説明

トンネル用断熱防水板及びその取付構造

【課題】断熱効果や定着効果を増強させるとゝもに、部品点数並びに作業工数の低減を図ったトンネル用断熱防水板を提供する。
【解決手段】アンカーボルトとナットとの締結によりトンネルの内壁面に張り詰める断熱防水板1であって、矩形状の断熱層2と、該断熱層2の裏面に固定したこの断熱層2の隣り合う一組の長辺3Aと短辺3Cの側に前記断熱層2の端縁より外方へ延出する長辺側接合部5Aと短辺側接合部5Cをそれぞれ備えた防水層4と、該防水層4の裏面にあって、前記アンカーボルトとナットとの締結部分に固定した長手方向に且つ平行に延びる長尺な複数本の浮座8から構成され、前記断熱層2には、その端縁に各辺に沿って形成した前記アンカーボルトを挿通する段付凹部6をそれぞれ備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内壁面を被覆して外気との連通を遮断し、該トンネルの内壁面か
ら漏出した水を凍結させることなく排水するためのトンネル用断熱防水板及びその取付構
造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の断熱防水板及びその取付構造については、例えば特公昭50−2176
40号公報,特開昭52−95841号公報などに開示されており、出願人も先に実開昭
57−56900号公報のものや図8乃至図12に示すものをそれぞれ提案した(特開2
001−349193号公報)。
【0003】
【特許文献1】特公昭50−217640号公報
【特許文献2】特開昭52−95841号公報
【特許文献3】実開昭57−56900号公報
【特許文献4】特開2001−349193号公報
【0004】
すなわち、前記特開2001−349193号公報に開示された断熱防水板は31は、
図8乃至図12に示すように、縦長方形の断熱層32と、該断熱層32の裏面に接着固定
したこの断熱層32の四辺より外方へ延出する接合縁33A〜33Dをそれぞれ備えた防
水層34と、該防水層34の裏面に接着材により固定した浮座35から主に構成されてい
る。なお、図中、36は前記断熱層32に形成した段付凹部、37は該段付凹部36内に
設置したアンカーキャップ、38はアンカーボルト、39はナット、40はフォームキャ
ップ,41は目地フオームパッキンである。
【0005】
この、断熱防水板31の取付方法は、図9に示すように、断熱防水板31Aをトンネル
の内壁面に配置し、三辺の接合縁33A,33C,33Dの所定の部分および断熱層32
に形成した段付凹部36の部分において、トンネルの内壁まで連続するアンカーボルト取
付孔をそれぞれ穿設し、該アンカーボルト取付孔にアンカーボルト38の先端を打ち込ん
でアンカーボルト38を確立する。
【0006】
そして、断熱防水板31の三辺の接合縁33A,33C,33Dにあっては、該接合縁
33A,33C,33Dから突出する前記アンカーボルト38の頭部に、断熱層32に形
成した段付凹部36の部分にあっては、該段付凹部36内に設置した前記アンカーキャッ
プ37の底部中央の貫通孔から突出する頭部に、それぞれナット39を螺合して此れを締
めつけることで、端部の断熱防水板31Aを取付ける。
【0007】
つぎに、前記断熱防水板31Aの右側にこれと接続する断熱防水板31を配置し、該断
熱防水板31の左側の接合縁33Aを、先に固定した前記断熱防水板31Aの右側の接合
縁33Bの上に乗せる。そして、接続する断熱防水板31と先に固定した前記断熱防水板
31Aにあっては、上下に重ね合わせた接合縁33Aの上から接合縁33Bの所定の部分
にトンネルの内壁まで連続するアンカーボルト取付孔を開け、該取付孔にアンカーボルト
38を確立する。同時に、前記と同様に、各段付凹部36内の部分にもアンカーボルト3
8を打ち込んで確立する。
【0008】
そして、前記アンカーボルト38の頭部にナット39を螺合して此れを締めつけること
で、端部の断熱防水板31Aの右側にこれと接続する断熱防水板31を取付ける。この接
続作業を繰り返すことで、右方向に断熱防水板31の張設を順次行い、同様の手順を上下
短辺側接合部33C,33Dにおいて行うことで上下方向の張設を行う。この接続作業に
より、各断熱防水板31A,31の断熱層32相互間には、図10に示すように縦横に交
叉する目地溝42が形成されるので、該目地溝42内に目地フォームパッキン41をそれ
ぞれ嵌合してシーリング材43を充填する。段付凹部36内のアンカーボルト38の頭部
にはフォームキャップ40を嵌合し、シーリング材43を充填する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような断熱防水板31及びその取付構造によれば、浮座35で防水層34とトンネ
ルの内壁面との間に通水用の間隙を確保しつつ、各断熱防水板31でトンネルの内壁面を
気密且つ水密に被覆することになる。そのため、トンネルの内壁面を地熱によって暖める
ことができ、トンネルの内壁面から漏出した水を凍結させることなく防水層34に沿って
流下させ、路床下に排水することができる。また、断熱防水板31を設置する際にナット
39の締め付けによる防水層34の局部的な変形を防止し、断熱防水板31の耐久性を向
上させることができると言った諸効果を奏する。
【0010】
しかし、前記断熱防水板31にあって、その断熱層32と防水層34とは接着材により
接着固定する構成としていること、断熱防水板31,31同士の連結は、防水層34の接
合部33と接合部33を上下に重ね合わせ、断熱層32と断熱層32の間に目地溝42を
形成するとゝもに、該目地溝42内に目地フォームパッキン41をシーリング材43で接
着固定することで連続して張り詰める構成としている。
【0011】
そのため、接着材及びシーリング材の経年劣化や列車通過時の風圧等によって、図11
に示すように、断熱層32の四隅部が防水層34から剥離したり、目地フォームパッキン
41が目地溝42から剥離してくる虞もあると考えられる。また目地フォームパッキン4
1や防水層34の接合縁33A,33C,33Dに打ち込むアンカーボルト38等の部品
点数が多くなることと、アンカーボルト38の取付孔の穿設による接合縁33およびトン
ネルの躯体の劣化なども考えられる。
【0012】
また、トンネルの内壁面に張り詰めた各断熱防水板31の始端又は終端には目地溝42
が形成されないので、前記目地フォームパッキン41を始端又は終端の接合縁33Aにシ
ーリング材43によって接着するとゝもに、該目地フォームパッキン41の側端面から断
熱層32の側面に向け落下防止用のピン44を打ち込み、断熱層32の側面に固定する。
その後、当該箇所における浮座35,断熱防水板31および目地フォームパッキン41の
各側面を更にシーリング材43でシールすることで、断熱防水板31の側端部からの寒気
進入を防止するなど、構造的に施工に手数がかかるなどの問題点も考えられる。
【0013】
本発明は、先に提案した上記発明に更なる改良を施すことで、断熱効果や定着効果を増
強させるとゝもに、部品点数並びに作業工数の低減を図って廉価に提供することができる
ものを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、アンカーボルトとナットと
の締結によりトンネルの内壁面に張り詰める断熱防水板であって、平面視が矩形状の断熱
層と、該断熱層の裏面に固定したこの断熱層の隣り合う一組の長辺と短辺の側に、前記断
熱層の端縁より外方へ延出する長辺側接合部と短辺側接合部をそれぞれ備えた防水層と、
該防水層の裏面にあって、前記アンカーボルトとナットとの締結部分に固定した長手方向
に且つ平行に延びる長尺な複数本の浮座から構成され、前記断熱層には、その端縁に各辺
に沿って形成した前記アンカーボルトを挿通する段付凹部をそれぞれ備えたことを特徴と
するトンネル用断熱防水板であり、好ましくは、前記浮座は、前記長辺側接合部とこれと
隣接する前記長辺の部分および幅方向中央部分の前記アンカーボルトとナットとの締結部
分に、前記防水層の他方の短辺から前記短辺側接合部の幅と同一長さの余白部を残し、全
長に渡って設けたことを特徴とする(請求項2)。
【0015】
また、上記の目的を達成するため、本願の請求項3に係る発明は、アンカーボルトとナ
ットとの締結によりトンネルの内壁面に張り詰める端部用の断熱防水板であって、平面視
が矩形状の断熱層と、該断熱層の裏面に固定したこの断熱層の隣り合う一組の長辺と短辺
の側に、前記断熱層の端縁より外方へ延出する長辺側接合部と短辺側接合部をそれぞれ備
えた防水層と、該防水層の裏面にあって、前記アンカーボルトとナットとの締結部分に固
定した長手方向に且つ平行に延びる長尺な複数本の浮座から構成され、前記断熱層には、
その端縁に各辺に沿って形成した前記アンカーボルトを挿通する段付凹部をそれぞれ備え
るとゝもに、他方の長辺の端縁には前記一方の長辺より段付凹部を多く形成したことを特
徴とする。
【0016】
そして、好ましくは、前記浮座は、前記長辺側接合部とこれと隣接する前記長辺の部分
および幅方向中央部分ならびに他方の長辺の部分のアンカーボルトとナットとの締結部分
に、前記防水層の他方の短辺から前記短辺側接合部の幅と同一長さの余白部を残し、全長
に渡って設け(請求項4)、または、前記段付凹部に、前記アンカーボルトの挿通孔を底
部に設けた有底の筒状部と、該筒状部の開口部に連成した前記断熱層の表面と当接する顎
部とからなるアンカーキャップを装着したことを特徴とする(請求項5)。
【0017】
そして、上記の目的を達成するため、本発明に係る請求項6に係る断熱防水板の取付構
造は、請求項1又は2記載のトンネル用断熱防水板の前記長辺側接合部の上に、これと連
結する同一構造のトンネル用断熱防水板の他方の長辺を、互いの断熱層の側端面を面接せ
しめて乗せ、前記段付凹部で請求項5記載のアンカーキャップを介してアンカーボルトと
ナットとの締結によりトンネルの内壁面に前記浮座を介して固定するとゝもに、前記アン
カーキャップ内にシーリング材を介してフォームキャップを装着したことを特徴とする。
【0018】
更に、上記の目的を達成するため、本発明に係る請求項7に係る断熱防水板の取付構造
は、請求項3又は4記載のトンネル用断熱防水板の前記長辺側接合部の上に、これと連結
する請求項1又は2記載のトンネル用断熱防水板の他方の長辺を互いの断熱層の側端面を
面接せしめて乗せ、前記段付凹部で請求項5記載のアンカーキャップを介してアンカーボ
ルトとナットとの締結によりトンネルの内壁面に浮座を介して固定するとゝもに、前記ア
ンカーキャップ内にシーリング材を介してフォームキャップを装着したことを特徴とする
ものである。
【発明の効果】
【0019】
上記の構成により、本願発明は、断熱防水板をトンネルの内壁面に固定する漏水防止工
において、断熱防水板同士を連結する際に目地溝が生じない。したがって、目地フォーム
パッキンが不要となり、部品点数の削減を図ることができるとゝもに、施工工程に於いて
は目地フォームパッキンの設置工程が無いため作業性が向上し施工時間が短縮され、コス
トダウンを図ることができる。また、アンカーボルトの設置位置を断熱防水板の断熱層の
四辺の端縁にしたため、断熱層の剥離若しくは垂下をも確実に防止することができるとゝ
もに、浮座は長手方向にに延びる長尺な構成であるため水滴はこの浮座に沿って流れ、排
水性が向上する。また、アンカーキャップは段付凹部内におけるアンカーボルトに螺合し
たナットの締付け力を分散させ、防水層を局部的に変形させることなく断熱防水板をトン
ネルの内壁面に固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図7に基づいて詳細に説明する。図において、1
(1X,1Y)は本発明で使用するトンネル用の断熱防水板(以下、単に「断熱防水板」
という)で、図1,図2の各正面図(イ),同各背面図(ロ)及び同各底面図(ハ)に示
すような正面視が縦長方形状の板構成体からなり、図3,図4に示すように、この断熱防
水板1を複数枚組み合わせ、アンカーボルト9とナット10とにより締結することで、こ
れをトンネルの内壁面に張り詰め、トンネルの内壁面から漏出する水を凍結させることな
く地中に排水する構成としたものである。
【0021】
2(2X,2Y)は前記断熱防水板1(1X,1Y)を構成する断熱層であり、トンネ
ルの内壁面を外気から遮断するためのもので、例えば難燃剤を添加した発泡ポリエチレン
樹脂によって形成した縦1,900mm,横900mm,厚さ40mmの縦長方形の板状
体で構成されている。なお、図中3Aは前記断熱層2の左側長辺,3Bは右側長辺,3C
は上側短辺,3Dは下側短辺である。
【0022】
4(4X,4Y)はトンネルの内壁面を水密的に被覆するための防水層で、前記断熱層
2の裏面に接着固定した縦長方形のものであり、前記断熱層2の左側長辺3Aと上側短辺
3Cの側に、該断熱層2の端縁より外方へ延出する左長辺側接合部(左側接合部)5Aと
上短辺側接合部(上側接合部)5Cをそれぞれ備えている。具体例として、この防水層4
は、耐寒性及び難燃性を持たせるべく難燃剤を添加したABS樹脂などによって形成され
ており、その左側接合部5Aと上側接合部5Cの前記断熱層2端縁からの延出長さHはそ
れぞれ100mmである。
【0023】
6は前記断熱層2(2X,2Y)の表面側に形成した段付凹部で、前記アンカーボルト
9とナット10により締結する所定の位置に形成されており、この段付凹部6内に装着し
たアンカーキャップ7を介してアンカーボルト9とナット10により締結することで、前
記断熱防水板1(1X,1Y)をトンネルの内壁面に張り詰める。
【0024】
具体的には、図1に示す一般部用の断熱防水板1Xにあっては、その断熱層2Xの四隅
部、断熱層2Xの四辺(3A〜3D)に沿ったその端縁部及び中央部に段付凹部6をそれ
ぞれ形成し、この段付凹部6の部分でアンカーボルト9とナット10で締結することで、
断熱層2Xの防水層4Xからの剥離を防止している。特に、図2に示す端部用の断熱防水
板1Yにあっては、列車通過時による強い風圧等を受けた場合でも剥離することがないよ
うに、接合部を備えていない右側長辺3Bの側には、これと対向する左側長辺3Aの側に
形成した数より多い段付凹部6をその端縁部に形成した構成のものである。
【0025】
上記のように、図1に示す一般部用の断熱防水板1X及び図2に示す端部用の断熱防水
板1Yを組み合わせて使用することでトンネルの内壁面に張り詰めるが、図1に示す一般
部用の断熱防水板及び図2に示す端部用の断熱防水板にあって、左側接合部5Aと上側接
合部5Cに加えて下側接合部5D(図示せず)をそれぞれ備えた断熱防水板を用意してお
き、上下いづれか一方の短辺側の接合部5C又は5Dおよび後述する浮座8を切除するこ
とで、あらゆる設置場所に適応できる断熱防水板を形成することが可能である。更には、
図1に示す一般部用の断熱防水板1Xを基本構成品とし、その右側長辺3B側に段付凹部
6を追加加工(等間隔に3個)するとゝもに、後述する幅広の浮座8dを右側長辺3Bの
裏面に追加取付けることにより量産品は1種類で対応可能であり、施工箇所に応じて、形
状を予め調査し、前記量産品(基本構成品)を追加加工して用途に合わせた形状の枚数を
準備することも可能である。
【0026】
8は前記防水層4(4X,4Y)の裏面に接着固定した長尺な浮座で、前記アンカーボ
ルト9とナット10との締結箇所にそれぞれ固定したものであり、断熱防水板1をトンネ
ルの内壁面に設置した際に内壁面と防水層4との間に間隙を形成し、漏水が流下し易くす
るためのものである。図1に示す一般部用の断熱防水板1Xでは、その正面図(イ),背
面図(ロ),底面図(ハ)に示すように、左側接合部5Aの部分(8a)と断熱層2Xの
左側長辺3Aの部分(8b)および幅方向中央の部分(8c)に、防水層4Xの下側短辺
3Dから前記上側接合部5Cの幅と同一長さHを残して、上下方向に全長に渡って浮座8
(8a〜8c)をそれぞれ形成した構成としてある。
【0027】
また、図2に示す端部用の断熱防水板1Yにあっては、同図(イ)〜(ハ)に示すよう
に、左側接合部5Aの部分(8a)と断熱層2Yの左側長辺3Aの部分(8b)および幅
方向中央の部分(8c)と、更に断熱層2Yの右側長辺3Bの部分(8d)に、防水層4
Yの下側短辺3Dから前記上側接合部5Cの幅と同一長さHを残して、上下方向に全長に
渡って長尺な浮座8(8a〜8d)をそれぞれ設けた構成とした。なお、施工箇所の始終
点に配設されるこの断熱防水板1Yでは、その始端側(終端側)の浮座8dは他の箇所の
浮座8a〜8cよりも幅の広いものが設けられている。施工箇所の始終点においては、特
に列車の通過などによる風圧や雨風等の影響を受けるため、過酷な環境の中でも上記目的
を果たさせるためである。
【0028】
つぎに、上記構成の断熱防水板1(1X,1Y)の取付構造の実施形態を図3乃至図7
を参照して説明すると、トンネルの内壁面にあって、断熱防水板1を設置する場所の始端
部分に、図3に示すように、先ず端部用の断熱防水板1Yをその防水層4Y側をトンネル
の内壁面側に向けて配設し、各段付凹部6内に装着したアンカーキャップ7の底部に挿入
したドリルでトンネルの内壁に孔をあけ、該孔内にアンカーボルト9を打ち込んでアンカ
ーボルト9を確立する。つぎに、前記アンカーボルト9の前記浮座8,防水層4Yおよび
アンカーキャップ7の底部に形成した孔を貫通して突出する頭部に、座金を介してナット
10を螺合し、これを締め付けることによりトンネルの内壁面に端部用の断熱防水板1Y
を固定する。
【0029】
つぎに、この端部用の断熱防水板1Yの左側に、これと接続する一般部用の断熱防水板
1Xを配設し、接合部を備えていない右側長辺3Bを前記端部用の断熱防水板1Yの左側
接合部5Aの上に重ねて設置する。そして、断熱防水板1Xの右側長辺3Bに沿って形成
した段付凹部6内に装着したアンカーキャップ7の底部に挿入したドリルでトンネルの内
壁に孔をあけ、該孔内にアンカーボルト9を打ち込んで確立する。次に、前記アンカーボ
ルト9の前記浮座8a,両断熱防水板1X,1Yの防水層4X,4Yおよびアンカーキャ
ップ7の底部に形成した孔を貫通する頭部に座金を介してナット10を螺合し、これを締
め付けることにより端部用の断熱防水板1Yの左側に一般部用の断熱防水板1Xを固定す
る。
【0030】
そして、このような連結・固定作業を繰り返すことにより、図中左方向および上下方向
に両断熱防水板1X,1Yが張り詰められ、図4に示すように、トンネルの内壁面にあっ
て、断熱防水板1を設置しようとする所望の面積を覆うことができる。次いで、各段付凹
部6内にあって、各アンカーボルト9に締結した各ナット10の部分にシーリング材12
をそれぞれ充填してシールし、図5および図6に示すように、フォームキャップ11を嵌
合する。
【0031】
また、トンネルの内壁面に張り詰めた各断熱防水板1の始端又は終端には、図7に示す
ように、浮座8(8d)の側端面をシーリング材12でシールすることで、断熱防水板1
の側端部からの寒気進入を防止する。このようにして、各断熱防水板1によりトンネルの
内壁面が気密かつ水密に被覆され、該トンネルの内壁面の断熱性が保持される。最後に、
各断熱防水板1とフォームキャップ11の全表面に、バーライト等の無機質を主体とした
防火塗料を塗布することで、万が一断熱層及びフォームキャップが剥離し、トンネル内の
架線に接触した場合であっても発火する事態を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るトンネル用断熱防水板の正面図(イ),背面図(ロ)及び底 面図(ハ)である。
【図2】端部用の同断熱防水板の正面図(イ),背面図(ロ)及び底面図(ハ)で ある。
【図3】同断熱防水板の取付工程を示す説明斜視図である。
【図4】同断熱防水板をトンネルの内壁面に張り詰めた状態の展開部分図である。
【図5】図4のAーA線断面拡大図である。
【図6】図4のBーB線断面拡大図である。
【図7】図4のCーC線断面拡大図である。
【図8】従来のトンネル用断熱防水板の正面図(イ),背面図(ロ)及び底面図( )である。
【図9】同断熱防水板の取付工程を示す説明斜視図である。
【図10】同断熱防水板をトンネルの内壁面に張り詰めた状態の展開部分図である。
【図11】図10のDーD線断面拡大図である。
【図12】図10のEーE線断面拡大図である。
【符号の説明】
【0033】
1 断熱防水板
2 断熱層
3A 左側長辺
3B 右側長辺
3C 上側短辺
3D 下側短辺
4 防水層
5A 左長辺側接合部(左側接合部)
5C 上短辺側接合部(上側接合部)
5D 下短辺側接合部(下側接合部)
6 段付凹部
7 アンカーキャップ
8 浮座
9 アンカーボルト
10 ナット
11 フオームキャップ
12 シーリング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーボルトとナットとの締結によりトンネルの内壁面に張り詰める断熱防水板であって、平面視が矩形状の断熱層と、該断熱層の裏面に固定したこの断熱層の隣り合う一組の長辺と短辺の側に、前記断熱層の端縁より外方へ延出する長辺側接合部と短辺側接合部をそれぞれ備えた防水層と、該防水層の裏面にあって、前記アンカーボルトとナットとの締結部分に固定した長手方向に且つ平行に延びる長尺な複数本の浮座から構成され、前記断熱層には、その端縁に各辺に沿って形成した前記アンカーボルトを挿通する段付凹部をそれぞれ備えたことを特徴とするトンネル用断熱防水板。
【請求項2】
前記浮座は、前記長辺側接合部とこれと隣接する前記長辺の部分および幅方向中央部分の前記アンカーボルトとナットとの締結部分に、前記防水層の他方の短辺から前記短辺側接合部の幅と同一長さの余白部を残し、全長に渡って設けたことを特徴とする請求項1記載のトンネル用断熱防水板。
【請求項3】
アンカーボルトとナットとの締結によりトンネルの内壁面に張り詰める端部用の断熱防水板であって、平面視が矩形状の断熱層と、該断熱層の裏面に固定したこの断熱層の隣り合う一組の長辺と短辺の側に、前記断熱層の端縁より外方へ延出する長辺側接合部と短辺側接合部をそれぞれ備えた防水層と、該防水層の裏面にあって、前記アンカーボルトとナットとの締結部分に固定した長手方向に且つ平行に延びる長尺な複数本の浮座から構成され、前記断熱層には、その端縁に各辺に沿って形成した前記アンカーボルトを挿通する段付凹部をそれぞれ備えるとゝもに、他方の長辺の端縁には前記一方の長辺より段付凹部を多く形成したことを特徴とする端部用のトンネル用断熱防水板。
【請求項4】
前記浮座は、前記長辺側接合部とこれと隣接する前記長辺の部分および幅方向中央部分ならびに他方の長辺の部分のアンカーボルトとナットとの締結部分に、前記防水層の他方の短辺から前記短辺側接合部の幅と同一長さの余白部を残し、全長に渡って設けたことを特徴とする請求項3記載の端部用のトンネル用断熱防水板。
【請求項5】
前記段付凹部に、前記アンカーボルトの挿通孔を底部に設けた有底の筒状部と、該筒状部の開口部に連成した前記断熱層の表面と当接する顎部とからなるアンカーキャップを装着したことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のトンネル用断熱防水板。
【請求項6】
請求項1又は2記載のトンネル用断熱防水板の前記長辺側接合部の上に、これと連結する同一構造のトンネル用断熱防水板の他方の長辺を互いの断熱層の側端面を面接せしめて乗せ、前記段付凹部で請求項5記載のアンカーキャップを介してアンカーボルトとナットとの締結によりトンネルの内壁面に前記浮座を介して固定するとゝもに、前記アンカーキャップ内にシーリング材を介してフォームキャップを装着したことを特徴とするトンネル用断熱防水板の取付構造。
【請求項7】
請求項3又は4記載のトンネル用断熱防水板の前記長辺側接合部の上に、これと連結する請求項1又は2記載のトンネル用断熱防水板の他方の長辺を互いの断熱層の側端面を面接せしめて乗せ、前記段付凹部で請求項5記載のアンカーキャップを介してアンカーボルトとナットとの締結によりトンネルの内壁面に浮座を介して固定するとゝもに、前記アンカーキャップ内にシーリング材を介してフォームキャップを装着したことを特徴とするトンネル用断熱防水板の端部の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−303613(P2008−303613A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151799(P2007−151799)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【出願人】(391034787)株式会社シオン (1)
【Fターム(参考)】