説明

ドアサッシュモールの取付構造

【課題】サッシュ本体とモールの取付性に優れ、モールがガラスランとウェザストリップの保持構造に関与するドアサッシュモールの取付構造を得る。
【解決手段】サッシュ本体に、車内側に位置する袋状部と;この袋状部から車外側に延びる外方延長部と;この外方延長部の車外側端部からボディ側に延びるモール取付部と;を形成し、モールに、サッシュ本体のモール取付部に沿ってかつ該モール取付部より窓ガラス側に延びる意匠部と;この意匠部の窓ガラス側端部から車内側に曲折形成され、サッシュ本体の袋状部との間にガラスラン保持凹部を構成するガラスラン保持縁と;意匠部のボディ側端部から車内側に曲折形成され、サッシュ本体のモール取付部を跨いで外方延長部のドア開口に沿う面に弾性接触する弾性固定縁部と;サッシュのモール取付部の窓ガラス側の端部に係合する、意匠部裏面に一体に形成した抜止突条と;を形成したドアサッシュモールの取付構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアサッシュモールの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車に代表される車両のドアサッシュは一般に、窓枠を構成するドアサッシュ(フレーム)本体と、このドアサッシュ本体の車外側の面に取り付けたモールを備えている。
【特許文献1】特開平11-334367号公報
【特許文献2】特開2003-72383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このモールは従来、例えばリベットを介してドアサッシュ本体に取り付けられていた(特許文献1)。しかし、別部品としてのリベット(接続部品)を介して接合する構造では、必然的に部品数、組立工数が多くなり、コストアップ要因となる。
【0004】
また、ドアサッシュには、昇降ガラスの上縁を受け入れるガラスランと、ドアを閉じたときの液密性、機密性を確保するためのウェザストリップとを保持することが不可欠であるが、従来構造では、ドアサッシュ本体に単独でこのガラスラン保持部とウェザストリップ保持部を設け、モールには単なる装飾の機能しか与えておらず、モールの十分な有効利用が図られていなかった。
【0005】
本発明は、以上の問題意識に基づき、ドアサッシュ本体に対するモールの取付性に優れ、しかも、構造上、モールがガラスランとウェザストリップの保持構造に関与するドアサッシュモールの取付構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両ドアの窓枠を構成するドアサッシュ本体と;このドアサッシュ本体の車外側の面に露出する意匠部を有し該ドアサッシュ本体に取り付けられるモールと;からなるドアサッシュモールの取付構造において、ドアサッシュ本体に、該ドアサッシュ本体の長手方向直交断面において、車内側に位置する袋状部と;この袋状部から車外側に延びる外方延長部と;この外方延長部の車外側端部からボディ側に延びるモール取付部と;を形成し、モールに、該モールの長手方向直交断面において、ドアサッシュ本体のモール取付部に沿ってかつ該モール取付部より窓ガラス側に延びる意匠部と;この意匠部の窓ガラス側端部から車内側に曲折形成され、ドアサッシュ本体の上記袋状部との間にガラスラン保持凹部を構成するガラスラン保持縁と;上記意匠部のボディ側端部から車内側に曲折形成され、ドアサッシュ本体の上記モール取付部を跨いで外方延長部のドア開口に沿う面に弾性接触する弾性固定縁部と;ドアサッシュの上記モール取付部の窓ガラス側端部に係合する、上記意匠部裏面に一体に形成した抜止突条と;を形成したことを特徴としている。
【0007】
モールの意匠部の裏面には、ドアサッシュ本体のモール取付部に弾接する触れ止め突条を一体に形成することが望ましい。
【0008】
ドアサッシュ本体の外方延長部の車両ボディ開口側には、モールの弾性固定縁部との間にウェザストリップ保持凹部を形成する、ウェザストリップ保持縁が突出形成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドアサッシュモールの取付構造によれば、リベット等の別部材を要することなく、ドアサッシュモール本体にモールを取り付けることができる。また、モールにガラスランの保持機能及びさらにはウェザストリップの保持機能を与えることができ、モールの有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図3は、本発明によるドアサッシュモールの取付構造を適用する乗用車のドアの側面形状を示している。車両ボディBのドア開口(ボディ開口)Aを開閉する車両ドア10は、ドア本体11の上部にドアサッシュ本体(窓枠)12を備えている。ドアサッシュ本体12は、窓開口12Wを形成するものであり、窓ガラスWの上縁を受け入れる曲折した上枠12aと窓ガラスWの上下方向縁部を受け入れる縦枠12bとを有している。
【0011】
ドアサッシュ本体12(上枠12a)には、その車外側の面に露出する意匠部を有するモール(サッシュモール、光モール)20が取り付けられている。本実施形態は、このドアサッシュ本体12とモール20の取付構造を要旨とするもので、図2、図3はそれぞれ異なる実施形態を示している。図2、図3は、車両ドア10を閉じた状態の長手方向直交断面形状を示しており、図の左側が車内側(内側、内方)、右側が車外側(外側、外方)である。ドアサッシュ本体12とモール20は、基本的に一様断面形状を有しており、モール20の側面形状は、ドアサッシュ本体12の上枠12aの側面形状に対応している。実施形態では、ドアサッシュ本体12は金属(鉄系)材料のロール成形品からなっており、モール20は、ステンレス、アルミニウム等の金属材料と合成樹脂材料の押出成形品からなっている。
【0012】
図2の実施形態において、ドアサッシュ本体12は、主に機械的強度を保持するための車内側に位置する袋状部(閉鎖断面形状部)13を有しており、この袋状部13から車外側に向けてかつドア開口Aに接近する方向に斜めに外方延長部14が延びている。この外方延長部14の車外側の先端部には、車外面となるモール取付部15が形成されている。モール取付部15は、外方延長部14の先端部から上方(ボディB側)にのみ延びていて、下方(窓ガラスW側)には形成されていない。
【0013】
モール20は、ドアサッシュ本体12の外方延長部14及びモール取付部15に取り付けられるもので、ドアサッシュ本体12のモール取付部15の外面に沿う意匠部21を有している。この意匠部21は、モール取付部15の外面に沿うだけでなく、モール取付部15より窓ガラスW側に延びている。図示例では、モール取付部15の外面に沿う部分の長さとモール取付部15の窓ガラス側に延びる部分の長さは同程度である。
【0014】
モール20の意匠部21の窓ガラス側端部には、該意匠部21の窓ガラス側端部を内方に曲折させた後さらに上方(ボディB側)に曲折したガラスラン保持縁22が形成されている。一方、ドアサッシュ本体12の袋状部13には、このガラスラン保持縁22(意匠部21)との間にガラスラン保持凹部30を構成する保持凹部13aが形成されている。窓ガラスWを受け入れるガラスラン31は、このガラスラン保持凹部30に保持されている。ガラスラン31は周知であり、その断面形状は問わない。
【0015】
モール20の意匠部21の上端部(ボディB側端部)には、弾性固定縁部23が曲折形成されている。この弾性固定縁部23は、意匠部21の上端部(ボディB側端部)を内方に曲折した内方曲折部23aと、この内方曲折部23aの内側端部を外方延長部14とモール取付部15のコーナ部に向けて折り返した折り返し部23bと、この折り返し部23bの外方端部をさらに、外方延長部14の上面(ドア開口Aに沿う面)に沿って折り返した接触縁23cとを有している。
【0016】
また、モール20の意匠部21の内面には、合成樹脂材料の押出成形により、ドアサッシュ本体12のモール取付部15の下縁(窓ガラスW側の端部)に係合する抜止突条24と、モール取付部15の外面に弾接する触れ止め突条25が一体に形成されている。
【0017】
ドアサッシュ本体12には、モール20の弾性固定縁部23との間に、ウェザストリップ保持凹部32を形成するウェザストリップ保持縁16が形成されている。このウェザストリップ保持凹部32には、車両ドア10を閉じたとき、車両ボディBのドア開口Aとの間の隙間を閉じるウェザストリップ33が保持されている。ウェザストリップ33は、周知であり、その断面形状は種々知られている。また、図示例では、車両ボディBに別のウェザストリップ34が保持されている。
【0018】
上記構成の本ドアサッシュモールの取付構造は、ドアサッシュ本体12(上枠12a)に次のようにモール20を取り付ける。モール20のガラスラン保持縁22と弾性固定縁部23の間の隙間を、ドアサッシュ本体12のモール取付部15に嵌め込んで、モール20をドアサッシュ本体12の上から押し込む。すると、抜止突条24(と振れ止め突条25)がモール取付部15の外面に当接して、意匠部21が弾性変形する。やがて抜止突条24がモール取付部15の下縁(窓ガラスW側の縁部)に達すると、意匠部21が自由になって抜止突条24がモール取付部15の下縁に係合する。このとき、モール20の弾性固定縁部23は、その折り返し部23bと接触縁23cとの接続部がドアサッシュ本体12の外方延長部14とモール取付部15のコーナ部に弾性的に接触し、接触縁23cが外方延長部14の上面(ドア開口Aに沿う面)に沿う。また、振れ止め突条25がモール取付部15の外面に弾性的に接触してモール20がモール取付部15に安定した状態で保持される。
【0019】
この取付状態で、モール20のガラスラン保持縁22と、サッシュ本体12の袋状部13の保持凹部13aとの間(ガラスラン保持凹部30)に、ガラスラン31を保持する。また、モール20の弾性固定縁部23と、サッシュ本体12のウェザストリップ保持縁16との間(ウェザストリップ保持凹部32)に、ウェザストリップ33を保持する。
【0020】
本実施形態は、このように、モール20が、その意匠部21によってドアサッシュ本体12の車外側の面を装飾するだけでなく、そのガラスラン保持縁22によってガラスラン31の保持機能を分担し、弾性固定縁部23によってウェザストリップ33の保持機能を分担している。
【0021】
図2の実施形態は、図1の実施形態における振れ止め突条24を除去した実施形態である。図1の実施形態の振れ止め突条24は、モール本体20のモール取付部15に対する固定強度を高めるために有用であるが、弾性固定縁部23のばね性を高めることにより、振れ止め突条24を省略しても、第一の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0022】
以上の実施形態では、ドアサッシュ本体12は金属(鉄系)材料のロール成形品からなるとしたが、アルミ合金の押出成形品にも本発明は同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるドアサッシュモールの取付構造の一実施形態を示す、図3のI-I線に沿う断面図である。
【図2】同別の実施形態を示す、図1に対応する断面図である。
【図3】本発明によるドアサッシュモールの取付構造を適用する車両ドアの一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0024】
B 車両ボディ
A ドア開口(ボディ開口)
W 窓ガラス
10 車両ドア
11 ドア本体
12 ドアサッシュ本体
12a 上枠
12b 縦枠
12W 窓開口
13 袋状部
13a 保持凹部
14 外方延長部
15 モール取付部
16 ウェザストリップ保持縁
20 モール
21 意匠部
22 ガラスラン保持縁
23 弾性固定縁部(ウェザストリップ保持縁)
23a 内方曲折部
23b 折り返し部
23c 接触縁
24 抜止突条
25 触れ止め突条
30 ガラスラン保持凹部
31 ガラスラン
32 ウェザストリップ保持凹部
33 34 ウェザストリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアの窓枠を構成するドアサッシュ本体と;このドアサッシュ本体の車外側の面に露出する意匠部を有し該ドアサッシュ本体に取り付けられるモールと;からなるドアサッシュモールの取付構造において、
上記ドアサッシュ本体は、該ドアサッシュ本体の長手方向直交断面において、車内側に位置する袋状部と;この袋状部から車外側に延びる外方延長部と;この外方延長部の車外側端部からボディ側に延びるモール取付部と;を有しており、
上記モールは、該モールの長手方向直交断面において、ドアサッシュ本体のモール取付部に沿ってかつ該モール取付部より窓ガラス側に延びる意匠部と;この意匠部の窓ガラス側端部から車内側に曲折形成され、ドアサッシュ本体の上記袋状部との間にガラスラン保持凹部を構成するガラスラン保持縁と;上記意匠部のボディ側端部から車内側に曲折形成され、ドアサッシュ本体の上記モール取付部を跨いで外方延長部のドア開口に沿う面に弾性接触する弾性固定縁部と;ドアサッシュの上記モール取付部の窓ガラス側端部に係合する、上記意匠部裏面に一体に形成した抜止突条と;を有していることを特徴とするドアサッシュモールの取付構造。
【請求項2】
請求項1記載のドアサッシュモールの取付構造において、モールの上記意匠部の裏面には、ドアサッシュ本体のモール取付部に弾接する触れ止め突条が一体に形成されているドアサッシュモールの取付構造。
【請求項3】
請求項1または2記載のドアサッシュモールの取付構造において、ドアサッシュ本体の上記外方延長部の車両ボディ開口側には、モールの上記弾性固定縁部との間にウェザストリップ保持凹部を形成する、ウェザストリップ保持縁が突出形成されているドアサッシュモールの取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate