説明

トリチウム標識成長ホルモン分泌促進物質MK−0677

本発明は、成長ホルモン分泌促進物質受容体に結合することができる化合物、または成長ホルモン分泌促進物質として活性を有する化合物を同定するために使用することができる、トリチウム標識成長ホルモン分泌促進物質に関する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
成長ホルモンは下垂体から分泌され、成長可能な体の全組織の成長を刺激する。さらに、成長ホルモンは、体の代謝プロセスに対して以下の基本的影響を及ぼすことが知られている:(1)体の全細胞のタンパク質合成速度の増加;(2)体の細胞における炭水化物利用率の減少;(3)遊離脂肪酸の動員およびエネルギーのための脂肪酸の使用の増加。成長ホルモン分泌の不足は、結果として小人症のような様々な医学的障害を生じうる。
【0002】
成長ホルモンを放出するための様々な方法が知られている。例えば、アルギニン、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)、グルカゴン、バソプレシン、およびインスリンのような化学物質により誘導される低血糖は、睡眠および運動のような活動と同様に、おそらくソマトスタチン分泌を減少させるか、または公知の分泌促進物質成長ホルモン放出因子(GRF)もしくは未知の内在性成長ホルモン放出ホルモンもしくはこれらの全ての分泌を増加させるように、視床下部上で何らかの方法で作用することによって、間接的に下垂体から成長ホルモンを放出させる。
【0003】
「成長ホルモン分泌促進物質」(GHS)という用語は、動物における成長ホルモンの放出を直接または間接的に刺激するかまたは増加させる、任意の化合物または作用物質を意味する。成長ホルモン分泌促進物質(特に放射標識を有する成長ホルモン分泌促進物質)は、インビトロで、成長ホルモンの分泌が下垂体レベルでどのように調節されるかについて理解するための特有の手段として有効である。これは、年齢、性、栄養因子、グルコース、アミノ酸、脂肪酸、ならびに絶食および非絶食状態のような、成長ホルモンの分泌に影響を及ぼすと考えられているかまたは知られている、多くの因子の評価における使用を含む。さらに、成長ホルモン分泌促進物質は、他のホルモンが成長ホルモン放出活性をどのように変更するかを評価するのに役立つ。例えば、ソマトスタチンが成長ホルモンの放出を阻害することはすでに証明されている。重要かつ成長ホルモン放出に対するそれらの効果に関して研究を必要とする他のホルモンには以下が含まれる:生殖腺ホルモン、例えばテストステロン、エストラジオール、およびプロゲステロン;副腎ホルモン、例えばコルチゾールおよび他のコルチコイド、エピネフリン、およびノルエピネフリン;膵臓および消化管ホルモン、例えばインスリン、グルカゴン、ガストリン、セクレチン;血管作用性ペプチド、例えばボンベシン、ニューロキニン;ならびに甲状腺ホルモン、例えばサイロキシンおよびトリヨードサイロニン。成長ホルモン分泌促進物質はまた、いくつかの下垂体ホルモン(例えば成長ホルモンおよびエンドルフィンペプチド)による、成長ホルモンの放出を変更させるような下垂体への起こりうる負のまたは正のフィードバック効果を調査するために使用することができる。成長ホルモンの放出を仲介している細胞小器官のメカニズムを解明するために成長ホルモン分泌促進物質を使用することは、特に科学的に重要である。
【0004】
成長ホルモン分泌促進物質として化合物の活性を決定する方法論は、当技術分野で公知である。例えば、エクスビボアッセイは、Smith, et al., Science, 260, 1640-1643 (1993)(本明細書中図2の説明参照)により記載されているが、このアッセイは細胞培養物の使用が必要であり、競合結合活性の指標を与えない。したがって、成長ホルモン分泌促進物質の活性において役割を果たす細胞受容体を同定し、特徴づけるために使用することができる放射性リガンドを開発することが望ましい。成長ホルモン分泌促進物質活性について化合物を試験するためのアッセイにおいて利用可能な、放射性リガンドを有することもまた望ましい。
【0005】
このような研究は通常、高い比活性の放射性リガンドを必要とする。[T]標識または[125I]標識されたGHRP-6由来のペプチドリガンドを用いる結合アッセイを開発するという以前の試みは、限られた成功しか得られていない。R. F. Walker, et al. Neuropharmacol. 989, 28, 1139、およびC. Y. Bowers et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 1991, 178, 31を参照のこと。通常、このようなペプチドリガンドの結合は、低親和性で極めて高性能であった。さらに、結合親和性は、ペプチドの成長ホルモン分泌活性と相関しなかった。結合および成長ホルモン分泌活性の相関の欠如は、比較的低い比活性([T] GHRP-6の場合)および放射性リガンドの非特異的結合特性の結果である可能性が高かった。
【0006】
国際公開公報第9722367号は、内在性の成長ホルモンの放出を刺激し、高い放射化学比活性を有する、[35S]放射標識化合物を提供する。前記化合物は、非ペプチド性(non-peptidal)成長ホルモン分泌促進物質として、国際公開公報第94113696号/欧州特許第0615977号およびProc.Natl.Acad. Sci. USA, 92, 7001-7005 (July 1995)において開示されるスピロ化合物に属する。これらの化合物は、天然または内在性の成長ホルモンの放出を刺激する能力を有する。本明細書において開示される好ましい化合物の中には、高い成長ホルモン分泌活性を有する、N-[1(R)-[(1,2-ジヒドロ-1-メタンスルホニルスピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン]-1t-イル)カルボニル]-2(フェニルメチルオキシ)エチル]-2-アミノ-2-メチルプロパンアミドも存在する。これらの化合物は、非標識化合物として開示される。本発明の関心対象は、スクリーニングアッセイにおいて使用するための、国際公開公報第94113696号/欧州特許第0615977号に記載されているタイプの放射性標識化合物を提供することからなる。通常、100 Ci/mmolを越える比活性が必要である状況で、放射性ヨウ素は、リセプターの研究のために選択される標識である。K. G. McFarthing, Receptor-Ligand Interactions: A Practical Approach; Hulme, E. C., Ed.; Oxford University Press, Oxford, 1992; Chapter 1を参照のこと。しかしながら、ベンジル基のパラ位またはスピロ[3Hインドール-3,4'-ピペリジン]-1'-イル)カルボニル]-2-(フェニルメチル-オキシ)エチル]-2-アミノ-2-メチルプロパンアミドのスピロ-インドールフェニル基の5位における、ハロゲン原子(例えばCl、Br)の取り込みにより、ラット下垂体細胞からの成長ホルモン放出に対する内在性の活性が20分の1未満に低下した。これにより、これらの位置のヨウ素置換(125Iによる置換など)は高い効力のリガンドをもたらさないことが示された。さらに、ヨウ素は親油性が高く、リガンドの親和性をさらに変える可能性もある。親水性(水溶性)の増大は通常、様々なリセプターの作製においてその有用性を厳格に制限することが多い、放射性リガンドの観察される「粘着性」に反比例する。M. W. Cunningham, et al. Radioisotopes in Biology: A Practical Approach; Slater, R. J., Ed.; Oxford University Press, Oxford, 1990; Chapter 6を参照のこと。これを考慮して、メタンスルホンアミド基を有するリガンドは、125Iの同属種(IのX値=1.12)と比較して、低下した親油性(NHSO,CHのX値=-1.18)を示さなければならないことに注意する。C. Hansch, et al. J. Med. Chem. 1973, 16, 1207を参照のこと。さらに、アミノ官能性が生物活性にとって重要であることが分かり、これを広く使われているボルトン-ハンター試薬と結合させることは実行可能な選択肢ではなかった。K. G. McFarthing, Receptor-Ligand Interactions: A Practical Approach; Hulme, E. C., Ed.; Oxford University Press, Oxford, 1992; Chapter 1を参照のこと。
【0007】
国際公開公報第9722367号において、[35S]で高比活性に放射標識された、N-[1(R)-[(1,2-ジヒドロ-1-メタンスルホニルスピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン]-1t-イル)カルボニル]-2-(フェニルメチルオキシ)エチル]-2-アミノ-2-メチルプロパンアミドが得られた。
【0008】
しかしながら、35S標識放射性リガンドの使用における主な不利な点は、短い半減期および廃棄物処理が必要な点である。すでに上記されたように、GHRP-6由来のトリチウム標識ペプチドリガンドを使用する結合アッセイを開発しようとする以前の試みは、限られた成功しか得られなかった。驚くべきことに、本発明者によって、トリス-トリチウム標識-2-アミノ-N-[(1R)-2-[1,2-ジヒドロ-1-(メチルスルホニル)スピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン]-1'-イル]-2-オキソ-1-[(フェニルメトキシ)メチル]エチル]-2-メチル-モノメタンスルホネートは、結合アッセイにおいて、うまく使用できるのに十分な高さの比活性を有しうることが見出された。
【発明の開示】
【0009】
発明の説明
本発明は以下の式の少なくとも一つの化合物を含む、放射標識成長ホルモン分泌促進物質に関する。

式中、
R1からR6は互いに独立にHまたはTであり、R1からR6の少なくとも一つはTである。
【0010】
本明細書において使用される「放射標識成長ホルモン分泌促進物質」という用語は、上記の個々の化合物ならびに上記の化合物の混合物を指す。このように、本発明の放射標識成長ホルモン分泌促進物質はまた、前記化合物1分子につき存在するTの平均数によって特徴づけてもよい。
【0011】
本明細書において使用される「T」という用語は、トリチウム原子を指す。
【0012】
「トリス-トリチウム標識-2-アミノ-N-[(1R)-2-[1,2-ジヒドロ-1-(メチルスルホニル)スピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン]-1'-イル]-2-オキソ-1-[(フェニルメトキシ)メチル]エチル-2-メチル-モノメタンスルホネート」という用語は、Tが平均約3個存在する、上記の放射性リガンドを指す。
【0013】
「MK0677」という用語は、上記の式の未標識化合物を指し、式中、R1からR6は、Hである。本明細書において使用される「T-MK0677」という用語は、本発明のトリチウム放射標識成長ホルモン分泌促進物質を指す。
【0014】
未標識化合物の構造は、欧州特許第0615977号において開示されている。
【0015】
好ましい態様において、上記の放射標識成長ホルモン分泌促進物質は、86.4Ci/mmoleから115.2Ci/mmoleの間の比活性を有する。より好ましい態様では、上記の放射標識成長ホルモン分泌促進物質は、97.5Ci/mmoleの比活性を有する。
【0016】
本発明は、成長ホルモン分泌促進物質受容体に結合することができる化合物を同定するための、上記の放射標識成長ホルモン分泌促進物質の使用を提供する。成長ホルモン分泌促進物質受容体として細胞受容体を同定するための、上記の放射標識成長ホルモンの使用もまた提供される。さらに、上記の放射標識成長ホルモン分泌促進物質は、成長ホルモン分泌促進物質として化合物の活性を同定するために使用することができる。
【0017】
さらに、本発明は以下の式を有する化合物を、X-α-アミノイソ酪酸-[メチルT]と反応させる段階を含む、放射標識成長ホルモン分泌促進物質を合成するプロセスを提供する:

式中、Xは存在する場合はその後除去される保護基として定義され、必要に応じて塩が形成される。
【0018】
本発明はまた、上記のプロセスにより得られる放射標識成長ホルモン分泌促進物質に関する。
【0019】
これに加えて、本発明は、上記の放射標識成長ホルモン分泌促進物質に細胞受容体を接触させる段階、および放射標識成長ホルモン分泌促進物質が結合したかどうかを決定する段階を含む、宿主において発現される細胞受容体を成長ホルモン分泌促進物質受容体として同定する方法に関する。宿主は、成長ホルモン分泌促進物質受容体を発現する可能性のある、組織、初代細胞、または培養細胞でありうる。
【0020】
本発明は、化合物を上述の放射標識成長ホルモン分泌促進物質の存在下で成長ホルモン分泌促進物質受容体を発現する宿主と接触させ、前記化合物が上述の放射標識成長ホルモン分泌促進物質の成長ホルモン分泌促進物質受容体への結合に影響を及ぼすかどうかをモニターする段階を含む、成長ホルモン分泌促進物質受容体に結合することができる化合物を同定するための方法を提供する。宿主は、自然に成長ホルモン分泌促進物質受容体を発現するか、または一過性にもしくは安定して成長ホルモン分泌促進物質受容体でトランスフェクトされる、組織試料、初代細胞、または培養細胞でありうる。細胞をトランスフェクトする方法は当技術分野において既知である(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA)。
【0021】
さらに本発明は、上記の放射標識成長ホルモン分泌促進物質の存在下で、成長ホルモン分泌促進物質受容体を発現する宿主に成長ホルモン分泌促進物質として活性を有する可能性のある化合物を接触させる段階、および成長ホルモン分泌促進物質として活性を有する可能性のある化合物が、上記の放射標識成長ホルモン分泌促進物質の成長ホルモン分泌促進物質受容体への結合に影響を及ぼすかどうかをモニターする段階を含む、成長ホルモン分泌促進物質として化合物の活性を同定する方法も提供する。宿主は、自然に成長ホルモン分泌促進物質受容体を発現するか、または一過性にもしくは安定して成長ホルモン分泌促進物質受容体でトランスフェクトされる、組織試料、初代細胞、または培養細胞であってよい。細胞をトランスフェクトする方法は当技術分野において既知である(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA)。
【0022】
本発明はまた、上記の方法により同定される化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。さらに本発明は、上記の化合物および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物を提供する。
【0023】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書において、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題または合併症のない、ヒトおよび動物の組織と接触しての使用に適する、妥当な損益率に見合った化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために使用される。
【0024】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、親の作用物質がその酸性またはアルカリ性の塩を作製することにより修飾される、同定された作用物質の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例には、アミンのような塩基性残基の無機または有機酸塩、カルボン酸のような酸性残基のアルカリまたは有機塩などが含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩は、従来の非毒性塩、または例えば非毒性の無機もしくは有機酸から形成される、親化合物の第四級アンモニウム塩を含む。例えば、このような従来の非毒性塩には、以下が含まれる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などのような無機酸に由来する塩、および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸(hydroxymaleic)、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、 フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などのような、有機酸から調製される塩。
【0025】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性の部分を含む親作用物質から合成できる。通常、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基型を化学量論量の適当な塩基または酸と、水または有機溶媒中またはそれらの混合物中で反応させることによって調製できる。通常、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水系の媒質が好ましい。適切な塩の一覧は、その開示が参照として本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985, p.1418に見られる。
【0026】
本発明の方法により同定される作用物質は、
(i)作用部位、活性のスペクトルの変更、および/または(ii)効力の改善、および/または(iii)毒性の減少(治療係数の改善)、および/または(iv)副作用の減少、および/または(v)作用開始、効果の持続時間の変更、および/または(vi)動態学的パラメータ(再吸収、分布、代謝、および排出)の変更、および/または(vii)物理化学的パラメータ(溶解度、吸湿性、色、味覚、匂い、安定性、状態)の変更、および/または(viii)全般的な特異性(器官/組織特異性)の改善、および/または(ix)適用形態および経路の最適化を、
(i)カルボキシル基のエステル化、または(ii)炭素酸によるヒドロキシル基のエステル化、または(iii)例えばリン酸塩、ピロリン酸塩、もしくは硫酸塩もしくはヘミコハク酸塩への、ヒドロキシル基のエステル化、または(iv)薬学的に許容される塩類の形成、または(v)薬学的に許容される複合体の形成、または(vi)薬理学的に活性なポリマーの合成、または(vii)親水性部分の導入、または(viii)芳香族または側鎖上の置換基の導入/交換、置換パターンの変更、または(ix) 等配電子のもしくは生物学的等価性の部分の導入による変更、または(x)同族化合物の合成、または(xi)分枝側鎖の導入、または(xii)アルキル置換基の環式類似体への転換、または(xiii)ケタール、アセタールへのヒドロキシル基の誘導体化、または(xiv)アミド、フェニルカルバメートのN-アセチル化、または(xv)マンニッヒ(Mannich)塩基、イミンの合成、または(xvi)シッフ塩基、オキシム、アセタール、ケタール、エノールエステル、オキサゾリジン、チオゾリジン(thiozolidine)、もしくはこれらの組合せへの、ケトンもしくはアルデヒドの変換;および(b)薬学的に許容される担体、または芳香もしくは風味組成物もしくは製品のために許容される担体/希釈液を有する、前記のように変更した製品を製剤化することにより、達成するように変更してもよい。
【0027】
任意の従来の担体材料を利用することができる。担体材料は、経口、経皮、または非経口投与に適する有機または無機の材料でありうる。適切な担体には、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油、ポリアルキレン・グリコール、ワセリンなどが含まれる。さらに、薬学的調製物は、他の薬学的活性のある作用物質を含んでもよい。香料、安定剤、乳化剤、緩衝液などのようなさらなる添加剤を、容認されている調剤の慣例に従って添加できる。
【0028】
本発明はまた、特に以下の実施例に関して実質的に本明細書に記載される、放射標識リガンド、化合物、方法、プロセス、使用、および組成物に関する。
【0029】
実施例:

実施例1.1:4-(2-フルオロ-フェニル)-1-メチル-ピペリジン-4-カルボニトリルの調製

2-フルオロフェニルアセトニトリル(5g、37mmol、1.16当量)のDMSO(75ml)溶液に、激しく攪拌しながらNaH分散(油中で55%、5.92g、148mmol、4.65当量)を加えた。30分後に2,2'-ジクロロ-N-メチルジエチルアミン塩酸塩(6.12g、31.8eq.、1当量)のDMSO(75mL)溶液を滴下しながら加え、混合物を75℃4時間30分撹拌した。次に氷水(300g)を加え、混合物をジエチルエーテルで抽出した。混合したエーテル溶液を、塩酸(2N)と共に振盪した。有機層は廃棄した。水層を炭酸水素ナトリウム(84g)で塩基性化し、ジエチルエーテルで抽出した。溶媒を蒸発させた後、得られた油をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。1つの画分を単離し、蒸発させ、真空乾燥させて、3.0g(43%)の4-(2-フルオロ-フェニル)-1-メチル-ピペリジン-4-カルボニトリルを褐色油として得た。ISP-MS:m/e = 218.1([M]+)。
【0030】
実施例1.2:1'-メチルスピロ(インドリン-3,4'-ピペリジン)の調製

ジメトキシエタン(70mL)中の水素化リチウムアルミニウム(2.09g、55mmol、4.0当量)の冷却懸濁液(0℃)に、乾燥エタノール(7.6mL、165mmol、12当量)をゆっくり加えた。添加に続いて、混合物をゆっくり加熱して還流させた。4-(2-フルオロ-フェニル)-1-メチル-ピペリジン-4-カルボニトリルのジメトキシエタン(30mL)溶液を、30分間かけて加えた。還流は72時間継続させた。反応混合物を室温に冷却し、水(2.2mL)、水酸化ナトリウム水溶液(15%、2mL)、および最後に水(7mL)によって分解した。
【0031】
30分後に、混合物を濾過し、濾過ケークは温かいジクロロメタンで二度洗浄した。濾過ケークは真空乾燥させ、2.12g(76%)の1'-メチルスピロ(インドリン-3,4'-ピペリジン)を黄色の固体として得た。ISP-MS:m/e = 203.1([M+H]+)。
【0032】
実施例1.3:N-メシル-N'-メチルスピロ(インドリン-3,4'-ピペリジン)の調製

ジクロロメタン(40ml)中の1'-メチルスピロ(インドリン-3,4'-ピペリジン)の冷却(0℃)溶液に、ジクロロメタン(10ml)中の塩化メタンスルホン酸を30分以内でゆっくり加えた。0℃で2時間20分後、溶液をジクロロメタン(150mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウム水溶液(250mL)に注ぎ、鹹水で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過した後、真空乾燥させた。2.85 gのN-メシル-N'-メチルスピロ(インドリン-3,4'-ピペリジン)を、黄色の半固体として得た。ISP-MS:m/e = 281.2([M+H]+)。
【0033】
実施例1.4:N-メシル-N'-カルボキシフェノキシスピロ(インドリン-3,4'-ピペリジン)の調製

N-メシル-N'-メチルスピロ(インドリン-3,4'-ピペリジン)およびフェニルクロロフォルメートのジクロロメタン溶液を、20℃で20時間撹拌した。反応混合物を水酸化ナトリウム水溶液(10%)で洗浄し、次に水で洗浄した。濃縮後、フラッシュクロマトグラフィーによって精製を行った。1つの画分を単離し、蒸発させ、真空乾燥させて、3.0gのN-メシル-N'-カルボキシフェノキシスピロ(インドリン-3,4'-ピペリジン)を白色固体として得た。ISP-MS:m/e = 387.2([M+H]+)。
【0034】
実施例1.5:スピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン],1,2-ジヒドロ-1-(メチルスルホニル)の調製

N-メシル-N'-カルボキシフェノキシスピロ(インドリン-3,4'-ピペリジン)(3.0g、7.76mmol)および水酸化カリウム(6.0g、90.9mmol、11.7当量)のエチレングリコール(45ml)溶液を、105分間、窒素下で160℃〜170℃で撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、氷水(400mL)で希釈して、ジクロロメタンで抽出した。有機層は水で洗浄し、真空で濃縮し、1.87gのスピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン],1,2-ジヒドロ-1-(メチルスルホニル)を白色固体として得た。ISP-MS:m/e = 267.2([M+H]+)。
【0035】
実施例1.6:スピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン],1'-[(2R)-2-アミノ-1-オキソ-3-(フェニルメトキシ)プロピル-1.2-ジヒドロ-1-(メチルスルホニル)の調製

水(20mL)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.576g、7.64mmol、1.1当量)、および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.02g、7.57mmol、1.09当量)、およびBoc-O-ベンジル-D-セリン(2.26g、7.64mmol、1.10当量)を、スピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン],1,2-ジヒドロ-1-(メチルスルホニル)(1.85g、6.94mmol)の酢酸イソプロピル溶液(50mL)に加えた。混合物を20℃で5時間撹拌した後、濾過した。
【0036】
固体は濾過し、酢酸イソプロピル(30mL)で洗浄した。水層を分離し、有機相を水酸化ナトリウム水溶液(1M、30mL)、塩酸水溶液(0.5M、2×30mL)、および炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄した。有機層を蒸発させ、3.94gの明るい白色固体を得た。この固体をエタノール(16mL)で希釈した。メタンスルホン酸(1.35mL、20.8mmol、3.0当量)を加えた。混合物は、7.5時間40℃に温めた。
【0037】
水(50mL)を加え、混合物を30分間5℃に冷却し、濾過した。pHは、水酸化ナトリウム水溶液(3M、7.5mL)を加えてpH>12に調整した。混合物を酢酸イソプロピルで抽出した。濃縮後、粗混合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。1つの画分を回収し、蒸発させ、真空乾燥させて、2.32gのスピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン],1'-[(2R)-2-アミノ-1-オキソ-3-(フェニルメトキシ)プロピル]-1,2-ジヒドロ-1-(メチルスルホニル)を白色固体として得た。ISP-MS:m/e = 444.2([M+H]+)。
【0038】
実施例1.7:トリス-トリチウム標識2-アミノ-N-[(1R)-2-[1,2-ジヒドロ-1-(メチルスルホニル)スピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン-1'-イル]-2-オキソ-1-[(フェニルメトキシ)メチル]エチル]-2-メチル-モノメタンスルホネートの調製

式中、R1からR6は互いに独立にHまたはTである。
【0039】
88.51mCiのN-Boc-α-アミノイソ酪酸-[メチル-T](lOOCi/mmole、International Isotopes Clearing House, Inc.、Leawood、Kansas USA)のエタノール溶液を濾過し、0.3mLの反応器に移した。溶媒はアルゴン下で蒸発させた。N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.206mg)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.135mg)を、スピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン],1'-[(2R)-2-アミノ-1-オキソ-3-(フェニルメトキシ)プロピル]-1,2-ジヒドロ-1-(メチルスルホニル)(0.444mg)の酢酸イソプロピル溶液に加えた。水を加え(13.5μL)、混合物を2時間室温で激しく撹拌した。
【0040】
反応混合物を酢酸エチルで希釈し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄した。有機溶液は硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒は真空で蒸発させた。メタンスルホン酸のエタノール溶液(0.4mL、5% v/v)を加えた。この溶液を40℃で一晩撹拌した。
【0041】
上記と同じ処理を47.9mCiの所望の生成物に対して行い、HPLCによる77%の放射化学的純度にした。
【0042】
HPLCによる精製(カラム:Zorbax Bonus RP 5μm)により、17.78mCiのトリス-トリチウム標識-2-アミノ-N-[(1R)-2-[1,2-ジヒドロ-1-(メチルスルホニル)スピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン]-1'-イル]-2-オキソ-1-[(フェニルメトキシ)メチル]エチル]-2-メチル-モノメタンスルホネートを、HPLCによる99.5%の放射化学的純度で得た。
【0043】
固体の反応産物の比活性は、97.5 Ci/mmole(質量分析法により測定、図1参照)であった。
【0044】
実施例2:結合アッセイ
実施例2.1:膜調製
ヒト胚腎臓HEK 293(EBNA)細胞は懸濁液中で増殖させ、以前に記載された方法に従ってトランスフェクトした(Schlaeger and Christensen, Cytotechnology, 30, 71-83, 1999)。細胞を500rpmで10分間遠心分離し、PBS-0.7mM EDTA/(4℃)で一回洗浄し、2ml/g細胞のPBS-EDTA-PI中(プロテアーゼ阻害剤カクテルと共に)に再懸濁した。細胞は、Ultra Turax level greenを用いて30秒中断しながら3×15秒間氷上で破壊した。破片を取り除くために、2000rpmで20分間Sorvall SS34ローター中で懸濁液を遠心分離した。上清を回収し、20000rpmで40分間遠心分離した。沈殿物をPBS-EDTA中に再懸濁した。受容体密度は、T-MK0677を用いる飽和結合アッセイにより、4.9pmol/mgタンパク質と確認された。
【0045】
実施例2.2:結合アッセイ
0.1〜2μg/ウェルになるよう、結合緩衝液(25mM Hepes、pH 7.4、25mM MgC12、1mM CaCl2、0.1%BSA、0.03%バシトラシン(Bacitracine、プロテアーゼ阻害剤)中で膜を再懸濁した。
【0046】
結合緩衝液、T-MK0677(Amershamから入手、10mM、97.5Ci/mmol、終濃度10nM)、未標識リガンド(終濃度1μM)、および再懸濁した膜(終濃度0.5μg/ウェル)を、96ウェルマイクロタイタープレート(Corning 3600 non-binding surfaces)に、最終的に200μl/ウェルの量で加えた。混合物を20℃で60分間インキュベートした。
【0047】
フィルタープレート(Packard GF/B unifilter plate)をPBS中の50μL/ウェルの0.5%ポリエチレンイミン(PEI)で15分間処理した。結合混合物はフィルタープレートを通して濾過し、フィルタープレートは氷冷したPBSで3回洗浄した。次にフィルタープレートを、予熱したインキュベーター中で50分間50℃で乾燥させた。次に1ウェルにつき50μLのMicroscint Oを加え、T崩壊をPackard Instrumentsのtopcountでカウントした。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】最終産物である、トリス-トリチウム標識-2-アミノ-N-[(1R)-2-[1,2-ジヒドロ-1-(メチルスルホニル)スピロ[3H-インドール-3,4'-ピペリジン]-1'-イル]-2-オキソ-1-[(フェニルメトキシ)メチル]エチル]-2-メチル-モノメタンスルホネートの質量分析の結果を示す。[3H]という用語はトリチウム(T)を指す。
【図2】Aは、ヒト胚腎臓 HEK 293(EBNA)細胞膜に対するT-MK0677の結合曲線を示す。[3H]という用語はトリチウム(T)を指す。Bは、異なる成長ホルモン分泌促進物質受容体アンタゴニストによる、ヒト胚腎臓HEK 293(EBNA)細胞膜へのT-MK0677の結合の競合を示す。[3H]という用語はトリチウム(T)を指す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の少なくとも一つの化合物を含む、放射標識成長ホルモン分泌促進物質:

式中、R1からR6は互いに独立にHまたはTであり、R1からR6の少なくとも1つはTである。
【請求項2】
比活性が86.4Ci/mmoleから115.2Ci/mmoleの間である、請求項1記載の放射標識成長ホルモン分泌促進物質。
【請求項3】
比活性が97.5Ci/mmoleである、請求項2記載の放射標識成長ホルモン分泌促進物質。
【請求項4】
成長ホルモン分泌促進物質受容体に結合することができる化合物を同定するための、請求項1から3のいずれか一項記載の放射標識成長ホルモン分泌促進物質の使用。
【請求項5】
成長ホルモン分泌促進物質受容体として細胞受容体を同定するための、請求項1から3のいずれか一項記載の放射標識成長ホルモン分泌促進物質の使用。
【請求項6】
成長ホルモン分泌促進物質として化合物の活性を同定するための、請求項1から3のいずれか一項記載の放射標識成長ホルモン分泌促進物質の使用。
【請求項7】
以下の式を有する化合物をX-α-アミノイソ酪酸-[メチル-T]と反応させる段階を含む、放射標識成長ホルモン分泌促進物質を合成するプロセス:

式中、Xは、存在する場合はその後除去される保護基として定義され、塩は必要に応じて形成される。
【請求項8】
細胞受容体を 成長ホルモン分泌促進物質受容体として同定する方法であって、成長ホルモン分泌促進物質受容体を発現する可能性のある宿主を請求項1から3のいずれか一項記載の放射標識成長ホルモン分泌促進物質と接触させる段階、および結合が生じたかどうかを決定する段階を含む方法。
【請求項9】
成長ホルモン分泌促進物質受容体に結合することができる化合物を同定するための方法であって、請求項1から3のいずれか一項記載の放射標識成長ホルモン分泌促進物質の存在下で、成長ホルモン分泌促進物質受容体を発現する宿主と該化合物を接触させる段階、および該化合物が、請求項1から3のいずれか一項記載の放射標識成長ホルモン分泌促進物質の成長ホルモン分泌促進物質受容体への結合に影響を及ぼすかどうかをモニターする段階を含む方法。
【請求項10】
成長ホルモン分泌促進物質として化合物の活性を同定するための方法であって、請求項1から3のいずれか一項記載の放射標識成長ホルモン分泌促進物質の存在下で、成長ホルモン分泌促進物質として活性を有する可能性のある化合物を、成長ホルモン分泌促進物質受容体を発現する宿主と接触させる段階、および成長ホルモン分泌促進物質として活性を有する可能性のある該化合物が、請求項1から3のいずれか一項記載の放射標識成長ホルモン分泌促進物質の成長ホルモン分泌促進物質受容体への結合に影響を及ぼすかどうかをモニターする段階を含む方法。
【請求項11】
請求項9または10のいずれか一項記載の方法により同定される化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
請求項11記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項13】
特に以下の実施例に関して実質的に本明細書に記載される、放射標識リガンド、化合物、方法、プロセス、使用、および組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−526877(P2007−526877A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515984(P2006−515984)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006567
【国際公開番号】WO2005/000362
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】