説明

トリメチルアミンの製造方法

【課題】 本発明はメチルアミン製造においてゼオライト触媒を使用することにより消費エネルギーコストを削減しつつ、不足分のトリメチルアミンを効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】 メタノールとアンモニア、メタノールとメチルアミン混合物とアンモニア、またはメチルアミン混合物とアンモニアからゼオライト触媒を用いてメチルアミンを製造する方法において、得られた反応混合物からメチルアミン類を分離精製して、アンモニアとトリメチルアミンを分離した後、ジメチルアミンまたはジメチルアミンを50モル%以上含むジメチルアミンとモノメチルアミンの混合物をアンモニアと気相反応させる工程を含むことを特徴とするトリメチルアミンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリメチルアミンを製造する方法に関する。トリメチルアミンは飼料、電子材料分野などに用いられ、特に近年は電子材料分野向けに需要が伸張している。
【背景技術】
【0002】
メチルアミンは、一般にはアルミナ、シリカアルミナ等の脱水およびアミネーション作用をもつ固体酸触媒の存在下にメタノールとアンモニアを気相で高温(400℃前後)で反応させることによって製造される。通常、この反応ではモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンの混合物が生成する。これらのメチルアミンはジメチルアミン以外の需要が著しく少なく、反応生成物からジメチルアミンを分離した後、反応系にリサイクルされ再利用されている。
【0003】
また、メチルアミン混合物を分離精製するには蒸留が慣用されている。しかし、トリメチルアミンは、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミンと複雑な共沸系を形成することから、これを分離することは非常に煩雑な蒸留操作並びに大型の装置が必要となり、メチルアミン製造プロセスの消費エネルギーコストは非常に大きなものとなる。なお、この回収プロセスに関しては、例えば「改訂製造工程図全集」(昭和53年4月25日株式会社化学工業社発行)に詳しく開示されている。
【0004】
ジメチルアミン製造コストの低減および装置の小型化を実現するためには、反応において副生するトリメチルアミンの生成を極力抑制し、ジメチルアミンの生成を促進することが肝要である。しかしながら、3種のメチルアミンの選択率は、前記のアルミナやシリカ等の非結晶質固体酸触媒上では熱力学的な平衡により決まり、通常の反応条件ではトリメチルアミンの生成率がジメチルアミンを大幅に上回る。たとえば、反応温度400℃、反応器入口のアンモニアとメタノール比率1:1(重量比)の場合、熱力学的に計算される各アミンの平衡生成比は、重量比でモノメチルアミン:ジメチルアミン:トリメチルアミン=0.284:0.280:0.436である。
【0005】
熱力学的平衡関係に支配されている非結晶質固体酸触媒に対し、ゼオライト触媒の形状選択性を利用することによりトリメチルアミンの生成を抑制し、ジメチルアミンの生成を促進する方法が開発されている。例えば、モルデナイトを触媒に用いた特許文献1など。また、特許文献2にはトリメチルアミンを不均化してジメチルアミンを製造する方法が、特許文献3にはモノメチルアミンを不均化してジメチルアミンを製造する方法が記載されている。
【0006】
以上のように従来は、メチルアミン製造に関してはトリメチルアミンを抑制し、ジメチルアミンを多く生成する方法が検討されてきた。しかしながら、近年トリメチルアミンの需要が伸びてきており、ゼオライト触媒を用いた製法ではトリメチルアミン生成量が不足するという問題が起きている。ゼオライト触媒を用いた場合、反応温度を上げればトリメチルアミン生成量を増やすことができるが触媒寿命が短くなってしまう。
【0007】
しかし、トリメチルアミンの需要が増えたとはいえ、シリカアルミナ等の非晶質固体酸触媒を使用するとトリメチルアミン生成量は過剰となり、余剰のトリメチルアミンをリサイクルする必要があり、エネルギーコストは非常に大きなものとなる。また、新規な触媒の開発には時間がかかり、需要が変化するたびに触媒開発を行うのは現実的ではない。このような状況から、需要変動に即応できる経済的なトリメチルアミンの製造法が待たれていた。
【0008】
【特許文献1】特開昭56-46846号
【特許文献2】特開昭57-169445号
【特許文献3】特開平11-228507号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はメチルアミン製造においてゼオライト触媒を使用することにより消費エネルギーコストを削減しつつ、不足分のトリメチルアミンを効率よく製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、メチルアミン混合物からアンモニアとトリメチルアミンを分離精製した後、ジメチルアミンまたはジメチルアミンを50モル%以上含むジメチルアミンとモノメチルアミンの混合物とアンモニアを気相反応させることにより、トリメチルアミンの必要量を効率よく得ることが可能であることを見出し本発明に至った。
【0011】
すなわち本発明は、メタノールとアンモニア、メタノールとメチルアミン混合物とアンモニア、またはメチルアミン混合物とアンモニアからゼオライト触媒を用いてメチルアミンを製造する方法において、得られた反応混合物からメチルアミン類を分離精製して、アンモニアとトリメチルアミンを分離した後、ジメチルアミンまたはジメチルアミンを50モル%以上含むジメチルアミンとモノメチルアミンの混合物をアンモニアと気相反応させる工程を含むことを特徴とするトリメチルアミンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
トリメチルアミンを製造する際に、原料とするジメチルアミンとモノメチルアミン混合物中のジメチルアミンを50モル%以上とすることにより、リサイクル流量を減らすことができ、トリメチルアミンを効率良く製造することができる。また、需要変動に即応してトリメチルアミン生産量を容易且つ効率的に増減でき、経済性の高いメチルアミン製造を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、メチルアミンを製造する方法において、ゼオライト触媒により得られた反応混合物からアンモニアとトリメチルアミンを分離精製した後、ジメチルアミンまたはジメチルアミンを50モル%以上含むジメチルアミンとモノメチルアミンの混合物をアンモニアと気相反応させることによりトリメチルアミンを製造することを特徴とする。
【0014】
本発明において使用するゼオライト触媒としては、アンモニアとメタノールからメチルアミンを生成する反応に形状選択性を示すゼオライト、例えばモルデナイト、クリノプチロライト、レビナイト、ゼオライトA、FU−1、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−21、モンモリナイト等が好ましい。特にモルデナイトが好ましい
【0015】
ゼオライト触媒を使用したメチルアミン混合物を製造する反応は温度230〜350℃、好ましくは250〜330℃の範囲で行われる。圧力は常圧〜5MPaG、好ましくは0.5〜3MPaGの範囲、N/C(反応系における窒素原子と炭素原子の数の比)が1〜2.5の範囲で実施するのがよい。
【0016】
得られた反応混合物からメチルアミン類を分離する方法としては蒸留が慣用される。具体例を挙げると、まず、第一塔でアンモニアを塔頂より除去し、第二塔で注水蒸留によりトリメチルアミンを塔頂より留出させ、第三塔で脱水し、第四塔でモノメチルアミンを塔頂より、ジメチルアミンを塔下部より留出させることによって各メチルアミンを得ることができる。
【0017】
トリメチルアミンを製造する反応に使用する触媒としてはシリカ、アルミナ、シリカアルミナ等固体酸触媒が好ましい。
【0018】
トリメチルアミンを製造する反応における原料としてのジメチルアミンとモノメチルアミンの混合物はジメチルアミンを50モル%以上、好ましくは80モル%以上含む。ジメチルアミンのみが最も好ましい。ジメチルアミンが50モル%以下になると混合物のリサイクル流量が多くなり、また、蒸留によりエネルギーコストの最もかかるモノメチルアミンの流量を多くする必要があり効率的ではない。
【0019】
トリメチルアミンを製造する反応に使用するアンモニアは原料のアンモニアでも未反応のアンモニアをリサイクル使用しても問題はない。
【0020】
固体酸触媒を使用したトリメチルアミンを製造する反応は温度350〜450℃、好ましくは360〜420℃の範囲で行われる。圧力は常圧〜5MPaG、好ましくは0.5〜3MPaGの範囲、N/C(反応系における窒素原子と炭素原子の数の比)が0.7〜2.5の範囲で実施するのがよい。N/Cが小さすぎると不純物の生成増加、触媒寿命の短縮につながり、大きすぎると平衡上トリメチルアミンの生成に不利になり必要量のトリメチルアミンを得るためのリサイクル流量が多くなる。
【0021】
ジメチルアミンまたはジメチルアミンを50モル%以上含むジメチルアミンとモノメチルアミンの混合物のリサイクル反応により得られたメチルアミン類は前記蒸留方法により各メチルアミンに分離精製される。
【実施例】
【0022】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1
モルデナイト触媒によりメチルアミン合成反応を行い、得られたメチルアミン類を分離精製した。不足分のトリメチルアミンを得るために、ジメチルアミン8.6kmol/hr(192.6Nm3/hr)をリサイクルし、アンモニア5.1kmol/hr(114.2Nm3/hr)と混合することでN/Cを0.8として370℃、1.8MPaの条件下、シリカアルミナ触媒によるトリメチルアミン合成反応を行った。得られたメチルアミン類を分離精製し、モノメチルアミン1.5kmol/hr、ジメチルアミン1.8kmol/hr、トリメチルアミン4.1kmol/hr(241kg/hr)を得た。
【0024】
実施例2
モルデナイト触媒によりメチルアミン合成反応を行い、得られたメチルアミン類を分離精製した。不足分のトリメチルアミンを得るために、ジメチルアミン9.2kmol/hr(206.1Nm3/hr)とモノメチルアミン1.1kmol/hr(24.6Nm3/hr)をリサイクルし(ジメチルアミン89mol%)、アンモニア14.1kmol/hr(315.8Nm3/hr)と混合することでN/Cを1.25として370℃、1.8MPaの条件下、シリカアルミナ触媒によるトリメチルアミン合成反応を行った。得られたメチルアミン類を分離精製し、モノメチルアミン2.6kmol/hr、ジメチルアミン2.3kmol/hr、トリメチルアミン4.1kmol/hr(240kg/hr)を得た。
【0025】
比較例1
モルデナイト触媒によりメチルアミン合成反応を行い、得られたメチルアミン類を分離精製した。不足分のトリメチルアミンを得るために、ジメチルアミン2.4kmol/hr(53.8Nm3/hr)とモノメチルアミン14.7kmol/hr(329.3Nm3/hr)をリサイクルし(ジメチルアミン14mol%)、アンモニア7.3kmol/hr(163.5Nm3/hr)と混合することでN/Cを1.25として370℃、1.8MPaの条件下、シリカアルミナ触媒によるトリメチルアミン合成反応を行った。得られたメチルアミン類を分離精製し、モノメチルアミン2.6kmol/hr、ジメチルアミン2.3kmol/hr、トリメチルアミン4.1kmol/hr(240kg/hr)を得た。
【0026】
比較例2
モルデナイト触媒によりメチルアミン合成反応を行い、得られたメチルアミン類を分離精製した。不足分のトリメチルアミンを得るために、ジメチルアミン4.0kmol/hr(89.6Nm3/hr)とモノメチルアミン18.6kmol/hr(416.6Nm3/hr)をリサイクルし(ジメチルアミン18mol%)、アンモニア57.1kmol/hr(1279.0Nm3/hr)と混合することでN/Cを3.0として370℃、1.8MPaの条件下、シリカアルミナ触媒によるトリメチルアミン合成反応を行った。得られたメチルアミン類を分離精製し、モノメチルアミン6.8kmol/hr、ジメチルアミン3.8kmol/hr、トリメチルアミン4.1kmol/hr(240kg/hr)を得た。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールとアンモニア、メタノールとメチルアミン混合物とアンモニア、またはメチルアミン混合物とアンモニアからゼオライト触媒を用いてメチルアミンを製造する方法において、得られた反応混合物からメチルアミン類を分離精製して、アンモニアとトリメチルアミンを分離した後、ジメチルアミンまたはジメチルアミンを50モル%以上含むジメチルアミンとモノメチルアミンの混合物をアンモニアと気相反応させる工程を含むことを特徴とするトリメチルアミンの製造方法。
【請求項2】
気相反応をシリカ、アルミナ及び/またはシリカアルミナ触媒の存在下で行うことを特徴とする請求項1記載のトリメチルアミンの製造方法。


【公開番号】特開2006−298820(P2006−298820A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122572(P2005−122572)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】