説明

ドアロックアクチュエータ

【課題】機械的に動作が規制された状態でモータに通電しないドアロックアクチュエータを提供する。
【解決手段】カム部材4に、ロック完了角度よりさらに回動することによってスイッチ部材7を、可動接点20が第1固定接点27および第2固定接点28に接触し、第3固定接点29に接触しないアンロック駆動領域に揺動させる第1操作部13と、アンロック完了角度よりさらにアンロック方向に回動することによってスイッチ部材7を、可動接点20が第1固定接点27および第3固定接点29に当接し、第2固定接点28当接しないロック駆動領域に揺動させる第2操作部14とを設け、ロック部材6をロック位置まで揺動することおよびアンロック位置まで揺動することによって、スイッチ部材7を、可動接点20が全ての固定接点27,28,29に接触する遷移領域まで揺動させることができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアロックアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロックアクチュエータは、モータを駆動することにより、車両のドアに配設したドアロック装置のロックレバーを、ロック位置、および、アンロック位置に回動させるものである。
【0003】
特許文献1および2に記載されているような従来のドアロックアクチュエータでは、ロックレバーを駆動する際、モータに通電してから所定時間が経過すると、タイマによってモータへの通電が停止される。モータへの通電時間は、ロックレバーを確実にロック位置またはアンロック位置に移動させるために、ある程度余裕を持って長めに設定する必要がある。
【0004】
しかしながら、ロックレバーがロック位置またはアンロック位置に到達すると、ロックレバーの揺動が機械的に規制されるため、通電状態であるにもかかわらずモータを回転させることができず、モータがうなり音を発生する。また、ロック位置またはアンロック位置においてモータに通電していると、最悪の場合にはモータが焼損してしまうこともある。
【0005】
このため、従来のドアロックアクチュエータでは、PTCサーミスタ等の保護素子または保護回路を設けて、モータの焼損を防止する必要があるため、コストの上昇を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−74242号公報
【特許文献2】特開2010−281076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記問題点に鑑みて、機械的に動作が規制された状態でモータに通電しないドアロックアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明によるドアロックアクチュエータは、印加された電圧の極性に応じた方向に回転するモータと、前記モータの駆動によりロック方向またはアンロック方向に回動され、前記モータの駆動力がなくなると中立位置に復帰するように付勢されたカム部材と、ドアロック装置のロックレバーに連結されるアーム部を備え、ロック位置からアンロック位置まで揺動可能に設けられたロック部材と、揺動可能に配設され、可動接点を保持するスイッチ部材と、前記モータに電気的に接続された第1固定接点、並びに、電源に接続され得、且つ、前記可動接点を介して前記第1固定接点と電気的に接続され得る第2固定接点および第3固定接点とを有し、前記第1固定接点、前記第2固定接点および前記第3固定接点は、前記可動接点が前記第1固定接点および前記第2固定接点に接触し、且つ、前記第3固定接点に接触しないアンロック駆動領域、前記可動接点が前記第1固定接点および前記第3固定接点に当接し、且つ、前記第2固定接点に当接しないロック駆動領域、および、前記アンロック駆動領域と前記ロック駆動領域との間にあって、前記可動接点が前記第1固定接点、前記第2固定接点および前記第3固定接点に接触する遷移領域とを形成し、前記カム部材は、前記中立位置において、前記ロック部材を前記ロック位置から前記アンロック位置まで揺動可能とし、前記中立位置から前記ロック方向に所定角度のロック完了角度まで回転する間に前記ロック部材の前記アンロック方向の揺動可能範囲を次第に狭め、前記中立位置から前記アンロック方向に所定角度のアンロック完了角度まで回転する間に前記ロック部材の前記ロック方向の揺動可能範囲を次第に狭める揺動案内部と、前記ロック完了角度よりさらに前記ロック方向に回動することによって前記スイッチ部材を前記アンロック駆動領域に揺動させる第1操作部と、前記アンロック完了角度よりさらに前記アンロック方向に回動することによって前記スイッチ部材を前記ロック駆動領域に揺動させる第2操作部とを備え、前記ロック部材は、前記スイッチ部材に当接可能であり、前記ロック位置まで揺動することによって、前記ロック駆動領域にある前記スイッチ部材を前記遷移領域まで揺動させるとともに、前記アンロック位置まで揺動することによって、前記アンロック駆動領域にある前記スイッチ部材を前記遷移領域まで揺動させる規制部を備えたものとする。
【0009】
この構成によれば、モータによってロック部材を駆動する場合、カム部材は、ロック部材を完全にロック位置またはアンロック位置に移動させた後に、スイッチ部材を揺動させてモータへの通電を停止する。これにより、モータに通電しながら機械的にモータの回転を静止することを回避して、うなり音の発生やモータの焼損を防止できる。このため、モータの保護回路が不要であり、低コスト化が可能である。また、手動操作によりロック部材がロック位置またはアンロック位置に揺動させられた場合には、ロック部材がスイッチ部材を揺動させることによって、電路を閉じてモータに通電することを可能にするため、次の給電時の適切な動作が担保される。
【0010】
また、本発明のドアロックアクチュエータにおいて、前記第1操作部と前記第2操作部とは、前記ロック部材の揺動の軸方向にずらして設けられ、前記スイッチ部材は、前記第1操作部には当接し得るが前記第2操作部には当接し得ない第1被操作部と、前記第1操作部には当接し得ないが前記第2操作部には当接し得る第2被操作部とを備えてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1操作部と第2操作部とを独立して設計できるので、スイッチ部材の揺動のタイミングを自在に設定できる。
【0012】
また、本発明のドアロックアクチュエータにおいて、前記カム部材は、前記モータの駆動力がなくなった直後は、慣性力によって回転を維持してもよい。
【0013】
この構成によれば、モータの通電が遮断された後にも、スイッチ部材をさらに揺動することができるので、電路を完全に遮断することができ、チャタリングが発生しない。
【0014】
また、本発明のドアロックアクチュエータにおいて、前記スイッチ部材は、前記ロック部材と同軸に揺動可能であり、前記ロック部材と前記スイッチ部材とは、互いの相対的な揺動角度を規制し合ってもよい。
【0015】
この構成によれば、ロック部材の揺動によってスイッチ部材を遷移領域に移動させることが容易である。
【0016】
また、本発明のドアロックアクチュエータにおいて、前記揺動案内部は、前記ロック部材に設けたカムフォロワを挟み込むようにして形成され、前記カムフォロワの揺動範囲の両端を規制する第1カム面および第2カム面を備えてもよい。
【0017】
この構成によれば、第1カム面と第2カム面とが干渉しないので、ロック部材のロック方向の揺動のプロファイルと、アンロック方向の揺動のプロファイルとを自在に設定できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、モータの回転によりロック部材をロック位置またはアンロック位置まで揺動させた後、スイッチ部材を揺動させてモータに給電する電路を開放するので、ロック部材の揺動を機械的に規制しながらモータに通電することがない。これにより、モータの焼損を防止できるため、保護回路が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の1つの実施形態のドアロックアクチュエータの平面図である。
【図2】図1のドアロックアクチュエータの断面図である。
【図3】図1のドアロックアクチュエータのカム部材を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図4】図1のドアロックアクチュエータのロック部材を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図5】図1のドアロックアクチュエータのスイッチ部材を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図6】図1のドアロックアクチュエータの可動接点の平面図である。
【図7】図1のドアロックアクチュエータのケーシングの平面図である。
【図8】図1のドアロックアクチュエータの回路図である。
【図9】図1のドアロックアクチュエータのアンロック状態の構成要素の関係を示す平面図である。
【図10】図9の状態からのロック操作の途中のドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【図11】図9の状態からのロック完了時のドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【図12】図11の状態からさらにカム部材を回動したドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【図13】図12の状態からスイッチ部材がアンロック駆動領域まで揺動したドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【図14】図13の状態からさらにカム部材が回動したドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【図15】図14の状態からカム部材が中立位置に復帰したドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【図16】図15の状態からのアンロック操作の途中のドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【図17】図15の状態からのアンロック操作完了時のドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【図18】図17の状態からさらにカム部材が回動したドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【図19】図18の状態からさらにカム部材が回動したドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【図20】図19の状態からさらにカム部材が回動したドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【図21】図9の状態から手動でロック状態にしたドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【図22】図15の状態から手動でアンロック状態にしたドアロックアクチュエータの構成要素の関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1および図2は、本発明の1つの実施形態であるドアロックアクチュエータを示す。このドアロックアクチュエータは、車輌のドアに搭載したドアロック装置を駆動して施錠または解錠する装置である。
【0021】
本実施形態のドアロック装置は、ケーシング1に、モータ2と、モータ2によって回転するウォームギア3と、ウォームギア3によって軸4aを中心に回転駆動されるウォームホイールであるカム部材4と、ドアロック装置のロック、アンロック状態を切り換えるロックレバー(不図示)に連結されるアーム部5を有し、カム部材4の上で揺動可能なように軸6aで枢支されたロック部材6と、ロック部材6と同軸に揺動可能に枢支されたスイッチ部材7とを収容してなる。
【0022】
ロック部材6は、ドアロック装置を施錠するロック位置とドアロック装置を解錠するアンロック位置との間で揺動可能であるが、図1に実線で図示する揺動位置がアンロック位置であり、二点鎖線で図示する揺動位置がロック位置である。また、ロック部材6は、車輌のドアに設けられたロックノブ(不図示)とケーブル等を介して連結され、ノックノブの操作に応じて、ロック位置とアンロック位置との間を手動で移動可能である。
【0023】
カム部材4は、図2に示すように、リターンスプリング8によって、図1に示す中立位置に復帰するように回転付勢されている。また、カム部材4は、モータ4によって駆動されて回転していた場合、モータ4の駆動力がなくなった直後は、自身の慣性力によってリターンスプリング8の付勢力に抗して、僅かながら同じ方向に回転を維持できるようになっている。
【0024】
さらに、カム部材4は、図3に詳しく示すように、その上面に、ロック部材6に突設したカムフォアロワ9を受け入れて案内する面カムを構成する揺動案内部10が設けられている。揺動案内部10は、カムフォロワ9を挟み込む第1カム面11と第2カム面12とを有する。
【0025】
第1カム面11は、ロック部材6の揺動可能範囲のアンロック位置側の限界位置を定め、第2カム面12は、ロック部材6の揺動可能範囲のロック位置側の限界位置を定める。図3には、リターンスプリング8によって定められるカム部材4の中立位置において、カムフォロワ9が位置する角度位置(原点)を中立角度NPとして示す。揺動案内部10は、この中立角度NPにおいては、ロック部材6を、ロック位置からアンロック位置までの全範囲で揺動可能にする。
【0026】
揺動案内部10は、中立角度NPから図示した所定のロック完了角度LKにかけて、第1カム面11の位置が径方向内側に遷移し、中立角度NPから図示した所定のアンロック完了角度ULにかけて、第2カム面12の位置が径方向外側に遷移する。
【0027】
カムフォロワ9の位置が中立角度NPからロック完了角度LKに向かって移動、つまり、カム部材4が時計回り(ロック方向)に回動すると、第1カム面11がカム部材4の径方向内側に移動するので、ロック部材6のアンロック位置側の揺動可能範囲が次第に狭くなり、ロック部材6がロック位置に向かって揺動する。第1カム面11は、カム部材4がロック完了角度LKまで回動したとき、ロック部材6がロック位置に到達するように形成されている。
【0028】
また、カムフォロワ9の位置が中立角度NPからアンロック完了角度ULに向かって移動、つまり、カム部材4が反時計回り(アンロック方向)に回動すると、第2カム面12がアンロック方向に移動するので、ロック部材6のロック方向の揺動可能範囲が次第に狭くなり、ロック部材6がアンロック位置に向かって揺動する。第2カム面12は、カム部材4がアンロック完了角度ULまで回動したとき、ロック部材6がアンロック位置に到達するように形成されている。
【0029】
揺動案内部10は、ロック完了角度LKからさらに所定のオーバーロック角度OLまで、および、アンロック完了角度ULからさらに所定のオーバーアンロック角度OUまで、それぞれ、第1カム面11および第2カム面12の径方向の位置が変化しないように延伸している。
【0030】
したがって、カム部材4は、ロック完了角度LKからオーバーロック角度OLまで、ロック部材6を揺動させることなく、さらにロック方向に回動でき、また、アンロック完了角度ULからオーバーアンロック角度OUまで、ロック部材6を揺動させることなく、さらにアンロック方向に回動できる。
【0031】
また、カム部材4は、さらに、下方に円筒形に突出した部分の外周に、第1操作部13および第2操作部14が、軸4aの軸方向にずらして、異なる角度位置に突設されている。
【0032】
図4に示すように、ロック部材6は、スイッチ部材7の両側上方において径方向に突出するように形成された第1規制部15および第2規制部16を有する。
【0033】
図5に示すように、スイッチ部材7は、異なる角度位置において軸6aの軸方向にずらして、カム部材4側に突出するように形成された第1被操作部17および第2被操作部18を有する。第1被操作部17は、カム部材4の第1操作部13には当接し得るが、第2操作部14には当接し得ない。また、第2被操作部18は、カム部材4の第1操作部13には当接し得ないが、第2操作部14には当接し得る。
【0034】
また、スイッチ部材7は、ロック部材6の第1規制部15と第2規制部16との間に位置するように突出して形成された被規制部19を有する。これにより、ロック部材6とスイッチ部材7とは、互いの相対的な揺動角度を相互に規制し合う。
【0035】
さらに、スイッチ部材7は、カム部材4と反対側に延伸する部分の下面に図6に示した3つの接点部20a,20b,20cを有する可動接点20を保持するようになっている。
【0036】
図7に、ケーシング1の内面を示す。ケーシング1は、樹脂をモールド成型してなり、モータ2の入力端子に接続される一対のモータ端子21,22と、外部の回路に接続される3つの入力端子23,24,25と、それぞれ金属板からなり、モータ端子21と入力端子23とを接続する電路26、モータ端子22に接続され、スイッチ部材7に保持された可動接点20の接点部20aに接触する第1固定接点27、入力端子24に接続され、可動接点20の接点部20bに接触する第2固定接点28、および、入力端子25に接続され、可動接点20の接点部20cに接触する第3固定接点29とが、成型時にインサートして設けられている。
【0037】
第1固定接点27は、スイッチ部材7が揺動しても、常に、可動接点20の接点部20aに接触するように、接点部20aの揺動範囲全体にわたって円弧状に延伸している。第2固定接点28は、接点部20bの揺動範囲の図において上側部分のみに円弧状に延伸している。また、第3固定接点29は、接点部20cの揺動範囲の図において下側部分のみに円弧状に延伸している。これにより、可動接点20が第1固定接点27および第2固定接点28には接触するが、第3固定接点29には接触しないアンロック駆動領域AUと、可動接点20が第1固定接点27および第3固定接点29には接触するが、第2固定接点28には接触しないロック駆動領域ALと、アンロック駆動領域AUとロック駆動領域ALとの間に位置し、可動接点20が第1固定接点27、第2固定接点28および第3固定接点29の全てに接触する遷移領域ANとが形成されている。
【0038】
以上の構成からなる本実施形態のドアロックアクチュエータは、電気的には、図8に示す回路構成となる。また、入力端子23,24,25には、ドアロック装置を施錠(アンロック→ロック)する際、および、ドアロック装置を解錠(ロック→アンロック)する際に、図示するような組み合わせで、正の電圧、負の電圧、および、無電圧が入力される。
【0039】
図9乃至図22に、本実施形態のドアロックアクチュエータにおける、ドアロック装置の施錠および解錠の仕組みを、順を追って詳細に説明する。
【0040】
図9は、図1と同じ、通常のアンロック状態である。通常のアンロック状態では、可動接点20が、後述するアンロック操作の結果として、図示するように、ロック駆動領域ALに位置している。このドアロックアクチュエータによって施錠する場合、図8に示したように、入力端子23に負の電圧、入力端子24に無電圧、入力端子25に正の電圧が、以下に説明する施錠動作に必要と考えられる時間に十分な余裕時間を加えた所定時間だけ印加される。モータ2は、このような組み合わせの電圧が印加されたとき、ウォームギア3を正回転して、カム部材4を時計回り(ロック方向)に回動させるように構成されている。
【0041】
カム部材4がロック方向に回動すると、第1カム面11がカムフォロワ9をカム部材4の径方向内側に移動させるため、ロック部材6がロック位置に向かって揺動する。ある程度ロック部材6が揺動すると、図10に示すように、ロック部材6の第1規制部15が、スイッチ部材7の被規制部19に当接する。すると、ロック部材6のさらなる揺動は、第1規制部15によって被規制部19を押圧することにより、スイッチ部材7を一体に揺動させる結果を生じる。
【0042】
図11に示すように、カム部材4がロック完了角度LKまで回動すると、ロック部材6は、ロック位置まで揺動させられるが、このロック部材6の回動によって、スイッチ部材7は、可動接点20が第1固定接点27、第2固定接点28および第3固定接点29に接触する遷移領域まで揺動させられる。
【0043】
図12に示すように、カム部材4がロック完了角度LKからオーバーロック角度OLに向かってさらに回動すると、ロック部材6はそれ以上揺動しないが、カム部材4の第1操作部13が、スイッチ部材7の第1被操作部17に当接して、スイッチ部材7だけをさらに揺動させる。
【0044】
図13に示すように、第1操作部13が第1被操作部17を押圧することによってスイッチ部材7が揺動して、可動接点20が第3固定接点29に接触しないアンロック駆動領域AUに達すると、第3固定接点29に印加されている電圧を、モータ2に接続された第1固定接点27に伝達することができなくなるので、モータ2の駆動力がなくなる。
【0045】
しかしながら、カム部材4は、その慣性力によって、僅かな時間ではあるが、リターンスプリング8に抗してロック方向に回動し続け、図14に示すように、スイッチ部材7をさらに揺動させて、可動接点20を完全に第3固定接点29から隔離されたアンロック駆動領域AUの内部まで移動させる。これにより、入力端子25に給電が継続されていても、断続的に可動接点20が第3固定接点29に接触するチャタリングが防止される。
【0046】
その後、カム部材4は、図15に示すように、リターンスプリング8によって、中立角度NPに復帰させられる。しかしながら、このカム部材4の中立角度NPへの復帰によって、ロック部材6およびスイッチ部材7は、揺動しない。つまり、第2カム面12は、オーバーロック角度OLから中立角度NPまでの範囲において、カムフォロワ9をロック部材6のアンロック位置に対応する位置まで移動可能とするように形成されている。
【0047】
このロック状態から、このドアロックアクチュエータによって解錠する場合、図8に示したように、入力端子23に正の電圧、入力端子24に負の電圧、入力端子25に無電圧が印加される。このとき、固定接点20は、アンロック駆動領域AUに位置しており、固定接点20が第1固定接点27および第2固定接点28を導通しているため、モータ2は、ウォームギア3を逆回転して、カム部材4を反時計回り(アンロック方向)に回動させる。
【0048】
カム部材4の第2カム面12は、中立角度NPからアンロック完了角度ULまで、次第に径方向外側に移動し、カムフォロワ9のロック方向の揺動可能範囲を狭めてゆく。これにより、ロック部材6は、カム部材4のアンロック方向の回動にともなってアンロック位置に向かって揺動させられる。
【0049】
図16に示すように、ロック部材6が揺動すると、先ず、ロック部材6の第2規制部16がスイッチ部材7の被規制部19に当接する。すると、カム部材4のさらなる回動は、ロック部材6とスイッチ部材7とを一体に揺動させる。
【0050】
図17に示すように、カム部材4がアンロック完了角度ULまで回動して、ロック部材6がアンロック位置まで揺動したとき、スイッチ部材7は、可動接点20を第1固定接点27、第2固定接点28および第3固定接点29に接触させる遷移領域まで揺動させる。
【0051】
さらに、カム部材4がアンロック完了角度ULからオーバーアンロック角度OUに向かって回動すると、ロック部材6はそれ以上揺動しないが、図18に示すように、カム部材4の第2操作部14がスイッチ部材7の第2被操作部18に当接して、スイッチ部材7をさらに揺動させる。
【0052】
カム部材4のさらなる回動により、図19に示すように、スイッチ部材7は、可動接点20が第2固定接点28に接触しないロック駆動領域ALまで揺動させられる。これにより、モータ2への給電は停止するが、カム部材4の慣性力による回動は、図20に示すように、スイッチ部材7をさらに揺動させて、可動接点20を完全にロック駆動領域ALの内部まで位置させる。
【0053】
その後、リターンスプリング8によって、カム部材4が中立角度NPに復帰させられると、図9に示した状態に戻る。
【0054】
本実施形態のドアロックアクチュエータでは、上述のモータ2の駆動による他、手動操作、つまり、ドアロック装置をユーザが操作することにより、ロック部材6を外力によって揺動させることもできる。例えば、ドアロック装置に対してユーザがキー操作を行うと、ドアロック装置のロックレバーが揺動し、これに連動してロック部材6もロック位置とアンロック位置との間を揺動する。また、車輌のロックノブ(不図示)がユーザによって手動操作されると、ケーブル等を介して連結されたロック部材6が、それに連動してロック位置とアンロック位置との間を揺動する。
【0055】
図21に示すように、図9の状態からロック部材6を手動で操作して、二点鎖線で示したアンロック位置にあったロック部材6を、実線で示したロック位置に揺動させた場合、カム部材4の回動によるロック部材6の揺動の場合と同様に、その過程において、ロック部材6の第1規制部15がスイッチ部材7の被規制部19に当接して、スイッチ部材7を揺動させる。このため、ロック部材6をロック位置まで揺動させたとき、可動接点20は、第1固定接点27、第2固定接点28および第3固定接点29に接触する遷移領域ANまで移動させられる。
【0056】
また、図22に示すように、図15の状態からロック部材6を手動で操作して、二点鎖線で示したロック位置にあったロック部材6を、実線で示したアンロック位置に揺動させた場合には、ロック部材6の第2規制部16がスイッチ部材7の被規制部19に当接して、スイッチ部材7を揺動させて、可動接点20を第1固定接点27、第2固定接点28および第3固定接点29に接触する遷移領域ANまで移動させる。
【0057】
このように、本実施形態のドアロックアクチュエータにおいて、アーム部5を手動で操作してロック部材6をロック位置またはアンロック位置まで揺動させた場合には、可動接点20が、いずれも、第1固定接点27、第2固定接点28および第3固定接点29に接触した状態になる。これにより、入力端子23,24,25に、図8に示したロック動作のための電圧の組み合わせが印加された場合にも、アンロック動作のための電圧の組み合わせが印加された場合にも、モータ2を所定の方向に駆動して、ロック部材6を揺動させることができる。
【0058】
本発明のドアロックアクチュエータは、前記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、前記実施形態では、ロック部材6とドアロック装置のロックレバー(不図示)とを連結するように構成しているが、別の中間部材を介してロック部材とロックレバーとを連結するようにしてもよいし、ロック部材6をドアロック装置のロックレバーとして構成してもよい。また、前記実施形態では、ロック部材6がロック位置およびアンロック位置に移動した後に、モータ2の通電を遮断するように構成しているが、ロック部材6がロック位置およびアンロック位置に移動するのと同時、または、移動する直前に、モータ2の通電を遮断するように構成してもよい。この場合でも、モータ2およびカム部材4の慣性力により、モータ2が停止した後もカム部材4を続けて回転させることで、ロック部材6をロック位置またはアンロック位置に移動させることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…ケーシング
2…モータ
4…カム部材
5…アーム部
6…ロック部材
7…スイッチ部材
8…リターンスプリング
9…カムフォロワ
10…揺動案内部
11…第1カム面
12…第2カム面
13…第1操作部
14…第2操作部
15…第1規制部
16…第2規制部
17…第1被操作部
18…第2被操作部
19…被規制部
20…可動接点
27…第1固定接点
28…第2固定接点
29…第3固定接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加された電圧の極性に応じた方向に回転するモータと、
前記モータの駆動によりロック方向またはアンロック方向に回動され、前記モータの駆動力がなくなると中立位置に復帰するように付勢されたカム部材と、
ドアロック装置のロックレバーに連結されるアーム部を備え、ロック位置からアンロック位置まで揺動可能に設けられたロック部材と、
揺動可能に配設され、可動接点を保持するスイッチ部材と、
前記モータに電気的に接続された第1固定接点、並びに、電源に接続され得、且つ、前記可動接点を介して前記第1固定接点と電気的に接続され得る第2固定接点および第3固定接点とを有し、
前記第1固定接点、前記第2固定接点および前記第3固定接点は、前記可動接点が前記第1固定接点および前記第2固定接点に接触し、且つ、前記第3固定接点に接触しないアンロック駆動領域、前記可動接点が前記第1固定接点および前記第3固定接点に当接し、且つ、前記第2固定接点に当接しないロック駆動領域、および、前記アンロック駆動領域と前記ロック駆動領域との間にあって、前記可動接点が前記第1固定接点、前記第2固定接点および前記第3固定接点に接触する遷移領域とを形成し、
前記カム部材は、前記中立位置において、前記ロック部材を前記ロック位置から前記アンロック位置まで揺動可能とし、前記中立位置から前記ロック方向に所定角度のロック完了角度まで回転する間に前記ロック部材の前記アンロック方向の揺動可能範囲を次第に狭め、前記中立位置から前記アンロック方向に所定角度のアンロック完了角度まで回転する間に前記ロック部材の前記ロック方向の揺動可能範囲を次第に狭める揺動案内部と、前記ロック完了角度よりさらに前記ロック方向に回動することによって前記スイッチ部材を前記アンロック駆動領域に揺動させる第1操作部と、前記アンロック完了角度よりさらに前記アンロック方向に回動することによって前記スイッチ部材を前記ロック駆動領域に揺動させる第2操作部とを備え、
前記ロック部材は、前記スイッチ部材に当接可能であり、前記ロック位置まで揺動することによって、前記ロック駆動領域にある前記スイッチ部材を前記遷移領域まで揺動させるとともに、前記アンロック位置まで揺動することによって、前記アンロック駆動領域にある前記スイッチ部材を前記遷移領域まで揺動させる規制部を備えたことを特徴とするドアロックアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1操作部と前記第2操作部とは、前記ロック部材の揺動の軸方向にずらして設けられ、
前記スイッチ部材は、前記第1操作部には当接し得るが前記第2操作部には当接し得ない第1被操作部と、前記第1操作部には当接し得ないが前記第2操作部には当接し得る第2被操作部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のドアロックアクチュエータ。
【請求項3】
前記カム部材は、前記モータの駆動力がなくなった直後は、慣性力によって回転を維持することを特徴とする請求項1または2に記載のドアロックアクチュエータ。
【請求項4】
前記スイッチ部材は、前記ロック部材と同軸に揺動可能であり、
前記ロック部材と前記スイッチ部材とは、互いの相対的な揺動角度を規制し合うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のドアロックアクチュエータ。
【請求項5】
前記揺動案内部は、前記ロック部材に設けたカムフォロワを挟み込むようにして形成され、前記カムフォロワの揺動範囲の両端を規制する第1カム面および第2カム面を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のドアロックアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−246657(P2012−246657A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118146(P2011−118146)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】