説明

ドアシールの取付構造

【課題】 ドア取付開口部をできるだけ広く確保でき、かつ荷物の出し入れや清掃作業をが行い易いドアシールの取付構造を提供するものである。
【解決手段】 ドア取付開口部2の周縁に設けた開口フランジ部4を、ドア取付開口部2の外周側に向かって屈曲形成し、この折曲部20と車体1との間に係止部23を形成し、この係止部23にドア取付開口部2の外側で係止すると共にテールゲート3の内面に密接するドアシールSを取り付け、このドアシールSに前記開口フランジ部4と床内装材36との間に挟持される挟持部37を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアシールの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のドア取付開口部にはドアシールが取り付けられている。このドアシールは通常ドア取付開口部の周縁に設けた開口フランジ部に取り付けられドア閉鎖時にドアシールがドアの内面に密接してドアと車体との間のシールを行うものである。
ところで、このようなドアシールにあってはドア取付開口部に取り付けられるものであるため、ドア取付開口部を狭くして荷物の出し入れや乗降性を損なわないような対策が講じられている。例えば、前記開口フランジ部をドア取付開口縁に沿って形成し、ここにドアシールを取り付けたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−144978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、開口フランジ部がドア取付開口部に沿って形成されている分だけドア取付開口部を広くできるが、ドアシールのシール部がドア取付開口部の内側に設けられているため、ドア取付開口部を狭くしてしまう。
また、このようにシール部がドア取付開口部の内側に形成されていると、例えば、車室内を清掃する場合にシール部が邪魔になり車室内のゴミを掃き出し難くなるなどの難点もある。
そこで、この発明はドア取付開口部をできるだけ広く確保でき、かつ荷物の出し入れや清掃作業をが行い易いドアシールの取付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、ドア取付開口部(例えば、実施形態におけるドア取付開口部2)の周縁に設けた開口フランジ部(例えば、実施形態における開口フランジ部4)を、ドア取付開口部の外周側に向かって折り曲げて、この折曲部(例えば、実施形態における折曲部20)と車体(例えば、実施形態における車体1)との間に係止部(例えば、実施形態における係止部23)を形成し、この係止部にドア取付開口部の外側で係止すると共にドア(例えば、実施形態におけるテールゲート3)の内面に密接するドアシール(例えば、実施形態におけるドアシールS)を取り付け、このドアシールに前記開口フランジ部と内装材(例えば、実施形態における床内装材36)との間に挟持される挟持部(例えば、実施形態における挟持部37)を設けたことを特徴とする。
このように構成することで、ドア取付開口部の外側に取り付けられたドアシールはドア取付開口部を狭くすることはなく、かつ開口フランジ部と内装材との間に挟持される挟持部を極力小さくすることが可能となる。
【0005】
請求項2に記載した発明は、前記ドアシールの開口フランジ部の延在方向に、ドア開閉方向の動きを規制するストッパ部(例えば、実施形態におけるストッパ部41)が設けられていることを特徴とする。
このように構成することで、ドア閉鎖時にストッパ部に開口フランジ部の延在方向に荷重が作用するため、ドアシールにストッパとしての機能を併せ持たせることができる。
【0006】
請求項3に記載した発明は、前記ドアシールは、ドア取付開口部の外側に形成される中空リップ部(例えば、実施形態における中空リップ部31)と、この中空リップ部の外側に形成されるリップ部(例えば、実施形態における外側リップ部32)を備えていることを特徴とする。
このように構成することで、中空リップ部とリップ部との2重シール構造が可能となる。
【0007】
請求項4に記載した発明は、前記ドアシールは、ドア閉鎖時に外力を受けると前記係止部に嵌まり込む方向に変位することを特徴とする。
このように構成することで、ドア閉鎖時におけるドアシールの係止部への保持を確実なものとすることができる。
【0008】
請求項5に記載した発明は、前記ストッパ部は、ドア閉鎖時に開口フランジ部の折曲部を押圧することを特徴とする。
このように構成することで、ドア閉鎖時においてストッパ部から折曲部へ力が作用するため、前記係止部へのドアシールの係合状態を更に確実なものとすることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明によれば、ドア取付開口部の外側に取り付けられたドアシールはドア取付開口部を狭くすることはなく、かつ開口フランジ部と内装材との間に挟持される挟持部を極力小さくすることが可能となるため、ドア取付開口部を可及的に大きくすることができる効果がある。また、ドアシールがドア取付開口部からの乗降や荷物の出し入れ、清掃時の掃き出し作業の邪魔にならないため使い勝手が向上する効果がある。
【0010】
請求項2に記載した発明によれば、ドア閉鎖時にストッパ部に開口フランジ部の延在方向に荷重が作用するため、ドアシールにストッパとしての機能を併せ持たせることができるため、別途ストッパを設けた場合に比較して部品点数組み付け工数を減少させることができる効果がある。
【0011】
請求項3に記載した発明によれば、中空リップ部とリップ部との2重シール構造が可能となるため、確実なシール性を確保することができる効果がある。
【0012】
請求項4に記載した発明によれば、ドア閉鎖時におけるドアシールの係止部への保持を確実なものとすることができるため、ドアシールの取付信頼性を高めることができる効果がある。
【0013】
請求項5に記載した発明によれば、ドア閉鎖時においてストッパ部から折曲部へ力が作用するため、前記係止部へのドアシールの係合状態を更に確実なものとすることが可能となり、したがってドアシールの取付信頼性をより一層高めることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、車体1の後部にはドア取付開口部2が形成され、ここにバックドアであるテールゲート3が上下方向に開閉可能に取り付けられている。このテールゲート3はドア取付開口部2の周縁に設けた開口フランジ部4にドアシールSを取り付け、テールゲート3を閉めた状態でこのドアシールSが、テールゲート3の車室内側面に密接して、車室内外をシールするようになっている。
【0015】
図2に示すように、車体後部のドア取付開口部2は強度剛性を確保するために閉断面構造に形成されており、前記ドア取付開口部2の下辺部5ではリヤエンドパネル10とインナーパネル11とにスティフナー12を挟み込んで車幅方向に渡る閉断面構造部13が形成されている。
リヤエンドパネル10の一般面14の上縁には前側の斜め上に向かってやや折れ曲がる傾斜壁15が形成され、この傾斜壁15の上縁には後側の斜め上に向かって延びるフランジ16が形成されている。ここで、この後側の斜め上に向かって延びるフランジ16の形成方向はテールゲート3の閉鎖方向(矢印で示す)に沿う方向となっている。
【0016】
一方、前記インナーパネル11は荷室前側から後側の斜め上に向かって延びる部材であって、前記スティフナー12と共に前記リヤエンドパネル10のフランジ16に接合されるフランジ17を備えている。つまりこのフランジ17はスティフナー12の上縁フランジ18を挟み込み前記リヤエンドパネル10のフランジ16に接合されてフランジ本体19を形成し、更にインナーパネル11のフランジ17にはドア取付開口部2の外周側に向かって折り曲げられた折曲部20が形成されている。このフランジ本体19と折曲部20とで開口フランジ部4を構成している。ここで、この折曲部20はインナーパネル11のフランジ17端から略直角に曲がる基部21とこの基部21から更に少し前側に折れ曲がる先端部22とで構成されている。
【0017】
そして、前記リヤエンドパネル10の傾斜壁15と前記折曲部20の先端部22とで囲まれる部位に前記リヤエンドパネル10のフランジ16を底辺とする断面台形状の係止部23が形成され、この係止部23にドア取付開口部2の外側で係止すると共にテールゲート3の内面に密接するドアシールSが取り付けられている。
【0018】
前記ドアシールSは、前記係止部23に嵌合して底部を両面テープ24により接着されるシール基部25を備え、このシール基部25にシール部26が一体形成されている。シール基部25には空間部27が形成されると共に、前記リヤエンドパネル10の一般面14に密接する内側リップ部28が形成されている。シール基部25に連なるシール部26には2つの空間部29,30を備えた中空リップ部31と外側リップ部32が形成されている。
【0019】
前記中空リップ部31は前記開口フランジ部4の外側で開口フランジ部4よりも外側に膨出して、テールゲート3の内面に密接可能に構成されている。外側リップ部32は中空リップ部31に隣接し中空リップ部31よりも外側でテールゲート3の内面に密接するようになっている。ここで、外側リップ部32は中空リップ部31が外側から押圧されると、これにより内側に変位する中空リップ部31の外壁33により引張されて矢印で示すように先端部34が上側に起立するようになっている。
【0020】
前記シール部26は、前記開口フランジ部4の折曲部20に沿って車室内側に回り込み、前記インナーパネル11のフランジ17に沿ってやや荷室内に延びる延出部35を備えていて、この延出部35の先端部には前記開口フランジ部4と荷室の床内装材36との間に挟持される挟持部37が設けられている。ここで、床内装材36には前記インナーパネル11のフランジ17に当接するボス部38が形成されている。したがって、ドアシールSには前記シール基部25と延出部35との間に前記折曲部20を差し込む溝部39が形成されることとなる。尚、この溝部39の周囲には芯金は埋設されていない。
【0021】
そして、前記延出部35は一般部40では前記床内装材36と面一に形成されて外観をすっきりとさせているが、前記ドア取付開口部2の下辺部5の両側部には前記開口フランジ部4の延在方向であって、前記開口フランジ部4の折曲部20の配置位置にテールゲート3の開閉方向の動きを規制する断面略台形状のストッパ部41が一体形成されている。尚、前記床内装材36の後部端末42は前記ストッパ部41の下部に一部かかるようにして敷設されている。
【0022】
したがって、テールゲート3の閉鎖時にストッパ部41がテールゲート3の内壁に押圧されると、ストッパ部41はテールゲート3と開口フランジ部4の折曲部20との間に挟まれるようにして折曲部20を押圧することになる。
また、このテールゲート3の閉鎖時においては、テールゲート3により押圧されて拘束されたストッパ部41により中空リップ部31はストッパ部41側へは変位できないため、シール基部25側に押圧され、前記係止部23に嵌まり込む方向に変位する。
【0023】
上記実施形態によれば、開口フランジ部4の外側にシール部26が配置されているためドア取付開口部2を広くすることができ、かつ開口フランジ部4と床内装材36との間に挟持される挟持部37を極力小さくすることが可能となるため、ドア取付開口部2を可及的に大きくすることができる。また、開口フランジ部4の外側にシール部26が配置されているためシール部26がドア取付開口部2からの乗降や荷物の出し入れ、清掃時の掃き出し作業の邪魔にならないため使い勝手が向上する。また、シール部26が荷物の出し入れ時に荷物と緩衝しないためシール部26の寿命を延ばすことができる。
【0024】
前記開口フランジ部4の延在方向に、テールゲート3の開閉方向の動きを規制するストッパ部41が設けられていることにより、テールゲート3の閉鎖時にストッパ部41に開口フランジ部4の延在方向に荷重が作用するため、ドアシールSにストッパとしての機能を併せ持たせることができる。よって、別途ストッパを設けた場合に比較して部品点数組み付け工数を減少させることができる。
【0025】
テールゲート3を閉めると、前記シール部26の中空リップ部31が潰れ変形して、テールゲート3の内壁に密接すると共に外側リップ部32も密接し、2重のシールにより確実に車室内外をシールできる。また、中空リップ部31が潰れ変形をする場合には、前述したように外側リップ部32が起立しようとするため外側リップ部32の密接圧力も充分に確保できる。
そして、テールゲート3が閉鎖時にストッパ部41がテールゲート3の内壁に押圧されると、ストッパ部41はテールゲート3と開口フランジ部4の折曲部20との間に挟まれるようにして折曲部20を押圧することになるため、ストッパ部41の支持剛性を高めることができ、テールゲート3の閉鎖時のオーバーストロークを極力少なくできる。
【0026】
また、このテールゲート3の閉鎖時においては、テールゲート3により押圧されて拘束されたストッパ部41により中空リップ部31はストッパ部41側へは変位できないため、シール基部25側に押圧され、前記係止部23に嵌まり込む方向に変位する。そのため、テールゲート3の閉鎖時におけるシール基部25の係止部23への保持を確実なものとすることができるため、ドアシールSの取付信頼性を高めることができる
【0027】
更に、前記開口フランジ部4は折曲部20を有しているためドア取付開口部2の剛性を高めることができる。また、前記ドアシールSには芯金が必要なくなるので、建て付け調整が、組み付け作業が行い易く、コーナー部の追従性が高まり、製造コストを低減でき軽量化が図れる。そして、前記ストッパ部41がドアシールSと一体で形成されているため、テールゲート3を開いた状態での見栄えを向上できる。
【0028】
尚、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、テールゲート3に適用した場合について説明したが、それ以外のサイドドア、スライドドアにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施形態の車両後部を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 車体
2 ドア取付開口部
3 テールゲート(ドア)
4 開口フランジ部
20 折曲部
23 係止部
31 中空リップ部
32 外側リップ部(リップ部)
36 床内装材
37 挟持部
41 ストッパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア取付開口部の周縁に設けた開口フランジ部を、ドア取付開口部の外周側に向かって折り曲げて、この折曲部と車体との間に係止部を形成し、この係止部にドア取付開口部の外側で係止すると共にドアの内面に密接するドアシールを取り付け、このドアシールに前記開口フランジ部と内装材との間に挟持される挟持部を設けたことを特徴とするドアシールの取付構造。
【請求項2】
前記ドアシールの開口フランジ部の延在方向に、ドア開閉方向の動きを規制するストッパ部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のドアシールの取付構造。
【請求項3】
前記ドアシールは、ドア取付開口部の外側に形成される中空リップ部と、この中空リップ部の外側に形成されるリップ部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドアシールの取付構造。
【請求項4】
前記ドアシールは、ドア閉鎖時に外力を受けると前記係止部に嵌まり込む方向に変位することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載のドアシールの取付構造。
【請求項5】
前記ストッパ部は、ドア閉鎖時に開口フランジ部の折曲部を押圧することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載のドアシールの取付構造。

【図1】
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【図2】
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