【0060】
第1及び第2のCT画像を決定するためのさらに別の実施形態が企図される。例えば、フェーズ及びガントリ運動は、共役ビューにほとんど運動が確認されないように取り扱われることがある。さらに別の実施形態では、運動の決定は1つの方向に限定されることがある。例えば運動の決定は、ボケやアーチファクトを最も受けやすい方向、例えばハーフスキャンの開始ビューと終了ビューと直交する方向に限定されることがある。さらに別の実施形態では、投影空間内で運動マップが決定されると共に、得られた運動マップが画像空間に変換されている。
【0061】
図1に関連して上で検討したように、特定された運動領域(複数のこともある)に基づいてCTデータを更新するような逐次再構成技法が利用される。一般に逐次再構成技法は、データ不一致項と正則化(regularization)項の和によって形成されるコスト関数の最小化を含む。反復再構成されるデータは次式の形態を取り得る。
【0062】
【数1】

(式1)
式1において、「y」は収集した投影データを意味し、「x」は画像を意味し、「A」はCTシステムのスキャン動作と同様の方式による前方投影演算子を意味し、「F(・)」は収集データ「y」とCTシステムのモデルに従った合成データの組「Ax」の間の様々な信頼度を含み得る歪み尺度を意味し、また「Ω」は1組の非負画像などの凸集合を意味している。さらに、「βU(・)」は画像「x」にわたる正則化項を意味している(ここで、「β」は画質をバランスさせるためのスケールファクタを意味し、また「U(・)」はコスト関数を意味する)。
【0063】
「U(・)」などのコスト関数は典型的には、画像のノイズ特性及び空間分解能特性を向上させるための空間成分を含む。例えば「U(・)」は次式の形態を取り得る。
【0064】
【数2】

(式2)
上式において、「φ(・)」は局所的近傍差に基づいて作用するポテンシャル関数を意味し、またbjkは指向性(directional)スケール変換係数を意味している。
【0065】
時間分解能を改善するために逐次再構成過程に追加の情報を導入することがある。例えば時間分解能をさらに改善するために追加の時間正則化因子を利用することがある。追加の時間正則化因子を有する式を以下に示す。
【0066】
【数3】

(式3)
上式において、B(x)は追加の正則化項を意味し、Φは運動推定に従った運動の影響を受ける画像ボクセルの組を意味し、U(・)及びU(・)はコスト関数を意味し、また残りの変数は概して式1の場合と一致する。個々のボクセル更新を実行する反復座標降下法(iterative coordinate descent approach)は、こうした希薄な更新を実現するように適合させており、この点は各ステップにおいてフル画像の更新を必要とすることが多い共役勾配手法やその他の投影ベースの更新法と異なることに留意されたい。別法として、ブロックベースの逆転技法を用いてあるいはJacobi更新ステップを用いて複数のボクセルを同時更新することが可能である。
【0067】
局所的運動マップ(例えば、図4の運動箇所312〜318または図5のステップ408を参照)に関する知見によって、選択画像(例えば、CTデータの第1の部分組に基づく第1の画像かCTデータの第2の部分組に基づく第2の画像のいずれか)のボクセルを、運動が特定された領域内のみで反復更新することが可能である。このためには、運動アーチファクトを包含し得るエリアに対する計算に集中することによって計算要件が軽減される。
【0068】
時間正則化のために複数のモデルを利用することがある。例えばあるモデルでは、最新の更新データと非時間分解データ
【数4】

(ボケを起こすことや運動アーチファクトを含むことがある)との間の差にペナルティを課すことによって時間正則化が追加される。こうしたモデルではそのコスト関数が次式のように表されることがある。
【0069】
【数5】

(式4)
上式において、
【0070】
【数6】

は「y」にわたるフルスキャンまたは完全なハーフスキャンを用いて形成されることがあり、また1ハーフスキャン未満のスキャン、すなわち
【0071】
【数7】

や、解を安定化させるための時間正則化を用いて逐次再構成を実行することが可能である。p=2の2次ペナルティと比較して、p=1に関連する絶対差関数(L1ノルムとも呼ぶ)は、運動が起きている更新領域に対する変更の位置特定に役立つことがある。
【0072】
図2〜8に関連する上の例証は、本発明のCTシステムに関連する実施形態に特異的なものである。しかし記載したように本発明は、その他の撮像様式(そのうちの幾つかにはSPECT、PET及び様々な手荷物スキャナ様式(ただし、これらの例に限らない)を含む)にも適用可能である。
【0073】
図9は、本発明の実施形態により画像データを収集し処理するための例示的なSPECTシステム800を表している。SPECTシステム800はコリメータアセンブリ802及び検出器アセンブリ804を含む。SPECTシステム800はさらに、制御モジュール806、画像再構成/処理モジュール808、オペレータワークステーション810、及び画像表示ワークステーション812を含む。
【0074】
図示したように、SPECTシステム800の撮像域(FOV)816内で対象物支持体814(例えば、テーブル)を適所に移動させることができる。図示した実施形態では対象物支持体814は、対象818(例えば、人間の患者、小動物、植物、多孔性物体、その他)をスキャンのために適所に支持するように構成されている。別法として対象物支持体814は静止状態とすることがあり、一方SPECTシステム800をスキャンのために対象818の周りの適所に移動させることがある。対象818は、スキャンのために適当な任意の位置に支持されることがある。一例では対象818は所望のスキャンのために、FOV816内で概して垂直の位置、概して水平の位置あるいは別の任意の適当な位置(例えば、傾いた状態)で支持されることがある。別の例では対象818は、それに対して取り付けられかつ制御モジュール806内部の運動モニタ822に接続させたECGなどの運動監視システム820を有することがある。したがって運動監視システム820は、例えば呼吸及び心臓フェーズ情報などの患者運動情報を取得するように制御され使用されることがある。
【0075】
SPECT撮像では、対象818に対して放射性トレーサを包含した溶液が注入されるのが典型的である。この溶液は、利用されるトレーサや臓器や組織の機能(生きている対象の場合)に応じて対象818全体にわたって様々な程度で分布されかつ吸収される。原子核崩壊事象中において放射性トレーサは、「ガンマ線」とも呼ぶ電磁気線824(例えば、光子やガンマ量子)を放出する。
【0076】
コリメータアセンブリ802はFOV816から放射されたガンマ線824を受け取る。コリメータアセンブリ802は概して、ガンマ線824の方向及び角度ダイバージェンスを制限し規定するように構成されている。一般にコリメータアセンブリ802は、検出器アセンブリ804とFOV816の間に配置させている。コリメータアセンブリ802を通過するガンマ線824は検出器アセンブリ804に当たる。コリメータアセンブリ802によるガンマ線824のコリメーションによって、ガンマ線824の検出を用いて検出器アセンブリ804に当たる前にガンマ線824の各線束がそれに沿って伝播してきた応答線を決定し、この応答線に合わせて各ガンマ線の起点の位置特定が可能となる。一般に検出器アセンブリ804は、FOV816内の対象818から放射されると共にコリメータアセンブリ802が規定する1つまたは複数のアパーチャを通過したガンマ線824を検出するように構成した複数の検出器素子を含むことがある。例示的な実施形態では、検出器アセンブリ804内の複数の検出器素子の各々がガンマ線824の衝突に応答して1つの電気信号を発生させる。
【0077】
これらの検出器素子は、検出器アセンブリ804内で適当な任意の方式で配列されることがある。検出器アセンブリ804は、少なくとも部分的にFOV816の周りに延びることがある。ある種の実施形態では図示したように検出器アセンブリ804は、FOV816の周りに配列させたモジュール型の検出器素子を含むことがある。別法として検出器アセンブリ804は、FOV816の周りに360°まで延びることがある1つのリングの形に配列されることがある。ある種の実施形態では検出器アセンブリ804はFOV816の周りに約180°〜約360°延びることがある。
【0078】
スキャン中にFOV816内の対象818から放射される複数の応答線を収集するためにコリメータアセンブリ802は、FOV816の内部に位置決めされた対象818の周りを回転するように構成されることがある。一例では、コリメータアセンブリ802は検出器アセンブリ804を基準として回転するように構成されることがある。検出器アセンブリ804は静止状態とすることがある一方、コリメータアセンブリ802はFOV816の周りを回転するように構成されることがある。別法として、検出器アセンブリ804は回転することがある一方、コリメータアセンブリ802は静止状態である。別の例では、コリメータアセンブリ802と検出器アセンブリ804は両方が、一緒に回転するか互いに独立に回転するかのいずれかのように構成されることがある。別法として、コリメータアセンブリ802を通過する十分なピンホールアパーチャ及び/またはスリットアパーチャが設けられる場合やそのスリットアパーチャがコリメータアセンブリ802の長手方向軸と直交する場合は、回転は全く不要なことがある。
【0079】
図示した実施形態では制御モジュール806は、モータ制御器826及びデータ収集モジュール828を含む。一般にガントリモータ制御器826は、コリメータアセンブリ802の回転速度及び位置、検出器アセンブリ804及び/または対象物支持体814の位置を制御することがある。データ収集モジュール828は、検出器アセンブリ804とのガンマ線824の衝突に応答して生成される信号を取得するように構成されることがある。例えばデータ収集モジュール828は、検出器アセンブリ804からサンプリングされた電気信号を受け取り、このデータを画像再構成/処理モジュール808による後続処理のためにディジタル信号に変換することがある。SPECTシステム800ではデータ収集に関する適当な任意の技法が使用されることがある。例として当技術分野において理解されているように、画像再構成に必要なデータはリストやフレームモードの形で収集されることがある。データは本発明の実施形態に従って、収集され、解析されかつ再構成されることがある。
【0080】
図1に関連して検討したような技法100のステップは、本発明の一実施形態に従って撮像データから作業画像を取得し再構成するためにSPECTシステムに適用されることがある。上の図8で例証したように、患者818内部の心臓などの物体に関して最小のSPECTデータ組が取得されることがある。本発明の実施形態によるガントリ速度は、上述したCTシステム200と比較してかなり低速であり、(典型的なCT撮像が1秒未満のガントリ回転であるのに対して)分単位となる。本発明の一実施形態に従って分解能を改善させるためには、一実施形態では10分間で180°の回転にわたってデータが収集されている(当技術分野において理解されているように平行穴コリメーションを用いることが可能であるため)。上述した技法を用いると、収集データ組の一部分だけが最終の画像作成に用いられる。収集データ組のこの一部は時間的に規定される(すなわち、収集データのうちの所望の時間分布を有する部分組を用いて規定される)。作業画像が再構成されると共に、時間ウィンドウ(図4に関連して記載したような)の外部で取得した投影データを用いるかオフセットスキャンデータ組(図7及び8に関連して記載したような)を用いるかのいずれかによって1つまたは複数の運動領域が特定される。別法としてそのデータ収集は2つのステップに分割することが可能である。第1のステップでは、180°(平行コリメーションの場合)または180°(ファンビームまたはコーンビームコリメータの場合)にわたる投影が迅速に収集される。次に、ピンホール形コリメータを用いてガントリを静止状態としながら制限された角度レンジにわたって投影が同時に収集される。投影データが同時に(ガントリ回転を伴わずに)収集されるため、このデータ収集はECGなどの生理学的信号によって有効にゲート制御することが可能である。ピンホール形コリメータによって収集した投影は、作業画像を改訂するための逐次再構成で使用される。
【0081】
図10は、様々な本発明の実施形態をその内部で実現し得るPETシステム900の例示的な実施形態のブロック図である。PETシステム900は複数の検出器リングアセンブリを含む。こうした検出器リングアセンブリの1つとして検出器リングアセンブリ902を図11に示している。PETシステム900はさらに、規格化及び画像再構成過程を制御するための制御器904を含む。制御器904は、プロセッサ906及びオペレータワークステーション908を含む。プロセッサ906は、相互接続されると共に通信リンク914を介して検出器リングアセンブリ902に接続されたデータ収集プロセッサ910及び画像再構成プロセッサ912を含む。PETシステム900はスキャンデータを収集し、このデータをデータ収集プロセッサ910に送っている。スキャン動作はオペレータワークステーション908から制御される。データ収集プロセッサ910が収集したデータは、画像再構成プロセッサ912を用いて再構成される。
【0082】
検出器リングアセンブリ902は、例えば検出器リングアセンブリ902の中心軸920と整列させたモータ式テーブル(図示せず)を用いてその内部に患者や物体918を位置決めし得る中心開口部916を含む。モータ式テーブルは、オペレータワークステーション908から受け取った1つまたは複数のコマンドに応答して物体918を検出器リングアセンブリ902の中心開口部916内に移動させる。PETシステム900の内部には、ガントリ制御器とも呼ぶPETスキャナ制御器922が設けられ(例えば、装着され)ている。PETスキャナ制御器922は、通信リンク914を介してオペレータワークステーション908から受け取ったコマンドに応答する。
【0083】
検出器リングアセンブリ902は、複数の検出器ユニット924(例えば周知のあるPETシステムでは、1リングあたり420個の結晶がまたスキャナ内には24個のリングが存在する)を含む。図示していないが、各検出器ユニット924は複数の光電子増倍管(例えば、4つの増倍管)の前側に配置させたマトリックス配列の1組のシンチレータ結晶を含むことが企図される。光子が検出器ユニット924上のシンチレータ結晶に当たると、これによりシンチレータ結晶上にシンチレーションが発生する。各光電子増倍管はシンチレーション事象が発生した際に通信ライン926上にアナログ信号を発生させる。これらのアナログ信号を受け取るように1組の収集回路928が設けられている。収集回路928によって、3次元(3D)空間内における位置及び当該事象の総エネルギーを示すディジタル信号を発生させている。収集回路928はさらに、シンチレーション事象が発生した時間すなわち発生時点を示す事象検出パルスも発生させる。これらのディジタル信号は、例えばケーブルなどの通信リンク930を通してデータ収集プロセッサ910内の事象ロケータ回路932に送られる。一実施形態ではPETシステム900は、例えば呼吸及び心臓フェーズ情報などの患者運動情報をデータ収集プロセッサ910を介して取得するために使用し得る物体918に取り付けられかつ収集回路928に取り付けられたECGなどの運動監視システム934を含む。
【0084】
データ収集プロセッサ910は、事象ロケータ回路932、収集CPU936及び同時発生検出器938を含む。データ収集プロセッサ910は、収集回路928が発生させた信号を周期的にサンプリングする。収集CPU936は、背面バス940上及び通信リンク914上の通信を制御する。事象ロケータ回路932は、各有効事象に関する情報を処理し、検出した事象を示すディジタル形式の1組の数または値を提供する。例えばこの情報は、事象が発生した時点及びシンチレーション結晶のうちの事象が検出された位置を指示する。この事象情報を包含した事象データパケット(図示せず)は背面バス940を通って同時発生検出器938に伝達される。同時発生検出器938は事象ロケータ回路932から事象データパケットを受け取り、検出事象のうちの任意の2つが同時発生か否かを判定する。同時発生は多くの要因によって判定される。先ず、各事象データパケット内の時間マーカは、例えば12.5ナノ秒など互いから所定の時間期間内とすべきである。第2に、同時事象を検出する2つの検出器を結ぶ直線により形成される応答線(LOR)はPETシステム900内の中心開口部916または撮像域を通過させるべきである。対にできない事象は棄却される。同時発生事象対は特定されて同時発生データパケットとして記録され、これが通信リンク942を通して画像再構成プロセッサ912内のソータ944に伝達される。
【0085】
画像再構成プロセッサ912は、ソータ944、メモリモジュール946、画像CPU948、アレイプロセッサ950及び背面バス952を含む。ソータ944は各投影レイに沿って発生したすべての事象をカウントし、これらを3Dデータとするように編成させる。この3Dデータ(または、サイノグラム)は例示的な一実施形態ではデータアレイ954として編成される。データアレイ954はメモリモジュール946内に保存される。背面バス952は画像CPU948を介して通信リンク914とリンクさせており、また画像CPU948は背面バス952を介した通信を制御している。背面バス952にはアレイプロセッサ950も接続されている。アレイプロセッサ950はデータアレイ954を入力として受け取り画像アレイ956の形態で画像を再構成する。得られた画像アレイ956はメモリモジュール946内に保存される。
【0086】
画像アレイ956内に保存された画像は画像CPU948によってオペレータワークステーション908に伝達される。オペレータワークステーション908は、CPU958、表示デバイス960及び入力デバイス962を含む。収集CPU958は通信リンク914に接続されていると共に、入力デバイス962から入力(例えば、ユーザコマンド)を受け取る。入力デバイス962は例えば、キーボード、マウスまたはタッチ画面パネルとし得る。入力デバイス962及び付属の制御パネルスイッチを介してオペレータは、PETシステム900の較正を制御することが可能であり、またスキャンのための物体918の位置決めを制御することが可能である。同様にオペレータは、得られた画像の表示デバイス960上への表示を制御すること並びに収集CPU958により実行されるプログラムを用いた画像強調機能を実行することが可能である。
【0087】
アレイプロセッサ950が受け取ったデータアレイは、再構成を受ける前に誤差補正されることがある。この補正レベルは、例えば再構成画像に所望の分解能レベルに基づくことがある。ある補正は、画像データからの散乱同時発生の除去を含む。
【0088】
図11は、図10の検出器リングアセンブリ902に関する単一散乱同時発生を表している。陽電子消滅事象は物体918内部の陽電子消滅点964で発生している。この陽電子消滅事象は、第1の検出点970で検出器素子968に当たる光子966と、第2の検出点976で検出器素子974に当たる散乱光子972と、を発生させている。散乱光子972は物体918内部の散乱点978から散乱されている。検出器素子968は光子966が検出された時間と、散乱光子972が検出された時間と、を記録する。検出器素子968と検出器素子974は1つの検出器対を形成している。当技術分野で周知のように、検出器素子対968/974は指標r及びθに関して一意のサイノグラム・ビンにマッピングされており、また指標r及びθは検出器リングの中心からの放射方向距離と968と976を結ぶ線の水平軸からの角度のそれぞれを意味している。第1の検出点970及び第2の検出点976に関する検出時間の差は、タイムオブフライトの散乱サイノグラムに関する一意の時間ビン指標にマッピングされる。複数の検出器対のそれぞれごとに、陽電子消滅事象の総数及び各事象が記録された時間がプロセッサ906(図11参照)に送られる。受け取った情報に基づいて、検出された事象が指標r及びθによってサイノグラムにビン分けされ、これがタイムオブフライトの散乱サイノグラムS(r,θ,t)の作成に使用される。
【0089】
撮像データは、図10及び11に関連して図示したPETシステムを使用しまた上の図1に関連して説明した技法100に従って取得され再構成される。この実施形態ではPETデータ組は、上の図10で例証したような患者または物体918内部の心臓などの物体に関して取得される。本発明では従来のPETデータ組が(例えば、5分間にわたって)取得され、これを用いて作業画像が作成されることがある。運動領域は上で検討したようにして特定され改訂される。1つまたは複数の運動領域は、(図4に関連して記載したような)時間ウィンドウの外部で取得した投影データを用いること、または(図7及び8に関連して記載したような)オフセットスキャンデータ組を用いることのいずれかによって特定される。
【0090】
次いで、時間期間(すなわち、規定の時間ウィンドウ)の一部にわたって収集したデータを用いて作業画像を改訂し運動を除去することがある。元の収集ウィンドウ(この例では5分間)の域内で静止時間期間を選択し、最終すなわち改訂済みの画像を反復して作成することがある。したがって最終画像は、こうした長いスキャン時間(例えば、5分間)に関してはノイズ特性を示す一方、改善された時間ウィンドウに関する運動特性を示すことになる。このために記載のように、従来のまたは通常のPETデータ組を取得し、この収集データ組の一部が時間的に規定されている。
【0091】
ここで図12を参照すると、本発明の実施形態によるデータ収集技法の使用が可能であると共に、梱包物や手荷物をその内部に通過させるための開口部1004を有する回転可能ガントリ1002を含むような梱包物/手荷物検査システム1000を表している。回転可能ガントリ1002は、1つまたは複数のX線エネルギー源1006、並びにシンチレータセルからなるシンチレータアレイを有する検出器アセンブリ1008を収容している。さらにコンベアシステム1010が設けられ、これにはスキャン対象の梱包物や手荷物1016を開口部1004内に自動的かつ連続的に通過させるための構造1014により支持されたコンベアベルト1012を含ませている。物体1016は開口部1004を通るようにコンベアベルト1012によって送られており、次いで撮像データが収集されると共にコンベアベルト1012によって制御された連続方式で開口部1004から梱包物1016が取り除かれる。これによって郵便物検査員、手荷物取扱者及びその他セキュリティ要員は、梱包物1016の中身に爆発物、刃物、銃器、禁制品、その他がないかどうかを非侵襲的に検査することができる。
【0092】
本発明の実施形態の一実現形態は一例では、電子構成要素、ハードウェア構成要素及び/またはコンピュータソフトウェア構成要素のうちの1つまたは幾つかなどの複数の構成要素を備える。本発明のこの実施形態の一実現形態では、こうした構成要素を数多く組み合わせたり、分離させたりすることができる。本発明のこの実施形態の一実現形態の例示的な一構成要素は、多くのプログラミング言語のうちのいずれかによって記述または実現させたコンピュータ命令の組及び/またはシリーズを利用するかつ/または備えることは当業者であれば理解されよう。
【0093】
本発明のこの実施形態の一実現形態は一例では、1つまたは複数のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を利用する。本発明のこの実施形態の一実現形態向けのコンピュータ読み取り可能信号保持媒体の一例は、画像再構成装置34の記録可能データ記憶媒体及び/またはコンピュータ36の大容量記憶装置38を含む。本発明のこの実施形態の一実現形態向けのコンピュータ読み取り可能記憶媒体は一例では、磁気式、電気式、光学式、生物学式及び/または原子式のデータ記憶媒体のうちの1つまたは幾つかを含む。例えばコンピュータ読み取り可能信号保持媒体の一実現形態は、フロッピー(商標)ディスク、磁気テープ、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスクドライブ及び/または電子式メモリを含む。
【0094】
本発明の一実施形態によるトモグラフィシステムは、スキャン対象の物体を受け容れるための開口部を有するガントリと、放射線源と、該線源から物体を通過した放射線を受け取るように位置決めされた検出器と、コンピュータと、を含む。このコンピュータは、物体の複数の投影データ組を収集すること、該複数の投影データ組から投影データ組の時間部分組を規定すること、複数の投影データ組を用いて物体の作業画像を再構成すること、該作業画像内で運動領域を特定すること、並びに投影データ組の時間部分組を用いて作業画像の運動領域内にある運動アーチファクトを最小化すること、を行うようにプログラムされている。
【0095】
本発明の別の実施形態による画像再構成方法は、物体の複数の投影データ組を取得するステップと、該複数の投影データ組から投影データ組の時間部分組を規定するステップと、該複数の投影データ組を用いて物体の画像を再構成するステップと、投影データ組の時間部分組を用いて画像の少なくとも1つの特定済みボクセル内の運動アーチファクトを補正するステップと、を含む。
【0096】
本発明のさらに別の実施形態によるコンピュータ読み取り可能記憶媒体は、コンピュータにより実行させたときに該コンピュータに対して、物体の複数のトモグラフィ像データ組にアクセスすること、複数のトモグラフィ像データ組の時間部分組を特定すること、複数のトモグラフィ像データ組を用いて物体の処理用画像を再構成すること、並びにトモグラフィ像データ組の時間部分組のうちの少なくとも1つのトモグラフィ像データ組を用いて処理用画像の特定済みの運動領域内にある少なくとも1つの画像ボクセルを改訂すること、を行わせる命令を含んだコンピュータプログラムをその上に保存して有する。
【0097】
開示した方法及び装置に関する技術的寄与は、トモグラフィ撮像データを収集すると共にトモグラフィ画像の時間分解能を上昇させているようなコンピュータ実現による装置及び方法をこれにより提供できることである。
【0098】
本発明について限られた数の実施形態に関連して詳細に記載してきたが、本発明が開示したこうした実施形態に限定されないことは容易に理解できよう。それどころか本発明は、ここまでに記載していないが本発明の精神及び趣旨に相応するような任意の数の変形形態、修正形態、置換形態、等価形態の機構を組み込むように修正することが可能である。さらに、本発明に関して様々な実施形態を記載しているが、本発明の態様は記載した実施形態のうちの一部のみを含むこともあり得ることを理解すべきである。したがって、本発明は上述の記述によって限定されるものと理解すべきではなく、添付の特許請求の範囲の趣旨によってのみ限定されるものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0099】
200 CTシステム
202 ガントリ
204 X線源
206 検出器アセンブリ
208 検出器
210 データ収集システム(DAS)
212 X線
214 患者
216 運動モニタ
218 回転中心
220 制御機構
222 運動監視システム
224 コンピュータ
226 X線制御器
228 ガントリモータ制御器
230 画像再構成装置
232 大容量記憶装置
234 オペレータコンソール
236 ディスプレイ
238 テーブルモータ制御器
240 モータ式テーブル
242 ガントリ開口
244 X線源
246 検出器アセンブリ
300 第1の作業画像
302 弧部
304 部分弧部
306 第1の点
308 外部領域
310 第2の点
312〜318 箇所
320 投影
322 投影
324 投影
326 投影
500 開始時間
502 第1のハーフスキャン終了時間
504 第2のハーフスキャン開始時間
506 停止時間
508 時間期間
510 第1の部分組時間期間
512 第2の部分組時間期間
800 SPECTシステム
802 コリメータアセンブリ
804 検出器アセンブリ
806 制御モジュール
808 画像再構成/処理モジュール
810 オペレータワークステーション
812 画像表示ワークステーション
814 対象物支持体
816 撮像域(FOV)
818 対象
820 運動監視システム
822 運動モニタ
824 電磁気線
826 モータ制御器
828 データ収集モジュール
900 PETシステム
902 検出器リングアセンブリ
904 制御器
906 プロセッサ
908 オペレータワークステーション
910 データ収集プロセッサ
912 画像再構成プロセッサ
914 通信リンク
916 中心開口部
918 患者、物体
920 検出器リングアセンブリの中心軸
922 PETスキャナ制御器
924 検出器ユニット
926 通信ライン
928 収集回路
930 通信リンク
932 事象ロケータ回路
934 運動監視システム
936 収集CPU
938 同時発生検出器
940 背面バス
942 通信リンク
944 ソータ
946 メモリモジュール
948 画像CPU
950 アレイプロセッサ
952 背面バス
954 データアレイ
956 画像アレイ
958 CPU
960 表示デバイス
962 入力デバイス
964 陽電子消滅点
966 光子
968 検出器素子
970 第1の検出点
972 散乱光子
974 検出器素子
976 第2の検出点
1000 梱包物/手荷物検査システム
1002 回転可能ガントリ
1004 開口部
1006 X線エネルギー源
1008 検出器アセンブリ
1010 コンベアシステム
1012 コンベアベルト
1014 自動連続通過構造
1016 梱包物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャン対象の物体(214、818、918、1016)を受け容れるための開口部(242、816、916、1004)を有するガントリ(202、1002)と、
放射線源(204、824、966、1006)と、
線源(204、824、966、1006)から物体(214、818、918、1016)を通過した放射線を受け取るように位置決めされた検出器(206、804、902、1008)と、
コンピュータ(224、810、958)であって、
物体の複数の投影データ組を収集すること(104)、
複数の投影データ組から投影データ組の時間部分組を規定すること(106)、
複数の投影データ組を用いて物体の作業画像を再構成すること(110)、
作業画像内で領域運動(312、314、316、318)を特定すること(112)、
投影データ組の時間部分組を用いて作業画像の運動領域内にある運動アーチファクトを最小化すること(114)、
を行うようにプログラムされたコンピュータ(224、810、958)と、
を備えるトモグラフィシステム(200、800、900、1000)。
【請求項2】
前記コンピュータ(224、810、958)は、複数の投影データ組、規定した時間ウィンドウの外部で取得した投影データ組、及び少なくとも作業画像を用いて作成した運動マップのうちの1つを用いて作業画像内で運動領域(312、314、316、318)を特定するようにプログラムされている、請求項1に記載のトモグラフィシステム(200、800、900、1000)。
【請求項3】
前記コンピュータ(224、810、958)は、物体(214、818、918、1016)のハーフスキャン(302)にわたって物体の複数の投影データ組を収集するようにプログラムされている、請求項1に記載のトモグラフィシステム(200、800、900、1000)。
【請求項4】
前記コンピュータ(224、810、958)は、心電計(ECG)(216、820、934)を用いて投影データ組の時間部分組を規定するようにプログラムされている、請求項1に記載のトモグラフィシステム(200、800、900、1000)。
【請求項5】
前記コンピュータ(224、810、958)は、投影データ組の時間部分組を90°以上のガントリ回転(304)にわたって収集した投影データ組と規定するようにプログラムされている、請求項1に記載のトモグラフィシステム(200、800、900、1000)。
【請求項6】
前記コンピュータ(224、810、958)は、投影データ組の時間部分組を物体の時間フィーチャに基づいて規定するようにプログラムされている、請求項1に記載のトモグラフィシステム(200、800、900、1000)。
【請求項7】
前記コンピュータ(224、810、958)は、投影データ組の時間部分組を130°以下のガントリ回転(304)にわたって収集した投影データ組と規定するようにプログラムされている、請求項1に記載のトモグラフィシステム(200、800、900、1000)。
【請求項8】
前記コンピュータ(224、810、958)は、2つ以上の放射線源位置(310、306)からの投影データ組のうちの1つと第1の画像及び第2の画像を用いて作成した差分画像とを用いて作業画像の運動領域(312、314、316、318)を特定するようにプログラムされている、請求項1に記載のトモグラフィシステム(200、800、900、1000)。
【請求項9】
前記コンピュータ(224、810、958)は、特定済みの運動領域(312、314、316、318)を、規定した投影データ組の時間部分組の投影データ組でない複数の投影データ組からの投影データ組を用いて補正するようにプログラムされている、請求項1に記載のトモグラフィシステム(200、800、900、1000)。
【請求項10】
前記コンピュータ(224、810、958)は、モデルベースの逐次再構成法(MBIR)、代数的再構成法(ART)、同時代数的再構成法(SART)、組織的部分組期待値最大化法(OSEM)及び運動学的パラメータ逐次再構成法(KPIR)のうちの1つを用いて物体の作業画像を再構成するようにプログラムされている、請求項1に記載のトモグラフィシステム(200、800、900、1000)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−200656(P2011−200656A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−82257(P2011−82257)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】