説明

トレイ供給装置

【課題】時間効率良くトレイを部品実装装置に供給することができるトレイ供給装置を提供すること。
【解決手段】トレイ供給装置100は、トレイマガジン10、サブマガジン20、供給ステーション40及び昇降機構30を備える。供給ステーション40は、ベース板41に設けられた昇降ステージ55を備えている。トレイマガジン10、ベルト搬送ユニット27及び47の間でトレイ2が搬送される場合に、時間効率の良い搬送経路を設定するように、昇降ステージ55及び昇降機構30の駆動が適宜制御されることにより、トレイ2の供給の時間効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電子部品またはその他の複数の部品を収納したトレイを、例えば部品実装装置における部品のピックアップ位置まで供給するトレイ供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の電子部品を収納したトレイを、部品実装装置における部品のピックアップ位置まで供給する装置がある。特許文献1に記載の装置(A)は、トレイを積層して収納するマガジン装置(B)と、マガジン装置(B)から1つのトレイ(3)を引き出すテーブル装置(C)とを備えている。テーブル装置(C)は、そのトレイから部品を取り出し、部品実装装置における部品のピックアップ位置となるサブステージ(D)に、取り出した部品載置する機能を有する(特許文献1の第1図及び第2図参照)。
【0003】
一方、特許文献2に開示された装置では、マガジン(10)から引き出される2つのトレイ(14)が、上下2段でなる、第1の待機ステージ(S11)及び第2の待機ステージ(S21)でそれぞれ待機する(特許文献2の図4〜11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2808646号公報
【特許文献2】特許第3711689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トレイ供給装置が単位時間当たりに部品実装装置に供給することができるトレイの数を増やしたい、つまりトレイの供給の時間効率を上げたいという産業界の要請がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、時間効率良くトレイを部品実装装置に供給することができるトレイ供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るトレイ供給装置は、トレイマガジンと、サブマガジンと、供給ステーションと、昇降機構とを具備する。
前記トレイマガジンは、部品を収納したトレイを複数段で収容可能である。
前記サブマガジンは、前記トレイを搬送する複数段の搬送機構を有し、前記トレイマガジンに隣接して配置され、前記トレイマガジンから前記トレイを取り出し可能である。
前記供給ステーションは、前記トレイを載置させる複数段で設けられた載置部と、前記複数の載置部の間で前記トレイを昇降させるステージとを有し、前記トレイに収納された前記部品がピックアップされる位置に配置されている。
前記昇降機構は、前記サブマガジンを介して、前記トレイマガジン及び前記供給ステーションの間で前記トレイを搬送させるために、前記サブマガジンを昇降させる。
【0008】
供給ステーションが複数の載置部間でトレイを昇降させるステージを有し、複数の載置部間でトレイが移動することができる。つまり、トレイマガジン、搬送機構及び載置部の間でトレイが搬送される場合に、時間効率の良い搬送経路を設定するように、昇降ステージ及び昇降機構の駆動が適宜制御されることにより、トレイの供給の時間効率を高めることができる。
【0009】
前記トレイ供給装置は、前記複数の搬送機構のうち少なくとも1つの搬送機構の高さ位置と、前記複数の載置部のうち少なくとも1つの載置部の高さ位置とを対応させるように、前記昇降機構の駆動を制御する制御手段をさらに具備する。
【0010】
前記各載置部のピッチまたは前記各トレイマガジンの前記トレイの収容ピッチは、前記各搬送機構のピッチの整数倍のピッチで設けられている。
【0011】
これにより、複数の搬送機構及び複数の載置部の間で実質的に同時にトレイを搬送することができ、トレイの供給の時間効率を高めることができる。
【0012】
前記トレイ供給装置は、前記複数の載置部のうちの第1の載置部から、前記第1の載置部の高さ位置に対応する高さ位置に設けられた、前記複数の搬送機構のうちの第1の搬送機構により、前記サブマガジンに前記トレイが移動している時間帯と、前記複数の搬送機構のうちの第2の搬送機構により、前記サブマガジンから前記複数の載置部のうちの第2の載置部に前記トレイが移動している時間帯とが重なるように、前記第1及び第2の搬送機構の駆動を制御する搬送制御手段をさらに具備する。
【0013】
すなわち、例えばトレイが供給ステーションからサブマガジンへ戻されている間に、次に必要な部品を収納したトレイがサブマガジンから供給ステーションへ搬送させることができる。これによりトレイの供給の時間効率を高めることができる。
【0014】
前記供給ステーションは、載置部移動機構と、前記ステージ及び前記載置部移動機構を制御する手段とを有する。
前記載置部移動機構は、前記載置部を移動させることで、前記載置部による前記トレイの載置及びその載置の解除を行う。
前記ステージ及び前記載置部移動機構を制御する手段は、前記複数の載置部のうち第1の載置部から第2の載置部へ前記トレイを移動させる場合、前記ステージに前記トレイを支持させた後、前記載置部移動機構により、前記第1の載置部にトレイが載置されている状態の解除を行い、前記トレイを前記第2の載置部に載置させた後、前記ステージによる前記トレイの支持を解除するように、前記ステージ及び前記載置部移動機構を制御する。
【0015】
前記搬送機構は、前記トレイを載置させて移動させるベルト搬送ユニットである。
【0016】
これにより、他の搬送方式に比べ、簡易な構成で、かつ、小型化された搬送機構を実現することができる。載置部もこのようなベルト搬送ユニットであってもよい。
【0017】
前記トレイ供給装置は、高さが異なる複数の前記部品に応じて前記ステージの高さを制御する手段をさらに具備する。
【0018】
例えば、供給ステーションに配置されたトレイから部品をピックアップするためのピックアップ機構の高さの調整範囲(一般的には予め設定されている。)が比較的小さい場合であっても、ステージによりトレイの高さ位置を変えることができる。したがって、部品実装装置は、比較的大きな(高さが高い)部品にも対応することができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
以上、本発明によれば、トレイマガジンの大型化を回避し、時間効率良くトレイを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るトレイ供給装置を示す斜視図である。
【図2】トレイ供給装置を示す平面図である。
【図3】トレイ供給装置を示す側面図である。
【図4】トレイ供給装置の要部を示す斜視図である。
【図5】ベルト搬送ユニット及び後述するローディング機構を説明するための、供給トレイ装置の一部の断面斜視図である。
【図6】トレイ供給装置の動作を順に示す斜視図である。
【図7】トレイ供給装置の動作を順に示す斜視図である。
【図8】トレイ供給装置の動作を順に示す斜視図である。
【図9】部品を実装処理時の、供給ステーション、及びプリント回路基板を載置したコンベヤの一部を示した図である。
【図10】供給ステーションにおけるトレイの縦方向の移動動作を順に示す模式図である。
【図11】トレイ供給装置の動作を模式的に示す工程図であり、図7及び図8に対応する。
【図12】トレイ供給装置の第2の実施形態に係る動作を模式的に示す工程図である。
【図13】トレイ供給装置の第3の実施形態に係る動作を説明するために、吸着ヘッドのストロークと電子部品の厚さ(高さ)との関係を示す図である。
【図14】比較的厚い電子部品の例を示す図である。
【図15】さらに厚い電子部品の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
[トレイ供給装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るトレイ供給装置を示す斜視図である。図2は、トレイ供給装置を示す平面図であり、図3は、その側面図である。図4は、トレイ供給装置の詳細を示す斜視図である。
【0023】
トレイ供給装置100は、トレイマガジン10、サブマガジン20、供給ステーション40及び昇降機構30を備える。トレイマガジン10、サブマガジン20及び供給ステーション40は、例えば図1及び図2ではY方向に沿って並んで配置されている。
【0024】
トレイマガジン10は、電子部品P(図2参照)を収納した複数のトレイ2を縦方向(Z方向)で所定の段数、例えば10〜30段で収容可能となっている。典型的には、1つのトレイ2は1つのパレット4に搭載され、トレイ2及びパレット4が1セットとなり、これら複数のセットがトレイマガジン10に収容されている。これ以降、特にパレット4に言及しない限り、トレイ2及びパレット4のセットを単に「トレイ」と呼ぶことにする。なお、トレイ供給装置100は、パレット4を不要とし、トレイ2のみを扱う形態であってもよい。
【0025】
1つのトレイ2には複数の電子部品Pが収納されている。図2に示すように1つのトレイ2は、例えばマトリクス状に分割された複数のポケットを有し、1つのポケットに1つの電子部品Pが収納されている。典型的には、1つのトレイ2には、同じ電子部品Pが複数収納されている。しかし、1つのトレイ2に異なる電子部品Pが収納されていてもよい。電子部品Pとしては、例えば、ICパッケージ、コンデンサ、抵抗、コイル、コネクタ等が挙げられる。
【0026】
サブマガジン20は、トレイマガジン10に隣接して配置され、昇降機構30に昇降可能に接続されている。サブマガジン20は、ベース板21、このベース板21の両側に固定された側板22、これら側板22にそれぞれ設けられた、トレイ2を搬送するための搬送機構としての複数のベルト搬送ユニット27を備えている。
【0027】
図5は、ベルト搬送ユニット27及び後述するローディング機構53を説明するための、トレイ供給装置の一部の断面斜視図である。ベルト搬送ユニット27は、例えば縦に3段設けられ、合計6つ設けられている。この段数は、2段でもよいし、4段以上であってもよい。本実施形態では、例えばトレイマガジン10のトレイ2を収容できる段数(例えば上記のように10〜30段)より少なく設定されている。6つのベルト搬送ユニット27は、実質的に同じ構成を有しており、サブマガジン20の両側で同じ高さに設けられた2つのベルト搬送ユニット27で1つのトレイ2を搬送する。
【0028】
以下、1つのベルト搬送ユニット27について説明する。ベルト搬送ユニット27は、図4に示すように、ベルト搬送ユニット27は、搬送モータ23、この搬送モータ23により駆動される駆動プーリ25、従動プーリ26、これら駆動プーリ25及び従動プーリ26に架け渡された無端ベルト24を有する。例えば、搬送モータ23は側板22に取り付けられ、駆動プーリ25及び従動プーリ26は回転自在に側板22に接続されている。
【0029】
同じ高さに設けられた2つのベルト搬送ユニット27間の幅は、パレット4がその2つの無端ベルト24に載置される程度の幅に設定されている。
【0030】
本実施形態では、ベルト搬送ユニット27が用いられることにより、他の搬送方式に比べ、簡易な構成で、かつ、小型化された搬送機構を実現することができる。
【0031】
サブマガジン20の両側板22の、トレイマガジン10が配置される方のそれぞれの端部には、ローディング機構53が設けられている。ローディング機構53は、トレイマガジン10に収容されたトレイ2を引き出してサブマガジン20内にロードし、また、サブマガジン20からトレイマガジン10にアンロードする。
【0032】
図5は、ローディング機構53を説明するための破断斜視図である。ローディング機構53は、ベルト搬送ユニット27ごとに設けられている。ローディング機構53は、例えばZ方向を軸として回転可能な、パレット4の両側を挟み込むガイドローラ51と、ガイドローラ51を回転させるローディングモータ52と、ガイドローラ51をX方向で開閉させるための図示しない開閉機構を有する。
【0033】
開閉機構は、ラックアンドピニオン機構、ボールネジ機構、ソレノイド、またはエアシリンダ等を利用したものでよい。しかし、開閉機構は、パレット4を両側から挟むことにより、パレット4に弾性力を与える、バネ、ゴム等の弾性材であってもよい。
【0034】
各ベルト搬送ユニット27(及び各ローディング機構53)のZ方向のピッチは、トレイマガジン10に収容された各トレイ2のZ方向のピッチである収容ピッチに一致している。
【0035】
昇降機構30は、トレイマガジン10及び供給ステーション40の間でトレイ2を搬送させるために、サブマガジン20を昇降させる。昇降機構30は、ベース体34、ボールネジ機構31、ガイドレール32、可動体33を有する。ベース体34は、Z方向沿って垂直に立てられて設けられている。ボールネジ機構31及びガイドレール32はベース体34に取り付けられている。可動体33は、サブマガジン20の側板22(またはベース板21)に取り付けられ、ガイドレール32にスライド可能に接続されている。
【0036】
供給ステーション40は、ベース板41、ベース板41の両側に固定された側板42、ベース板41に設けられた昇降ステージ55を備えている。また、供給ステーション40は、側板42に板材を介して複数段で設けられた載置部としてのベルト搬送ユニット47、これらのベルト搬送ユニット47のうち上段のベルト搬送ユニット47を横方向(X方向)に開閉駆動する開閉シリンダ54を備えている。
【0037】
ベルト搬送ユニット47は、サブマガジン20のベルト搬送ユニット27と同じ構成でよく、その数は、Z方向に2段で合計4つとされている。そのZ方向のピッチは、サブマガジン20のベルト搬送ユニット27の2倍となっている。
【0038】
昇降ステージ55は、ベース板41の一部を構成するステージ板48、このステージ板48の下部に設けられた昇降モータ49を有する。昇降ステージ55は、ステージ板48上にパレット4を載せた状態で、2段でなるベルト搬送ユニット47間でトレイ2(及びパレット4)を昇降させる。昇降モータ49は、例えばサーボモータまたはステッピングモータが用いられ、各ベルト搬送ユニット47間の任意の範囲内でステージ板48を位置決めするように昇降させる。
【0039】
開閉シリンダ54は側板42に取り付けられている。開閉のための機構としては、開閉シリンダ54によるシリンダ駆動方式に代えて、モータを用いた他の駆動方式であってもよい。開閉シリンダ54により、上段のベルト搬送ユニット47が外側に開くように退避している間に、昇降ステージ55によりトレイ2が上昇(または下降)させられる。
【0040】
なお、図1では、ローディング機構53、ベルト搬送ユニット27、開閉シリンダ54等の機構は、簡略化して図示されているか、もしくは省略されている。図6〜図8の動作の説明でも同様である。
【0041】
供給ステーション40は、例えばベース板41がより図示しない支持体により下側から支持されることにより、所定の高さに位置するように配置されている。供給ステーション40の高さ位置は、典型的には次のように設定されている。それは、その供給ステーション40の最上段のベルト搬送ユニット47上に載置されたトレイ2の高さ位置が、トレイマガジン10の最上段に収容されたトレイ2の高さ位置と実質的に同じになるように、設定されている。
【0042】
トレイマガジン10及びサブマガジン20間の距離は、ローディング機構53及びベルト搬送ユニット27によりトレイ2が両者間で搬送可能な程度に適宜設定される。サブマガジン20及び供給ステーション40間の距離も同様に、ベルト搬送ユニット27及び47によりトレイ2が両者間で搬送可能な程度に適宜設定される。
【0043】
図3に示すように、供給ステーション40は、典型的には、トレイ2に収納された電子部品Pが、部品実装装置150が備える、電子部品Pを吸着する吸着ヘッド153にピックアップされる位置に配置されている。図3においては、部品実装装置150の一部が図示されている。部品実装装置150は、Z及びY方向に移動可能な吸着ヘッド153、電子部品Pが実装される対象物であるプリント回路基板151を搬送するコンベヤ152を備えている。図3においてコンベヤ152は紙面に垂直方向にプリント回路基板151を搬送する。吸着ヘッド153は、供給ステーション40上のトレイ2から電子部品Pをピックアップし、コンベヤ152上のプリント回路基板151上に実装するようになっている。
【0044】
また、トレイ供給装置100は、メインコントローラ5、トレイマガジン制御ユニット3、サブマガジン制御ユニット6及び供給ステーション制御ユニット9を備えている。
【0045】
トレイマガジン制御ユニット3は、トレイマガジン10内のトレイ2の識別番号を記憶し、トレイマガジン10内にある、あるいはトレイマガジン10から取り出されてトレイマガジン10内にないトレイ2等を管理する。また、トレイマガジン制御ユニット3は、トレイ2の識別番号に基づく電子部品Pの在庫状況等も管理する。
【0046】
サブマガジン制御ユニット6は、昇降機構30、各ローディング機構53、各ベルト搬送ユニット27(各搬送モータ23)等の駆動を制御する。各ローディング機構53及び各搬送モータ23は、個別に独立して駆動されるようになっている。
【0047】
供給ステーション制御ユニット9は、各ベルト搬送ユニット27及び47(各搬送モータ23及び43)、開閉シリンダ54、昇降ステージ55等の駆動を制御する。各搬送モータ23及び43は、個別に独立して駆動されるようになっている。しかし、同じ高さ位置に配置された2つの搬送モータ23(及び2つの搬送モータ43)は、共通の駆動信号により駆動されてもよい。
【0048】
メインコントローラ5は、これら、トレイマガジン制御ユニット3、サブマガジン制御ユニット6及び供給ステーション制御ユニット9を統括的に制御する。
【0049】
メインコントローラ5、制御ユニット3、6及び9は、ハードウェアで実現されるか、またはハードウェア及びソフトウェアの両方で実現される。これらを実現するハードウェアは、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等である。
【0050】
なお、メインコントローラ5は、部品実装装置150を統括的に制御するメインコントローラ5と共通のものであってもよいし、別のものであってもよい。
【0051】
[トレイ供給装置100の動作]
図6〜図8は、トレイ供給装置100の動作を順に示す斜視図である。図6(A)に示すように、サブマガジン20が、トレイマガジン10に収容された所定のトレイ2を引き出すために、昇降機構30の駆動により、そのトレイ2が収容されている高さ位置に位置決めされる。具体的には、サブマガジン20のベルト搬送ユニット27のうち、いずれか1組(左右一対)のベルト搬送ユニット27群の高さ位置と、トレイマガジン10内で引き出すべきトレイ2が収容されている高さ位置とが一致するように、サブマガジン20が駆動される。
【0052】
サブマガジン20が位置決めされると、ローディング機構53及びベルト搬送ユニット27の駆動により、トレイ2がトレイマガジン10から引き出される。以下、この最初に引き出されたトレイ2を第1のトレイ2aという。そして第1のトレイ2aが、サブマガジン20のベース板21上の所定の位置まで移動すると、ベルト搬送ユニット27の駆動が停止され、第1のトレイ2aはその無端ベルト24上の所定の位置で位置決めされる。本実施形態では、トレイマガジン10からの第1のトレイ2aの引き出し時には、3組(上段、中段及び下段)のベルト搬送ユニット27のうち、上段のベルト搬送ユニット27が用いられる。
【0053】
このようにサブマガジン20に1つの第1のトレイ2aが渡されると、図6(B)に示すように、昇降機構30の駆動により、サブマガジン20は供給ステーション40と同じ高さ位置に位置決めされる。本実施形態では、サブマガジン20の、第1のトレイ2aが配置されている上段のベルト搬送ユニット27の高さ位置と、供給ステーション40の上段のベルト搬送ユニット47の高さ位置とが一致するように、サブマガジン20が位置決めされる。
【0054】
サブマガジン20が位置決めされると、供給ステーション40の上段のベルト搬送ユニット47が駆動される。図6(C)に示すように、第1のトレイ2aが、供給ステーション40のベース板41上の所定の位置まで移動すると、ベルト搬送ユニット47の駆動が停止され、第1のトレイ2aはその無端ベルト44上の所定の位置で位置決めされる。
【0055】
このように、トレイマガジン10から供給ステーション40までの第1のトレイ2aが搬送される過程において、ローディング機構53、ベルト搬送ユニット27及び47の駆動のそれぞれの開始及び停止のタイミングは適宜設定され、またその設定も適宜変更可能である。
【0056】
供給ステーション40に第1のトレイ2aが配置され、部品実装装置150の吸着ヘッド153により第1のトレイ2aから電子部品Pが取り出され、取り出された電子部品Pがプリント回路基板に実装される。この実装処理時の、供給ステーション40、及びプリント回路基板151を載置したコンベヤ152の一部を示した斜視図を、図9(A)〜(F)に示す。
【0057】
電子部品Pの実装処理が行われている間に、図7(A)〜(C)に示すように、図6(A)及び(B)と同様に、サブマガジン20が、トレイマガジン10から次のトレイ2である第2のトレイ2bを引き出し、供給ステーション40の高さ位置に位置決めされる。
【0058】
図7(C)では、昇降ステージ55の駆動により、第1のトレイ2aは、上段から下段へ移動する。図10は、この第1のトレイ2aの移動動作を順に示す模式図である。
【0059】
図10(A)に示すように、昇降ステージ55の昇降モータ49の駆動によりステージ板48が上昇し、パレット4を下方から支持してこれを持ち上げることで、パレット4が上段のベルト搬送ユニット47から上方へ離れる。すなわち、パレット4が無端ベルト44(図4参照)上に載置されている状態の解除が行われる。
【0060】
次に、図10(B)に示すように、開閉シリンダ54の駆動により上段のベルト搬送ユニット47が外側へ退避する。図10(C)に示すように、ステージ板48が下降することで、パレット4は下段のベルト搬送ユニット47の無端ベルト44上に載置される。
【0061】
そして、図10(D)に示すように、そのままステージ板48がさらに下降してベース板41内に埋没する。つまり、パレット4が無端ベルト44に載置された後に、ステージ板48がパレット4の支持を解除する。また、上段のベルト搬送ユニット47が閉じて元の位置に戻る。以上のようにして、第1のトレイ2aは、上段から下段へ移動する。
【0062】
次に、図8(A)に示すように、第1のトレイ2a及び第2のトレイ2bの配置が交換される。供給ステーション40では、図10(D)に示したように、第1のトレイ2aが供給ステーション40の下段に配置され、第2のトレイ2bはサブマガジン20の上段に配置されている。この状態から、供給ステーション40の下段のベルト搬送ユニット47及びサブマガジン20の上段のベルト搬送ユニット27が駆動する。その結果、第1のトレイ2aがサブマガジン20の下段のベルト搬送ユニット27に移動し、第2のトレイ2bが供給ステーション40の上段のベルト搬送ユニット47に移動する。そして、第1のトレイ2aの場合と同様に、第2のトレイ2bに収納された電子部品Pがプリント回路基板151に実装される。
【0063】
このように、本実施形態では、サブマガジン20及び供給ステーション40にそれぞれ配置された2つのトレイ2の配置が実質的に同時に交換されるので、トレイ2の供給の時間効率を高めることができる。このようなトレイ2の交換は、必ずしも2つのトレイ2が同時に移動を開始して同時に停止する形態に限られず、2つのトレイ2が移動している時間帯が重なっていればよい。
【0064】
図8(A)の動作の後、第2のトレイ2b内の電子部品Pの実装処理が行われている間に、図8(B)に示すように、昇降機構30により、典型的には第1のトレイ2aがトレイマガジン10に元々収容されていた高さ位置に、サブマガジン20が位置決めされる。また、図8(C)に示すように、ローディング機構53及びサブマガジン20のベルト搬送ユニット27の駆動により、第1のトレイ2aは元の収容位置に収容される。これ以降、図6(A)〜図6(C)の動作が繰り返される。
【0065】
第1のトレイ2aが元の収容位置に収容される場合に限られず、トレイマガジン制御ユニット3の制御により、サブマガジン20からトレイマガジン10の別の収容位置に戻されるようにして、時間効率が最適化される場合もある。
【0066】
図11(A)〜(H)は、図8(B)からのトレイ供給装置100の動作に対応する図である。以下に、その対応を示す。
【0067】
図11(A)は図8(B)に対応
図11(B)及び(C)は図8(C)に対応
図11(D)は図7(A)に対応
図11(E)は図7(B)に対応
図11(F)は図8(B)に対応
図11(G)及び(H)は図8(C)に対応。
【0068】
この工程図から分かるように、図11(A)〜(F)が、1つのトレイ2の供給に必要な工程(1トレイ2あたり6工程)となる。
【0069】
以上のように、本実施形態では、トレイマガジン10によるトレイ2の収容段数より少ない段数のベルト搬送ユニット27を有するサブマガジン20が、昇降機構30により昇降するので、従来のように大容量のトレイマガジン10を昇降させる必要がない。したがってトレイマガジン10の大型化を回避することができる。
【0070】
また、供給ステーション40が昇降ステージ55を有し、上段及び下段のベルト搬送ユニット47間でトレイ2が移動することができる。つまり、トレイマガジン10、ベルト搬送ユニット27及び47の間でトレイ2が搬送される場合に、時間効率の良い搬送経路を設定するように、昇降ステージ55及び昇降機構30の駆動が適宜制御されることにより、トレイ2の供給の時間効率を高めることができる。
【0071】
特に、本実施形態では、供給ステーション40におけるトレイ2の収容ピッチが、サブマガジン20におけるトレイ2の収容ピッチの整数倍(例えば2倍)とされている。これにより、上記のような2つのトレイ2の同時交換を実現することができ、トレイ2の供給の時間効率を高めることができる。
【0072】
また、供給ステーション40の上下段でトレイ2が移動できることにより、2つのトレイ2の同時交換動作に限られず、搬送時間効率を高めるための他の動作を実現することができる。例えば、以下のようの動作も可能である。
【0073】
供給ステーション40の上段に第1のトレイが配置され、実装処理が行われている間に、サブマガジン20から供給ステーション40の下段に第2のトレイが搬入される。これにより供給ステーション40の上下2段にトレイ2が配置される。次に、トレイ2を保持していない空のサブマガジン20が、さらに第3のトレイをトレイマガジン10からその下段に引き出す。第1のトレイの電子部品Pの実装処理が終了した後、第1のトレイは、サブマガジン20の上段へ移動する。供給ステーション40の下段に配置された第2のトレイは、空いた上段に昇降ステージ55により移動し、第2のトレイ内の電子部品Pの実装処理が行われる。
【0074】
[トレイ供給装置100の第2の実施形態に係る動作]
図12(A)〜(F)は、トレイ供給装置100の第2の実施形態に係る動作を示す工程図である。本実施形態に係る工程において、図11(A)〜(H)と異なる点は、図12(B)及び(F)において、サブマガジン20内にあるトレイ2と、トレイマガジン10内にあるトレイ2とが実質的に同時に交換される点である。これにより、1つのトレイ2の供給に必要な工程数は、4工程となる。
【0075】
[トレイ供給装置100の第3の実施形態に係る動作]
図13(A)に示すように、例えば部品実装装置150に備えられた吸着ヘッド153がZ方向におけるストロークは、典型的には15mm程度である。このようなストローク値は、Z方向の厚さが比較的薄い電子部品P1に対応できるようにするために予め設計されたものである。このストローク値は、一般的には、吸着ヘッド153の下端部からパレット4が載置される載置面8までの距離として設定される。載置面8は、本実施形態に係るトレイ供給装置100では、ベルト搬送ユニット47の無端ベルト44の表面である。
【0076】
ここで、図13(B)に示すように、パレット4及びトレイ2の厚さをそれぞれ約1mmとすると、ストローク可能範囲は、13mm程度となる。吸着ヘッド153が水平方向に移動するときに、吸着ヘッド153がトレイ2や電子部品P1と干渉することを避けるための高さのマージンを考慮すると、トレイ2内の電子部品P1の厚さは6mm程度が限界となる。
【0077】
本実施形態に係るトレイ供給装置100は、例えば図14に示すように、厚さが上記6mmの2倍以上の厚さを有する電子部品P2を扱うことが可能である。供給ステーション40は、例えばこれらの電子部品P2を収納したトレイ62を、下段のベルト搬送ユニット47に載置させることにより、吸着ヘッド153の下端部から電子部品P2の上面までの距離を大きくとることができる。この場合、吸着ヘッド153の下端部からパレット4の下面までの距離は30mm程度とすることができる。
【0078】
特に、本実施形態に係る供給ステーション40では、上下段のベルト搬送ユニット47のピッチが、トレイマガジン10の収容ピッチの2倍であるため、図15に示すように、さらに高さの高いトレイ72に収納された厚い電子部品P3にも対応可能となる。
【0079】
このような本実施形態の動作を実現するために、サブマガジン20が最初から供給ステーション40の下段にトレイ62または72を載置させればよい。あるいは、最初に供給ステーション40の上段にトレイ62または72が載置された場合、昇降ステージ55がトレイ62または72を下段に載置させればよい。
【0080】
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が考えられる。
【0081】
ベルト駆動による搬送ユニット27及び47に代えて、ボールネジ駆動、ラックアンドピニオン駆動、またはリニアモータ駆動による搬送ユニットが備えられていてもよい。ここでいうリニアモータ駆動は、磁場を利用した非接触式の駆動のことである。
【0082】
上記実施形態では、サブマガジン20(及び供給ステーション40)において、1つのトレイ2を搬送するために、そのX方向の両側でベルト搬送ユニット27の両方が駆動する例を挙げた。しかし、X方向の片方のみが駆動する方式であってもよい。このような形態は、上記したボールネジ駆動、ラックアンドピニオン駆動、またはリニアモータ駆動による搬送ユニットにも応用可能である。
【0083】
供給ステーション40のベルト搬送ユニット47に代えて、トレイ2が載置可能な駆動源を持たない載置部が設けられていてもよい。この場合、載置部は、ベルト搬送ユニット47のように複数段で設けられている。また、1つの載置部は、例えばY方向に配列された回転自在な複数のローラを有していればよい。
【0084】
上記実施形態では、サブマガジン20の各ベルト搬送ユニット27(及び各ローディング機構53)のZ方向のピッチは、トレイマガジン10に収容された各トレイ2のZ方向のピッチである収容ピッチに一致していた。しかし、各ベルト搬送ユニット27(及び各ローディング機構53)のZ方向のピッチは、トレイマガジン10の収容ピッチの2倍以上の整数倍であってもよい。
【0085】
供給ステーション40のベルト搬送ユニット47のZ方向のピッチは、サブマガジン20のそれと同じピッチでもよい。
【0086】
サブマガジン20は、サブマガジン20の中段のベルト搬送ユニット27を利用してトレイ2を搬送してもよい。あるいは、サブマガジン20は、上段、中段及び下段の3組のベルト搬送ユニット27のうち、いずれか2組を利用してトレイ2を搬送してもよい。
【0087】
サブマガジン20は、3組のベルト搬送ユニット27のうち例えば2組を利用して、トレイマガジン10から実質的に同時に2つのトレイ2をそれぞれ引き出してもよい。
【0088】
サブマガジン20及び供給ステーション40において、ベルト搬送ユニット27及び47上での、トレイ2の位置決め精度を高めるために、以下のような実施形態もある。例えば、トレイ2のベルト搬送ユニット27(または47)上での位置を検出するセンサが、サブマガジン20(または供給ステーション40)に設けられていればよい。このセンサとしては、光センサ、磁気センサ、またはその他のセンサが用いられる。
【0089】
あるいは、これらのようなセンサが用いられる形態に限られず、例えばトレイ2が、ベルト搬送ユニット27(または47)での所期の位置に位置決めされたときに、トレイ2またはパレット4の動きを静止させるストッパーが設けられていてもよい。このストッパーは、例えばシリンダ、その他の機構等により駆動可能である。
【0090】
また、サブマガジン20及び供給ステーション40の間に、トレイ2及びパレット4が存在しないことを検出するためのセンサが設けられていてもよい。このセンサは、光センサやその他のセンサが用いられる。このセンサが、サブマガジン20及び供給ステーション40の間にトレイ2及びパレット4が存在しないことを検出したときに、昇降機構30がサブマガジン20を駆動する。これにより、安全にサブマガジン20を昇降させることができ、また安全にトレイ2を搬送させることができる。
【符号の説明】
【0091】
P(P1、P2、P3)…電子部品
2、62、72…トレイ
3…トレイマガジン制御ユニット
5…メインコントローラ
6…サブマガジン制御ユニット
9…供給ステーション制御ユニット
10…トレイマガジン
20…サブマガジン
27、47…ベルト搬送ユニット
30…昇降機構
40…供給ステーション
54…開閉シリンダ
55…昇降ステージ
100…トレイ供給装置
150…部品実装装置
151…プリント回路基板
153…吸着ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を収納したトレイを複数段で収容可能なトレイマガジンと、
前記トレイを搬送する複数段の搬送機構を有し、前記トレイマガジンに隣接して配置され、前記トレイマガジンから前記トレイを取り出し可能なサブマガジンと、
前記トレイを載置させる複数段で設けられた載置部と、前記複数の載置部の間で前記トレイを昇降させるステージとを有し、前記トレイに収納された前記部品がピックアップされる位置に配置された供給ステーションと、
前記サブマガジンを介して、前記トレイマガジン及び前記供給ステーションの間で前記トレイを搬送させるために、前記サブマガジンを昇降させる昇降機構と
を具備するトレイ供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトレイ供給装置であって、
前記複数の搬送機構のうち少なくとも1つの搬送機構の高さ位置と、前記複数の載置部のうち少なくとも1つの載置部の高さ位置とを対応させるように、前記昇降機構の駆動を制御する制御手段をさらに具備するトレイ供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載のトレイ供給装置であって、
前記各載置部のピッチまたは前記各トレイマガジンの前記トレイの収容ピッチは、前記各搬送機構のピッチの整数倍のピッチで設けられているトレイ供給装置。
【請求項4】
請求項3に記載のトレイ供給装置であって、
前記複数の載置部のうちの第1の載置部から、前記第1の載置部の高さ位置に対応する高さ位置に設けられた、前記複数の搬送機構のうちの第1の搬送機構により、前記サブマガジンに前記トレイが移動している時間帯と、前記複数の搬送機構のうちの第2の搬送機構により、前記サブマガジンから前記複数の載置部のうちの第2の載置部に前記トレイが移動している時間帯とが重なるように、前記第1及び第2の搬送機構の駆動を制御する搬送制御手段をさらに具備するトレイ供給装置。
【請求項5】
請求項1に記載のトレイ供給装置であって、
前記供給ステーションは、
前記載置部を移動させることで、前記載置部による前記トレイの載置及びその載置の解除を行う載置部移動機構と、
前記複数の載置部のうち第1の載置部から第2の載置部へ前記トレイを移動させる場合、前記ステージに前記トレイを支持させた後、前記載置部移動機構により、前記第1の載置部にトレイが載置されている状態の解除を行い、前記トレイを前記第2の載置部に載置させた後、前記ステージによる前記トレイの支持を解除するように、前記ステージ及び前記載置部移動機構を制御する手段と
を有するトレイ供給装置。
【請求項6】
請求項1に記載のトレイ供給装置であって、
前記搬送機構は、前記トレイを載置させて移動させるベルト搬送ユニットであるトレイ供給装置。
【請求項7】
請求項1に記載のトレイ供給装置であって、
前記載置部は、前記トレイを載置させて移動させるベルト搬送ユニットであるトレイ供給装置。
【請求項8】
請求項1に記載のトレイ供給装置であって、
高さが異なる複数の前記部品に応じて前記ステージの高さを制御する手段をさらに具備するトレイ供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−245241(P2010−245241A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91713(P2009−91713)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】