説明

トリム部品の取付け構造および取付け方法

【課題】 クリップの装着時にトリム部品の取付け穴とクリップとの間の隙間を無くして、トリム部品の位置出しを容易にするとともに、振動音の発生を抑えることができるトリム部品の取付け構造を提供する。
【解決手段】 クリップ10をトリム部品4の取付け穴4aに挿入して、係合部11を車体パネル1に突設した係合突起5に係着する際に、該係合部11に側面部分が拡径して取付け穴4aの内周に圧接する拡径手段13を設けることにより、拡径する拡径手段13が取付け穴4aの内周に圧接するので、トリム部品4の位置出しが容易になるとともに、トリム部品4と車体パネル1との相対移動を阻止して振動音の発生を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体パネルに添設するトリム部品の取付け構造および取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトリム部品の取付け構造としては、ダッシュパネルにインシュレータダッシュとカーペットとからなるトリム部品を添設する構造が挙げられ、ダッシュパネルに突設したスタッドボルトをトリム部品に形成した取付け穴に貫通し、該トリム部品の表面側から前記取付け穴に挿入したクリップを前記スタッドボルトに係着して、クリップの頭部を前記取付け穴の表面側周縁部に係止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−40034号公報(第5〜6頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来のトリム部品のダッシュパネルへの取付け構造では、スタッドボルトに係着したクリップとインシュレータダッシュおよびカーペットからなるトリム部品の取付け穴内周との間に隙間が存在しているため、この隙間によってトリム部品の取付け位置にばらつきが生じて、トリム部品の位置出しが困難になる。また、トリム部品がPP発泡材などの硬質素材である場合、前記隙間によりトリム部品との間で振動音が発生してしまう。
【0004】
そこで、本発明はクリップの装着時にトリム部品の取付け穴とクリップとの間の隙間を無くして、トリム部品の位置出しを容易にするとともに、振動音の発生を抑えることができるトリム部品の取付け構造および取付け方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のトリム部品の取付け構造は、車体パネルにトリム部品を添設するにあたって、車体パネルに突設した係合突起をトリム部品に形成した取付け穴に貫通し、該トリム部品の表面側から前記取付け穴に挿入したクリップの係合部を前記係合突起に係着するとともに、クリップの頭部を前記取付け穴の表面側周縁部に係止するようにしたトリム部品の取付け構造において、前記クリップの係合部に、前記係合突起への係着時に側面部分が拡径して前記取付け穴の内周に圧接する拡径手段を設けたことを最も主要な特徴とする。
【0006】
また、本発明の車体パネルの取付け方法は、車体パネルに突設した係合突起をトリム部品に形成した取付け穴に貫通し、該トリム部品の表面側から前記取付け穴に挿入したクリップの係合部を前記係合突起に係着するとともに、クリップの頭部を前記取付け穴の表面側周縁部に係止することによりトリム部品を車体パネルに添設する際に、前記クリップの係合部の側面部分を前記取付け穴の内周に拡径させて圧接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトリム部品の取付け構造および取付け方法によれば、クリップをトリム部品の取付け穴に挿入して係合部を車体パネルに突設した係合突起に係着する際に、クリップの係合部の側面部分が前記取付け穴の内周に拡径して圧接するので、トリム部品の位置出しが容易になるとともに、トリム部品と車体パネルとの相対移動を阻止して振動音の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0009】
図1〜図6は本発明にかかるトリム部品の取付け構造の一実施形態を示し、図1はトリム部品の取付け状態を示す断面図、図2はクリップを拡大した分解斜視図、図3はクリップを頭部方向から見た端面図、図4はクリップを係合突起に係着する状態を(a),(b)に順を追って示す図3中A−A線に対応した要部拡大断面図、図5はクリップの係合部が拡径する状態を(a),(b)に順を追って示す図3中B−B線に対応した要部拡大断面図、図6はクリップの装着状態を(a),(b)に順を追って示す図3中C−C線に対応した要部拡大断面図である。
【0010】
本実施形態のトリム部品の取付け構造は、図1に示すように車体パネルとしてのダッシュパネル1に、インシュレータダッシュ2とカーペット3とからなるトリム部品4を添設する構造を示し、ダッシュパネル1には所定箇所に車室内(図1中右側)に向かって係合突起としての複数のスタッドボルト5を突設してあり、かつ、前記トリム部品4には前記スタッドボルト5に対応する位置にインシュレータダッシュ2とカーペット3とを貫通する取付け穴4aを形成してある。
【0011】
そして、トリム部品4の添設時には、ダッシュパネル1に突設した前記スタッドボルト5をトリム部品4に形成した前記取付け穴4aに貫通し、該トリム部品4の表面側から前記取付け穴4aに挿入したクリップ10の係合部11を前記スタッドボルト5に係着するようにしており、このようにクリップ10を係合した際に、クリップ10の頭部12が前記取付け穴4aの表面側周縁部4bに係止して、その頭部12によってカーペット3をダッシュパネル1に押し付けてトリム部品4を固定してある。
【0012】
前記トリム部品4を構成するインシュレータダッシュ2は、ゴムシートや塩ビシートなどの比較的面密度の高い遮音材層2aの裏面にフェルトやポリウレタンフォームなどの吸音材層2bを接合した2層構造となっており、そのトリム部品4の表面側に形成した凹部2cに前記カーペット3を敷設するようになっている。
【0013】
ここで、前記クリップ10の係合部11には、前記スタッドボルト5への係合時に側面部分が拡径して前記取付け穴4aの内周に圧接する拡径手段13を設けてある。
【0014】
また、本実施形態のトリム部品4の取付け方法は、ダッシュパネル1に突設したスタッドボルト5をトリム部品4に形成した取付け穴4aに貫通し、該トリム部品4の表面側から前記取付け穴4aに挿入したクリップ10の係合部11を前記スタッドボルト5に係合するとともに、クリップ10の頭部12を前記取付け穴4aの表面側周縁部4bに係止してトリム部品4をダッシュパネル1に添設する際に、前記クリップ10の係合部12の側面部分を前記取付け穴4aの内周に拡径させて圧接するようになっている。
【0015】
前記クリップ10の係合部11は、図2に示すように前記頭部12に一体に突設して前記スタッドボルト5に係着する爪部14と、前記頭部12と別体に形成して後付けされる前記拡径手段13と、から構成してある。
【0016】
即ち、前記爪部14は頭部12の裏面(図2中下面)の中心周りに等間隔をもって4本が垂設され、それらの先端部内側に形成した凸部14aが前記スタッドボルト5のねじ部5aに弾発力をもって係着するようになっている。
【0017】
また、前記拡径手段13は、前記スタッドボルト5の先端に当接する底面13aと、この底面13aに連設して底面13aに付加する頭部12方向(図2中上方)への押圧力で外径方向に撓み変形する拡径側面部13bと、によって構成される。
【0018】
前記底面13aは、頭部12の中心線と同軸上となる円形状に形成され、この底面13aの外周には前記4本の爪部14を係合する凹設部15を4箇所形成してある。
【0019】
また、前記底面13aの外周から頭部12の反対方向(図2中下方)に向かって、前記スタッドボルト5のねじ部5aよりも大径の筒状の内側面13cを形成し、かつ、その内側面13cの先端部(図2中下端部)から外径方向に前記取付け穴4aよりも小径のリング状の下段底面13dを形成するとともに、該下段底面13dの外周から頭部12方向(図2中上方)に向かって前記拡径側面部13bを筒状にして形成してある。
【0020】
そして、前記内側面13c、下段底面13dおよび拡径側面部13bには、底面13aに形成した4箇所の凹設部15から連続して放射状に切欠部13fを形成してあり、また、隣接する切欠部13f間に存在する拡径側面部13bの周方向中央部には該切欠部13fと平行に中間切欠部13gを形成してある。
【0021】
従って、前記内側面13cは周方向に4分割されるとともに、前記拡径側面部13bは周方向に8分割されている。
【0022】
このとき、前記拡径側面部13bの先端部(図2中上端部)は、前記切欠部13fおよび前記中間切欠部13gによって周方向に分離されているが、その分離した先端部は頭部12と同心となるリング状鍔部13eで連結してあり、また、底面13aと下段底面13dとの深さD1と、リング状鍔部13eと下段底面13dとの深さD2と、の関係はD1<D2としてある。
【0023】
従って、本実施形態の前記拡径手段13は、前記底面13a、内側面13c、下段底面13d、拡径側面部13bおよびリング状鍔部13eからなるが、この拡径手段13は弾性力に富む金属薄板をプレス成形して全体形状が略逆ハット状となるように一体に形成し、そして、前記リング状鍔部13eを前記頭部12の裏面に接合して一体化してある。
【0024】
そして、前記拡径手段13を頭部12に結合した状態では、図3に示すように爪部14が底面13aの凹設部15に係合しており、同図に示すA−A線は対向する一対の爪部14の断面位置を示し、B−B線は対向する一対の拡径側面部13bの断面位置を示し、また、C−C線は対向する一対の中間切欠部13gの断面位置を示す。
【0025】
このように構成されたトリム部品4の取付け構造および取付け方法では、図4(a)、図5(a)、図6(a)に示すようにトリム部品4をその取付け穴4aの略中心部にスタッドボルト5が位置するようにしてダッシュパネル1に配置し、この状態でクリップ10の拡径手段13側を上記取付け穴4aに差し込んで、内側面13cの内方にスタッドボルト5の先端部に挿入しつつ、クリップ10の頭部12を押し込む。
【0026】
すると、図4(b)に示すように爪部14が前記スタッドボルト5のねじ部5aに係着してクリップ10が抜止めされるとともに、図5(b)に示すように底面13aがスタッドボルト5の先端で押圧されつつ頭部12方向に接近するため、その底面13aに内側面13cおよび下段底面13dを介して連結した拡径側面部13bが外方に開いて拡径される。
【0027】
このため、前記拡径手段13は、クリップ10を単に押し込むことにより、拡径した拡径側面部13bが取付け穴4aの内周に圧接して、クリップ10とその取付け穴4aとの間の隙間を無くすことができる。
【0028】
従って、トリム部品4の位置出しが容易になるとともに、トリム部品4とダッシュパネル1との相対移動を阻止できるため、振動音の発生を効果的に抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態では前記クリップ10の係合部11を、そのクリップ10の頭部12から一体に突設して前記スタッドボルト5に係着する爪部14と、前記頭部12と別体に形成して後付けされる拡径手段13と、から構成したので、拡径手段13を金属などの弾性力に富む素材で形成し、頭部12は樹脂などの安価な素材で形成できるため、取付け穴4a内周の保持機能を十分に確保しつつコスト低減を図ることができる。
【0030】
更に、前記拡径手段13を、スタッドボルト5の先端に当接する底面13aと、この底面13aに連設して底面13aに付加する頭部12方向への押圧力で外径方向に撓み変形する拡径側面部13bと、によって構成したので、クリップ10の押し込みに連動して拡径側面部13bを拡径させることができるため、拡径側面部13bを拡径させるための余分な作業が不要となり、クリップ10の取付け操作が容易になる。
【0031】
ところで、本発明は前記実施形態に例をとって説明したが、この実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができ、例えば、ダッシュパネル1にカーペット3を用いたトリム部品4を取付ける構造に限ることなく、他の車室内パネルに他のトリム部品を取付ける構造にあっても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態におけるトリム部品の取付け状態を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いるクリップを拡大した分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いるクリップを頭部方向から見た端面図である。
【図4】本発明の一実施形態に用いるクリップを係合突起に係合する状態を(a),(b)に順を追って示す図3中A−A線に対応した要部拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に用いるクリップの係合部が拡径する状態を(a),(b)に順を追って示す図3中B−B線に対応した要部拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に用いるクリップの装着状態を(a),(b)に順を追って示す図3中C−C線に対応した要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ダッシュパネル(車体パネル)
4 トリム部品
4a 取付け穴
4b 表面周縁部
5 スタッドボルト(係合突起)
10 クリップ
11 係合部
12 頭部
13 拡径手段
13a 底面
13b 拡径側面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルにトリム部品を添設するにあたって、車体パネルに突設した係合突起をトリム部品に形成した取付け穴に貫通し、該トリム部品の表面側から前記取付け穴に挿入したクリップの係合部を前記係合突起に係着するとともに、クリップの頭部を前記取付け穴の表面側周縁部に係止するようにしたトリム部品の取付け構造において、
前記クリップの係合部に、前記係合突起への係着時に側面部分が拡径して前記取付け穴の内周に圧接する拡径手段を設けたことを特徴とするトリム部品の取付け構造。
【請求項2】
クリップの係合部は、前記頭部に一体に突設して前記係合突起に係着する爪部と、前記頭部と別体に形成して後付けされる前記拡径手段と、からなることを特徴とする請求項1に記載のトリム部品の取付け構造。
【請求項3】
拡径手段は、前記係合突起の先端に当接する底面と、この底面に連設して底面に付加する頭部方向への押圧力で外径方向に撓み変形する拡径側面部と、を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のトリム部品の取付け構造。
【請求項4】
車体パネルに突設した係合突起をトリム部品に形成した取付け穴に貫通し、該トリム部品の表面側から上記取付け穴に挿入したクリップの係合部を前記係合突起に係着するとともに、クリップの頭部を前記取付け穴の表面側周縁部に係止してトリム部品を車体パネルに添設する際に、前記クリップの係合部の側面部分を前記取付け穴の内周に拡径させて圧接することを特徴とするトリム部品の取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−193112(P2006−193112A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9132(P2005−9132)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】