説明

トロイダル型無段変速機

【課題】加工コストの低減及び小型・軽量化を図り易い構造を実現する。
【解決手段】
複数個のパワーローラ12c、12c同士の傾転角を機械的に同期させる為の同期機構を構成する、複数個のプーリ61のうち、何れかのプーリ61を、プーリとプリセスカムとを一体若しくは一体的に組み合わせたプリセスカム付プーリ62とする。そして、このプリセスカム付プーリ62及び残りのプーリ61を、トラニオン17d、17dに一体、若しくは一体的に設けられたロッド49a、49aに対し、軸方向及び回転方向に関して、これら各ロッド49a、49aと同期して変位可能に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用自動変速装置として、或はポンプ等の各種産業機械の運転速度を調節する為の変速装置として利用するトロイダル型無段変速機の改良に関する。具体的には、トロイダル型無段変速機の変速比を制御する為のプリセスカム、及び、動力伝達の為のパワーローラの傾転角を機械的に同期させる為のプーリの構造を工夫する事により、加工コストの低減及び小型・軽量化を図り易い構造を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用自動変速装置として使用可能なトロイダル型無段変速機が、例えば特許文献1〜3に記載される等により従来から広く知られている。又、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせて無段変速装置を構成する事も、特許文献4〜6に記載される等により、従来から広く知られている。この様な無段変速装置の構造及び作用に就いて、前記特許文献6の記載を基にして、図5〜6により説明する。この無段変速装置は、トロイダル型無段変速機1と、遊星歯車式変速機2とを組み合わせて成り、入力部材である入力軸3と、出力部材である出力軸4とを有する。これら入力軸3と出力軸4との間には、前記トロイダル型無段変速機1の入力回転軸5と伝達軸6とを、これら両軸3、4と同心に設けている。そして、前記遊星歯車式変速機2のうちの前段ユニット7と中段ユニット8とを前記入力回転軸5と前記伝達軸6との間に掛け渡す状態で、後段ユニット9をこの伝達軸6と前記出力軸4との間に掛け渡す状態で、それぞれ設けている。
【0003】
又、前記トロイダル型無段変速機1は、1対の入力ディスク10a、10bと、一体型の出力ディスク11と、複数のパワーローラ12a、12bとを備える。このうちの両入力ディスク10a、10bは、前記入力回転軸5を介して互いに同心に、且つ、同期した回転を自在として結合されている。又、前記出力ディスク11は、前記両入力ディスク10a、10b同士の間に、これら両入力ディスク10a、10bと同心に、且つ、これら両入力ディスク10a、10bに対する相対回転を可能として支持されている。更に、前記各パワーローラ12a、12bは、前記出力ディスク11の軸方向両側面と前記両入力ディスク10a、10bの軸方向片側面との間に、それぞれ複数個ずつ(図示の例の場合は2個ずつ、合計4個)挟持されている。そして、前記両入力ディスク10a、10bの回転に伴って回転しつつ、これら両入力ディスク10a、10bと前記出力ディスク11との間で動力を伝達する。
【0004】
又、前記出力ディスク11はその軸方向両端部を、ケーシング13内に、それぞれ1対ずつの支柱14、14と、スラストアンギュラ玉軸受である転がり軸受15、15とにより、回転自在に支持している。又、前記両支柱14、14の両端部近傍に、それぞれ支持板16、16を支持している。そして、これら両支持板16、16同士の間に複数のトラニオン17a、17bを、それぞれの両端部に互いに同心に設けた枢軸18、18を中心とする揺動及び軸方向(図5〜6の上下方向)の変位を可能に支持している。又、前記各トラニオン17a、17bの内側面(互いに対向する面)に前記各パワーローラ12a、12bを、それぞれ支持軸19、19並びに複数組の転がり軸受を介して、回転並びに前記入力回転軸5の軸方向に関する若干の変位を自在に支持している。そして、前記各パワーローラ12a、12bの周面と、前記両入力ディスク10a、10bの軸方向片側面及び前記出力ディスク11の軸方向両側面とを転がり接触させている。これら各面同士の転がり接触部が、トラクションオイルを介して動力を伝達する、トラクション部となる。
【0005】
又、前記入力回転軸5の基端部(図5の左端部)を図示しないエンジンのクランクシャフトに、前記入力軸3を介して結合し、このクランクシャフトにより前記入力回転軸5を回転駆動する様にしている。又、前記入力回転軸5の基端部と、前記エンジンに近い側(図5の左側)の入力ディスク10aとの間に、油圧式の押圧装置20を設け、前記各トラクション部に、適正な面圧を付与できる様にしている。又、前記出力ディスク11の中心部に、中空回転軸21の基端部(図5の左端部)をスプライン係合させている。そして、この中空回転軸21を、前記エンジンから遠い側(図5の右側)の入力ディスク10bの内側に挿通して、前記出力ディスク11の回転力を取り出し可能としている。更に、前記中空回転軸21の先端部(図5の右端部)で前記入力ディスク10bの外側面から突出した部分に、前記遊星歯車式変速機2の前段ユニット7を構成する為の、太陽歯車22を固設している。
【0006】
一方、前記入力回転軸5の先端部(図5の右端部)で前記中空回転軸21から突出した部分と前記入力ディスク10bとの間に、キャリア23を掛け渡す様に設けて、この入力ディスク10bと前記入力回転軸5とが、互いに同期して回転する様にしている。そして、前記キャリア23の軸方向両側面の円周方向等間隔位置(一般的には3〜4個所位置)に、それぞれがダブルピニオン型であって前記遊星歯車式変速機2の前段ユニット7及び前記中段ユニット8を構成する遊星歯車24〜26を、回転自在に支持している。更に、前記キャリア23の片半部(図5の右半部)周囲にリング歯車27を、回転自在に支持している。又、前記伝達軸6の基端部(図5の左端部)に固設した第二太陽歯車28を、前記リング歯車27の内径側に配置している。
【0007】
又、前記後段ユニット9を構成する為の第二キャリア29を、前記出力軸4の基端部(図5の左端部)に結合固定している。そして、この第二キャリア29と前記リング歯車27とを、低速用クラッチ30を介して結合している。又、前記伝達軸6の先端寄り(図6の右端寄り)部分に第三太陽歯車31を固設している。又、この第三太陽歯車31の周囲に、第二リング歯車32を配置し、この第二リング歯車32と前記ケーシング13等の固定の部分との間に、高速用クラッチ33を設けている。更に、前記第二リング歯車32と前記第三太陽歯車31との間に配置した複数組の遊星歯車34、35を、前記第二キャリア29に回転自在に支持している。
【0008】
上述の様に構成する無段変速装置の場合、前記入力回転軸5から1対の入力ディスク10a、10b、各パワーローラ12a、12bを介して一体型の出力ディスク11に伝わった動力は、前記中空回転軸21を通じて取り出される。そして、前記低速用クラッチ30を接続し、前記高速用クラッチ33の接続を断った、所謂低速モードの状態では、前記トロイダル型無段変速機1の変速比を調節する事により、前記入力回転軸5の回転速度を一定にしたまま、前記出力軸4の回転速度を、所謂ギヤードニュートラル(G/N)と呼ばれる停止状態(速度比無限大の状態)を挟んで正転、逆転に変換自在となる。一方、前記高速用クラッチ33を接続し、前記低速用クラッチ30の接続を断った、所謂高速モードの状態では、前記トロイダル型無段変速機1の変速比を増速側に変化させる程、無段変速装置全体としての速度比も増速側に変化する。この状態で図5〜6に示した無段変速装置は、前記入力軸3から前記出力軸4に伝達する動力の一部を、前記入力側回転軸5を介して前記トロイダル型無段変速機1をバイパスさせる、所謂パワースプリット状態となる。このパワースプリット状態では、前記トロイダル型無段変速機1を通過するトルクを低減できる為、このトロイダル型無段変速機1の耐久性向上と、無段変速装置全体としての伝達効率の向上とを図れる。前記低速、高速両モードでの、前記トロイダル型無段変速機1の変速比と前記無段変速装置の速度比との関係、各モード状態でこのトロイダル型無段変速機1を通過するトルクの方向及び大きさ等に就いては、特許文献5、7、9等に記載されて従来から広く知られている為、図示並びに詳しい説明は省略する。
【0009】
上述の様な無段変速装置に組み込まれたトロイダル型無段変速機1の変速比の調節は、前記各トラニオン17a、17bを、前記ケーシング13内の下部に固定されたシリンダボディー36内に設けた複数の油圧式のアクチュエータ37、37により、前記各枢軸18、18の軸方向に変位させる事により行う。前記各トラニオン17a、17bをこれら各枢軸18、18の軸方向に変位させると、これら各トラニオン17a、17bに支持された前記各パワーローラ12a、12bの周面と、前記各ディスク10a、10b、11の軸方向側面との転がり接触部(トラクション部)に作用する接線方向の力の向きが、前記各枢軸18、18の軸方向に対し変化する。具体的には、各トラクション部が中立位置(各トラクション部の中心が、前記各ディスク10a、10b、11の中心軸を含み、前記各枢軸18、18の中心軸同士を結ぶ仮想直線に対し直交する仮想平面上に存在する状態)からずれると、ずれの方向に応じ、前記各トラニオン17a、17bに、前記各枢軸18、18を中心として、減速側又は増速側に揺動させる方向の力が加わる。そして、前記各トラクション部の位置が、前記各ディスク10a、10b、11の径方向に関して変化し、前記変速比が変化する。この変速比が所望の値になった状態で、前記各トラクション部を前記中立位置に戻せば、前記トロイダル型無段変速機1の変速比を、前記所望の値に保持できる。
【0010】
上述の様に、前記トロイダル型無段変速機1の変速比を所望の値に調節し、調節後の値に保持する為の機構に就いて、特許文献8の記載に基づいて説明する。この機構は、図7に示す様に、変速比制御弁38と、ステッピングモータ39と、プリセスカム40とにより構成している。このうちの変速比制御弁38は、スプール41とスリーブ42とを、軸方向の相対変位を可能に組み合わせたもので、これらスプール41とスリーブ42との相対変位に基づき、油圧源43と、前記アクチュエータ37の油圧室44a、44bとの給排状態を切り換える。又、前記スプール41とスリーブ42とは、前記各トラニオン17a、17bのうちの何れか1個のトラニオン17aの動きと前記ステッピングモータ39とにより、相対変位させる様にしている。又、前記プリセスカム40は、各トラニオン17aの下端部から連続して、前記各アクチュエータ37、37のピストン48、48に連結したロッド49、49のうちの何れか1個(図6の左側)のトラニオン17aの先端部(図6の下端部)に固定している。そして、この何れか1個のトラニオン17aの動き、即ち、前記枢軸18の軸方向の変位及びこの枢軸18を中心とする揺動変位を、前記プリセスカム40及びリンク腕45を介して前記スプール41に伝達してこのスプール41を軸方向に変位させ、前記ステッピングモータ39により前記スリーブ42を軸方向に変位させる様にしている。
【0011】
前記トロイダル型無段変速機1の変速比を調節する際には、前記ステッピングモータ39により前記スリーブ42を所定位置にまで変位させ、前記変速比制御弁38を所定方向に開く。すると、前記各トラニオン17a、17bに付属の前記各アクチュエータ37、37の油圧室44a、44bに対して圧油が所定方向に給排されて、これら各アクチュエータ37、37により前記各トラニオン17a、17bが、それぞれ前記各枢軸18、18の軸方向に変位する。この結果、これら各トラニオン17a、17bに支持された前記各パワーローラ12a、12bに関する前記各トラクション部が前記中立位置からずれて、前記変速比が変化し始める。この様に前記各トラクション部が中立位置からずれて変速比が変化し始める瞬間には、前記各トラニオン17a、17bの軸方向変位に伴って、前記変速比制御弁38の開閉状態が、前記所定方向とは逆方向に切り換わる。従って、前記各トラニオン17a、17bは、変速の為に揺動変位を開始し始めた瞬間から、軸方向に関して中立位置に向け移動し(戻り)始める。そして、前記変速比が前記所望の値になった状態で、前記各トラクション部が前記中立位置に戻ると同時に、前記変速比制御弁38が閉じられる。この結果、前記トロイダル型無段変速機1の変速比が、前記所望の値に保持される。
【0012】
又、前記トロイダル型無段変速機1の場合、前記各アクチュエータ37、37を制御する油圧系の故障時にも、これら各パワーローラ12a、12bの傾斜角度を同期させる為の機械的な同期機構を組み込んでいる。この同期機構は、プーリ46a、46aと、同期ケーブル47a、47bとで構成されている。このうちの各プーリ46a、46aは、前記各ロッド49、49の基端部(図6の上端部)にこれら各ロッド49、49と軸方向及び回転方向に関して同期して変位可能な状態で固定している。又、前記各プーリ46a、46aの外周面には凹溝50が全周に亙り形成されており、該凹溝50の下方には、係止部51を有する別の凹溝50aが形成されている。
【0013】
又、前記各同期ケーブル47a、47bは、図8に示す様な状態で、前記各トラニオン17a、17b(図6参照)に掛け渡している。このうちの図8の上下方向に掛け渡した同期ケーブル47a、47aは、同一キャビティ(互いに対向する1対の入力側、出力側両ディスクの内側面同士の間部分)内に配置された1対のトラニオン17a、17b同士の揺動角度を一致させる為のものである。この様な各同期ケーブル47a、47aは、それぞれの一部を、前記各プーリ46a、46aの外周面に形成した凹溝に係合させた状態で、前記1対のトラニオン17a、17b同士の間に掛け渡している。
【0014】
これに対して、図8の左右方向に掛け渡した同期ケーブル47b、47bは、異なるキャビティに配置されたトラニオン同士の間で揺動角度を一致させる為のものである。この様な同期ケーブル47b、47bはそれぞれの一部を、前記各プーリ46a、46aの外周面に形成した凹溝に係止させた状態で、前記1対のトラニオン17a、17b同士の間に掛け渡している。
【0015】
又、特許文献10には、同期ケーブルのトラニオンへの掛け渡し状態を示す別例として、図9、10に示す様な構造が記載されている。図9に示す構造の場合、異なるキャビティに存在し、且つ対角線位置に存在するプーリ46a、46a同士の間にのみ、同期ケーブル47cを掛け渡し、止め具52、52によって、この同期ケーブル47cと前記対角線位置に存在するプーリ46a、46aとを結合している。一方、図10に示す構造では、同期ケーブル47dを総てのプーリ46b、46cに掛け渡す代わりに、対角線位置に存在する1対のプーリ46b、46bにのみ、止め具52、52により、この同期ケーブル47dを結合している。残りのプーリ46c、46cとこの同期ケーブル47dとの間には滑り板53、53を介在させて、この同期ケーブル47dの動きがこれら残りのプーリ46c、46cに伝わらない様にしている。尚、この様な同期ケーブル47a〜47d自体の機能は、特許文献11に記載される等により、従来から広く知られている。
【0016】
ところで、前述した様なトロイダル型無段変速機1の場合、3種類の構造のトラニオンが必要となる。即ち、前記ロッド49の先端部に前記プリセスカム40を固定しており、他のトラニオンよりもこのロッド49の軸方向寸法が大きい、図6の左側に示した構造のトラニオン17aと、図6の右側に示した構造のトラニオン17bと、このトラニオン17bと前記支持軸19、19の基半部を支持する為の円孔54の位置が異なる構造のトラニオン(図示省略)とが必要となる。この為、トラニオンの製造コスト、及び部品管理コストが嵩み、延いてはトロイダル型無段変速機の製造コストが嵩んでしまう。
【0017】
又、前記各トラニオン17a、17bのロッド49に対して前記プリセスカム40、又はプーリ46aを固定する場合、このロッド49の外周面のうち、前記プリセスカム40、又はプーリ46aを固定する位置の径方向に関して反対となる部分に互いに平行な平面部を形成する等して固定部を形成する。特に、図6の左側に示した前記トラニオン17aの様に、前記ロッド49の、前記プリセスカム40、及びプーリ46aを固定する位置が軸方向に関して離隔している場合、前記固定部を2箇所に形成する必要がある。この為、前記トラニオン17aの加工コストが嵩み、延いてはトロイダル型無段変速機の製造コストが嵩んでしまう。又、図6に示す様に、前記プリセスカム40を設けた前記ロッド49の軸方向の寸法が、他のロッド49に比較して大きくなってしまう。この為、小型・軽量化を図る面から不利である。
【0018】
又、図11〜13は、特許文献12に記載された、従来から知られているトラニオンの構造の別例を示している。このトラニオン17cは軸方向中間部に、円筒状凸面55を有する支持梁部56を設けている。又、パワーローラ12cを支持するスラストアンギュラ玉軸受である転がり軸受80を構成する外輪57の外側面に設けた部分円筒面状の凹部58と、前記支持梁部56の円筒状凸面55とを係合させている。この様にして、前記外輪57及びパワーローラ12cを、前記トラニオン17cに対し、入力側、出力側両ディスクの軸方向に関する揺動変位を可能に支持している。尚、この様なトラニオン17cの、構造、動作に関する詳細は、特許文献12に詳しく記載されている為、省略する。
【0019】
この様なトラニオン17cの場合、前記外輪57及びパワーローラ12cを、入力側、出力側両ディスクの軸方向に揺動変位を可能に支持する構造に関して、総てのトラニオン17cの共通化を図る事が可能である。但し、前述した様に前記トラニオン17cの端部に、プーリ46aに加えてプリセスカム40(図6参照)を固定するトラニオン17cに関しては、他のトラニオン17cと比較して、前記ロッド49の軸方向寸法を大きくする必要がある。従って、2種類の構造のトラニオン17cが必要となる。この為、トラニオン17cの製造コスト、及び部品管理コストが嵩み、延いてはトロイダル型無段変速機の製造コストが嵩んでしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平7−208569号公報
【特許文献2】特開平11−166605号公報
【特許文献3】特開2007−298098号公報
【特許文献4】特開平11−63146号公報
【特許文献5】特開2000−346190号公報
【特許文献6】特開2009−30749号公報
【特許文献7】特開2004−308853号公報
【特許文献8】特開2006−283800号公報
【特許文献9】特開2002−89678号公報
【特許文献10】特開2005−214318号公報
【特許文献11】特開平4−327051号公報
【特許文献12】特開2008−25821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、トロイダル型無段変速機の変速比を制御する為のプリセスカム、及び、動力伝達の為のパワーローラの傾転角を機械的に同期させる為のプーリの構造を工夫する事により、加工コストの低減及び小型・軽量化を図り易い構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明のトロイダル型無段変速機は、前述した従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、少なくとも1対のディスクと、複数の支持部材と、パワーローラと、油圧式のアクチュエータと、油圧切換弁と、機械式のフィードバック機構と、同期機構とを備えている。
このうちの、前記各ディスクは、互いに対向する軸方向側面をトロイド曲面とし、互いに同心に、且つ、相対回転を自在に支持する。
又、前記各支持部材は、軸方向に関して前記各ディスクの中間位置に配置され、それぞれがこれら各ディスクの中心軸に対し捩れの位置に存在する枢軸を中心として揺動変位する。
又、前記各パワーローラは、前記各支持部材に回転自在に支持した状態で、部分球状凸面であるそれぞれの周面を、前記各ディスクの軸方向側面に転がり接触させる。
又、前記油圧式のアクチュエータは、前記各支持部材の端部に前記枢軸と同心に、一体、若しくは一体的に結合固定されて、これら各支持部材と共に変位するロッドと、これら各ロッドの外周面の一部に、少なくとも軸方向に関してこれら各ロッドに対する変位を阻止された状態で設けられたピストンを含んで構成する。そして、圧油の給排に基づいて前記各ロッドを、それぞれの軸方向に変位させる。
又、前記油圧切換弁は、前記各アクチュエータへの圧油の給排状態を切り換える。
又、前記機械式のフィードバック機構は、前記各ロッドのうちの何れかのロッドの、軸方向に関する変位と回転方向に関する変位とを合成して、前記油圧切換弁を構成して前記給排状態の切り換えに寄与する部材に伝達する。又、前記フィードバック機構は、前記各ロッドのうちの何れかのロッドに、軸方向及び回転方向に関して当該ロッドと同期して変位可能に固定されたプリセスカムを含んで構成する。
又、前記同期機構は、前記各枢軸を中心とする前記各支持部材の揺動角度を機械的に同期させる。又、この同期機構は、前記各ロッドに、これら各ロッドと同心に、これら各ロッドと同期して回転可能に固定した複数個のプーリと、これら各プーリ同士の間に掛け渡したケーブルとを含んで構成する。
【0023】
特に、本例のトロイダル型無段変速機の場合、前記各プーリのうちの何れかのプーリと前記プリセスカムとを一体若しくは一体的に組み合わせ、このプリセスカム一体型のプーリ及び残りのプーリを、前記各ロッドに対し、軸方向及び回転方向に関して、これら各ロッドと同期して変位可能に固定する。
【0024】
この様な本例のトロイダル型無段変速機を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、1対の外側ディスクと、内側ディスクと、複数の支持部材と、複数のパワーローラとを備えた構造を採用する。
このうちの両外側ディスクは、互いに対向する軸方向側面をトロイド曲面とし、互いに同心に、且つ、相対回転を自在に支持され、互いに同期した回転を自在に組み合わせる。
又、前記内側ディスクは、前記両外側ディスクの軸方向側面に対向する軸方向両側面をトロイド曲面とし、軸方向に関してこれら両外側ディスク同士の間の中間部に、これら両外側ディスクに対する相対回転を自在に支持する。
又、前記各支持部材は、前記両外側ディスクの軸方向側面とこの内側ディスクの軸方向両側面との間にそれぞれ設けた1対のキャビティに、それぞれ複数個ずつ配置する。
又、前記各パワーローラは、前記両外側ディスクの軸方向側面とこの内側ディスクの軸方向両側面との間にそれぞれ設けた1対のキャビティに、それぞれ複数個ずつ配置する。
更に、前記各支持部材の端部に一体、若しくは一体的にそれぞれ結合したロッドにそれぞれプーリを固定すると共に、これら各プーリのうちの何れかのプーリとプリセスカムとを、一体若しくは一体的に組み合わせて構成する。
【0025】
又、上述の様な請求項2に記載した発明を実施する場合に、例えば前記各ロッドの先端部、又は基端部の何れか一方に、それぞれ1個ずつ、前記プーリを固定する。
或いは、前記各ロッドの先端部と基端部とに、これら各ロッド毎にそれぞれ1対ずつ、前記プーリを固定し、何れかのロッドに固定した1対のプーリのうちの何れか一方のプーリとプリセスカムとを、一体若しくは一体的に組み合わせて構成する。
【発明の効果】
【0026】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機の場合、プーリ及びプリセスカムを固定する為の固定部を、ロッドに別々に設ける必要がない。この結果、このロッドを含むトラニオンの加工コストの低減、延いてはトロイダル型無段変速機全体の製造コストの低減を図る事ができる。
又、前記プリセスカムを固定する為に、前記ロッドを含むトラニオンの軸方向寸法を大きくする必要がない。この為、このロッドを含むトラニオンの構造の共通化を図る事ができる。この結果、トロイダル型無段変速機の小型化、軽量化を測りつつ、加工コスト、部品管理コストの低減を図る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す断面図。
【図2】同第2例を示す断面図。
【図3】同第3例を示す断面図。
【図4】同第4例を示す断面図。
【図5】本発明の対象となる無段変速装置の1例を示す断面図。
【図6】図5のA−A断面図。
【図7】変速比制御の為の油圧制御装置部分の略断面図。
【図8】同期ケーブルのトラニオンへの掛け渡し状態の第1例を示す断面図。
【図9】同第2例を示す、図8と同様の図。
【図10】同第3例を示す、図8と同様の図。
【図11】従来構造の第2例を示す、スラスト玉軸受を介してパワーローラを支持したトラニオンを、各ディスクの径方向外側から見た斜視図。
【図12】同じく、ディスクの周方向から見た状態で示す正投影図。
【図13】図12のB−B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施の形態の第1例]
図1は、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例を含め、本発明のトロイダル型無段変速機の特徴は、トロイダル型無段変速機の変速比を制御する為のプリセスカム、及び、動力伝達の為の複数個のパワーローラ12c、12c同士の傾転角を機械的に同期させる為のプーリの構造を工夫した点にある。尚、これら各パワーローラ12c、12cを支持する為のトラニオンの構造は前述した図11〜13に示すトラニオンの構造とほぼ同様である。又、トロイダル型無段変速機全体としての構造及び作用は、前述した図5〜7に示した構造を含め、従来から知られているトロイダル型無段変速機の構造とほぼ同様であるから、従来と同様に構成する部分に就いては、図示並びに説明を、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0029】
本例のトロイダル型無段変速機1aの場合、ケーシング13(図6参照)内の下部にシリンダボディ36を固定し、このシリンダボディ36内に設けた複数のアクチュエータ37、37により各トラニオン17d、17dを、それぞれの両端部に設けた枢軸18、18の軸方向(図1の上下方向)に変位駆動自在としている。これら各枢軸18、18をそれぞれの軸方向及び回転方向の変位を自在に支持する為の、上下1対の支持板16、16は、前記シリンダボディ36の上面と、前記ケーシング13の天板部の下面に支持した結合板59との間に掛け渡した支持ポスト60の上下両端部に支持している。
【0030】
又、前記各トラニオン17d、17dにより、前記各パワーローラ12c、12cを回転、及び入力軸3の軸方向(図1の表裏方向)に関する若干の変位自在に支持する為の構造は、前記図11〜13に示したトラニオン17cの構造と同様である。尚、この部分に関するトラニオンの構造は、前記図6に示したトラニオン17a、17bの様な構造を採用する事もできる。
【0031】
又、前記各トラニオン17d、17dの下端部から連続し(図示の例では一体に形成され)て、前記アクチュエータ37、37を構成するピストン48、48に連結した各ロッド49a、49aの先端部(図1の下端部)には、後述するプーリ61(図1の左側に示すトラニオン17dの場合)、及びプリセスカム付プーリ62(図1の右側に示すトラニオン17dの場合)を固定する為の固定部63が形成されている。尚、前記各トラニオン17d、17dと前記各ロッド49a、49aとを別体に設け、これら各ロッド49a、49aをこれら各トラニオン17d、17dの下端部に、ねじ止め等により一体的に結合する構造とする事もできる。
【0032】
又、前記固定部63は、各ロッド49a、49aの先端部外周面の一部に、この外周面から径方向内方に凹入した(欠けた)状態で形成した係止平坦部64により、断面形状を欠円状に構成している。尚、前記固定部63の構造は、例えば、前記各ロッド49a、49aの外周面の円周方向に関して反対側となる2個所位置に、この外周面から径方向内側に凹入した(欠けた)1対の平坦部を互いに平行に設けた、断面小判形の構造、セレーション構造等も採用できる。即ち、前記各プーリ61、及びプリセスカム付プーリ62を、前記各ロッド49a、49aの軸方向及び回転方向に関して、これら前記各ロッド49a、49aと同期して変位可能に固定できる構造を採用すれば良い。この様な構造を採用した場合には、後述する前記各プーリ61、及びプリセスカム付プーリ62のプーリ側係止部68(中心孔)の構造(形状)を、前記1対の平坦部若しくは雄セレーション部と係合可能な構造(形状)とすれば良い。
【0033】
又、本例のトロイダル型無段変速機1aは、前述した従来構造のトロイダル型無段変速機1と同様に、前記各アクチュエータ37、37を制御する油圧系の故障時にも、前記各トラニオン17d、17dの傾斜角度を同期させる為の機械的な同期機構を備えている。
【0034】
この同期機構は、複数個(本例の場合3個)のプーリ61と、1個のプリセスカム付プーリ62と、1対の同期ケーブル65a(1本は図示省略)と、1本の同期ケーブル65bとを備えている。このうちのプーリ61、及びプリセスカム付プーリ62は、中央部に前記ロッド49aの固定部63に外嵌固定可能な形状を有する取付孔66が形成された円輪状部材である。又、この取付孔66の内周面の軸方向一端(図1の下端)には、この内周面よりも内径側に突出し、固定状態で前記各ロッド49a、49aの固定部63の係止平坦部64と係止するプーリ側係止部68が形成されている。又、前記各プーリ61、62の外周面には、前記同期ケーブル65aを係止する為の係止溝67が、全周に亙り形成されている。
【0035】
特に、図1の右側に示した前記プリセスカム付プーリ62は、軸方向一側面(図1の下側面)の径方向外端寄り部分に、この軸方向一側面から突出した状態で、機械式のフィードバック機構を構成するプリセスカム40aが、一体に設けられている。このプリセスカム40aは、前記プリセスカム付プーリ62が固定されたトラニオン17dの動き、即ち、枢軸18の軸方向の変位及びこの枢軸18を中心とする揺動変位を、前記プリセスカム40a及びリンク腕45(図7参照)を介して変速比制御弁38を構成するスプール41に伝達するものである。そして、このスプール41を軸方向に変位させ、前記ステッピングモータ39により軸方向に変位させられるスリーブ42とを相対変位させる様にしている。尚、この様な、トロイダル型無段変速機1aの変速比を所望の値に調節し、調節後の値に保持する為の変速比調整機構の構造、及び動作に就いては、前記図7に示した、従来から知られている機構と同様である。
【0036】
上述した様な前記各プーリ61、及びプリセスカム付プーリ62は、前記各ロッド49a、49aの固定部63の係止平坦部64と、前記各プーリ61、及びプリセスカム付プーリ62のプーリ側係止部68とを係止した状態で、前記各ロッド49a、49aと軸方向及び回転方向に関して同期して変位可能に固定している。尚、本例の場合、前記各プーリ61を、全部で4個の前記各トラニオン17d、17dのうちの3個のトラニオン17d、17dに固定し、前記プリセスカム付プーリ62を、残りの1個のトラニオン17dに固定している。
【0037】
又、前記1対の同期ケーブル65aのうち、図1の下端部に示す同期ケーブル65aは、同一キャビティ(互いに対向する1対の入力側、出力側両ディスクの内側面同士の間部分)に配置された前記トラニオン17d、17d同士の揺動角度を機械的に一致させる為のものである。この同期ケーブル65aは、その一部を同一キャビティ内の前記プーリ61とプリセスカム付プーリ62との係止溝67に係合させた状態で、前記各トラニオン17d、17d同士の間に掛け渡されている、一方、図示を省略した側の別のキャビティ内に配置された別の同期ケーブルは、その一部を、この別のキャビティに対応する部分に設置した1対のプーリの係止溝に係合させた状態で、この別のキャビティ内に設置した1対のトラニオン同士の間に掛け渡している。
【0038】
一方、前記同期ケーブル65bはその一部を、前記各トラニオン17d、17dの、支持梁部56の外周面の下端部に形成した、係止部69を含む係止溝に係合した状態で、前記図10に示した同期ケーブル47dの構造の様に(図10の場合はプーリ46c、46cを介している点で異なるが)、総てのトラニオン17d、17dに掛け渡している。又、異なるキャビティに存在し、且つ対角線位置に存在する1対のトラニオン17d、17dにのみ、止め具(図示省略)により、前記同期ケーブル65bを結合している。残りのトラニオン17d、17dと同期ケーブル65bとの間には滑り板(図示省略)を介在させて、この同期ケーブル65bの動きがこの残りのトラニオン17d、17dに伝わらない様にしている。
尚、トロイダル型無段変速機への同期ケーブルの組み付け構造は、本例の構造に限定されず、支柱14の構造等に合わせて、例えば前記図8、9に示した様な、各種構造を適用できる。
【0039】
上述の様な本例のトロイダル型無段変速機1aの場合、何れか1つのトラニオン17dの端部に結合した前記ロッド49aの先端部に固定したプリセスカム付プーリ62を、プーリの形状とプリセスカムの形状とを合わせ持った体構造としている。この為、前記ロッド49aに、プーリ、及びプリセスカムを固定する為の固定部を、別々に設ける必要がない。この結果、前記トラニオン17d、17d(トラニオンとロッドが一体構造の場合)、又はロッド49(トラニオンとロッドが別体であり、一体的に結合されている場合)の、加工コストの低減、延いてはトロイダル型無段変速機1aの製造コストの低減を図る事ができる。
又、本例のトロイダル型無段変速機1aの場合、前記図6に示したトロイダル型無段変速機1の構造の様に、ロッド49の先端部に、プリセスカム40を固定する為の固定部を設ける必要がない。この為、このロッド49の軸方向寸法を大きくする事なく、総てのトラニオン17d、17d(トラニオンとロッドが一体構造の場合)、又はロッド49(トラニオンとロッドが別体であり、一体的に結合されている場合)の構造を共通化する事ができる。この結果、トロイダル型無段変速機の小型化、軽量化を測りつつ、加工コスト、部品管理コストの低減を図る事ができる。
【0040】
[実施の形態の第2例]
図2は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例のトロイダル型無段変速機1bの場合、上述した実施の形態の第1例と同様に、トラニオン17e、17eの下端部から連続し(図示の例では一体に形成され)て、アクチュエータ37、37を構成するピストン48、48に連結した各ロッド49b、49bの先端部(図2の下端部)に、プーリ61、及びプリセスカム付プーリ62を固定している。
【0041】
又、前記各ロッド49b、49bの外周面の基端部(図2の上端部)に、この外周面から径方向外側に凸出した固定部70が形成されている。そして、この固定部70に機械的な同期機構を構成するプーリ71、71を固定している。尚、この様な各プーリ71、71の構造、及びこれら各プーリ71、71とロッド49b、49bとの固定構造は、従来から知られている為、詳しい説明を省略する。又、前記プリセスカム付プーリ62の構造、及び前記ロッド49bへの固定方法は、前記実施の形態の第1例と同様である。
【0042】
又、図2の上下2箇所位置に配置した同期ケーブル65a、65bのうち、上側の同期ケーブル65bはその一部を、前記各プーリ71、71の係止溝76に係合させた状態で、前記図10に示した同期ケーブル47aの構造の様に、同一キャビティ内に配置した1対のトラニオン17e、17e同士の間に、襷掛けで掛け渡している。これに対して、下側の同期ケーブル65aは、総てのトラニオン17e、17eに掛け渡している。又、対角線位置に存在する1対のトラニオン17e、17eにのみ、止め具(図示省略)により、前記同期ケーブル65aを結合している。残りのトラニオン17e、17eと同期ケーブル65aとの間には滑り板(図示省略)を介在させて、この同期ケーブル65aの動きがこの残りのトラニオン17e、17eに伝わらない様にしている。
【0043】
本例の場合、前記各プーリ71、71と、プーリ61又はプリセスカム付プーリ62とを固定する為の固定部63、70を、前記ロッド49b、49bの軸方向位置の2箇所に形成する必要がある。但し、本例の場合にも、前記実施の形態の第1例と同様に、前記プリセスカム付プーリ62は、軸方向一側面(図2の下側面)の径方向外端寄り部分に、機械式のフィードバック機構を構成するプリセスカム40aが一体に設けられている。この為、前記各ロッド49b、49bに、プリセスカムを固定する部分を別途形成する必要がない。その他の構造、及び作用、効果は前記実施の形態の第1例と同様である。
【0044】
[実施の形態の第3例]
図3は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例のトロイダル型無段変速機1cの場合、トラニオン17f、17fの下端部から連続し(図示の例では一体に形成され)て、アクチュエータ37、37のピストン48、48に連結したロッド49b、49bの外周面の基端部(図3の下端部)に、この外周面から径方向外側に凸出した固定部70が形成されている。
そして、この固定部70に機械的な同期機構を構成するプーリ71、及びプリセスカム付プーリ62aを固定している。
このうちのプーリ71は、前述した実施の形態の第2例と同様に、従来から知られている為、詳しい説明を省略する。
【0045】
一方、前記プリセスカム付プーリ62aは、プーリとしての基本構造は前記プーリ71と同様に、小径部72と、この小径部72に段部を介して連続し、外径及び内径が、この小径部72よりも大径である大径部73とから成る、段付状の円輪状部材である。又、この小径部72の中央部には、前記各ロッド49b、49bの基端側の固定部63aに外嵌固定可能な形状を有する取付孔74が形成されている。又、この取付孔74の内周面には、この内周面から径方向外側に突出したプーリ側係止部75が形成されている。又、前記大径部73の外周面には、同期ケーブル65aを係止する為の係止溝76が全周に亙り形成されている。
【0046】
この様なプーリ71、及びプリセスカム付プーリ62aは、前記取付孔74のプーリ側係止部75と、前記各ロッド49b、49bの基端側の固定部63aとを係合する事で、これら各ロッド49b、49bに対して、軸方向及び回転方向に関して同期して変位可能な状態で外嵌固定している。
特に、本例のプリセスカム付プーリ62aは、外周面の軸方向中間部に、この外周面から径方向外方に突出した状態でプリセスカム40bが、一体に設けられている。
【0047】
又、前記同期ケーブル65aは、同一キャビティ(互いに対向する1対の入力側、出力側両ディスクの内側面同士の間部分)に配置された前記トラニオン17f、17f同士の揺動角度を機械的に一致させる為のものである。この同期ケーブル65aは、図示の場合、その一部を同一キャビティ内の前記プーリ71とプリセスカム付プーリ62aとの係止溝67に係合させた状態で、前記各トラニオン17f、17f同士の間に、襷掛けで掛け渡されている。
【0048】
[実施の形態の第4例]
図4は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例のトロイダル型無段変速機1dの場合、図4の右側のトラニオン17eの下端部から連続したロッド49bの外周面の先端部(図4の下端部)に固定したプリセスカム付プーリ62bが、内径側部材78と、外径側部材79とを組み合わせて成る。
【0049】
このうちの内径側部材78は、中央部に前記ロッド49aの固定部63に外嵌固定可能な形状を有する取付孔66が形成された円輪状部材である。又、この取付孔66の内周面の軸方向一端(図4の下端)には、この内周面よりも内径側に突出し、固定状態で前記各ロッド49bの固定部63の係止平坦部64と係止するプーリ側係止部68が形成されている。更に、軸方向一側面(図4の下側面)の径方向外端寄り部分に、この軸方向一側面から突出した状態で、機械式のフィードバック機構を構成するプリセスカム40aが一体に設けられている。
【0050】
又、前記外径側部材79は、径方向中央部に、前記内径側部材78の外周面に外嵌固定可能な内周面を有する円環状部材である。又、前記外径側部材79の、外周面には、同期ケーブル65aを係止する為の係止溝67が全周に亙り形成されている。その他の構造、及び作用、効果は前記図2に示した実施の形態の第2例と同様である。
【符号の説明】
【0051】
1、1a、1b、1c、1d トロイダル型無段変速機
2 遊星歯車式変速機
3 入力軸
4 出力軸
5 入力回転軸
6 伝達軸
7 前段ユニット
8 中段ユニット
9 後段ユニット
10a、10b 入力ディスク
11 出力ディスク
12a、12b、12c パワーローラ
13 ケーシング
14 支柱
15 転がり軸受
16 支持板
17a、17b、17c、17d、17e、17f トラニオン
18 枢軸
19 支持軸
20 押圧装置
21 中空回転軸
22 太陽歯車
23、23a キャリア
24 遊星歯車
25 遊星歯車
26 遊星歯車
27 リング歯車
28 第二太陽歯車
29 第二キャリア
30 低速用クラッチ
31 第三太陽歯車
32 第二リング歯車
33 高速用クラッチ
34 遊星歯車
35 遊星歯車
36 シリンダボディ
37 アクチュエータ
38 変速比制御弁
39 ステッピングモータ
40、40a、40b プリンセスカム
41 スプール
42 スリーブ
43 油圧源
44a、44b 油圧室
45 リンク腕
46、46a、46b、46c プーリ
47a、47b、47c、47d 同期ケーブル
48 ピストン
49、49a、49b ロッド
50、50a 凹溝
51 係止部
52 止め具
53 滑り板
54 円孔
55 円筒状凸面
56 支持梁部
57 外輪
58 凹部
59 天板部
60 支持ポスト
61 プーリ
62、62a、62b プリセスカム付プーリ
63、63a 固定部
64 係止平坦部
65a、65b 同期ケーブル
66 取付孔
67 係止溝
68 プーリ側係止部
69 係止部
70 固定部
71 プーリ
72 小径部
73 大径部
74 取付孔
75 プーリ側係止部
76 係止溝
77 ワッシャ
78 内径側部材
79 外径側部材
80 転がり軸受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する軸方向側面をトロイド曲面とし、互いに同心に、且つ、相対回転を自在に支持された、少なくとも1対のディスクと、軸方向に関してこれら各ディスクの中間位置に配置され、それぞれがこれら各ディスクの中心軸に対し捩れの位置に存在する枢軸を中心として揺動変位する複数の支持部材と、これら各支持部材に回転自在に支持された状態で、部分球状凸面であるそれぞれの周面を前記各ディスクの軸方向側面に転がり接触させた、複数個のパワーローラと、前記各支持部材の端部に一体、若しくは一体的に前記枢軸と同心に結合固定されて、これら各支持部材と共に変位するロッドと、これら各ロッドの外周面の一部に、少なくとも軸方向に関してこれら各ロッドに対する変位を阻止された状態で設けられたピストンを含んで構成され、圧油の給排に基づいてこれら各ロッドをそれぞれの軸方向に変位させる、油圧式のアクチュエータと、これら各アクチュエータへの圧油の給排状態を切り換える為の油圧切換弁と、前記各ロッドのうちの何れかのロッドの、軸方向に関する変位と回転方向に関する変位とを合成して、前記油圧切換弁を構成して前記給排状態の切り換えに寄与する部材に伝達する、機械式のフィードバック機構と、前記各枢軸を中心とする前記各支持部材の揺動角度を機械的に同期させる為の同期機構とを備え、
前記フィードバック機構は、前記各ロッドのうちの何れかのロッドに、軸方向及び回転方向に関して当該ロッドと同期して変位可能に固定されたプリセスカムを含んで構成されており、
前記同期機構は、前記各ロッドに、これら各ロッドと同心に、これら各ロッドと同期して回転可能に固定された複数個のプーリと、これら各プーリ同士の間に掛け渡されたケーブルとを含んで構成されているトロイダル型無段変速機に於いて、
前記各プーリのうちの何れかのプーリと前記プリセスカムとを一体若しくは一体的に組み合わせ、このプリセスカム一体型のプーリ及び残りのプーリを、前記各ロッドに対し、軸方向及び回転方向に関して、これら各ロッドと同期して変位可能に固定した事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
互いに対向する軸方向側面をトロイド曲面とし、互いに同心に、且つ、相対回転を自在に支持され、互いに同期した回転を自在に組み合わされた1対の外側ディスクと、これら両外側ディスクの軸方向側面に対向する軸方向両側面をトロイド曲面とし、軸方向に関してこれら両外側ディスク同士の間の中間部に、これら両外側ディスクに対する相対回転を自在に支持された内側ディスクとを備え、これら両外側ディスクの軸方向側面とこれら内側ディスクの軸方向両側面との間にそれぞれ設けられた1対のキャビティに、それぞれ複数個ずつの支持部材及びパワーローラを配置しており、これら各支持部材の端部にそれぞれ一体、若しくは一体的に結合したロッドにそれぞれプーリを固定すると共に、これら各プーリのうちの何れかのプーリとプリセスカムとを、一体若しくは一体的に組み合わせた、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−177423(P2012−177423A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40478(P2011−40478)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】