トリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物及びその製造方法
【課題】トリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物及びその製造方法の提供。
【解決手段】一般式(1)のトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物。
(R1、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。nは0,1又は2である。)
【解決手段】一般式(1)のトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物。
(R1、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。nは0,1又は2である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定化触媒、溶液中からの金属吸着剤及び回収剤の原料、シランカップリング剤、オルガノポリシロキサン組成物やエポキシ樹脂等の硬化触媒や接着助剤、他には、ポッティング剤、コーティング剤、建築用シーリング剤等の原料として有用なトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固定化触媒、溶液中からの金属吸着剤及び回収剤の原料、シランカップリング剤、オルガノポリシロキサン組成物やエポキシ樹脂等の硬化触媒、更には、接着助剤、ポッティング剤、コーティング剤、建築用シーリング剤等の原料として、種々の有機ケイ素化合物が使用されている。中でも、特許文献1(特開昭63−250390号公報)に包含される化学式2のアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物は、その官能基であるアセト酢酸エステル基(ケト体)が、互変異性化によって、金属化合物と容易に配位結合して錯体構造を形成し得るエノール体に転換することから、上記の用途に対して良好な特性を有していることが知られている。
【化1】
(なお、化学式2中、R1、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。nは0,1又は2である。)
【0003】
しかし、化学式2の化合物は、下記に示すような互変異性化(アセト酢酸エステル基(ケト体)のエノール体への転化)によって、活性なプロトンを有する水酸基を構造中に有することになるため、活性なプロトンと反応するような化合物と混合すると、徐々に反応してしまうことから、混合時の安定性が悪いという問題があった。
【化2】
【0004】
また、化学式2の化合物は、蒸留による精製が困難であることも問題であった。揮発性の有機ケイ素化合物を精製する場合には、蒸留操作を行うことが一般的であるが、化学式2の化合物を蒸留すると、蒸留操作中に以下の反応式1の分解反応が起こってしまい、主成分が得られない場合があった。
【化3】
【0005】
以上より、活性なプロトンを有する水酸基が保護されていて、安定性が高く、かつ蒸留による精製も可能な性状であるアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物が強く望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−250390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、活性なプロトンを有する水酸基が保護されていて、安定性が高く、かつ蒸留による精製も可能な性状であるアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、後述する方法によりこれまでに知られていない新規な下記一般式(1)のトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物を開発したところ、驚くべきことに、この化合物は、アセト酢酸エステル基を構造内に含有しているにも拘わらず、トリアルキルシリル基ですべてのアセト酢酸エステル基のエノール体の水酸基を保護しているために、混合時の安定性を低下させる原因であった活性なプロトンを保有しておらず、かつ蒸留による精製も可能な性状であることを見出した。また、本発明の化合物を、アルコール類と反応せしめると、簡単に前記のトリアルキルシリル基が外れて、各種性能を発揮するアセト酢酸エステル基が遊離することを見出した。本発明者らは、これらの驚くべき化学的性状を有する新規な一般式(1)の化合物の知見により、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明は、アセト酢酸エステル基(エノール体)の活性なプロトンを有する水酸基が保護されていて、安定性が高く、かつ蒸留による精製も可能な性状であり、また、アルコール類と反応せしめると、簡単にアセト酢酸エステル基の保護シリル基が外れて、アセト酢酸エステル基が遊離するという性状の新規な下記一般式(1)のトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物を提供することを特徴とする。
【化4】
(式中、R1、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。nは0,1又は2である。)
【0010】
また、本発明は、アセト酢酸アリルと、R13Si(但し、R1は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるトリアルキルシリル基を有するシラン化合物とを反応させて下記一般式(5)
【化5】
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基である。)
で表される化合物を合成し、次いでこの式(5)の化合物と下記一般式(6)
HSi(CH3)n(OR2)3-n (6)
(式中、R2は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0,1又は2である。)
で表されるヒドロアルコキシシランとを、白金含有触媒の存在下にて付加反応させることを特徴とする上記一般式(1)で表されるトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の新規なトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物は、アセト酢酸エステル基(エノール体)の活性なプロトンを有する水酸基が保護されているため、活性なプロトンと反応するような化合物と混合しても安定性が高い。また、蒸留による精製が可能であり、蒸留によって未反応原料、反応副生物及び白金含有触媒等の残存のない純粋な主成分が得られる。また、アルコール類と反応せしめると、簡単にアセト酢酸エステル基の保護シリル基が外れて、アセト酢酸エステル基が遊離し、その特性を発揮するようになる。また、その製造方法も穏和な条件及び簡便な操作で実施できるため、非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で示される。
【化6】
上記式中、R1、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよく、具体的な例を挙げれば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等がある。なお、R1は、3つともメチル基もしくはエチル基、あるいはそのうち2つがメチル基で残る1つがt−ブチル基であることが好ましい。また、R2はメチル基もしくはエチル基が好ましい。nは0,1又は2であり、0又は1が好ましい。
【0013】
なお、上記式(1)の化合物は、下記の2つの構造異性体(一般式(3)及び(4))からなっている混合物であり、式(1)の表記は、両者の混合物であることを意味するものである。なお、これらの異性体の比率は、ガスクロマトグラフィーもしくはNMR等の手段により求めることができるが、通常、その比率は、モル比として0〜30/70〜100と推定される。
【0014】
【化7】
【0015】
本発明に係わる一般式(1)の化合物の構造を具体的に示せば、以下の例が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、いずれも、前記したように、2つの構造異性体の混合物である。
下記式中、Meはメチル基、Etはエチル基、t−Buはtert−ブチル基、i−Prはイソプロピル基を示す。
【0016】
【化8】
【0017】
【化9】
【0018】
式(1)の化合物の製造方法は、いくつかあるが、そのうちの1つとしては、アセト酢酸アリルと、R13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物(なお、式中、R1は、前記と同じ)とを反応せしめることにより、アセト酢酸アリル(ケト体)の互変異性体であるエノール体の水酸基をトリアルキルシリル基で保護せしめた下記一般式(5)の化合物を合成し、次いで、この一般式(5)の化合物と下記一般式(6)のヒドロアルコキシシランとを、白金含有触媒の存在下にて、付加反応(ヒドロシリル化反応)せしめることによって合成することができる。
【化10】
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基である。)
HSi(CH3)n(OR2)3-n (6)
(式中、R2は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0,1又は2である。)
【0019】
なお、上記式(5)の化合物は、前記式(1)の化合物と同様に、下記の2つの構造異性体からなっている混合物であり、式(5)の表記は、両者の混合物であることを意味するものである。なお、これらの異性体の比率は、ガスクロマトグラフィーもしくはNMR等の手段により求めることができるが、通常、その比率は、モル比として0〜30/70〜100と推定される。
【0020】
【化11】
【0021】
上記式(5)の化合物を、アセト酢酸アリルとR13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物(なお、式中、R1は前記と同じ)との反応によって合成する場合、R13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物は、具体的には、以下の例を挙げることができる。ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、1,3−ジ−t−ブチルテトラメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン等。なお、一般的には、ヘキサメチルジシラザン又はトリメチルクロロシランが、安価、工業的な規模での大量入手が可能、反応性がよい、取り扱いが容易等の点から選ばれることが多い。
【0022】
上記式(5)の化合物の製造方法、即ちアセト酢酸アリルとR13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物との反応(アセト酢酸アリルの互変異性体のエノール体の水酸基をR13Siで表されるトリアルキルシリル基で保護する反応)については、従来公知の手段及び一般的な反応条件を用いることができ、特に制限はない。好ましい一例を挙げれば、例えばアセト酢酸アリルとヘキサメチルジシラザンとを反応せしめて、脱アンモニア化することにより、トリメチルシリル基でアセト酢酸アリルの互変異性体のエノール体の水酸基を保護した構造の式(5)の化合物を合成することができる。なお、R13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物は、アセト酢酸アリル1モルに対し、0.5〜2モルの割合で用いることが好ましい。また、別の製法の例としては、例えばアセト酢酸アリルとトリメチルクロロシランとを、モル比1〜4にてピリジンやトリエチルアミン等の塩酸捕捉剤としての3級アミン類の存在下にて反応させることによっても、同じ構造の式(5)の化合物を合成することができる。
【0023】
上記式(5)の化合物と上記式(6)のヒドロアルコキシシランとを、白金含有触媒の存在下にて、付加反応(ヒドロシリル化反応)せしめる方法については、従来公知の手段及び一般的な反応条件を用いることができ、特に制限はないが、好ましい条件を以下に記載する。
【0024】
式(6)のヒドロアルコキシシランは、R2は炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。nは0,1又は2であり、0又は1が好ましい。
【0025】
なお、ヒドロアルコキシシランの具体的な例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン等を挙げることができる。
【0026】
白金含有触媒は、特に種類の制限はなく、塩化白金酸(水和物でもかまわない)、speier触媒(塩化白金酸のアルコール溶液から調製されるもの)、Karstedt触媒(白金−ビニルシロキサン錯体を含有するもの)、白金担持触媒(活性炭やシリカゲル等の担体に白金が担持されたもの)、シクロオクタジエンもしくはエチレンもしくはトリフェニルホスフィン等の各種配位子を含有する種々の白金錯体等から選ぶことができる。
【0027】
白金含有触媒の使用量は、任意であるが、式(5)の化合物1モルに対して、含有される白金原子が1×10-7〜1×10-3モルが好ましく、より好ましくは約1×10-6〜1×10-4モルの使用量がよい。使用量が1×10-7モル未満であると付加反応が起こりにくい場合があり、1×10-3モルを超えると経済的に不利になる場合がある。
【0028】
式(5)の化合物と式(6)のヒドロアルコキシシランのモル比は、任意であるが、好ましくは、1:2〜2:1の範囲の中で選べばよく、範囲外の条件では、経済的に不利な場合がある。
【0029】
反応原料の混合方法には、特に制限はなく、回分式、半回分式もしくは連続式のいずれの方式を用いても構わない。また、白金含有触媒の導入方法、式(5)の化合物もしくは式(6)のヒドロアルコキシシランの混合順序や混合方法も特に制限を有しない。好ましい例を挙げれば、式(5)の化合物に白金含有触媒を共存させた混合物に、式(6)のヒドロアルコキシシランを滴下していく方法、あるいは式(6)のヒドロアルコキシシランに白金含有触媒を共存させた混合物に、式(5)の化合物を滴下していく方法等がある。
【0030】
また、上記付加反応は、反応溶媒を基本的には必要としないが、撹拌性を高めるために、反応器の容量に対して、液量を増加させる場合等の種々の必要に応じて、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ペンタン、ヘキサン、イソオクタン、デカン等の飽和脂肪族系炭化水素、ブチルエーテルやTHF(テトラヒドロフラン)等のエーテル系化合物等の溶媒を用いることができる。また、これらの溶媒は、1種単独又は2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。但し、アルコール類のように活性なプロトンを有している溶媒は、式(5)の化合物及び式(1)の化合物の保護シリル基(トリアルキルシリル基)が無用に脱離してしまうため、使用することはできない。
【0031】
また、上記付加反応は、反応速度を向上させる目的や反応選択性を制御する目的のために、各種のアミン類、アンモニウム塩類、ホスフィン類、ホスホニウム塩類、無機塩類、スルフィド類もしくは非プロトン性極性溶剤等を補触媒として添加することもかまわない。なお、添加量は付加反応そのものの反応性が著しい阻害を受けなければ特に制限はなく、添加物は1種単独又は2種以上の組み合わせでもかまわない。また、付加反応を活性化する手段として知られている適量の酸素を含む乾燥空気もしくは窒素やアルゴン等の不活性気体を反応系に吹き込む手段を実施することもできる。
【0032】
反応温度は、特に制限はないが、好ましくは0〜150℃、特に好ましくは10〜100℃がよい。反応温度が150℃より高いと、副生物が増加する場合がある。一方、反応温度が0℃より低いと、反応速度が遅くなり、経済的に不利になる場合がある。
上記の付加反応における圧力条件は、特に制限がなく、常圧もしくは加圧で実施できるが、一般的には常圧で十分である。
【0033】
また、上記の付加反応においては、雰囲気は、水分の混入を避ける目的で、窒素やアルゴン等の不活性ガスで置換され、同様のガスでシールされていることが好ましい。反応系に水分が混入すると、式(5)の化合物及び式(1)の化合物の保護シリル基(トリアルキルシリル基)が脱離もしくは式(6)のヒドロアルコキシシランもしくは式(1)の化合物のアルコキシシリル基が加水分解して、純度や反応収率が低下する場合がある。なお、反応系に含まれる水分量は、1,000ppm以下が好ましく、200ppm以下であればより好ましく、ゼロに近い程より望ましい結果を与える。
【0034】
次に、別の経路で、式(1)の化合物を製造する方法を説明する。前記の化学式2の化合物とR13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物(なお、式中、R1は、前記と同じ)とを反応せしめて、化学式2の化合物が含有するアセト酢酸エステル基(ケト体)の互変異性体であるエノール体の水酸基をトリアルキルシリル基で保護することによっても、本発明の式(1)の化合物を製造することができる。なお、上記の方法における反応条件や反応に使用するR13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物の種類等は、前記した式(5)の化合物の製造方法に準ずることができる。
また、得られた式(1)の化合物は、いずれも蒸留によって精製することができる。
【0035】
また、本発明の式(1)の化合物は、アルコール類と反応せしめると、アセト酢酸エステル基のエノール体の水酸基を保護しているトリアルキルシリル基が簡単に脱離し、アセト酢酸エステル基が遊離する。アセト酢酸エステル基が遊離すると、前記のように、金属化合物と容易に配位結合して錯体構造を形成し得るエノール体に互変異性化して、その特性を発揮するようになる。なお、このような本発明の式(1)の化合物の化学的な性質については、式(1)の化合物と適切に選択したアルコール類とを特に制限のない任意の条件で反応せしめると、個々の構造に対応した化学式2の化合物(アセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物)が簡単に得られることによって、明確に説明することができる。例えば、本発明の式(1)の化合物(R1=メチル基、R2=メチル基、n=1)に対して、メタノールを反応させると、対応する化学式2の化合物(R2=メチル基、n=1)が、簡単に合成できる。なお、同時にトリメチルメトキシシランが副生するので、脱シリル反応後に過剰のメタノールと一緒に、濃縮操作によってそれらを除去すれば、純粋な状態の化学式2の化合物(R2=メチル基、n=1)が得られる。上記の反応例については、参考例1に記載した。なお、参考例2には、R1=メチル基、R2=メチル基、n=0の場合の式(1)の化合物に対するメタノールとの反応例を記載した。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例及び参考例によって、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、下記式中、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。
【0037】
[実施例1]
【化12】
アセト酢酸アリルとヘキサメチルジシラザンとを、公知の方法によって反応させて合成したトリメチルシリル化アセト酢酸アリル53.6g(0.25モル、異性体混合物)とPt原子を3.8×10-5モル含有したKarstedt触媒とを、事前に十分に窒素置換した、撹拌機と温度計と水冷コンデンサー及び滴下漏斗を装備した200ミリリットルの反応器に仕込み、油浴にて70℃に調整した。次いで、滴下漏斗を用いて、メチルジメトキシラン23.9g(0.225モル)を、70〜80℃の温度範囲に内温を管理しつつ、3時間で滴下し、滴下終了後更に1時間撹拌して熟成を行った。
次いで、蒸留を行い、沸点145〜153℃(0.6kPa)の留分56.8g(異性体混合物)を分取した。ガスクロマトグラフィーで留分の組成を分析したところ、純度98.3%(二種の異性体の総和)であり、二種の異性体のGC%比率は12.5%/85.8%であった。また、収率はメチルジメトキシランに対して、78%であった。
【0038】
また、上記留分のIRスペクトル(図1)、GC−MSスペクトル(図2)、プロトンNMR(図3)(溶媒:重クロロホルム)を測定し、目的物であることを確認した。なお、プロトンNMRの結果の解析より、二種の異性体のモル比は14/86と推定された。
【0039】
[参考例1]
【化13】
事前に十分に窒素置換した、撹拌機と温度計と水冷コンデンサー及び滴下漏斗を装備した100ミリリットルの反応器に、実施例1で合成した化合物16.0g(0.05モル)を仕込み、次いでメタノール3.2g(0.1モル)を仕込み、室温条件(15〜30℃)で撹拌した。約20時間撹拌後、低沸点成分(過剰メタノール、トリメチルメトキシシラン)を10kPa、65℃の減圧条件を保持することにより除去したところ、ガスクロマトグラフィーによる組成分析にて、純度97%(ケト体及びエノール体の混合状態で検出)のアセト酢酸3−メチルジメトキシシリルプロピルを得ることができた。
【0040】
[実施例2]
【化14】
トリメチルシリル化アセト酢酸アリル53.6g(0.25モル、異性体混合物)とPt原子を1.3×10-5モル含有したKarstedt触媒とを、事前に十分に窒素置換した、撹拌機と温度計と水冷コンデンサー及び滴下漏斗を装備した200ミリリットルの反応器に仕込み、油浴にて70℃に調整した。次いで、滴下漏斗を用いて、メチルジエトキシラン30.2g(0.225モル)を、70〜80℃の温度範囲に内温を管理しつつ、4時間で滴下し、滴下終了後更に3時間撹拌して熟成を行った。
次いで、蒸留を行い、沸点119〜134℃(0.1kPa)の留分64.9g(異性体混合物)を分取した。ガスクロマトグラフィーで留分の組成を分析したところ、純度98.8%(二種の異性体の総和)であり、二種の異性体のGC%比率は13.4%/85.4%であった。また、収率はメチルジエトキシランに対して、82%であった。
【0041】
また、上記留分のIRスペクトル(図4)、GC−MSスペクトル(図5)、プロトンNMR(図6)(溶媒:重クロロホルム)を測定し、目的物であることを確認した。なお、プロトンNMRの結果の解析より、二種の異性体のモル比は15/85と推定された。
【0042】
[実施例3]
【化15】
アセト酢酸アリル213.3g(1.5モル)とトリメトキシシラン183.3g(1.5モル)を、Pt原子を4.5×10-5モル含有したKarstedt触媒の存在下にて、公知の方法によって反応させて合成したアセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルの反応液396.6g(主成分の他に、未反応のアセト酢酸アリル、副生物のテトラメトキシシラン、アセト酢酸メチル、1,1−ジメトキシ−2−オキサ−1−シラシクロペンタン等の低沸点化合物を含有し、主成分は70GC%程度)を準備した。
次いで、事前に十分に窒素置換した、撹拌機と温度計と水冷コンデンサー及び滴下漏斗を装備した1リットルの反応器に、ヘキサメチルジシラザン181.6g(1.125モル)及びアセトニトリル241.5gを仕込み、油浴にて80℃の還流状態に調整した。次いで、滴下漏斗を用いて、アセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルの反応液の全量を75〜85℃の還流状態の反応系内に2時間で滴下し、滴下終了後更に80〜90℃の温度範囲で4時間撹拌して熟成を行った。
次いで、蒸留を行い、アセトニトリルと未反応残のヘキサメチルジシラザンを除去後、前記した低沸点化合物を除去し、次いで沸点139〜142℃(0.5kPa)の留分255.5gを分取した。ガスクロマトグラフィーで留分の組成を分析したところ、純度99.2%(二種の異性体の総和)であり、二種の異性体のGC%比率は12.8%/86.4%であった。また、収率はメチルジエトキシランに対して、51%であった。
【0043】
また、上記留分のIRスペクトル(図7)、GC−MSスペクトル(図8)、プロトンNMR(図9)(溶媒:重クロロホルム)を測定し、目的物であることを確認した。なお、プロトンNMRの結果の解析より、二種の異性体のモル比は14/86と推定された。
【0044】
[参考例2]
【化16】
事前に十分に窒素置換した、撹拌機と温度計と水冷コンデンサー及び滴下漏斗を装備した100ミリリットルの反応器に、実施例3で合成した化合物16.8g(0.05モル)を仕込み、次いでメタノール3.2g(0.1モル)を仕込み、室温条件(15〜30℃)で撹拌した。約20時間撹拌後、低沸点成分(過剰メタノール、トリメチルメトキシシラン)を10kPa、65℃の減圧条件を保持することにより除去したところ、ガスクロマトグラフィーによる組成分析にて、純度97%(ケト体及びエノール体の混合状態で検出)のアセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルを得ることができた。
【0045】
[参考例3]
【化17】
アセト酢酸アリル71.1g(0.5モル)とトリメトキシシラン61.1g(0.5モル)とを、Pt原子を1.5×10-5モル含有したKarstedt触媒の存在下にて、公知の方法によって反応させて合成したアセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルの反応液123.6g(未反応のアセト酢酸アリル、副生物のテトラメトキシシラン、アセト酢酸メチル、1,1−ジメトキシ−2−オキサ−1−シラシクロペンタン等を含有し、主成分は70GC%程度)を準備した。
次いで、減圧蒸留装置にて、上記反応液より主成分の蒸留単離精製を試みたところ、主成分よりも低沸点の成分が主体の留分1(26.5g)を、0.3kPaの減圧条件で、塔頂温62℃、釜温125℃になるまで抜いた後に、下記表1に示す減圧条件によって、順々に留分を抜き出して行ったが、留分組成中の主成分濃度は非常に少なく、留分組成の大半は下記の反応式1で表される分解反応の副生物であるアセト酢酸メチル及び1,1−ジメトキシ−2−オキサ−1−シラシクロペンタンであった。また、蒸留釜残渣は、蒸留終了直後は濃褐色オイル状であったが、冷却するとゼラチン状の流動性のない状態となった。
【0046】
【表1】
副生物1:アセト酢酸メチル
副生物2:1,1−ジメトキシ−2−オキサ−1−シラシクロペンタン
主成分:アセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピル
【0047】
上記の結果は、化学式2の化合物(R2=メチル基、n=0)を蒸留での精製を試みても、操作中に下記反応式1の分解反応が起こるため、蒸留が困難であることを説明するものである。
【化18】
【0048】
[実施例4]
【化19】
アセト酢酸アリル113.8g(0.8モル)とトリエトキシシラン131.4g(0.8モル)とを、Pt原子を2.4×10-5モル含有したKarstedt触媒の存在下にて、公知の方法によって反応させて合成したアセト酢酸3−トリエトキシシリルプロピルの反応液231.3g(未反応のアセト酢酸アリル、副生物のテトラエトキシシラン、アセト酢酸エチル、1,1−ジエトキシ−2−オキサ−1−シラシクロペンタン等を含有し、主成分は70GC%程度)を準備した。
次いで、事前に十分に窒素置換した、撹拌機と温度計と水冷コンデンサー及び滴下漏斗を装備した500ミリリットルの反応器に、ヘキサメチルジシラザン96.8g(0.6モル)及びアセトニトリル129.9gを仕込み、油浴にて80℃の還流状態に調整した。次いで、滴下漏斗を用いて、アセト酢酸3−トリエトキシシリルプロピルの反応液の全量を75〜85℃の還流状態の反応系内に2時間で滴下し、滴下終了後更に80〜90℃の温度範囲で3時間撹拌して熟成を行った。
次いで、蒸留を行い、アセトニトリルと未反応残のヘキサメチルジシラザンを除去後、前記した低沸点化合物を除去し、次いで沸点144〜146℃(0.2kPa)の留分125.2gを分取した。ガスクロマトグラフィーで留分の組成を分析したところ、純度99.0%(二種の異性体の総和)であり、二種の異性体のGC%比率は13.0%/86.0%であった。また、収率はメチルジエトキシランに対して、41%であった。
【0049】
また、上記留分のIRスペクトル(図10)、GC−MSスペクトル(図11)、プロトンNMR(図12)(溶媒:重クロロホルム)を測定し、目的物であることを確認した。なお、プロトンNMRの結果の解析より、二種の異性体のモル比は14/86と推定された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1で得られた目的化合物のIRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られた目的化合物のマススペクトル(分子量320)を示し、(A)は異性体1、(B)は異性体2のマススペクトルである。
【図3】実施例1で得られた目的化合物のプロトンNMRである。
【図4】実施例2で得られた目的化合物のIRスペクトルである。
【図5】実施例2で得られた目的化合物のマススペクトル(分子量348)を示し、(A)は異性体1、(B)は異性体2のマススペクトルである。
【図6】実施例2で得られた目的化合物のプロトンNMRである。
【図7】実施例3で得られた目的化合物のIRスペクトルである。
【図8】実施例3で得られた目的化合物のマススペクトル(分子量336)を示し、(A)は異性体1、(B)は異性体2のマススペクトルである。
【図9】実施例3で得られた目的化合物のプロトンNMRである。
【図10】実施例4で得られた目的化合物のIRスペクトルである。
【図11】実施例4で得られた目的化合物のマススペクトル(分子量378)を示し、(A)は異性体1、(B)は異性体2のマススペクトルである。
【図12】実施例4で得られた目的化合物のプロトンNMRである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定化触媒、溶液中からの金属吸着剤及び回収剤の原料、シランカップリング剤、オルガノポリシロキサン組成物やエポキシ樹脂等の硬化触媒や接着助剤、他には、ポッティング剤、コーティング剤、建築用シーリング剤等の原料として有用なトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固定化触媒、溶液中からの金属吸着剤及び回収剤の原料、シランカップリング剤、オルガノポリシロキサン組成物やエポキシ樹脂等の硬化触媒、更には、接着助剤、ポッティング剤、コーティング剤、建築用シーリング剤等の原料として、種々の有機ケイ素化合物が使用されている。中でも、特許文献1(特開昭63−250390号公報)に包含される化学式2のアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物は、その官能基であるアセト酢酸エステル基(ケト体)が、互変異性化によって、金属化合物と容易に配位結合して錯体構造を形成し得るエノール体に転換することから、上記の用途に対して良好な特性を有していることが知られている。
【化1】
(なお、化学式2中、R1、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。nは0,1又は2である。)
【0003】
しかし、化学式2の化合物は、下記に示すような互変異性化(アセト酢酸エステル基(ケト体)のエノール体への転化)によって、活性なプロトンを有する水酸基を構造中に有することになるため、活性なプロトンと反応するような化合物と混合すると、徐々に反応してしまうことから、混合時の安定性が悪いという問題があった。
【化2】
【0004】
また、化学式2の化合物は、蒸留による精製が困難であることも問題であった。揮発性の有機ケイ素化合物を精製する場合には、蒸留操作を行うことが一般的であるが、化学式2の化合物を蒸留すると、蒸留操作中に以下の反応式1の分解反応が起こってしまい、主成分が得られない場合があった。
【化3】
【0005】
以上より、活性なプロトンを有する水酸基が保護されていて、安定性が高く、かつ蒸留による精製も可能な性状であるアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物が強く望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−250390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、活性なプロトンを有する水酸基が保護されていて、安定性が高く、かつ蒸留による精製も可能な性状であるアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、後述する方法によりこれまでに知られていない新規な下記一般式(1)のトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物を開発したところ、驚くべきことに、この化合物は、アセト酢酸エステル基を構造内に含有しているにも拘わらず、トリアルキルシリル基ですべてのアセト酢酸エステル基のエノール体の水酸基を保護しているために、混合時の安定性を低下させる原因であった活性なプロトンを保有しておらず、かつ蒸留による精製も可能な性状であることを見出した。また、本発明の化合物を、アルコール類と反応せしめると、簡単に前記のトリアルキルシリル基が外れて、各種性能を発揮するアセト酢酸エステル基が遊離することを見出した。本発明者らは、これらの驚くべき化学的性状を有する新規な一般式(1)の化合物の知見により、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明は、アセト酢酸エステル基(エノール体)の活性なプロトンを有する水酸基が保護されていて、安定性が高く、かつ蒸留による精製も可能な性状であり、また、アルコール類と反応せしめると、簡単にアセト酢酸エステル基の保護シリル基が外れて、アセト酢酸エステル基が遊離するという性状の新規な下記一般式(1)のトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物を提供することを特徴とする。
【化4】
(式中、R1、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。nは0,1又は2である。)
【0010】
また、本発明は、アセト酢酸アリルと、R13Si(但し、R1は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるトリアルキルシリル基を有するシラン化合物とを反応させて下記一般式(5)
【化5】
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基である。)
で表される化合物を合成し、次いでこの式(5)の化合物と下記一般式(6)
HSi(CH3)n(OR2)3-n (6)
(式中、R2は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0,1又は2である。)
で表されるヒドロアルコキシシランとを、白金含有触媒の存在下にて付加反応させることを特徴とする上記一般式(1)で表されるトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の新規なトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物は、アセト酢酸エステル基(エノール体)の活性なプロトンを有する水酸基が保護されているため、活性なプロトンと反応するような化合物と混合しても安定性が高い。また、蒸留による精製が可能であり、蒸留によって未反応原料、反応副生物及び白金含有触媒等の残存のない純粋な主成分が得られる。また、アルコール類と反応せしめると、簡単にアセト酢酸エステル基の保護シリル基が外れて、アセト酢酸エステル基が遊離し、その特性を発揮するようになる。また、その製造方法も穏和な条件及び簡便な操作で実施できるため、非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で示される。
【化6】
上記式中、R1、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよく、具体的な例を挙げれば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等がある。なお、R1は、3つともメチル基もしくはエチル基、あるいはそのうち2つがメチル基で残る1つがt−ブチル基であることが好ましい。また、R2はメチル基もしくはエチル基が好ましい。nは0,1又は2であり、0又は1が好ましい。
【0013】
なお、上記式(1)の化合物は、下記の2つの構造異性体(一般式(3)及び(4))からなっている混合物であり、式(1)の表記は、両者の混合物であることを意味するものである。なお、これらの異性体の比率は、ガスクロマトグラフィーもしくはNMR等の手段により求めることができるが、通常、その比率は、モル比として0〜30/70〜100と推定される。
【0014】
【化7】
【0015】
本発明に係わる一般式(1)の化合物の構造を具体的に示せば、以下の例が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、いずれも、前記したように、2つの構造異性体の混合物である。
下記式中、Meはメチル基、Etはエチル基、t−Buはtert−ブチル基、i−Prはイソプロピル基を示す。
【0016】
【化8】
【0017】
【化9】
【0018】
式(1)の化合物の製造方法は、いくつかあるが、そのうちの1つとしては、アセト酢酸アリルと、R13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物(なお、式中、R1は、前記と同じ)とを反応せしめることにより、アセト酢酸アリル(ケト体)の互変異性体であるエノール体の水酸基をトリアルキルシリル基で保護せしめた下記一般式(5)の化合物を合成し、次いで、この一般式(5)の化合物と下記一般式(6)のヒドロアルコキシシランとを、白金含有触媒の存在下にて、付加反応(ヒドロシリル化反応)せしめることによって合成することができる。
【化10】
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基である。)
HSi(CH3)n(OR2)3-n (6)
(式中、R2は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0,1又は2である。)
【0019】
なお、上記式(5)の化合物は、前記式(1)の化合物と同様に、下記の2つの構造異性体からなっている混合物であり、式(5)の表記は、両者の混合物であることを意味するものである。なお、これらの異性体の比率は、ガスクロマトグラフィーもしくはNMR等の手段により求めることができるが、通常、その比率は、モル比として0〜30/70〜100と推定される。
【0020】
【化11】
【0021】
上記式(5)の化合物を、アセト酢酸アリルとR13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物(なお、式中、R1は前記と同じ)との反応によって合成する場合、R13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物は、具体的には、以下の例を挙げることができる。ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、1,3−ジ−t−ブチルテトラメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン等。なお、一般的には、ヘキサメチルジシラザン又はトリメチルクロロシランが、安価、工業的な規模での大量入手が可能、反応性がよい、取り扱いが容易等の点から選ばれることが多い。
【0022】
上記式(5)の化合物の製造方法、即ちアセト酢酸アリルとR13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物との反応(アセト酢酸アリルの互変異性体のエノール体の水酸基をR13Siで表されるトリアルキルシリル基で保護する反応)については、従来公知の手段及び一般的な反応条件を用いることができ、特に制限はない。好ましい一例を挙げれば、例えばアセト酢酸アリルとヘキサメチルジシラザンとを反応せしめて、脱アンモニア化することにより、トリメチルシリル基でアセト酢酸アリルの互変異性体のエノール体の水酸基を保護した構造の式(5)の化合物を合成することができる。なお、R13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物は、アセト酢酸アリル1モルに対し、0.5〜2モルの割合で用いることが好ましい。また、別の製法の例としては、例えばアセト酢酸アリルとトリメチルクロロシランとを、モル比1〜4にてピリジンやトリエチルアミン等の塩酸捕捉剤としての3級アミン類の存在下にて反応させることによっても、同じ構造の式(5)の化合物を合成することができる。
【0023】
上記式(5)の化合物と上記式(6)のヒドロアルコキシシランとを、白金含有触媒の存在下にて、付加反応(ヒドロシリル化反応)せしめる方法については、従来公知の手段及び一般的な反応条件を用いることができ、特に制限はないが、好ましい条件を以下に記載する。
【0024】
式(6)のヒドロアルコキシシランは、R2は炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。nは0,1又は2であり、0又は1が好ましい。
【0025】
なお、ヒドロアルコキシシランの具体的な例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン等を挙げることができる。
【0026】
白金含有触媒は、特に種類の制限はなく、塩化白金酸(水和物でもかまわない)、speier触媒(塩化白金酸のアルコール溶液から調製されるもの)、Karstedt触媒(白金−ビニルシロキサン錯体を含有するもの)、白金担持触媒(活性炭やシリカゲル等の担体に白金が担持されたもの)、シクロオクタジエンもしくはエチレンもしくはトリフェニルホスフィン等の各種配位子を含有する種々の白金錯体等から選ぶことができる。
【0027】
白金含有触媒の使用量は、任意であるが、式(5)の化合物1モルに対して、含有される白金原子が1×10-7〜1×10-3モルが好ましく、より好ましくは約1×10-6〜1×10-4モルの使用量がよい。使用量が1×10-7モル未満であると付加反応が起こりにくい場合があり、1×10-3モルを超えると経済的に不利になる場合がある。
【0028】
式(5)の化合物と式(6)のヒドロアルコキシシランのモル比は、任意であるが、好ましくは、1:2〜2:1の範囲の中で選べばよく、範囲外の条件では、経済的に不利な場合がある。
【0029】
反応原料の混合方法には、特に制限はなく、回分式、半回分式もしくは連続式のいずれの方式を用いても構わない。また、白金含有触媒の導入方法、式(5)の化合物もしくは式(6)のヒドロアルコキシシランの混合順序や混合方法も特に制限を有しない。好ましい例を挙げれば、式(5)の化合物に白金含有触媒を共存させた混合物に、式(6)のヒドロアルコキシシランを滴下していく方法、あるいは式(6)のヒドロアルコキシシランに白金含有触媒を共存させた混合物に、式(5)の化合物を滴下していく方法等がある。
【0030】
また、上記付加反応は、反応溶媒を基本的には必要としないが、撹拌性を高めるために、反応器の容量に対して、液量を増加させる場合等の種々の必要に応じて、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ペンタン、ヘキサン、イソオクタン、デカン等の飽和脂肪族系炭化水素、ブチルエーテルやTHF(テトラヒドロフラン)等のエーテル系化合物等の溶媒を用いることができる。また、これらの溶媒は、1種単独又は2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。但し、アルコール類のように活性なプロトンを有している溶媒は、式(5)の化合物及び式(1)の化合物の保護シリル基(トリアルキルシリル基)が無用に脱離してしまうため、使用することはできない。
【0031】
また、上記付加反応は、反応速度を向上させる目的や反応選択性を制御する目的のために、各種のアミン類、アンモニウム塩類、ホスフィン類、ホスホニウム塩類、無機塩類、スルフィド類もしくは非プロトン性極性溶剤等を補触媒として添加することもかまわない。なお、添加量は付加反応そのものの反応性が著しい阻害を受けなければ特に制限はなく、添加物は1種単独又は2種以上の組み合わせでもかまわない。また、付加反応を活性化する手段として知られている適量の酸素を含む乾燥空気もしくは窒素やアルゴン等の不活性気体を反応系に吹き込む手段を実施することもできる。
【0032】
反応温度は、特に制限はないが、好ましくは0〜150℃、特に好ましくは10〜100℃がよい。反応温度が150℃より高いと、副生物が増加する場合がある。一方、反応温度が0℃より低いと、反応速度が遅くなり、経済的に不利になる場合がある。
上記の付加反応における圧力条件は、特に制限がなく、常圧もしくは加圧で実施できるが、一般的には常圧で十分である。
【0033】
また、上記の付加反応においては、雰囲気は、水分の混入を避ける目的で、窒素やアルゴン等の不活性ガスで置換され、同様のガスでシールされていることが好ましい。反応系に水分が混入すると、式(5)の化合物及び式(1)の化合物の保護シリル基(トリアルキルシリル基)が脱離もしくは式(6)のヒドロアルコキシシランもしくは式(1)の化合物のアルコキシシリル基が加水分解して、純度や反応収率が低下する場合がある。なお、反応系に含まれる水分量は、1,000ppm以下が好ましく、200ppm以下であればより好ましく、ゼロに近い程より望ましい結果を与える。
【0034】
次に、別の経路で、式(1)の化合物を製造する方法を説明する。前記の化学式2の化合物とR13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物(なお、式中、R1は、前記と同じ)とを反応せしめて、化学式2の化合物が含有するアセト酢酸エステル基(ケト体)の互変異性体であるエノール体の水酸基をトリアルキルシリル基で保護することによっても、本発明の式(1)の化合物を製造することができる。なお、上記の方法における反応条件や反応に使用するR13Siで表されるトリアルキルシリル基を含有するシラン化合物の種類等は、前記した式(5)の化合物の製造方法に準ずることができる。
また、得られた式(1)の化合物は、いずれも蒸留によって精製することができる。
【0035】
また、本発明の式(1)の化合物は、アルコール類と反応せしめると、アセト酢酸エステル基のエノール体の水酸基を保護しているトリアルキルシリル基が簡単に脱離し、アセト酢酸エステル基が遊離する。アセト酢酸エステル基が遊離すると、前記のように、金属化合物と容易に配位結合して錯体構造を形成し得るエノール体に互変異性化して、その特性を発揮するようになる。なお、このような本発明の式(1)の化合物の化学的な性質については、式(1)の化合物と適切に選択したアルコール類とを特に制限のない任意の条件で反応せしめると、個々の構造に対応した化学式2の化合物(アセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物)が簡単に得られることによって、明確に説明することができる。例えば、本発明の式(1)の化合物(R1=メチル基、R2=メチル基、n=1)に対して、メタノールを反応させると、対応する化学式2の化合物(R2=メチル基、n=1)が、簡単に合成できる。なお、同時にトリメチルメトキシシランが副生するので、脱シリル反応後に過剰のメタノールと一緒に、濃縮操作によってそれらを除去すれば、純粋な状態の化学式2の化合物(R2=メチル基、n=1)が得られる。上記の反応例については、参考例1に記載した。なお、参考例2には、R1=メチル基、R2=メチル基、n=0の場合の式(1)の化合物に対するメタノールとの反応例を記載した。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例及び参考例によって、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、下記式中、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。
【0037】
[実施例1]
【化12】
アセト酢酸アリルとヘキサメチルジシラザンとを、公知の方法によって反応させて合成したトリメチルシリル化アセト酢酸アリル53.6g(0.25モル、異性体混合物)とPt原子を3.8×10-5モル含有したKarstedt触媒とを、事前に十分に窒素置換した、撹拌機と温度計と水冷コンデンサー及び滴下漏斗を装備した200ミリリットルの反応器に仕込み、油浴にて70℃に調整した。次いで、滴下漏斗を用いて、メチルジメトキシラン23.9g(0.225モル)を、70〜80℃の温度範囲に内温を管理しつつ、3時間で滴下し、滴下終了後更に1時間撹拌して熟成を行った。
次いで、蒸留を行い、沸点145〜153℃(0.6kPa)の留分56.8g(異性体混合物)を分取した。ガスクロマトグラフィーで留分の組成を分析したところ、純度98.3%(二種の異性体の総和)であり、二種の異性体のGC%比率は12.5%/85.8%であった。また、収率はメチルジメトキシランに対して、78%であった。
【0038】
また、上記留分のIRスペクトル(図1)、GC−MSスペクトル(図2)、プロトンNMR(図3)(溶媒:重クロロホルム)を測定し、目的物であることを確認した。なお、プロトンNMRの結果の解析より、二種の異性体のモル比は14/86と推定された。
【0039】
[参考例1]
【化13】
事前に十分に窒素置換した、撹拌機と温度計と水冷コンデンサー及び滴下漏斗を装備した100ミリリットルの反応器に、実施例1で合成した化合物16.0g(0.05モル)を仕込み、次いでメタノール3.2g(0.1モル)を仕込み、室温条件(15〜30℃)で撹拌した。約20時間撹拌後、低沸点成分(過剰メタノール、トリメチルメトキシシラン)を10kPa、65℃の減圧条件を保持することにより除去したところ、ガスクロマトグラフィーによる組成分析にて、純度97%(ケト体及びエノール体の混合状態で検出)のアセト酢酸3−メチルジメトキシシリルプロピルを得ることができた。
【0040】
[実施例2]
【化14】
トリメチルシリル化アセト酢酸アリル53.6g(0.25モル、異性体混合物)とPt原子を1.3×10-5モル含有したKarstedt触媒とを、事前に十分に窒素置換した、撹拌機と温度計と水冷コンデンサー及び滴下漏斗を装備した200ミリリットルの反応器に仕込み、油浴にて70℃に調整した。次いで、滴下漏斗を用いて、メチルジエトキシラン30.2g(0.225モル)を、70〜80℃の温度範囲に内温を管理しつつ、4時間で滴下し、滴下終了後更に3時間撹拌して熟成を行った。
次いで、蒸留を行い、沸点119〜134℃(0.1kPa)の留分64.9g(異性体混合物)を分取した。ガスクロマトグラフィーで留分の組成を分析したところ、純度98.8%(二種の異性体の総和)であり、二種の異性体のGC%比率は13.4%/85.4%であった。また、収率はメチルジエトキシランに対して、82%であった。
【0041】
また、上記留分のIRスペクトル(図4)、GC−MSスペクトル(図5)、プロトンNMR(図6)(溶媒:重クロロホルム)を測定し、目的物であることを確認した。なお、プロトンNMRの結果の解析より、二種の異性体のモル比は15/85と推定された。
【0042】
[実施例3]
【化15】
アセト酢酸アリル213.3g(1.5モル)とトリメトキシシラン183.3g(1.5モル)を、Pt原子を4.5×10-5モル含有したKarstedt触媒の存在下にて、公知の方法によって反応させて合成したアセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルの反応液396.6g(主成分の他に、未反応のアセト酢酸アリル、副生物のテトラメトキシシラン、アセト酢酸メチル、1,1−ジメトキシ−2−オキサ−1−シラシクロペンタン等の低沸点化合物を含有し、主成分は70GC%程度)を準備した。
次いで、事前に十分に窒素置換した、撹拌機と温度計と水冷コンデンサー及び滴下漏斗を装備した1リットルの反応器に、ヘキサメチルジシラザン181.6g(1.125モル)及びアセトニトリル241.5gを仕込み、油浴にて80℃の還流状態に調整した。次いで、滴下漏斗を用いて、アセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルの反応液の全量を75〜85℃の還流状態の反応系内に2時間で滴下し、滴下終了後更に80〜90℃の温度範囲で4時間撹拌して熟成を行った。
次いで、蒸留を行い、アセトニトリルと未反応残のヘキサメチルジシラザンを除去後、前記した低沸点化合物を除去し、次いで沸点139〜142℃(0.5kPa)の留分255.5gを分取した。ガスクロマトグラフィーで留分の組成を分析したところ、純度99.2%(二種の異性体の総和)であり、二種の異性体のGC%比率は12.8%/86.4%であった。また、収率はメチルジエトキシランに対して、51%であった。
【0043】
また、上記留分のIRスペクトル(図7)、GC−MSスペクトル(図8)、プロトンNMR(図9)(溶媒:重クロロホルム)を測定し、目的物であることを確認した。なお、プロトンNMRの結果の解析より、二種の異性体のモル比は14/86と推定された。
【0044】
[参考例2]
【化16】
事前に十分に窒素置換した、撹拌機と温度計と水冷コンデンサー及び滴下漏斗を装備した100ミリリットルの反応器に、実施例3で合成した化合物16.8g(0.05モル)を仕込み、次いでメタノール3.2g(0.1モル)を仕込み、室温条件(15〜30℃)で撹拌した。約20時間撹拌後、低沸点成分(過剰メタノール、トリメチルメトキシシラン)を10kPa、65℃の減圧条件を保持することにより除去したところ、ガスクロマトグラフィーによる組成分析にて、純度97%(ケト体及びエノール体の混合状態で検出)のアセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルを得ることができた。
【0045】
[参考例3]
【化17】
アセト酢酸アリル71.1g(0.5モル)とトリメトキシシラン61.1g(0.5モル)とを、Pt原子を1.5×10-5モル含有したKarstedt触媒の存在下にて、公知の方法によって反応させて合成したアセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピルの反応液123.6g(未反応のアセト酢酸アリル、副生物のテトラメトキシシラン、アセト酢酸メチル、1,1−ジメトキシ−2−オキサ−1−シラシクロペンタン等を含有し、主成分は70GC%程度)を準備した。
次いで、減圧蒸留装置にて、上記反応液より主成分の蒸留単離精製を試みたところ、主成分よりも低沸点の成分が主体の留分1(26.5g)を、0.3kPaの減圧条件で、塔頂温62℃、釜温125℃になるまで抜いた後に、下記表1に示す減圧条件によって、順々に留分を抜き出して行ったが、留分組成中の主成分濃度は非常に少なく、留分組成の大半は下記の反応式1で表される分解反応の副生物であるアセト酢酸メチル及び1,1−ジメトキシ−2−オキサ−1−シラシクロペンタンであった。また、蒸留釜残渣は、蒸留終了直後は濃褐色オイル状であったが、冷却するとゼラチン状の流動性のない状態となった。
【0046】
【表1】
副生物1:アセト酢酸メチル
副生物2:1,1−ジメトキシ−2−オキサ−1−シラシクロペンタン
主成分:アセト酢酸3−トリメトキシシリルプロピル
【0047】
上記の結果は、化学式2の化合物(R2=メチル基、n=0)を蒸留での精製を試みても、操作中に下記反応式1の分解反応が起こるため、蒸留が困難であることを説明するものである。
【化18】
【0048】
[実施例4]
【化19】
アセト酢酸アリル113.8g(0.8モル)とトリエトキシシラン131.4g(0.8モル)とを、Pt原子を2.4×10-5モル含有したKarstedt触媒の存在下にて、公知の方法によって反応させて合成したアセト酢酸3−トリエトキシシリルプロピルの反応液231.3g(未反応のアセト酢酸アリル、副生物のテトラエトキシシラン、アセト酢酸エチル、1,1−ジエトキシ−2−オキサ−1−シラシクロペンタン等を含有し、主成分は70GC%程度)を準備した。
次いで、事前に十分に窒素置換した、撹拌機と温度計と水冷コンデンサー及び滴下漏斗を装備した500ミリリットルの反応器に、ヘキサメチルジシラザン96.8g(0.6モル)及びアセトニトリル129.9gを仕込み、油浴にて80℃の還流状態に調整した。次いで、滴下漏斗を用いて、アセト酢酸3−トリエトキシシリルプロピルの反応液の全量を75〜85℃の還流状態の反応系内に2時間で滴下し、滴下終了後更に80〜90℃の温度範囲で3時間撹拌して熟成を行った。
次いで、蒸留を行い、アセトニトリルと未反応残のヘキサメチルジシラザンを除去後、前記した低沸点化合物を除去し、次いで沸点144〜146℃(0.2kPa)の留分125.2gを分取した。ガスクロマトグラフィーで留分の組成を分析したところ、純度99.0%(二種の異性体の総和)であり、二種の異性体のGC%比率は13.0%/86.0%であった。また、収率はメチルジエトキシランに対して、41%であった。
【0049】
また、上記留分のIRスペクトル(図10)、GC−MSスペクトル(図11)、プロトンNMR(図12)(溶媒:重クロロホルム)を測定し、目的物であることを確認した。なお、プロトンNMRの結果の解析より、二種の異性体のモル比は14/86と推定された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1で得られた目的化合物のIRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られた目的化合物のマススペクトル(分子量320)を示し、(A)は異性体1、(B)は異性体2のマススペクトルである。
【図3】実施例1で得られた目的化合物のプロトンNMRである。
【図4】実施例2で得られた目的化合物のIRスペクトルである。
【図5】実施例2で得られた目的化合物のマススペクトル(分子量348)を示し、(A)は異性体1、(B)は異性体2のマススペクトルである。
【図6】実施例2で得られた目的化合物のプロトンNMRである。
【図7】実施例3で得られた目的化合物のIRスペクトルである。
【図8】実施例3で得られた目的化合物のマススペクトル(分子量336)を示し、(A)は異性体1、(B)は異性体2のマススペクトルである。
【図9】実施例3で得られた目的化合物のプロトンNMRである。
【図10】実施例4で得られた目的化合物のIRスペクトルである。
【図11】実施例4で得られた目的化合物のマススペクトル(分子量378)を示し、(A)は異性体1、(B)は異性体2のマススペクトルである。
【図12】実施例4で得られた目的化合物のプロトンNMRである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)のトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物。
【化1】
(式中、R1、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。nは0,1又は2である。)
【請求項2】
アセト酢酸アリルと、R13Si(但し、R1は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるトリアルキルシリル基を有するシラン化合物とを反応させて下記一般式(5)
【化2】
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基である。)
で表される化合物を合成し、次いでこの式(5)の化合物と下記一般式(6)
HSi(CH3)n(OR2)3-n (6)
(式中、R2は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0,1又は2である。)
で表されるヒドロアルコキシシランとを、白金含有触媒の存在下にて付加反応させることを特徴とする下記一般式(1)
【化3】
(式中、R1、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。nは0,1又は2である。)
で表されるトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項1】
下記一般式(1)のトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物。
【化1】
(式中、R1、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。nは0,1又は2である。)
【請求項2】
アセト酢酸アリルと、R13Si(但し、R1は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるトリアルキルシリル基を有するシラン化合物とを反応させて下記一般式(5)
【化2】
(式中、R1は炭素数1〜6のアルキル基である。)
で表される化合物を合成し、次いでこの式(5)の化合物と下記一般式(6)
HSi(CH3)n(OR2)3-n (6)
(式中、R2は炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0,1又は2である。)
で表されるヒドロアルコキシシランとを、白金含有触媒の存在下にて付加反応させることを特徴とする下記一般式(1)
【化3】
(式中、R1、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、同一でも異なっていてもよい。nは0,1又は2である。)
で表されるトリアルキルシリル基で保護されたアセト酢酸エステル基含有有機ケイ素化合物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−1255(P2010−1255A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162108(P2008−162108)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
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