説明

トラックのシャシフレーム

【課題】緊締装置を用いて荷台を着脱可能としたトラックにおいて、荷台取り付け位置の地上高を小さくするとともに、緊締装置を取り付ける部材の強度及び剛性を増加させる。
【解決手段】シャシフレームは、車両の前後方向に伸びる2本のサイドレール1を備えており、荷台の緊締装置7を装着するクロス部材6は、ボルト65によってサイドレール1の側方に結合されている。クロス部材6は、断面形状が底辺61と両側辺62とを備えた形状に形成され、その上部には、一方のクロス部材の先端部から他方のクロス部材の先端部まで横方向に伸びる板部材8が配置される。板部材8はその両端部がクロス部材6の上部に結合される結果、クロス部材6は閉鎖断面となり、強度及び剛性が向上する。また、クロス部材6がサイドレール1の側方に結合され、その上には板部材8が載置されるだけであるから荷台の地上高を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台を搭載するトラックのシャシフレーム、より詳しくは、貨物を収容する荷箱等の荷台が着脱可能となっているトラックのシャシフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
貨物輸送用の車両であるトラックは、貨物を収容する荷台部分がトラックの車台であるシャシフレームに固定され、容易に着脱することができない構造となっている。つまり、トラックは用途に応じて装備された荷台部分といわば一体物となっており、例えば、上方が開放された無蓋の荷台と、冷凍車等で用いられる箱型の荷台とを交換して積載することは、通常、不可能である。
【0003】
これに対し、輸送用容器として用いられるコンテナは、船舶、車両等の種々の輸送機関に着脱できるように構成される。コンテナを車両によって運搬するときは、トラクタにより牽引されるコンテナシャシが用いられることが多いが、コンテナシャシにはツイストロックと呼ばれる緊締装置が設けてあり、コンテナ下面のコーナー部等に開けられた孔に緊締装置を挿入した後これを回転させることにより、コンテナはコンテナシャシに位置決めされ固定される。このような緊締装置をトラックに装着し、荷台の着脱を可能とすることは公知であって、例えば実開昭50−134810号公報に示されている。
【0004】
この公報に開示されたトラックのシャシフレームを図5(a)に、また、荷台の裏面の構造を図5(b)に示す。トラックのシャシフレームは前後方向に伸びるサイドレール101を備えるとともに、その前方と後端部には横方向のクロス部材102が固着されており、それぞれのクロス部材102の両端部には緊締装置103が設置されている。このシャシフレームに積載される荷台104の下面には、(b)に示されるとおり、緊締装置102が挿入される孔105を備えた結合部材が固定され、これによって荷台104はシャシフレームに固定される。横方向のクロス部材102は、2本のサイドレール101の間に固着される部分とサイドレール101の両側の側方に伸びる部分とからなり、この側方に伸びる部分は、上辺と両側辺を備えたコ字状断面をなしている。
【特許文献1】実開昭50−134810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走行中の車両には、加速減速に伴う慣性力やカーブの際の遠心力など様々な力が作用し、シャシフレームに積載される荷台にも当然このような力が働く。さらに、路面状況に応じて荷台等の傾きも変化する。緊締装置により荷台等を固定したときは、緊締装置を装着したボルスタと称する横方向のビーム、つまりクロス部材には、緊締装置を介して複雑な力が作用し、クロス部材は多方向の曲げモーメントあるいは捩りモーメントの荷重を受けることとなる。したがって、クロス部材はこのようなモーメント荷重などに十分耐え得る構造とする必要がある。
【0006】
また、荷台をシャシフレーム上に載置するときは、緊締装置の取り付け高さを小さくしなるべく低い位置に荷台を固定することが望ましい。低い位置に固定することで車体の重心が低下して操縦安定性が向上し、車両のより安全な走行が実現できる。貨物を収容する有蓋の荷箱、つまり箱型の荷台を載置した場合には、車両全体の高さには法規面等からの制限があるので、荷箱の固定位置を低めるとその分荷箱の高さを増大させることができ、荷箱に収容する貨物の収容量を増加することが可能となる。
本発明の課題は、緊締装置を用いて荷台を容易に取り外すことができるようにしたトラックにおいて、緊締装置を取り付ける位置の地上高を小さくするとともに、走行中に受けるモーメント荷重等に耐え得るようにした荷箱等の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題に鑑み、本発明は、緊締装置を用いて荷台を着脱可能としたトラックのシャシフレームにおいて、緊締装置を装着するクロス部材をサイドレールの側方に結合して取り付け位置を低めるとともに、その上部に板部材を結合してクロス部材の強度及び剛性を増加させたものである。すなわち、本発明は、
「荷台が着脱可能なトラックのシャシフレームであって、
前記シャシフレームは、車両の前後方向に伸びる2本のサイドレールを備え、前記2本のサイドレールの複数の位置には、車両の外側に向け横方向に伸びるクロス部材がそれぞれ配置されるとともに、前記クロス部材の先端には荷台を固定する緊締装置が取り付けられており、かつ、
前記クロス部材は、断面形状が底辺と両側辺とを備えた形状に形成され、それぞれの前記サイドレールの側面にボルトによって結合されており、さらに、
前記クロス部材が配置される位置には、前記サイドレールの上面に、一方のクロス部材の先端部から他方のクロス部材の先端部まで横方向に伸びる板部材が載置され、その板部材の縁部は、前記クロス部材の両側辺の上部に結合されている」
ことを特徴とするシャシフレームとなっている。ここで「荷台」とは、車両のシャシフレームに搭載される積載物をいうものであって、無蓋の荷台、有蓋の箱型荷台及びコンテナ等を含むものである。
【0008】
請求項2に記載のように、前記クロス部材を、車両の外側に近づくほど断面積が縮小される先細り形状とすることができる。
【0009】
また、請求項3に記載のように、前記クロス部材が配置される位置には、前記2本のサイドレールを連結するクロスビームを設置することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシャシフレームでは、荷台を固定する緊締装置が取り付けられたクロス部材は、サイドレールの側方にボルトによって固着されている。サイドレールの上部には左右のクロス部材を結合する板部材が載置されるだけである。一般に、シャシフレームの上方に緊締装置等の特別の器具を配置するときは、一定の高さを有する別体フレームをシャシフレーム上に載せ、これに器具を装着することが多いが、このような方法と比較すると、本発明では荷台の下面を低い位置に設定して固定することができる。したがって、車両走行時の安定性を向上させることが可能であり、箱型の荷台を搭載するときには、高さの大きな荷台を搭載できることとなる。
【0011】
また、本発明のクロス部材は、断面形状が底辺と両側辺とを備えた形状、いわばカップ状の形状となっている。そして、サイドレールの上面には、一方のクロス部材の先端部から他方のクロス部材の先端部まで横方向に伸びる板部材が載置され、この板部材の縁部にクロス部材の両側辺が結合されるので、結合によりクロス部材の上方が閉鎖されて閉鎖断面が形成される。クロス部材には車両の走行中の慣性力等に起因して曲げモーメントや捩りモーメントが作用するが、1本の板部材が左右のクロス部材全体に掛け渡されるとともに、クロス部材が閉鎖断面となっているため、このような荷重に対抗する十分な強度及び剛性を確保することができる。さらに、クロス部材はボルトによってサイドレールに結合されており、溶接等で結合したときとは異なり結合部に応力集中が発生しないため、亀裂が生じることはない。
ちなみに、特許文献1に記載されたシャシフレームにおいても、緊締装置を装着するクロス部材はサイドレール側面に固着されている。しかし、クロス部材の断面は下方が開放された開放断面であり、左右のクロス部材全体に掛け渡される板部材も存在しないから、本発明のような作用効果は期待できない。
【0012】
請求項2の発明は、クロス部材を先細り形状としたもので、サイドレールに近い根元部が太くなっている。クロス部材に働く曲げモーメントに基づく荷重は根元部ほど大きくなる傾向にあるから、このようにしたときは、無駄な部分を減らして軽量化を図ることができ、また、クロス部材に生じる応力の均等化を図ることができる。
【0013】
サイドレールのクロス部材が配置される位置には、緊締装置からの荷重が集中的に作用する。請求項3の発明のように、この位置に2本のサイドレールを連結するクロスビームを設置すると、クロスビームが補強材となり集中荷重によるサイドレールの損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明のシャシフレームについて説明する。
図1には、本発明のトラックにおけるシャシフレームの平面図及び正面図を示す。シャシフレームは、車両の全長に亘って前後方向にほぼ平行に伸びる2本のサイドレール1を備えている。2本のサイドレール1の間には、各々のサイドレールを結合するクロスメンバ2が複数の位置に設けられ、これらはシャシフレームの骨格をなすものである。このシャシフレームには、最前端に運転台3が搭載され、さらに、前車輪4及び後車輪5がサスペンション装置を介して取り付けられるとともに、エンジンや動力伝達装置など車両走行に必要な装置が取り付けられており、シャシフレームとこれらの装置によって車両のシャシが構成される。
【0015】
2本のサイドレール1の各々には、この実施例では3個所の位置に、荷台を固定するためのクロス部材が配置され、したがって全体では6個のクロス部材6A〜6Fがサイドレールに装着されている。クロス部材は2個のものが対称となるよう、サイドレール1の同一の位置に車両の横方向に向けて配置され、その先端には荷台を固定する緊締装置7A〜7Fが取り付けられる。緊締装置7は、図2に示すとおり、平面視でほぼ長方形をなす頭部71と一体の回転軸を有しており、荷台がシャシフレームの上面に載置されたときに、頭部71が荷台下面に形成された挿入孔(図5の符号105のもの参照)に挿入され、ハンドル72により頭部71を回転させて荷台を固定する。
シャシフレームは、箱型の荷台の他に20フィートのコンテナを積載することができるよう、前方の緊締装置7A、7Bと後方の緊締装置7E、7Fとの間の距離が、コンテナ下面に設けられる挿入孔の距離にあわせて設定されている。図1の正面図に2点鎖線で表すように、箱型の荷台をシャシフレームに固定するときは全ての緊締装置を用いて荷台の固定が行われ、コンテナを固定するときは前方と後方の4個の緊締装置が使用される。
【0016】
図3には、緊締装置7が取り付けられるクロス部材6の平面図及び正面図を示し、また、その斜視図を図4に示す。クロス部材6は、その斜視図から明らかなように、底辺61及び両側辺62を備えた断面形状を有しており、さらに、両側辺62の上部にはフランジ63を備えている。クロス部材6の一端、すなわち車両の内側となる根元部には端板64が溶接等により固着され、他端には緊締装置7が、やはり溶接等により装着されている。クロス部材6は、根元部から先端部になるにしたがってその断面積が減少する先細り形状をなしている。端板64にはその周辺部に貫通孔が設けられ、さらに、サイドレール1にも対応する貫通孔が設けられており、これらの貫通孔にボルト65を挿入して、クロス部材6はサイドレール1に結合される。
【0017】
クロス部材6の上部には板部材8が設置される。板部材8は、一方のクロス部材の緊締装置装着部から他方のクロス部材の緊締装置装着部間で到る長さを有し、両方のクロス部材の上部に掛け渡されている。板部材8の両端部はクロス部材6の上部形状と対応した形状をなし、その縁部がフランジ63にボルト結合されるとともに、板部材8の中間部はサイドレール1の上面に接触して載置されている。2本のサイドレール1の間には、2枚のクロスビーム9が配置され、サイドレール1に連結される。この実施例では、クロスビーム9が2本のサイドレール1の中央部を連結するように設けられているが、サイドレール1の下部を板状のクロスビームで連結してもよい。
【0018】
本発明のシャシフレームでは、緊締装置7を装着するクロス部材6がボルトによってサイドレール1の側方に結合されている。また、サイドレール1の上方には左右のクロス部材6を結合する厚さが比較的薄い板部材8のみが載置される。このため、緊締装置7で固定される荷台の下面は、ほぼサイドレール1の上面の位置に設定することが可能で、可及的に低い位置に設定できることとなり、例えば、箱型の荷台を搭載するときには、高さが大きく貨物の収容量の大きい荷台を搭載できることとなる。そして、本発明の緊締装置の取り付け構造は、サイドレール1にクロス部材6と板部材8とを装備する比較的簡易なものであリ、取り付け作業は容易なものとなる。なお、荷台の底面が平面状であるときは、図4に2点鎖線で示すとおり、板部材8と同じ厚さの板材をサイドレ−ル1の上部にそれぞれ載置して、シャシフレームの上面を平面とするのが好ましい。
【0019】
また、本発明のクロス部材6は、断面形状が底辺61と両側辺62とを備えたいわばカップ状の形状となっており、そして、一方のクロス部材の先端部から他方のクロス部材の先端部まで横方向に伸びる板部材8が掛け渡され、この板部材8の縁部にフランジ63によりクロス部材6の両側辺62が結合されている。つまり、クロス部材6は、その上部が閉鎖されて閉鎖断面を有するようになる。
車両の走行中において、緊締装置7を装着したクロス部材6には慣性力等に起因する曲げモーメントや捩りモーメントが作用するが、本発明においては1本の板部材8が左右のクロス部材全体に掛け渡されるとともに、クロス部材6が閉鎖断面となっている。したがって、クロス部材6等は十分な強度及び剛性を有し、こうした荷重によって損傷や変形を受けることはない。さらに、クロス部材6はボルト65によってサイドレール1に結合されており、溶接等で固着したときと異なり結合部では集中応力等の発生がなく、モーメント荷重等によって結合部に亀裂が生じることが防止される。
【0020】
この実施例においては、クロス部材6は先細り形状をなしサイドレール1に近い根元部が太くなっている。車両走行中にクロス部材6に働く曲げモーメントは根元部ほど大きくなる傾向にあるが、このようにすると根元部のほうは断面面積も大きいから、クロス部材6に生じる応力の均等化を図ることができる。また、サイドレール1のクロス部材が配置される位置には、2本のサイドレールを連結するクロスビーム9が補強材として設置され、集中荷重によるサイドレールの損傷を防止している。なお、その位置に既存のクロスメンバ2が配置されている場合には、クロスビームを省略することができる。
【0021】
以上詳述したように、本発明は、緊締装置を用いて荷台を着脱可能としたトラックのシャシフレームであって、緊締装置を装着するクロス部材をサイドレールの側方に結合して取り付け位置を低め、かつ、左右のクロス部材の上方に板部材を結合してその強度及び剛性を増加させたものである。上記の実施例では、3組のクロス部材を設けるものについて説明したけれども、これに限らず、積載する荷台に応じて適宜の数のクロス部材を配置できることは言うまでもなく、平板状のクロスビーム9に代え閉鎖断面のものを採用するなど、各種の変形ができることも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に基づくシャシフレームの全体図である。
【図2】緊締装置を示す図である。
【図3】本発明のクロス部材の構造を示すである。
【図4】本発明のクロス部材の斜視図である。
【図5】着脱自在の荷台を有する従来のシャシフレームを示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 サイドレール
2 クロスメンバ
6 クロス部材
61 底辺
62 両側辺
65 ボルト
7 緊締装置
8 板部材
9 クロスビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台が着脱可能なトラックのシャシフレームであって、
前記シャシフレームは、車両の前後方向に伸びる2本のサイドレールを備え、前記2本のサイドレールの複数の位置には、車両の外側に向け横方向に伸びるクロス部材がそれぞれ配置されるとともに、前記クロス部材の先端には荷台を固定する緊締装置が取り付けられており、かつ、
前記クロス部材は、断面形状が底辺と両側辺とを備えた形状に形成され、それぞれの前記サイドレールの側面にボルトによって結合されており、さらに、
前記クロス部材が配置される位置には、前記サイドレールの上面に、一方のクロス部材の先端部から他方のクロス部材の先端部まで横方向に伸びる板部材が載置され、その板部材の縁部が前記クロス部材の前記両側辺の上部に結合されていることを特徴とするシャシフレーム。
【請求項2】
前記クロス部材は、車両の外側に近づくほど断面積が縮小される先細り形状をなしている請求項1に記載のシャシフレーム。
【請求項3】
前記クロス部材が配置される位置には、前記2本のサイドレールを連結するクロスビームが設置される請求項1又は請求項2に記載のシャシフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−99228(P2007−99228A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295252(P2005−295252)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000229900)日本フルハーフ株式会社 (93)
【Fターム(参考)】