説明

トリム部分のための表面装飾とその製造方法

【解決手段】本発明は、カバー部品、特に自動車用の車内トリム部分、の装飾に関し、特にキャストスキン(4)にて形成されるものに関する。この表面装飾は、キャストスキン(6)にて形成される表面装飾の領域に隣接するエッジ(6)を有する装飾挿入体(5)から構成される。装飾挿入体(5)のエッジ(6)は、キャストスキン(4)にて囲まれる。また本発明は、このような表面装飾を製造するための方法、及び、この表面装飾を製造するための鋳造用具に関する。本発明によれば、高い審美性を有するトリム部分を簡易に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主請求項の前段部にあるように、トリム部分、特に自動車用の車内トリム部分のための表面装飾と、請求項15の前段部にあるように、表面装飾を製造する方法と、請求項28の前段部にあるように、この表面装飾を製造するための鋳造用具と、に関する。
【背景技術】
【0002】
トリム部分の表面装飾として、キャストスキンを使用することが知られており、このキャストスキンは、通常、上側具と下側具とからなる鋳造用具にポリウレタンを充填することによって製造される。トリム部分は、このキャストスキンを典型的には同様にポリウレタンでリアフォームすることによる最新技術によって形成され、このキャストスキンは支持体と接続される。特に自動車の車内トリム部分として応用されるトリム部分は、労力が少なく製造コストが安いという特徴とすると共に、表面装飾としてキャストスキンを使用することで、外観的にも良好に設計できることを特徴とする。よって、キャストスキンに所定のきめ(質感)及び色を施すという点で、様々なタイプの表面を作製することができるが、表面は依然としてキャストスキンに用いる材料、例えばポリウレタン、によって特徴づけられる。したがって、公知のタイプの表面装飾を有するトリム部分の外観側の表面を総合的に設計することには限界があり、例えば自動車内部の設計等に美観の要求が与えられると、直ちに不利となる可能性がある。
【0003】
したがって本発明の目的は、表面装飾とそれに対応する製造方法を開発することであり、表面装飾は、より柔軟であると共に最新技術に比べてより多大な美観の要求を満たし、また、より精製された材料を排除しない表面設計を含む一方で、その製造方法は既述の最新技術とほぼ同等の簡素さをとどめるものである。
【0004】
この発明によれば、この課題が、主請求項の特徴を、この主請求項の前提部の特徴、請求項15に記述され分類された特徴を有する方法、さらには請求項28の特徴を有する鋳造用具によって解決される。この発明の付加的な設計やさらなる改良については、従属請求項の特徴から推論される。
【0005】
第1に、トリム部分の外観側面の審美性を高めるための表面設計は、表面装飾が、キャストスキンよりも洗練された材質、少なくとも改良された光学的外観を有するもの、例えば、革、布地(織布の如き織物材料、人工及び又は天然の繊維の編物)、または、PVCのようなポリマー材料から構成され、キャストスキンによって形成される表面装飾の領域を囲むエッジを有することにより、解決される。エッジがキャストスキンによって囲まれ、このためにエッジがキャストスキンによって周縁を枠取りされ、エッジにおいてキャストスキンが装飾インレーに対して両面で接触し、キャストスキンによって形成された領域に対して装飾インレーが簡潔で審美的に優れた状態で接続される一方で、安定的で確実に接続される。このように信頼性のある接続を行うことで、上記説明した装飾表面は、従来のような、キャストスキンのみから構成される単一表面装飾と同様の方法で、トリム部分に適用できる。
【0006】
上記説明したように、装飾インレーを上側具と下側具を備える鋳造用具に適用するための、表面装飾の製造方法は、鋳造用具の上側具と下側具との間に形成されるキャストスキンを形成するための空洞を硬化材料で充填する。装飾インレーを鋳造用具に導入し、そのエッジ領域において、装飾インレーを上側具と下側具とで挟持させ、装飾インレーのエッジを上記空洞に突出させる。キャストスキンのキャストの際に、このエッジが硬化材料によって囲まれ、上述したキャストスキンと装飾インレーとの確実な固定が行われる。ここで使用する語句に関して、下側具とは、用具の半分部分であって、トリム部分の外観側面において目に触れる表面装飾を形成する側の半分部分であり、上側具とは、独立して方向付けられるものであるが、後側において表面装飾を形成する鋳造具の半分部分である。上記説明した製造方法は、設計の自由度を飛躍的に高める反面、依然として複雑ではなく、表面装飾のキャストスキンを使用することによってもたらされる利点による利益をもたらす。
【0007】
スチールを製造すること自体が上側具及び下側具に役立つが、例えばアルミニウム等の他の材料も検討できる。完成した表面装飾の取り外しが上側具または下側具への付着によって妨げられることがないよう配慮しなければならず、このことは、上側具及び下側具の少なくとも一方に分離層を堆積させることによって助力できる。
【0008】
キャストスキンによって形成される表面装飾の領域から、キャストスキンを形成する材料が漏出することによって装飾インレーが汚染されるのを防ぐため、上側具、装飾インレー、及び下側具の間の、装飾インレーがそのエッジ付近で2つの工具同士の間で締め付けられる位置で、十分に良好な密閉を維持しなければならない。このことは繊維を含む装飾インレーに特に当てはまり、この場合は毛管効果により、装飾インレーを通じてキャストスキンを形成する材料の吸引を招くおそれがある。良好な密閉は、装飾インレーをエッジにて圧迫することによって達成できる。装飾インレーとキャストスキンとのとりわけ安定的な接続は、装飾インレーがそのエッジを、発生するキャストスキンを収容する空洞の中に少なくとも1mm、好ましくは2mmより多く突出させる際に生成され、そのようにすることで、キャストスキンと装飾インレーとの対応する重複部分が、エッジ部分に生成される。他方、キャストスキンの表面でエッジが際立つことを防止するため、エッジが既述の空洞内に深く突出し過ぎないように配慮しなければならない。エッジに対し垂直なキャストスキンと装飾インレーとの重複部分が5mmを上回らない時、好ましくは最大でも3mmである時に、良好な結果を達成する。
【0009】
ポリウレタンは硬化開始材料として好ましく、これはまた元々粘性が非常に低いため、複雑な形状と例えば2500mmに及ぶ長い流路距離とをともなう特定の条件下で、狭い空洞内への充填を非常に良好に行うことができる。またこれを有効に利用できる点は、ポリウレタンが与えられた空洞をとりわけ良好に埋めることのみならず、優れた接着性質を有することであり、これは、装飾インレーが最も異なる装飾材料からなる場合に、装飾インレーとキャストスキンとの接続を安定したものにするために有利である。
【0010】
材料費が高すぎず、また表面が堅すぎないということの一方で、キャストスキンを0.7mmと1.5mmの間の平均厚みで設計した際に、キャストスキンが十分に高い安定性を有することに関し、良好な結果が達成される。同じ理由から、装飾材料次第で好ましくは0.3mmと2mmの間の厚みが装飾インレーにとって相応しい。
【0011】
完成トリム部分の外観側の、後で目にふれる表面に、所望の色のペイント層を有するようにキャストスキンを設計することによって、対応するトリム部分の外観は、視覚的にさらに好ましい影響を受けるであろう。キャストスキンに非感光性材料を適用する限りにおいて、かかる好ましくは非感光性の不透明の材料もまた、光によって生じるダメージからキャストスキンを保護するように作用することができる。キャストスキンの製造でそのような表面層を適用する場合、空洞の充填より前、好ましくは鋳造用具内への装飾インレーの導入より前に、キャストスキンを鋳造した後にキャストスキン上に残る適切なペイント層を、下側具上の、発生するキャストスキンを収容する位置において堆積できよう。事前に、ペイント層そのものとして分離層を、好ましくは下側具をスプレーすることによって堆積させることにより、このペイント層が下側具に付着しないようにすることもできよう。このように装飾インレーの汚染を防ぐには、鋳造中に装飾インレーを収容する領域にて下側具をマスクで覆ってもよい。装飾インレーの汚染、または下側具の対応する領域の汚染を回避するため、その代わりに、あるいはそれに加えて、装飾インレーを収容する領域が個別に下がるよう下側具を分割し、ペイント層及び分離層の少なくとも一方を堆積させるためこれを下降させるようにしてもよい。装飾インレーを収容する領域とキャストスキンを収容する領域に下側具をこのように分割し、キャストスキンを収容する領域を下降可能に設計することは、異なる装飾インレー及び厚みの異なる装飾インレーに対して同一の鋳造用具を適用できるようにするために、有利である。
【0012】
特に装飾インレーに対して天然素材及び人工素材の少なくとも一方の繊維を使用する場合には、対応するトリム部分の製造中に表面装飾のリアフォームまたはリア射出成形を後ほど行うことを仮定して、リアフォームを行う部分又はリア射出成形を行う部分への浸透による汚染又は装飾インレーへの損傷を防止するため、装飾インレーに背面遮断層を設けてもよい。それは例えば、スプレー、若しくははけ塗りによって遮断層を堆積すること、又は、実際の装飾インレーの裏側に塗膜することによって行うことができる。装飾インレーがフォームを浸透しない材料からなる場合、そのような層は無用かもしれない。
【0013】
本発明の典型的且つ有用な設計によれば、装飾インレーは周辺がキャストスキンに隣接する表面装飾の中間セクションを形成し、その結果装飾インレーは閉ざされたエッジに沿ってキャストスキンによって包まれる。そのようなキャストスキンと装飾インレーの配置により、とりわけ見た目の良い設計を達成でき、これは、通常自動車の車内を特徴づける自動車のサイドトリム、ドア車内トリム、または機器パネルにとりわけ有利に適用できる。
【0014】
表面装飾製造方法のとりわけ好適な設計は、装飾インレーに向けて空洞を終結する分離線沿いにウェブを備えることで、このウェブと上側具との間で装飾インレーをそのエッジにおいて締め付ける下側具を構想する。したがって、この場合の上側具は、好ましくはウェブのためのスペースを提供する窪みを備える。かかるウェブにより、第一に、装飾インレーのエッジ付近で局所的に増大された圧力を装飾インレーにかけることができため、装飾インレーに向けて発生するスキンを収容する空洞のとりわけ良好な密封が達成される。また、そのようにすることで、完成トリム部分の外観に対して表面装飾が非常に良好に成形され、キャストスキンによって包まれる装飾インレーのエッジが溝内に入り込み、その結果、エッジに対し平行に走るただ1つの継ぎ目が2つの表面領域を分離すると共に、トリム部分の外観側に残るキャストスキンと装飾インレーとを互いに視覚的に分離する。
【0015】
したがって、生成される溝はウェブによって規定される深さを有するが、極端に溝が深ければ、トリム部分製造中のさらなる処理に対して表面装飾が非常に扱いにくくなる。しかしその一方で、完成トリム部分において溝の底面が目に付くことを避けるために、溝の深さは適当なものにすることが望ましいことに注意されたい。これに関しては、3mmと10mmの間の高さ、または上記の継ぎ目を形成する溝に対応する深さをウェブに持たせることにより、良好な結果が達成される。同じように美観の点から、継ぎ目についてはこれが極端に広いギャップを残さないことが望ましい。トリム部分の表面上には、後で装飾インレーとキャストスキンとの間にギャップが残ることになるが、かかるギャップは、前述のように装飾インレーのエッジを囲む領域に溝状の構成を備えることにより、1.5mm、またはより良好には0.7mmの幅を超過すべきではない。
【0016】
ギャップまたは継ぎ目が消失する幅を有する実施形態がとりわけ好ましいであろう。そのためにはまず、下側具における上記ウェブを1.5mm以下の幅で設計してもよい。その一方で、ウェブは十分に安定したものでなければならないと共に、良好な密閉を行うためには高圧力が必要であるにもかかわらず装飾インレーを損傷してはならないため、ウェブは0.7mmより狭くするべきではない。ただし、完成したトリム部分上でギャップ幅を消失させる、または少なくともギャップ幅をかなり小さいものにすることは、リアフォーミングまたはリア射出成形等の表面装飾のさらなる処理の前に、溝を適切に変形させてギャップを共に押すことによって実現できる。これが可能なことから、過大な寸法決定を適切になすことにより、キャストスキンの鋳造より前に装飾インレーを鋳造用具内へ導入できるが、これは装飾インレーを収容する領域において上側具及び下側具の少なくとも一方を適切な形状にすることにより可能である。継ぎ目を閉じるために必要な溝の変形もまた、継ぎ目部分に真空を適用することによって達成できる。
【0017】
発生するキャストスキンのための空洞が終結する領域に対して、装飾インレーを覆う領域を上下動させることができるように、上側具を分割することもできる。下側具が既述のタイプのウェブを備えていれば、上側具の上下動可能な領域もこのウェブを覆うようにすべきである。このようにすることで、空洞を密閉するため、装飾インレーにそのエッジ部分においてとりわけ正確に圧力をかけることが可能である。
【0018】
キャストスキンの鋳造に際し、装飾インレーの正確な位置決めと、装飾インレーとキャストスキンとのエッジ部分での明確な重複とを保証するため、上側具または下側具上に装飾インレーを真空によって保持及び固定してもよい。上側具に位置決めピンを備えて、この位置決めピンに装飾インレーを揃え、鋳造用具の中への導入に際し、そのエッジを上側具が保持するようにすることで、正確な位置決めを単純化して行うことができる。このために、上側具及び下側具をともに移動することによって鋳造用具を閉鎖する前に、装飾インレーのエッジがこれらの位置決めピン上をとらえた時に、装飾インレーを正しく位置付けるよう、位置決めピンを配置する。同じ目的のため、エッジ部分に穴を設けた装飾インレーを使用してもよく、この場合には、鋳造用具に取り付けられた、または鋳造用具上に一体的に形成されたピンが、正しく位置付けられた装飾インレーの穴に収まることになる。
【0019】
前述のように、前述の部分の表面装飾を有するトリム部分は、支持体を形成する材料により表面装飾をリア射出成形することによって、または成形部分へ表面装飾を重ねることによって、製造できる。ただし、製造の簡易性とトリム部分の触り心地のよさとに関し、表面装飾をリアフォームする製造が好ましく、このためにもリアフォーミングの主要な材料としてポリウレタン材料が重ねて特に好ましい。リアフォーミングによって、あらかじめ簡素な方法で製造された支持体に表面装飾を接続してもよく、廉価なトリム部分に対する支持体にとりわけ適しているのはプラスチックによる製造である。したがって、圧縮木材繊維形状材料またはLFIコンポーネントの使用により、とりわけ安定したトリム部分が達成されるが、繊維強化プラスチックもまたとりわけ良好に使用できる。
【0020】
領域ごとに差別化される、リアフォームされた表面装飾を有する完成トリム部分の触覚的な特性は、様々なフォームによって充填される、装飾表面の後部のチャンバの設計により実現できる。よって例えば、キャストスキンと異なるフォームにより装飾インレーをリアフォームできる。
【0021】
あらゆる表面形状が既述の製造方法により表現されるわけではない。著しく三次元的に表面を形成することで、密閉が困難になると共に、キャストスキンと装飾インレーとの間の遷移領域における表面装飾に折り目が形成される可能性のあることがわかった。ただし、そのような問題は設計の僅かな適応によって解消できる。例えば、非常に著しく三次元的に成形されるトリム部分の領域は、半径を拡大すること、そして表面方向に平らにすることによって軽減される。同じように、あらかじめ形成された装飾インレーを適用することによって、そのような問題を生じる領域も、変化をともなうことなく保持することができる。ただし、それにともない作業手順を追加することが必要である。詳細には、通常非常に平坦であると共に、既述のタイプの装飾層をともなう設計にとって特に適切なドア車内トリムの中間領域を備えることで、この点に関する問題は発生しない。この場合、閉鎖した鋳造用具が装飾インレーの領域において、少なくともこの領域がキャストスキンを収容する空洞と隣接する箇所に、装飾インレーの厚みに一致する厚みのただ1つのギャップを上側具と下側具との間に有する場合に、有用である。そのことによって、装飾インレーは鋳造用具を閉鎖する際に、そのエッジの可視環境において曲がらなくなることを確実にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1から図4により、本発明の実施形態例を以下に説明する。
【0023】
図1では、いずれもスチール製である上側具1と下側具2とを備える鋳造用具1を示す。この鋳造用具の2つの領域はウェブ3によって分離されており、図中上側具1と下側具2との間でウェブ3の左に形成された空洞には、キャストスキンを形成するためポリウレタンが充填される。工具の他の領域は、鋳造用具の中にあらかじめ導入された装飾インレー5を収容し、同装飾インレー5は革からなり、後ほど自動車のドア車内トリムの表面装飾の中間フィールドを形成し、前記表面装飾はキャストスキン4と装飾インレー5とから形成される。ここではキャストスキン4と同じく、約1mmの厚みを有する装飾インレー5については、他の材料、例えば天然及び人工の少なくとも一方の繊維または他のポリマー表面組成の材料をも検討されよう。
【0024】
エッジ6を有する装飾インレー5は上側具1と下側具との間の空洞内に突出し、同空洞は図中すでにポリウレタンで充填されていると共にキャストスキンが形成され、装飾インレーはこのエッジ6の付近でウェブ3と上側具1との間で締め付けられる。キャストスキン4は、上記空洞内へ突出する装飾インレー5のエッジ6を囲む。よって、装飾インレー5によって形成され、エッジ6にてキャストスキン4によって形成される表面装飾の領域に接する領域を備える表面装飾が存在する。トリム部分を形成するため、上記ドア車内トリムの例において、この表面装飾は、その後ポリウレタンフォームにより、具体的には図において上側具1と接触する表面装飾の片側においてフォーミングを行うことによって、リアフォームされる。したがって、図の下側具2は生成される表面装飾の片側を収容し、これはその後完成リム部分の外観側を形成することとなる。リアフォーミングによって、表面装飾は最終的に支持体に接続され、同支持体の一部は、圧縮木材繊維形状材料からなる。他の材料の支持体も検討できよう。
【0025】
例示においては、ウェブ3が約1mmの幅を有することによって、またウェブ3にスペースを提供するように対応する上側具1を成形することによって、エッジ6周辺の装飾表面は、ウェブ3によって規定される約3mmの深さを有する溝を形成するため、装飾インレー5とキャストスキン4との間の外観側に継ぎ目またはギャップが残る。キャストスキン4と装飾インレー5とが約2.5mの重複部分を有することで、装飾インレー5とキャストスキン4は強固に接続される。なお、同重複部分は図中装飾インレー5がキャストスキン4によって囲まれる位置において、双方向矢印7によって示されている。
【0026】
図2は本発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、同図でも同じ参照番号により示される既述の特徴の他に、幾つかのさらなる特徴を備える。図2では、上側具1内に差し込まれた位置決めピン8が示されており、この位置決めピン8は、図示されない他の位置決めピンとともに、鋳造用具の閉鎖の前に装飾インレー5の正確な位置決めを簡素化するように作用する。上側具1と下側具2とをともに移動することによって行われる鋳造用具の閉鎖の前に、閉鎖を実施するために、そのエッジ6を有する装飾インレー5が位置決めピン8及びさらなる位置決めピンの上に位置するように、ここでは織物からなる装飾インレー5を上側具1上に配置する。次に装飾インレー5は、鋳造用具の閉鎖に際し、そしてキャストスキンの鋳造に際し、上側具1にかけられる真空によって保持及び固定される。このために上側具1は小さい開口を備える。後のリアフォーミングに際し装飾インレー5の織物の中へのフォームの侵入を防止するため、装飾インレー5は、図中斜線で示された遮断層9を備え、同遮断層9は本実施形態例においては織物の後ろにフィルムを設けることによって形成される。同じことを目的として、装飾インレー5の背面コーティングの別形態も可能であろう。
【0027】
キャストスキン4の外観側にはペイント層を設け、所望の色をつける。この目的のため、下側具2にはウェブ3の左側の領域において、装飾インレー5の導入の前、そして鋳造用具の閉鎖の前に分離層を設け、その後に適切なペイント層を設ける。これは下側具2をスプレーすることによって行う。外観側での装飾インレー5の汚染を招くことになる、ウェブ3の右側領域における下側具2の汚染を同時に防止するため、下側具2を分割して設計し、装飾インレー5を収容する下側具2の挿入部分10を、双方向矢印11によって示す方向に上下動させるようにすることもできる。この挿入部分10を下降させることで、塗料をスプレーする際の下側具2の対応する領域が汚染される危険が減る。可動挿入部分10により、厚み及び材料の少なくとも一方が異なる装飾インレー5に対して、示される鋳造用具を広範囲に適用することが可能となる。その後に鋳造用具から表面装飾を取り出すと、下側具2の上に最初に堆積されたペイント層がキャストスキン4上に残る。
【0028】
図3には図2の鋳造用具をともなう製造方法の初期段階の作業ステップを示す。図3においても、繰り返し現れる特徴には同じ参照番号を付している。図示の作業ステップにおいて下側具2に塗料12がスプレーされ、後に装飾インレーを収容する下側具2の領域は、ここでは前述の手順と異なり、インサート10の下降によってではなく、マスク13での被覆によって保護される。下側具のインサート10の下降とマスク3による被覆とを組み合わせることも可能である。
【0029】
図4に、表面装飾のための本発明による一製造方法のさらなる別形態を示す。ここでもまた、鋳造用具と作製される表面装飾とを切断面で示しており、同じ特徴には同じ参照符号を付して示している。前述の例との違いは、中間部分14を有するように上側具1を分割して設計し、この中間部分14が装飾インレー5を覆うと共に、この中間部分14を双方向矢印15によって示す方向に上下動させることが可能なように設計した点である。そのようにすることで、種々の装飾インレーに対し設定できる印加圧力を、装飾インレー5がエッジ6においてウェブ3に存在する位置において、装飾インレー5に印加することができる。さらに、大きめの寸法に形成した鋳造用具内に装飾インレー5を導入できるように、鋳造用具1の中間部分14を成形する。
【0030】
この結果、その後に鋳造用具から表面装飾を取り出してから、トリム部分を形成するためのリアフォーミングより前に、ウェブ3によって生じる溝の僅かな変形によって装飾インレー5を伸張させてもよく、そのようにすることで、表面装飾の外観側に溝によって形成された継ぎ目が閉じられる。それを行わない場合には、かかる継ぎ目は約1mmの幅のギャップを開いた状態で残すことになるが、上記を実施することで、完成したトリム部分上にそのような幅が出現することはない。図中の矢印16は、ギャップを閉じるため装飾インレー5を移動させる方向を示しており、そのようにすることで、装飾インレー5は、図中破線で示すフォーミングポジション5’に入る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の製造による表面装飾と共に鋳造用具の切断面を示す断面図。
【図2】図1をもとに変更した工具で製造される、図1と同様の図。
【図3】図2の鋳造用具を用いた、本発明による製造方法の初期の作業ステップを示す図。
【図4】本発明のさらなる実施形態における鋳造用具及び作製される表面装飾の切断面を示す断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャストスキンによって領域内に形成される、トリム部分、特に自動車の車内トリム部分のための表面装飾であって、
前記表面装飾が装飾インレー(5)を備え、
前記装飾インレー(5)のエッジ(6)が、前記キャストスキン(4)によって形成される前記表面装飾の領域に隣接し、
前記装飾インレー(5)の前記エッジ(6)が前記キャストスキン(4)によって囲まれること、
を特徴とするトリム部分のための表面装飾。
【請求項2】
前記キャストスキン(4)が、
ポリウレタンからなること、及び好ましくは、
0.7mmと1.5mmの間の平均厚みを有すること、
の少なくとも一方を特徴とする請求項1に記載のトリム部分のための表面装飾。
【請求項3】
外観側を形成する表面上の前記キャストスキン(4)が、
ペイント層及び非感光性層の少なくとも一方を備えること、または、
非感光性材料からなること、
を特徴とする請求項1または2に記載のトリム部分のための表面装飾。
【請求項4】
前記装飾インレー(5)が、
革、布地、または、ポリマー材料からなること、及び、
0.3mmと2mmの間の厚みを有すること、
の少なくとも一方を特徴とする請求項1から3の一項に記載のトリム部分のための表面装飾。
【請求項5】
前記装飾インレー(5)が、
背面に遮断層(9)を有すること、または、
それ自身がフォームを浸透させない性質のものであること、
を特徴とする請求項1から4の一項に記載のトリム部分のための表面装飾。
【請求項6】
前記キャストスキンによって囲まれる前記装飾インレー(5)の前記エッジ(6)が、閉鎖されること、
を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のトリム部分のための表面装飾。
【請求項7】
前記エッジ(6)を包囲する前記表面装飾の領域が、前記エッジ(6)に沿って前記表面装飾の外観側を走る溝を形成することにより、前記キャストスキン(4)によって囲まれる前記装飾インレー(5)の前記エッジ(6)が前記溝の中に入り込んで存在すること、及び、2つの表面領域を分離すると共に前記エッジ(6)に沿って平行に走る継ぎ目が前記表面装飾の前記外観側に残り、前記1つの表面領域は前記キャストスキン(4)によって形成され、他方は前記装飾インレー(5)によって形成されること、
を特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のトリム部分のための表面装飾。
【請求項8】
前記継ぎ目が、最大でも1.5mm、好ましくは0.7mm以下の幅を有すること、
を特徴とする請求項7に記載のトリム部分のための表面装飾。
【請求項9】
前記キャストスキン(4)と前記エッジ(6)に対し垂直な前記装飾インレー(5)とが、1mmから5mm、好ましくは2mmから3mmの重複部分を有すること、
を特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のトリム部分のための表面装飾。
【請求項10】
請求項1から9の一項に記載の表面装飾を備える、トリム部分、特に自動車用の車内トリム部分。
【請求項11】
サイドトリム、ドア車内トリム、または、機器パネルの一構成要素であること、
を特徴とする請求項10に記載のトリム部分。
【請求項12】
前記表面装飾が、好ましくはリアフォーミングの主要な材料としてのポリウレタン材料によりリアフォームされること、
を特徴とする請求項10または11に記載のトリム部分。
【請求項13】
好ましくはプラスチックから、特に好ましくは圧縮木材繊維形状材料から製造された支持体を備えること、
を特徴とする請求項10から12の一項に記載のトリム部分。
【請求項14】
前記継ぎ目が前記外観側に消失する幅を有することを特徴とする、
請求項7に関する限りにおける、請求項10から13に記載のトリム部分。
【請求項15】
トリム部分、特に自動車用の車内トリム部分のための表面装飾を製造する方法であって、
鋳造用具の上側具と下側具との間に形成されるキャストスキンを形成するための空洞を硬化材料で充填し、
それに先駆け、前記装飾インレー(5)のエッジ(6)が前記空洞の中へ突出し、
前記空洞の充填の際に、前記硬化材料によって囲まれるように装飾インレー(5)を前記鋳造用具内に導入し、前記上側具(1)と前記下側具(7)との間で締め付けること、
を特徴とするトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項16】
硬化材料としてポリウレタンを使用することを特徴とし、それにより得られる前記キャストスキン(4)が、好ましくは0.7mmと1.5mmの間の平均厚みを得る、
請求項15に記載のトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項17】
前記空洞を充填する前に、後で前記キャストスキン(4)上に残るペイント層が、前記発生するキャストスキンを収容する前記下側具(2)の表面領域上に、好ましくはスプレーすることによって堆積され、前記装飾インレー(2)を収容する前記下側具(2)の領域が特に好ましくはマスク(13)によって覆われること、
を特徴とする請求項15または16に記載のトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項18】
前記下側具(2)を分割することにより、前記装飾インレー(5)を収容する領域が、前記発生するキャストスキン(4)を収容する下側具(2)の領域に対し下降可能となることを特徴とする、
請求項15から17のいずれか一項に記載のトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項19】
前記下側具(2)が、前記装飾インレー(5)に向けて前記空洞を終結する分離線に沿いウェブ(3)を備え、前記装飾インレー(5)がそのエッジ(6)にてこのウェブ(3)と前記上側具(1)との間で締め付けられ、この場合前記上側具(1)は、好ましくは前記ウェブ(3)のためのスペースを提供する窪み備えることを特徴とする、
請求項15から18のいずれか一項に記載のトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項20】
前記ウェブ(3)が0.7mmと1.5mmの間の幅を有すること、並びに3mmと10mmの間の高さを有すること、の少なくとも一方を備えること、
を特徴とする請求項19に記載のトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項21】
前記上側具(1)を分割することにより、前記装飾インレー(5)を覆う領域が前記発生するキャストスキン(4)のための前記空洞を終結させる領域に対し上下動可能となること、
を特徴とする請求項15から20のいずれか一項に記載のトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項22】
前記装飾インレー(5)が、前記上側具(1)上または前記下側具(2)上で、真空によって保持されること、
を特徴とする、請求項15から21のいずれか一項に記載のトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項23】
前記上側具(1)が位置決めピン(8)を備え、前記装飾インレー(5)が前記鋳造用具内への導入の際に、そのエッジ(6)を前記位置決めピン(8)上に置くようにして前記上側具(1)上に配置されること、
を特徴とする請求項15から22のいずれか一項に記載のトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項24】
前記装飾インレー(5)が、前記キャストスキン(4)によってその周囲を包囲される前記表面装飾の中間領域を形成する、
請求項15から23のいずれか一項に記載のトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項25】
前記装飾インレー(5)の材料として革、繊維材料、またはポリマー材料を使用すること、
を特徴とする請求項15から24のいずれか一項に記載のトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項26】
前記装飾インレー(5)をその背面で塗装すること、又はフィルム若しくは他の遮断層(9)を前記装飾インレー(5)の背面に施すこと、又はそれ自身がフォーム不浸透性の材料からなること、
を特徴とする請求項15から25のいずれか一項に記載のトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項27】
前記ウェブ(3)によって作られると共に、前記キャストスキン(4)によって形成される領域と前記装飾インレー(5)によって形成される領域との間で前記表面装飾を備える継ぎ目が、前記鋳造用具から前記表面装飾を取り出した後に、ギャップ幅が消失するように全体的に押されること、
を特徴とする請求項19から26のいずれか一項に記載のトリム部分のための表面装飾を製造する方法。
【請求項28】
上側具と下側具とを有する、トリム部分のための表面装飾を製造する鋳造用具であって、
前記上側具と前記下側具との間で、閉鎖した状態の前記鋳造用具が、キャストスキンを鋳造するための空洞を備え、
前記鋳造用具が、前記上側具及び前記下側具を互いに離れるように移動させる、及び互いに接近するように移動させることによって閉鎖及び開放でき、
前記鋳造用具が第一及び第二の領域を備え、
前記第一及び第二の領域の内、前記第一の領域は前記キャストスキン(4)を鋳造するための前記空洞を形成し、他方前記上側具(1)と前記下側具(2)の間の前記第二の領域は、装飾インレー(5)を挿入するための空間を残すと共に、境界に沿って前記第一の領域に隣接し、
前記鋳造用具がこの境界に沿って前記装飾インレー(5)をエッジ(6)において締め付けるため、前記上側具(1)と前記下側具(2)との間に形成された密閉するギャップを備え、
前記鋳造用具がさらに前記密閉するギャップにおいて前記空洞に向かって広がることにより、前記空洞内へ極端に深くは突出しない前記装飾インレー(5)のエッジが、前記空洞の前記壁上ではなく、専ら前記密閉するギャップの前記エッジの上に保持されること、
を特徴とする鋳造用具。
【請求項29】
前記下側具が前記境界沿いに、前記空洞の範囲を定めると共に前記密閉するギャップのエッジを形成するウェブ(3)を備えること、
を特徴とする請求項28に記載の鋳造用具。
【請求項30】
前記境界が前記第二の領域の閉鎖したエッジを形成すること、
を特徴とする請求項28または29に記載の鋳造用具。
【請求項31】
前記下側具(2)及び前記上側具(1)の少なくとも一方が分割され、その結果前記第二の領域が、前記第一の領域から独立して互いに離間及び互いに接近するように移動できること、
を特徴とする請求項28から30のいずれか一項に記載の鋳造用具。
【請求項32】
前記上側具(1)または前記下側具(2)が前記第二の領域において、各々他方の工具に面する側にて真空を適用するための開口を備えること、
を特徴とする請求項28から31のいずれか一項に記載の鋳造用具。
【請求項33】
前記上側具(1)及び前記下側具(2)の少なくとも一方が、少なくとも部分的にスチールまたはアルミニウムから製造されること、
を特徴とする請求項28から32のいずれか一項に記載の鋳造用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−500641(P2007−500641A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521541(P2006−521541)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008558
【国際公開番号】WO2005/012040
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(504474725)ファウレシア イネンラウム システム ゲーエムベーハー (7)
【Fターム(参考)】