説明

トラッキング制御方法

【課題】 光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置に敵したトラッキング制御方法を提供する。
【解決手段】 メインビーム用受光部MD及びサブビーム用受光部SD1、SD2から得られる信号に基づいて差動プッシュプル方式に使用されるトラッキングエラー信号を生成する差動プッシュプル信号生成回路13と、前記メインビーム用受光部MDから得られる位相差検出方式に使用されるトラッキングエラー信号を生成する位相差信号生成回路17を設け、レーザースポットが一方のみ信号記録済みトラックがある信号トラックに記録されている信号の読み出し動作を行っているとき、差動プッシュプル信号生成回路13から得られるトラッキングエラー信号から位相差信号生成回路17から得られるトラッキングエラー信号を使用してトラッキング制御動作を行う状態に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作をレーザー光によって行う光ピックアップ装置のトラッキング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクの信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
信号記録層に記録されている信号の光ピックアップ装置による読み出し動作は、レーザーダイオードから放射されるレーザー光を信号記録層に照射させ、該信号記録層から反射されるレーザー光の変化を光検出器によって検出することによって行われている。
【0004】
レーザー光によって信号記録層に記録されている信号を読み出すためには、レーザー光を信号記録層に渦巻き状に設けられている信号トラックにレーザー光を追従させるトラッキング制御動作を正確に行う必要がある。
【0005】
斯かるトラッキング制御方法としては種々あるが、メインビームを使用するプッシュプル法や位相差法に加えて2つのサブビームが各々照射される2つのサブビーム用受光部とメインビームが照射されるメインビーム用受光部が組み込まれている光検出器を設け、この光検出器から得られる信号によりトラッキングエラー信号を生成させる差動プッシュプル法と呼ばれるトラッキング制御方法が一般に採用されている。
【0006】
また、光ディスク装置の中には、光ディスクに合わせて差動プッシュプル法と位相差検出法によるトラッキング制御方式を選択的に使用するトラッキング制御方法が提案されている。(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−84415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
差動プッシュプル法によるトラッキング制御は、2つのサブビームを受光するサブビーム用受光部とメインビームを受光するメインビーム用受光部から得られる信号を利用してトラッキングエラー信号を生成しているためメインビーム用受光部のみから得られる信号を利用してトラッキング制御動作を行うプッシュプル法にて発生するオフセットの問題を解決することが出来るという利点を有している。
【0009】
差動プッシュプル法によるトラッキング制御動作に使用される受光部としては、図1に示すように0次光であるメインビームMが照射されるとともに信号読み出し動作やフォーカシング制御動作に使用されるメインビーム用受光部MD、+1次光である先行サブビームS1が照射されるとともにトラッキング制御動作に使用される第1サブビーム用受光部である先行サブビーム用受光部SD1及び−1次光である後行サブビームS2が照射されるとともにトラッキング制御動作に使用される第2サブビーム用受光部である後行サブビーム用受光部SD2にて構成されている。
【0010】
前記メインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2は同一の直線上に設けられているが、その配置方向はトラッキング方向、即ち対物レンズにて集光生成されるスポットが光ディスクの径方向に変位するとメインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2に各々照射されるメインビームM、先行サブビームS1及び後行サブビームS2が変位する方向と一致するように構成されている。
【0011】
また、前記メインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2は、例えば図示したように各々4分割されたセンサーにて構成されている。そして、前記メインビーム用受光部MDを構成する全センサーA、B、C、Dに照射されるメインビームの光量に応じた信号を加算することによって光ディスクDに記録されている信号を読み出し信号として読み出すように構成されている。
【0012】
そして、前記メインビーム用受光部MDを構成する4分割センサーの中の対角関係にあるセンサーから得られる信号を加算するとともにこの加算信号から他方の対角関係にあるセンサーから得られる信号を加算信号した信号を減算することによってフォーカスエラー信号を生成させ、このフォーカスエラー信号を利用してフォーカシング制御動作を行うように構成されているが、斯かるフォーカシング制御動作は非点収差法と呼ばれる周知のフォーカシング制御方法であり、その説明は省略する。
【0013】
次にサブビームまたはメインビームだけを使用してトラッキング制御動作を行う方式の精度を上げるために開発された差動プッシュプル方式について説明する。斯かる差動プッシュプル方式は、サブビームS1、S2だけでなくメインビームMが照射されるメインビーム用受光部MDから得られるトラッキングエラー信号を利用してトラッキング制御動作を行うものである。
【0014】
斯かる方式におけるトラッキングエラー信号は、メインビーム用受光部MDから得られるメイントラッキングエラー信号から先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2から得られるサブトラッキングエラー信号を減算することによって得るように構成されている。
【0015】
図示したセンサー部の符号を参照して説明する。メインのトラッキングエラー信号をMTEとすると、MTE=(A+B)−(C+D)となり、サブのトラッキングエラー信号をSTEとすると、STE={(E+F)−(G+H)}+{(I+J)−(L+K)}と表される。
【0016】
そして、斯かる差動プッシュプル方式におけるトラッキング制御動作は、差動プッシュプル信号DPPに基づいて行われるが、このDPP信号は、DPP=MTE−k×STEとして得られる。ここで、kはメインビームの光強度とサブビームの光強度に基づいて決定される定数である。
【0017】
このようにサブビームとメインビームとを組み合わせた差動プッシュプル方式によるトラッキング制御動作を行う光ピックアップ装置が開発されている。
【0018】
追記型の光ディスクのように信号が記録されているトラックと信号が記録されていないトラックの間にあるトラックに記録されている信号の読み出し動作を行っている場合には、先行サブビームS1が信号が記録されていないトラック上にあり、後行サブビームS2が信号が記録されているトラック上にあるという状態が発生することになる。その結果、先行サブビーム用受光部SD1から得られる信号と後行サブビーム用受光部SD2から得られる信号との間に大きなレベル差が生じることになり、これに起因してサブトラッキングエラー信号に大きなオフセットが発生することになる。
【0019】
サブトラッキングエラー信号にオフセットが発生するとメインビームにて生成されるメイントラッキングエラーに発生するオフセットを相殺することが出来ないので、トラッキング制御動作を正確に行えないという問題がある。
【0020】
本発明は、斯かる問題を解決することが出来るトラッキング制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、メインビーム用受光部から得られるメイントラッキングエラー信号及びサブビーム用受光部から得られるサブトラッキングエラー信号に基づいて差動プッシュプル方式に使用されるトラッキングエラー信号を生成する差動プッシュプル信号生成回路と、前記メインビーム用受光部から得られる位相差検出方式に使用されるトラッキングエラー信号を生成する位相差信号生成回路を設け、レーザースポットが一方のみ信号記録済みトラックがある信号トラックに記録されている信号の読み出し動作を行っているとき、差動プッシュプル信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号から位相差信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号を使用してトラッキング制御動作を行う状態に切り換えるようにしたことを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明は、サブトラッキングエラー信号の変化を検出することによってトラッキングエラー信号の切り換えを行うようにしたことを特徴とするものである。
【0023】
そして、本発明は、サブトラッキングエラー信号のオフセット量を検出することによってトラッキングエラー信号の切り換えを行うようにしたことを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明は、サブトラッキングエラー信号のオフセット量が設定値に上昇したとき差動プッシュプル信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号から位相差信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号を使用してトラッキング制御動作を行う状態に切り換えるようにしたことを特徴とするものである。
【0025】
そして、本発明は、サブトラッキングエラー信号のオフセット量が設定値まで低下したとき位相差信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号から差動プッシュプル信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号を使用してトラッキング制御動作を行う状態に切り換えるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明のトラッキング制御方法は、レーザースポットが一方のみ信号記録済みトラックがある信号トラックに記録されている信号の読み出し動作を行っているとき、差動プッシュプル信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号から位相差信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号を使用してトラッキング制御動作を行う状態に切り換えるようにしたので、即ち位相差検出法によるトラッキング制御動作を行う状態に切り換えるようにしたので、サブトラッキングエラー信号がオフセットによる影響を受けても正確なトラッキング制御動作を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のトラッキング制御方法を説明するための構成図である。
【図2】本発明のトラッキング制御方法を説明するための信号トラックとレーザースポットとの関係を説明するための図である。
【図3】本発明のトラッキング制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
レーザーダイオードから放射されるレーザー光から1つのメインビームと2つのサブビームを生成する回折格子を備えた光ピックアップ装置におけるメインビームとサブビームを使用したトラッキング制御方法を提供する。
【実施例1】
【0029】
図1は本発明のトラッキング制御方法を説明するための実施例を示すものである。同図において、MDは光ディスクの信号記録層から反射される戻り光であるメインビームMが照射されるとともに受光部にて構成されているメインビーム用受光部であり、4つの受光部A、B、C、Dが図示したように配置されている。SD1及びSD2は光ディスクの信号記録層から反射される戻り光であるサブビームS1及びS2が照射されるとともに4分割センサーにて構成されている先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2であり、夫々4つの受光部I、J、K、L及びE、F、G、Hが図示したように配置されている。
【0030】
斯かる構成において、光ディスクの信号記録層から反射される戻り光にて生成されるレーザースポットM、S1及びS2は図示したようにメインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2上に照射されるが、光ディスク上の径方向にレーザースポットが変位すると戻り光であるレーザースポットM、S1及びS2は矢印A方向に移動するように設けられている。
【0031】
1は前記メインビーム用受光部MDを構成する受光部A及び受光部Bから得られる信号を加算する第1加算回路、2は該メインビーム用受光部MDを構成する受光部C及び受光部Dから得られる信号を加算する第2加算回路、3は前記第1加算回路1から得られる信号から第2加算回路2から得られる信号を減算するメインビーム用減算回路であり、その出力端子にメイントラッキングエラー信号を出力するように構成されている。
【0032】
4は前記後行サブビーム用受光部SD2を構成する受光部E及び受光部Fから得られる信号を加算する第3加算回路、5は該後行サブビーム用受光部SD2を構成する受光部G及び受光部Hから得られる信号を加算する第4加算回路、6は前記第3加算回路4から得られる信号から第4加算回路5から得られる信号を減算する第1サブビーム用減算回路であり、その出力端子に第1サブトラッキングエラー信号を出力するように構成されている。7は前記先行サブビーム用受光部SD1を構成する受光部I及び受光部Jから得られる信号を加算する第5加算回路、8は該先行サブビーム用受光部SD1を構成する受光部K及び受光部Lから得られる信号を加算する第6加算回路、9は前記第5加算回路7から得られる信号から第6加算回路8から得られる信号を減算する第2サブビーム用減算回路であり、その出力端子に第2サブトラッキングエラー信号を出力するように構成されている。10は前記第1サブビーム用減算回路6の出力信号である第1サブトラッキングエラー信号と第2サブビーム用減算回路9の出力信号である第2サブトラッキングエラー信号とを加算する第7加算回路であり、その出力端子にトラッキング制御動作に使用されるサブトラッキングエラー信号を出力するように構成されている。
【0033】
11は前記第7加算回路10から出力されるサブトラッキングエラー信号のレベルを調整する利得回路、12は前記メインビーム用減算回路3から出力されるメイントラッキングエラー信号から前記利得回路11にてレベルが調整されたサブトラッキングエラー信号を減算する減算回路であり、出力端子に差動プッシュプル方式によるトラッキング制御動作に使用されるトラッキングエラー信号を出力するように構成されている。
【0034】
即ち、前記第1加算回路1、第2加算回路2、メインビーム用減算回路3、第3加算回路4、第4加算回路5、第1サブビーム用減算回路6、第5加算回路7、第6加算回路8、第2サブビーム用減算回路9、第7加算回路10、利得回路11及び減算回路12にて差動プッシュプル方式のトラッキング制御動作に使用されるトラッキングエラー信号を生成する差動プッシュプル信号生成回路13を構成するようにされている。
【0035】
14は前記メインビーム用受光部MDを構成する受光部A及び受光部Cから得られる信号を加算する第8加算回路、15は該メインビーム用受光部MDを構成する受光部B及び受光部Dから得られる信号を加算する第9加算回路、16は前記第8加算回路14から得られる信号と第9加算回路15から得られる信号の位相差を検出する位相差検出回路であり、その出力端子に位相差検出方式のトラッキング制御動作に使用される位相差信号であるトラッキングエラー信号を出力するように構成されている。即ち、前記第8加算回路14、第9加算回路15及び位相差検出回路16にて前記位相差信号を生成する位相差信号生成回路17を構成するように構成されている。
【0036】
18は前記第7加算回路10の出力信号であるサブトラッキングエラー信号のオフセット量を検出するオフセット量検出回路であり、トラッキングエラー信号に現れるオフセット量が所定のレベルに達したときレベル検出信号を出力端子に出力するように構成されている。
【0037】
19は前記オフセット量検出回路18から出力されるレベル検出信号が入力されたとき選択信号を出力するトラッキング信号選択回路である。20は前記減算回路12の出力信号、即ち差動プッシュプル信号生成回路13の出力信号であるトラッキングエラー信号及び前記位相差検出回路16の出力信号、即ち位相差信号生成回路17の出力信号であるトラッキングエラー信号が入力される選択スイッチであり、前記トラッキング信号選択回路19から出力される選択信号によって出力端子20aにトラッキング制御信号として出力するエラー信号を差動プッシュプル信号と位相差信号の中から選択して出力するように構成されている。
【0038】
21は前記選択スイッチ20の出力端子20aに出力される信号、即ち差動プッシュプル信号であるトラッキングエラー信号又は位相差信号であるトラッキングエラー信号がトラッキングエラー信号として入力されるトラッキング制御回路であり、トラッキングコイル22にトラッキング駆動信号を供給するように構成されている。
【0039】
斯かる構成において、差動プッシュプル信号生成回路13から出力されるトラッキングエラー信号によるトラッキング制御動作、即ち差動プッシュプル方式によるトラッキング制御動作及び位相差信号生成回路17から出力されるトラッキングエラー信号によるトラッキング制御動作、即ち位相差検出方式によるトラッキング制御動作は周知であるので、その説明は省略する。
【0040】
以上に説明したように本発明に係るトラッキング制御のための回路は構成されているが、次に光ディスクの信号トラックとレーザースポットとの関係及びサブビームより生成されるサブトラッキングエラー信号のレベルとサブビームの径方向の位置との関係について図2及び図3を参照にして説明する。尚図2において、図形□はピットと呼ばれる信号記録が成されている状態を示すものである。
【0041】
図2はメインレーザースポットLMが光ディスク上のピットP1、P2、P3及びP4
が形成されているトラックに記録されている信号の読み出し動作を行っている状態を示すものであり、隣接するトラックの一方のみピットP11、P12、P13、P14、P15のように信号が記録されているトラック(ここでは光ディスクの内周側にあるトラックとする)が存在する。
【0042】
斯かる状態にあるとき、先行する先行サブレーザースポットLS1は、図示したように信号が記録されていない位置に位置し、後行する後行レーザースポットLS2は、信号が記録されている位置に位置することになる。従って、斯かる状態では、第1サブビーム用減算回路6にて生成される第1サブトラッキングエラー信号と第2サブビーム用減算回路9にて生成される第2サブトラッキングエラー信号とのレベル差が大きくなり、これらの信号を第7加算回路10にて加算して得られるサブトラッキングエラー信号に大きなオフセットが発生することになる。
【0043】
図3は第7加算回路10から出力されるサブトラッキングエラー信号の振幅レベルとサブビームの径方向の位置との関係を示すものであり、実線で示す特性T1はメインレーザースポットLMが照射されているトラックの両側に信号が記録されているトラックまたは信号が記録されていないトラックがある場合の振幅変化を示すものである。斯かる特性T1より明らかなようにサブトラッキングエラー信号のレベルは点対称の関係にある。従って、斯かるサブトラッキングエラー信号を使用することによってメインビーム受光部MDから生成されるメイントラッキングエラー信号に発生するオフセットを補正することが出来るので、正確なトラッキング制御動作を行うことが出来る。
【0044】
図2に示すようにメインレーザースポットLMが、内周側にのみ信号が記録されているトラックがあり、外周側のトラックに信号が記録されていないトラックがある信号トラック上にあるとき場合におけるサブトラッキングエラー信号のレベルは、図3の破線で示す特性T2のように変化する。
【0045】
図3のT1で示す特性とT2で示す特性とを比較するとわかるようにトラックに対する位置が変化するとT1に対するレベル差、即ちオフセット量が大きくなる。
【0046】
本発明は、斯かるサブトラッキングエラー信号に発生するオフセット量の大きさを検出することによってトラッキング制御動作に使用するトラッキングエラー信号を選択するようにしたものである。即ち、オフセット量検出回路18によってサブトラッキングエラー信号のオフセット量を検出し、そのオフセット量が設定値に上昇したときトラッキング信号選択回路19から選択スイッチ20に対してトラッキングエラー信号切り換えのための制御信号を出力するように構成されている。
【0047】
即ち、本発明では、差動プッシュプル信号生成回路13から出力されるトラッキングエラー信号を選択スイッチ20の出力端子20aに出力する状態からプッシュプル信号のオフセット量が設定値に達したとき位相差信号生成回路17から出力されるトラッキングエラー信号を出力端子20aに出力するように構成されている。
【0048】
前述したトラッキングエラー信号の選択切り換え動作が行われると、トラッキング制御回路21によるトラッキング制御動作は差動プッシュプル方式のトラッキング制御方式から位相差信号検出方式のトラッキング制御方式に切り換えられることになる。前述したように本発明は、レーザースポットのトラッキング制御動作が行われているトラックに隣接する両トラックが同一の状態、即ち信号が記録されているトラックまたは信号が記録されていないトラックの場合は、サブトラッキングエラー信号にオフセットが発生しないのでプッシュプル方式によるトラッキング制御動作を行い、一方のサブレーザースポットの照射位置が信号未記録トラックであり、他方のサブレーザースポットの照射位置が信号記録済みトラックである信号トラックでは位相差信号検出方式によるトラッキング制御動作を行うように構成されている。
【0049】
このようにして信号未記録トラックと信号記録トラックの境界でトラッキング制御方式が差動プッシュプル方式から位相差検出方式に切り換えられるが、境界を通過するとサブトラッキングエラー信号のオフセット量が設定値より小さくなるので、トラッキング信号選択回路19から出力されていた切り換えのための制御信号が反転するように構成されている。即ち、トラッキング制御を行うトラックに隣接する両側のトラックが同一の状態になると、トラッキング制御方式を位相差信号検出方式から差動プッシュプル方式に復帰させるように構成されている。これは、信号未記録領域だけでなく信号記録領域におけるトラッキング制御動作を行う場合に差動プッシュプル方式の方が有利であるからである。
【0050】
本実施例では、サブトラッキングエラー信号のオフセット量を検出することによってトラッキング制御方式を差動プッシュプル方式から位相差検出方式に切り換えるようにしたが、サブトラッキングエラー信号の振幅の大きさの変化を検出することによってトラッキング制御方式の切り換えを行うようにすることも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、Blu−ray規格の光ディスクのように複数の信号記録層が近接して設けられている光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置に有効であるが、その他の規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置に実施することも出来る。
【符号の説明】
【0052】
13 差動プッシュプル信号生成回路
16 位相差検出回路
17 位相差信号生成回路
18 オフセット量検出回路
19 トラッキング信号選択回路
20 選択スイッチ
21 トラッキング制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに設けられている信号記録層から反射される戻り光を受光するメインビーム用受光部及びサブビーム用受光部を備えた光ピックアップ装置のトラッキング制御方法であり、前記メインビーム用受光部から得られるメイントラッキングエラー信号及びサブビーム用受光部から得られるサブトラッキングエラー信号に基づいて差動プッシュプル方式に使用されるトラッキングエラー信号を生成する差動プッシュプル信号生成回路と、前記メインビーム用受光部から得られる位相差検出方式に使用されるトラッキングエラー信号を生成する位相差信号生成回路を設け、レーザースポットが一方のみ信号記録済みトラックがある信号トラックに記録されている信号の読み出し動作を行っているとき、差動プッシュプル信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号から位相差信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号を使用してトラッキング制御動作を行う状態に切り換えるようにしたことを特徴とするトラッキング制御方法。
【請求項2】
サブトラッキングエラー信号の変化を検出することによってトラッキングエラー信号の切り換えを行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載のトラッキング制御方法。
【請求項3】
サブトラッキングエラー信号のオフセット量を検出することによってトラッキングエラー信号の切り換えを行うようにしたことを特徴とする請求項2に記載のトラッキング制御方法。
【請求項4】
サブトラッキングエラー信号のオフセット量が設定値に上昇したとき差動プッシュプル信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号から位相差信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号を使用してトラッキング制御動作を行う状態に切り換えるようにしたことを特徴とする請求項3に記載のトラッキング制御方法。
【請求項5】
サブトラッキングエラー信号のオフセット量が設定値まで低下したとき位相差信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号から差動プッシュプル信号生成回路から得られるトラッキングエラー信号を使用してトラッキング制御動作を行う状態に切り換えるようにしたことを特徴とする請求項4に記載のトラッキング制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−234584(P2012−234584A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100323(P2011−100323)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】