説明

トロイダル型無段変速機及びその組立方法

【課題】各パワーローラ12a、12b、12c、12dに関する変速比のずれを僅少に抑え、各トラクション部の滑りを低く抑えて、これら各トラクション部を構成する各面の耐久性をより向上させると共に、伝達効率を向上させられる構造及びその組立方法を実現する。
【解決手段】端部に設けたプーリ19a、19dに第一の同期ケーブル60a、60cのみを掛け渡す位置に配置したトラニオン17a、17dに関する組立高さを、端部に設けたプーリ59cに第一、第二の2本の同期ケーブル60b、60cを掛け渡す位置に配置したトラニオン17cに関する前記組立高さよりも高くする。又、変速比制御の為のフィードバック機構に関しても、端部に設けたプーリ59bに第一、第二の2本の同期ケーブル60a、60bを掛け渡したトラニオン17bに組み付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用自動変速装置として、或いはポンプ等の各種産業機械の運転速度を調節する為の変速装置として利用する、ハーフトロイダル型のトロイダル型無段変速機の改良に関する。具体的には、パワーローラの傾転角の検出に関する信頼性を確保しつつ、トロイダル型無段変速機の変速比のフィードバック制御に使用する為のセンサの数を少なく抑える事により、製造コストの低減を図り易い構造を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用自動変速装置として使用可能なトロイダル型無段変速機が、例えば特許文献1〜3に記載される等により従来から広く知られている。又、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせて無段変速装置を構成する事も、特許文献4〜6に記載される等により、従来から広く知られている。この様な無段変速装置の構造及び作用に就いて、前記特許文献6の記載を基にして、図1〜6により説明する。この無段変速装置は、トロイダル型無段変速機1と、遊星歯車式変速機2とを組み合わせて成り、入力軸3と出力軸4とを有する。これら入力軸3と出力軸4との間には、前記トロイダル型無段変速機1の入力回転軸5と伝達軸6とを、これら両軸3、4と同心に設けている。そして、前記遊星歯車式変速機2のうちの前段ユニット7と中段ユニット8とを前記入力回転軸5と前記伝達軸6との間に掛け渡す状態で、後段ユニット9をこの伝達軸6と前記出力軸4との間に掛け渡す状態で、それぞれ設けている。
【0003】
又、前記トロイダル型無段変速機1は、1対の入力ディスク10a、10bと、一体型の出力ディスク11と、複数のパワーローラ12a、12b、12c、12dとを備える。このうちの両入力ディスク10a、10bは、前記入力回転軸5を介して互いに同心に、且つ、同期した回転を自在として結合されている。又、前記出力ディスク11は、前記両入力ディスク10a、10b同士の間に、これら両入力ディスク10a、10bと同心に、且つ、これら両入力ディスク10a、10bに対する相対回転を可能として支持されている。更に、前記各パワーローラ12a、12b、12c、12dは、前記出力ディスク11の軸方向両側面と前記両入力ディスク10a、10bの軸方向片側面との間に、それぞれ複数個ずつ(図示の例の場合は2個ずつ、合計4個)挟持されている。そして、前記両入力ディスク10a、10bの回転に伴って回転しつつ、これら両入力ディスク10a、10bと前記出力ディスク11との間で動力を伝達する。
【0004】
又、前記出力ディスク11はその軸方向両端部を、ケーシング13内に、それぞれ1対ずつの支柱14、14と、スラストアンギュラ玉軸受である転がり軸受15、15とにより、回転自在に支持している。又、前記両支柱14、14の両端部近傍に、それぞれ支持板16、16を支持している。そして、これら両支持板16、16同士の間に複数のトラニオン17a、17b、17c、17dを、それぞれの両端部に互いに同心に設けた枢軸18、18を中心とする揺動及び軸方向(図1〜2の上下方向)の変位を可能に支持している。又、前記各トラニオン17a、17b、17c、17dの内側面(互いに対向する面)に前記各パワーローラ12a、12b、12c、12dを、それぞれ支持軸19、19並びにスラスト玉軸受20、20を含む、複数組ずつの転がり軸受を介して、回転並びに前記入力回転軸5の軸方向に関する若干の変位を自在に支持している。そして、前記各パワーローラ12a、12b、12c、12dの周面と、前記両入力ディスク10a、10bの軸方向片側面及び前記出力ディスク11の軸方向両側面とを転がり接触させている。これら各面同士の転がり接触部が、トラクションオイルを介して動力を伝達する、トラクション部となる。
【0005】
前記各トラニオン17a、17b、17c、17dの内側面に前記各パワーローラ12a、12b、12c、12dを支持する、パワーローラユニット21a、21b、21c、21d部分の構造に就いては、例えば特許文献10等に、詳しく記載されている。本発明は、このパワーローラユニット部分の構造(組立高さ寸法)を工夫する事を考慮したものであるから、この部分の構造に就いて、図6により説明する。尚、この図6に示したパワーローラユニット21bは、図2の右側に示した、変速比のフィードバック制御用のプリセスカム22(図2、4参照)を装着する為、ロッド23として、長さ寸法が大きなものを使用している。但し、プリセスカム22を組み込まないパワーローラユニット21a(図2の左側部分参照)に関しても、ロッド23aとして長さ寸法が小さなものを使用する点以外、基本的構成は図6に示した構造と同じである。但し、後述する本発明の実施の形態では、前記各パワーローラユニット21a、21b、21c、21dに組み込むスラストレース24の厚さが、互いに異なる事を前提としている。
【0006】
前記パワーローラユニット21a、21b、21c、21dを構成するトラニオン17a、17b、17c、17dの中間部に形成した円孔25の内側に、偏心軸である支持軸19の基半部を、ラジアルニードル軸受26により、揺動変位を可能に支持している。又、この支持軸19の先半部に前記各パワーローラ12a、12b、12c、12dを、別のラジアルニードル軸受27により、回転自在に支持している。更に、このパワーローラ12a、12b、12c、12dの外側面と前記トラニオン17a、17b、17c、17dの内側面との間に、スラスト玉軸受20とスラストニードル軸受28とを、前記パワーローラ12a、12b、12c、12dの側から順番に設けている。このうちのスラスト玉軸受20は、このパワーローラ12a、12b、12c、12dの内側面に形成した内輪軌道と、スラスト外輪29の外側面に形成した外輪軌道との間に複数個の玉30、30を、保持器により保持した状態で転動自在に配置して成る。又、前記スラストニードル軸受28は、前記トラニオン17aの内側面に添設された前記スラストレース24と前記スラスト外輪29の外側面との間に複数本のニードル31、31を、保持器により保持した状態で転動自在に配置して成る。
【0007】
又、前記入力回転軸5の基端部(図1の左端部)を図示しないエンジンのクランクシャフトに、前記入力軸3を介して結合し、このクランクシャフトにより前記入力回転軸5を回転駆動する様にしている。又、前記入力回転軸5の基端部と、前記エンジンに近い側(図1の左側)の入力ディスク10aとの間に、油圧式の押圧装置32を設け、前記各トラクション部に、適正な面圧を付与できる様にしている。又、前記出力ディスク11の中心部に、中空回転軸33の基端部(図1の左端部)をスプライン係合させている。そして、この中空回転軸33を、前記エンジンから遠い側(図1の右側)の入力ディスク10bの内側に挿通して、前記出力ディスク11の回転力を取り出し可能としている。更に、前記中空回転軸33の先端部(図1の右端部)で前記入力ディスク10bの外側面から突出した部分に、前記遊星歯車式変速機2の前段ユニット7を構成する為の、太陽歯車34を固設している。
【0008】
一方、前記入力回転軸5の先端部(図1の右端部)で前記中空回転軸33から突出した部分と前記入力ディスク10bとの間に、キャリア35を掛け渡す様に設けて、この入力ディスク10bと前記入力回転軸5とが、互いに同期して回転する様にしている。そして、前記キャリア35の軸方向両側面の円周方向等間隔位置(一般的には3〜4個所位置)に、それぞれがダブルピニオン型であって前記遊星歯車式変速機2の前段ユニット7及び前記中段ユニット8を構成する遊星歯車36〜38を、回転自在に支持している。更に、前記キャリア35の片半部(図1の右半部)周囲にリング歯車39を、回転自在に支持している。又、前記伝達軸6の基端部(図1の左端部)に固設した第二太陽歯車40を、前記リング歯車39の内径側に配置している。
【0009】
又、前記後段ユニット9を構成する為の第二キャリア41を、前記出力軸4の基端部(図1の左端部)に結合固定している。そして、この第二キャリア41と前記リング歯車39とを、低速用クラッチ42を介して結合している。又、前記伝達軸6の先端寄り(図1の右端寄り)部分に第三太陽歯車43を固設している。又、この第三太陽歯車43の周囲に第二リング歯車44を配置し、この第二リング歯車44と前記ケーシング13等の固定の部分との間に、高速用クラッチ45を設けている。更に、前記第二リング歯車44と前記第三太陽歯車43との間に配置した複数組の遊星歯車46、47を、前記第二キャリア41に回転自在に支持している。
【0010】
上述の様に構成する無段変速装置の場合、前記入力回転軸5から1対の入力ディスク10a、10b、各パワーローラ12a、12b、12c、12dを介して一体型の出力ディスク11に伝わった動力は、前記中空回転軸33を通じて取り出される。そして、前記低速用クラッチ42を接続し、前記高速用クラッチ45の接続を断った、所謂低速モードの状態では、前記トロイダル型無段変速機1の変速比を調節する事により、前記入力回転軸5の回転速度を一定にしたまま、前記出力軸4の回転速度を、所謂ギヤードニュートラル(G/N)と呼ばれる停止状態(速度比無限大の状態)を挟んで正転、逆転に変換自在となる。一方、前記高速用クラッチ45を接続し、前記低速用クラッチ42の接続を断った、所謂高速モードの状態では、前記トロイダル型無段変速機1の変速比を増速側に変化させる程、無段変速装置全体としての速度比も増速側に変化する。前記低速、高速両モードでの、前記トロイダル型無段変速機1の変速比と前記無段変速装置の速度比との関係、各モード状態でこのトロイダル型無段変速機1を通過するトルクの方向及び大きさ等に就いては、特許文献5、7、9等に記載されて従来から広く知られている為、図示並びに詳しい説明は省略する。
【0011】
上述の様な無段変速装置に組み込まれたトロイダル型無段変速機1の変速比の調節は、前記各トラニオン17a、17b、17c、17dを、前記ケーシング13内の下部に固定されたシリンダボディー48内に設けた複数の油圧式のアクチュエータ49、49により、前記各枢軸18、18の軸方向に変位させる事により行う。前記各トラニオン17a、17b、17c、17dをこれら各枢軸18、18の軸方向に変位させると、これら各トラニオン17a、17b、17c、17dに支持された前記各パワーローラ12a、12b、12c、12dの周面と、前記各ディスク10a、10b、11の軸方向側面との転がり接触部(トラクション部)に作用する接線方向の力の向きが、前記各枢軸18、18の軸方向に対し変化する。具体的には、各トラクション部が中立位置(各トラクション部の中心が、前記各ディスク10a、10b、11の中心軸を含み、前記各枢軸18、18の中心軸同士を結ぶ仮想直線に対し直交する仮想平面上に存在する状態)からずれると、ずれの方向に応じ、前記各トラニオン17a、17b、17c、17dに、前記各枢軸18、18を中心として、減速側又は増速側に揺動させる方向の力が加わる。そして、前記各トラクション部の位置が、前記各ディスク10a、10b、11の径方向に関して変化し、前記変速比が変化する。この変速比が所望の値になった状態で、前記各トラクション部を前記中立位置に戻せば、前記トロイダル型無段変速機1の変速比を、前記所望の値に保持できる。
【0012】
上述の様に、前記トロイダル型無段変速機1の変速比を所望の値に調節し、調節後の値に保持する為の機構に就いて、特許文献8の記載に基づいて説明する。この機構は、図4に示す様に、変速比制御弁50と、ステッピングモータ51と、プリセスカム22とにより構成している。このうちの変速比制御弁50は、スプール53とスリーブ54とを、軸方向の相対変位を可能に組み合わせたもので、これらスプール53とスリーブ54との相対変位に基づき、油圧源55と、前記アクチュエータ49の油圧室56a、56bとの給排状態を切り換える。又、前記スプール53とスリーブ54とは、前記各トラニオン17a、17b、17c、17dのうちの何れか1個のトラニオン17bの動きと前記ステッピングモータ51とにより、相対変位させる様にしている。又、前記プリセスカム22は、各トラニオン17a、17b、17c、17dの下端部から連続して、前記各アクチュエータ49、49のピストン57、57に連結したロッド23、23aのうちの何れか1個(図2の左側)のトラニオン17bに連結したロッド23の先端部(図2の下端部)に固定している。そして、この何れか1個のトラニオン17bの動き、即ち、前記枢軸18の軸方向の変位及びこの枢軸18を中心とする揺動変位を、前記プリセスカム22及びリンク腕58を介して前記スプール53に伝達し、このスプール53を軸方向に変位させる様にしている。又、前記ステッピングモータ51により、前記スリーブ54を軸方向に変位させる様にしている。
【0013】
前記トロイダル型無段変速機1の変速比を調節する際には、前記ステッピングモータ51により前記スリーブ54を所定位置にまで変位させ、前記変速比制御弁50を所定方向に開く。すると、前記各トラニオン17a、17b、17c、17dに付属の前記各アクチュエータ49、49の油圧室56a、56bに対して圧油が所定方向に給排されて、これら各アクチュエータ49、49により前記各トラニオン17a、17b、17c、17dが、それぞれ前記各枢軸18、18の軸方向に変位する。この結果、これら各トラニオン17a、17b、17c、17dに支持された前記各パワーローラ12a、12b、12c、12dに関する前記各トラクション部が前記中立位置からずれて、前記変速比が変化し始める。この様に前記各トラクション部が中立位置からずれて変速比が変化し始める瞬間には、前記各トラニオン17a、17b、17c、17dの軸方向変位に伴って、前記変速比制御弁50の開閉状態が、前記所定方向とは逆方向に切り換わる。従って、前記各トラニオン17a、17b、17c、17dは、変速の為に揺動変位を開始し始めた瞬間から、軸方向に関して中立位置に向け移動し(戻り)始める。そして、前記変速比が前記所望の値になった状態で、前記各トラクション部が前記中立位置に戻ると同時に、前記変速比制御弁50が閉じられる。この結果、前記トロイダル型無段変速機1の変速比が、前記所望の値に保持される。
【0014】
尚、前記トロイダル型無段変速機1の場合、エンジンの起動、停止時にも前記各パワーローラ12a、12b、12c、12d同士の傾斜角度がずれるのを防止する為に、機械的な同期機構を組み込んでいる。即ち、前記エンジンの起動時に、前記各アクチュエータ49、49の油圧室56a、56b内の油圧が十分に立ち上がる以前に前記各パワーローラ12a、12b、12c、12d同士の傾斜角度がずれたり、前記エンジンの停止時に、前記トロイダル型無段変速機1への入力回転が不安定になり、前記各パワーローラ12a、12b、12c、12dのトラクション部の滑り状態が互いに相違する事に伴って、前記各パワーローラ12a、12b、12c、12dの傾斜角度がずれる事を防止する為、前記同期機構を設けている。この同期機構は、プーリ59a、59b、59c、59dと、同期ケーブル60a、60b、60cとで構成されている。このうちの各プーリ59a、59b、59c、59dは、前記各ロッド23、23aの基端部(図2の上端部)にこれら各ロッド23、23aと軸方向及び回転方向に関して同期して変位可能な状態で固定している。又、前記各プーリ59a、59b、59c、59dの外周面には凹溝61が全周に亙り形成されており、このうちのプーリ59b、59cに関しては、この凹溝61の上方に別の凹溝61aが形成されている。
【0015】
又、前記各同期ケーブル60a、60b、60cは、図5に示す様な状態で、前記各トラニオン17a、17b、17c、17d(図2〜3参照)に掛け渡している。このうちの図5の上下方向に掛け渡した同期ケーブル60a、60cは、同一キャビティ(互いに対向する1対の入力側、出力側両ディスクの内側面同士の間部分)内に配置された1対のトラニオン17a、17b同士、トラニオン17c、17d同士の揺動角度を一致させる為のものである。これに対して、図5の斜め方向に掛け渡した同期ケーブル60bは、異なるキャビティに配置されたトラニオン17b、17c同士の間で揺動角度を一致させる為のものである。
【0016】
上述の様な同期ケーブル60a、60b、60cは、前記各枢軸18、18を中心とする前記各トラニオン17a、17b、17c、17dの傾斜角度である傾転角を一致させる面からは或る程度の効果がある。但し、何れか乃至は総てのトラクション部で、過大な滑りであるグロススリップが発生するのをより確実に防止する面からは、改良の余地がある。即ち、前記各同期ケーブル60a、60b、60cの存在に基づき、前記各トラニオン17a、17b、17c、17dの両端部に設けた前記各枢軸18、18を揺動変位自在に支持しているラジアルニードル軸受62、62に加わるラジアル荷重が過大になる事を防止する必要がある。この理由は、これら各ラジアルニードル軸受62、62の耐久性確保と、前記各枢軸18、18を中心とする前記各トラニオン17a、17b、17c、17dの揺動変位を円滑に行わせる為とである。この様な理由により、前記各同期ケーブル60a、60b、60cの張力を過大にできない。言い換えれば、これら各同期ケーブル60a、60b、60cには、僅かながら緩みを持たせる必要があり、この緩みの分だけ、前記各トラニオン17a、17b、17c、17dの傾転角がずれる可能性がある。
【0017】
ところで、図5から明らかな通り、前記各トラニオン17a、17b、17c、17dの端部に固定したプーリ59a、59b、59c、59dには、前記各同期ケーブル60a、60b、60cが均等に掛け渡されている訳ではない。図5で左上位置及び右下位置に存在する各トラニオン17a、17dの端部に固定したプーリ59a、59dには、1本の同期ケーブル60a又は60cだけが掛け渡されている。これに対して、図5の左下位置及び右上位置に存在する各トラニオン17b、17cの端部に固定したプーリ59b、59cには、それぞれ2本ずつの同期ケーブル60a、60b又は60b、60cが掛け渡されている。そして、端部に固定したプーリに同期ケーブルが1本のみ掛け渡されたトラニオンに比べて、2本の同期ケーブルが掛け渡されたトラニオンの方が、他のトラニオンと傾転角度を一致させる方向に大きな作用(補助力)を受ける。
【0018】
一方、前記グロススリップは、前記各トラクション部のトラクション係数μが高い程、発生し易い。トラクション係数μは、トラクション部の接線力(トラクション力)Ftを法線力Fcで除した(μ=Ft/Fc)値であるから、前記各トラクション部の面圧が低い程、前記トラクション係数μは高くなる。又、この面圧は、前記各パワーローラユニット21a、21b、21c、21dの組立高さが低い程、低くなる。従って、この組立高さが低いパワーローラユニットに組み付けたプーリに、前記同期ケーブルを2本掛け渡す様にすれば、グロススリップの発生を、より有効に防止できる。但し、従来は、組立高さとの関係で前記各パワーローラユニット21a、21b、21c、21dの設置位置を規制する事は行われていなかった。
【0019】
又、トロイダル型無段変速機全体としての変速比を調節する為のフィードバック機構を組み付けたパワーローラユニットを構成するパワーローラのトラクション部で、グロススリップ若しくはそれに近い様な大きな滑りが発生すると、前記変速比調節の精度が悪化する。例えば、前記フィードバック機構を、図5で左上位置又は右下位置に存在するパワーローラユニット21a又は21dに組み付けた場合、当該パワーローラユニット21a又は21dに組み込んだパワーローラ12a又は12dのトラクション部の滑りが大きくなると、当該パワーローラ12a又は12dに関する変速比の、他のパワーローラの変速比とのずれが大きくなり易い。これらの事を考慮すれば、前記フィードバック機構は、端部に設けたプーリに前記同期ケーブルを2本掛け渡したトラニオンに組み付ける事が、前記変速比調節の精度を向上させる面からは有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平7−208569号公報
【特許文献2】特開平11−166605号公報
【特許文献3】特開2007−298098号公報
【特許文献4】特開平11−63146号公報
【特許文献5】特開2000−346190号公報
【特許文献6】特開2009−30749号公報
【特許文献7】特開2004−308853号公報
【特許文献8】特開2006−283800号公報
【特許文献9】特開2002−89678号公報
【特許文献10】特開平11−153203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、各パワーローラに関する変速比のずれをより僅少に抑え、各トラクション部の滑りをより低く抑えて、これら各トラクション部を構成する各面の耐久性をより向上させると共に、伝達効率をより一層向上させられる構造及びその組立方法を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の対象となるトロイダル型無段変速機は、何れの発明に関しても、前述した従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、1対の外側ディスクと、内側ディスクと、それぞれ複数個ずつ互いに同数の、トラニオンとパワーローラとロッドとアクチュエータとを備える。又、油圧切換弁と、フィードバック機構と、前記各トラニオンの端部に支持固定されたプーリと、これら各プーリ同士の間に掛け渡された複数の第一ケーブルと、第二の同期ケーブルとを備える。
【0023】
特に、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機に於いては、前記各パワーローラの回転中心軸の方向に関して、前記各トラニオンの揺動中心から、前記各ディスクの軸方向側面と前記各パワーローラの周面との転がり接触部であるトラクション部までの距離である組立高さを規制している。そして、端部に設けたプーリに前記第一の同期ケーブルのみを掛け渡す位置に配置したトラニオンに関する前記組立高さを、端部に設けた前記プーリに前記第一の同期ケーブルと前記第二の同期ケーブルとの両方の同期ケーブルを掛け渡す位置に配置したトラニオンのうち、少なくとも一方のトラニオンに関する前記組立高さよりも高くしている。
【0024】
上述の様な請求項1に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記フィードバック機構を、端部に設けたプーリに前記第一の同期ケーブルと前記第二の同期ケーブルとの両方のケーブルを掛け渡したトラニオンに組み付ける。但し、この様な請求項2に記載した発明を実施する場合に、より好ましくは、前記フィードバック機構を組み付けるトラニオンとして、組立高さが低いものを使用する事は避ける。好ましくは、最も組立高さが高いものを使用する。
【0025】
又、請求項3に記載した組立方法に関する発明は、上述の様なトロイダル型無段変速機を組み立てる際に、先ず、前記各トラニオンの内側面側に前記各パワーローラユニットを回転自在に組み付けてパワーローラユニットとした後、これら各パワーローラユニットの組立高さを測定する。そして、この組立高さが最も低いパワーローラユニットを、端部に設けた前記プーリに前記第一の同期ケーブルと前記第二の同期ケーブルとの両方のケーブルを掛け渡す位置に配置した状態で、他の部材と組み合わせる。
【0026】
更に、請求項4に記載したトロイダル型無段変速機に於いては、前記フィードバック機構を、端部に設けたプーリに前記第一の同期ケーブルと前記第二の同期ケーブルとの両方のケーブルを掛け渡したトラニオンに組み付ける。各トラニオンに関する組立高さに関しては、特に問わないが、できるだけ、組立高さの相互差を小さく抑える。
【発明の効果】
【0027】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機によれば、各パワーローラに関する変速比のずれをより僅少に抑え、各トラクション部の滑りをより低く抑えて、これら各トラクション部を構成する各面の耐久性をより向上させると共に、伝達効率をより一層向上させられる。
【0028】
先ず、請求項1、3に記載した発明によれば、内側面に回転自在に支持したパワーローラに関するトラクション部で、比較的滑りが発生し易いトラニオンの端部に固定したプーリに、2本の同期ケーブルを掛け渡している。2本の同期ケーブルが掛け渡されている事は、他の2個のトラニオンの動きを受けて、その傾転角を規制される事に繋がる。要するに、同期ケーブルを1本のみ掛け渡されただけで、他の1個のトラニオンの動きのみを受けるトラニオンに比べて、他のトラニオンと傾転角度を一致させる方向に大きな作用(補助力)を受ける。この為、最も滑り易い、前記組立高さが最も低いパワーローラに関する変速比の、他のパワーローラの変速比からのずれを小さく抑えられる。
【0029】
又、請求項2、4に記載した発明の場合には、フィードバック機構を組み付けたトラニオンの傾転角の、他のトラニオンの傾転角とのずれを僅少に抑えられて、フィードバック機構を組み付けたトラニオンに支持したパワーローラに関する変速比の、他のパワーローラの変速比とのずれを僅少に抑えられる。この結果、トロイダル型無段変速機全体としての変速比調節の精度を向上させる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の対象となるトロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の1例を示す断面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】一部を省略して示す、図2のB−B断面図。
【図4】変速比制御の為の油圧制御装置部分の略断面図。
【図5】同期ケーブルのトラニオンへの掛け渡し状態の1例を示す断面図。
【図6】本発明を実施する場合に使用する、トラニオンとパワーローラとを組み合わせて成るパワーローラユニットの1例を示す断面図。
【図7】このパワーローラユニットの組立高さを測定する状態を示す端面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態の1例に就いて、前述の図1〜6に図7を加えて説明する。尚、本例を含めて本発明の特徴は、各パワーローラに関する変速比のずれをより僅少に抑え、各トラクション部の滑りをより低く抑えて、これら各トラクション部を構成する各面の耐久性をより向上させると共に、伝達効率をより一層向上させる為の構造及びその組立方法にある。その他の部分の構造及び作用は、前述した従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様であるから、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0032】
本例のトロイダル型無段変速機は、所謂ダブルキャビティ型と呼ばれるもので、入力回転軸5の両端部に、それぞれが外側ディスクである1対の入力ディスク10a、10bを、同期した回転を自在に設置している。又、前記入力回転軸5の中間部周囲に、内側ディスクである出力ディスク11を、この入力回転軸5とは独立した回転を可能に支持している。そして、この出力ディスク11の軸方向両側面と前記両入力ディスク10a、10bの軸方向片側面との間に存在する1対のキャビティ部分に、これら両キャビティ毎に2個ずつ、合計4個のパワーローラ12a、12b、12c、12dを挟持している。これら各パワーローラ12a、12b、12c、12dは、前述の図6により説明した通りの構造により、それぞれトラニオン17a、17b、17c、17dの内側面側に、回転自在に支持している。そして、何れか1個のトラニオン17bにその基端部(図2の上端部)を結合したロッド23の先端部(図2の下端部)に、プリセスカム22を結合固定して、トロイダル型無段変速機1の変速比を制御する為のフィードバック機構を構成している。このフィードバック機構の構造及び作用に就いても、前述した従来構造と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0033】
特に、本例のトロイダル型無段変速機1の場合には、図3に示す様に、各キャビティ毎に2組ずつ、合計4組設けたパワーローラユニット21a、21b、21c、21dの配置を、これら各パワーローラユニット21a、21b、21c、21dの組立高さとの関係で規制している。具体的には、これら4個のパワーローラユニット21a、21b、21c、21dのうち、最も組立高さが小さいパワーローラユニット21cを、図3、5の右上(図3の▲3▼位置)に配置している。このパワーローラユニット21cを構成するトラニオン17cの端部に固定したプーリ59cには、2本の同期ケーブル60b、60cを掛け渡している。尚、前記プリセスカム22を組み付けた(図3の▲2▼位置の)トラニオン17bに固定したプーリ59bにも、2本の同期ケーブル60a、60bを掛け渡している。但し、前記プリセスカム22を組み付けたトラニオン17bを含んで構成した、前記パワーローラユニット21bの組立高さに関しては、前記パワーローラユニット21cよりも高い事は勿論、他のパワーローラ21a、21dに比べても低くはない。好ましくは、前記パワーローラユニット21bの組立高さを最も高く(但し、前記他のパワーローラ21a、21dの組立高さとの差を可及的僅少に)する。
【0034】
尚、前記組立高さとは、これら各パワーローラユニット21a、21b、21c、21dに組み込んだパワーローラ12a、12b、12c、12dの回転中心軸の方向に関して、前記各トラニオン17a、17b、17c、17dの揺動中心である、前記各枢軸18、18の中心から、前記各パワーローラ12a、12b、12c、12dに関するトラクション部(トラクション部に存在する接触楕円の中心)までの距離を言う。この様な組立高さは、前述の特許文献10の図6に記載されている様な方法により測定する。この測定方法に関して、図7により簡単に説明する。
【0035】
トラニオン17(17a、17b、17c、17d)の両端部に設けた枢軸18を支持板16、16(図1〜2参照)に揺動変位自在に支持する為、パワーローラユニット21(21a、21b、21c、21d)の両端部に設けられたラジアルニードル軸受62の外輪63を、Vブロック64の上面に当接させる。この状態で、前記パワーローラユニット21(21a、21b、21c、21d)のパワーローラ12(12a、12b、21c、12d)に測定治具65を被せる。この測定治具65の下面には、入力、出力各ディスク10a、10b、11の軸方向側面(トロイド曲面)と同じ母線形状を有する球状凹面66を形成している。この様な球状凹面66と前記パワーローラ12(12a、12b、12c、12d)の周面とを当接させ、前記測定治具65の上面と、前記Vブロック64を固定した定盤67の上面とを平行にした状態で、これら両上面間の距離を測定する。この距離そのものが前記組立高さにはならないが、互いの間には幾何学的に一定の関係が存在するので、この組立高さを求められる。
【0036】
そして、測定結果により、前記各パワーローラユニット21a、21b、21c、21dの組み立て高さを把握したならば、これら各パワーローラユニット21a、21b、21c、21dを、前述の様に配置する。具体的には、最も組立高さが低いパワーローラユニット21cを、図3、5の右上に配置する。又、最も組立高さが高いパワーローラユニット21bを、図3、5の左下に配置し、このパワーローラユニット21bに、前記プリセスカム22を含む、前記フィードバック機構を組み付ける。尚、前記各パワーローラユニット21a、21b、21c、21dの組み立て高さの差が不適切である場合には、他のパワーローラユニットとの組み合わせを考慮するか、スラストレース24を厚さの異なるものと交換する等により、組立高さの調節を行う。この為に、このスラストレース24として、厚さが僅かずつ異なるものを複数種類用意しておく。
【0037】
上述の様に構成する本例のトロイダル型無段変速機によれば、前記各パワーローラ12a、12b、12c、12dに関する変速比のずれをより僅少に抑え、各トラクション部の滑りをより低く抑えて、これら各トラクション部を構成する各面の耐久性をより向上させると共に、伝達効率をより一層向上させられる。即ち、内側面に回転自在に支持したパワーローラ12cに関するトラクション部で、比較的滑りが発生し易いトラニオン17cの端部に固定したプーリ59cに、2本の同期ケーブル60b、60cを掛け渡している。従って、前記トラニオン17cには、前記2本の同期ケーブル60b、60cを介して、他の2個のトラニオン17b、17dの動きが伝達される。この為、前記比較的滑りが発生し易いトラニオン17cは、仮に前記パワーローラ12cのトラクション部で過大な滑りが発生しても、前記他の2個のトラニオン17b、17dの動きを受けて、その傾転角を規制される。この結果、前記組立高さが低いパワーローラユニット21cを構成するトラニオン17cは、他のパワーローラユニット21b、21dを構成するトラニオン17b、17dと傾転角度を一致させる方向に大きな補助力を受けて、前記過大な滑りが発生する傾向に拘らず、変速比のずれを小さく抑えられる。従って、前記パワーローラユニット21cを構成するパワーローラ12cのトラクション部に関しても、グロススリップの発生を抑えられる。
【0038】
又、本例の構造の場合には、前記フィードバック機構を構成するプリセスカム22を組み付けたトラニオン17bに関しても、端部に設けたプーリ59bに2本の同期ケーブル60a、60bを掛け渡して、他のトラニオン17a、17cの傾転角とのずれを僅少に抑えている。従って、前記フィードバック機構を組み付けたトラニオン17bに支持したパワーローラ12bに関する変速比の、他のパワーローラ12a、12cの変速比とのずれを僅少に抑えられる。この結果、トロイダル型無段変速機全体としての変速比調節の精度を向上させる事ができる。
【符号の説明】
【0039】
1 トロイダル型無段変速機
2 遊星歯車式変速機
3 入力軸
4 出力軸
5 入力回転軸
6 伝達軸
7 前段ユニット
8 中段ユニット
9 後段ユニット
10a、10b 入力ディスク
11 出力ディスク
12、12a、12b、12c、12d パワーローラ
13 ケーシング
14 支柱
15 転がり軸受
16 支持板
17、17a、17b、17c、17d トラニオン
18 枢軸
19 支持軸
20 スラスト玉軸受
21、21a、21b、21c、21d パワーローラユニット
22 プリセスカム
23、23a ロッド
24 スラストレース
25 円孔
26 ラジアルニードル軸受
27 ラジアルニードル軸受
28 スラストニードル軸受
29 スラスト外輪
30 玉
31 ニードル
32 押圧装置
33 中空回転軸
34 太陽歯車
35 キャリア
36 遊星歯車
37 遊星歯車
38 遊星歯車
39 リング歯車
40 第二太陽歯車
41 第二キャリア
42 低速用クラッチ
43 第三太陽歯車
44 第二リング歯車
45 高速用クラッチ
46 遊星歯車
47 遊星歯車
48 シリンダボディー
49 アクチュエータ
50 変速比制御弁
51 ステッピングモータ
53 スプール
54 スリーブ
55 油圧源
56a、56b 油圧室
57 ピストン
58 リンク腕
59a、59b、59c、59d プーリ
60a、60b、60c 同期ケーブル
61、61a 凹溝
62 ラジアルニードル軸受
63 外輪
64 Vブロック
65 測定治具
66 球状凹面
67 定盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する軸方向側面をトロイド曲面とし、互いに同心に、且つ、互いに同期した回転を自在に組み合わされた1対の外側ディスクと、これら両外側ディスクの軸方向側面に対向する軸方向両側面をトロイド曲面とし、軸方向に関してこれら両外側ディスク同士の間の中央部分に、これら両外側ディスクに対する相対回転を自在に支持された内側ディスクとを備え、これら両外側ディスクの軸方向側面とこの内側ディスクの軸方向両側面との間にそれぞれ設けられた1対のキャビティ部分で、軸方向に関してこれら各ディスクの中間位置に配置され、それぞれがこれら各ディスクの中心軸に対し捩れの位置に存在する枢軸を中心として揺動変位する、前記両キャビティ毎に複数個ずつのトラニオンと、これら各トラニオンの内側面に、それぞれ少なくともスラスト玉軸受により回転自在に支持された状態で、部分球状凸面であるそれぞれの周面を前記各ディスクの軸方向側面に転がり接触させた、複数個のパワーローラと、前記各トラニオンの端部に一体、若しくは一体的に前記枢軸と同心に結合固定されて、これら各トラニオンと共に変位するロッドと、これら各ロッドの外周面の一部に、少なくとも軸方向に関してこれら各ロッドに対する変位を阻止された状態で設けられたピストンを含んで構成され、圧油の給排に基づいてこれら各ロッドをそれぞれの軸方向に変位させる、油圧式のアクチュエータと、これら各アクチュエータへの圧油の給排状態を切り換える為の油圧切換弁と、前記各ロッドのうちの何れか1本のロッドの、軸方向に関する変位と回転方向に関する変位とを合成して、前記油圧切換弁を構成して前記給排状態の切り換えに寄与する部材に伝達するフィードバック機構と、前記各トラニオンの端部に、前記各枢軸と同心に支持固定されたプーリと、同じキャビティ内に配置された複数個のトラニオンの端部に支持固定されたプーリ同士の間に掛け渡されて、これら同じキャビティ内に配置された各トラニオンの、前記各枢軸を中心とする傾斜角度である傾転角を同期させる複数の第一の同期ケーブルと、異なるキャビティに配置された1対のトラニオンの端部に支持固定されたプーリ同士の間に掛け渡されて、これら異なるキャビティ内に配置された前記両トラニオンの傾転角を同期させる第二の同期ケーブルとを備えたトロイダル型無段変速機に於いて、
前記各パワーローラの回転中心軸の方向に関して、前記各トラニオンの揺動中心から、前記各ディスクの軸方向側面と前記各パワーローラの周面との転がり接触部であるトラクション部までの距離である組立高さを規制し、端部に設けたプーリに前記第一の同期ケーブルのみを掛け渡す位置に配置したトラニオンに関する前記組立高さを、前記プーリに前記第一の同期ケーブルと前記第二の同期ケーブルとの両方の同期ケーブルを掛け渡す位置に配置したトラニオンのうち、少なくとも一方のトラニオンに関する前記組立高さよりも高くした事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
前記フィードバック機構を、端部に設けたプーリに前記第一の同期ケーブルと前記第二の同期ケーブルとの両方のケーブルを掛け渡したトラニオンに組み付けた、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載したトロイダル型無段変速機を組み立てる際に、前記各トラニオンの内側面側に前記各パワーローラユニットを回転自在に組み付けてパワーローラユニットとした後、これら各パワーローラユニットの組立高さを測定し、この組立高さが最も低いパワーローラユニットを、端部に設けた前記プーリに前記第一の同期ケーブルと前記第二の同期ケーブルとの両方のケーブルを掛け渡す位置に配置した状態で、他の部材と組み合わせる事を特徴とするトロイダル型無段変速機の組立方法。
【請求項4】
互いに対向する軸方向側面をトロイド曲面とし、互いに同心に、且つ、互いに同期した回転を自在に組み合わされた1対の外側ディスクと、これら両外側ディスクの軸方向側面に対向する軸方向両側面をトロイド曲面とし、軸方向に関してこれら両外側ディスク同士の間の中央部分に、これら両外側ディスクに対する相対回転を自在に支持された内側ディスクとを備え、これら両外側ディスクの軸方向側面とこの内側ディスクの軸方向両側面との間にそれぞれ設けられた1対のキャビティ部分で、軸方向に関してこれら各ディスクの中間位置に配置され、それぞれがこれら各ディスクの中心軸に対し捩れの位置に存在する枢軸を中心として揺動変位する、前記両キャビティ毎に複数個ずつのトラニオンと、これら各トラニオンの内側面に、それぞれ少なくともスラスト玉軸受により回転自在に支持された状態で、部分球状凸面であるそれぞれの周面を前記各ディスクの軸方向側面に転がり接触させた、複数個のパワーローラと、前記各トラニオンの端部に一体、若しくは一体的に前記枢軸と同心に結合固定されて、これら各トラニオンと共に変位するロッドと、これら各ロッドの外周面の一部に、少なくとも軸方向に関してこれら各ロッドに対する変位を阻止された状態で設けられたピストンを含んで構成され、圧油の給排に基づいてこれら各ロッドをそれぞれの軸方向に変位させる、油圧式のアクチュエータと、これら各アクチュエータへの圧油の給排状態を切り換える為の油圧切換弁と、前記各ロッドのうちの何れか1本のロッドの、軸方向に関する変位と回転方向に関する変位とを合成して、前記油圧切換弁を構成して前記給排状態の切り換えに寄与する部材に伝達するフィードバック機構と、前記各トラニオンの端部に、前記各枢軸と同心に支持固定されたプーリと、同じキャビティ内に配置された複数個のトラニオンの端部に支持固定されたプーリ同士の間に掛け渡されて、これら同じキャビティ内に配置された各トラニオンの、前記各枢軸を中心とする傾斜角度である傾転角を同期させる複数の第一の同期ケーブルと、異なるキャビティに配置された1対のトラニオンの端部に支持固定されたプーリ同士の間に掛け渡されて、これら異なるキャビティ内に配置された前記両トラニオンの傾転角を同期させる第二の同期ケーブルとを備えたトロイダル型無段変速機に於いて、前記フィードバック機構を、端部に設けたプーリに前記第一の同期ケーブルと前記第二の同期ケーブルとの両方のケーブルを掛け渡したトラニオンに組み付けた事を特徴とするトロイダル型無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−241789(P2012−241789A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112008(P2011−112008)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】