説明

トンネル工法

【課題】 床版の早期施工により十分な高速施工を可能するトンネル工法を提供する。
【解決手段】 シールドマシン1等のトンネル掘削機の掘進に追随してその直後方で床版4を施工して掘進と床版施工とを並行して実施するべく、後続台車2とその後方の施工済みの床版との間にクレーン11を前進可能に配置し、該クレーンにより床版形成用のPCa版10をトンネル底部に設置して床版を前方に延長していき、トンネル掘削機の掘進に追随させてクレーンを後続台車とともに前進させていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高速施工が可能なトンネル工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トンネルの高速施工を可能とするための様々なトンネル工法が提案されており、たとえば都市部に設けられるような大断面かつ長距離の道路トンネルの施工に際しては、特許文献1〜3に示されているように床版を予めPCa版(プレキャストコンクリート版)として製作しておき、現場ではそれを組み立てることで床版を早期に施工するというトンネル工法が提案されている。そのような工法によれば、床版を現場打ちコンクリートによって施工することが通常であった在来工法に比較すれば、床版施工の合理化と全体工期の短縮をある程度は実現できるとされている。
【特許文献1】特許第3458176公報
【特許文献2】特開2003−64994号公報
【特許文献3】特開2004−176322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1〜3に示されている工法による場合であっても、切羽付近では各種の作業が複雑に錯綜するという制約から、また切羽への効率的な資材搬送を確保するために、切羽の直後方においてPCa版を組み立てて床版を施工することは極めて困難であり、したがって実際上はPCa版の組み立てによる床版施工は切羽のかなり後方で行わざるを得ないのが実情であり、そのため必ずしも十分な高速施工が可能なものではない。
【0004】
上記事情に鑑み、本発明は切羽の直後方での床版施工を可能として十分な高速施工を実現し得る有効なトンネル工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、トンネル掘削機の掘進に追随してその直後方で床版を施工していくトンネル工法であって、トンネル掘削機の後方に前進可能に設置される後続台車と、その後方において既に施工されている床版の先端部との間に、床版形成用のPCa版をトンネル底部に設置して床版を施工するためのクレーンを前進可能に配置し、前記PCa版を坑口側より前記クレーンの位置まで搬送し、該クレーンによりPCa版を揚重して施工済みの床版の先端部に搬送してそこに設置することによって施工済みの床版を漸次前方に延長し、前記クレーンをトンネル掘削機の掘進に追随させて前記後続台車とともに前進させていくことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明のトンネル工法において、床版形成用のPCa版を、長辺方向の寸法が施工するべき床版全体の幅寸法よりもやや短い矩形平版状の水平部ユニットと、トンネル幅方向に間隔をおいてトンネル底部に設置されて前記水平部ユニットを支持する対の脚部ユニットとにより構成し、該PCa版を設置するに際しては、まず前記脚部ユニットを前記クレーンにより揚重して施工済みの床版の前方のトンネル底部に自立状態で設置し、次いで前記水平部ユニットをその長辺方向をトンネル軸方向に沿わせた向きとして坑口側から床版施工用のクレーンの位置まで搬送した後、該クレーンにより揚重してさらに前方に搬送するとともに水平面内において回転させてその長辺方向をトンネル幅方向に合致させ、その状態で該水平部ユニットを前記脚部ユニット上に配置して施工済みの床版の先端部に連続せしめ、しかる後に、前記水平部ユニットの両端部とトンネル坑壁との間にコンクリートを打設することにより路肩部を形成して床版を施工することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明のトンネル工法において、床版施工用のクレーンを、トンネル幅方向に間隔をおいて施工済みの床版上に台車を介してそれぞれ立設してトンネル軸方向に移動可能とした対の支柱と、先端部を前記後続台車に支持し後端部付近を前記各支柱に支持してそれぞれをトンネル軸方向に沿わせて互いに平行に架設した対のメインビームと、それらメインビーム間に横架してトンネル軸方向に走行可能としたサブビームと、該サブビームに支持してトンネル幅方向に走行可能としかつ床版形成用のPCa版を揚重可能なホイストとにより構成し、掘進に追随して該クレーンを前記後続台車により牽引して前進させることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1,2または3記載の発明のトンネル工法において、施工済みの床版の下方空間に覆工材等の資材を搬送するための搬送路を確保して該搬送路内に資材の搬送装置を設置するとともに、床版の前方への延長に追随させて該搬送装置も前方に延伸させていき、該搬送装置の前方には該搬送装置により搬送されてきた資材を中継してさらに前方に搬送する中継搬送装置を掘進に追随して前進可能に設置し、それら搬送装置および中継搬送装置によって資材を坑口側からトンネル掘削機または後続台車まで搬送して掘進を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明のトンネル工法において、施工済みの床版の下方空間に設置する搬送装置を、所定長さの単位軌条を連続させることで形成される一連の軌条により搬送台車を支持案内して自走させる構成として、前記軌条を、搬送台車を坑口側から施工済みの床版の先端部の位置まで自走させる往路軌条と、施工済みの床版の先端部の位置から坑口側に向かって自走させる復路軌条とにより構成し、それら往路軌条と復路軌条を施工済みの床版の下方空間において独立に上下2段に設置するとともに、往路軌条の終端と復路軌条の始端の前方位置には搬送台車を往路軌条から復路軌条に移動させるためのポイント切替機構を前進可能に設けておき、前記搬送装置を前方に延伸する際には、前記ポイント切替機構を前進させて往路軌条の終端および復路軌条の始端にそれぞれ新たな単位軌条を継ぎ足すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のトンネル工法によれば、トンネル掘削機の掘進に追随してその直後方でクレーンによりPCa版を組み立てることで床版の施工を行い、その床版を資材搬送のための機材走行路として早期に使用可能であることから、極めて施工性に優れ、トンネル全体の高速施工が可能であり、在来工法に較べて十分な工期短縮と工費削減を実現することができる。
【0011】
特に、床版形成用のPCa版をトンネル幅よりもやや短い矩形平板状の水平部ユニットと、その中央部を支持する対の脚部ユニットにより構成することにより、水平部ユニットを設置した時点で直ちにその中央部を搬送路として利用でき、かつ水平部ユニットの両端部に現場打ちコンクリートにより路肩部を形成した後はその全面を搬送路として利用できるから、搬送効率と施工性に優れるものであるし、床版の施工精度も十分に確保することができる。
【0012】
さらに、床版形成用のPCa版を組み立てるためのクレーンとしてホイストを水平各方向に移動可能な門形クレーンの形態のものを採用し、そのクレーンを掘進に追随させて後続台車により牽引するようにしたので、床版施工のために複雑な装置類や面倒な盛替操作等が不要であるし、シールドマシンや後続台車は在来のものをほぼそのまま使用することが可能である。
【0013】
また、早期施工した床版の下方空間に搬送装置を延伸可能に設置するとともにその前方にさらに中継搬送装置を前進可能に設けて、それらにより覆工材等の資材を搬送することにより、床版の下方空間を資材の搬送路として早期から有効に活用でき、床版上でのPCa版の搬送と床版の下方での資材搬送とが錯綜することがなく、最も効率的な資材搬送と掘進が可能である。
【0014】
さらに、床版の下方空間に設ける搬送装置を、独立に上下2段に設けた往路軌条と復路軌条とにより搬送台車を自走させかつその走行経路をポイント切替機構により切り替える構成とすることにより、効率的な資材搬送が可能であることはもとより、搬送装置の設置スペースも最少限で済み、ポイント切替機構を前進させて単位軌条を継ぎ足すことのみで掘進に伴う延伸も容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
シールド工法により大断面の道路トンネルを施工するに際して本発明を適用する場合の一実施形態を図1〜図8を参照して説明する。図1および図2において符号1はトンネル掘削機としてのシールドマシン、2はその後続台車であり、本実施形態のトンネル工法は基本的にはシールドマシン1によって覆工材であるセグメント3を組み立てつつ掘進を行っていき、かつその掘進とほぼ同時並行作業により後続台車2の直後方において床版4を早期に施工して、施工済みの床版4を各種機材の走行路としてそのまま使用して各種資材の搬送を行うようにしたものである。図1〜図2における符号5,6,7は施工済みの床版上を走行する機材としてのトラック、コンクリートポンプ車、ミキサー車であり、8はそれらを方向転換させるためのターンテーブルである。
【0016】
本実施形態では、床版4の施工は予め製作したPCa版10を組み立てることで行うようにしており、その組立作業のためのクレーン11を後続台車2の後方に配置するとともに、そのクレーン11を後続台車2により牽引して掘進に追随させて前進させていくようにしている。
【0017】
本実施形態における床版形成用のPCa版10は、図1および図3に示すように長辺方向の寸法が施工するべき床版全体の幅寸法よりもやや短いハーフPC型枠としての矩形平版状の水平部ユニット10aと、トンネル幅方向に間隔をおいてトンネル底部に設置されて水平部ユニット10aを支持する柱状の対の脚部ユニット10bからなり、それら脚部ユニット10bと水平部ユニット10aを施工済みの床版4の前方で組み立てることで床版4を漸次前方に延長していく形態で施工するようにしている。
【0018】
PCa版10を組み立てることによる床版4の施工手順を図3に示す。予めトンネル底部に柱沓材12設置し、クレーン11により(a)に示すように脚部ユニット10bを立設した後、(b)に示すようにそれら脚部ユニット10b上に水平部ユニット10aを設置する。そして、後段で(c)に示すように水平部ユニット10aの両端部とトンネル坑壁との間にコンクリートを打設して路肩部13を施工し、最後に(d)に示すように水平部ユニット10a上に路面となるコンクリートを打設することで床版4を完成させる。
【0019】
PCa版10を組み立てるためのクレーン11は、図1、図2、図4に示すように、先端部が後続台車2に連結されて後方に向かって平行に延びている対のメインビーム20と、それらメインビーム20の後端部付近をそれぞれ支持する対の支柱21とを主体とする門形のもので、各支柱21が台車22を介して施工済みの床版4上を移動可能に設置されることで後続台車2により牽引されてそれととともに前進可能とされているものである。メインビーム20間にはサブビーム23が横架され、サブビーム23にはホイスト24が移動可能に設けられていて、組み立てるべきPCa版10をホイスト24により揚重し、サブビーム23をメインビーム20に沿ってトンネル軸方向に移動させ、ホイスト24をサブビーム23に沿ってトンネル幅方向に移動させることにより、揚重したPCa版10を水平各方向に搬送しかつその姿勢を自由に変更して高精度で位置決めを行うことができるようになっている。
【0020】
図4に上記のクレーン11によるPCa版10の組立作業手順を示す。まず(a)に示すように脚部ユニット10bを1本ずつ揚重し、図1に示しているように施工済みの床版4の前方に所定数の脚部ユニット10bを自立状態で設置する。次いで、図1〜図2に示すように水平部ユニット10aをその長辺方向をトンネル軸方向に沿わせた向きとしてトラック5に積載して坑口側からクレーン11の位置まで搬送し、その水平部ユニット10aを図4(b)に示すようにクレーン11により揚重するとともに水平面内において90°回転させて長辺方向をトンネル幅方向に合致させ、脚部ユニット10b上に吊り下ろしてそこに設置していく。その状態では図3(b)に示したように水平部ユニット10aの両端部は自由端であるが、中央部は対の脚部ユニット10bにより安定に支持されるから、その時点で水平部ユニット10aの中央部をトラック5等の走行路として支障なく使用可能である。勿論、クレーン11の支柱21を脚部ユニット10bの直上位置ないしそれより内側に設定することにより、クレーン11を十分に安定に支持することができる。
【0021】
上記のようにして床版4を前方に所定距離ずつ延長し、シールドマシン1の掘進の際にはそれに追随させて後続台車2によりクレーン11を牽引して前進させていき、同様の手順で床版4をさらに施工していく。そして、その後方では図1および図4(c)に示すように水平部ユニット10aの両端部の下方に移動型枠装置25を設置し、そこにコンクリートを打設して路肩部13を施工する。路肩部13の施工後には水平部ユニット10a全体が安定に支持されてその全面を走行路として支障なく使用することが可能であるから、大形車両どうしのすれ違いも可能な2車線以上の走行路を確保することができる。
【0022】
本実施形態のトンネル工法によれば、掘進に追随して後続台車2の直後方で床版4の施工が可能であり、その床版4を資材搬送のための機材の走行路として早期に使用可能であることから、極めて施工性に優れ、トンネル全体の高速施工が可能であり、在来工法に較べて十分な工期短縮と工費削減を実現することができる。
【0023】
特に、床版形成用のPCa版10をトンネル幅よりもやや短い矩形平板状の水平部ユニット10aと、その中央部を支持する対の脚部ユニット10bにより構成するから、水平部ユニット10aを設置した時点で直ちにその中央部を機材の走行路として利用できるし、後段で水平部ユニット10aの両端部に現場打ちコンクリートにより路肩部13を形成した以降は床版を全面的に走向路として利用できるから、極めて搬送効率と施工性に優れるものであり、また床版4の施工精度も十分に確保することができる。
【0024】
さらに、床版形成用のPCa版10を組み立てるためのクレーン11としてホイスト24を水平各方向に移動可能な門形クレーンの形態のものを採用し、そのクレーン11を掘進に追随させて後続台車2により牽引して前進させるようにしたので、床版施工のために複雑な装置類や面倒な盛替操作等が不要であるし、シールドマシン1や後続台車2は在来のものをほぼそのまま使用することが可能である。
【0025】
なお、本実施形態のトンネル工法では、上記のように早期に施工した床版4の下方空間も資材の搬送路として利用するようにしており、そこに覆工材としてのセグメント3を坑口側からシールドマシン1に向けて搬送するための搬送装置30を掘進に追随させて前方に延伸可能に設置している。
【0026】
床版4の下方空間に設置する搬送装置30は、図5に示すようにPCa版10の脚部ユニット10b間に設けた上下2段の軌条31(下段側の往路軌条31aと、上段側の復路軌条31b)により搬送台車32を支持案内して往復走行させる構成のものである。
【0027】
搬送台車32は、平面視矩形かつ扁平な本体フレーム33の両側部に全4輪の走行車輪34を設け、それら走向車輪34を電動モータ等の駆動源35により動力伝達機構36を介して駆動することで自走可能なものである。この搬送台車32には、図6に示すように油圧シリンダ38によりワイヤー39を介してセグメント3を吊り支持する状態で保持する保持機構40が設けられていて、セグメント3を搬送する際には図6(a)に示すように油圧シリンダ38によりワイヤー39を引き上げてセグメント3の両端部をストッパー41に押し当てた状態で安定に保持し、搬送したセグメント3を搬送台車32から下ろす際には(b)に示すように油圧シリンダ38を伸張させてワイヤー39を繰り出してセグメント3を降下させるようになっている。なお、搬送台車32への給電は外部から図示しないトロリーによって行うと良い。図5において符号42は制御盤、43は保持機構40としての油圧シリンダ38を駆動するための油圧ポンプ、44は本体フレーム33の前後に設けられた緩衝用バンパー、45は搬送台車32の走向を安定させるためのスプリング式のガイドローラである。
【0028】
搬送台車32を走行させるための上下2段の軌条31は、下段側がセグメント3を保持した搬送台車32を坑口側から施工済みの床版4の先端部の位置まで自走させる往路軌条31aとされ、上段側がセグメント3を降ろした後の搬送台車32を逆方向に走向させて坑口側に戻すための復路軌条31bとされている。それら軌条31は、図7(b)に示すようにいずれも所定長さの単位軌条31cが連結されることで形成されるものであり、床版4の前方への延長に伴って単位軌条31cが継ぎ足されていくことで漸次前方に延伸可能とされているものである。
【0029】
また、図7に示しているように、往路軌条31aの終端と復路軌条31bの始端の前方位置には、搬送台車32を下段側の往路軌条31aから上段側の復路軌条31bに移動させるためのポイント切替機構50が前進可能に配置されている。ポイント切替機構50は、レール51上を前進可能な本体フレーム52内に油圧シリンダ53によってワイヤー54および昇降フレーム55を介して昇降軌条56を昇降可能に設けたもので、図示しているように昇降軌条56を往路軌条31aの終端に合致させておいてそこにセグメント3を搬送してきた搬送台車32を乗り込ませ、その搬送台車32がセグメント3を降ろした後に、油圧シリンダ53により昇降軌条56を搬送台車32とともに復路軌条31bの位置まで上昇させることで搬送台車32を往路軌条31aから復路軌条31bに移動させるようにしたものである。また、各軌条31を延伸させる際には、ポイント切替機構50を前進させて各軌条31との間にそれぞれ単位軌条31cの長さ分の間隔を確保してそこに単位軌条31cを継ぎ足すようになっている。
【0030】
さらに、上記の搬送装置30の前方には、その搬送装置30により搬送されてきたセグメント3を中継してさらに前方に搬送する中継搬送装置60が設置されている。中継搬送装置60は図8に示すようにベルトコンベア61を基本とするものであるが、その先端部にはセグメント3を持ち上げて水平面内において回転させて向きを変えるためのリフトターンテーブル62が組み込まれたものである。なお、中継搬送装置60の上方においては、既に述べたようにクレーン11によりPCa版10を組み立てて床版4の施工を行うので、図1および図4に示すように養生用の防護枠63を中継搬送装置60を覆うように設けると良く、それを床版施工のための足場として使用するとともに、脚部ユニット10bを設置する際にはその防護枠63を利用して仮支持を行えば良い。
【0031】
本実施形態のトンネル工法では、上記のような搬送装置30および中継搬送装置60を用いることにより、早期施工した床版4の下方空間をセグメント3の搬送路として早期から利用でき、したがって床版4上でのPCa版10の搬送と床版4の下方でのセグメント3の搬送とが錯綜することがなく、最も効率的な資材搬送と掘進が可能である。
【0032】
しかも、その搬送装置30が、独立に上下2段に設けた往路軌条31aと復路軌条31bとにより搬送台車32を自走させかつその走行経路をポイント切替機構50により切り替える構成のものであるので、効率的な資材搬送が可能であることはもとより、その設置スペースも最少限で済み、ポイント切替機構50を前進させて単位軌条31cを継ぎ足すことのみで掘進に伴う延伸も容易に行うことが可能であり、極めて有効である。
【0033】
以上で本発明の一実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで好適な一例であって本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、たとえば以下のような適宜の設計的変更が可能である。
【0034】
上記実施形態はシールドマシン1によるシールド工法への適用例であるが、本発明はシールド工法に限らずトンネルボーリングマシン等の他のトンネル掘削機による他のトンネル工法においても同様に適用可能であり、トンネル掘削機の構成やそれによる掘削工程、覆工工程等に対応させて床版4の施工工程も適宜変更すれば良い。
【0035】
上記実施形態では床版形成用のPCa版10を水平部ユニット10aとそれを支持する脚部ユニット10bにより構成したが、それに限らずPCa版10の構成はトンネルの規模や断面形状等の諸条件を考慮して最適設計すれば良く、路肩部13の形態やその施工手順も含めて床版4の構成や施工工程も様々に変更可能である。
【0036】
上記実施形態では床版施工用のクレーン11としてホイスト24を水平各方向に移動させる構成の門形クレーンを採用し、それを後続台車2により牽引するようにしたが、クレーン11としてはPCa版10の構成やその組立作業手順等の諸条件を考慮して最適な形式のものを採用すれば良いし、牽引式に限らずたとえば自走式のクレーンも採用可能である。
【0037】
上記実施形態のように床版4の下方空間をセグメント3の搬送路として利用してそこに搬送台車32を自走させる構成の搬送装置30を延伸可能に設置し、その前方にさらに中継搬送装置60を前進可能に設置することが好ましいが、それら搬送装置30や中継搬送装置60が不要の場合には省略して差し支えない。勿論、搬送装置30や中継搬送装置60の構成も様々に変更可能であるし、セグメント3に限らず他の資材や場合によってはずりを搬送することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態であるトンネル工法による施工状況を示す斜視図である。
【図2】同、側面図である。
【図3】同、床版の施工手順を示す図である。
【図4】同、床版形成用のPCa版の組立作業手順を示す図である。
【図5】同、搬送装置の概略構成を示す図である。
【図6】同、搬送台車における保持機構の動作を示す図である。
【図7】同、搬送装置におけるポイント切替機構を示す図である。
【図8】同、中継搬送装置を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 シールドマシン(トンネル掘削機)
2 後続台車
3 セグメント(覆工材)
4 床版
10 PCa版
10a 水平部ユニット
10b 脚部ユニット
11 クレーン
13 路肩部
20 メインビーム
21 支柱
22 台車
23 サブビーム
24 ホイスト
25 移動式型枠装置
30 搬送装置
31 軌条
31a 往路軌条
31b 復路軌条
31c 単位軌条
32 搬送台車
50 ポイント切替機構
60 中継搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削機の掘進に追随してその直後方で床版を施工していくトンネル工法であって、
トンネル掘削機の後方に前進可能に設置される後続台車と、その後方において既に施工されている床版の先端部との間に、床版形成用のPCa版をトンネル底部に設置して床版を施工するためのクレーンを前進可能に配置し、
前記PCa版を坑口側より前記クレーンの位置まで搬送し、該クレーンによりPCa版を揚重して施工済みの床版の先端部に搬送してそこに設置することによって施工済みの床版を漸次前方に延長し、
前記クレーンをトンネル掘削機の掘進に追随させて前記後続台車とともに前進させていくことを特徴とするトンネル工法。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル工法であって、
床版形成用のPCa版を、長辺方向の寸法が施工するべき床版全体の幅寸法よりもやや短い矩形平版状の水平部ユニットと、トンネル幅方向に間隔をおいてトンネル底部に設置されて前記水平部ユニットを支持する対の脚部ユニットとにより構成し、
該PCa版を設置するに際しては、まず前記脚部ユニットを前記クレーンにより揚重して施工済みの床版の前方のトンネル底部に自立状態で設置し、次いで前記水平部ユニットをその長辺方向をトンネル軸方向に沿わせた向きとして坑口側から床版施工用のクレーンの位置まで搬送した後、該クレーンにより揚重してさらに前方に搬送するとともに水平面内において回転させてその長辺方向をトンネル幅方向に合致させ、その状態で該水平部ユニットを前記脚部ユニット上に配置して施工済みの床版の先端部に連続せしめ、
しかる後に、前記水平部ユニットの両端部とトンネル坑壁との間にコンクリートを打設することにより路肩部を形成して床版を施工することを特徴とするトンネル工法。
【請求項3】
請求項1または2記載のトンネル工法であって、
床版施工用のクレーンを、トンネル幅方向に間隔をおいて施工済みの床版上に台車を介してそれぞれ立設してトンネル軸方向に移動可能とした対の支柱と、先端部を前記後続台車に支持し後端部付近を前記各支柱に支持してそれぞれをトンネル軸方向に沿わせて互いに平行に架設した対のメインビームと、それらメインビーム間に横架してトンネル軸方向に走行可能としたサブビームと、該サブビームに支持してトンネル幅方向に走行可能としかつ床版形成用のPCa版を揚重可能なホイストとにより構成し、
掘進に追随して該クレーンを前記後続台車により牽引して前進させることを特徴とするトンネル工法。
【請求項4】
請求項1,2または3記載のトンネル工法であって、
施工済みの床版の下方空間に覆工材等の資材を搬送するための搬送路を確保して該搬送路内に資材の搬送装置を設置するとともに、床版の前方への延長に追随させて該搬送装置も前方に延伸させていき、
該搬送装置の前方には該搬送装置により搬送されてきた資材を中継してさらに前方に搬送する中継搬送装置を掘進に追随して前進可能に設置し、
それら搬送装置および中継搬送装置によって資材を坑口側からトンネル掘削機または後続台車まで搬送して掘進を行うことを特徴とするトンネル工法。
【請求項5】
請求項4記載のトンネル工法であって、
施工済みの床版の下方空間に設置する搬送装置を、所定長さの単位軌条を連続させることで形成される一連の軌条により搬送台車を支持案内して自走させる構成として、前記軌条を、搬送台車を坑口側から施工済みの床版の先端部の位置まで自走させる往路軌条と、施工済みの床版の先端部の位置から坑口側に向かって自走させる復路軌条とにより構成し、それら往路軌条と復路軌条を施工済みの床版の下方空間において独立に上下2段に設置するとともに、往路軌条の終端と復路軌条の始端の前方位置には搬送台車を往路軌条から復路軌条に移動させるためのポイント切替機構を前進可能に設けておき、
前記搬送装置を前方に延伸する際には、前記ポイント切替機構を前進させて往路軌条の終端および復路軌条の始端にそれぞれ新たな単位軌条を継ぎ足すことを特徴とするトンネル工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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