説明

ドアラッチ装置

【課題】全体の小型化および軽量化を図る。
【解決手段】ストライカに係脱可能に噛合してドアを全閉状態および半閉状態に保持するラッチ機構と、ドアが開放状態から半閉状態になると駆動されるアクチュエータ41と、アクチュエータ41の出力ギア42に噛みあうギア部46と、ギア部46に対して反対側に位置する係合突部47とを有し、アクチュエータ41の駆動により回転されるセクタギア44と、ラッチ機構を介してドアを半閉状態から全閉状態に閉塞するクローズレバー50と、セクタギア44の係合突部47に係合可能な連結位置から係合不可能な非連結位置にかけて移動可能で、セクタギア44の回転によりクローズレバー50を作動可能なリンクピン57と、ドアの開放操作に連動してリンクピン57を連結位置から非連結位置に移動させる切替レバー60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランクドア、ハッチバックドア、スライドドアなど、車両のドアを閉塞状態で係止するドアラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアを車体に対して閉塞状態に保持するドアラッチ装置には、閉塞操作によってストライカを噛合したフォークがハーフラッチ状態になった場合に、クローズ用アクチュエータを駆動してフォークを強制的に回転させ、ストライカに対してフォークをフルラッチ状態に移行させるようにしたものがある。このフルラッチ状態ではフォークにクローが係合し、フォークが解放方向へ移動することを規制することにより、車両本体に対してドアを閉塞状態に保持する。
【0003】
また、ドアラッチ装置では、クローズ用アクチュエータによるフルラッチ作動中にドアのハンドル操作(開放操作)を行うと、クローズ用アクチュエータからフォークヘの動力伝達が遮断され、直ちにフルラッチ作動が解除される。そのため、例えばフルラッチ作動中に車両本体とドアとの間に異物を挟んでしまった場合に、ドアハンドルの操作を行うことにより、異物の噛み込みを無くすことができる。
【0004】
特許文献1のドアラッチ装置は、モータ(アクチュエータ)によって回転するセクタギアと、フォークを作動させるクローズレバーと、セクタギアとクローズレバーの連結状態を切り替えるピン状の断続部材と、ドアハンドルの操作に連動して断続部材を連結位置または非連結位置に移動させるキャンセルレバーとを備えている。そのうち、セクタギアには、クローズレバーの径方向に延びる切替孔にスライド可能に配置された断続部材が連結位置にあるときに係合する係合孔が設けられている。また、断続部材が非連結位置にあるときに、セクタギアとの係合が解除されるように係合孔に連通する長孔が、セクタギアの軸を中心とした円弧状に延びるように設けられている。そして、これら係合孔と長孔により、セクタギアとクローズレバーとの連結状態および非連結状態を切り替えるように構成している。
【0005】
特許文献1のドアラッチ装置では、通常、断続部材はキャンセルレバーによって連結位置に保持され、フォークがハーフラッチ状態となってモータが作動すると、セクタギアが回転する。これにより、断続部材によって連結されたクローズレバーも一緒に回転することにより、フォークがフルラッチ状態へと作動される。一方、モータの作動中にドアハンドルが操作されると、キャンセルレバーが回転して断続部材が非連結位置に移動される。これにより、セクタギアとクローズレバーとの連結が解除され、フォークの強制回転が解除される。
【0006】
しかしながら、特許文献1のドアラッチ装置は、断続部材との係合を解除するための長孔を、セクタギアの回転範囲と対応するように長く設ける必要がある。そのため、セクタギアが大型化してしまい、ドアラッチ装置自体の小型化および軽量化が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−182407
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、全体の小型化および軽量化が可能なドアラッチ装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明のドアラッチ装置は、車両本体およびドアのうち一方に配設され、他方に設けられたストライカに係脱可能に噛合して、前記車両本体に対して前記ドアを正常閉塞位置とした全閉状態および非正常閉塞位置とした半閉状態に保持するラッチ機構と、前記ドアが開放状態から半閉状態になると駆動されるアクチュエータと、前記アクチュエータの出力ギアに噛みあうギア部と、このギア部に対して回転軸を挟んで反対側に位置する係合突部とを有し、前記アクチュエータの駆動により回転されるセクタギアと、前記ラッチ機構を介して前記ドアを半閉状態から全閉状態に閉塞可能な非作動位置から、前記ドアを全閉状態に作動させた作動位置にかけて移動可能なクローズレバーと、前記セクタギアの係合突部に係合可能で前記セクタギアの回転により前記クローズレバーを前記非作動位置から前記作動位置に向けて作動可能な連結位置から、前記セクタギアの係合突部に係合不可能で前記セクタギアが回転しても前記クローズレバーを前記作動位置に向けて作動不可能な非連結位置にかけて移動可能なリンクピンと、前記ドアの開放操作に連動して前記リンクピンを前記連結位置から前記非連結位置に移動させる切替レバーと、を備える構成としている。
ここで、「ドアの開放操作」とは、車外のドアハンドルによる開放操作、および、リモコンや車内のスイッチによる開放操作など、ドアを開放することを目的とした全ての動作を意味する。そして、「開放操作に連動して・・・」とは、前記動作に伴うリンク機構や電動機構の作動に連動することを意味する。
【0010】
このドアラッチ装置は、使用者が開放したドアを閉塞操作して半閉状態になると、アクチュエータが駆動することにより、セクタギアが回転する。そして、その閉作動中に使用者がドアの開放操作を行わない場合には、切替レバーが作動しないため、リンクピンが連結位置に移動している。そのため、セクタギアの回転により係合突部がリンクピンに係合し、クローズレバーを一緒に回転させる。その結果、クローズレバーが非作動位置から作動位置へ移動することにより、ラッチ機構を介して半閉状態のドアが全閉状態になる。
【0011】
一方、閉作動中に使用者がドアの開放操作を行うと、切替レバーが作動することにより、リンクピンが連結位置から非連結位置に移動する。そのため、セクタギアが回転しても、係合突部がリンクピンに係合することができない。その結果、セクタギアの回転にクローズレバーが連動せず、クローズレバーが作動位置へ移動しないため、ラッチ機構を介してドアを全閉状態にすることができない。
【0012】
このように、本発明のドアラッチ装置は、使用者によるドアの閉塞操作によりドアが半閉状態になった場合に、確実に全閉状態とすることができるうえ、その閉作動を希望に応じて解除することができる。そして、セクタギアは、リンクピンとの係合突部を回転軸を挟んでギア部と反対側に設けているため、リンクピンとの係合を解除するための長孔を設ける必要がない。よって、セクタギアの小型化が可能となり、ドアラッチ装置全体の小型化および軽量化が可能となる。
【0013】
本発明のドアラッチ装置は、前記セクタギアと前記クローズレバーとを同一回転軸上に軸支し、前記クローズレバーに、前記回転軸から径方向外向きに延びるように前記リンクピンを移動可能に装着する作動溝を設けるとともに、前記切替レバーに、前記回転軸を中心として円弧状に延びるように前記リンクピンを移動可能に挿通する案内溝を設けることが好ましい。このようにすれば、使用者がドアの開放操作を行わない場合には、切替レバーの案内溝に沿ってリンクピンを移動させて、セクタギアとクローズレバーを一体的に回転させることができる。一方、使用者がドアの開放操作を行った場合には、リンクピンがセクタギアの係合突部の回転軌道の外側に位置するように、切替レバーによってリンクピンをクローズレバーの作動溝に沿って移動させて、確実に閉作動を解除できる。
【0014】
また、前記切替レバーに、前記ドアの開放操作に連動して前記ラッチ機構による前記ドアの保持を解除する開放部を設けることが好ましい。このようにすれば、使用者がドアの開放操作を行うと、アクチュエータによる閉作動を確実に解除したうえで、ドアを開放可能な状態とすることができる。
【0015】
ここで、本発明のセクタギアのように、ギア部と反対側に係合突部を設けた場合、この係合突部の近傍にリンクピンを操作する切替レバーを配置する必要がある。また、この切替レバーはラッチ機構の近くに配設する必要がある。この場合、ラッチ機構を閉作動させるクローズレバーの閉作動部と切替レバーとが干渉する可能性がある。これを回避するためには閉作動部を切替レバーと干渉しない位置に設定する必要があるため、クローズレバーが大型化する可能性がある。
そこで、本発明では、前記クローズレバーに、前記ラッチ機構を閉作動させる閉作動部を前記セクタギアに対して反対側に突設し、前記切替レバーを、前記クローズレバーと前記セクタギアの間に配置している。これにより、切替レバーとクローズレバーの閉作動部との干渉を回避できるため、クローズレバーの小型化を図ることができる。
【0016】
また、本発明のセクタギアのように、ギア部と反対側に係合突部を設けた場合、リンクピンおよび切替レバーを係合突部の側に配設するため、ギア部の側にスペースを確保できる。
そこで、本発明では、前記アクチュエータ、前記セクタギア、前記クローズレバーおよび前記切替レバーを同一面側に配設するベース部材を設け、このベース部材に対して前記アクチュエータを、前記セクタギアの回転軸の軸方向に沿って前記セクタギアのギア部と重なる位置に配設している。これにより、ドアラッチ装置の小型化を図ることができるうえ、ベース部材の同一面側にセクタギアとアクチュエータとを配置するため、ドアラッチ装置の薄型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のドアラッチ装置では、リンクピンと係合するセクタギアの係合突部を回転軸を挟んでギア部と反対側に設けているため、セクタギアにはリンクピンを挿通させる長孔を設ける必要がない。よって、セクタギアの小型化が可能となり、ドアラッチ装置全体の小型化および軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るドアラッチ装置を示す斜視図である。
【図2】ドアラッチ装置の分解斜視図である。
【図3】ドアラッチ装置の正面図である。
【図4】(A),(B)はセクタギア、リンクピンおよび切替レバーの関係を示す斜視図である。
【図5】ドアを開放した状態でのドアラッチ装置の状態を示す正面図である。
【図6】ドアの半閉状態でのドアラッチ装置の状態を示す正面図である。
【図7】ドアの全閉状態でのドアラッチ装置の状態を示す正面図である。
【図8】閉作動したドアラッチ装置の状態を示す正面図である。
【図9】閉作動中にドアハンドルが操作された状態を示す正面図である。
【図10】閉塞状態のドアを開放操作した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0020】
図1および図2は、本発明の実施形態に係るドアラッチ装置10を示す。このドアラッチ装置10は、図示しないスライドドア(以下「ドア」と略する。)および車体のうち一方に装着され、他方に配設された図示しないストライカに噛合することにより、ドアを閉塞状態に保持するものである。
【0021】
このドアラッチ装置10は、大略、ストライカを噛合するラッチ機構と、ドアが開放状態から半閉(以下「半ドア」という。)状態になった場合に作動するクローズ機構と、このクローズ機構による閉作動を解除するとともにラッチ機構を解作動するオープン機構とを備えている。そのうち、ラッチ機構が第1ユニット11に組み付けられ、クローズ機構およびオープン機構が第2ユニット30に組み付けられている。そして、これらユニット11,30を側面視L字形状をなすように組み付けることにより構成されている。
【0022】
第1ユニット11は、ドアの端面に位置するように配設されるベースプレート12と、ベースプレート12の内面側に位置するように配設されるカバープレート13と、これらの間に配設されるフェンスブロック14とを備えている。そのうち、ベースプレート12およびフェンスブロック14には、ベースプレート12の側からカバープレート13の側へ窪むように、ストライカを挿通する挿通溝15が設けられている。また、ベースプレート12には、第2ユニット30のベース部材31に固定するためのブラケット部16が内側に屈曲して設けられている。カバープレート13は、後述するフォーク17の上側に位置する部分において、支持軸19を挿通支持する部分を除いて切り欠いた形状をなす。
【0023】
この第1ユニット11の内部に配設するラッチ機構は、ストライカに噛合するフォーク17と、このフォーク17に係合するクロー21とで構成される。また、本実施形態の第1ユニット11には、フォーク17と一体的に回転する連動レバー25と、フォーク17がフルラッチ位置またはハーフラッチ位置に回転したことを検出する回転スイッチ29とが更に配設されている。
【0024】
フォーク17は、図5に示すように、ストライカを係脱可能に挿通する係合溝18を備えている。このフォーク17には、ベースプレート12とカバープレート13の間に支持される支持軸19が設けられ、挿通溝15の左側に位置するように軸着されている。これによりフォーク17は、フルラッチ位置からハーフラッチ位置を経てオープン位置にかけて回転可能に構成される。なお、フルラッチ位置は、ドアが正常閉塞位置となった全閉状態でストライカが係合溝18に係合した回転位置であり、挿通溝15に対して係合溝18が略直交方向に延びた状態(図7参照)をなす。ハーフラッチ位置は、ドアが非正常閉塞位置となった半ドア状態でストライカが係合溝18に係合した回転位置であり、挿通溝15に対して係合溝18が斜めに交差するように傾斜して延びた状態(図6参照)をなす。オープン位置は、ドアの開放状態でストライカが係合溝18に係脱可能な回転位置であり、係合溝18の先端開口部が挿通溝15に一致するように傾斜して延びた状態(図5参照)をなす。このフォーク17は、図示しない付勢スプリングによって、フルラッチ位置からオープン位置に向けて付勢されている。また、フォーク17には、付勢スプリングによる付勢(回転)方向前側に位置するように、係合段部20A,20Bが設けられている。係合段部20Aは、係合溝18に対して付勢方向後側に位置する部分に設けられ、ハーフラッチ位置に回転した際にクロー21が係合するものである。係合段部20Bは、係合溝18に対して付勢方向前側に位置する部分に設けられ、フルラッチ位置に回転した際にクロー21が係合するものである。
【0025】
クロー21は、フォーク17の係合段部20A,20Bに係合可能な係合部22を備えている。このクロー21には、ベースプレート12とカバープレート13の間に支持される支持軸23が設けられ、挿通溝15の右側に位置するように軸着されている。これによりクロー21は、係合部22がフォーク17に係合可能な係合位置から、係合不可能な非係合位置にかけて回転可能に構成される。そして、このクロー21は、図示しない付勢スプリングによって、非係合位置(図9参照)から係合位置(図6,7参照)に向けて付勢されている。また、クロー21には、係合部22に対して反対側に突出するように解作動受部24が設けられている。
【0026】
連動レバー25は、フォーク17の支持軸19を貫通させる貫通部26と、フォーク17の係合溝18の開口端と反対側に連結する連結部27とを備え、フォーク17と一体的に回転できるように装着されたものである。この連動レバー25には、カバープレート13から外部に突出する閉作動受部28が設けられている。この閉作動受部28は、後述するクローズレバー50の閉作動部55が当接して動力を受けることにより、フォーク17をハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回転させるものである。これにより、ドアを半ドア状態から全閉状態にすることができる。なお、フォーク17がオープン位置に回転している状態では、閉作動受部28はクローズレバー50の閉作動部55に当接しない位置に回転する。また、本実施形態では、フォーク17と閉作動受部28を有する連動レバー25とを別体に設けたが、フォーク17に閉作動受部28を一体的に設けることにより、連動レバー25は設けない構成としてもよい。
【0027】
回転スイッチ29は、連動レバー25の貫通部26から突出したフォーク17の支持軸19に接続され、この支持軸19の回転を検出することにより、フォーク17がフルラッチ位置、ハーフラッチ位置およびオープン位置のいずれの状態にあるかを検出する周知の検出手段である。
【0028】
第2ユニット30は、図1および図2に示すように、ドアの外側パネルと内側パネルの間に配置されるもので、クローズ機構およびオープン機構の各構成部品を装着するためのベース部材31を備えている。このベース部材31には、第1ユニット11を固定するためのブラケット部32が設けられている。また、ベース部材31の中央には軸孔33が設けられ、この軸孔33に、後述するセクタギア44とクローズレバー50を一緒に回転可能に軸支する回転軸34が固定される。軸孔33の上側には、セクタギア44の回転範囲を規制するための規制穴35が軸孔33を中心とした円弧状に設けられている。この規制穴35の更に上側には、後述する出力ギア42を配設するための配設穴36が設けられている。そして、この配設穴36の上側は、後述するアクチュエータ41を固定するためのアクチュエータ固定部37とされている。このアクチュエータ固定部37は、他の部分より第1ユニット11の突出側へ向けて突出され、その境界部分にアクチュエータ41とセクタギア44の干渉を防止するための段部が形成されている。また、ベース部材31には、軸孔33の横に位置するように、後述するオープンレバー60を回転可能に組み付けるための軸穴部38が筒状をなすように設けられている。さらに、この軸穴部38の更に横に位置するように、図示しないドアハンドルに接続したインナーケーブル(リンク機構)を固定するためのケーブル固定部39が設けられている。そして、軸穴部38の下部のブラケット部32には、後述する開放レバー66を回転可能に組み付けるための軸穴部40が設けられている。
【0029】
この第2ユニット30のベース部材31に組み付けるクローズ機構は、アクチュエータ41と、セクタギア44と、クローズレバー50と、リンクピン57とを備えている。また、ベース部材31に組み付けるオープン機構は、オープンレバー60と、開放レバー66とを備えている。
【0030】
アクチュエータ41は、正転および逆転が可能なモータと減速ギアを備え、その出力軸に出力ギア42が取り付けられている。この出力ギア42は、図3に示すように、ベース部材31を臨む背面側に位置し、配設穴36内に配置される。なお、このアクチュエータ41は、ベース部材31に対してセクタギア44を配置した後、このセクタギア44の回転軸34の軸方向に沿ってギア部46と重なるように正面側に配設される。また、アクチュエータ41には、駆動電力の供給と信号の入出力を行うためのコネクタ部43が設けられている。
【0031】
セクタギア44は、回転軸34が貫通される挿通孔45を備え、この回転軸34によってベース部材31に回転可能に軸着されるものである。このセクタギア44は、挿通孔45を中心として広がる扇形形状をなし、その外周部に出力ギア42に噛み合うギア部46が設けられている。また、セクタギア44には、ギア部46に対して回転軸34を挟んで反対側に突出するように係合突部47が設けられている。さらに、挿通孔45とギア部46との間には、切り起こしによりベース部材31の側へ向けて突出し、規制穴35内に挿通される規制片48が設けられている。このセクタギア44は、アクチュエータ41の駆動により回転軸34を中心として、図5に示す非駆動位置から、図8に示す駆動位置にかけて回転される。なお、図8に示す駆動位置は、フォーク17上に配設した回転スイッチ29により検出される。また、図5に示す非駆動位置は、ベース部材31に配設した検出スイッチ49により検出される。
【0032】
クローズレバー50は、セクタギア44と同一の回転軸34が貫通される挿通孔51を備え、この回転軸34によってセクタギア44の正面側に位置するように、ベース部材31に回転可能に軸着されるものである。セクタギア44とクローズレバー50の挿通孔45,51の間には、オープンレバー60を配設するための隙間を確保するためにスペーサ52が配設される。図3に示すように、クローズレバー50には、回転軸34から径方向外向きに延びる作動溝53が設けられている。この作動溝53は、非駆動位置のセクタギア44の係合突部47に対して、駆動位置に向けた回転方向前側に位置し、係合突部47の回転軌道の外側まで延びるように設けた長円形状のものである。即ち、作動溝53の上端は、係合突部47の回転軌道上に位置し、リンクピン57の連結位置を構成する。また、作動溝53の下端は、係合突部47の回転軌道の径方向外側に位置し、リンクピン57の非連結位置を構成する。また、クローズレバー50には、ベース部材31への組付状態でアクチュエータ41の下部に位置するようにアーム部54が延設され、その先端に閉作動部55が設けられている。この閉作動部55は、連動レバー25の閉作動受部28に当接するように、セクタギア44に対して反対側に突出するように屈曲して設けられている。このクローズレバー50は、回転軸34を中心として回転することにより、連動レバー25を介してフォーク17をハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ閉作動させる。即ち、ドアを半ドア状態から全閉状態に閉塞可能な非作動位置から、ドアを全閉状態に作動させた作動位置にかけて移動する。なお、このクローズレバー50は、スプリング56によって作動位置から非作動位置に向けて付勢されている。
【0033】
リンクピン57は、クローズレバー50の作動溝53に移動可能に装着されるものである。具体的には、リンクピン57は、作動溝53に挿通可能な軸部材からなり、その中間位置には作動溝53の幅より大径のフランジ部58を備えている。そして、作動溝53を貫通させた端部にリング部材59を配設することにより、脱落不可能に装着している。また、リンクピン57は、リング部材59と逆側の端部が、組付状態でセクタギア44の係合突部47の回転軌道上に位置する全長で設けられている。これにより、リンクピン57は、セクタギア44の係合突部47に係合可能な連結位置で、セクタギア44が回転することによりクローズレバー50を非作動位置から作動位置に向けて作動することができる。また、セクタギア44の係合突部47に係合不可能な非連結位置では、セクタギア44が回転してもクローズレバー50を作動位置に向けて作動できない構成である。
【0034】
オープンレバー60は、ドアハンドルによるドアの開放操作に連動して、リンクピン57を連結位置から非連結位置に移動させる切替レバーである。図4(A),(B)に示すように、オープンレバー60は長板状をなし、その中央部にベース部材31の軸穴部38に回転可能に取り付けられる軸着部61を備えている。軸着部61からセクタギア44およびクローズレバー50と反対側に延びる部分は、ドアハンドルに接続したインナーケーブルとの接続部62を構成するもので、ケーブル固定部39まで延びるように設けられている。また、軸着部61からセクタギア44およびクローズレバー50の側に延びる部分は、アクチュエータ41による閉作動を解除するための閉作動解除部63を構成するもので、スペーサ52によって形成された隙間、即ち、セクタギア44とクローズレバー50との間に位置するように配設される。この閉作動解除部63には、セクタギア44の係合突部47の回転軌道に沿って、回転軸34を中心として円弧状に延びるように、リンクピン57を移動可能に挿通する案内溝64が設けられている。また、オープンレバー60には、開放レバー66を介してクロー21によるフォーク17の係合を解除、即ち、ラッチ機構によるドアの保持を解除するための開放部65が下向きに突設されている。このオープンレバー60は、ドアハンドルによってドアの開放操作が行われると、リンクピン57を連結位置とした非操作状態(図7参照)から、リンクピン57を非連結位置とした操作状態(図9参照)にかけて移動する。
【0035】
開放レバー66は、取付軸67が貫通される取付孔68を備え、取付軸67によってベース部材31の軸穴部40に回転可能に軸着されるものである。この開放レバー66は、オープンレバー60の開放部65に当接する受動部69が設けられている。そして、この受動部69に対して取付孔68の反対側に位置するように、クロー21の解作動受部24に当接してクロー21を非係合位置へ回転させる解作動部70が設けられている。即ち、この開放レバー66は、オープンレバー60の回転によりクロー21を非係合位置に保持した保持位置(図9参照)から、クロー21の保持を解除した非保持位置(図7参照)にかけて回転する。そして、本実施形態の開放レバー66は、スプリング71によって保持位置から非保持位置に向けて付勢されている。また、このスプリング71によってオープンレバー60も非操作位置に付勢される。
【0036】
次に、本発明のドアラッチ装置10の動作について説明する。
【0037】
(ドア開放状態)
図5に示すように、ドアを完全に開放した状態では、フォーク17がオープン位置に付勢されて回転し、ストライカが挿通溝15に進入することにより、係合溝18内に進入して噛合可能な状態になっている。この状態では、クロー21が係合位置へ付勢されることにより、係合部22がクロー21の外周部に圧接した状態をなす。また、セクタギア44は、アクチュエータ41により非駆動位置に回転させた状態で停止している。これにより、クローズレバー50は、スプリング56の付勢力で非作動位置に回転した状態をなす。さらに、ドアハンドルが開放操作されていないため、スプリング71の付勢力によって、オープンレバー60が非操作位置に回転し、開放レバー66が非保持位置に回転した状態をなす。その結果、リンクピン57は連結位置に移動した状態をなす。
【0038】
(ドアの閉塞操作)
このドア開放状態で使用者がドアを閉塞操作すると、図5に示す状態から図6に示す状態を経て図7に示すドア閉塞状態となる。この際には、クローズ機構を構成するセクタギア44およびクローズレバー50、オープン機構を構成するオープンレバー60および開放レバー66は、それぞれの状態を維持する。その結果、クローズ機構のセクタギア44とクローズレバー50の連結状態を切り替えるリンクピン57も連結状態を維持し、ラッチ機構だけが変移する。具体的には、ドアの閉塞によりフォーク17の係合溝18内にストライカが進入し、ストライカに押圧されることによりフォーク17が回転する。そして、図6に示すように、フォーク17がハーフラッチ位置まで回転すると、クロー21が係合段部20Aに係合した後、図7に示すように、更にフォーク17がフルラッチ位置まで回転すると、クロー21が係合段部20Bに係合する。これにより、ドアを完全に閉塞した状態に保持できる。
【0039】
(ドア閉作動)
なお、ドアを閉塞する際に使用者によるドアの閉塞力が弱い場合には、図6に示す半ドア状態となる場合がある。このドア開放状態から半ドア状態で停止したことを回転スイッチ29を介して図示しないドアロックコントローラが検出すると、このコントローラの指示によりアクチュエータ41が駆動されて閉作動が実行される。
【0040】
具体的には、半ドア状態で使用者がドアハンドルによってドアの開放操作を行っていない場合には、図示のようにオープンレバー60および開放レバー66は、非操作位置および非保持位置に回転した状態を維持するため、リンクピン57が連結位置に移動した状態を維持している。この状態で、図8に示すように、アクチュエータ41の駆動により出力ギア42が図中時計回りに回転され、セクタギア44が非駆動位置から駆動位置へ回転される。そうすると、セクタギア44の係合突部47が連結位置にあるリンクピン57に係合し、リンクピン57がオープンレバー60の案内溝64に沿って、回転軸34を中心として周方向に移動される。クローズレバー50は、回転軸34を中心として径方向に延びる作動溝53にリンクピン57が取り付けられているため、リンクピン57の周方向の移動によって回転軸34を中心として回転し、非作動位置から作動位置へ移動する。これにより、クローズレバー50の閉作動部55が連動レバー25の閉作動受部28に当接し、この連動レバー25を介してフォーク17をハーフラッチ位置からフルラッチ位置へ回転させる。その結果、半ドア状態のドアが全閉状態になる。
【0041】
なお、コントローラは、フォーク17がフルラッチ位置に回転したことを回転スイッチ29により検出すると、アクチュエータ41を逆転させて、セクタギア44を駆動位置から非駆動位置へ回転させる。そうすると、リンクピン57を連動させながら、クローズレバー50がスプリング56の付勢力によって作動位置から非作動位置へ回転する。これにより、図7に示すドア閉塞状態となる。なお、アクチュエータ41は、検出スイッチ49によりセクタギア44の非駆動位置への回転を検出すると停止される。
【0042】
(ドア閉作動解除)
一方、アクチュエータ41による閉作動中に使用者がドアの開放操作を行うと、クローズレバー50の連動が解除され、フォーク17がオープン位置に回動可能になることによりストライカが解放可能になる。具体的には、図9に示すように、アクチュエータ41によってセクタギア44を非駆動位置から駆動位置へ回転させ、連動してクローズレバー50を非作動位置から作動位置へ回転している最中に、ドアの開放操作によってオープンレバー60が非操作位置から操作位置へ回転される。そうすると、オープンレバー60の回転によりリンクピン57は、回転軸34に対して径方向外向きに移動され、連結位置から非連結位置に移動される。その結果、リンクピン57とセクタギア44の係合突部47との係合が解除されるため、セクタギア44が回転してもクローズレバー50に回転力を伝達することができない。よって、ラッチ機構を介してドアを全閉状態にすることができない。逆に、オープンレバー60が操作位置に回転されることにより、開放レバー66が非保持位置から保持位置に回転される。その結果、開放レバー66の解作動部70でクロー21の解作動受部24が押圧されることにより、クロー21が係合位置から非係合位置に回転される。その結果、フォーク17がオープン位置に回動可能となり、ドアが開放可能な状態となる。
【0043】
なお、連動が解除されたクローズレバー50は、スプリング56の付勢力によって作動位置から非作動位置へ回転する。また、セクタギア44は、規制片48が規制穴35の端部に当接することにより、回転が停止する。また、アクチュエータ41は、閉作動時間が予め設定した制限時間となることにより、コントローラによって逆転され、検出スイッチ49によりセクタギア44の非駆動位置への回転を検出すると停止される。
【0044】
(通常ドア開放操作)
図7に示すドアの閉塞状態で、使用者がドアハンドルを操作してドアを開放操作すると、クローズ機構を構成するセクタギア44およびクローズレバー50は、非駆動状態および非作動状態を維持する。そして、オープンレバー60が非操作位置から操作位置に回転することにより、リンクピン57が連結位置から非連結位置に移動する。また、開放レバー66が非保持位置から保持位置に回転することにより、クロー21が係合位置から非係合位置に回転する。その結果、フォーク17がオープン位置に回動可能となり、ドアが開放可能な状態となる。
【0045】
このように、本発明のドアラッチ装置10は、使用者によるドアの閉塞操作によりドアが半閉状態になった場合に、確実に全閉状態とすることができるうえ、その閉作動を希望に応じて解除することができる。そして、セクタギア44は、リンクピン57との係合突部47を回転軸34を挟んでギア部46と反対側に設けているため、リンクピン57との係合を解除するための長孔を設ける必要がない。よって、セクタギア44を小型化することができ、ドアラッチ装置全体の小型化および軽量化を実現できる。
【0046】
なお、本発明のセクタギア44のように、ギア部46と反対側に係合突部47を設けた場合、この係合突部47の近傍にリンクピン57を操作するオープンレバー60を配置する必要がある。また、このオープンレバー60はラッチ機構の近くに配設する必要がある。そのため、ラッチ機構を閉作動させるクローズレバー50の閉作動部55とオープンレバー60とが干渉する可能性がある。しかし、本実施形態では、オープンレバー60をクローズレバー50とセクタギア44の間に配置しているため、オープンレバー60とクローズレバー50の閉作動部55との干渉を回避できる。よって、クローズレバー50の小型化を図ることができる。
【0047】
また、本発明のセクタギア44のように、ギア部46と反対側に係合突部47を設けた場合、リンクピン57およびオープンレバー60を係合突部47の側に配設するため、ギア部46の側にスペースを確保できる。よって、そのスペースにアクチュエータ41を配設することにより、ドアラッチ装置10の小型化を図ることができるうえ、ドアラッチ装置10の薄型化を図ることができる。
【0048】
なお、本発明のドアラッチ装置10は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、前記実施形態では、ドアの開放操作をドアハンドルによるものとしたが、リモコンや車内のスイッチによる電動式開閉扉の場合、オープンレバー60を電動機構により作動させる構成とすることにより、同様に適用可能である。また、ドアラッチ装置10は車両のスライドドアに限られず、トランクドアやハッチバックドアなど、全てのドアに適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10…ドアラッチ装置
17…フォーク(ラッチ機構)
21…クロー(ラッチ機構)
31…ベース部材
34…回転軸
41…アクチュエータ
42…出力ギア
44…セクタギア
46…ギア部
47…係合突部
50…クローズレバー
53…作動溝
55…閉作動部
57…リンクピン
60…オープンレバー(切替レバー)
63…閉作動解除部
64…案内溝
65…開放部
66…開放レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体およびドアのうち一方に配設され、他方に設けられたストライカに係脱可能に噛合して、前記車両本体に対して前記ドアを正常閉塞位置とした全閉状態および非正常閉塞位置とした半閉状態に保持するラッチ機構と、
前記ドアが開放状態から半閉状態になると駆動されるアクチュエータと、
前記アクチュエータの出力ギアに噛みあうギア部と、このギア部に対して回転軸を挟んで反対側に位置する係合突部とを有し、前記アクチュエータの駆動により回転されるセクタギアと、
前記ラッチ機構を介して前記ドアを半閉状態から全閉状態に閉塞可能な非作動位置から、前記ドアを全閉状態に作動させた作動位置にかけて移動可能なクローズレバーと、
前記セクタギアの係合突部に係合可能で前記セクタギアの回転により前記クローズレバーを前記非作動位置から前記作動位置に向けて作動可能な連結位置から、前記セクタギアの係合突部に係合不可能で前記セクタギアが回転しても前記クローズレバーを前記作動位置に向けて作動不可能な非連結位置にかけて移動可能なリンクピンと、
前記ドアの開放操作に連動して前記リンクピンを前記連結位置から前記非連結位置に移動させる切替レバーと、
を備えることを特徴とするドアラッチ装置。
【請求項2】
前記セクタギアと前記クローズレバーとを同一回転軸上に軸支し、
前記クローズレバーに、前記回転軸から径方向外向きに延びるように前記リンクピンを移動可能に装着する作動溝を設けるとともに、
前記切替レバーに、前記回転軸を中心として円弧状に延びるように前記リンクピンを移動可能に挿通する案内溝を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載のドアラッチ装置。
【請求項3】
前記切替レバーに、前記ドアの開放操作に連動して前記ラッチ機構による前記ドアの保持を解除する開放部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドアラッチ装置。
【請求項4】
前記クローズレバーに、前記ラッチ機構を閉作動させる閉作動部を前記セクタギアに対して反対側に突設し、前記切替レバーを、前記クローズレバーと前記セクタギアの間に配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のドアラッチ装置。
【請求項5】
前記アクチュエータ、前記セクタギア、前記クローズレバーおよび前記切替レバーを同一面側に配設するベース部材を設け、このベース部材に対して前記アクチュエータを、前記セクタギアの回転軸の軸方向に沿って前記セクタギアのギア部と重なる位置に配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のドアラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−108308(P2013−108308A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255271(P2011−255271)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】