説明

トレーラのフレーム構造

【課題】ビーム高さが低い部分であっても補強することができるトレーラのフレーム構造を提供する。
【解決手段】床部にビーム材4を備えたトレーラ1のフレーム構造2において、ビーム材4は、上フランジ部11と下フランジ部12とウエブ部13とを備えて構成されており、ビーム材4の少なくとも長手方向の一部分には、ウエブ部13を複数並列してなる重合部33が形成されていることを特徴とする。そして、ビーム材4は、車長方向に延在するメインビーム10を構成しており、メインビーム10は、エプロン部20とネック部1とホイールベース部22とを備えてなり、重合部33はメインビーム10の前端から後方に延在して、少なくともエプロン部20とネック部21との境界部を含むように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラのフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トレーラのフレーム構造は、プラットホームトレーラやコンテナシャシの様に、積荷による曲げ荷重を左右一対のメインビーム(梁材)で受け持つものと、バントレーラの様に、サイド面体で曲げ荷重を受け持ち、メインビームを持たないものとに大別できる。このうち、メインビームを持つものは、左右のメインビームをクロスメンバや左右連結材で結んで一体的に構成したものが一般的であった。
【0003】
従来のメインビームは、上下のフランジ材をウエブで繋いで形成されており(例えば、特許文献1参照)、スティフナを適宜設けて補強した構成であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−45310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、メインビームは、トラクタとの連結部などにおいて、高さ寸法(ビーム高さ)に制限を受ける場合がある。そのため、従来では、上下のフランジ材を適宜曲げて、高さを調整したウエブで各フランジ材を繋ぐことで、メインビームのビーム高さを調整していた。しかしながら、このようにウエブの高さ寸法が一定でなく、メインビームにビーム高さが高い部分と低い部分が混在すると、積荷による曲げモーメント分布と合わない部分がでてしまう問題があった。そこで、メインビームのビーム高さが低い部分をさらに補強することが求められるが、フレーム高さに制約があり、補強し難いのが現状である。
【0006】
そこで、本発明は前記の問題を解決するために案出されたものであって、ビーム高さが低い部分であっても補強することができるトレーラのフレーム構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、床部にビーム材を備えたトレーラのフレーム構造において、前記ビーム材は、上フランジ部と下フランジ部とウエブ部とを備えて構成されており、前記ビーム材の少なくとも長手方向の一部分には、前記ウエブ部を複数並列してなる重合部が形成されていることを特徴とするトレーラのフレーム構造である。
【0008】
本発明のビーム材は、トレーラの床部に設けられる部材であって、車長方向や車幅方向等、あらゆる方向に延在するビーム材に適用可能である。このような構成によれば、ウエブ部の高さ寸法(ビーム高さ)が低い部分であっても重合部を形成することでビーム材の強度を効率的に高めることができる。
【0009】
そして、前記ビーム材が、車長方向に延在するメインビームを構成しており、前記メインビームは、ビーム高さの異なる複数の部位が長手方向に連なって形成されており、トラクタとの連結ピンが設けられる低ビーム高さのエプロン部と、前記トラクタの後方に位置する高ビーム高さのホイールベース部と、前記エプロン部と前記ホイールベース部との間に位置しビーム高さが前記ホイールベース部に向かうにつれて大きくなるネック部とを備えている場合には、前記重合部が、前記メインビームの前端から後方に延在して、少なくとも前記エプロン部と前記ネック部との境界部を含むように形成されているものが好ましい。このような構成によれば、トラクタとの連結部分にあって、大きいビーム高さ寸法を確保できないエプロン部においてもビーム材の強度を効率的に高めることができる。
【0010】
また、本発明では、前記ネック部は、ビーム高さの増加割合が二段階に変化して形成されており、前部に配置され増加割合が低い緩傾斜部と、後部に配置され増加割合が高い急傾斜部とを備えてなり、前記複数のウエブ部は、前記メインビームの車幅方向両側部で前端から後方に延在する一対の側方ウエブ部と、前記メインビームの車幅方向中間部で後端から前方に延在する中間ウエブ部とが含まれており、前記側方ウエブ部の後端は、前記緩傾斜部と前記急傾斜部との境界部よりも後方に位置し、前記中間ウエブ部の前端は、前記緩傾斜部と前記急傾斜部との境界部よりもよりも前方に位置しているものが好ましい。このような構成によれば、メインビームの前端部ではウエブ部が2枚の重合部が形成され、その後方ではウエブ部が3枚の重合部が形成されることとなる。したがって、トラクタとの連結部分にあって大きいビーム高さ寸法を確保できないエプロン部や、ネック部の緩傾斜部と急傾斜部との境界部にあって大きいモーメント力がかかる部分においても、ビーム材の強度をより一層高めることができる。
【0011】
さらに、本発明では、前記ネック部は、ビーム高さの増加割合が二段階に変化して形成されており、前部に配置され増加割合が低い緩傾斜部と、後部に配置され増加割合が高い急傾斜部とを備えてなり、前記複数のウエブ部は、前記メインビームの車幅方向中間部で前端から後端まで延在する中間ウエブ部と、前記メインビームの車幅方向側部で前端から後方に延在する側方ウエブ部とが含まれており、前記側方ウエブ部の後端は、前記緩傾斜部と前記急傾斜部との境界部よりも後方に位置しているものが好ましい。このような構成によれば、メインビームの前端部から緩傾斜部と急傾斜部との境界部にかけて、ウエブ部が2枚または3枚の重合部が形成されることとなる。したがって、トラクタとの連結部分にあって大きいビーム高さ寸法を確保できないエプロン部や、エプロン部とホイールベース部との境界部にあって大きいモーメント力がかかる部分においても、ビーム材の強度を効率的に高めることができる。
【0012】
さらに、本発明では、前記重合部における前記ウエブ部の長手方向端面は、凹状に窪んでいるものが好ましい。このような構成によれば、ウエブ部の枚数が変化する部分でウエブ部の断面積の急激な変化を抑制できるので、疲労破壊強度の向上を達成できる。
【0013】
また、本発明では、前記重合部の長手方向端部には、前記上フランジ部と前記下フランジ部と複数の前記ウエブ部とで囲まれた空間を塞ぐ蓋部材が設けられているものが好ましい。このような構成によれば、防錆加工が困難な、重合部の内側に水が流れ込むのを防止できるので、防錆効果が向上する。なお、ビーム材がアルミニウム合金等の耐食性を有する材質にて形成されている場合は、蓋部材は設けなくてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ビーム高さが低い部分であっても有効に補強することができるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るトレーラのフレーム構造のビーム材を示した図であって、(a)は側面図、(b)はD−D線断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るトレーラのフレーム構造のビーム材を示した図であって、(a)は図1のA−A線断面図、(b)はB−B線断面図、(c)はC−C線断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るトレーラのフレーム構造のビーム材を示した斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るトレーラのフレーム構造のビーム材の使用状態を示した側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るトレーラのフレーム構造の一対のビーム材を組み付けた状態を示した平面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るトレーラのフレーム構造の一対のビーム材を示した断面図である。
【図7】(a)、(b)、(c)は、本発明のさらに他の実施形態に係るトレーラのフレーム構造のビーム材を示した断面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係るトレーラのフレーム構造のビーム材を示した側面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態に係るトレーラのフレーム構造の一対のビーム材を組み付けた状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための実施形態を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図4に示すように、本実施形態に係るトレーラ1のフレーム構造2は、トラクタ3に牽引されるトレーラ1の床に設けられるものである。図1乃至図3に示すように、トレーラ1のフレーム構造2(図4参照)は、床部に設けられたビーム材4を備えている。なお、本実施形態では、ビーム材4が、車長方向に延在するメインビーム10を構成している。ビーム材4(メインビーム10)は、上フランジ部11と下フランジ部12と3つのウエブ部13とを備えて構成されている。ビーム材4の長手方向の一部分には、ウエブ部13を複数並列してなる重合部33が形成されている。3つのウエブ部13は、後記する中間ウエブ部32と、一対の側方ウエブ部31,31とから構成されている。以下、3つのウエブ部13は、側方ウエブ部31と中間ウエブ部32を区別しない場合は、単に複数のウエブ部13と称する。重合部33は、3枚のウエブ部13が重合する三枚重合部33aと、2枚のウエブ部13が重合する二枚重合部33bからなる。以下、ウエブ部13の枚数を区別しない場合は、単に重合部33と称する。
【0018】
上フランジ部11と下フランジ部12は、メインビーム10の上下部分を構成する部材であって、それぞれ車幅方向に広がって構成されている。上フランジ部11と下フランジ部12は、板状に形成され同じ幅寸法に形成されている。ウエブ部13は板状に形成されている。上フランジ部11、下フランジ部12およびウエブ部13は、アルミニウム合金製の板材または押出形材にて構成されている。ウエブ部13は、その上端部が上フランジ部11の下面に溶接固定され、下端部が下フランジ部12の上面に溶接固定されて、メインビーム10が一体的に形成されている。溶接は、メインビーム10の長手方向に沿って直線状に行われるので、施工しやすく精度を高めることができる。
【0019】
なお、上フランジ部11とウエブ部13、下フランジ部12とウエブ部13との接合方法は、溶接に限定されるものではなく、摩擦撹拌接合等の他の方法であってもよい。また、メインビーム10の材質は、アルミニウム合金に限定する趣旨ではなく、必要な強度を有する材質であれば、他のものであってもよい。但し、本実施形態のように、軽量で且つ耐食性を有するアルミニウム合金が好ましい。
【0020】
図5に示すように、メインビーム10は、車幅方向左右にそれぞれ配置され、車長方向に沿って、その前端から後端まで直線状に延在している。一対のメインビーム10,10は、車幅方向に間隔をあけて、互いに平行になるように配置されている。一対のメインビーム10,10は、車幅方向に延在する複数の連結材19によって、互いに連結されている。なお、本実施形態では、メインビーム10が車幅方向に隙間をあけて一対設けられているが、メインビームの本数はこれに限定されるものではなく、たとえば、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0021】
図1の(a)および図4に示すように、メインビーム10は、前後位置によって高さ寸法(ビーム高さ)が変化する。本実施形態のメインビーム10では、前方から後方にかけて、エプロン部20、ネック部21、ホイールベース部22、サスペンションマウンティング部23およびリヤオーバーハング部24を備えている。メインビーム10の上フランジ部11は、前端から後端にかけて同一レベルに形成されて、上面が水平な平面形状となっている。一方、下フランジ部12は、ウエブ部13の高さの変化に応じて、屈曲して形成されている。
【0022】
エプロン部20は、トレーラ1をトラクタ3に連結するためのキングピン28を備えたエプロンプレート29(図5参照)が取り付けられる部分である。キングピン28は、トラクタ3の車体後部3aに設けられたカプラー5(図4参照)に固定される。エプロン部20は、トラクタ3の車体後部3aの上方に位置しており、メインビーム10の中で最もビーム高さが低い部分となっている。エプロン部20は、ビーム高さが一定であり、下フランジ部12は水平に延在している。
【0023】
ネック部21は、エプロン部20の後端からホイールベース部22の前端にかけて、ビーム高さが徐々に増加する(下方に広がる)部分である。ネック部21の下フランジ部12は、後方に向かうに連れて下がるように傾斜している。ネック部21は、ビーム高さの増加割合が二段階に変化して形成されており、前部に配置され増加割合が低い緩傾斜部21aと、後部に配置され増加割合が高い急傾斜部21bとを備えている。緩傾斜部21aは、トラクタ3の車体後部3aの上方に位置している。エプロン部20と緩傾斜部21aとの境界部、および緩傾斜部21aと急傾斜部21bとの境界部では、それぞれ下フランジ部12が屈曲している。
【0024】
ホイールベース部22は、ネック部21とサスペンションマウンティング部23との間に位置する部分である。ホイールベース部22は、前方から順に、最もビーム高さが高い高ビーム部22aと、ビーム高さが徐々に低くなる傾斜部22bと、後方のサスペンションマウンティング部23およびリヤオーバーハング部24と同じビーム高さの中ビーム部22cとを備えている。ネック部21とホイールベース部22との境界部には、ランディングギア25が伸縮可能に設けられている。ランディングギア25は、トラクタ3からトレーラ1を切り離したときに、地面まで伸長してトレーラ1の前部を支える脚部となる。急傾斜部21bと高ビーム部22aとの境界部、高ビーム部22aと傾斜部22bとの境界部、および傾斜部22bと中ビーム部22cとの境界部では、それぞれ下フランジ部12が屈曲している。
【0025】
サスペンションマウンティング部23は、トレーラ1の車輪26を支持するためのマウンド部27が設けられる部分である。サスペンションマウンティング部23は、中ビーム部22cと同じビーム高さを有しており、下フランジ部12は水平に延在している。
【0026】
リヤオーバーハング部24は、サスペンションマウンティング部23から後方に張り出した部分である。リヤオーバーハング部24は、サスペンションマウンティング部23および中ビーム部22cと同じビーム高さを有しており、下フランジ部12は水平に延在している。
【0027】
なお、前記したメインビーム10の形状および各種名称は、一例であって、本発明を、本実施形態のものに限定する趣旨ではない。
【0028】
ウエブ部13は、トレーラ1の前後に向かうにつれて、エプロン部20からリヤオーバーハング部24までのそれぞれの高さに応じて、複数の高さに形成されている。つまり、ウエブ部13の高さ寸法が変化することで、メインビーム10のビーム高さが変化するようになっている。
【0029】
図1の(b)および図3に示すように、ウエブ部13は、複数設けられており、メインビーム10の幅方向に分かれて配置されている。ウエブ部13は、メインビーム10の長手方向の一部で、互いに並列して、重合部33を形成している。重合部33は、メインビーム10の前端から後方に延在して、少なくともエプロン部20とネック部21との境界部を含むように形成されている。
【0030】
具体的には、ウエブ部13は、メインビーム10の車幅方向両側部に位置するもの(以下、側方ウエブ部31と称する)と、メインビーム10の車幅方向中間部に位置するもの(以下、中間ウエブ部32と称する)とがある。側方ウエブ部31は、メインビーム10の前端から後方に延在している。側方ウエブ部31の後端31aは、ネック部21の緩傾斜部21aと急傾斜部21bとの境界部よりも後方に位置している。中間ウエブ部32は、メインビーム10の後端から前方に延在している。中間ウエブ部32の前端32aは、緩傾斜部21aと急傾斜部21bとの境界部より前方に位置している。
【0031】
これによって、中間ウエブ部32の前端32aから側方ウエブ部31の後端31aにわたって、幅方向にウエブ部13が3枚並列されて、重合部33(三枚重合部33a)が形成されることとなる(図2の(a)参照)。また、中間ウエブ部32の前端32aよりも前方においても、側方ウエブ部31が2枚並列されているので、重合部33(二枚重合部33b)が形成されている(図2の(b)参照)。
【0032】
図1の(a)および図3に示すように、重合部33におけるウエブ部13の長手方向端面、つまり、中間ウエブ部32の前端面および側方ウエブ部31の後端面は、凹状に窪んで形成されている。これら中間ウエブ部32の前端面および側方ウエブ部31の後端面は、側面視で曲面形状を呈しており、長手方向に沿ってウエブ部13の断面積が徐々に変化するようになっている。
【0033】
以上のようなトレーラ1のフレーム構造2によれば、ビーム材4(メインビーム10)の少なくとも長手方向の一部分に、ウエブ部13を複数並列してなる重合部33を形成したことで、ウエブ部13のビーム高さが低い部分であってもビーム材4の強度を効率的に高めることができる。
【0034】
具体的には、エプロン部20では、図2の(a)に示すように、ウエブ部13はビーム高さが低いが、ウエブ部13は一対の側方ウエブ部31,31で構成されて、重合部33(二枚重合部33b)が形成されているので、補強されている。
【0035】
また、ネック部21の緩傾斜部21aと急傾斜部21bとの境界部周辺では、図2の(b)に示すように、ウエブ部13は一対の側方ウエブ部31,31と中間ウエブ部32とで構成されて、重合部33(三枚重合部33a)が形成されている。特に、この部分は、ウエブ部13のビーム高さが比較的低い上にキングピン28からの距離が長く大きいモーメント力がかかって応力が集中するが、ウエブ部13が3枚並列されているので、十分な補強効果が得られる。なお、ホイールベース部22では、図2の(c)に示すように、ウエブ部13のビーム高さが高いので、十分な強度を有している。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、トラクタ3との連結部分にあって、大きいビーム高さ寸法を確保できないエプロン部20や、ネック部21の緩傾斜部21aと急傾斜部21bとの境界部にあって、大きいモーメント力がかかる部分においてもビーム材4の強度を効率的に高めることができる。
【0037】
また、本実施形態では、重合部33におけるウエブ部13の長手方向端面(中間ウエブ部32の前端32aおよび側方ウエブ部31の後端31a)が、凹状に窪んでいるので、ウエブ部13の断面積が長手方向に沿って徐々に変化する。したがって、ウエブ部13の枚数が変化する部分でウエブ部の断面積の急激な変化を抑制できる。特に、ウエブ部13の枚数が変化する部分(中間ウエブ部32の前端32aおよび側方ウエブ部31の後端31aに相当する部分)でウエブ部13の断面積の急激な変化を抑制する効果は大きく、疲労破壊強度の向上を達成できる。
【0038】
なお、メインビームが鉄等の材質にて形成されている場合は、蓋部材(本実施形態では図示せず)を設ける。蓋部材は、重合部の長手方向端部に設けられる部材で、上フランジ部と下フランジ部と複数のウエブ部とで囲まれた空間を塞ぐようになっている。蓋部材は、メインビームの前端(側部ウエブ部の前端)と、側部ウエブ部の後端に設けられる。蓋部材は、メインビームと同じ材質の板材にて構成される。
【0039】
メインビームの前端の前方蓋部材は、上フランジ部と下フランジ部と一対の側部ウエブ部とで形成された空間の断面と同形状の板材にてなる。その空間の前端開口部に前記板材を取り付けて、その外周部の全周に沿って溶接を行うことで、前方蓋部材がメインビームに固定される。側部ウエブ部の後端の後方蓋部材は、上フランジ部と下フランジ部と一方の側部ウエブ部と中間ウエブ部で形成された空間の断面と同形状の板材にてなる。その空間の後端開口部に、前記板材を取り付けて、その外周部の全周に沿って溶接を行うことで、後方蓋部材がメインビームに固定される。後方蓋部材は、中間ウエブ部の両側にそれぞれ設ける。
【0040】
このような構成によれば、鉄等の部材で形成されたメインビームであっても、防錆加工が困難な、重合部の内側に水が流れ込むのを防止できるので、防錆効果が向上する。本実施形態では、メインビーム10(ビーム材4)がアルミニウム合金等の耐食性を有する材質にて形成されているので蓋部材を設ける必要はない。
【0041】
次に、図6を参照しながら、本発明の他の実施形態に係るメインビーム50について説明する。本実施形態のメインビーム50も、前記実施形態と同様に、上フランジ部(図示せず)と下フランジ部12とウエブ部13とを備えて構成されている。前記実施形態のメインビーム10は、三枚のウエブ部13(二枚の側方ウエブ部31,31と一枚の中間ウエブ部32)を備えていたのに対して、本実施形態のメインビーム50は、二枚のウエブ部13(一枚の側方ウエブ部31と一枚の中間ウエブ部32)を備えている。
【0042】
中間ウエブ部32は、メインビーム50の前端から後端まで延在している。側方ウエブ部31は、メインビーム50の前端から後方に延在している。側方ウエブ部31の後端31aは、ネック部21の緩傾斜部21aと急傾斜部21bとの境界部よりも後方に位置している。側方ウエブ部31は、並設されるメインビーム50側の一方のみに配置されている。
【0043】
これによって、メインビーム50の前端(側方ウエブ部31の前端)から側方ウエブ部31の後端31aにわたって、幅方向にウエブ部13が2枚並列されて、2枚のウエブ部13からなる重合部33が形成されることとなる。
【0044】
側方ウエブ部31の後端面は、凹状に窪んで形成されている。この端面は、側面視で曲面形状を呈しており、長手方向に沿ってウエブ部13の断面積が徐々に変化するようになっている。なお、その他の構成については、前記実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
このような構成によっても、前記実施形態と同様に、ウエブ部13のビーム高さが低い部分であっても重合部33を形成することでビーム材4(メインビーム50)の強度を効率的に高めることができる。なお、本実施形態では、ネック部21の緩傾斜部21aと急傾斜部21bとの境界部におけるウエブ部13は2枚である。これは前記実施形態と比較して少なく補強効果が小さいが、エプロン部20のビーム高さが大きく確保できる場合や、トレーラの全長が短い場合などの、前記境界部にかかる応力が前記実施形態より小さい場合に実施可能である。
【0046】
本実施形態では、側方ウエブ部31が幅方向の一方のみに設けられ、並設されるメインビーム50側に配置されているので、中間ウエブ部32の外側にスペースを確保することができ、各種部材のメインビーム50への設置を容易に行うことができる。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明を前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、メインビーム10,50の形状は、前記実施形態の形状に限定されるものではなく、種々の形状であってもよい。
【0048】
たとえば、図7の(a)に示すメインビーム51は、図1のメインビーム10の中間ウエブ部32の前端が、ネック部21に位置しているのに対して、中間ウエブ部32がメインビーム51の後端から前端の全長に渡って延在している。その他の構成は、図1のメインビーム10と同等である。このような構成によれば、エプロン部20からネック部21の緩傾斜部21aと急傾斜部21bとの境界部の後方まで、3枚のウエブ部13からなる重合部33が形成されるので、図1のメインビーム10よりもエプロン部20のビーム高さを小さくできる。これによって、荷台の床面を低くすることができる。
【0049】
また、図7の(b)に示すメインビーム53は、中間ウエブ部32がメインビーム53の後端から前端の全長に渡って延在しており、幅方向両側の側方ウエブ部31,31がネック部21の緩傾斜部21aと急傾斜部21bとの境界部を挟んで前後に延在して設けられている。このような構成によれば、応力が集中する緩傾斜部21aと急傾斜部21bとの境界部では、3枚のウエブ部13からなる重合部33が形成されて、強度が効率的に高められる。一方、エプロン部20では、ウエブ部13が中間ウエブ部32だけで形成されているので、エプロン部20のビーム高さを比較的高く確保できる場合に適用可能である。なお、図7の(b)中、54は、蓋部材を示す。
【0050】
図7の(c)に示すメインビーム55は、図7の(b)のメインビーム53の側方ウエブ部31の前後端が、前方および後方にそれぞれ延在するとともに、中間ウエブ部32側に屈曲して傾斜部56を形成した形状となっている。前方の傾斜部56の先端(前端)は、中間ウエブ部32の側面に当接して溶接されている。後方の傾斜部56の先端(後端)は、中間ウエブ部32の側面に当接して溶接されている。このような構成によれば、応力が集中する緩傾斜部21aと急傾斜部21bとの境界部では、3枚のウエブ部13からなる重合部33が形成されるとともに、ウエブ部13が箱状に形成されているので、強度がより一層効率的に高められる。一方、メインビーム55においても、エプロン部20では、ウエブ部13が中間ウエブ部32だけで形成されているので、エプロン部20のビーム高さを比較的高く確保できる場合に適用可能である。
【0051】
また、これまで説明した実施形態では、メインビーム10,50,51,53,55は、その上面が前端から後端まで同一レベルに形成されて平面形状を呈しているが、これに限定されるものではない。たとえば、図8に示すメインビーム60のように、ネック部21が斜めに形成され(グースネック)、ホイールベース部22より後部が、エプロン部20よりも低く形成されているものであってもよい。このような構成によれば、荷台の床面を低くすることができ、荷台の体積を増加できるとともに、荷の積下し作業の容易化を図れる。
【0052】
さらに、本発明に係るメインビームは、図5に示すようにメインビームが長手方向に直線状に形成された形状に限定されるものではなく、図9に示すように、ホイールベース部22において、メインビーム61が車幅方向外側に屈曲して、クランク状を呈するメインビーム61であってもよい。車幅方向外側に屈曲して広がったメインビーム61の後部は、再度屈曲して、車長方向に沿うようになっている。これによって、並設されるメインビーム61,61間の距離は、メインビーム61の前部よりも後部が広くなっている。
【0053】
また、前記実施形態では、重合部33は、エプロン部20やネック部21等のトレーラ1の前部に形成されているが、これに限定されるものではない。たとえば、トレーラの後部のアクスル周辺のサスペンションマウンティング部に位置するメインビームに重合部を形成してもよい。このような構成によれば、トレーラの重量が集中するサスペンションマウンティング部も効率的に補強することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 トレーラ
2 フレーム構造
10 メインビーム
11 上フランジ部
12 下フランジ部
13 ウエブ部
20 エプロン部
21 ネック部
21a 緩傾斜部
21b 急傾斜部
22 ホイールベース部
31 側方ウエブ部
31a (側方ウエブ部の)後端
32 中間ウエブ部
32a (中間ウエブ部の)前端
33 重合部
50 メインビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床部にビーム材を備えたトレーラのフレーム構造において、
前記ビーム材は、上フランジ部と下フランジ部とウエブ部とを備えて構成されており、
前記ビーム材の少なくとも長手方向の一部分には、前記ウエブ部を複数並列してなる重合部が形成されている
ことを特徴とするトレーラのフレーム構造。
【請求項2】
前記ビーム材は、車長方向に延在するメインビームを構成しており、
前記メインビームは、ビーム高さの異なる複数の部位が長手方向に連なって形成されており、トラクタとの連結ピンが設けられる低ビーム高さのエプロン部と、前記トラクタの後方に位置する高ビーム高さのホイールベース部と、前記エプロン部と前記ホイールベース部との間に位置しビーム高さが前記ホイールベース部に向かうにつれて大きくなるネック部とを備えてなり、
前記重合部が、前記メインビームの前端から後方に延在して、少なくとも前記エプロン部と前記ネック部との境界部を含むように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のトレーラのフレーム構造。
【請求項3】
前記ネック部は、ビーム高さの増加割合が二段階に変化して形成されており、前部に配置され増加割合が低い緩傾斜部と、後部に配置され増加割合が高い急傾斜部とを備えてなり、
前記複数のウエブ部には、前記メインビームの車幅方向両側部で前端から後方に延在する一対の側方ウエブ部と、前記メインビームの車幅方向中間部で後端から前方に延在する中間ウエブ部とが含まれており、
前記側方ウエブ部の後端は、前記緩傾斜部と前記急傾斜部との境界部よりも後方に位置し、
前記中間ウエブ部の前端は、前記緩傾斜部と前記急傾斜部との境界部よりもよりも前方に位置している
ことを特徴とする請求項2に記載のトレーラのフレーム構造。
【請求項4】
前記ネック部は、ビーム高さの増加割合が二段階に変化して形成されており、前部に配置され増加割合が低い緩傾斜部と、後部に配置され増加割合が高い急傾斜部とを備えてなり、
前記複数のウエブ部には、前記メインビームの車幅方向中間部で前端から後端まで延在する中間ウエブ部と、前記メインビームの車幅方向側部で前端から後方に延在する側方ウエブ部とが含まれており、
前記側方ウエブ部の後端は、前記緩傾斜部と前記急傾斜部との境界部よりも後方に位置している
ことを特徴とする請求項2に記載のトレーラのフレーム構造。
【請求項5】
前記重合部における前記ウエブ部の長手方向端面は、凹状に窪んでいる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のトレーラのフレーム構造。
【請求項6】
前記重合部の長手方向端部には、前記上フランジ部と前記下フランジ部と複数の前記ウエブ部とで囲まれた空間を塞ぐ蓋部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のトレーラのフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−183992(P2011−183992A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53615(P2010−53615)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000229900)日本フルハーフ株式会社 (93)
【Fターム(参考)】