説明

ドアロック装置

【課題】車両の防盗性を確保した上で操作性の向上を図ること。
【解決手段】室内に配設したインサイドドアハンドルIDHとロック機構30との間に介在し、インサイドドアハンドルIDHの開扉操作をロック機構30に伝達する伝達状態と、インサイドドアハンドルIDHの開扉操作をロック機構30に伝達しない非伝達状態とに切り替え可能に構成したチャイルドロック機構40と、ドアを開成した状態においてスライド操作可能、かつドアを閉位置に配置した場合に操作不能となる位置に配設し、伝達位置に配置させた場合にチャイルドロック機構40を伝達状態とする一方、非伝達位置に配置させた場合にチャイルドロック機構40を非伝達状態とするチャイルドレバー42と、チャイルドレバー42が非伝達位置に配置された場合に操作可能、かつチャイルドレバー42が伝達位置に配置された場合に操作不能となる態様で配設し、操作した場合にロック機構30をロック状態に切り替えるロックレバー部33fとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪自動車等の車両に適用するドアロック装置に関するもので、特に、車両本体に対してドアが閉位置に配置された場合にラッチ状態となってドアの開方向への移動を規制するラッチ機構と、ドアハンドルからラッチ機構に至るまでの間に介在し、アンロック状態においてドアハンドルが開扉操作された場合にこれをラッチ機構に伝達することによりラッチ状態を解除してドアの開方向への移動を許容する一方、ロック状態となった場合にはドアハンドルが開扉操作された場合にもラッチ機構のラッチ状態を維持するロック機構とを備えたドアロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今においては、操作性の向上を図るため、ロックアクチュエータによってロック機構のロック状態/アンロック状態を切り替えるようにしたドアロック装置が提供されている。さらにこの種のドアロック装置の中には、室内においてロック状態/アンロック状態を切り替えるためのロック操作部材を省略し、車両の防盗性向上を図ろうとするものも具現化されつつある。すなわち、室内のロック操作部材を省略したドアロック装置によれば、たとえドアガラスが破られた場合にもロック状態にあるロック機構をアンロック状態に切り替えることが困難となるため、車両の防盗性を向上させることが可能となる。
【0003】
しかしながら、ロック操作部材を省略した場合には、例えばロックアクチュエータの駆動系や電源供給系に不具合が発生するとロック機構をロック状態に切り替えることが困難となり、車両を離れることができなくなる等の問題を招来することになる。このため従来では、ドアが閉位置に配置されている時には塞がれる位置に操作ボタンを設け、この操作ボタンを操作することによってロック機構をロック状態とするものが提供されている。こうしたドアロック装置によれば、ロックアクチュエータによって操作性の向上を図ることができるばかりでなく、ロックアクチュエータの駆動系や電源供給系に不具合が発生した場合であっても、操作ボタンを操作することでロック機構をロック状態とすることが可能となる。操作ボタンは、ドアを開成した場合にのみ操作できるものであるため、車両の防盗性に影響を与えることはない(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特表2000−500836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両に適用されるドアロック装置には、いわゆるワンモーションやダブルアクションと称される機構が付設されているものがある。これらの機構は、ロック操作部材を操作することなくインサイドドアハンドルを開扉操作することによってロック状態にあるロック機構をアンロック状態に切り替えるようにしたもので、ロック機構のアンロック操作を容易化する上できわめて有効である。具体的には、ワンモーション機構が付設されたドアロック装置においては、ロック機構がロック状態にあっても、インサイドドアハンドルを開扉操作すれば、ロック機構がアンロック状態となり、その後、引き続いてラッチ機構が解除されることになる。一方、ダブルアクション機構が付設されたドアロック装置では、ロック機構がロック状態にある場合にインサイドドアハンドルを一度開扉操作すればアンロック状態となり、再度インサイドドアハンドルを開扉操作することによりラッチ機構を解除するようにしたものである。
【0006】
しかしながら、これらワンモーション機構やダブルアクション機構を上述したドアロック装置に適用した場合には、防盗性が損なわれる虞れがある。すなわち、操作ボタンの操作によってロック機構をロック状態としたとしても、インサイドドアハンドルを1回、もしくは2回開扉操作すれば、これが解除されてしまうため、例えば悪意のあるものがドアガラスを破壊してインサイドドアハンドルを操作すれば、室内への侵入を許すことになる。結局、上述したドアロック装置において車両の防盗性を確保するためには、ワンモーション機構やダブルアクション機構といったアンロック操作を容易にするための機構を適用することが困難である。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、車両の防盗性を確保した上で操作性の向上を図ることのできるドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係るドアロック装置は、車両本体に対してドアが閉位置に配置された場合にラッチ状態となってドアの開方向への移動を規制するラッチ機構と、ドアハンドルから前記ラッチ機構に至るまでの間に介在し、アンロック状態においてドアハンドルが開扉操作された場合にこれをラッチ機構に伝達することによりラッチ状態を解除してドアの開方向への移動を許容する一方、ロック状態となった場合にはドアハンドルが開扉操作された場合にもラッチ機構のラッチ状態を維持するロック機構と、前記ロック機構をロック状態とアンロック状態とに切り替えるロックアクチュエータとを備えたドアロック装置において、室内に配設したインサイドドアハンドルと前記ロック機構との間に介在し、インサイドドアハンドルの開扉操作を前記ロック機構に伝達する伝達状態と、インサイドドアハンドルの開扉操作を前記ロック機構に伝達しない非伝達状態とに切り替え可能に構成したチャイルドロック機構と、ドアを開成した状態において操作可能、かつドアを閉位置に配置した場合に操作不能となる位置に配設し、伝達位置に配置させた場合に前記チャイルドロック機構を伝達状態とする一方、非伝達位置に配置させた場合に前記チャイルドロック機構を非伝達状態とする切替操作レバーと、前記切替操作レバーが非伝達位置に配置された場合に操作可能、かつ前記切替操作レバーが伝達位置に配置された場合に操作不能となる態様で配設し、操作した場合に前記ロック機構をロック状態に切り替えるロックレバーとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロックアクチュエータによるロック状態への切り替えが不能となった場合にも、ロックレバーを操作することによってロック機構をロック状態に切り替えることが可能になり、ドアの閉位置を維持することができるようになる。しかも、ロックレバーによってロック機構をロック状態に切り替えた場合には、常に切替操作レバーによってチャイルドロック機構が非伝達状態となっている。これにより、仮にドアガラスを破られた後にインサイドドアハンドルが開扉操作されても、この開扉操作がロック機構に伝達されることがない。従って、操作性を向上させるべくインサイドドアハンドルの操作によってロック機構をロック状態からアンロック状態に切り替えるように構成したものに適用した場合にも、インサイドドアハンドルの開扉操作によってロック機構がアンロック状態に切り替わることがない。この結果、車両の防盗性を著しく向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るドアロック装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1〜図3は、本発明の実施の形態であるドアロック装置を概念的に示したものである。ここで例示するドアロック装置は、図4に示すように、四輪自動車の車両本体Bにおいて後席右側に配置された前方ヒンジのドアDに設けられるもので、図1に示すように、本体ケース10に装着されたラッチケース21の内部にラッチ機構20を備えている。
【0012】
ラッチ機構20は、図4及び図5に示すように、車両本体Bに設けたストライカSを噛合保持するためのもので、図5に示すように、ラッチ22とラチェット23とを備えて構成してある。
【0013】
ラッチ22は、ラッチケース21に形成したストライカ侵入溝21aよりも上方となる位置に、車両本体Bの前後方向に沿って略水平に延在するラッチ軸24を介して回転可能に配設したものである。このラッチ22には、噛合溝22a、フック部22b及び係止部22cが設けてある。噛合溝22aは、ラッチ22の外周面からラッチ軸24に向けて形成したもので、ストライカSを収容することのできる幅に形成してある。フック部22bは、噛合溝22aを下方に向けて開口させた場合に噛合溝22aよりも室内側に位置する部分である。このフック部22bは、図5の実線で示すように、ラッチ22を最大限反時計回りに回転させた場合にラッチケース21のストライカ侵入溝21aを横切る位置で停止する一方、図5中の二点鎖線で示すように、ラッチ22を最大限時計回りに回転させた場合にストライカ侵入溝21aを開放する位置で停止するように構成してある。係止部22cは、噛合溝22aを下方に向けて開口させた場合に噛合溝22aよりも室外側に位置する部分である。この係止部22cは、図5中の二点鎖線で示すように、ラッチ22を最大限時計回りに回転させた場合にストライカ侵入溝21aを横切り、かつこのストライカ侵入溝21aの奥方(室外側)に向けて漸次上方に傾斜する状態で停止するように構成してある。尚、図には明示していないが、ラッチ22とラッチケース21との間には、図5においてラッチ22を常時時計回りに向けて付勢するラッチバネが設けてある。
【0014】
ラチェット23は、ラッチケース21のストライカ侵入溝21aよりも下方、かつラッチ軸24よりも室内側となる位置に、車両本体Bの前後方向に沿って略水平に延在するラチェット軸25を介して回転可能に配設したものである。このラチェット23には、係合部23a及び作用部23bが設けてある。係合部23aは、ラチェット軸25から室外側に向けて径外方向に延在する部分であり、ラチェット軸25を中心として回転することによりその突出端面を介して上述したラッチ22のフック部22b及び係止部22cに着脱可能に係合することが可能である。作用部23bは、ラチェット軸25から室内側に向けて径外方向に延在する部分である。このラチェット23には、車両前側となる位置にラチェット23とともに一体的となってラチェット軸25の軸心回りに回転するラチェットレバー26が設けてある。ラチェットレバー26は、ラチェット軸25からラチェット23の作用部23bと同一方向に向けて延在した当接部26aを有したものである。尚、図には明示していないが、ラチェット23とラッチケース21との間には、図5においてラチェット23を常時反時計回りに向けて付勢するラチェットバネが設けてある。
【0015】
上記のように構成したラッチ機構20では、図4中の二点鎖線で示すように、ドアDが車両本体Bに対して開成状態にある場合、図5中の二点鎖線で示すように、ラッチ22がストライカ侵入溝21aを開放する位置に配置されることになる。この状態から図4の実線で示すように、ドアDを閉位置に移動させると、車両本体Bに設けたストライカSが、図5に示すように、ラッチケース21のストライカ侵入溝21aに進入し、やがてストライカSがラッチ22の係止部22cに当接することになる。この結果、ラッチ22がラッチバネ(図示せず)の弾性力に抗して図5において反時計回りに回転する。この間、ラチェット23は、ラチェットバネ(図示せず)の弾性力によって係合部23aの突出端面がラッチ22の外周面に摺接することになり、ラッチ22の外周面形状に応じて適宜ラチェット軸25の軸心回りに回転する。上述した状態からさらにドアDを閉方向に移動させると、ストライカ侵入溝21aに対するストライカSの進入量が漸次増大し、やがてラチェット23の係合部23aがラッチ22の噛合溝22aに至り、その後、図5中の実線で示すように、ラッチ22のフック部22bがラチェット23の係合部23aに当接することになるため、ラッチバネ(図示せず)の弾性復元力に抗してラッチ22の時計回りの回転が阻止されることになる。この状態においては、ラッチ22のフック部22bがストライカ侵入溝21aを横切るように配置されるため、フック部22bによってストライカSがストライカ侵入溝21aの奥方(室外側)から離脱する方向へ移動する事態が阻止されるようになり、結局、ドアDが車両本体Bに対して閉じた状態に維持される(ラッチ状態)。
【0016】
一方、上述したラッチ状態からラチェットバネ(図示せず)の弾性力に抗してラチェットレバー26の当接部26aを図5の上方に回転させると、ラッチ22のフック部22bとラチェット23の係合部23aとの当接係合状態が解除され、ラッチ22がラッチバネ(図示せず)の弾性復元力により図5において時計回りに回転する。この結果、図5中の二点鎖線で示すように、ストライカ侵入溝21aが開放され、ストライカSがストライカ侵入溝21aから離脱する方向に移動可能となり、ドアDを車両本体Bに対して開成移動させることができるようになる。
【0017】
また、上記ドアロック装置には、図1に示すように、本体ケース10の内部にオープンレバー11、インサイドハンドルレバー12、ロック機構30が設けてある。
【0018】
オープンレバー11は、図には明示していないが、車両本体Bの前後方向に沿って略水平に延在するオープンレバー軸を介して回転可能に配設したもので、動作端部11a及び受圧部11bを有している。オープンレバー11の動作端部11aは、ラチェットレバー26における当接部26aの下方域に配置してある。オープンレバー11の受圧部11bは、動作端部11aよりも下方に延在した後、上方に向けて湾曲した部分である。このオープンレバー11は、ドアDの外表面に設けたアウトサイドドアハンドルODH(図4参照)が開扉操作された場合に適宜リンクを介して回転し、動作端部11a及び受圧部11bが図1において上方に動作するものである。尚、図には明示していないが、オープンレバー11と本体ケース10との間には、図1において動作端部11a及び受圧部11bを常時下方に向けて付勢するオープンレバーバネが設けてある。
【0019】
インサイドハンドルレバー12は、オープンレバー11よりも車両前方となる部位に、車両本体Bの左右方向に沿って略水平に延在するインサイドレバー軸13を介して揺動可能に配設したもので、作用端部12a及びインハンロック連係部12bを有している。作用端部12aは、インサイドレバー軸13から下方に向けて延在する部分であり、その先端部に適宜リンクを介してインサイドドアハンドルIDH(図4参照)が連係してある。この作用端部12aは、インサイドドアハンドルIDHを開扉操作した場合に、インサイドハンドルレバー12が図1において時計回りに揺動するように構成してある。インハンロック連係部12bは、インサイドレバー軸13から車両後方に向けて延在した幅広部分である。このインハンロック連係部12bには、連係溝12cが設けてある。連係溝12cは、車両後方側に位置する狭幅溝部12caと車両前方側に位置する広幅溝部12cbとを一体に形成したスリット状の開口である。図1からも明らかなように、これら狭幅溝部12caの下縁及び広幅溝部12cbの下縁は、互いに一直線上となり、かつインサイドレバー軸13から径外方向に向けて延在する態様で形成してある。
【0020】
ロック機構30は、アウトサイドドアハンドルODHの開扉操作によるオープンレバー11の回転動作をラッチ機構20に伝達するアンロック状態と、アウトサイドドアハンドルODHの開扉操作によるオープンレバー11の回転動作をラッチ機構20に伝達しないロック状態とに切り替わるように構成したもので、ウォームホイール31、セクタレバー32、リンクレバー33を備えている。
【0021】
ウォームホイール31は、オープンレバー11とインサイドハンドルレバー12との間に位置する部位に、車両本体Bの左右方向に沿って略水平に延在するホイール軸34を介して回転可能に配設したもので、電動モータ(ロックアクチュエータ)35の出力軸35aに固着したウォーム36に歯合している。このウォームホイール31には、同一軸心上に間欠ギアホイール37が固着してある。間欠ギアホイール37は、後述するセクタレバー32の間欠ドリブンギア32bに対して一方向のみの間欠動力伝達手段を構成するものである。尚、図には明示していないが、ウォームホイール31と本体ケース10との間には、ウォームホイール31を所定の中立状態に維持するための中立復帰バネが設けてある。
【0022】
セクタレバー32は、ウォームホイール31よりも上方となる位置に、車両本体Bの左右方向に沿って略水平に延在するセクタレバー軸38を介して回転可能に配設したもので、下方に向けて漸次拡開するセクタ状に形成してある。このセクタレバー32には、連結ピン32a及び間欠ドリブンギア32bが設けてある。連結ピン32aは、セクタレバー32において室内側に位置する端面から車両本体Bの左右方向に沿って略水平に延在した柱状突起である。間欠ドリブンギア32bは、セクタレバー32の円弧状を成す外周面に形成した歯車であり、ウォームホイール31の間欠ギアホイール37に歯合している。
【0023】
図には明示していないが、これらセクタレバー32の間欠ドリブンギア32bとウォームホイール31の間欠ギアホイール37との間に構成される間欠動力伝達手段は、ウォームホイール31を適宜方向に回転させることによってセクタレバー32を任意の方向に揺動させることができる一方、間欠ドリブンギア32bからの間欠ギアホイール37への動力伝達がなく、ウォームホイール31を回転させることなくセクタレバー32を任意の方向に揺動させることができるように構成してある。
【0024】
リンクレバー33は、リンク本体33aの下端部に装着孔33bを有したレバー部材であり、装着孔33bにオープンレバー11の動作端部11aを挿通保持させることにより、動作端部11a及び受圧部11bと共に上下動可能、かつ動作端部11aに対して車両本体Bの左右方向に沿った軸心回りに揺動可能に支承させてある。このリンクレバー33には、セクタ連結部33c及びラチェット駆動部33dが設けてある。セクタ連結部33cは、リンク本体33aにおいて車両前方側となる部位から上方に向けて延在した部分であり、連結用溝孔33eを有している。連結用溝孔33eは、上下方向に沿って延在するスリット状の開口であり、その内部にセクタレバー32の連結ピン32aを移動可能に嵌合支承している。ラチェット駆動部33dは、リンク本体33aに構成した当接係合部分であり、装着孔33bの鉛直上方に配置した場合に、ラチェットレバー26における当接部26aの下端面に対して近接対向する態様で設けてある。
【0025】
また、このリンクレバー33には、ロックレバー部(ロックレバー)33fが設けてある。ロックレバー部33fは、リンク本体33aを装着孔33bの鉛直上方に配置した場合に装着孔33bよりも下方に向けて延在する部分である。このロックレバー部33fには、車両前方側に位置する部位に操作当接面33gが設けてある。操作当接面33gは、リンク本体33aを装着孔33bの鉛直上方に配置した場合にほぼ鉛直に沿って延在するように構成してある。図2に示すように、リンクレバー33のロックレバー部33fは、本体ケース10に設けた操作孔10a及びドアDのパネルDPに設けた操作開口DPOを通じて外部に露出しており、これら操作孔10a及び操作開口DPOから工具を挿入すれば操作当接面33gを押圧操作することが可能である。
【0026】
上記のように構成したロック機構30では、図1に示した状態がアンロック状態であり、リンクレバー33のリンク本体33aが装着孔33bの鉛直上方に配置されるため、ラチェット駆動部33dがラチェットレバー26における当接部26aの下端面に対して近接対向することになる。従って、この状態からアウトサイドドアハンドルODHを開扉操作し、オープンレバー11の回転動作によってリンクレバー33のリンク本体33aが上動すれば、ラチェット駆動部33dがラッチ機構20におけるラチェットレバー26の当接部26aに当接してこれを上動させることになる。この結果、ラッチ機構20がラッチ状態にある場合にもこれが解除されるため、車両本体Bに対してドアDを開成移動させることができるようになる。
【0027】
図1に示したアンロック状態から、電動モータ35の駆動によってウォームホイール31を反時計回りに回転させると、セクタレバー32がセクタレバー軸38を中心として時計回りに揺動することになる。この結果、ロック機構30は、連結ピン32aを介して係合したリンクレバー33が装着孔33bを中心として反時計回りに揺動し、図3に示すロック状態となる。
【0028】
このロック状態では、ラチェット駆動部33dがラチェットレバー26における当接部26aの下端面に対向する位置から逸脱するため、アウトサイドドアハンドルODHを開扉操作し、オープンレバー11の回転動作によってリンクレバー33のリンク本体33aが上動した場合にも、ラチェット駆動部33dがラッチ機構20におけるラチェットレバー26の当接部26aに当接することがない。この結果、ラッチ機構20がラッチ状態にある場合にはこれが維持されるため、車両本体Bに対してドアDが閉位置に維持されることになる。
【0029】
図3に示すロック状態から、電動モータ35の駆動によってウォームホイール31を時計回りに回転させると、セクタレバー32がセクタレバー軸38を中心として反時計回りに揺動することになる。この結果、ロック機構30は、連結ピン32aを介して係合したリンクレバー33が装着孔33bを中心として時計回りに揺動し、再び図1に示したアンロック状態に復帰する。
【0030】
さらに、上記ドアロック装置には、図1に示すように、本体ケース10の内部にチャイルドロック機構40が設けてある。チャイルドロック機構40は、インサイドドアハンドルIDHの開扉操作をロック機構30に伝達する伝達状態と、インサイドドアハンドルIDHの開扉操作をロック機構30に伝達しない非伝達状態とに切り替わるように構成したもので、コネクトレバー41及びチャイルドレバー(切替操作レバー)42を備えている。
【0031】
コネクトレバー41は、インサイドハンドルレバー12とリンクレバー33との間となる部位に、車両本体Bの左右方向に沿って略水平に延在するコネクトレバー軸43を介して揺動可能に配設したもので、伝達ピン収容部41a及び伝達端部41bを有している。伝達ピン収容部41aは、コネクトレバー軸43からインサイドレバー軸13に向けて車両前方に延在した部分であり、ピン収容孔41cを有している。ピン収容孔41cは、伝達ピン収容部41aの延在方向に沿って形成したスリット状の開口である。図1からも明らかなように、伝達ピン収容部41aに形成したピン収容孔41cは、上述したインサイドハンドルレバー12のインハンロック連係部12bに形成した連係溝12cの狭幅溝部12caがインサイドレバー軸13に向けて延在した場合に、この連係溝12cの狭幅溝部12caから広幅溝部12cbに亘る部位に重ね合わさるように構成してある。
【0032】
チャイルドレバー42は、コネクトレバー41に重ね合わせる態様でコネクトレバー41と本体ケース10との間に、車両本体Bの前後方向に沿ってスライド可能に配設してある。このチャイルドレバー42には、スライド溝42a、伝達ピン支承溝42b、手動操作部42dを有している。
【0033】
スライド溝42aは、上述したコネクトレバー41のコネクトレバー軸43が挿通するためのスリット状の開口であり、車両本体Bの前後方向に沿って延設してある。このスライド溝42aの長さは、チャイルドレバー42のスライド量を決定するものであり、後述する作用を具現化するように設定してある。
【0034】
伝達ピン支承溝42bは、スリット状の開口であり、伝達ピン44をスライド可能に支承している。伝達ピン44は、チャイルドレバー42から室外に向けて突設した柱状部材である。この伝達ピン44は、図6に示すように、コネクトレバー41のピン収容孔41cを貫挿した後、その突出端部がインサイドハンドルレバー12の連係溝12cの内部を貫挿している。この伝達ピン44は、図1及び図3に示すように、チャイルドレバー42をスライドさせることにより、コネクトレバー41に形成したピン収容孔41cの車両前方側に位置する端部から車両後方側に位置する端部までの間を移動することが可能である。チャイルドレバー42が前端位置に配置された場合には、図1に示すように、伝達ピン44がインサイドハンドルレバー12に形成した連係溝12cの狭幅溝部12caに位置することになる。これに対してチャイルドレバー42が後端位置に配置された場合には、図2及び図3に示すように、いずれも伝達ピン44が連係溝12cの広幅溝部12cbに配置されることになる。
【0035】
手動操作部42dは、図6に示すように、チャイルドレバー42において車両後方側に位置する端部から室内側に向けて屈曲延在する部分である。この手動操作部42dは、本体ケース10の操作孔10a及びパネルDPの操作開口DPOを通じて外部に突出しており、ドアDの外部からチャイルドレバー42をスライド操作することが可能である。但し、本実施の形態では、図4に示すように、ドアDの内側面であって、しかもドアDを閉位置に配置した場合には塞がれる位置に手動操作部42dを設けるようにしている。
【0036】
また、図1からも明らかなように、手動操作部42dは、チャイルドレバー42が後端位置に配置された場合、本体ケース10の操作孔10a及びパネルDPの操作開口DPOを閉塞する一方、図2及び図3に示すように、チャイルドレバー42が前端位置に配置された場合、本体ケース10の操作孔10a及びパネルDPの操作開口DPOを開放するように構成してある。
【0037】
このチャイルドロック機構40では、図1に示した状態、つまりチャイルドレバー42が後端位置に配置された場合が伝達状態であり、チャイルドレバー42の伝達ピン44がインサイドハンドルレバー12においてインハンロック連係部12bに形成した連係溝12cの狭幅溝部12caに配置される。この状態からインサイドドアハンドルIDHを開扉操作すると、インハンロック連係部12bにおいて狭幅溝部12caの内壁面が伝達ピン44を下方に向けて移動させることになる。伝達ピン44が伝達ピン支承溝42bに沿って下方に移動すると、伝達ピン44が貫挿されたコネクトレバー41が図1において反時計回りに揺動し、その伝達端部41bが上方に移動するため、オープンレバー11の受圧部11bを介してリンクレバー33も上動することになる。従って、ロック機構30がアンロック状態であれば、リンクレバー33がラッチ機構20におけるラチェットレバー26の当接部26aに当接することになり、ラッチ状態を解除することができる。つまり、インサイドドアハンドルIDHの開扉操作によってドアDを開成移動させることができるようになる。
【0038】
これに対してチャイルドレバー42を車両前方側にスライドさせ、図2に示す状態、もしくは図3に示す状態に切り替えると、チャイルドロック機構40が非伝達状態となる。この非伝達状態では、チャイルドレバー42の伝達ピン44がインサイドハンドルレバー12においてインハンロック連係部12bに形成した連係溝12cの広幅溝部12cbに位置されるため、インサイドドアハンドルIDHを開扉操作してもインハンロック連係部12bと伝達ピン44とが当接することはなく、コネクトレバー41が揺動することもない。この結果、ロック機構30のロック/アンロック状態に関わらず、インサイドドアハンドルIDHの開扉操作によってはドアDを開成移動させることができないことになる。
【0039】
上記のようにロック機構30及びチャイルドロック機構40を備えたドアロック装置では、通常の使用時において電動モータ35を駆動すれば、ロック機構30をロック状態とアンロック状態とに容易に切り替えることができる。
【0040】
一方、電動モータ35に不具合が発生したり、図示せぬバッテリの充電電圧が低下する等して電動モータ35が駆動しない場合には、ドアDを開成した状態から手動操作部42dを介してチャイルドレバー42を車両前方側にスライド移動させ、図2に示す状態に配置させれば良い。すなわち、チャイルドレバー42が前端位置に配置されると、チャイルドレバー42の手動操作部42dが本体ケース10の操作孔10a及びパネルDPの操作開口DPOを開放するため、これら操作孔10a及び操作開口DPOから工具を挿入して操作当接面33gを押圧操作すれば、図3に示すように、ロック機構30をロック状態に切り替えられることができるようになる。従って、室内のロック操作部材を省略した場合に上述した状態が発生したとしても、車両の防盗性を確保することができる。
【0041】
この場合、チャイルドレバー42は、ドアDを閉めた場合に塞がれる位置に設けてある。従って、仮に悪意のあるものがウィンドウガラスを破ったとしても、チャイルドレバー42を操作することは困難である。しかも、チャイルドレバー42が前端位置に配置された場合には、チャイルドロック機構40が非伝達状態となる。従って、操作性を向上させるべくインサイドドアハンドルIDHの操作によってロック機構30をロック状態からアンロック状態に切り替えるように構成したものに適用した場合にも、チャイルドレバー42の操作によってロック機構30がロック状態となっていれば、インサイドドアハンドルIDHの開扉操作によってロック機構30がアンロック状態に切り替わることがない。これにより、いわゆるワンモーション機構やダブルアクション機構を適用して操作性を向上させたドアロック装置にあっても、車両の防盗性を著しく向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態であるドアロック装置を示した概念図である。
【図2】図1に示したドアロック装置においてチャイルドロック機構を非伝達状態とした場合の概念図である。
【図3】図1に示したドアロック装置において切替操作レバーをエマージェンシロック位置に移動させた場合の概念図である。
【図4】図1に示したドアロック装置を適用する車両の要部断面平面図である。
【図5】図1に示したドアロック装置に適用するラッチ機構の概念図である。
【図6】図1における VI−VI 線断面図である。
【符号の説明】
【0043】
12 インサイドハンドルレバー
12a 作用端部
12b インハンロック連係部
12c 連係溝
12ca 狭幅溝部
12cb 広幅溝部
13 インサイドレバー軸
26 ラチェットレバー
26a 当接部
30 ロック機構
31 ウォームホイール
32 セクタレバー
32a 連結ピン
32b 間欠ドリブンギア
33 リンクレバー
33a リンク本体
33b 装着孔
33c セクタ連結部
33d ラチェット駆動部
33e 連結用溝孔
33f ロックレバー部
33g 操作当接面
34 ホイール軸
35 電動モータ
35a 出力軸
36 ウォーム
37 間欠ギアホイール
38 セクタレバー軸
40 チャイルドロック機構
41 コネクトレバー
41a 伝達ピン収容部
41b 伝達端部
41c ピン収容孔
42 チャイルドレバー
42a スライド溝
42b 伝達ピン支承溝
42d 手動操作部
43 コネクトレバー軸
44 伝達ピン
B 車両本体
D ドア
DP パネル
DPO 操作開口
IDH インサイドドアハンドル
ODH アウトサイドドアハンドル
S ストライカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に対してドアが閉位置に配置された場合にラッチ状態となってドアの開方向への移動を規制するラッチ機構と、ドアハンドルから前記ラッチ機構に至るまでの間に介在し、アンロック状態においてドアハンドルが開扉操作された場合にこれをラッチ機構に伝達することによりラッチ状態を解除してドアの開方向への移動を許容する一方、ロック状態となった場合にはドアハンドルが開扉操作された場合にもラッチ機構のラッチ状態を維持するロック機構と、前記ロック機構をロック状態とアンロック状態とに切り替えるロックアクチュエータとを備えたドアロック装置において、
室内に配設したインサイドドアハンドルと前記ロック機構との間に介在し、インサイドドアハンドルの開扉操作を前記ロック機構に伝達する伝達状態と、インサイドドアハンドルの開扉操作を前記ロック機構に伝達しない非伝達状態とに切り替え可能に構成したチャイルドロック機構と、
ドアを開成した状態において操作可能、かつドアを閉位置に配置した場合に操作不能となる位置に配設し、伝達位置に配置させた場合に前記チャイルドロック機構を伝達状態とする一方、非伝達位置に配置させた場合に前記チャイルドロック機構を非伝達状態とする切替操作レバーと、
前記切替操作レバーが非伝達位置に配置された場合に操作可能、かつ前記切替操作レバーが伝達位置に配置された場合に操作不能となる態様で配設し、操作した場合に前記ロック機構をロック状態に切り替えるロックレバーと
を備えたことを特徴とするドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−274564(P2008−274564A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116103(P2007−116103)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】