説明

トランスレスベラトロール含有組成物

【課題】トランスレスベラトロールの血中持続性が向上したトランスレスベラトロール含有組成物及びその調製方法を提供する。
【解決手段】トランスレスベラトロールが添加されているグネツム種子抽出物を含有する組成物、並びにトランスレスベラトロールとグネツム種子抽出物とを、トランスレスベラトロール及びピセイドの総量1重量部当たりグネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドDの総量が2重量部以上となるように混合することを特徴とする、トランスレスベラトロール含有組成物の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスレスベラトロール(trans-resveratrol)の血中持続性が向上したトランスレスベラトロール含有組成物及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老化・寿命制御に関するこれまでの研究で、酵母、線虫、ショウジョウバエ等においてはカロリー制限が延命・抗老化を実現するための有効な処理であることが知られている。そして、それらのカロリー制限による延命の実現には、NAD依存性脱アセチル化酵素活性を有するSir2が関与していることが明らかになっており(非特許文献1)、Sir2の哺乳類ホモログとしてはサーチュイン1〜7が知られている。
【0003】
従来から、このようなサーチュインを増強又は活性化する因子としては、赤ワイン中のポリフェノールであるレスベラトロールをはじめとした植物性ポリフェノール類が知られている(非特許文献2)。
【0004】
一方、グネツム(別名メリンジョ、学名Gnetum gnemon L.、英名Gnemon tree、インドネシア名Melinjo、Belinjo)は、グネツム科の植物であり、東南アジアで栽培され、インドネシアでは昔からグネツムの葉、花、実を食料としている。また、グネツムの種子は潰してから乾燥後、油で揚げて菓子(ウンピン:emping)とされている。そして、当該グネツム種子は、サーチュイン活性化作用が知られているレスベラトロールを含有することが知られている。このようなグネツムの利用方法としては、グネツム種子から抽出したグネツムエキスやグネツム果実の発酵食品等が報告されている(特許文献1〜7)。
【0005】
特許文献1には、グネツム種子を用いたグネツム食品について記載され、当該グネツム食品は、安全であり、抗菌作用及びラジカル消去作用を有するので、安心して食することができ、種々の加工食品の日持ち向上などが期待されることが記載されている。
【0006】
特許文献2には、グネツム種子の水及び/又は有機溶剤を抽剤とした抽質を含有することを特徴とするグネツムエキスについて記載され、当該グネツムエキスは食品中脂質の酸化を抑制及び生物の酸化的障害を保護する抗酸化作用、チロシナーゼ阻害作用等の効果を有することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、熟成させたグネツムエキス中の主たる有用成分は、グネチンC(gnetin C)、グネモノシドA(gnemonoside A)、グネモノシドC(gnemonoside C)、グネモノシドD(gnemonoside D)であり、これら4つの化合物は何れもスチルベノイド(stilbenoid)に属するポリフェノールであること、グネチンCの抗菌作用は酸性領域からアルカリ性領域までpH依存性がなく、特に他の抗菌性物質に見られないような中性領域でも示すことが特長的であることが記載されている。
【0008】
特許文献3には、グネツム果実に有用微生物を作用させることを特徴とする発酵食品について記載され、当該発酵食品は、安全であり、抗菌作用及びラジカル消去作用を有するポリフェノールの一種であるスチルベノイドを含有しているので、雑菌の増殖が抑えられて雑味がなく、空気酸化による風味低下もないために食し易いばかりか、機能性食品として心疾患等の予防が期待されることが記載されている。
【0009】
また、特許文献4にはグネツム由来のスチルベノイドを有効成分とする健康飲料が、特許文献5にはグネツムのレスベラトロール2量体を有効成分とする健康保持剤が、特許文献6にはグネツムのエキスを有効成分とする免疫賦活剤が、特許文献7にはグネツムのエキスを有効成分とする肥満・糖尿病改善剤がそれぞれ記載されている。
【0010】
更に、特許文献8には、メリンジョ内乳から単離された、抗菌作用、抗酸化作用及び抗リパーゼ作用に優れる新規化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−81405号公報
【特許文献2】国際公開第2006/030771号
【特許文献3】特開2008−22726号公報
【特許文献4】特開2009−247254号公報
【特許文献5】特開2009−13123号公報
【特許文献6】特開2009−46446号公報
【特許文献7】特開2009−249320号公報
【特許文献8】特開2010−184886号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】PLoS ONE 3: e1759, 2008
【非特許文献2】Nature, 425:191-196 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、トランスレスベラトロールの血中持続性が向上したトランスレスベラトロール含有組成物及びその調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、トランスレスベラトロールとグネツム種子抽出物を併用し、トランスレスベラトロールとグネツム種子抽出物の混合組成物とすることによって、トランスレスベラトロールの血中持続性を予想値より向上させることができ、上記目的を達成することができるという知見を得た。更に、トランスレスベラトロールとグネツム種子抽出物を併用することにより抗酸化作用も向上させることができるという知見も得た。本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の組成物及びその調製方法を提供するものである。
【0015】
I. 組成物
(I-1) トランスレスベラトロールが添加されているグネツム種子抽出物を含有する組成物。
(I-2) トランスレスベラトロール及びピセイドの総量1重量部当たりグネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドDを総量で2重量部以上含有することを特徴とする、(I-1)に記載の組成物。
(I-3) トランスレスベラトロール及びピセイドの総量1重量部当たりグネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドDを総量で2.5重量部以上含有することを特徴とする、(I-1)に記載の組成物。
(I-4) トランスレスベラトロール及びピセイドの総量1重量部当たりグネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドDを総量で12〜60重量部含有することを特徴とする、(I-1)に記載の組成物。
(I-5) 医薬又は食品である、(I-1)〜(I-4)のいずれかに記載の組成物。
【0016】
II. トランスレスベラトロール含有組成物の調製方法
(II-1) トランスレスベラトロールとグネツム種子抽出物とを、トランスレスベラトロール及びピセイドの総量1重量部当たりグネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドDの総量が2重量部以上となるように混合することを特徴とする、トランスレスベラトロール含有組成物の調製方法。
(II-2) トランスレスベラトロール及びピセイドの総量1重量部当たりグネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドDの総量が2.5重量部以上となるように混合することを特徴とする、(II-1)に記載の方法。
(II-3) トランスレスベラトロール及びピセイドの総量1重量部当たりグネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドDを総量が12〜60重量部となるように混合することを特徴とする、(II-1)に記載の方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の組成物によれば、トランスレスベラトロールの血中持続性を向上させることができる。そのため、トランスレスベラトロールのサーチュインを活性化することによる抗老化効果が高められることが期待できる。更に、本発明の組成物によれば、抗酸化作用も向上させることができる。
【0018】
また、本発明の組成物は、従来から食品素材として用いられてきたグネツム種子を使用するものであるから、安全性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
トランスレスベラトロール
本発明において添加されるトランスレスベラトロールは、人工的に合成されたものであっても、トランスレスベラトロールを含有する植物等から抽出したものであっても良い。植物等からの抽出物を使用する場合は、トランスレスベラトロール以外の物質を含む粗抽出物の状態で使用することもできる。しかしながら、本発明において添加されるトランスレスベラトロールは、グネツム種子抽出物の粗抽出物の状態のものは除かれる。本発明において添加されるトランスレスベラトロールは単離されたものであることが望ましい。
【0021】
グネツム種子抽出物にもトランスレスベラトロールは含まれるが、本発明ではグネツム種子抽出物に加えて更に(即ち、グネツム種子抽出物とは別に)トランスレスベラトロールを組成物中に添加することを特徴としている。
【0022】
トランスレスベラトロールを含有する植物としては、これらに限定されるものではないが、例えば、グネツム種子、葡萄、ピーナッツ、落花生、イタドリなどが挙げられる。トランスレスベラトロールを植物から抽出する方法は、当該分野で一般的な方法が使用できるが、例えば、水や含水有機溶剤に植物を浸漬することによる抽出方法が挙げられる。
【0023】
グネツム種子抽出物
本発明において、グネツム種子は、グネツム科の植物の種子を意味し、種皮、薄皮、及び胚/胚乳(内乳)からなるものとする。
【0024】
本発明で使用するグネツム種子の形状・形態としては、本発明の効果が得られるものであればどのような形状・形態のものであっても良いが、長径:約1.3〜2.3 cm、短径:約0.6〜1.3 cmであり、ピーナッツ状の形状であるものが好ましい。グネツム種子としては、グネツム種子が含まれている形態のものであれば本発明に使用することができ、例えばグネツム種子に果皮を有する形態であるグネツム果実の形態であっても良い。
【0025】
本発明で使用するグネツム種子としては、加工されたものあっても良く、このようなグネツム種子の加工物としては、乾燥されていない生の状態のもの、(天日干し等により)乾燥された状態のもの、又は加熱乾燥された状態のもののいずれであっても良い。また、グネツム種子は、切断や粉砕されていない原形のままの状態で原料として使用することができるが、スライスや粉砕されたグネツム種子の加工物であっても良い。本発明には、グネツム種子の胚/胚乳(内乳)、又は種皮のみのグネツム種子の加工物を使用することもできる。
【0026】
本発明のグネツム種子抽出物は、何れの方法によりグネツム種子から抽出されたものであっても良いが、好ましくはグネツム種子を浸漬液に浸漬することにより得られるものである。
【0027】
上記浸漬液としては水や含水有機用剤を使用することができ、有機溶媒としては、水と自由に混和可能なものが好ましく、そのようなものとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール等の炭素数1〜5の低級アルコール、ジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、酢酸、氷酢酸、プロピオン酸等の有機酸等が挙げられる。有機溶媒は、好ましくは低級アルコールである。
【0028】
浸漬を行う際の浸漬液の温度は、グネツム種子及び浸漬液の量などにより適宜設定され得るが、例えば10〜50℃、好ましくは20〜40℃である。浸漬を行う時間は、グネツム種子及び浸漬液の量などにより適宜設定され得るが、好ましくは3日以上、より好ましくは3日〜7日である。
【0029】
本発明のグネツム種子抽出物は、以下の工程(A)及び(B)を含む方法により製造することで、高収量のグネチンCが含まれた抽出物を得ることができる。
(A)グネツム種子を水又は含水有機溶剤である浸漬液に浸漬し、該浸漬液について固液分離を行って固形物を回収する工程、及び
(B)工程(A)で得られた固形物を、工程(A)の浸漬液より有機溶剤の含量が10容量%以上高い浸漬液に浸漬し、該浸漬液を回収する工程。
【0030】
回収した浸漬液は、そのままでも使用できるが、必要に応じて、限外濾過、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、透析法、これらの組合せなどにより精製を行っても良い。
【0031】
本発明のグネツム種子抽出物は、回収された浸漬液(必要に応じて更に精製されたものも含む)、当該浸漬液を濃縮した濃縮液、又は凍結乾燥、スプレードライ等により当該浸漬液の溶媒が除去された固形物の何れの状態であっても良い。ここで、浸漬液の濃縮、凍結乾燥及びスプレードライは、常法に従って行うことができる。本発明のグネツム種子抽出物の形態は、好ましくは粉末状である。
【0032】
本発明のグネツム種子抽出物には、スチルベノイドとして、グネチンC、グネモノシドA、グネモノシドD、及びトランスレスベラトロール(レスベラトロール)が含まれていることが望ましい。
【0033】
組成物
本発明の組成物は、グネツム種子抽出物を含有し且つトランスレスベラトロールが添加されていることを特徴とする。
【0034】
このようにトランスレスベラトロールとグネツム種子抽出物を併用することによって、トランスレスベラトロールの血中持続性を予想より向上させることが可能になる。更に、これらを併用することによる相乗効果により、抗酸化作用も向上させることができる。
【0035】
本発明の組成物中に含まれるトランスレスベラトロールとグネツム種子抽出物の割合は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、最終形態等に応じて適宜調整することができ、一般に、総量で0.01〜100重量%の範囲から適宜選択することが可能である。
【0036】
本発明の組成物中のトランスレスベラトロール及びピセイドの総量1重量部当たりのグネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドDの総量としては、好ましくは2重量以上、より好ましくは2.5重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、更により好ましくは12重量部以上、特に好ましくは24重量部以上であり、好ましくは60重量部以下、より好ましくは40重量部以下である。この範囲であれば、より高いトランスレスベラトロールの血中持続性の向上の効果が得られる。
【0037】
上記の組成物中のトランスレスベラトロールとは、グネツム種子抽出物に含まれているトランスレスベラトロール及びこれとは別に添加するトランスレスベラトロールの両方を含むものである。上記「トランスレスベラトロール及びピセイドの総量」とは、(トランスレスベラトロール+ピセイド)の合計重量を、上記「グネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドD の総量」とは(グネチンC+グネモノシドA+グネモノシドD)の合計重量をそれぞれ意味する。
【0038】
本発明の組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、上記以外の公知の成分を適宜配合することができる。
【0039】
本発明の組成物の摂取量は、摂取者又は摂取動物の年齢、体重、症状等に応じて適宜選択することができる。
【0040】
食品組成物
本発明の組成物は、食品の形態で利用することができる。当該食品組成物には、動物(ヒトを含む)が摂取できるあらゆる食品組成物が含まれる。
【0041】
本発明の食品組成物は、サーチュインを活性化することが知られているトランスレスベラトロールが含まれている上に血中持続性が高いので、老化を抑制する高い効果が期待できる。
【0042】
本発明の食品組成物には、必要に応じて、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
【0043】
本発明の食品組成物の種類は、特に限定されず、例えば、飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実種、ハチミツ酒のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム、ハチミツ、プロポリス等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素等)などが挙げられる。
【0044】
また、本発明の食品組成物は、サーチュインを活性化することにより老化を抑制し得る健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント又は特定保健用食品としても使用できる。サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択できるが、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤等が挙げられる。
【0045】
本発明の食品組成物の製法も特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。例えば、前記のような食品組成物の製造工程における中間製品、又は最終製品に、トランスレスベラトロール及びグネツム種子抽出物を混合又は噴霧等して、上記の目的に用いられる食品を得ることができる。
【0046】
医薬組成物
本発明の組成物は、医薬(特に、経口医薬)の形態で利用することができる。
【0047】
医薬組成物として調製する場合、トランスレスベラトロールとグネツム種子抽出物を、医薬品において許容される無毒性の担体、希釈剤又は賦形剤とともに、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤などを含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液や電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)などの形態に調製して、医薬用の製剤にすることが可能である。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0049】
試験例1
(製造方法)
・メリンジョ種子抽出物粉末
メリンジョ種子抽出物粉末としては、株式会社山田養蜂場製の原料(Lot YMP-M-100109)を用いた。メリンジョ種子抽出物粉末はトランスレスベラトロールを0.1重量%、ピセイドを0.2重量%、グネチンCを3.2重量%、グネモノシドAを11.2重量%、グネモノシドDを5.2重量%含有する。
【0050】
・トランスレスベラトロール粉末
トランスレスベラトロール粉末は、トランスレスベラトロール含有サプリメント(Douglas Laboratories製、商品名「Resveratrol」)を食添用エタノールで抽出・濃縮したものを用いた。上記のトランスレスベラトロール粉末はトランスレスベラトロールを82.6重量%含有する。
【0051】
表1の処方に従い、メリンジョ種子抽出物粉末とトランスレスベラトロール粉末を含有する錠剤を作製した。
【0052】
【表1】

【0053】
(結果)
表1に記載の実施例1〜4の錠剤を3人の健康な被験者に4錠ずつ投与した。経口投与前、経口投与後1、2、4、8、24、48時間目の血漿中のトランスレスベラトロール濃度を調べ、トランスレスベラトロールの平均滞留時間(MRT)を算出し、持続性を比較した。なお、錠剤投与から48時間後までの血漿中濃度‐時間曲線下面積(AUC0-48)及び1次モーメント曲線下面積(AUMC0-48)は台形公式に基づいて算出し、MRTは以下の数式で算出した。
【0054】
MRT=AUMC0-48/AUC0-48
これらの計算は書籍「薬剤学 第4版/著者:橋田 充、木村 聰城郎、瀬崎 仁/発行年:平成22年1月25日(初版平成元年5月25日)」を元に行った。
【0055】
トランスレスベラトロールのMRTは、トランスレスベラトロールのみ(レスベラトロール二量体量/レスベラトロール単量体量=0)を投与すると7.5時間で、メリンジョ種子抽出物粉末のみ(レスベラトロール二量体量/レスベラトロール単量体量=65)を投与すると17.4時間となることを出願人は報告している(第34回基礎老化学会)。ここで、レスベラトロール二量体の量が多くなるとトランスレスベラトロールのMRTが比例関係で増加すると考え、以下の式により予想値を算出した。
予想値=(17.4-7.5)/65×(レスベラトロール二量体量/レスベラトロール単量体量)+7.5
【0056】
MRTの上昇率はトランスレスベラトロールのMRTの実測値を予想値で除すことによって求めた。錠剤投与後のトランスレスベラトロールのMRTの上昇率を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
なお、レスベラトロール単量体量及びレスベラトロール二量体量の定義は以下の通りである。
・レスベラトロール単量体(重量)=トランスレスベラトロールの重量+ピセイドの重量
・レスベラトロール単量体(物質量)=トランスレスベラトロールの物質量+ピセイドの物質量
・レスベラトロール二量体(重量)=グネチンCの重量+グネモノシドAの重量+グネモノシドDの重量
・レスベラトロール二量体(物質量)=グネチンCの物質量+グネモノシドAの物質量+グネモノシドDの物質量
【0059】
この結果から、トランスレスベラトロールとグネツム種子抽出物を併用することにより、トランスレスベラトロールの血中持続性を向上させることができることが分かる。
【0060】
試験例2
(調製方法1)
試験例1で用いたメリンジョ種子抽出物粉末をORAC試験で用いることができるように、メリンジョ種子抽出物粉末1重量部当たり1,000重量部にあたる100%エタノールを加えて撹拌し、遠心により沈殿を除いた上清を試験サンプルとした。
【0061】
(調製方法2)
トランス-レスベラトロール(Sigma Aldrich)をORAC試験で用いることができるように、トランス-レスベラトロール1重量部当たり1,000重量部にあたる100%エタノールを加えて撹拌し、遠心により沈殿を除いた上清を試験サンプルとした。
【0062】
(抗酸化力測定試験)
抗酸化力の測定にはORAC法を用いた。用いた試験サンプルは、メリンジョ種子抽出物(調製方法1)、トランス-レスベラトロール(調製方法2)である。試験サンプルはそれぞれ単独か、又は表3に従い、試験サンプル同士を所定の配合割合で混ぜ合わせた後、リン酸緩衝液にて希釈系列を作成して試験に用いた。96ウェルプレートにブランク(リン酸緩衝液のみ)、Trolox((±)-6-Hydroxy-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxylic acid/スタンダードとして使用)、試験サンプルを20μlずつ分注した。その後94.4 nmol/Lのフルオレセイン液(FL液)を200μlずつ分注し、蛍光強度を測定した。さらに17.2 mg/mL AAPH(2,2’-Azobis (2-amidinopropane) Dihydrochloride)液を75μL加え、蛍光強度の経時変化を測定した。得られた蛍光強度の値を元にORAC値を算出した。計算はXIANLI WUらの報告1)に従った。
【0063】
試験サンプルをそれぞれ単独に用いたときに得られたORAC値から期待値を求めた。期待値は以下の計算式によって算出した(計算式ではメリンジョ種子抽出物をA、それトランス-レスベラトロールをBと表記する)。
期待値(ORAC値)=
(AのORAC値)×(Aの配合割合)/{(Bの配合割合)+(Aの配合割合)}
+(BのORAC値)×(Bの配合割合)/{(Bの配合割合)+(Aの配合割合)}
1) XIANLI WU et al., “Lipophilic and Hydrophilic Antioxidant Capacities of Common Foods in the United States,” J. Agric. Food Chem. 2004, 52, 4026-403
【0064】
(結果)
各試験サンプル(混合した試験サンプル)の期待値及び実測値を表3に示す。表中のレスベラトロール単量体量及びレスベラトロール二量体量の定義は試験例1と同様である。
【0065】
【表3】

【0066】
この結果から、トランスレスベラトロールとグネツム種子抽出物を併用することにより、抗酸化作用を向上させることができることが分かる。
【0067】
処方例
以下、本発明の組成物の処方例を示す。
【0068】
処方例1.錠剤
上記試験例1で用いたグネツム種子抽出物粉末30 mg、トランスレスベラトロールを5%含有するブドウ種子抽出物粉末10 mg、ショ糖脂肪酸エステル3 mg、結晶セルロース120 mg及びデキストリン242 mgを混合・打錠し、錠剤を得た。
【0069】
処方例2.カプセル剤
上記試験例1で用いたグネツム種子抽出物粉末50 mg、トランスレスベラトロールを5%含有するブドウ種子抽出物粉末7 mg、ショ糖脂肪酸エステル4 mg及びデキストリン180 mgを混合し、カプセルに充填し、カプセル製剤を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスレスベラトロールが添加されているグネツム種子抽出物を含有する組成物。
【請求項2】
トランスレスベラトロール及びピセイドの総量1重量部当たりグネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドDを総量で2重量部以上含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
トランスレスベラトロール及びピセイドの総量1重量部当たりグネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドDを総量で2.5重量部以上含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
トランスレスベラトロール及びピセイドの総量1重量部当たりグネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドDを総量で12〜60重量部含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
医薬又は食品である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
トランスレスベラトロールとグネツム種子抽出物とを、トランスレスベラトロール及びピセイドの総量1重量部当たりグネチンC、グネモノシドA及びグネモノシドDの総量が2重量部以上となるように混合することを特徴とする、トランスレスベラトロール含有組成物の調製方法。

【公開番号】特開2013−51917(P2013−51917A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192276(P2011−192276)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(598162665)株式会社山田養蜂場本社 (32)
【Fターム(参考)】