説明

トラクション係数低減潤滑油組成物

【課題】低い接触速度での潤滑油膜維持能力を犠牲にすることなく、高い接触速度での摩擦低減を可能にする特性を持つ潤滑油基油とその使用を提供する。
【解決手段】(a)主要量の潤滑粘度の油であって、二種以上の異性化フィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油のブレンドからなり、かつブレンドの動粘度が100℃で約2乃至約14センチストークスの範囲にある油、および(b)一種以上の潤滑油添加剤を含むトラクション係数低減潤滑油組成物であって、基本的に摩擦緩和剤を含まない潤滑油組成物とその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)主要量の潤滑粘度の油であって、二種以上の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油のブレンドからなり、かつブレンドの動粘度が100℃で約2乃至約14センチストークスの範囲にある油、および(b)一種以上の潤滑油添加剤を含むトラクション係数を低減する潤滑油組成物であって、基本的に摩擦緩和剤を含まない潤滑油組成物に関する。また、本発明は、(a)主要量の潤滑粘度の油であって、二種以上の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油のブレンドからなり、かつブレンドの動粘度が100℃で約2乃至約14センチストークスの範囲にある油、および(b)一種以上の潤滑油添加剤を含む潤滑油組成物であって、基本的に摩擦緩和剤を含まない潤滑油組成物を用いて内燃機関を潤滑にすることからなる、内燃機関内のトラクション係数を低減する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用の潤滑油は、少なくとも一種の基材潤滑油(潤滑油基油)に加えて一種以上の添加剤も含有する。潤滑油は、内燃機関内の可動部分に潤滑性を付与するという重要な機能を果たすために使用される。潤滑油は、金属部分の摩擦を低く維持して摩耗を低減するために、金属面に潤滑膜を充分大きな厚さで形成することでこの機能を果たしている。摩擦の低減は最終的には、燃料経済性を改善して機械効率を高めることになる。
【0003】
摩擦の低減は、潤滑油の粘度を下げることにより達成することができる。この方法は高い接触速度ではうまくいくが、一方では、充分に厚い潤滑膜が維持できないと、低い接触速度では摩耗を増加させることがある。従来の潤滑油は、このような低い接触速度でも金属面を保護するために、界面活性能のある摩擦緩和剤などの摩擦低減剤に頼っている。
【0004】
本発明は、低い接触速度における潤滑油膜の形成能を犠牲にすることなく、高い接触速度でも摩擦の低減を可能にするという特性を有する、新しいタイプの基材となる潤滑油基油の使用について記載するものである。更に驚くべきは、本発明の潤滑油が如何なる界面活性能のある摩擦緩和剤の添加を無くしても、非常に低い接触速度でも摩擦の低減を可能にすることが観察されている。
【0005】
多数の特許及び特許出願で、潤滑油組成物に摩擦緩和剤を添加することで摩擦を低減する方法が論じられている。さらに、優れた潤滑油特性を有するフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油が開示されている特許及び特許出願も数多くある。しかし、二種以上のフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油のブレンドと一種以上の添加剤を含む潤滑油組成物であって、摩擦緩和剤の添加無しに、本発明で観察されたような潤滑油組成物のトラクション係数の顕著な低減を示す潤滑油組成物については、全く開示がない。
【0006】
特許文献1には、3〜8cS、例えば約5cS(100℃)という低粘度のHVI潤滑基材油と、粗ろうを熱分解によりアルファオレフィンにした後、アルファオレフィン混合物をルイス酸触媒でオリゴマー化して潤滑油基油にすることにより製造された、15cS+、例えば30+cS(100℃)という高粘度のHVI PAO潤滑油基油とのブレンド又は混合物を含む潤滑剤組成物が開示されている。これらの成分を適切な割合でブレンドすることによって、粘度が8−15cS(100℃)の範囲にある潤滑基材油が製造され、それから10W−30自動車エンジン潤滑油の配合に適した材料を製造することができる。このブレンドは、ブレンドのどちらか一方の成分のVI値よりも高い高VI値を示す点で注目に値する。
【0007】
特許文献2には、基油と一種以上の添加物を含む潤滑剤組成物であって、100℃での動粘度が5.6cStより高く、ASTM D5293に従ったコールド・クランキング・シミュレータによる−35℃絶対粘度が62センチポアズ(cP)未満で、かつASTM D4684に従う小型回転粘度計による粘度試験値が60000cP未満である潤滑剤組成物が開示されている。その基油は含ろうパラフィン系フィッシャー・トロプッシュ合成炭化水素から得られたものである。
【0008】
特許文献3及び4には、ある種の芳香族化合物群、エステル類、狭義の基油混合物、および/または非晶質オレフィン共重合体のような非晶質重合体を含む潤滑油組成物に使用するための摩擦低減剤が開示されている。これら組成物は潤滑油に混合されると、不安定性や望ましくない高粘度、堆積物といった有害な影響を与えること無く、摩擦係数の実質的な低減および燃料経済性の改善利益をもたらすことができる。
【0009】
特許文献5には、粘度が100℃で2以上3cSt未満のフィッシャー・トロプッシュ合成蒸留留分を、粘度が100℃で3.8cStより高い少なくとも一種の追加のフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された蒸留留分とブレンドすることにより、フィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された潤滑油基油を製造する方法;粘度が100℃で約3から約10cStの間で、TGAノバック揮発度が約35質量%未満である潤滑油基油組成物;および上記潤滑油基油を用いた調合済み潤滑油が開示されている。
【0010】
特許文献6には、(a)動粘度が100℃で2以上3cSt未満であることに特徴があるフィッシャー・トロプッシュ合成誘導蒸留留分を回収すること、そして(b)該フィッシャー・トロプッシュ合成誘導蒸留留分を、I種基油、II種基油、III種基油および上記従来基油の何れか二種以上の適正な比率での混合物からなる群より選ばれる石油系基油とブレンドして、粘度が約3以上である潤滑油基油ブレンドを製造することからなる潤滑油基油ブレンドの製造方法;また、基油ブレンド、調合済み潤滑剤およびそれらの内燃機関での使用態様も開示されている。
【0011】
特許文献7には、流動点が0℃以下で、かつ沸点範囲が10パーセント留出点で約625°Fから約790°Fの間、90パーセント留出点で約725°Fから約950°Fの間にあることに特徴がある蒸留基油の潤滑性を改善する方法であって、該蒸留基油と充分な量の流動点降下性基油ブレンド成分をブレンドして、得られる基油ブレンドの流動点を蒸留基油の流動点よりも少なくとも3℃下げることからなる方法が開示されていて、該流動点降下性基油ブレンド成分は、流動点が蒸留基油の流動点よりも少なくとも3℃高い、異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された残油である。
【0012】
特許文献8には、(a)合成ガスでフィッシャー・トロプッシュ合成を行なって生成物流を与えること、(b)該生成物流から、窒素と硫黄が全部で約30ppm未満で酸素が約1質量%未満の実質的にパラフィンろうの供給物を単離すること、(c)貴金属水素化成分を含む形状選択性中孔径分子ふるいを用いた水素化異性化脱ろうにより該供給物を脱ろうして、異性化油を生成させること、ただし、水素化異性化温度は約600°F(315℃)から約750°F(399℃)の間にある、そして(d)該異性化油を水素化仕上げして、それにより特定の所望の特性を有する潤滑基油を生成させること、そして(e)該潤滑油基油を少なくとも一種の潤滑油添加剤とブレンドすることにより、調合済み潤滑剤を製造する方法が開示されている。
【0013】
特許文献9には、トラクション係数の低い異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された蒸留留分を含むウォームギヤ潤滑剤を油溜めに満たすこと、そして満たした油溜めを用いて20から225℃の間の平衡温度でウォームギヤドライブを作動させることからなる、ウォームギヤドライブの高効率作動方法が開示されている。また、この発明は、高トラクション係数の潤滑油基油を、異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された蒸留留分とブレンドすることにより、該潤滑油基油のトラクション係数を低減する方法にも関する。また、この発明は、異性化フィッシャー・トロプッシュ合成蒸留留分と2から50質量%の増粘剤を含むウォームギヤ潤滑剤にも関する。
【0014】
特許文献10には、SAE J300(2001年6月改訂)の要求性能の仕様書を満たすマルチグレードエンジン油、およびその製造方法が開示されていて、該エンジン油は、(a)(i)動粘度が100℃で2.5から約8cStの間にあること、(ii)少なくとも約3質量%の分子はシクロパラフィン官能性を持つこと、および(iii)マルチパラフィン官能性を持つ分子の質量%に対するモノシクロパラフィン官能性を持つ分子の質量%の比が約15より大きいことに特徴がある、水素化異性化蒸留フィッシャー・トロプッシュ合成基油を約15乃至約94.5質量%、(b)水素化異性化残油から製造され、分子中の平均分枝度が炭素原子100個当りアルキル分枝約5から約9個の間にあり、かつ10質量%以下は沸点が約900°Fより低い流動点降下性基油ブレンド成分を約0.5から約20質量%、および(c)ILSAC GF−3の仕様書を満たすように設計された添加剤パッケージを約5から約30質量%含有する。
【0015】
【特許文献1】特許協力条約による国際出願第PCT/US92/10373号明細書(国際公開第WO93/14049号パンフレット)
【特許文献2】特許協力条約による国際出願第PCT/EP02/01352号明細書(国際公開第WO02/064711A1号パンフレット)
【特許文献3】米国特許出願第10/320101号(出願公開第US2003/0166473A1号明細書
【特許文献4】米国特許出願第10/320101号(出願公開第US2003/0166474A1号明細書
【特許文献5】英国特許出願第0319242.4号(出願公開第GB2392673A号)明細書
【特許文献6】米国特許出願第10/301391号(出願公開第US2004/0094453A1号明細書
【特許文献7】米国特許出願第10/704031号(出願公開第US2005/0098476A1号明細書
【特許文献8】特許協力条約による国際出願第PCT/EP04/038849号明細書(国際公開第WO05/066314A1号パンフレット)
【特許文献9】米国特許出願第10/835219号(出願公開第US2005/0241990A1号明細書
【特許文献10】米国特許出願第10/949779号(出願公開第US2006/0027486A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、低い接触速度での潤滑油膜の維持能を犠牲にすることなく、高い接触速度であっても摩擦の低減を可能にするという特性を有する、新しいタイプの潤滑油基油を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、(a)主要量の潤滑粘度の油であって、二種以上の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油のブレンドからなり、かつブレンドの動粘度が100℃で約2乃至約14センチストークスの範囲にある油、および(b)一種以上の潤滑油添加剤を含むトラクション係数低減潤滑油組成物であって、基本的に摩擦緩和剤を含まない潤滑油組成物に関する。
また、本発明は、(a)主要量の潤滑粘度の油であって、二種以上の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油のブレンドからなり、かつブレンドの動粘度が100℃で約2乃至約14センチストークスの範囲にある油、および(b)一種以上の潤滑油添加剤を含む潤滑油組成物であって、基本的に摩擦緩和剤を含まない潤滑油組成物を用いて内燃機関に潤滑性を付与することからなる、内燃機関内のトラクション係数を低減する方法にも関する。
【0018】
すなわち、本発明は、下記の成分を含む内燃機関用のトラクション係数低減潤滑油組成物を提供する:
(a)主要量の潤滑粘度の油であって、二種以上の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油のブレンドからなり、かつブレンドの動粘度が100℃で約2乃至約14センチストークスの範囲にある油、および
(b)一種以上の潤滑油添加剤、
ただし、潤滑油組成物は基本的に摩擦緩和剤を含まない。
【0019】
上記のトラクション係数低減潤滑油組成物は更に、一種以上の従来の基油を含んでいてもよい。潤滑油組成物中の従来の基油は、潤滑油組成物の全質量%に基づき最大で30質量%であることが好ましい。より好ましくは、潤滑油組成物中の従来の基油は、潤滑油組成物の全質量%に基づき最大で10質量%である。
【0020】
潤滑油組成物の好ましい態様では、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、II種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率25かつ速度10ミリメートル毎秒では、約17パーセント乃至約47パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約44パーセント乃至約74パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約25パーセント乃至約55パーセントの範囲にある。また好ましくは、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、II種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率50かつ速度10ミリメートル毎秒では、約13パーセント乃至約43パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約41パーセント乃至約71パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約25パーセント乃至約55パーセントの範囲にある。また好ましくは、潤滑油組成物のトラクション係数の低減はII種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率75かつ速度10ミリメートル毎秒では、約9パーセント乃至約39パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約41パーセント乃至約71パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約22パーセント乃至約52パーセントの範囲にある。
【0021】
潤滑油組成物の好ましい態様では、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、III種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率25かつ速度10ミリメートル毎秒では、約3パーセント乃至約28パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約9パーセント乃至約39パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約10パーセント乃至約40パーセントの範囲にある。また好ましくは、潤滑油組成物のトラクション係数の低減はIII種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率50かつ速度10ミリメートル毎秒では、約17パーセント乃至約47パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約51パーセント乃至約81パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約22パーセント乃至約52パーセントの範囲にある。また好ましくは、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、III種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率75かつ速度10ミリメートル毎秒では、約9パーセント乃至約39パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約44パーセント乃至約74パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約14パーセント乃至約44パーセントの範囲にある。
【0022】
潤滑油組成物の好ましい態様では、(a)の潤滑粘度のブレンドの油は動粘度が100℃で約3乃至約12センチストークスの範囲にある。より好ましくは、潤滑粘度のブレンドの油の動粘度は100℃で約4乃至約10センチストークスの範囲にある。
【0023】
潤滑油組成物の更に好ましい態様では潤滑粘度の油は、(i)一種以上の、動粘度が100℃で約2乃至約9センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)一種以上の、動粘度が100℃で約5乃至約16センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである。より好ましくは、潤滑粘度の油は、(i)動粘度が100℃で約3乃至約8センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約6乃至約15センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである。最も好ましくは、潤滑粘度の油は、(i)動粘度が100℃で約4センチストークスである低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約14センチストークスである高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである。
【0024】
また、潤滑粘度のブレンドの油が、飽和炭化水素が95質量%より多い異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油を有することも好ましい。また、潤滑粘度のブレンドの油が、芳香族炭化水素が0.3質量%未満である異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油を有することも好ましい。
【0025】
潤滑粘度の油においてブレンドの(i)は、ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、99.0質量%対1.0質量%乃至約99.4質量%対約0.6質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油であり、そしてブレンドの(ii)は、ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、97.0質量%対3.0質量%乃至約95.0質量%対約5.0質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油であることが好ましい。
【0026】
本発明の別の態様は、下記の成分を含む内燃機関用のトラクション係数を低減する潤滑油組成物に関する:
(a)主要量の潤滑粘度の油であって、二種以上の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油のブレンドからなり、かつブレンドの動粘度が100℃で約2乃至約14センチストークスの範囲にある油、
(b)一種以上の清浄剤、
(c)一種以上の分散剤、
(d)一種以上の耐摩耗性添加剤、および
(e)一種以上の酸化防止剤、
ただし、潤滑油組成物は基本的に摩擦緩和剤を含まない。
【0027】
潤滑油組成物の好ましい態様では、(b)は、低、中又は高過塩基性の金属スルホネート、金属フェネート、金属サリチレートまたはそれらの任意の組合せであり、(c)は、後処理分散剤、非後処理分散剤またはそれらの任意の組合せであり、(d)は、ジチオ二リン酸金属塩、三ホウ酸金属塩またはそれらの任意の組合せであり、そして(e)は、硫化モリブデン含有酸化防止剤、ジフェニルアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤またはそれらの任意の組合せである。
【0028】
潤滑油組成物の更に好ましい態様では、(b)は、低過塩基性アルキル芳香族スルホネートと中過塩基性アルキル芳香族サリチレートと高過塩基性アルキルフェネートの混合物であり、(c)は、ホウ酸化ビスコハク酸イミドとエチレンカーボネートで処理したビスコハク酸イミドの混合物であり、(d)は、ジチオリン酸亜鉛と三ホウ酸カリウムの混合物であり、そして(e)は、モリブデン・コハク酸イミド錯体とオクチルブチルジフェニルアミン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤の混合物である。
【0029】
上記潤滑油組成物の好ましい態様では、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、II種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率25かつ速度10ミリメートル毎秒では、約17パーセント乃至約47パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約44パーセント乃至約74パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約25パーセント乃至約55パーセントの範囲にある。また好ましくは、潤滑油組成物のトラクション係数の低減はII種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率50かつ速度10ミリメートル毎秒では、約13パーセント乃至約43パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約41パーセント乃至約71パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約25パーセント乃至約55パーセントの範囲にある。また好ましくは、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、II種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率75かつ速度10ミリメートル毎秒では、約9パーセント乃至約39パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約41パーセント乃至約71パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約22パーセント乃至約52パーセントの範囲にある。
【0030】
上記潤滑油組成物の好ましい態様では、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、III種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率25かつ速度10ミリメートル毎秒では、約3パーセント乃至約28パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約9パーセント乃至約39パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約10パーセント乃至約40パーセントの範囲にある。また好ましくは、潤滑油組成物のトラクション係数の低減はIII種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率50かつ速度10ミリメートル毎秒では、約17パーセント乃至約47パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約51パーセント乃至約81パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約22パーセント乃至約52パーセントの範囲にある。また好ましくは、潤滑油組成物のトラクション係数の低減はIII種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率75かつ速度10ミリメートル毎秒では、約9パーセント乃至約39パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約44パーセント乃至約74パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約14パーセント乃至約44パーセントの範囲にある。
【0031】
また、本発明は、内燃機関内のトラクション係数を低減する方法であって、下記の成分を含む潤滑油組成物を用いて内燃機関に潤滑性を付与することからなる方法にも関する:
(a)主要量の潤滑粘度の油であって、二種以上の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油のブレンドからなり、かつブレンドの動粘度が100℃で約2乃至約14センチストークスの範囲にある油、および
(b)一種以上の潤滑油添加剤、
ただし、潤滑油組成物は基本的に摩擦緩和剤を含まない。
【0032】
内燃機関内のトラクション係数を低減するためのトラクション係数低減潤滑油組成物は更に、一種以上の従来の基油を含んでいてもよい。潤滑油組成物中の従来の基油は、潤滑油組成物の全質量%に基づき最大で30質量%であることが好ましい。より好ましくは、潤滑油組成物中の従来の基油は潤滑油組成物の全質量%に基づき最大で10質量%である。
【0033】
上記の方法において潤滑油組成物の好ましい態様では、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、II種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率25かつ速度10ミリメートル毎秒では、約17パーセント乃至約47パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約44パーセント乃至約74パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約25パーセント乃至約55パーセントの範囲にある。また好ましくは、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、II種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率50かつ速度10ミリメートル毎秒では、約13パーセント乃至約43パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約41パーセント乃至約71パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約25パーセント乃至約55パーセントの範囲にある。また好ましくは、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、II種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率75かつ速度10ミリメートル毎秒では、約9パーセント乃至約39パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約41パーセント乃至約71パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約22パーセント乃至約52パーセントの範囲にある。
【0034】
上記の方法において潤滑油組成物の好ましい態様では、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、III種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率25かつ速度10ミリメートル毎秒では、約3パーセント乃至約28パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約9パーセント乃至約39パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約10パーセント乃至約40パーセントの範囲にある。また好ましくは、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、III種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率50かつ速度10ミリメートル毎秒では、約17パーセント乃至約47パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約51パーセント乃至約81パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約22パーセント乃至約52パーセントの範囲にある。また好ましくは、潤滑油組成物のトラクション係数の低減は、III種基油と比較して、100℃で、いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率75かつ速度10ミリメートル毎秒では、約9パーセント乃至約39パーセントの範囲にあり、速度100ミリメートル毎秒では約44パーセント乃至約74パーセントの範囲にあり、そして速度1000ミリメートル毎秒では約14パーセント乃至約44パーセントの範囲にある。
【0035】
該方法の好ましい態様では、(a)の潤滑粘度のブレンドの油は、動粘度が100℃で約3乃至約12センチストークスの範囲にある。より好ましくは、潤滑粘度のブレンドの油の動粘度は100℃で約4乃至約10センチストークスの範囲にある。
【0036】
上記方法では潤滑粘度の油は、(i)一種以上の、動粘度が100℃で約2乃至約9センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)一種以上の、動粘度が100℃で約5乃至約16センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドであることが好ましい。より好ましくは、潤滑粘度の油は、(i)動粘度が100℃で約3乃至約8センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約6乃至約15センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである。最も好ましくは、潤滑粘度の油は、(i)動粘度が100℃で約4センチストークスである低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約14センチストークスである高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである。
【0037】
上記方法で潤滑粘度のブレンドの油は、飽和炭化水素が95質量%より多い異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油を有することが好ましい。また、上記方法で潤滑粘度のブレンドの油が、芳香族炭化水素が0.3質量%未満である異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油を有することも好ましい。
【0038】
該方法の好ましい態様では潤滑粘度の油は、(i)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、99.0質量%対1.0質量%乃至約99.4質量%対約0.6質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、97.0質量%対3.0質量%乃至約95.0質量%対約5.0質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである。
【0039】
上記方法の別の態様において潤滑油組成物で(b)は、低、中又は高過塩基性の金属スルホネート、金属フェネート、金属サリチレートまたはそれらの任意の組合せであり、(c)は、後処理分散剤、非後処理分散剤またはそれらの任意の組合せであり、(d)は、ジチオ二リン酸金属塩または三ホウ酸金属塩またはそれらの任意の組合せであり、そして(e)は、硫化モリブデン含有酸化防止剤、ジフェニルアミン系酸化防止剤またはフェノール系酸化防止剤またはそれらの任意の組合せである。
【0040】
より好ましくは、上記態様で(b)は、低過塩基性アルキル芳香族スルホネートと中過塩基性アルキル芳香族サリチレートと高過塩基性アルキルフェネートの混合物であり、(c)は、ホウ酸化ビスコハク酸イミドとエチレンカーボネート処理ビスコハク酸イミドの混合物であり、(d)は、ジチオリン酸亜鉛と三ホウ酸カリウムの混合物であり、そして(e)は、モリブデン・コハク酸イミド錯体とオクチルブチルジフェニルアミンとフェノール系酸化防止剤の混合物である。
【0041】
また、本発明は、下記の成分を含む内燃機関用のトラクション係数低減潤滑油濃縮物にも関する:
(a)約10質量%乃至約90質量%の潤滑粘度の油であって、従来の基油または異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油またはそれらの任意の組合せからなる油、および
(b)一種以上の潤滑油添加剤、
ただし、潤滑油濃縮物は基本的に摩擦緩和剤を含まない。
【0042】
上記潤滑油濃縮物の好ましい態様では、(a)の潤滑粘度の油の動粘度が100℃で約3乃至約12センチストークスの範囲にある。より好ましくは、潤滑粘度の油の動粘度は100℃で約4乃至約10センチストークスの範囲にある。
【0043】
上記潤滑油濃縮物において(a)の潤滑粘度の油で、フィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油は、(i)一種以上の、動粘度が100℃で約2乃至約9センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)一種以上の、動粘度が100℃で約5乃至約16センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドであることが好ましい。より好ましくは、潤滑粘度の油でフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油は、(i)動粘度が100℃で約3乃至約8センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約6乃至約15センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである。最も好ましくは、潤滑粘度の油でフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油は、(i)動粘度が100℃で約4センチストークスである低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約14センチストークスである高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである。
【0044】
潤滑油濃縮物の上記態様では、(a)の潤滑粘度の油で異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油は、飽和炭化水素が95質量%より多いことが好ましい。また、潤滑粘度の油で異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油は、芳香族炭化水素が0.3質量%未満であることも好ましい。
【0045】
上記潤滑油濃縮物の潤滑粘度の油で異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油が、(i)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、99.0質量%対1.0質量%乃至約99.4質量%対約0.6質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、97.0質量%対3.0質量%乃至約95.0質量%対約5.0質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドであることも好ましい。
【0046】
本発明のまた別の態様は、下記の成分を含む内燃機関用のトラクション係数を低減する潤滑油濃縮物である:
(a)主要量の潤滑粘度の油であって、従来の基油または異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油またはそれらの任意の組合せからなる油、および
(b)一種以上の清浄剤、
(c)一種以上の分散剤、
(d)一種以上の耐摩耗性添加剤、および
(e)一種以上の酸化防止剤、
ただし、潤滑油濃縮物は基本的に摩擦緩和剤を含まない。
【0047】
上記の潤滑油濃縮物において、(a)の潤滑粘度の油でフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油は、(i)一種以上の、動粘度が100℃で約2乃至約9センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)一種以上の、動粘度が100℃で約5乃至約16センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドであることが好ましい。より好ましくは、潤滑粘度の油でフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油は、(i)動粘度が100℃で約3乃至約8センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約6乃至約15センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである。最も好ましくは、潤滑粘度の油でフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油は、(i)動粘度が100℃で約4センチストークスである低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約14センチストークスである高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである。
【0048】
潤滑油濃縮物の上記態様では、(a)の潤滑粘度の油で異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油は、飽和炭化水素が95質量%より多いことが好ましい。また、潤滑粘度の油で異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油は、芳香族炭化水素が0.3質量%未満であることも好ましい。
【0049】
上記潤滑油濃縮物の潤滑粘度の油で異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油が、(i)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、99.0質量%対1.0質量%乃至約99.4質量%対約0.6質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、97.0質量%対3.0質量%乃至約95.0質量%対約5.0質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドであることも好ましい。
【0050】
本発明の潤滑油組成物に用いられることのない摩擦緩和剤は一般に、極性頭部のあるC10〜C20炭化水素鎖を持つ化合物である。これらには、灰分含有摩擦緩和剤と無灰摩擦緩和剤とがある。潤滑油組成物から除外される摩擦緩和剤としては、これらに限定されるものではないが、脂肪アルコール、脂肪酸、例えばステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸および他の脂肪酸又はそれらの塩及びエステル、ホウ酸化エステル、アミン、リン酸エステル、および二及び三炭化水素リン酸エステル、炭化水素亜リン酸エステル及びホスホン酸エステルを挙げることができる。摩擦緩和剤にはモリブデンも含まれる。また、メタクリレートなどの有機重合体摩擦緩和剤も除外される。
【0051】
上述した潤滑油組成物は、オレフィン共重合体などの粘度指数向上剤を含んでいてもよく、その例としてはエチレン・プロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、水和スチレン・イソプレン共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレンおよびビニルピロリドン、および分散型粘度指数向上剤がある。
【0052】
液体が流れ出す、もしくは液体を注ぐことができる温度を下げる流動点降下剤が、本発明の潤滑油組成物に含まれていてもよい。潤滑油の低温流動性を最適化する添加剤には各種の共重合体がある。好ましいのは、摩擦緩和性を有しない流動点降下剤である。
【0053】
さび止め添加剤を本発明の潤滑油組成物に添加することも考えられる。好ましいさび止め添加剤としては、非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエートを挙げることができる。また、さび止め添加剤として用いることができるその他の化合物としては、ステアリン酸およびその他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステルを挙げることができる。だが、より好ましいさび止め添加剤は潤滑油のリン分または硫黄分に寄与しないものである。上に挙げたさび止め添加剤のうちの幾つかは摩擦緩和性を有してもいる。だが、これらはさび防止には充分な量であるが摩擦緩和性を与えるほど充分多くはない量で添加することができる。
【0054】
本発明の潤滑油組成物に使用することができる極圧剤としては、アルカリ土類金属ホウ酸化極圧剤およびアルカリ金属ホウ酸化極圧剤が挙げられる。モリブデンを含む極圧剤も本発明の潤滑油組成物に用いることができる。硫化オレフィン、ジアルキル−1−ジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキルおよびアリール型)、硫化ジフェニル、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛、中和又は部分中和リン酸エステル、ジチオリン酸エステル、および無硫黄リン酸エステル。
【0055】
本発明の潤滑油に用いることができる好ましい腐食防止剤は、ジフェニルアミンの誘導体、コハク酸イミドの誘導体、硫化オレフィン、および共硫化アルケニルエステル/アルファオレフィン腐食防止剤である。また、腐食防止剤としては、金属ジチオリン酸塩、特にはジアルキルジチオリン酸亜鉛も挙げられる。より好ましい腐食防止剤はコハク酸イミドの誘導体である。最も好ましいのはテレフタル酸コハク酸イミド錯体である。
【0056】
本発明の潤滑油に用いられる金属不活性化剤としては、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、メルカプトベンゾチアゾール、チアジアゾール誘導体、およびメルカプトベンズイミダゾールを挙げることができる。
【0057】
本発明に使用できる消泡剤は、ケイ素系のものである。
【発明の効果】
【0058】
本発明に従って内燃機関用の潤滑油組成物にフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油を使用することによって、トラクション係数の低減、並びに接触が流体潤滑から境界潤滑に移行する速度の低減が可能になる。トラクション係数の低減が高速度でも低速度でも観察されているから、この結果は予測し得ないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
[定義]
下記の用語は、本明細書で使用するとき、特に断らない限りは下記の意味を有する。
【0060】
「従来の基油」は、本明細書で使用するとき、鉱油であっても、あるいは天然又は合成原料から誘導された潤滑粘度の合成油であってもよい基油または潤滑油を意味する。本発明に基油として使用される鉱油としては、通常潤滑油組成物に使用されるパラフィン系、ナフテン系及びその他の油が挙げられる。合成油としては、炭化水素合成油および合成エステル類が挙げられる。使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。基油としては、内燃機関のクランクケースに好ましく使用されるものが挙げられる。クランクケース潤滑油の粘度は通常、−17.8℃で約1300センチストークス乃至98.9℃で22.7センチストークスである。以下に、米国石油協会の基油分類I−V種を列挙する。好ましいのはI−V種基油である。
【0061】
API基油分類
──────────────────────────────────
基油分類 硫黄 飽和炭化水素 粘度指数
(%) (%)
──────────────────────────────────
I種 >0.03 及び/又は <90 80−120
II種 <0.03 及び >90 80−120
III種 <0.03 及び >90 >120
IV種 PAO合成潤滑油
V種 I、II、III、IV種に含まれないその他全ての基油
──────────────────────────────────
【0062】
「基本的に含まない」との表現は、本明細書で使用するとき、本発明の潤滑油組成物における摩擦緩和剤の含量を意味する。潤滑油組成物中の摩擦緩和剤の含量は、潤滑油組成物の全質量に基づき0.2質量%未満であることが好ましい。より好ましくは、潤滑油組成物中の摩擦緩和剤の含量は潤滑油組成物の全質量に基づき0.1質量%未満である。更に好ましくは、潤滑油組成物中の摩擦緩和剤の含量は潤滑油組成物の全質量に基づき0.05質量%未満である。最も好ましくは、潤滑油組成物中の摩擦緩和剤の含量は潤滑油組成物の全質量に基づき0.0質量%である。
【0063】
「トラクション係数」は、本明細書で使用するとき、二つの接触面間の抵抗に打ち勝つのに必要な、その接触の表面圧に関係して加えられる力を意味する。トラクション係数の測定は、100℃で、共にヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、球状物に対するすべり率25、50及び75、速度10、100及び1000ミリメートル毎秒にて行われた。
【0064】
「低、中及び高過塩基性」は、本明細書で使用するとき、清浄剤のアルカリ金属及びアルカリ土類金属含量を意味する。低過塩基性は、全塩基価(TBN)が1より大きく20以下のアルカリ金属又はアルカリ土類金属清浄剤を意味し、中過塩基性は、TBNが20より大きく200以下のアルカリ金属又はアルカリ土類金属清浄剤を意味する。高過塩基性は、TBNが200より大きいアルカリ金属又はアルカリ土類金属清浄剤を意味する。
【0065】
「球状物に対するすべり率又はSRR」は、本明細書で使用するとき、ディスク速度と球速度両方が別々に制御されているときに、速度の差を二つの面の平均速度のパーセントで表した数値を意味する。測定で付与されるSRR値が如何なる値であっても、両方の面は同一方向に動くが同一速度ではなく、よってすべり運動ところがり運動が混じって発生する。
【0066】
特に断らない限り、パーセントは全て質量パーセント(%)である。
【0067】
[潤滑油組成物]
内燃機関用の潤滑油組成物にフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油を使用することによって、トラクション係数の低減、並びに接触が流体潤滑から境界潤滑に移行する速度の低減が可能になることを発見した。トラクション係数の低減が高速度でも低速度でも観察されているから、この結果は予測し得ないものであった。
【0068】
1000ミリメートル毎秒という高速度では、接触は流体潤滑支配で作用している。トラクション係数の低減は、潤滑膜のせん断による摩擦損失の低減を示唆している。そのような低減は、高い接触速度ではトラクション係数に大いに影響を与え、そして最小トラクション係数が観察される速度を上げる傾向にある。
【0069】
高い接触速度でトラクション係数の低減が見られたことに加えて、予測し得なかったことには、100ミリメートル毎秒及び10ミリメートル毎秒という接触速度でも、トラクション係数の著しい低減が観察された。これらの速度で高いトラクション係数となったなら、接触は混合又は境界潤滑支配で作用していて、潤滑膜自体の摩擦損失はトラクション係数では無視できる部分であると結論づけられる。低速度でのトラクション係数の低減は、フィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油が金属−金属接触による摩擦損失を低減できることを示唆している。そのような低速度でのトラクション係数の低減は、最小トラクションが観察される速度を下げる傾向にある。
【0070】
さらに、フィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油を含む潤滑油組成物で観察されたトラクション係数は、II種又はIII種基油を含む潤滑油組成物で観察されたトラクション係数よりも低い。下記第1表に、観察されたトラクション係数の相対的な低減をまとめて示す。
【0071】
第 1 表
────────────────────────────
速度(ミリメートル毎秒)
10 100 1000
────────────────────────────
SSR25
II種基油 17−47 44−74 25−55
III種基油 3−28 9−39 10−40
────────────────────────────
SSR50
II種基油 13−43 41−71 25−55
III種基油 17−47 51−81 22−52
────────────────────────────
SSR75
II種基油 9−39 41−71 22−52
III種基油 9−39 44−74 14−44
────────────────────────────
【0072】
本発明の潤滑油組成物は、以下に詳しく記載する化合物を単にブレンドもしくは混合することにより製造することができる。また、添加剤を所望の濃度で含む潤滑油組成物のブレンドを容易にするために、これらの化合物を他の種々の添加剤と一緒に適切な比率で、濃縮物またはパッケージとして予備ブレンドすることもできる。
【0073】
(潤滑粘度の油)
潤滑粘度の油または基油は、本明細書で使用するとき、鉱油でも潤滑粘度の合成油でもよく、好ましくは内燃機関のクランクケースに使用できる潤滑油を意味する。クランクケース潤滑油の粘度は通常、−17.8℃で約1300センチストークス乃至98.9℃で22.7センチストークスである。
【0074】
潤滑油は、天然又は合成原料から誘導することができる。本発明に基油として使用される鉱油としては、通常潤滑油組成物に使用されるパラフィン系、ナフテン系及びその他の油が挙げられる。最も好ましいのはフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油である。これらは以下のようにして製造される。
【0075】
(フィッシャー・トロプッシュ合成)
フィッシャー・トロプッシュ化学合成では、合成ガスを反応条件下でフィッシャー・トロプッシュ触媒との接触により液体炭化水素に変換する。一般には、メタンおよび任意に重質炭化水素(エタンおよび重質)を、従来の合成ガス発生装置に送り込んで合成ガスとすることができる。一般に合成ガスは、水素と一酸化炭素を含み、また少量の二酸化炭素および/または水を含有していることもある。合成ガス中に硫黄、窒素、ハロゲン、セレン、リンおよびヒ素不純物が存在することは望ましくない。この理由から、また合成ガスの質に応じて、フィッシャー・トロプッシュ化学合成を行う前に供給物から硫黄や他の不純物を取り除くことが好ましい。これら不純物を除去する手段は当該分野の熟練者にはよく知られている。
【0076】
フィッシャー・トロプッシュ法では、H2とCOとの混合物を含む合成ガスを、好適な温度及び圧力反応条件下でフィッシャー・トロプッシュ触媒と接触させることによって、液体及び気体炭化水素が生成する。フィッシャー・トロプッシュ型反応を行うための条件の例についても当該分野の熟練者によく知られている。
【0077】
フィッシャー・トロプッシュ合成法での留分はC1−C200+の範囲にあり、大部分がC5−C100+の範囲にある。反応は、例えば一以上の触媒床を含む固定床型反応器、スラリー反応器、流動床型反応器、もしくは異なるタイプの反応器の組合せなど種々の反応器タイプで行うことができる。そのような反応法および反応器についてはよく知られていて、文献にも記述されている。
【0078】
スラリー式フィッシャー・トロプッシュ法は、本発明の実施に好ましいものであるが、強発熱合成反応に優れた熱伝達(及び物質移動)特性を利用していて、コバルト触媒を使用すると比較的高分子量のパラフィン系炭化水素を生成させることができる。特に好ましいフィッシャー・トロプッシュ法が、欧州特許出願第9400600.7号明細書(EP0609079B1号公報)に教示されている。
【0079】
一般にフィッシャー・トロプッシュ触媒は、金属酸化物支持体上の8族遷移金属を含んでいる。また、触媒は貴金属促進剤(群)および/または結晶性分子ふるいを含んでいてもよい。好適なフィッシャー・トロプッシュ触媒は一種以上のFe、Ni、Co、RuおよびReを含み、コバルトが好ましい。好ましいフィッシャー・トロプッシュ触媒は、好適な無機支持体材料、好ましくは一種以上の耐熱性金属酸化物からなる支持体上に、有効量のコバルトと一種以上のRe、Ru、Pt、Fe、Ni、Th、Zr、Hf、U、MgおよびLaを含んでなる。使用できる触媒およびその製造については知られていて、米国特許第4568663号明細書に説明されているが、その内容は説明のためのものであって触媒の選択を制限するものではない。
【0080】
特に好ましいフィッシャー・トロプッシュ法は、欧州特許出願第9400600.7号明細書(EP0609079B1号公報)に教示されている。高い炭素数分布を持つろうの製造方法の例は、PCT国際出願第PCT/98EP/08545号明細書(国際公開第WO9934917A1号パンフレット)に教示されている。
【0081】
フィッシャー・トロプッシュ反応による留分としては一般に、軽質反応留分とろう質反応留分が挙げられ、一般には主としてパラフィン類を含んでいる。本発明のブレンドした潤滑剤およびブレンドした完成潤滑剤に使用されるフィッシャー・トロプッシュ合成誘導潤滑基油を与えるための方法に、供給原料として使用されるのはろう質反応留分(すなわち、ろう留分)である。
【0082】
フィッシャー・トロプッシュ合成粗製物のろう質留分から水素化異性化を含む方法によって、トラクション係数の低い異性化フィッシャー・トロプッシュ合成蒸留留分が製造される。好ましくは、フィッシャー・トロプッシュ合成潤滑基油は、米国特許第7083713号及び米国特許出願第10/744870号(2003年12月23日出願)の各明細書に記載されている方法により製造され、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0083】
(水素化異性化)
水素化異性化は、分子構造中に分枝を選択的に付加することで潤滑基油の低温流動性を改善することを意図している。水素化異性化は理想的には、フィッシャー・トロプッシュ合成ろうから非ろう質イソパラフィン類への高レベルの変換を達成しながら、同時に分解による変換を最小にするものである。
【0084】
本発明に使用できる水素化異性化触媒は、形状選択性中孔径分子ふるい、および任意に耐熱酸化物支持体上の触媒活性金属水素化成分を含んでいる。水素化異性化に使用される好ましい形状選択性中孔径分子ふるいは、リン酸アルミニウムを基本とするものであり、SAPO−11が好ましい。SM−3は、特に好ましい形状選択性中孔径SAPOであり、SAPO−11分子ふるいの構造内に結晶構造を持っている。SM−3の製造およびその独特な特徴については、米国特許第4943424号及び第5158665号明細書に記載されている。水素化異性化に使用されるその他の形状選択性中孔径分子ふるいとしてはゼオライト類があり、SSZ−32およびZSM−23が好ましい。
【0085】
本発明の方法に使用できる特に好ましい中孔径分子ふるいについては、米国特許第5135638号及び第5282958号明細書に記載されていて、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0086】
本発明に使用できる水素化異性化触媒は、触媒活性水素化金属を含んでいる。触媒活性水素化金属の存在によって留分の改善、特にVIおよび安定性がもたらされる。代表的な触媒活性水素化金属としては、クロム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、コバルト、タングステン、亜鉛、白金およびパラジウムを挙げることができる。金属白金および金属パラジウムが特に好ましく、白金が特に最も好ましい。
【0087】
耐熱性酸化物支持体は、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、マグネシア、チタニアおよびそれらの組合せを含む、従来より触媒に使用されている酸化物支持体から選ぶことができる。
【0088】
水素化異性化を行うのに適した条件については、米国特許第5282958号及び第5135638号明細書に記載されていて、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0089】
水素化異性化工程では反応領域に水素が存在する。留分から水素を分離して反応領域に再循環させてもよい。
【0090】
(水素化処理)
水素化異性化工程へのろう質供給物を、水素化異性化脱ろうの前に水素化処理してもよい。水素化処理は、通常遊離水素の存在下で行われる触媒法を意味し、主な目的は、ヒ素やアルミニウム、コバルトなどの種々の金属不純物、硫黄や窒素などのヘテロ原子、酸素化物または芳香族炭化水素を供給原料から除去することにある。
【0091】
水素化処理操作を実施するのに使用される触媒は、当該分野ではよく知られていて、例えば米国特許第4347121号及び第4810357号明細書に見られ、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。その他の好適な触媒については、例えば米国特許第4157294号及び第3904513号明細書に記載されている。ニッケル・モリブデンのような水素化非貴金属は通常、酸化物として最終触媒組成物中に存在する。
【0092】
代表的な水素化処理条件は広範囲にわたって変えられる。
【0093】
(水素化仕上げ)
水素化仕上げは、フィッシャー・トロプッシュ合成潤滑基油とするために、水素化異性化に続く工程として利用できる水素化処理工程である。水素化仕上げは、微量の芳香族やオレフィン類、着色物質、溶媒を取り除くことにより、フィッシャー・トロプッシュ合成潤滑基油留分の酸化安定性、UV安定性および外観を改善することを意図している。水素化仕上げの一般的な記述は、米国特許第3852207号及び第4673487号明細書に見られる。
【0094】
水素化仕上げの条件は、芳香族炭化水素の質量%が0.30未満である異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された蒸留留分を達成できるように調整される。
【0095】
好適な水素化仕上げ触媒としては、8A族の貴金属、例えばアルミナまたはシリカ母材上の白金またはパラジウム、および未硫化8A族及び6B族、例えばアルミナまたはシリカ母材上のニッケル・モリブデンまたはニッケル・スズを挙げることができる。米国特許第3852207号明細書には、好適な貴金属触媒および穏やかな条件が記載されている。その他の好適な触媒は、米国特許第4157294号及び第3904513号明細書に記載されている。
【0096】
不純物を除去する白土処理は、トラクション係数の低い異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された蒸留留分を与えるための代替の最終工程である。
【0097】
(分別)
フィッシャー・トロプッシュ合成誘導留分および石油系留分を、特徴的な沸点範囲を有する種々の留分に分離することは一般に、常圧又は減圧蒸留により、あるいは常圧蒸留と減圧蒸留の組合せにより遂行される。潤滑基油を沸点範囲の異なる留分に分別することによって、潤滑基油製造工場において一より多いグレード又は粘度の潤滑基油を製造することができる。
【0098】
本発明の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された蒸留留分は、優れた潤滑基油になる。本発明を実施するのに使用される異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された蒸留留分の特徴は、低いトラクション係数、芳香族炭化水素の質量%が0.30未満、および極めて低レベルの不飽和炭化水素にある。
【0099】
(溶剤脱ろう)
トラクション係数の低い異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された蒸留留分の製造方法にはまた、水素化異性化工程に続く溶剤脱ろう工程が含まれていてもよい。水素化異性化脱ろうの後、潤滑基油から残っている少量のろう質分子を除去するために、任意に溶剤脱ろうを使用することができる。溶剤脱ろうは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはトルエンなどの溶剤に潤滑基油を溶解し、そしてろう分子を沈殿させることより行われる。溶剤脱ろうについては、米国特許第4477333号、第3773650号及び第3775288号及び第7018525号の各明細書に記載されている。
【0100】
従来の合成油としては、炭化水素合成油および合成エステル類が挙げられる。使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用なものはC6−C12アルファオレフィンの水素化液体オリゴマー、例えば1−デセン三量体である。同様に、適正な粘度のアルキルベンゼン、例えばジドデシルベンゼンを使用することもできる。使用できる合成エステル類としては、モノカルボン酸及びポリカルボン酸とモノヒドロキシアルカノール及びポリオールとのエステルが挙げられる。代表的な例としては、ジドデシルアジペート、ペンタエリトリトールテトラカプロエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、およびジラウリルセバケート等がある。モノ及びジカルボン酸とモノ及びジヒドロキシアルカノールとの混合物から合成された複合エステルも使用することができる。
【0101】
また、炭化水素油と合成油のブレンドも使用することができる。例えば、10質量%乃至25質量%の水素化1−デセン三量体と75質量%乃至90質量%の37.8℃で683センチストークスの鉱油とのブレンドは、優れた油基材となる。
【0102】
以下に、米国石油協会(API)の基油分類I−V種を列挙する。好ましいのはII−V種基油である。
【0103】
API基油分類
──────────────────────────────────
基油分類 硫黄 飽和炭化水素 粘度指数
(%) (%)
──────────────────────────────────
I種 >0.03 及び/又は <90 80−120
II種 <0.03 及び >90 80−120
III種 <0.03 及び >90 >120
IV種 PAO合成潤滑油
V種 I、II、III、IV種に含まれないその他全ての基油
──────────────────────────────────
【0104】
(分散剤)
本発明の潤滑油組成物は分散剤を含有している。一般に無灰分散剤は、アルケニルコハク酸無水物をアミンと反応させることにより生成した窒素含有分散剤である。そのような分散剤の例としては、アルケニルコハク酸イミドおよびアルケニルコハク酸アミドがある。これらの分散剤は、例えばホウ素またはエチレンカーボネートとの反応により更に変性させることができる。長鎖炭化水素置換カルボン酸とヒドロキシ化合物から誘導されたエステル系無灰分散剤も用いることができる。好ましい無灰分散剤は、ポリイソブテニルコハク酸無水物から誘導されたものである。多数の分散剤が市販されている。
【0105】
(耐摩耗性添加剤)
従来の摩耗防止剤は、本発明の潤滑油組成物に用いることができる。その名称が意味するように、これら添加剤は可動金属部分の摩耗を低減する。そのような耐摩耗性添加剤の例としては、これらに限定されるものでないが、リン酸エステル、亜リン酸エステル、カルバメート、エステル、硫黄含有化合物およびモリブデン錯体を挙げることができる。本発明の潤滑油組成物は、ジチオ二リン酸金属塩および金属ジチオカルバメートまたはそれらの混合物のような耐摩耗性添加剤を一種以上含んでいてもよい。本発明に使用される好ましい耐摩耗性添加剤はジチオ二リン酸亜鉛からなる。
【0106】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、潤滑油が空気の存在下で老化または酸化するにつれて潤滑油中に自然に生じる分解過程を防止するために、潤滑油に使用される。このような酸化過程はゴムやラッカー、スラッジの形成を引き起こし、結果として酸度および粘度の増加をもたらす。使用できる酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール酸化防止剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−5−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−l−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−10−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)がある。アルキル化及び非アルキル化芳香族アミンの例としては、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、およびアルキル化アルファ−ナフチルアミンがある。酸化防止剤の他の部類としては、チオジカルボン酸のエステル、ジチオリン酸の塩、アルキル及びアリールリン酸エステルがあり、またモリブデン化合物が三核モリブデンを含まない限り、アミン・モリブデン錯化合物およびモリブデンジチオカルバメートなどのモリブデン化合物を酸化防止剤として使用してもよい。だが、それらの添加は潤滑油のリン分、硫黄分および硫酸灰分に寄与することになる。
【0107】
(低、中及び高過塩基性金属清浄剤)
本発明の潤滑油組成物に用いられる低及び中過塩基性金属清浄剤の例としては、低、中又は高過塩基性のスルホネート、サリチレート、フェネート、またはアルキルフェノールとアルデヒドとアミンのマンニッヒ縮合物がある。これら清浄剤は、アルカリ金属清浄剤であってもアルカリ土類金属清浄剤であってもよい。好ましくはアルカリ土類金属清浄剤であり、より好ましくはカルシウム清浄剤である。これら清浄剤のTBNは、1より大きく約500又はそれ以上である。このような清浄剤は当該分野ではよく知られていて市販もされている。
【0108】
[その他の添加剤]
本発明の潤滑油組成物は、上述した添加剤に加えて、本発明の潤滑油組成物に所望の特性を付与するために使用される他の添加剤も含有することができる。よって、潤滑油は、粘度指数向上剤、流動点降下剤、抗乳化剤、極圧剤および消泡剤などの添加剤を一種以上含有していてもよい。以下に、これら追加の添加剤について詳しく記載する。
【0109】
(粘度指数向上剤)
粘度指数向上剤は、温度の変化による粘度変化を調整するために潤滑油に添加される。市販されている粘度指数向上剤の幾つかの例としては、オレフィン共重合体、例えばエチレン・プロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、水和スチレン・イソプレン共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート、ビニルピロリドンとメタクリレートの共重合体、および分散型粘度指数向上剤がある。
【0110】
(極圧剤)
本発明の潤滑油組成物に使用することができる極圧剤としては、アルカリ土類金属ホウ酸化極圧剤およびアルカリ金属ホウ酸化極圧剤が挙げられる。モリブデンを含む極圧剤も、モリブデン化合物が三核モリブデンを含まない限り、本発明の潤滑油組成物に用いてもよい。硫化オレフィン、ジアルキル−1−ジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキルおよびアリール型)、硫化ジフェニル、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛、中和又は部分中和リン酸エステル、ジチオリン酸エステル、および無硫黄リン酸エステル。好ましい極圧剤は潤滑油のリン分に寄与しないようなものである。
【0111】
(流動点降下剤)
流動点降下剤は、潤滑油の低温流動性を最適化する添加剤である。例としては各種の共重合体がある。
【0112】
(さび止め添加剤)
さび止め添加剤としては、非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエートを挙げることができる。また、さび止め添加剤として用いることができるその他の化合物としては、ステアリン酸およびその他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステルを挙げることができる。だが、好ましいさび止め添加剤は潤滑油のリン又は硫黄分に寄与しないものである。上に挙げたさび止め添加剤のうちの幾つかは摩擦緩和性を有してもいる。だが、これらはさび防止には充分な量であるが摩擦緩和性を与えるほど充分多くはない量で添加することができる。
【0113】
(腐食防止剤)
腐食防止剤は、攻撃されやすい金属面を保護するために潤滑油に含有される。そのような腐食防止剤は一般に、非常に少量で、約0.02質量%乃至約1.0質量%の範囲で使用される。使用することができる腐食防止剤の例としては、硫化オレフィン腐食防止剤、および共硫化アルケニルエステル/アルファオレフィン腐食防止剤がある。
【0114】
(金属不活性化剤)
本発明の潤滑油組成物に用いることができる金属不活性化剤としては、これらに限定されるものではないが、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、メルカプトベンゾチアゾール、チアジアゾール誘導体、およびメルカプトベンズイミダゾールを挙げることができる。
【0115】
(抗乳化剤)
アルキルフェノールと酸化エチレンの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステルを、本発明の潤滑油組成物に用いることができる。
【0116】
(消泡剤)
本発明に使用できる消泡剤は、アルキルメタクリレート重合体、ジメチルシリコーン重合体、およびポリシロキサン型消泡剤である。
【0117】
ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンおよび天然ガスエンジンを潤滑にする従来の潤滑油組成物に望まれる特性を付与する観点から、総合的に最良の結果を得るために、潤滑油は、上記部類の添加剤の各々の混合しうる添加剤組合せを有効量で含有することができる。
【0118】
本明細書に記載した各種の添加剤物質又は物質の部類は、よく知られた物質であり、容易に商業的に購入したり、あるいは公知の方法又はその明らかな改良法により製造することができる。
【0119】
下記第2表に、本発明の潤滑油に使用することが考えられる添加剤の処理比率を記す。成分量は全て活性添加剤の質量%で記す。
【0120】
第 2 表
─────────────────────────────────────
成分 範囲 好ましい範囲 最も好ましい
(質量%) (質量%) 範囲(質量%)
─────────────────────────────────────
ホウ酸化分散剤 0−6 1−5 2−4
エチレンカーボネート 2−8 3−7 4−6
処理分散剤
低過塩基性清浄剤 0−1.5 0.5−1.5 0.6−0.8
中過塩基性清浄剤 0−5 0−3 1.5−3
高過塩基性清浄剤 0−3.0 0.4−2.5 0.5−1.5
亜鉛耐摩耗性添加剤 0−2 0.6−2 1.0−1.8
ジフェニルアミン 0−2 0.2−1.5 0.4−1.0
酸化防止剤
フェノール系酸化防止剤 0−3 0.2−2 0.3−1.0
モリブデン含有酸化防止剤 0−2.0 0−1.0 0.1−0.5
消泡剤 0−0.5 0−0.4 0.1−0.35
─────────────────────────────────────
【実施例】
【0121】
[実施例1]
比較配合物A及びBおよび試験配合物Cを、下記第3表に記載するように製造した。
【0122】
第 3 表
────────────────────────────────────
成分 比較 比較 試験
(質量%) 配合物A 配合物B 配合物C
────────────────────────────────────
基油 II種 III種 フィッシャー
・トロプッシュ
合成誘導基油
ホウ酸化コハク酸イミド分散剤 3.0 3.0 3.0
エチレンカーボネート処理 5 5 5
コハク酸イミド分散剤
低過塩基性カルシウム 0.7 0.7 0.7
スルホネート清浄剤
中過塩基性カルシウム 2.4 2.4 2.4
サリチレート清浄剤
高過塩基性硫化カルシウム 0.9 0.9 0.9
フェネート清浄剤
ジチオリン酸亜鉛 1.6 1.6 1.6
耐摩耗性添加剤
ジフェニルアミン酸化防止剤 0.5 0.5 0.5
フェノール系酸化防止剤 0.5 0.5 0.5
モリブデンコハク酸イミド 0.4 0.4 0.4
酸化防止剤
消泡剤 0.16 0.16 0.16
────────────────────────────────────
【0123】
[実施例2] トラクション係数測定
試験配合物Cのトラクション係数を低減する能力について、以下に記載するようにして比較配合物A及びBと比較して評価を行った。
【0124】
比較配合物A及びBを試験配合物Cと、一連の球−ディスク流動計実験にて比較した。上記第2表に記したように、三種類の配合物は、配合物を製造するのに使用した基油の選択の点でのみ異なっている。種々の異なる条件でトラクション係数を測定できるように流動度測定実験を計画した。主な変数は下記の通りであった。
【0125】
1)球状物に対するすべり率(SRR):25乃至50、及び乃至75で変えた。
2)温度:全ての測定を100℃の温度で行い、120℃の温度で繰り返した。
3)圧力:いずれもヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで測定した。
4)接触速度:10ミリメートル毎秒をちょっと下回ったところから、1000ミリメートル毎秒を充分に超えたところまで増加させた。
【0126】
SRR値は、ディスク速度と球速度両方が別々に制御されているときに、速度の差を二つの面の平均速度のパーセントで表したものである。測定で付与されるSRR値が如何なる値であっても、両方の面は同一方向に動くが同一速度ではなく、よってすべり運動ところがり運動が混じって発生する。SRR値が増加するにつれて、接触における相対運動はころがりからすべりに変移する。SRRと温度の条件の組合せの各々において、平均接触速度を10ミリメートル毎秒を僅かに下回ったところから1000ミリメートル毎秒を充分に超えたところまで増加させ、トラクション係数を平均接触速度の関数として測定した。これらの測定値をまとめて、第1図に示すストライベック曲線を作成した。ストライベック曲線は、下の二つの曲線の重合せである。第1図で第一曲線Xは、接触速度が増加し、その結果油膜が付着するにつれて、接触状態にある二面間の摩擦が低減することを表している。第1図で第二曲線Yは、接触速度が増加するにつれて潤滑膜の厚みが増すと、潤滑膜自体の摩擦損失によりトラクション係数が増加することを表している。第1図でストライベック曲線上の測定点の比較は、比較配合物A及びBと試験配合物Cとの相違を示している。
【0127】
第2、3及び4図は、100℃で、共にヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、三種類の異なる接触速度およびSRRそれぞれ25、50及び75で測定した、トラクション係数を示す。II種基油を含む比較配合物AとIII種基油を含む比較配合物Bのトラクション係数は同じようであるが、一方、フィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油を含む試験配合物Cのトラクション係数は、接触速度に関係なく首尾一貫して低い。
【0128】
最高速度の1000ミリメートル毎秒では、接触は流体潤滑支配で作用している。トラクション係数の低減は、潤滑膜のせん断により摩擦損失が低減することを示唆している。そのような低減は、高い接触速度ではトラクション係数に大いに影響を与えて、最小トラクション係数が観察される速度を第1図のY’のように上げる傾向にある。
【0129】
高い接触速度で影響が見られることに加えて、この実施例のデータは、100ミリメートル毎秒および10ミリメートル毎秒という接触速度でも、トラクション係数の著しい低減を示している。これらの速度で高いトラクション係数となったなら、接触は混合又は境界潤滑支配で作用していて、潤滑膜自体の摩擦損失はトラクション係数では無視できる部分であると結論づけられる。低速度でのトラクション係数の低減は、フィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油が金属−金属接触による摩擦損失を低減できることを示唆している。そのような低速度でのトラクション係数の低減は、最小トラクションが観察される速度を第1図のX’のように下げる傾向にある。
【0130】
第5図は、トラクション係数がその最小値に達する点を求めるために、トラクション係数を平均接触速度の関数として示す。データ点は、II種、III種およびフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油をそれぞれ含む比較配合物A及びBおよび試験配合物Cについて、SRR50及び75にて示している。グラフは、試験配合物Cにフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油を使用することによって、トラクション係数の低減と、接触が流体潤滑から境界潤滑に移行する速度の低減の両方が可能になることを明確に示している。II種またはIII種の使用の代わりにフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油の使用によるこの結果は、予測できないものであった。データ上で認められたこの驚くべき結果は、新しい低摩擦エンジン油の開発における非常に実用的な用途を示している。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】第1図は、ストライベック曲線上の測定点の比較であり、II種、III種およびフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油を含む潤滑油組成物での相違を示す。
【図2】第2図は、II種、III種およびフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油を含む潤滑油組成物それぞれについて、100℃で、共にヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、三種類の異なる接触速度および球状物に対するすべり率(SRR)25で測定して得たトラクション係数を示す。
【図3】第3図は、II種、III種およびフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油を含む潤滑油組成物それぞれについて、100℃で、共にヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、三種類の異なる接触速度および球状物に対するすべり率(SRR)50で測定して得たトラクション係数を示す。
【図4】第4図は、II種、III種およびフィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油を含む潤滑油組成物それぞれについて、100℃で、共にヤング率207GPa及びポアソン比0.293のAISI−SAE52100鋼製の鋼平板ディスクとその上の19.05mm径鋼球なる配置で、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPaを発生させる加荷重10ニュートンで、三種類の異なる接触速度および球状物に対するすべり率(SRR)75で測定して得たトラクション係数を示す。
【図5】第5図は、トラクション係数が最小となる点を求めるためにトラクション係数を平均接触速度の関数として示す。データは、フィッシャー・トロプッシュ合成誘導基油を潤滑油組成物に使用することによって、トラクション係数の低減も、また接触が流体潤滑から境界潤滑に移行する速度の低減も可能になることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含む内燃機関用のトラクション係数を低減する潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油であって、二種以上の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油のブレンドからなり、かつブレンドの動粘度が100℃で約2乃至約14センチストークスの範囲にある油、および
(b)一種以上の潤滑油添加剤、
ただし、潤滑油組成物は基本的に摩擦緩和剤を含有しない。
【請求項2】
潤滑油組成物が更に一種以上の従来の基油を含み、そして従来の基油が、潤滑油組成物の全質量に基づき最大で30質量%である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
潤滑油組成物が更に一種以上の従来の基油を含み、そして従来の基油が、潤滑油組成物の全質量に基づき最大で10質量%である請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減が、II種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率25、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約17パーセント乃至約47パーセント、約44パーセント乃至約74パーセント、および約25パーセント乃至約55パーセントの範囲にある請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減が、II種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率50、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約13パーセント乃至約43パーセント、約41パーセント乃至約71パーセント、および約25パーセント乃至約55パーセントの範囲にある請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減が、II種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率75、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約9パーセント乃至約39パーセント、約41パーセント乃至約71パーセント、および約22パーセント乃至約52パーセントの範囲にある請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減パーセントが、III種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率25、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約3パーセント乃至約28パーセント、約9パーセント乃至約39パーセント、および約10パーセント乃至約40パーセントの範囲にある請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減パーセントが、III種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率50、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約17パーセント乃至約47パーセント、約51パーセント乃至約81パーセント、および約22パーセント乃至約52パーセントの範囲にある請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減パーセントが、III種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率25、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約3パーセント乃至約28パーセント、約9パーセント乃至約39パーセント、および約10パーセント乃至約40パーセントの範囲にある請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減パーセントが、III種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率75、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約9パーセント乃至約39パーセント、約44パーセント乃至約74パーセント、および約14パーセント乃至約44パーセントの範囲にある請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
潤滑粘度のブレンド油の動粘度が、100℃で約3乃至約12センチストークスの範囲にある請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
潤滑粘度のブレンド油の動粘度が、100℃で約4乃至約10センチストークスの範囲にある請求項11に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
潤滑粘度の油が、(i)一種以上の、動粘度が100℃で約2乃至約9センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)一種以上の、動粘度が100℃で約5乃至約16センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
潤滑粘度の油が、(i)動粘度が100℃で約3乃至約8センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約6乃至約15センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項13に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
潤滑粘度の油が、(i)動粘度が100℃で約4センチストークスである低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約14センチストークスである高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項14に記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
潤滑粘度のブレンド油が、飽和炭化水素が95質量%より多い異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油を有する請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
潤滑粘度のブレンド油が、芳香族炭化水素が0.3質量%未満である異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油を有する請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
潤滑粘度の油が、(i)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、99.0質量%対1.0質量%乃至約99.4質量%対約0.6質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、97.0質量%対3.0質量%乃至約95.0質量%対約5.0質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
下記の成分を含む内燃機関用のトラクション係数を低減する潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油であって、二種以上の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油のブレンドからなり、かつブレンドの動粘度が100℃で約2乃至約14センチストークスの範囲にある油、
(b)一種以上の清浄剤、
(c)一種以上の分散剤、
(d)一種以上の耐摩耗性添加剤、および
(e)一種以上の酸化防止剤、
ただし、潤滑油組成物は基本的に摩擦緩和剤を含有しない。
【請求項20】
(b)の一種以上の清浄剤が、低、中又は高過塩基性の金属スルホネート、金属フェネート、金属サリチレートまたはそれらの任意の組合せであり、(c)が、後処理した分散剤、後処理していない分散剤またはそれらの任意の組合せであり、(d)が、ジチオ二リン酸金属塩または三ホウ酸金属塩またはそれらの任意の組合せであり、そして(e)が、モリブデン含有酸化防止剤、ジフェニルアミン酸化防止剤またはフェノール系酸化防止剤またはそれらの任意の組合せである請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
(b)が、低過塩基性アルキル芳香族スルホネートと中過塩基性アルキル芳香族サリチレートと高過塩基性アルキルフェネートとの混合物であり、(c)が、ホウ酸化ビスコハク酸イミドとエチレンカーボネートで処理されたビスコハク酸イミドとの混合物であり、(d)が、ジチオ二リン酸亜鉛と三ホウ酸カリウムとの混合物であり、そして(e)が、モリブデン・コハク酸イミド錯体とオクチルブチルジフェニルアミンとフェノール系酸化防止剤との混合物である請求項20に記載の潤滑油組成物。
【請求項22】
潤滑油組成物が更に一種以上の従来の基油を含み、そして従来の基油が、潤滑油組成物の全質量に基づき最大で30質量%である請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項23】
潤滑油組成物が更に一種以上の従来の基油を含み、そして従来の基油が、潤滑油組成物の全質量に基づき最大で10質量%である請求項22に記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減が、II種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率25、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約17パーセント乃至約47パーセント、約44パーセント乃至約74パーセント、および約25パーセント乃至約55パーセントの範囲にある請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項25】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減が、II種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率50、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約13パーセント乃至約43パーセント、約41パーセント乃至約71パーセント、および約25パーセント乃至約55パーセントの範囲にある請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項26】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減が、II種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率75、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約9パーセント乃至約39パーセント、約41パーセント乃至約71パーセント、および約22パーセント乃至約52パーセントの範囲にある請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項27】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減パーセントが、III種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率25、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約3パーセント乃至約28パーセント、約9パーセント乃至約39パーセント、および約10パーセント乃至約40パーセントの範囲にある請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項28】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減パーセントが、III種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率50、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約17パーセント乃至約47パーセント、約51パーセント乃至約81パーセント、および約22パーセント乃至約52パーセントの範囲にある請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項29】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減パーセントが、III種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率25、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約3パーセント乃至約28パーセント、約9パーセント乃至約39パーセント、および約10パーセント乃至約40パーセントの範囲にある請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項30】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減パーセントが、III種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率75、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約9パーセント乃至約39パーセント、約44パーセント乃至約74パーセント、および約14パーセント乃至約44パーセントの範囲にある請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項31】
潤滑粘度のブレンド油の動粘度が、100℃で約3乃至約12センチストークスの範囲にある請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項32】
潤滑粘度のブレンド油の動粘度が、100℃で約4乃至約10センチストークスの範囲にある請求項31に記載の潤滑油組成物。
【請求項33】
潤滑粘度の油が、(i)一種以上の、動粘度が100℃で約2乃至約9センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)一種以上の、動粘度が100℃で約5乃至約16センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項34】
潤滑粘度の油が、(i)動粘度が100℃で約3乃至約8センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約6乃至約15センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項33に記載の潤滑油組成物。
【請求項35】
潤滑粘度の油が、(i)動粘度が100℃で約4センチストークスである低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約14センチストークスである高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項34に記載の潤滑油組成物。
【請求項36】
潤滑粘度のブレンド油が、飽和炭化水素が95質量%より多い異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油を有する請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項37】
潤滑粘度のブレンド油が、芳香族炭化水素が0.3質量%未満である異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油を有する請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項38】
潤滑粘度の油が、(i)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、99.0質量%対1.0質量%乃至約99.4質量%対約0.6質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、97.0質量%対3.0質量%乃至約95.0質量%対約5.0質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項19に記載の潤滑油組成物。
【請求項39】
内燃機関内のトラクション係数を低減する方法であって、下記の成分を含む潤滑油組成物を用いて内燃機関に潤滑性を付与することからなる方法:
(a)主要量の潤滑粘度の油であって、二種以上の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油のブレンドからなり、かつブレンドの動粘度が100℃で約2乃至約14センチストークスの範囲にある油、および
(b)一種以上の潤滑油添加剤、
ただし、潤滑油組成物は基本的に摩擦緩和剤を含まない。
【請求項40】
潤滑油組成物が更に一種以上の従来の基油を含み、そして従来の基油が、潤滑油組成物の全質量に基づき最大で30質量%である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
潤滑油組成物が更に一種以上の従来の基油を含み、そして従来の基油が、潤滑油組成物の全質量に基づき最大で10質量%である請求項40に記載の方法。
【請求項42】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減が、II種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率25、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約17パーセント乃至約47パーセント、約44パーセント乃至約74パーセント、および約25パーセント乃至約55パーセントの範囲にある請求項39に記載の方法。
【請求項43】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減が、II種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率50、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約13パーセント乃至約43パーセント、約41パーセント乃至約71パーセント、および約25パーセント乃至約55パーセントの範囲にある請求項39に記載の方法。
【請求項44】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減が、II種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率75、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約9パーセント乃至約39パーセント、約41パーセント乃至約71パーセント、および約22パーセント乃至約52パーセントの範囲にある請求項39に記載の方法。
【請求項45】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減パーセントが、III種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率25、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約3パーセント乃至約28パーセント、約9パーセント乃至約39パーセント、および約10パーセント乃至約40パーセントの範囲にある請求項39に記載の方法。
【請求項46】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減パーセントが、III種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率50、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約17パーセント乃至約47パーセント、約51パーセント乃至約81パーセント、および約22パーセント乃至約52パーセントの範囲にある請求項39に記載の方法。
【請求項47】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減パーセントが、III種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率25、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約3パーセント乃至約28パーセント、約9パーセント乃至約39パーセント、および約10パーセント乃至約40パーセントの範囲にある請求項39に記載の方法。
【請求項48】
潤滑油組成物のトラクション係数の低減パーセントが、III種基油と比較して、100℃、平均接触圧433MPa及び最大接触圧649MPa、球状物に対するすべり率75、かつ速度10、100及び1000ミリメートル毎秒においてそれぞれ、約9パーセント乃至約39パーセント、約44パーセント乃至約74パーセント、および約14パーセント乃至約44パーセントの範囲にある請求項39に記載の方法。
【請求項49】
潤滑粘度のブレンド油の動粘度が、100℃で約3乃至約12センチストークスの範囲にある請求項39に記載の方法。
【請求項50】
潤滑粘度のブレンド油の動粘度が、100℃で約4乃至約10センチストークスの範囲にある請求項49に記載の方法。
【請求項51】
潤滑粘度の油が、(i)一種以上の、動粘度が100℃で約2乃至約9センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)一種以上の、動粘度が100℃で約5乃至約16センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項39に記載の方法。
【請求項52】
潤滑粘度の油が、(i)動粘度が100℃で約3乃至約8センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約6乃至約15センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項51に記載の方法。
【請求項53】
潤滑粘度の油が、(i)動粘度が100℃で約4センチストークスである低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約14センチストークスである高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項52に記載の方法。
【請求項54】
潤滑粘度のブレンド油が、飽和炭化水素が95質量%より多い異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油を有する請求項39に記載の方法。
【請求項55】
潤滑粘度のブレンド油が、芳香族炭化水素が0.3質量%未満である異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油を有する請求項39に記載の方法。
【請求項56】
潤滑粘度の油が、(i)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、99.0質量%対1.0質量%乃至約99.4質量%対約0.6質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、97.0質量%対3.0質量%乃至約95.0質量%対約5.0質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項39に記載の方法。
【請求項57】
(b)の一種以上の添加剤が、(i)一種以上の清浄剤、(ii)一種以上の分散剤、(iii)一種以上の耐摩耗性添加剤、および(iv)一種以上の酸化防止剤を含む請求項39に記載の方法。
【請求項58】
(i)が、低、中又は高過塩基性の金属スルホネート、金属フェネート、金属サリチレートまたはそれらの任意の組合せであり、(ii)が、後処理した分散剤、後処理していない分散剤またはそれらの任意の組合せであり、(iii)が、ジチオ二リン酸金属塩または三ホウ酸金属塩またはそれらの任意の組合せであり、そして(iv)が、モリブデン含有酸化防止剤、ジフェニルアミン酸化防止剤またはフェノール系酸化防止剤またはそれらの任意の組合せである請求項39に記載の方法。
【請求項59】
(i)が、低過塩基性アルキル芳香族スルホネートと中過塩基性アルキル芳香族サリチレートと高過塩基性アルキルフェネートとの混合物であり、(ii)が、ホウ酸化ビスコハク酸イミドとエチレンカーボネートで処理したビスコハク酸イミドとの混合物であり、(iii)が、ジチオ二リン酸亜鉛と三ホウ酸カリウムとの混合物であり、そして(iv)が、モリブデン・コハク酸イミド錯体とオクチルブチルジフェニルアミンとフェノール系酸化防止剤との混合物である請求項58に記載の方法。
【請求項60】
下記の成分を含む内燃機関用のトラクション係数を低減する潤滑油濃縮物:
(a)約10質量%乃至約90質量%の潤滑粘度の油であって、従来の基油または異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油またはそれらの任意の組合せからなる油、および
(b)一種以上の潤滑油添加剤、
ただし、潤滑油濃縮物は基本的に摩擦緩和剤を含まない。
【請求項61】
潤滑粘度の油の動粘度が、100℃で約3乃至約12センチストークスの範囲にある請求項60に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項62】
潤滑粘度の油の動粘度が、100℃で約4乃至約10センチストークスの範囲にある請求項61に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項63】
潤滑粘度の油が、(i)一種以上の、動粘度が100℃で約2乃至約9センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)一種以上の、動粘度が100℃で約5乃至約16センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項62に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項64】
潤滑粘度の油が、(i)動粘度が100℃で約3乃至約8センチストークスの範囲にある低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約6乃至約15センチストークスの範囲にある高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項63に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項65】
潤滑粘度の油が、(i)動粘度が100℃で約4センチストークスである低動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)動粘度が100℃で約14センチストークスである高動粘度の異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項64に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項66】
潤滑粘度のブレンド油が、飽和炭化水素が95質量%より多い異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油を有する請求項60に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項67】
潤滑粘度のブレンド油が、芳香族炭化水素が0.3質量%未満である異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油を有する請求項60に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項68】
潤滑粘度の油が、(i)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、99.0質量%対1.0質量%乃至約99.4質量%対約0.6質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油と、(ii)ナフテン炭素に対するパラフィン炭素の比が、97.0質量%対3.0質量%乃至約95.0質量%対約5.0質量%の範囲にある異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油とのブレンドである請求項60に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項69】
下記の成分を含む内燃機関用のトラクション係数を低減する潤滑油濃縮物:
(a)主要量の潤滑粘度の油であって、従来の基油または異性化されているフィッシャー・トロプッシュ合成により誘導された基油またはそれらの任意の組合せからなる油、および
(b)一種以上の清浄剤、
(c)一種以上の分散剤、
(d)一種以上の耐摩耗性添加剤、および
(e)一種以上の酸化防止剤、
ただし、潤滑油濃縮物は基本的に摩擦緩和剤を含まない。
【請求項70】
(b)の一種以上の清浄剤が、低、中又は高過塩基性の金属スルホネート、金属フェネート、金属サリチレートまたはそれらの任意の組合せであり、(c)が、後処理した分散剤、後処理していない分散剤またはそれらの任意の組合せであり、(d)が、ジチオ二リン酸金属塩または三ホウ酸金属塩またはそれらの任意の組合せであり、そして(e)が、モリブデン含有酸化防止剤、ジフェニルアミン酸化防止剤またはフェノール系酸化防止剤またはそれらの任意の組合せである請求項69に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項71】
(b)が、低過塩基性アルキル芳香族スルホネートと中過塩基性アルキル芳香族サリチレートと高過塩基性アルキルフェネートとの混合物であり、(c)が、ホウ酸化ビスコハク酸イミドとエチレンカーボネートで処理したビスコハク酸イミドと非処理コハク酸イミドとの混合物であり、(d)が、ジチオ二リン酸亜鉛と三ホウ酸カリウムとの混合物であり、そして(e)が、モリブデン・コハク酸イミド錯体とオクチルブチルジフェニルアミンとフェノール系酸化防止剤との混合物である請求項69に記載の潤滑油濃縮物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−138204(P2008−138204A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309335(P2007−309335)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】