説明

トラス部材

【課題】木材の方向による強度のばらつきが少なく、また手間を掛けることなく簡単に組み立てることができる、金属製枠部材内に木材を固定して構成したトラス部材を提供する。
【解決手段】トラス構造の継手にトラス部材の両端に設けられた金属製の継手連結部材4の結合部材14を連結してトラス構造を形成するための、木材を備えるトラス部材において、トラス部材が、木材3の長手方向に沿って対向して配置される一対の金属板2の両端に継手連結部材4が設けられて矩形に形成されている金属製枠部材1と、この金属製枠部材1内に挿入されて金属板2に固定される木材3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラス構造の組立に使用されるトラス部材に関し、特に木材を金属製枠部材内に固定したトラス部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体育館、ホール、ドームなどの屋根の骨組みには、上弦材、下弦材および斜材のトラス部材を継手に結合して構成したトラス構造が利用されている。
【0003】
トラス部材には金属製パイプが多く使用されているが、金属パイプにはない木材自体が有する自然感、暖かみ等の特徴を生かすために体育館などの建築物に木材を利用したトラス部材が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
しかしながら、木材は強度異方性があり、圧縮には強いが引張り・曲げ・剪断に弱く、座届現象のために部材長が制限を受ける。
【0005】
そこで、前記特許文献1に開示されているトラス部材は、長尺の木材の両端部に、継手に結合する結合部材が移動可能に取り付けられたトラス部材であって、長尺の木材の表面に対向して形成された長手方向の一対の溝内に配置された鋼棒の両端部のネジ部がそれぞれ結合部材にナットで固定され、結合部材に継手部材に接合する結合板が形成され、結合部材と木材がボルトで固定されている。
【0006】
また、前記特許文献2に開示されているトラス部材は、木材を固定するためのボルトが挿通されるボルト孔を有する金属板の両端にトラス構造の継手に連結する継手連結部材の連結板を面一に接合して木材支持金属板が形成され、連結板の表面および裏面にはそれぞれ、木材の木口を押さえる押さえ板が立設され、押さえ板に木材の端部上面を覆うとともに木材に木ねじをねじ込んで固定するための木ねじ挿通孔を有する覆い板が一体に設けられ、覆い板の木ねじ挿通孔を通して木ねじをねじ込んで木材が木材支持金属板に支持されており、一方の木材と他方の木材とが木材支持金属板を挟む状態に合わせられてボルト締め付けにより一体化されている。
【特許文献1】特開2004−114631号公報
【特許文献2】特開2006−283330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トラス部材に利用される製材は、図4(c)に示すように、縦方向と横方向では強度のばらつき(たわみ)が大きいという欠点があるが、前記特許文献1のトラス部材は、木材の長さ方向に形成された溝内に配置された補強鋼棒によりある程度の強度を保持することができる。しかしながら、木材に形成する溝の大きさ、溝内に配置する補強鋼棒の太さに限度があるため、必要な強度を得られない場合がある。さらに、木材の長さ方向に溝を加工する必要があるだけでなく、補強鋼棒と木材のセット、補強鋼棒と結合部材の締め付けによる組み立てを必要とするため、トラス部材の製造に手間を要するという問題がある。
【0008】
また、前記特許文献2のトラス部材は、木材が木材支持金属板を挟む状態に合わせられてボルト締め付けにより一体化されるので、木材支持金属板の厚みにより強度を保持することができる。しかしながら、図4(d)に示すように、金属板と木材の方向によって強度にばらつきがある。また、1枚の木材支持金属板を使用するため、トラス部材の寸法強度に応じて厚みの異なる複数種類の木材支持金属板を準備しておく必要があるだけでなく、継手連結部材の連結板を金属板に溶接して一体化した木材支持金属板に2分割した木材を木材支持金属板に挟んでセットした後に固定するため、製造に手間を要する。
【0009】
そこで、本発明は、木材の方向による強度のばらつきが少なく、また手間を掛けることなく簡単に組み立てることができる、金属製枠部材内に木材を固定して構成したトラス部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、トラス部材の両端に設けられた金属製の継手連結部材の結合部材をトラス構造の継手に連結してトラス構造を形成するための、木材を備えるトラス部材において、前記トラス部材が、前記木材の長手方向に沿って対向して配置される一対の金属板の両端に前記金属製の継手連結部材が設けられて横断面矩形に形成されている金属製枠部材と、この金属製枠部材内に挿入されて前記継手連結部材および前記金属板に固定される木材とを備えていることを特徴とする。
【0011】
前記継手連結部材は、木材の長手方向に伸びる連結板の小口側に木口に当接する小口当接板が垂直に設けられ、連結板の両側に小口当接板を挟んで継手連結部材を木材に取り付けるための取付板が連結板および小口当接板に対して垂直に設けられ、取付板は補強金属板を通す間隔をあけて上下に一対設けられ、連結板の継手側の端部には、トラス構造の継手に結合するための結合部材が設けられている。
【0012】
前記結合部材は、(1)連結板の端部に結合板が垂直に設けられ、結合板にボルトのねじ込みによりトラス構造の継手に結合板を固定するネジ付のボルト孔が設けられている。あるいは(2)結合部材が、連結板の端部にトラス構造の継手の固定板に面接合される角度に接合板が固定され、接合板には先端が継手の固定板の孔に挿入され、さらに結合板とボルトの間に挿入されるとともに、後端が継手に取り付けられるキャップに嵌合する結合棒が固定されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトラス部材は、継手連結部材と金属板とで形成された金属製枠部材内に木材を固定することにより、トラス部材の強度が増加し、かつ木材の方向による強度のばらつきを抑えることができる。
【0014】
本発明のトラス部材は、金属板の両端に継手連結部材が設けられた金属製枠部材内に木材を挿入して固定する構造であるため、手間を掛けることなく簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施例を図により説明する。
【実施例1】
【0016】
図1において、トラス部材は、横断面矩形状の金属製枠1の中に木材3を挿入して囲み、金属製枠部材1の金属板2により長尺で断面矩形の木材3を両側から挟んで固定されたサンドイッチ構造にする。金属製枠部材1は、木材3の両端にトラス構造の継手に連結する継手連結部材4を金属板2と一体に設けて矩形状に形成する。
【0017】
金属製枠部材1と木材3の固定は、木材3の両側に長手方向に沿って木材3を挟んで配置される金属製枠部材1の金属板2および木材3の長手方向に間隔をおいて形成された複数のボルト孔5(図3)にボルト6を通し、ナット7で締め付けて固定する。金属板2の幅、厚み、材質は、トラス部材に要求される強度に応じて適宜設計するが、金属製枠部材1の2枚の金属板2で木材3を挟んだサンドイッチ構造であり、さらに、金属板2の幅方向が垂直となるように木材3に固定することにより十分な強度が得られるので、多くの金属製枠部材1を用意しておく必要はない。
【0018】
金属製枠部材1の継手連結部材4は、連結板8、小口当接板9および取付板10で形成されている。木材3の長手方向に沿って水平に伸びる連結板8の小口側に木口に当接する小口当接板9が垂直に設けられる。連結板8の両側には小口当接板9を挟んで継手連結部材4を取り付けるための取付板10が連結板8および小口当接板9に垂直に設けられる。各取付板10には木材3に木ねじ11(図3)をねじ込んで固定するために木ねじ孔12が形成されている。
【0019】
継手連結部材4の連結板8の継手側端部には、トラス構造の継手13に結合するための結合部材14が設けられている。
【0020】
弦材となるトラス部材の結合部材14には連結板8の端部に結合板15が垂直に設けられ、結合板15にネジ付のボルト孔16が設けられ、ボルト17の締め付けにより継手13に結合部材14が固定される。さらに、連結板8にはボルト孔18が形成され、このボルト孔18とトラス構造の継手13の固定板19に形成されたボルト孔20とにボルト21を通してナット22で締め付けて連結板8が固定板19に固定される。
【0021】
図2において、斜材となるトラス部材の結合部材14には、連結板8の継手側の端部にトラス構造の継手の固定板19に面接触して重なる角度に接合板23が設けられ、接合板23には継手13の固定板19のボルト孔20に合致する位置にボルト孔24が形成される。接合板23は固定板19にボルト21およびナット22により接合される。
【0022】
接合板23および連結板8には結合棒25が固定されており、結合棒25は、継手13の固定板19の孔26に先端が挿入されるとともに、後端が継手13にボルト27およびナット28により取り付けられるキャップ29に嵌合して継手13に固定される。
【0023】
トラス部材の組立方法は次のとおりである。
【0024】
継手連結部材4と金属板2を溶接して図1(b)に示す金属製枠部材1を形成する。金属製枠部材1内に木材3を挿入する。次いで木ねじ11を取付板10の木ねじ孔12を通して木材3にねじ込んで継手連結部材4を木材3の両端に固定するとともに、金属板2と木材3に形成されたボルト孔5にボルト6を通し、ナット7で締め付けて固定する。
【0025】
本発明のトラス部材によるトラス構造の組立方法は次のとおりである。
【0026】
トラス構造の継手13は、固定板19と固定板19の中心を通るボルト27とナット28で固定されるキャップ29で構成される。
【0027】
継手13と弦材の結合は、固定板19の中心に通されたボルト27に弦材となるトラス部材の結合板15のネジ付ボルト孔16に固定用のボルト17を通してねじ込み、継手13のボルト27に押し付けて固定することにより行う。
【0028】
継手13と斜材の結合は、トラス部材の接合板23と固定板19とを当接させるとともに、結合棒25の先端が固定板19の孔26を通してトラス部材の結合板15とボルトの間に挿入される。その後、接合板23と固定板19をボルト21とナット22により固定し、次いで、ナット28の締め付けによりキャップ29内に結合棒25の下端を固定する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)は本発明のトラス部材である弦材の斜視図、(b)は金属製枠部材の斜視図である。
【図2】本発明のトラス部材である斜材の斜視図である。
【図3】(a)は本発明のトラス部材を継手に連結した状態を示す平面図、(b)は側面図である。
【図4】たわみの試験した各種の木材を示し、(a)および(b)は本発明のトラス部材、(b)は木材のみ、(c)は木材で金属板を挟んだトラス部材を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1:金属製枠部材 2:金属板
3:木材 4:継手連結部材
5:ボルト孔 6:ボルト
7:ナット 8:連結板
9:小口当接板 10:取付板
11:木ねじ 12:木ねじ孔
13:トラス構造の継手 14:結合部材
15:結合板 16:ボルト孔
17:ボルト 18: ボルト孔
19:固定板 20:ボルト孔
21:ボルト 22:ナット
23:接合板 24:ボルト孔
25:結合棒 26:孔
27:ボルト 28:ナット
29:キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラス部材の両端に設けられた金属製の継手連結部材の結合部材をトラス構造の継手に連結してトラス構造を形成するための、木材を備えるトラス部材において、
前記トラス部材が、前記木材の長手方向に沿って対向して配置される一対の金属板の両端に前記金属製の継手連結部材が設けられて横断面矩形に形成されている金属製枠部材と、この金属製枠部材内に挿入されて前記継手連結部材および前記金属板に固定される木材とを備えていることを特徴とするトラス部材。
【請求項2】
継手連結部材は、木材の長手方向に伸びる連結板の小口側に木口に当接する小口当接板が垂直に設けられ、連結板の両側に小口当接板を挟んで継手連結部材を木材に取り付けるための取付板が連結板及び小口当接板に対して垂直に設けられ、取付板は補強金属板を通す間隔をあけて上下に一対設けられ、連結板の継手側の端部には、トラス構造の継手に結合するための結合部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のトラス部材。
【請求項3】
結合部材が、連結板の端部に結合板が垂直に設けられ、結合板にボルトのねじ込みによりトラス構造の継手に結合板を固定するネジ付のボルト孔が設けられていることを特徴とする請求項2記載のトラス部材。
【請求項4】
結合部材が、連結板の端部にトラス構造の継手の固定板に面接合される角度に接合板が固定され、接合板には先端が継手の固定板の孔に挿入され、さらに結合板とボルトの間に挿入されるとともに、後端が継手に取り付けられるキャップに嵌合する結合棒が固定されていることを特徴とする請求項2記載のトラス部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−155960(P2009−155960A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336952(P2007−336952)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(591096624)
【Fターム(参考)】