説明

ドアロック制御装置

【課題】走行中に突然ドアが開いたり、乗員の車外への落下事故を防止する効果を高める
ことができ、かつ使い勝手の面でも不便さを感じさせることのないドアロックの制御を行
うことができるドアロック制御装置を提供すること。
【解決手段】ステアリングの操舵状態に関する情報(トルクセンサ24や舵角センサ25
からの信号)を取り込む操舵情報取込手段(マイコン2)と、操舵情報取込手段により取
り込んだステアリングの操舵状態に関する情報に基づいて、ドアをロックする制御を行う
ドアロック制御手段(マイコン2)とを装備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドアロック制御装置に関し、より詳細には、車両のドアをアンロック(解錠)
の状態から自動的にロック(施錠)する制御を行う機能を備えたドアロック制御装置に関
する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のドアをアンロックの状態から自動的にロックする制御を行うドアロッ
ク制御装置として、車速感応型、すなわち、走行を開始して車速がある値(例えば、30
km/h)に達すると、自動的に全てのドアをロックする制御を行うドアロック制御装置
が知られている。
【0003】
しかしながら、車速感応型のドアロック制御装置では、車両がある速度に達するまでは
、ドアをロックする制御が行われないため、ある速度未満の低速で走行しているときや、
ある速度に到達するまでの間は、ドアがロックされておらず、この間に、子供によるドア
開閉レバーなどのいたずら操作などによりドアが突然開いてしまう虞があるといった課題
があった。
【0004】
そこで、このような課題を解決するために、下記の特許文献1には、変速機のシフトレ
バーのシフト位置と、パーキングブレーキを解除したパーキングブレーキ・オフと、アク
セル・フットブレーキの操作とを共に検知したとき、又はこれらを任意に組み合わせた二
つを共に検知したとき、又はシフトレバーの走行位置を検知したとき、又はパーキングブ
レーキ・オフを検知したときに、ロック信号をドアロック制御装置に出力して、ドアをロ
ックするように構成された自動ドアロック装置が開示されている。
【0005】
特許文献1記載の自動ドアロック装置によれば、走行を開始する直前に行われる運転者
の上記操作を検知してドアがロックされるので、車速感応型の装置と比較して、走行開始
前にいち早くドアがロックされ、走行開始直後の安全も確保することができるとしている

【0006】
特許文献1記載の自動ドアロック装置では、走行を開始する直前に、いち早くドアがロ
ックされ、低速走行時における安全性も確保できる点では、車速感応型の装置よりも優れ
ているものの、運転者が乗車後に行う走行開始までの操作と、運転者以外の他の乗員の乗
車動作との関係までは配慮されておらず、例えば、他の乗員が乗り込む前に、運転者がパ
ーキングブレーキをオフする操作、アクセル操作(空ぶかし)、シフト操作などの操作を
行うと、運転者の意思に反して、ドアが自動的にロックされてしまい、他の乗員を乗せる
ために、アンロック(解錠)操作が必要となり、使い勝手の面で不便な点があるとともに
、早目にドアロックされる制御が無駄になってしまうといった課題があった。
【0007】
また、従来のドアロック制御装置では、半ドア状態のドアがある場合は、ドアをロック
する制御が行われていなかったため、運転者が、半ドア状態に気が付かないまま走行を開
始すると、走行中に半ドア状態のドアが突然開いてしまう虞があった。また、従来のドア
ロック制御装置では、ドアがロックされた状態で走行中に、子供のいたずら等によりドア
ノブ(ドアロック/アンロックスイッチ)がアンロック操作されても、それを運転者に気
付かせるような機能は特に設けられておらず、誤ってドアを開けて車外に乗員が落下して
しまうといった事故を予防する対策が十分になされていないといった課題があった。
【特許文献1】特開平8−218712号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、走行中に突然ドアが開いたり、開いた
ドアから乗員が車外へ投げ出されるような事故を防止する効果を高めることができ、かつ
使い勝手の面でも不便さを感じさせることのないドアロックの制御を行うことができるド
アロック制御装置を提供することを目的としている。
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係るドアロック制御装置(1)は、ステアリングの
操舵状態に関する情報を取り込む操舵情報取込手段と、該操舵情報取込手段により取り込
んだステアリングの操舵状態に関する情報に基づいて、ドアをロックする制御を行うドア
ロック制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0010】
走行中にドアが突然開いたり、また、開いたドアから乗員が車外へ投げ出されるような
落下事故は、車体に遠心力が作用している時、すなわちステアリングの操舵時に発生する
可能性が高くなる。
上記ドアロック制御装置(1)によれば、前記ドアロック制御手段により、前記操舵情
報取込手段により取り込んだステアリングの操舵状態に関する情報、例えば、ステアリン
グの操舵角や操舵トルクなどの情報に基づいて、ドアをロックする制御が行われるので、
走行開始後の低速走行時であっても、ステアリング操作が行われた段階で、ドアがロック
されるため、車体に作用する遠心力によりドアが突然開いたり、また、開いたドアから乗
員が車外へ投げ出されるような落下事故の発生を防止する効果を高めることができ、車速
感応式のものよりも、乗車時の安全性を高めることができる。
【0011】
また、ステアリング操作が行われるのは、通常、走行を開始した後からである。したが
って、上記ドアロック制御装置(1)によれば、走行を開始した後に、ドアをロックする
制御を行うことになるため、走行を開始する直前にドアのロックを行う従来の制御装置の
ように、他の乗員が乗り込む前、すなわち走行開始前の停車している状況で、運転者の意
に反してドアがロックされてしまうこともなく、使い勝手の面で乗員に不便さを感じさせ
ることなく、ドアをロックする制御が無駄になることもないドアロック制御を行うことが
できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るドアロック制御装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1
は、実施の形態(1)に係るドアロック制御装置が採用されたドアロック制御システムの
要部を概略的に示したブロック図である。
【0013】
イグニッションスイッチ11とキーインサートスイッチ12とがドアロック制御装置1
のマイコン2に接続されており、マイコン2では、イグニッションスイッチ11から出力
されるON、OFF信号を取り込み、また、キーインサートスイッチ12から出力される
キーの挿し込み状態を示すON、OFF信号を取り込むようになっている。
【0014】
また、全ドアを手動でロック、アンロックさせるための運転席のマニュアルスイッチ1
3がドアロック制御装置1のマイコン2に接続されており、マイコン2では、マニュアル
スイッチ13から出力される全ドアロック信号、又は全ドアアンロック信号を取り込み、
取り込んだ信号に応じて、全ドアのロック、又はアンロックの制御が行われるようになっ
ている。
【0015】
また、運転席(D席)ドアカーテシスイッチ14、助手席(P席)ドアカーテシスイッ
チ15、後部右座席(RR席)ドアカーテシスイッチ16、後部左座席(RL席)ドアカ
ーテシスイッチ17が、ドアロック制御装置1のマイコン2に接続されており、マイコン
2では、これらドアカーテシスイッチ14〜17からの信号を取り込み、半ドア状態を含
むドアの開閉状態が検知できるようになっている(ドア開閉信号取込手段)。
【0016】
また、運転席(D席)ドアロック・アンロックスイッチ(ドアノブスイッチとも言う)
18、助手席(P席)ドアロック・アンロックスイッチ19、後部右座席(RR席)ドア
ロック・アンロックスイッチ20、後部左座席(RL席)ドアロック・アンロックスイッ
チ21が、ドアロック制御装置1のマイコン2に接続されており、マイコン2では、これ
らドアロック・アンロックスイッチ18〜21からの信号を取り込み、各ドアのロック・
アンロック状態が検知できるようになっている(ドアロック操作信号取込手段)。
【0017】
また、車速センサ22と、エンジン回転数センサ23とが、ドアロック制御装置1のマ
イコン2に接続されており、マイコン2では、車速センサ22から出力された車速信号や
、エンジン回転数センサ23から出力された回転数信号を取り込み、車速やエンジン回転
数が検知できるようになっている。
【0018】
また、ステアリングの操舵トルクを検出するトルクセンサ24と、ステアリングの操舵
角を検出する舵角センサ25とが、ドアロック制御装置1のマイコン2に接続されており
、ドアロック制御装置1のマイコン2では、トルクセンサ24で検出された操舵トルク信
号や舵角センサ25で検出された舵角信号を取り込み(操舵情報取込手段)、検知された
操舵トルクや操舵角に関する情報に基づいて、ドアをロックする制御(ドアロック制御手
段)が行われるようになっている。
【0019】
なお、トルクセンサ24は、ステアリング軸の下端側に接続され、図示しないトーショ
ンバーを含んで構成されており、ステアリング軸が回転すると、トーションバーに捩れが
生じ、その捩れ度合及びトーションバーのばね定数から、トーションバーに印加された操
舵トルクがトルク電圧信号として出力される構成となっている。
【0020】
また、舵角センサ25は、ステアリング軸に取り付けられて回転するスロットディスク
(図示せず)と、スロットディスクを挟んで配設されたLED及びフォトトランジスタか
らなる受発光素子(図示せず)とを含んで構成されており、ステアリング軸が回転すると
、受発光素子は、スロットディスクによる光の透過、遮断に応じて、所定舵角毎にON/
OFFのパルス信号を出力するようになっている。
【0021】
なお、本実施の形態では、トルクセンサ24と舵角センサ25とが、ドアロック制御装
置1のマイコン2に接続され、マイコン2では、トルクセンサ24と舵角センサ25とで
検出された各信号を取り込むように構成されているが、別の実施の形態では、トルクセン
サ24、又は舵角センサ25のいずれか一方のみをマイコン2に接続する構成としてもよ
く、また、マイコン2でトルクセンサ24から取り込んだ操舵トルク信号を用いて操舵角
等を演算により求める構成としてもよい。
【0022】
さらに別の実施の形態では、トルクセンサ24、及び/又は舵角センサ25から直接信
号を取り込むのではなく、トルクセンサ24、及び/又は舵角センサ25が接続された他
の制御装置、例えば、電動パワーステアリング制御装置から通信ラインを介して、トルク
センサ24、及び/又は舵角センサ25で検出された信号を取り込む構成を採用すること
もできる。
【0023】
また、変速機のシフトレバーの位置(P:パーキング、D:ドライブ、R:リアなど)
を検出するシフト位置センサ26が、ドアロック制御装置1のマイコン2に接続されてお
り、マイコン2では、シフト位置センサ26からの信号を取り込んで、シフトレバーの位
置を検知することができるようになっている。
【0024】
また、ドアロック制御装置1のマイコン2には、各ドアのドアロック機構を構成するド
アロックモータ、すなわち、運転席ドアロックモータ31、助手席ドアロックモータ32
、後部右座席ドアロックモータ33、後部右座席ドアロックモータ34が接続されており
、これらドアロックモータ31〜34は、マイコン2からの制御信号に基づいて駆動制御
されるようになっている。
【0025】
また、ドアロック制御装置1のマイコン2には、音を出力するブザー35が接続されて
おり、ブザー35は、マイコン2からのブザー音出力信号に基づいて駆動制御されるよう
になっている。なお、ブザー35の代わりに、スピーカなどの他の音響出力手段を接続し
て、合成音声などを出力する構成を採用することもできる。
【0026】
また、各ドアのドアロックモータ31〜34の駆動やブザー35の駆動などの制御を行
うドアロック制御装置1は、CPU、RAM、ROM(いずれも図示せず)を備えたマイ
コン2を含んで構成されており、ROMには、ドアロック制御等を実行するためのプログ
ラムなどが記憶されている。なお、マイコン2には、イグニッションスイッチ11がOF
Fの間にも電圧が加えられており、RAMに記憶されているデータが消失しないようにバ
ックアップ機能が設けられている。
【0027】
マイコン2のRAMには、トルクセンサ24や舵角センサ25から取り込んだステアリ
ングの操舵状態に関する情報(操舵トルクや操舵角)と比較して、ドアをロックするか否
かを判断するための判定閾値(判定操舵トルクや判定操舵角)のデータなどが記憶されて
いる。
【0028】
この判定閾値データは、ユーザの要求に応じて適宜変更することができるようになって
いる。例えば、イグニッションスイッチ11のONからOFFへの操作をn回繰り返すと
、判定閾値(判定操舵トルク)変更モードに、m回(n≠m)繰り返すと、判定閾値(判
定操舵角)変更モードに切り替わる設定が設けられており、各判定閾値変更モードに設定
後、キーの抜き挿し回数に応じて、判定閾値の値が、所定の間隔で変化(増減)するよう
になっている。また、変更された判定閾値の値を、運転席前方に配設されたインストルメ
ントパネル等の表示部に表示させる構成としてもよい。
【0029】
また、キーの抜き挿し操作をしてから所定時間が経過すると、そのときまでのキーの抜
き挿し回数に応じて設定された値が判定閾値の値として設定され、設定完了のブザー音が
出力されるようになっている。また、設定完了時にブザー音の出力を行うか否か(ブザー
音出力のON、OFF)の設定も行えるようになっており、例えば、イグニッションスイ
ッチ11のONからOFFへの操作をa回(a≠n≠m)行うとブザー音の出力がONに
設定され、b回(b≠a≠n≠m)行うとブザー音の出力がOFFに設定されるモードを
設けることができる。
【0030】
上記した各種スイッチ11〜21、各種センサ22〜26、ドアロック制御装置1、ド
アロックモータ31〜34、及びブザー35を含んで車両Mに搭載されたドアロック制御
システムが構成されている。
【0031】
次に実施の形態(1)に係る車両ドアロック制御装置1におけるマイコン2の行う処理
動作を図2に示したフローチャートに基づいて説明する。なお、本処理動作は、イグニッ
ションスイッチ11がONされている場合に実行される。
【0032】
まず、ステップS1では、エンジン回転数センサ23、及び/又は車速センサ22から
の信号に基づいて、車両が走行を開始したか否かを判断し、車両が走行を開始していない
(すなわち、エンジン回転数が所定回転数未満、及び/又は車速が0km/hである)と
判断すればステップS1に戻る一方、車両が走行を開始した(すなわち、エンジン回転数
が所定回転数以上、及び/又は車速が0km/h以上である)と判断すればステップS2
に進む。
【0033】
ステップS2では、各ドアのロック/アンロックスイッチ18〜21からの信号に基づ
いて、車両のいずれかのドアがアンロック(解除)の状態であるか否かを判断し、いずれ
のドアもアンロックの状態ではない(すなわち、全てのドアがロックされている)と判断
すれば、その後処理を終える一方、いずれかのドアがアンロックの状態であると判断すれ
ばステップS3に進む。
【0034】
ステップS3では、舵角センサ25で検出された操舵角、又はトルクセンサ24で検出
された操舵トルクの値が、それぞれ判定閾値以上となったか否かを判断し、操舵角、操舵
トルクの値がいずれも判定閾値未満であると判断すればステップS2に戻る一方、操舵角
、操舵トルクの少なくともいずれかの値が判定閾値以上となったと判断すればステップS
4に進む。
【0035】
ステップS4では、ドアロックを行うことを乗員に知らせるためのブザー音の出力を開
始する処理を行い、その後ステップS5に進む。ステップS5では、全ドアをロックさせ
る制御信号(すなわち、各ドアロックモータ31〜34の駆動信号)をドアロック機構に
出力し、各ドアロックモータ31〜34を駆動させて全ドアをロックさせる処理を行い、
その後ステップS6に進み、ステップS6では、ブザー音の出力を停止する処理を行い、
その後処理を終える。
【0036】
なお、上記処理では、ドアロックが完了するまで、ブザー音を出力するようになってい
るが、ドアロックの制御を行う前にだけブザー音を出力するようにしてもよい。また、ス
テップS5における全ドアをロックさせる制御は、いずれかのドアが半ドア状態を含む開
状態であることが検出されている場合であっても実行されるようになっている。
【0037】
次に実施の形態(1)に係るドアロック制御装置1におけるマイコン2の行う別の処理
動作を図3に示したフローチャートに基づいて説明する。なお、本処理動作は、車両が停
止状態となっている場合に実行される。
【0038】
まず、ステップS11では、エンジン回転数センサ23、及び/又は車速センサ22か
らの信号に基づいて、車両が停止状態となっているか否かを判断し、車両が停止状態とな
っていない(すなわち、エンジン回転数が所定回転数以上、及び/又は車速が0km/h
以上である)と判断すれば処理を終える一方、車両が停止状態となっている(すなわち、
エンジン回転数が所定回転数未満、及び/又は車速が0km/hである)と判断すればス
テップS12に進む。
【0039】
ステップS12では、各ドアのロック/アンロックスイッチ18〜21からの信号に基
づいて、少なくとも運転席のドアがアンロックされている状態であるか否かを判断し 運
転席のドアがロックされている状態であると判断すればその後処理を終える一方、少なく
とも運転席のドアがアンロックされている状態であると判断すればステップS13に進む

【0040】
ステップS13では、シフト位置センサ26からの信号に基づいて、シフト位置がR(
後退)に切り替えられたか否かを判断し、シフト位置がRに切り替えられていないと判断
すれば処理を終える一方、シフト位置がRに切り替えられたと判断すればステップS14
に進む。
【0041】
ステップS14では、車速センサ22からの信号に基づいて、車両が後退し始めたか否
かを判断し、車両が後退し始めたと判断すればステップS15に進む。ステップS15で
は、舵角センサ25で検出された操舵角、又はトルクセンサ24で検出された操舵トルク
の値が、それぞれ判定閾値以上となったか否かを判断し、操舵角、操舵トルクの値がいず
れも判定閾値未満であると判断すればステップS15に戻る一方、操舵角、操舵トルクの
少なくともいずれかの値が判定閾値以上となったと判断すればステップS16に進む。な
お、ステップS12の判定処理を、ステップS13とS14との間、又はステップS14
と15との間に挿入してもよい。
【0042】
ステップS16では、ドアロックを行うことを乗員に知らせるためのブザー音の出力を
開始する処理を行い、その後ステップS17に進む。ステップS17では、運転席ドアを
除く他のドアを全てロックさせる制御信号(すなわち、運転席を除く各ドアロックモータ
32〜34の駆動信号)をドアロック機構に出力し、運転席を除く各ドアロックモータ3
2〜34を駆動させて、運転席を除く他のドアをロックさせる処理を行い、その後ステッ
プS18に進み、ステップS18では、ブザー音の出力を停止する処理を行い、その後処
理を終える。
【0043】
上記実施の形態(1)に係るドアロック制御装置1によれば、舵角センサ25やトルク
センサ24から取り込んだステアリングの操舵状態に関する情報、すなわち、ステアリン
グの操舵角や操舵トルクの検出信号に基づいて、ドアをロックする制御が行われるので、
走行開始後の低速走行時であっても、ステアリング操作が行われた段階で、ドアがロック
されるため、車体に作用する遠心力によりドアが突然開いたり、また、開いたドアから乗
員が車外へ投げ出されるような落下事故の発生を防止する効果を高めることができ、車速
感応式のものよりも、乗車時の安全性を高めることができる。
【0044】
また、ステアリング操作が行われるのは、通常、走行を開始した後からである。したが
って、ドアロック制御装置1によれば、走行を開始した後に、ドアをロックする制御を行
うことになるため、走行を開始する直前にドアのロックを行う従来の制御装置のように、
他の乗員が乗り込む前、すなわち走行開始前の停車している状況で、運転者の意に反して
ドアがロックされてしまうこともなく、使い勝手の面で乗員に不便さを感じさせることな
く、また、ドアをロックする制御が無駄になることもないドアロック制御を行うことがで
きる。
【0045】
また、ドアロック制御装置1によれば、半ドア状態を含むドアの開状態が検出された場
合であっても、舵角センサ25やトルクセンサ24から取り込んだステアリングの操舵状
態に関する情報に基づいて、ドアをロックする制御が行われるので、半ドア状態であって
も、ステアリングの操舵が行われた段階で、ドアをロックすることができ、ステアリング
の操舵により車体に遠心力が作用して、半ドア状態のドアが突然開いてしまうといった事
故を防止することができる。
【0046】
また、マイコン2内のRAMに記憶されているドアをロックするか否かを判断するため
の操舵トルクや操舵角の判定閾値のデータを、イグニッションスイッチ11やキーインサ
ートスイッチ12の操作信号の入力に基づいて変更することができ、どの程度のステアリ
ングの操舵が行われたときに、ドアをロックさせるのかを、個々のユーザの希望に応じて
設定することができる。なお、判定閾値のデータの変更操作は、イグニッションスイッチ
11やキーインサートスイッチ12以外の操作手段を利用して行うようにしてもよい。
【0047】
また、車両が停車した状態で、運転席のドアがアンロックされ(又はアンロックの状態
で)、シフトレバーの操作位置が後退位置に切り替えられた場合、その後、後退を開始し
て、ステアリング操作が行われた段階では、全ドアをロックする制御を行うのではなく、
運転席を除いた他の席のドアをロックする制御が行われる。したがって、車両を後退させ
るとき(例えば、駐車時等)には、ステアリングを操作しても、運転席のドアはロックさ
れることがなく、運転席のドアはアンロックされた状態とすることができ、ドアを開けて
後方を確認しながら行う駐車動作を不便なく行うことができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、運転席を除いた他の席のドアをロックする制御が行われて
いるが、別の実施の形態では、ドアロックを行う座席をユーザにより設定できる機能を設
けて、ユーザ毎にドアロックを行う座席を設定できるようにしてもよい。これらの設定は
、専用の設定ボタンを設けてもよく、また、上記した判定閾値のデータの変更操作と同様
に、イグニッションスイッチ11やキーインサートスイッチ12などからの所定の操作入
力により設定できる機能を設ければよい。
【0049】
次に実施の形態(2)に係るドアロック制御装置について説明する。但し実施の形態(
2)に係るドアロック制御装置の構成については、マイコンを除いて図1に示したドアロ
ック制御装置1と略同様であるため、異なる機能を有するマイコン2Aには異なる符号を
付し、その他の同一機能を有する構成部品の説明をここでは省略する。
【0050】
実施の形態(1)に係るドアロック制御装置1では、走行開始後に、いずれかのドアが
アンロック状態であれば、ステアリング操作が行われた段階で、ブザー音を鳴らして、全
ドアをロックする制御を行うようになっているが、実施の形態(2)に係るドアロック制
御装置1Aでは、上記したドアロック制御装置1で行う制御の他に、走行を開始して、ス
テアリング操作が行われるまでの間に、子供などによるいたずら等により、いずれかのド
アのアンロック操作、又はいずれかのドアを開く操作が行われた場合に、運転者にアンロ
ック操作やドア開操作を報知する機能が装備されている点が相違している。
【0051】
次に実施の形態(2)に係るドアロック制御装置1Aにおけるマイコン2Aの行う処理
動作を図4に示したフローチャートに基づいて説明する。なお本処理動作は、イグニッシ
ョンスイッチ11がONされた後から実行される。
【0052】
まず、ステップS21では、エンジン回転数センサ23、及び/又は車速センサ22か
らの信号に基づいて、車両が走行を開始したか否かを判断し、車両が走行を開始していな
い(すなわち、エンジン回転数が所定回転数未満、及び/又は車速が0km/hである)
と判断すればステップS21に戻る一方、車両が走行を開始した(すなわち、エンジン回
転数が所定回転数以上、及び/又は車速が0km/h以上である)と判断すればステップ
S22に進む。
ステップS22では、各ドアのロック/アンロックスイッチ18〜21からの信号に基
づいて、全てのドアがロックされている状態であるか否かを判断し 全てのドアがロック
されている状態であると判断すればステップS23に進む。
【0053】
ステップS23では、各ドアのロック/アンロックスイッチ18〜21からの信号に基
づいて、いずれかのドアが、ロックからアンロックの状態になったか否かを判断し、いず
れのドアもロックからアンロックの状態になっていないと判断すれば、その後処理を終え
る一方、いずれかのドアが、ロックからアンロックの状態になったと判断すればステップ
S24に進む。ステップS24では、いずれかのドアが、ロックからアンロックの状態に
なったことを乗員に知らせるためのブザー音の出力を開始する処理を行い、その後ステッ
プS25に進む。
【0054】
ステップS25では、各ドアのロック/アンロックスイッチ18〜21からの信号に基
づいて、全ドアがロックされたか否かを判断し、全ドアがロックされたと判断すればステ
ップS26に進み、ステップS26では、ブザー音の出力を停止する処理を行い、その後
処理を終える。
【0055】
一方ステップS25において、全ドアがロックされていないと判断すればステップS2
7に進み、ステップS27では、舵角センサ25で検出された操舵角、又はトルクセンサ
24で検出された操舵トルクの値が、それぞれ判定閾値以上となったか否かを判断し、操
舵角、操舵トルクの値がいずれも判定閾値未満であると判断すればステップS25に戻る
一方、操舵角、操舵トルクの少なくともいずれかの値が判定閾値以上となったと判断すれ
ばステップS28に進む。ステップS28では、全ドアをロックさせる制御信号(すなわ
ち、各ドアロックモータ31〜34の駆動信号)をドアロック機構に出力し、各ドアロッ
クモータ31〜34を駆動させてドアをロックさせる処理を行い、その後ステップS26
に進む。
【0056】
一方、ステップS22において、全てのドアがロックされている状態ではないと判断す
ればステップS29に進む。ステップS29では、各ドアのドアカーテシスイッチ14〜
17からの信号に基づいて、いずれかのドアが開状態(半ドア状態を含む)になっている
か否かを判断し、いずれかのドアが開状態(半ドア状態を含む)になっていると判断すれ
ばステップS30に進む。
【0057】
ステップS30では、いずれかのドアが開状態(半ドア状態を含む)になっていること
を乗員に知らせるためのブザー音の出力を開始する処理を行い、その後ステップS31に
進む。なお、ステップS30において出力するドア開状態を知らせるブザー音と、ステッ
プS34において出力するアンロックの状態を知らせるブザー音とには、異なる音が設定
されている。
【0058】
ステップS31では、各ドアのドアカーテシスイッチ14〜17からの信号に基づいて
、全てのドアが閉状態になったか否かを判断し、全てのドアが閉状態になっていないと判
断すればステップS31に戻り、ブザー音の出力を継続する一方、全てのドアが閉状態に
なったと判断すればステップS25以降の処理に進む。
【0059】
一方ステップS29において、いずれかのドアが開状態(半ドア状態を含む)になって
いない(すなわち、全ドア閉状態)と判断すればステップS32に進む。ステップS32
では、舵角センサ25で検出された操舵角、又はトルクセンサ24で検出された操舵トル
クの値が、それぞれ判定閾値以上となったか否かを判断し、操舵角、操舵トルクの値がい
ずれも判定閾値未満であると判断すればステップS22に戻る一方、操舵角、操舵トルク
の少なくともいずれかの値が判定閾値以上となったと判断すればステップS33に進む。
【0060】
ステップS33では、ドアロックを行うことを乗員に知らせるためのブザー音を所定時
間(短時間)出力する処理を行い、その後ステップS34に進む。ステップS34では、
全ドアをロックさせる制御信号(すなわち、各ドアロックモータ31〜34の駆動信号)
をドアロック機構に出力し、各ドアロックモータ31〜34を駆動させてドアをロックさ
せる処理を行い、その後処理を終える。
【0061】
上記実施の形態(2)に係るドアロック制御装置1Aによれば、上記実施の形態(1)
に係るドアロック制御装置1と同様の効果が得られる他、車両が走行を開始して、ステア
リング操作が行われるまでの間に、ドアロック/アンロックスイッチ18〜21のいずれ
かからドアのアンロック操作を示す信号、又はドアカーテシスイッチ14〜17のいずれ
かからドアの開操作を示す信号を取り込んだ場合、ドアのアンロック操作を知らせるブザ
ー音、又はドアの開操作を知らせるブザー音を鳴らして、運転者に上記操作が行われたこ
とを報知することができる。
【0062】
したがって、走行を開始して、ステアリング操作が行われるまでの間、すなわち、全ド
アをロックする制御が行われる前に、子供などによるいたずら等により、いずれかのドア
のアンロック操作、又はいずれかのドアを開く操作(半ドア操作など)が行われたことを
、すぐに知らせる(警告する)ことができ、運転者が、半ドア状態を含むドア開状態に気
が付かないまま走行して、走行中に半ドア状態のドアが突然開いてしまうといった事故や
、誤ってドアが開いて車外に乗員が落下してしまうといった事故を防止する効果を高める
ことができ、乗車時の安全性を一層向上させることができる。
【0063】
また、別の実施の形態では、車両が走行を開始して、ステアリング操作が行われ、全ド
アのロック制御が行われた後に、ドアロック/アンロックスイッチ18〜21のいずれか
からドアのアンロック操作を示す信号、又はドアカーテシスイッチ14〜17のいずれか
からドアの開操作を示す信号を取り込んだ場合、ドアのアンロック操作を知らせるブザー
音、又はドアの開操作を知らせるブザー音を鳴らす構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態(1)に係るドアロック制御装置が採用されたドアロック制御システムの要部を概略的に示したブロック図である。
【図2】実施の形態(1)に係るドアロック制御装置におけるマイコンの行う処理動作を示したフローチャートである。
【図3】実施の形態(1)に係るドアロック制御装置におけるマイコンの行う別の処理動作を示したフローチャートである。
【図4】実施の形態(2)に係るドアロック制御装置におけるマイコンの行う処理動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1、1A ドアロック制御装置
2、2A マイコン(操舵情報取込手段、ドアロック制御手段)
24 トルクセンサ
25 舵角センサ
31、32、33、34 ドアロックモータ
35 ブザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングの操舵状態に関する情報を取り込む操舵情報取込手段と、
該操舵情報取込手段により取り込んだステアリングの操舵状態に関する情報に基づいて
、ドアをロックする制御を行うドアロック制御手段とを備えていることを特徴とするドア
ロック制御装置。
【請求項2】
前記ドアロック制御手段が、半ドア状態を含むドアの開状態が検出された場合であって
も、前記操舵情報取込手段により取り込んだステアリングの操舵状態に関する情報に基づ
いて、ドアをロックする制御を行うものであることを特徴とする請求項1記載のドアロッ
ク制御装置。
【請求項3】
前記ドアロック制御手段が、前記操舵情報取込手段により取り込んだステアリングの操
舵状態に関する情報と、所定の判定閾値とを比較して、ドアをロックするか否かを判断し
、ドアをロックすると判断した場合、ドアロック駆動手段を駆動させるための制御信号を
出力する制御を行うものであり、
所定の操作信号の入力に基づいて、前記所定の判定閾値を変更する判定閾値変更手段を
備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のドアロック制御装置。
【請求項4】
変速機のシフトレバーの操作位置を示す信号を取り込むシフト位置信号取込手段を備え

該シフト位置信号取込手段によりシフトレバーの操作位置が後退位置を示す信号を取り
込んだ場合、
前記ドアロック制御手段が、前記操舵情報取込手段により取り込んだステアリングの操
舵状態に関する情報に基づいて、少なくとも運転席を除く、所定の席のドアをロックする
制御を行うものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のドアロック
制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−91729(P2009−91729A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260689(P2007−260689)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】