説明

トロンビン阻害剤としての不飽和脂肪酸

本発明は、少なくとも1つの、18または20炭素原子の炭素鎖を有する不飽和脂肪酸、および遊離脂肪酸またはトリグリセリドの脂肪酸残基として前記不飽和脂肪酸を含む植物薬の使用であって、18炭素原子の鎖長を有する不飽和脂肪酸は炭素鎖中に1〜3の二重結合を有し、20炭素原子の鎖長を有する不飽和脂肪酸は炭素鎖中に1〜4の二重結合を有し、二重結合または二重結合の1つが炭素鎖の9位または11位にあり、および不飽和脂肪酸が全シス型立体配置で提供される薬物の、血栓症および血栓塞栓症の予防および/または治療のため、または予防用および/または治療用薬物の製造ための使用ならびに対応する物質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
血栓症は、血栓と呼ばれるフィブリンを含む血小板凝集物によって引き起こされる、血管または心腔の内側の生体内血液凝固として定義される。したがって血栓症は、外傷後の効果的な止血に役立つものではなく、血管関連において血液の流れを妨げる、血液の流路における血塊の形成である。もし血栓が取り除かれて収縮している血管へ運ばれた場合、これらの血管を閉塞する結果をともない、これが血栓塞栓症と呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
血栓症は、ドイツにおける全体の死亡者数の半分の原因または要因である。これらの死亡の80%以上が、60才以上のグループ内において起こる。試算によれば、この年齢のグループは、2050年における人口の37%を占める。すでに2020年から、50〜64才のグループが、見込まれる労働力の39%を提供するだろう。
【0003】
抗凝固薬および血小板凝集阻害薬は、血栓塞栓性疾患の第一および第二の予防法として利用できる。2003年に多数の処方を用いた33の指標グループ内において、抗凝固薬は、増加の最も高い割合(+11.8%)を示し、血小板凝集阻害薬は、増加の3番目に高い割合(+10.5%)を示した。1994年と2003年の間に、抗凝固薬の処方の数はほぼ3倍になっており、血小板凝集阻害薬の処方の数はほぼ6倍になっている。抗血栓薬の市場は、2001〜2010年の期間内に、2倍以上になると期待されている。
【0004】
ドイツだけでも、現在約50万の人々が、抗凝固薬による治療を受けている。ヘパリンおよびビタミンK拮抗薬は、2つの薬物群をお互いに使用することに制限があるにもかかわらず、血栓塞栓性疾患の治療において、50年以上にわたり成功裏に使用されている。ヘパリンは、非経口的に投与しなければならず、フィブリンと結合したトロンビンではなく遊離トロンビンのみを阻害する。ビタミンK拮抗薬は、個体間の種々の動態を有することのみならず、狭い治療濃度域と同時に、食物や薬物との相互作用の高いリスクをも有する。これらの理由により、そのような治療のニーズがあるにもかかわらず、十分な人数の人々が治療を受けられなかった。したがって、心房細動により苦しめられる41%の患者が、彼らの脳卒中のリスクが5倍高いにもかかわらず、抗凝固薬による治療を受けられなかった。
【0005】
2004年7月に、キシメラガトラン(Ximelagatran)が、ヨーロッパ中(イギリスおよびアイルランドを除いて)において、経口的に利用可能な初めての直接的トロンビン阻害剤として、血栓塞栓症の短期予防の適用のために認可された。この活性物質は、理想の抗凝固薬に求められる多くの要求を満たす。それは、固定用量で投与することができ、作用の速やかな発現を示し、またフィブリンに結合したトロンビンをも阻害する。この活性物質の有効性は、多数の研究により証明されている。しかしながら、2つのアメリカの研究では(EXULT A; EXULT B)、長期間の適用のみならず高用量でも、肝臓の障害が起こることが示されている。この理由により、米国食品医薬品局(FDA)は、2004年10月に、この活性物質の認可を拒絶した。肝機能障害を患っている患者には、キシメラガトランは禁忌である。医薬品および医療機器に対する連邦省庁は、治療の終結した後の4〜6週間、肝臓機能の監視を勧告している。したがって、キシメラガトランが、長期治療における評価およびビタミンK拮抗薬に対する代替品として証明されているかどうかは、現在のところ疑わしい。既知の抗凝固薬および血小板凝集阻害薬の欠点は、これらの欠点を有さない血栓症および血栓塞栓症の予防用および治療用の新しい製剤に対するニーズがあることを示す。
【発明の開示】
【0006】
したがって、本発明の目的は、血栓症および血栓塞栓症の予防および/または治療に対する、新しい活性物質および製剤を提供することにある。
【0007】
この目的は、トロンビン阻害剤としての不飽和脂肪酸を特定することにより達成される。ここで、前記不飽和脂肪酸は18または20炭素原子の鎖長の炭素鎖を有し、不飽和脂肪酸が18炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜3の二重結合を含み、不飽和脂肪酸が20炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜4の二重結合を含み、二重結合または二重結合の1つが炭素鎖の9位または11位にあり、不飽和脂肪酸が全シス型立体配置で存在している。
【0008】
地中海沿岸の国においては、アルコールとニコチンの乱用がドイツよりも相当に広がっているにもかかわらず、ドイツにおける心臓血管疾患が原因の死亡率が、地中海沿岸の国のそれよりも高いことは驚くべきことである。この現象により、専門用語の「地中海沿岸のパラドックス」は、新聞だけではなく医学文献においても見つけられる。
【0009】
「地中海沿岸のパラドックス」の原因として、今までに遺伝的要因は確認できていないことから、この現象の理由が、人々のダイエットにおける相違点に求められている。地中海沿岸における、より頻繁かつ量的に高い新鮮なサラダの消費は、この関係にとくに影響している。おそらく、心臓血管の問題を防ぐことができる植物成分が存在する。仮説をより拡大して、発明者は、これらの成分が血液の凝固性に影響を与え、その結果梗塞の形成が抑制されると主張した。一つの可能性は、いくつかの成分がトロンビン阻害剤として働くことである。
【0010】
この仮説を立証するために、78の植物の植物薬からジクロロメタンおよびメタノールの抽出物が製造され、トロンビン阻害に対して試験された。
【0011】
試験系として、クロモザイムTH(トシルグリシル−プロリル−アルギニン−4−ニトロアニリドアセテート)を用いたアミド分解アッセイが、トロンビンに対する基質として用いられた。試験系の原理は、トロンビンによる基質の開裂、および405nmの波長において吸光するp−ニトロアニリンの放出に基づいている。時間に対する吸光の増加は、光学的計量により検出される。トロンビンの阻害は、抽出物を含む試験サンプルの吸光の増加の線形初期段階と、ブランク値を比較して計算される。
【0012】
ポリビニルピロリドン溶液の抽出物への添加とその後の遠心分離により、抽出物中に含まれるタンニン成分を沈殿および回収したの後の、Flores Sambuci、Herba Adonidis、Radix Althaeae、Fructus Anisi、Fructus Carvi、Fructus CoriandriおよびFructus Sabalaeのジクロロメタン抽出物だけでなく、Fructus Cardamomi、Fructus Sabalae、Semen Erucae、Fructus AnisiおよびFructus Foeniculiのメタノール抽出物も、トロンビンの50%阻害を起こすことが判明した。タンニン成分の除去は、せいぜい、これらの植物薬を用いた抽出物のトロンビン阻害効果の、重要ではない減少をもたらすだけである。上記研究において、これらの植物薬の3つの抽出物が、トロンビンを阻害することに特に効果的であることが判明した(Semen Erucae、Flores SambuciおよびHerba Adonidis)。
【0013】
Semen Erucaeは、白ガラシ(Sinapis alba L.)の種である。白ガラシは、Brassicaceae科に属する。この一年生植物は、20〜60cmの高さで、果実として2〜4cmの長い鞘をつけ、この鞘は、茶色〜白色の種を含んでいる。この植物は、、北および西ヨーロッパのみならず北アメリカでも栽培されているが、シベリヤおよび東アジアにも発生する。その種子は、薬として用いられている(Semen Erucae)。その薬は、グルコシノレートを含んでいる。主要なグルコシノレートはシナルビンであり、これは、水の存在下、非揮発性のシナルビンマスタードオイル、p−ヒドロキシベンジルマスタードオイルから、酵素のミロシナーゼによって生成される。これとは別に、Semen Erucaeは、不飽和脂肪酸(とくにエルカ酸)の含量が高い脂肪酸を20〜35%、タンパク質(約40%)、およびフェニルプロパン誘導体(とくにシナピン)を含んでいる。Semen Erucaeは、抗菌性、皮膚刺激性、充血誘導性の効果を有する。Semen Erucaeは、慢性の変性関節症だけでななく、気道のカタル、軟組織のリウマチの場合にも外用で用いられる。
【0014】
Flores Sambuciでは、成木(Sambucus nigra L.)のドライフラワーが用いられ、これはCaprifoliaceae科に属する。この植物は、高さ7cm以上の低木または木である。黄色から白色の花が、5つの主要な茎に集散花序を形成する。Flores Sambuciは、最大3%のフラボノイド類、精油、ステロール類およびトリテルペン類を含む。成木の花の浸剤は、気管支分泌物を増加させ、空咳だけでなく、気道のカタルの場合にも用いられる。さらに、Flores Sambuciの発汗作用は、発熱している風邪の治療のための一般的な薬において用いられている。
【0015】
Herba Adonidisは、福寿草(Adonis vernalis L.)の葉であり、これはRanunculaceae科に属す。この植物は、高さ10〜40cmであり、主としてブルガリア、ロシアおよびハンガリーで栽培されている。葉は、満開時期に採集される。Herba Adonidisは、主要成分のアドニベルニト(adonivernith)を有する1%フラボノイド類だけでなく、カルデノライドタイプの強心配糖体を0.2〜0.8%、主としてアドニトキシゲニン(adonitoxigenin)配糖体、およびストロファンチジン配糖体(例えば、シマリン(cymarin))をも含む。その薬は、静脈収縮作用だけでなく陽性変力作用をも有し、心不全(NYHA等級I−II)、とくに神経症状を伴う心不全の症例で用いられる。
【0016】
スクリーニング後、とくに効果的にトロンビンを阻害する上記3つの薬物が、さらに研究された。中でもとくに、これらの薬物を含む脂質の全ては、ヘキサンおよびイソプロパノールの混合物(3:2)を用いて抽出され、予備的な薄膜クロマトグラフィーによって遊離脂肪酸が個別に分離され、質量分析手段によって特定された。3つの各薬物において、遊離脂肪酸は驚くべきことに、トロンビン阻害の本質として特定された。Herba Adonidisにおいて、リノール酸およびリノレン酸は、トロンビン阻害作用に関与する。しかしながら、この薬物中で同様に生じるパルミチン酸は、作用を有さない。残りの2つの薬物において、オレイン酸およびエイコセン酸は、リノール酸およびリノレン酸とは別に、トロンビン阻害物質として特定された。
【0017】
脂肪酸がトロンビン阻害物質として特定された後、多数の脂肪酸が、トロンビン阻害作用について試験された。この研究の結果が、表1に要約される。
【0018】
【表1】

【0019】
80%の阻害を有する最有力候補は、シス-オクタデカン酸であり、これは例えば、穀物および大豆だけでなく、シーバックソーン(sea-buckthorn)、大根、ユリ、ゴボウ、ハスおよびニンジンにも生成する。続いて、エイコサトリエン酸、リノレン酸、アラキドン酸、リノール酸およびオレイン酸であり、これらは、それでもトロンビンの66%の阻害を示す。
【0020】
トロンビンを阻害する脂肪酸は、下記の特徴によって特徴付けられる不飽和脂肪酸である:
−18または20炭素原子の炭素鎖であり、
−脂肪酸が18炭素原子の鎖長を有する場合には、炭素鎖中に1〜3の炭素−炭素二重結合を含み、または
−脂肪酸が20炭素原子の鎖長を有する場合には、炭素鎖中に1〜4の二重結合を含み、
−二重結合または二重結合の1つが、炭素鎖の9位または11位にあり、および
−不飽和脂肪酸が、全シス型立体配置で存在している。
【0021】
トロンビン阻害作用にとって、脂肪酸が天然由来であるか合成由来であるかは、重要ではない。
【0022】
心臓血管疾患の各種のパラメータにおいて、いくつかの脂肪酸の好ましい影響は知られているが、本願において確認されたトロンビン阻害は、今のところ記載されておらず、「地中海沿岸のパラドックス」の根底にある作用の本質的な要素である可能性が高い。オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸は、サラダの下ごしらえのために用いられる食用油(例えばオリーブ油)に含まれている。それらは、持続注入のような役割を果たすリンパ系を経由して、適正な用量で身体に供給される。
【0023】
いくつかの不飽和脂肪酸がトロンビンを阻害することは、今まで知られていなかった。したがって、既知の抗凝固薬および血小板凝集阻害薬の欠点を有さない、血栓症および血栓塞栓症の予防および/または治療のための、新しい製剤を提供することを可能とする、非毒性の部類の化合物が、循環器専門医の視野に入っている。
【0024】
したがって本発明の主題は、1または2以上の、18または20炭素原子の炭素鎖の不飽和脂肪酸の使用であって(不飽和脂肪酸が18または20炭素原子の鎖長の炭素鎖を有し、不飽和脂肪酸が18炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜3の二重結合を含み、不飽和脂肪酸が20炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜4の二重結合を含み、二重結合または二重結合の1つが炭素鎖の9位または11位にあり、不飽和脂肪酸が全シス型立体配置で存在している)、血栓症および血栓塞栓症の予防および/または治療のため、ならびに血栓症および血栓塞栓症の予防用および/または治療用製剤の製造のための前記使用である。
【0025】
とくに好ましい例として、脂肪酸(1つまたは複数)が、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、リシノール酸、バクセン酸、エイコサトリエン酸およびアラキドン酸からなる脂肪酸の群より選択される。
【0026】
本発明はさらに、血栓症および血栓塞栓症の予防および/または治療のため、ならびに血栓症および血栓塞栓症の予防用および/または治療用製剤の製造のための、少なくとも1つのトロンビンを阻害する脂肪酸を含む植物薬の使用に関する。脂肪酸は、植物薬中の遊離脂肪酸として、または植物薬中に含まれる脂質または油中のトリグリセリドの脂肪酸残基として存在してもよく、ほとんどの場合には、脂肪酸はトリグリセリドとして植物中に存在し、それらは加水分解により得られる。しかしながら脂肪酸は、腸粘膜において、モノアシルグリセロールを用いてトリグリセリドに再合成され、次にそれらは、リンパ液によりカイロミクロンとして運ばれ、血清中のリポタンパク質と結合する。
【0027】
したがって本発明はまた、血栓症および血栓塞栓症の予防および/または治療のため、ならびに血栓症および血栓塞栓症の予防用および/または治療用製剤の製造のための脂質または油を含む植物薬の使用に関し、ここで、少なくとも1つのトロンビンを阻害する脂肪酸は、脂質または油中に含まれるトリグリセリドの脂肪酸残基として存在する。
【0028】
植物薬は、好ましくはFructus Cardamomi、Fructus Sabalae、Fructus Anisi、Fructus Foeniculi、Radix Althaeae、Fructus Carvi、Fructus Coriandri またはFructus Sabalaeであり、とくに好ましくはSemen Erucae、Flores SambuciまたはHerba Adonidisである。
【0029】
本発明はまた、血栓症および血栓塞栓症の予防用および/または治療用の製剤に関し、ここで製剤は、活性物質として、18または20炭素原子の炭素鎖を有する少なくとも1つの不飽和脂肪酸(18炭素原子の鎖長を有する脂肪酸は炭素鎖中に1〜3の二重結合を有し、20炭素原子の鎖長を有する脂肪酸は炭素鎖中に1〜4の二重結合を有し、二重結合または二重結合の1つが炭素鎖の9位または11位にあり、および不飽和脂肪酸が全シス型立体配置で存在している)、少なくとも1つのこれらの脂肪酸を含む少なくとも1つの植物薬、または少なくとも1つのこれらの脂肪酸を脂肪酸残基として含む少なくとも1つのトリグリセリドを含む。
【0030】
好ましくは、前記血栓症および血栓塞栓症の予防用および/または治療用の製剤は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、リシノール酸、バクセン酸、エイコサトリエン酸およびアラキドン酸からなる群より選択される。
【0031】
本発明に記載の製剤は、例えば、薬剤または栄養補助食品でもよい。さらに製剤を、ダイエット用サラダオイル、例えば味付けされたものとして、またはスープ用またはソース用添加物として、提供することも可能である。
【0032】
本発明に記載の製剤は、液体または半液体の形態だけでなく固体の形態でもよい。本発明に記載の製剤の好適な投与形態は、例えば、粉末、顆粒、カプセル、錠剤、コーティングされた錠剤、懸濁液、溶液、乳液、軟膏、ゲル、クリームまたはペーストである。各投与形態の製造のために共通して用いられる、基本原料および補助剤は、原則として当業者に既知である。
【0033】
好ましくは、本発明に記載の製剤は、経口的に投与される製剤であり、非経口的な投与形態、例えば筋肉内または皮下用の無水ベースの注射液もまた好適である。本発明に記載の製剤が、経皮的に投与される形態、例えば経皮治療システム(活性物質粘着パッチ)であることは、とくに好ましい。
【0034】
とくに好ましい態様としては、本発明に記載の製剤は、持続性作用を有し、これは、適用後にトロンビン阻害脂肪酸(単数または複数)を、治療されている患者の組織へ長時間にわたり連続的に供給することを意味する。持続作用を有する好適な製剤は、前記の無水ベースの注射液および経皮治療システムである。さらに好適な投与形態は、経口適用の胃内滞留型システムである。持続作用を有する製剤の製造のために共通して用いられる、基本原料および補助剤はまた、その目的のために適用できる方法として当業者に既知である。
【0035】

トロンビン阻害テストのために、酵素濃度を除いて、Stuerzebecherに記載の方法が用いられた(Stuerzebecher, J., Vieweg, H. (1995)、Structure-Activity Relationships of Inhibitors derived from 3-Amidinophenyl-alanine. J Enzyme Inhib, 9, 87-99)。
【0036】
緩衝液:
608mgのトリス緩衝液および900mgのNaClを、2回蒸留した100mlの水に溶解した。続いて、緩衝液のpH値を、HCl(2mMol)を用いて8.0に設定した(サンプル中の濃度:0.05mol/l TrisHCL,0.154mol/l NaCl)。試験される物質を、エタノールに溶解した(全容積の5%)。これを、続いて緩衝液を用いて満たした。
【0037】
酵素:
1mg/ml(=50NIH−U/ml)のトロンビンを、0.9%NaCl溶液(保存溶液)中に溶解した。サンプルを用意するために、この溶液を、0.9%NaCl溶液および1%ウシ血清アルブミンを用いて、1:100に希釈した。
【0038】
基質:
6.6mgのクロモザイムTHを、2回蒸留した10mlの水に溶解した(濃度=1mmol/l)。
【0039】
測定
サンプル:
200μl 緩衝液/物質
25μl 基質
50μl 酵素
条件:室温
【0040】
実施:
緩衝液および酵素を、ピペット操作で合わせて、15分間インキュベートした。反応を、基質を加えることにより開始した。吸光を測定するために、プレートリーダー(iEMS Reader MF、Labsystems)を、96ウェルマイクロタイタープレートと共に用いた。測定を、波長405nmで、10秒毎に、60回測定した。測定の開始に先立ち、マイクロタイタープレートを600rpmで振動させた。
【0041】
評価:
測定を、iEMSアクセントソフトウェアを用いて記録し、マイクロソフトエクセル97ソフトウェアを用いて評価した。阻害を計算するために、試験された物質を含むサンプルにおける吸光増加の直線状初期段階の傾斜を、ブランクサンプルにおける吸光増加の傾斜と比較した。評価において、混合による泡の形成は、反応の開始における問題の原因となり得るため、最初の5回の測定値を考察から除外した。
【0042】
阻害を以下のように計算した:
阻害 = 100 − (傾斜阻害剤 / 傾斜ブランク値 ×100)
時間と吸収の間の相関関係を、同一セクションについて、エクセルの「CORREL」機能を用いて計算した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血栓症および血栓塞栓症の予防用および/または治療用製剤の製造のための少なくとも1つの不飽和脂肪酸の使用であって、不飽和脂肪酸が18または20炭素原子の鎖長の炭素鎖を有し、不飽和脂肪酸が18炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜3の二重結合を含み、不飽和脂肪酸が20炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜4の二重結合を含み、二重結合または二重結合の1つが炭素鎖の9位または11位にあり、不飽和脂肪酸が全シス型立体配置で存在していることを特徴とする、前記使用。
【請求項2】
不飽和脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、リシノール酸、バクセン酸、エイコサトリエン酸およびアラキドン酸からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
製剤が、薬剤、栄養補助食品、ダイエット用サラダ油、またはスープ用もしくはソース用添加物の形態であることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
血栓症および血栓塞栓症の予防用および/または治療用製剤の製造のための少なくとも1つの植物薬の使用であって、植物薬が少なくとも1つの不飽和脂肪酸または該脂肪酸もしくは少なくとも1つの該脂肪酸を脂肪酸残基として有する少なくとも1つのトリグリセリドを含み、該脂肪酸が18または20炭素原子の鎖長の炭素鎖を有し、18炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜3の二重結合を含み、20炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜4の二重結合を含み、二重結合または二重結合の1つが炭素鎖の9位または11位にあり、不飽和脂肪酸が全シス型立体配置で存在していることを特徴とする、前記使用。
【請求項5】
植物薬が、Fructus Cardamomi、Fructus Sabalae、Fructus Anisi、Fructus Foeniculi、Radix Althaeae、Fructus Carvi、Fructus Coriandri、Fructus Sabalae、Semen Erucae、Flores SambuciおよびHerba Adonidisからなる植物薬の群より選択されることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
血栓症および血栓塞栓症の予防用および/または治療用製剤であって、有効成分として18または20炭素原子の鎖長を有する少なくとも1つの不飽和脂肪酸を含み、不飽和脂肪酸が18炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜3の二重結合を含み、不飽和脂肪酸が20炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜4の二重結合を含み、二重結合または二重結合の1つが炭素鎖の9位または11位にあり、不飽和脂肪酸が全シス型立体配置で存在していることを特徴とする、前記製剤。
【請求項7】
脂肪酸または脂肪酸の1つが、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、リシノール酸、バクセン酸、エイコサトリエン酸およびアラキドン酸からなる群より選択されることを特徴とする、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
血栓症および血栓塞栓症の予防用および/または治療用製剤であって、有効成分として少なくとも1つの植物薬を含み、植物薬が少なくとも1つの不飽和脂肪酸または該脂肪酸もしくは少なくとも1つの該脂肪酸を脂肪酸残基として有する少なくとも1つのトリグリセリドを含み、該脂肪酸が18または20炭素原子の鎖長の炭素鎖を有し、18炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜3の二重結合を含み、20炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜4の二重結合を含み、二重結合または二重結合の1つが炭素鎖の9位または11位にあり、不飽和脂肪酸が全シス型立体配置で存在していることを特徴とする、前記製剤。
【請求項9】
植物薬が、Fructus Cardamomi、Fructus Sabalae、Fructus Anisi、Fructus Foeniculi、Radix Althaeae、Fructus Carvi、Fructus Coriandri、Fructus Sabalae、Semen Erucae、Flores SambuciおよびHerba Adonidisからなる植物薬の群より選択されることを特徴とする、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
製剤が、薬剤、栄養補助食品、ダイエット用サラダ油、またはスープ用もしくはソース用添加物の形態であることを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の製剤。
【請求項11】
製剤が、液体、半固体または固体の形態であることを特徴とする、請求項6〜10のいずれかに記載の製剤。
【請求項12】
製剤が、粉体、顆粒、カプセル、錠剤、コーティングされた錠剤、懸濁液、溶液、乳液、軟膏、ゲル、クリームまたはペーストの形態であることを特徴とする、請求項6〜11のいずれかに記載の製剤。
【請求項13】
製剤が、経口投与の形態であることを特徴とする、請求項6〜12のいずれかに記載の製剤。
【請求項14】
製剤が、非経口投与の形態であることを特徴とする、請求項6〜12のいずれかに記載の製剤。
【請求項15】
製剤が、経皮投与の形態であることを特徴とする、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
製剤が、持続性作用を有することを特徴とする、請求項6〜15のいずれかに記載の製剤。
【請求項17】
血栓症および血栓塞栓症の予防および/または治療のための少なくとも1つの不飽和脂肪酸の使用であって、不飽和脂肪酸が18または20炭素原子の鎖長の炭素鎖を有し、不飽和脂肪酸が18炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜3の二重結合を含み、不飽和脂肪酸が20炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜4の二重結合を含み、二重結合または二重結合の1つが炭素鎖の9位または11位にあり、不飽和脂肪酸が全シス型立体配置で存在していることを特徴とする、前記使用。
【請求項18】
不飽和脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、リシノール酸、バクセン酸、エイコサトリエン酸およびアラキドン酸からなる群より選択されることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
血栓症および血栓塞栓症の予防用および/または治療用製剤の製造のための少なくとも1つの植物薬の使用であって、植物薬が少なくとも1つの不飽和脂肪酸または該脂肪酸もしくは少なくとも1つの該脂肪酸を脂肪酸残基として有する少なくとも1つのトリグリセリドを含み、該脂肪酸が18または20炭素原子の鎖長の炭素鎖を有し、18炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜3の二重結合を含み、20炭素原子の鎖長を有する場合には炭素鎖中に1〜4の二重結合を含み、二重結合または二重結合の1つが炭素鎖の9位または11位にあり、不飽和脂肪酸が全シス型立体配置で存在していることを特徴とする、前記使用。
【請求項20】
植物薬が、Fructus Cardamomi、Fructus Sabalae、Fructus Anisi、Fructus Foeniculi、Radix Althaeae、Fructus Carvi、Fructus Coriandri、Fructus Sabalae、Semen Erucae、Flores SambuciおよびHerba Adonidisからなる植物薬の群より選択されることを特徴とする、請求項19に記載の使用。

【公表番号】特表2009−518332(P2009−518332A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543700(P2008−543700)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011497
【国際公開番号】WO2007/065594
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】