説明

ドア開閉状態切替装置

【課題】より簡素な構成で、往復動の中間に中立位置を比較的簡単に設定することが可能なドア開閉状態切替装置を得る。
【解決手段】可動部7と係合し、可動部7によって往復動方向Mの一方側に押されて移動する第一の押圧部材8bと、可動部7と係合し、可動部7によって往復動方向Mの他方側に押されて移動する第二の押圧部材8cと、第一および第二の押圧部材8b,8cを相反する側に付勢してそれら第一および第二の押圧部材8b,8cに可動部7からの押圧力に対する付勢反力を与える付勢機構としてのコイルスプリング8dと、を設け、コイルスプリング8dによって付勢された第一および第二の押圧部材8b,8cによって可動部7の一部となるスライダ8aの軸8eを挟持することにより、可動部7を、往復動方向Mの一方側の位置と他方側の位置との間となる中間位置で保持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開閉状態切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアの相互に対向する一対の端辺のうち一方を接続して他方を開放する状態と、他方を接続して一方を開放する状態と、が得られるドア開閉状態切替装置が知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−62605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1では、一対の端辺の双方にそれぞれ別個に操作スイッチを設けてあるため、部品点数が増大するという問題があった。
【0004】
一方、一つの操作部を往復動させてその一方側の位置と他方側の位置とで開放状態を切り替えるように構成した場合には、中立位置を設定するのが難しくなる。
【0005】
そこで、本発明は、より簡素な構成で、往復動の中間に中立位置を比較的簡単に設定することが可能なドア開閉状態切替装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明にあっては、開口部分が形成された本体部と、上記本体部に可動支持されて上記開口部分を開閉可能に閉塞するドアと、上記ドアおよび上記本体部のうちいずれか一方に往復動可能に支持された可動部と、上記可動部が往復動方向の一方側に位置する状態と他方側に位置する状態とで上記ドアの本体部に対する接続状態を切り替える接続状態切替機構と、上記ドアおよび上記本体部のうち上記可動部が支持される方に上記可動部と同方向に往復動可能に支持されるとともに、上記可動部と係合し、当該可動部によって上記往復動方向の一方側に押されて移動する第一の押圧部材と、上記ドアおよび上記本体部のうち上記可動部が支持される方に上記可動部と同方向に往復動可能に支持されるとともに、上記可動部と係合し、当該可動部によって上記往復動方向の他方側に押されて移動する第二の押圧部材と、上記第一および第二の押圧部材を相反する側に付勢してそれら第一および第二の押圧部材に上記可動部からの押圧力に対する付勢反力を与える付勢機構と、を備え、上記付勢機構によって付勢された上記第一および第二の押圧部材によって上記可動部の一部を挟持することにより、当該可動部を、上記一方側の位置と上記他方側の位置との間となる中間位置で保持するようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明にあっては、上記ドアは、上記開口部分を閉蓋する状態と、相互に対向する二つの端辺のうち一方側が上記本体部に回動可能に支持されて上記開口部分を他方側に開放する状態と、相互に対向する二つの端辺のうち他方側が上記本体部に回動可能に支持されて上記開口部分を一方側に開放する状態と、を切替可能な両開きドアであり、上記接続状態切替機構は、上記ドアの相互に対向する二つの端辺のうち一方側が上記本体部に接続されて回動可能に支持された状態と当該一方側が上記本体部から離脱した状態とを切替可能な第一の着脱式ヒンジ機構と、上記ドアの相互に対向する二つの端辺のうち他方側が上記本体部に接続されて回動可能に支持された状態と当該他方側が上記本体部から離脱した状態とを切替可能な第二の着脱式ヒンジ機構と、上記可動部が往復動方向の一方側に位置する状態では上記第一および第二の着脱式ヒンジ機構のうち一方を接続状態として他方を離脱状態とし、上記可動部が往復動方向の他方側に位置する状態では上記第一および第二の着脱式ヒンジ機構のうち他方を接続状態として一方を離脱状態とし、上記可動部が上記中間位置に位置する状態では上記第一および第二の着脱式ヒンジ機構の双方を接続状態とする操作機構と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明にあっては、上記ドアを二つ備え、上記接続状態切替機構は、上記二つのドアのうち一方を本体部にロックする第一のロック機構と、上記二つのドアのうち他方を本体部にロックする第二のロック機構と、上記可動部が上記中間位置に位置する状態では上記第一および第二のロック機構の双方をロック状態とし、上記可動部が往復動方向の一方側に位置する状態と他方側に位置する状態とで、上記第一および第二のロック機構のうち少なくともいずれか一方のロックを解除して二つのドアの異なる開放状態を得る第二の操作機構と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、往復動する可動部が一方側に位置する状態と他方側に位置する状態とで、ドアを異なるモードで開放し、可動部が往復動区間の中間に位置する状態でドアを閉塞する構成とすることで、二つのドア開放モード(および閉塞モード)について可動部を共用することができるため、上記従来装置のように可動部や操作部を複数設けた場合に比べて、ドア開閉状態切替装置を比較的簡素な構成として得ることができる。また、付勢機構によって相反する方向に付勢される第一および第二の押圧部材によって可動部を挟持することで、可動部の中立位置を比較的簡単に設定することが可能となる。
【0010】
請求項2の発明によれば、両開きドアを比較的簡素な構成のドア開閉状態切替装置によって得ることができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、二つのドアの異なる開放モードを比較的簡素な構成のドア開閉状態切替装置によって得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の複数の実施形態には同様の構成要素が含まれている。よって、以下ではそれら同様の構成要素については共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)図1は、本実施形態にかかるドア開閉状態切替装置を装備したコンソールボックスの分解斜視図、図2は、コンソールボックスの斜視図であって、ドアの閉塞状態を示す図、図3は、コンソールボックスの斜視図であって、ドアが一方側で回動可能に支持され他方側に開放された状態を示す図、図4は、コンソールボックスの斜視図であって、ドアが他方側で回動可能に支持され一方側に開放された状態を示す図、図5は、ドア開閉状態切替装置の内部構成の一部の分解斜視図、図6は、ドアが閉塞された状態でのドアの側面図(一部断面図)、図7は、図6に対応するドアの内部構成を示す平面図、図8は、ドアが他方側に開放される直前の状態でのドアの側面図(一部断面図)、図9は、図8に対応するドアの内部構成を示す平面図、図10は、ドアが一方側に開放される直前の状態でのドアの側面図(一部断面図)、図11は、図10に対応するドアの内部構成を示す平面図である。なお、図中、可動部の往復動方向をMで示す。
【0014】
本実施形態にかかるドア開閉状態切替装置5は、車室内に装備されるコンソールボックス1に装備されている。
【0015】
コンソールボックス1は、上方に向けて開口する開口部分2aが形成されて小物や、ボトル、缶等の容器として構成される略箱状の本体部2と、本体部2に可動支持されて開口部分2aを開閉可能に閉塞するドア3と、を備えている。
【0016】
ドア3は、図2〜図4に示すように、平面視で略矩形状に形成されており、閉塞された状態と(図2)、相互に対向する一対の端辺3a,3bのうち一方側(図2〜図4の右上側)の端辺3aが本体部2に回動可能に支持されて開口部分2aを他方側に開放する状態と(図3)、他方側(図2〜図4の左下側)の端辺3bが本体部2に回動可能に支持されて開口部分2aを一方側に開放する状態と(図4)、を切替可能な、所謂両開きドアとして構成されている。
【0017】
本実施形態では、ドア3の一方側(図2〜図4の右上側)および他方側の双方には、それぞれ一対ずつ、背反する方向(側外方)に突没可能に突出するヒンジピン3cが設けられており(ただし、図2〜図4では一対のヒンジピン3cうち手前側にあるもののみを図示)、本体部2の開口部分2aの四隅には上方に向けて突出する支持片2bが形成されるとともにこの支持片2bに略円形の貫通孔2cが形成されている。そして、突出したヒンジピン3cが対応する貫通孔2cに挿通されて支持片2bに回動可能に支持されることで、ドア3のヒンジが構成されるようになっている。
【0018】
そして、本実施形態では、使用者が、図2に示す閉塞状態で、ドア3の一方側および他方側の端辺3a,3bから露出する操作子4を押すことで、ドア3のどちら側を開放するか(すなわちドア3の開放状態)を選択できるようになっている。すなわち、図4の閉塞状態では、四つのヒンジピン3cの全てが突出して対応する貫通孔2cに挿通されている。そして、この状態で、他方側(図2の左下側)の操作子4を一方側(図2の右上側)に向けて押し込むと、四つのヒンジピン3cのうち他方側(図2の左下側)の二つのヒンジピン3cが没入してこれらヒンジピン3cと支持片2bとの係合が解除されてドア3の他方側を開放できるようになる。逆に、一方側(図4の右上側)の操作子4を他方側(図2の左下側)に向けて押し込むと、四つのヒンジピン3cのうち一方側(図4の右上側)の二つのヒンジピン3cが没入してこれらヒンジピン3cと支持片2bとの係合が解除されてドア3の一方側を開放できるようになる。なお、本実施形態では、ドア3を手動で持ち上げて開放するが、コイルスプリングその他の付勢機構を装備しておき、ヒンジピン3cと支持片2bとの係合が解除されると付勢機構によってドア3が跳ね上げられて開放されるように構成してもよい。また、操作子4は、押し込み操作のみならず引っ張り操作も有効に構成してもよいし、他の方向に動かすように構成してもよい。
【0019】
上述したドア3の開閉状態の切り替えは、ドア開閉状態切替装置5によって行われる。本実施形態では、ドア開閉状態切替装置5の主たる構成要素をドア3側に装備してある。
【0020】
図1に示すように、ドア3は、ロワケース6Lとアッパケース6Uとを突き合わせて扁平な略矩形の箱状に形成されたケース6を備えており、このケース6内に、操作子4と連動して上記一方側の位置と他方側の位置との間で往復動可能に支持された略プレート状の可動部7、往復動方向Mのいずれか一方に移動した可動部7を中立位置へ復帰させる復帰機構8、およびヒンジピン3cを突没可能に保持してドア3の本体部2に対する接続と離脱とを切り替える第一および第二の着脱式ヒンジ機構9A,9Bが設けられている。なお、本実施形態では、操作子4は可動部7に一体化されているが、操作子4によって可動部7を動かすことができればよく、一体化されていることは必須ではない。
【0021】
第一および第二の着脱式ヒンジ機構9A,9Bは、それぞれロワケース6Lから下面側に略矩形箱状に膨出形成された凹部6a内に収容されている。凹部6aは、可動部7の往復動方向Mの一方側と他方側との二箇所に設けられており、一方側の凹部6aに収容された部品(二つのスライダ9aとコイルスプリング9b)によって第一の着脱式ヒンジ機構9Aが構成され、他方側の凹部6aに収容された部品(二つのスライダ9aとコイルスプリング9b)によって第二の着脱式ヒンジ機構9Bが構成されている。
【0022】
凹部6aは、可動部7の往復動方向Mと直交する方向に略沿って伸びており、この凹部6a内に、ヒンジの軸となるヒンジピン3cの形成されたスライダ9aが往復動可能に収容されている。凹部6aは、スライダ9aを可動部7の往復動方向Mと直交する方向に移動案内するガイドとして機能している。スライダ9aは各凹部6aにつき二つ収容されている。凹部6a内で二つのスライダ9aの間には圧縮ばねとして機能するコイルスプリング9bが介装されており、このコイルスプリング9bによって、各スライダ9aは凹部6a内で長手方向端部へ向けて付勢されている。また、ヒンジピン3cは、凹部6aの長手方向に沿って伸びるとともに、凹部6aの端壁6bには、ヒンジピン3cを挿通する貫通孔6cが形成されている。よって、ヒンジピン3cはスライダ9aの凹部6a内での位置に応じてこの貫通孔6cから突没することになる。
【0023】
スライダ9aには、可動部7側に向けて突出する位置決めピン10aが設けられている。一方、可動部7には、位置決めピン10aを挿通する長穴10bが形成されている。長穴10bは、可動部7の往復動方向Mの中央部側では凹部6aの長手方向端部側に位置し、可動部7の往復動方向Mの端部側に向かうにつれて凹部6aの長手方向中央部側に向けて傾斜している。したがって、可動部7の移動に応じて、位置決めピン10aが長穴10bにガイドされて移動し、これにより、スライダ9aが移動し、ヒンジピン3cが突没することになる。すなわち、本実施形態では、可動部7のうち長穴10bの形成された部分と位置決めピン10aとによって、第一および第二の着脱式ヒンジ機構9A,9Bの本体部2への接続状態を切り替える操作機構10が構成されている。そして、これら第一および第二の着脱式ヒンジ機構9A,9Bおよび操作機構10によって、接続状態切替機構20が構成されている。
【0024】
図5に示すように、可動部7を中立位置に復帰させる復帰機構8は、可動部7にねじ11等で一体化されて可動部7の一部となるスライダ8aと、スライダ8aと係合し、当該スライダ8aによって可動部7の往復動方向Mの一方側(図5の右上側)に向けて押されて移動する第一の押圧部材8bと、スライダ8aと係合し、当該スライダ8aによって可動部7の往復動方向Mの他方側(図5の左下側)に向けて押されて移動する第二の押圧部材8cとを備えている。さらに、復帰機構8は、第一の押圧部材8bを他方側(図5の左下側)に向けて付勢するとともに第二の押圧部材8cを一方側(図5の右上側)に向けて付勢するコイルスプリング8dを備え、このコイルスプリング8dによって、第一および第二の押圧部材8b,8cに可動部7からの押圧力に対する付勢反力を与えている。
【0025】
スライダ8aには、往復動方向Mと直交する方向に沿って相反する方向に伸びる一対の軸8e,8eが形成されている。一方、第一および第二の押圧部材8b,8cには、往復動方向Mと直交する方向に対向する一対の側壁8f,8fが設けられており、これら側壁8f,8fに往復動方向Mに略沿って伸びる長穴8g,8gが形成されている。側壁8f,8f間の幅は、第一の押圧部材8bの方を第二の押圧部材8cより大きくして、第二の押圧部材8cの側壁8f,8fの外側に第一の押圧部材8bの側壁8f,8fを重ね合わせられるようにして、対応する長穴8g同士が重なり合い、その重なり合った長穴8gに、スライダ8aの軸8eを挿通させて、復帰機構8を組み立てられるようにしてある(図1、図6〜図11参照)。なお、側壁8f,8fは、往復動方向Mの端部側で底壁8hによって接続され、底壁8hには端壁8iが突設されている。
【0026】
さらに、第一の押圧部材8bの端壁8iには、可動部7の往復動方向Mに沿って伸びる棒状部8jが突設され、第二の押圧部材8cの端壁8iには、その棒状部8jを挿通させる貫通孔8kが形成されている。コイルスプリング8dは、この棒状部8jに外装させた状態で組み付けられる。また、棒状部8jと貫通孔8kとによって、第一および第二の押圧部材8b,8c同士が相互にガイドされるようになっている。
【0027】
このようにしてアセンブリされた復帰機構8は、ロワケース6Lの内面上に略矩形環状に突設された包囲壁6d内に緩挿されている。この包囲壁6dは、第一および第二の押圧部材8b,8cを往復動方向Mに移動案内するガイドとなっている。
【0028】
上記構成のドア開閉状態切替装置5の動作について、図6〜図11を参照しながら説明する。
【0029】
図6および図7は、ドア3の閉塞状態を示している。この状態では、上述した復帰機構8の作用によって、可動部7は往復動方向M(図6および図7の左右方向)の中間位置にある。すなわち、可動部7に対して操作子4を介して使用者による操作力が印加されない状態では、第一および第二の押圧部材8b,8cは、コイルスプリング8dの圧縮反力によって、往復動方向Mに相互に離間する。すると、可動部7と一体化されて当該可動部7の一部となるスライダ8aの軸8eは、第一の押圧部材8bの長穴8gの長手方向一方側(右側)の縁8mと、第二の押圧部材8bの長穴8gの長手方向他方側(左側)の縁8nと、で挟持されることになる。さらに、図6および図7に示すように、この状態では、第一および第二の押圧部材8b,8cが、ロワケース6Lの包囲壁6d(の往復動方向Mの端壁間)内に丁度収容されるようになっている。したがって、ロワケース6Lに対して、第一および第二の押圧部材8b,8cの位置が定まり、これら第一および第二の押圧部材8b,8cによって挟持されたスライダ8aの軸8eの位置、すなわち可動部7の往復動方向Mの中間位置が、ロワケース6Lに対して規定されることになる。なお、長穴8gの縁8m,8nで軸8eを挟持する部分や、包囲壁6dの端壁と第一または第二の押圧部材8b,8cとの間等に、がたつきを吸収するシムを挟みこむようにしてもよい。この場合、シムは、可撓性材料(例えばエラストマ等の弾性材料やスポンジ等の発泡性材料等)で構成しておくのが好適である。
【0030】
図8および図9は、ドア3が他方側(図8および図9の左側)に開放される直前の状態を示している。この状態では、可動部7は、操作子4を介して使用者から印加された往復動方向Mの一方側(図8および図9の右側)へ向かう操作力Fによって、当該往復動方向Mの一方側へ押し込まれる。すると、図9に示すように、可動部7に形成された長穴10bにガイドされて、第二の着脱式ヒンジ機構9Bの位置決めピン10a,10aが凹部6aの長手方向(図9の上下方向)の中央部側へ移動し、これにより、第二の着脱式ヒンジ機構9Bのスライダ9a、ひいてはそのヒンジピン3c、すなわちドア3の他方側(図8および図9の左側)のヒンジピン3cがドア3の内部側に没入し、支持片2bとの係合が解除される。また、第一の着脱式ヒンジ機構9Aの位置決めピン10a,10aは、凹部6aの長手方向の端部側に位置したままであるため、支持片2bに係合(接続)されたままである。したがって、この状態では、他方側に位置する第二の着脱式ヒンジ機構9Bではヒンジピン3cと支持片2bとの係合が解除され、他方側に位置する第一の着脱式ヒンジ機構9Aではヒンジピン3cと支持片2bとが接続されたままとなるため、使用者は、ドア3の他方側の端辺3bを引き上げることで、開口部分2aを他方側に開放することができる。
【0031】
また、図10および図11は、ドア3が一方側(図10および図11の右側)に開放される直前の状態を示している。この状態では、可動部7は、操作子4を介して使用者から印加された往復動方向Mの他方側(図10および図11の左側)へ向かう操作力Fによって、当該往復動方向Mの他方側へ押し込まれる。すると、上記図8および図9に説明したのと同様の動作によって、一方側(図10および図11の右側)に位置する第一の着脱式ヒンジ機構9Aではヒンジピン3cと支持片2bとの係合が解除され、他方側に位置する第二の着脱式ヒンジ機構9Bではヒンジピン3cと支持片2bとが接続されたままとなるため、使用者は、ドア3の一方側の端辺3bを引き上げることで、開口部分2aを一方側に開放することができる。
【0032】
以上、説明したように、本実施形態では、ドア開閉状態切替装置5に、可動部7が往復動方向Mの一方側に位置する状態と他方側に位置する状態とでドア3の開閉状態を切り替える接続状態切替機構20を設け、さらに、ドア3および本体部2のうち可動部7が支持される方に可動部7と同方向に往復動可能に支持されるとともに、可動部7と係合し、当該可動部7によって往復動方向Mの一方側に押されて移動する第一の押圧部材8bと、ドア3および本体部2のうち可動部7が支持される方に可動部7と同方向に往復動可能に支持されるとともに、可動部7と係合し、当該可動部7によって往復動方向Mの他方側に押されて移動する第二の押圧部材8cと、第一および第二の押圧部材8b,8cを相反する側に付勢してそれら第一および第二の押圧部材8b,8cに可動部7からの押圧力に対する付勢反力を与える付勢機構としてのコイルスプリング8dと、を設け、当該コイルスプリング8dによって付勢された第一および第二の押圧部材8b,8cによって可動部7の一部となるスライダ8aの軸8eを挟持することにより、当該可動部7を、一方側の位置と他方側の位置との間となる中間位置で保持するようにした。
【0033】
よって、往復動する可動部7が一方側に位置する状態と他方側に位置する状態とで、ドアを異なるモードで開放し、可動部7が往復動区間の中間に位置する状態でドア3を閉塞する構成とすることで、二つのドア開放モード(および閉塞モード)について可動部7を共用することができるため、上記従来装置のように可動部7や操作子4を複数設けた場合に比べて、ドア開閉状態切替装置5を比較的簡素な構成として得ることができる。
【0034】
また、付勢機構としてのコイルスプリング8dによって相反する方向に付勢される第一および第二の押圧部材8b,8cによって可動部7を挟持することで、可動部7の中立位置を比較的簡単に設定することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態では、ドア3は、両開きドアであり、接続状態切替機構20を、ドア3の端辺3aの側が本体部2に接続されて回動可能に支持された状態と当該端辺3aの側が本体部2から離脱した状態とを切替可能な第一の着脱式ヒンジ機構9Aと、ドア3の端辺3bの側が本体部2に接続されて回動可能に支持された状態と当該端辺3bの側が本体部2から離脱した状態とを切替可能な第二の着脱式ヒンジ機構9Bと、可動部7が往復動方向Mの一方側に位置する状態では第一および第二の着脱式ヒンジ機構9A,9Bのうち一方を接続状態として他方を離脱状態とし、可動部7が往復動方向Mの他方側に位置する状態では第一および第二の着脱式ヒンジ機構9A,9Bのうち他方を接続状態として一方を離脱状態とし、可動部7が中間位置に位置する状態では前記第一および第二の着脱式ヒンジ機構9A,9Bの双方を接続状態とする操作機構10と、を有するものとした。
【0036】
よって、両開きドアを比較的簡素な構成のドア開閉状態切替装置5によって得ることができる。
【0037】
(第2実施形態)図12は、本実施形態にかかるコンソールボックスの斜視図であって、二つのドアがともに閉塞された状態を示す図、図13は、ドア開閉状態切替装置の一部を示す分解斜視図、図14は、二つのドアがともに閉塞された状態でのドアの側面図(一部断面図)、図15は、他方側のドアのみが開放される直前の状態でのドアの側面図(一部断面図)、図16は、二つのドアがともに開放される直前の状態でのドアの側面図(一部断面図)である。なお、図中可動部の往復動方向をMで示すとともに、往復動方向Mの一方および他方の定義を上記第1実施形態と同じにする。
【0038】
本実施形態にかかるコンソールボックス1Aは、本体部2A上に、観音開きとなる二つのドア3A,3Bを備えている。操作子4Aは、二つのドア3A,3Bのうち、可動部7Aの往復動方向Mの他方側(図12の左下側)のドア3Aの当該他方側に露出しており、上下に操作するものとして構成されている。ドア3Aは本体部2Aの収容室2dを上方から塞ぎ、ドア3Bは収容室2eを上方から塞いでいる。
【0039】
ドア開閉状態切替装置5Aは、二つのドア3A,3Bのうち他方側のドア3Aを本体部2Aにロックする第一のロック機構13Aと、一方側のドア3Bを本体部2Aにロックする第二のロック機構13Bとを備えている。
【0040】
このうち、第一のロック機構13Aは、上記第1実施形態にかかる第一の着脱式ヒンジ機構9Aと同様の構成となっている。すなわち、往復動方向Mと直交する方向の両端側外方に向けてヒンジピン3cを進退移動させることで、当該ヒンジピン3cが本体部2Aに形成した支持片2b(図示せず)の貫通孔2c(図示せず)に挿通されたロック状態と、貫通孔2cから離脱したロック解除状態とが切り替わるように構成されている。
【0041】
第二のロック機構13Bは、往復動方向Mに進退可能にドア3Bに支持されたラッチ13aを備えており、ラッチ13aが他方側に位置して爪13bが本体部2Aに形成された係合孔2fに挿入された状態でロック状態となり、爪13bが係合孔2fから離脱した状態でロック解除状態となる。ラッチ13aは、付勢機構としてのコイルスプリング13cによって、ドア3Bに形成された貫通孔3eからドア3A側に突出している。一方、可動部7Aのドア3B側の端部には突起10cが設けられ、この突起10cがドア3Aに形成された貫通孔3dからドア3Bに対して突没するようになっている。
【0042】
また、本実施形態では、ドア3Aは図示しないコイルスプリング等の付勢機構によって回動軸12a回りで開放方向(図14〜図16では反時計回り方向)に付勢されるとともに、ドア3Bは図示しないコイルスプリング等の付勢機構によって回動軸12b回りで開放方向(図14〜図16では時計回り方向)に付勢されている。よって、第一のロック機構13Aのロックが解除されるとドア3Aは付勢機構の付勢力によって自動的に開放され、第二のロック機構13Bのロックが解除されるとドア3Bは付勢機構の付勢力によって自動的に開放される。
【0043】
操作子4Aは、ドア3Aに、回動軸4a回りに回動可能に支持されている。操作子4Aの一方側(奥側)には突起部4bが形成され、当該突起部4bが可動部7Aのスリット7aに係合されている。そして、図15に示すように、操作子4Aの他方側(露出側)を下方に動かすと、当該操作子4Aが回動軸4a回りで図14〜図16の反時計回り方向に回動して、突起部4bおよび可動部7Aが他方側(図14〜図16の左側)に移動し、図16に示すように、操作子4Aの他方側を上方に動かすと、当該操作子4Aが回動軸4a回りで図14〜図16の時計回り方向に回動して、突起部4bおよび可動部7Aが一方側(図14〜図16の右側)に移動するようになっている。
【0044】
可動部7Aは、本実施形態でも略プレート状に形成されており、ねじ11によって復帰機構8のスライダ8aに固定されている。復帰機構8は、上記第1実施形態のものと全く同様に構成してある。
【0045】
ドア3Aのロックおよびロック解除は、上述したように、第1実施形態にかかる第一の着脱式ヒンジ機構9Aと同様に構成された第一のロック機構13Aによって切り替わるようになっている。この切り替えは、上記第1実施形態と同様に、ピン10aと長穴10bとによって行われるのであるが、本実施形態では、長穴10bを、図13に示すように、可動部7Aの往復動方向Mの両端側で、往復動方向Mと直交する方向の中央部側へ向かうように形成してある。したがって、可動部7Aが往復動方向Mの一方側に位置するときと、他方側に位置するときとの両方で、ヒンジピン3cが没入し、ドア3Aが開放されることになる。一方、ドア3Bは、可動部7Aが一方側(図14〜図16の右側)に移動したときにのみ、突起10cに押されたラッチ13aの爪13bが係合孔2fから離脱して、ロックが解除されるようになっている。
【0046】
また、操作子4Aに操作力Fが加わらない状態では、上記第1実施形態と同様の復帰機構8によって、可動部7Aが往復動方向Mの中間位置に保持され、この状態では、第一および第二のロック機構13A,13Bともにロック状態となる。
【0047】
したがって、本実施形態では、図15に示すように、使用者が操作子4Aの露出部分を下方に動かすと、ドア3Aのみが開放され、使用者が操作子4Aの露出部分を上方に動かすと、ドア3A,3Bの双方が開放されることになる。かかる二つのドア3A,3Bの異なる開放状態は、ピン10a,長穴10b,突起10cによって得られており、本実施形態では、これらピン10a,長穴10b,および突起10cが、第二の操作機構10Aを構成している。そして、この第二の操作機構10Aと、第一および第二のロック機構13A,13Bとによって、接続状態切替機構20Aが構成されている。なお、上記構成はあくまでも一例にすぎず、二つのドア3A,3Bについて、操作子4Aの位置に応じてどのような開放状態を得るかは、適宜に変更可能である。
【0048】
以上、説明したように、本実施形態では、二つのドア3A,3Bを設け、接続状態切替機構20Aを、ドア3Aを本体部2Aにロックする第一のロック機構13Aと、ドア3Bを本体部2Aにロックする第二のロック機構13Bと、可動部7Aが中間位置に位置する状態では第一および第二のロック機構13A,13Bの双方をロック状態とし、可動部7Aが往復動方向Mの一方側に位置する状態と他方側に位置する状態とで、第一および第二のロック機構13A,13Bのうち少なくともいずれか一方のロックを解除して二つのドア3A,3Bの異なる開放状態を得る第二の操作機構10Aと、を有するものとした。よって、本実施形態によれば、二つのドア3A,3Bの異なる開放モードを比較的簡素な構成のドア開閉状態切替装置5Aによって得ることができる。また、本実施形態でも、復帰機構8によって、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、ドア開閉状態切替装置は、本体部側に装備してもよいし、本体部の開口部分の開放方向や、ドアの開閉方向、開閉方式等も上記実施形態には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるドア開閉状態切替装置を装備したコンソールボックスの分解斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態にかかるドア開閉状態切替装置を装備したコンソールボックスの斜視図であって、ドアの閉塞状態を示す図である。
【図3】本発明の第一実施形態にかかるドア開閉状態切替装置を装備したコンソールボックスの斜視図であって、ドアが一方側で回動可能に支持され他方側に開放された状態を示す図である。
【図4】本発明の第一実施形態にかかるドア開閉状態切替装置を装備したコンソールボックスの斜視図であって、ドアが他方側で回動可能に支持され一方側に開放された状態を示す図である。
【図5】本発明の第一実施形態にかかるドア開閉状態切替装置の内部構成の一部の分解斜視図である。
【図6】本発明の第一実施形態にかかるドア開閉状態切替装置が装備されたコンソールボックスのドアの閉塞された状態での側面図(一部断面図)である。
【図7】図6に対応するドアの内部構成を示す平面図である。
【図8】本発明の第一実施形態にかかるドア開閉状態切替装置が装備されたコンソールボックスのドアの他方側に開放される直前の状態での側面図(一部断面図)である。
【図9】図8に対応するドアの内部構成を示す平面図である。
【図10】本発明の第一実施形態にかかるドア開閉状態切替装置が装備されたコンソールボックスのドアの一方側に開放される直前の状態での側面図(一部断面図)である。
【図11】図10に対応するドアの内部構成を示す平面図である。
【図12】本発明の第二実施形態にかかるドア開閉状態切替装置を装備したコンソールボックスの斜視図であって、二つのドアがともに閉塞された状態を示す図である。
【図13】本発明の第二実施形態にかかるドア開閉状態切替装置の一部を示す分解斜視図である。
【図14】本発明の第二実施形態にかかるドア開閉状態切替装置を装備したコンソールボックスの二つのドアがともに閉塞された状態でのドアの側面図(一部断面図)である。
【図15】本発明の第二実施形態にかかるドア開閉状態切替装置を装備したコンソールボックスの二つのドアのうち一つのドアのみが開放される直前の状態でのドアの側面図(一部断面図)である。
【図16】本発明の第二実施形態にかかるドア開閉状態切替装置を装備したコンソールボックスの二つのドアがともに開放される直前の状態でのドアの側面図(一部断面図)である。
【符号の説明】
【0051】
2,2A 本体部
2a 開口部分
3,3A,3B ドア
3a,3b 端辺
5,5A ドア開閉状態切替装置
7,7A 可動部
8b 第一の押圧部材
8c 第二の押圧部材
8d コイルスプリング(付勢機構)
9A 第一の着脱式ヒンジ機構
9B 第二の着脱式ヒンジ機構
10 操作機構
10A 第二の操作機構
13A 第一のロック機構
13B 第二のロック機構
20,20A 接続状態切替機構
M 往復動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部分が形成された本体部と、
前記本体部に可動支持されて前記開口部分を開閉可能に閉塞するドアと、
前記ドアおよび前記本体部のうちいずれか一方に往復動可能に支持された可動部と、
前記可動部が往復動方向の一方側に位置する状態と他方側に位置する状態とで前記ドアの本体部に対する接続状態を切り替える接続状態切替機構と、
前記ドアおよび前記本体部のうち前記可動部が支持される方に前記可動部と同方向に往復動可能に支持されるとともに、前記可動部と係合し、当該可動部によって前記往復動方向の一方側に押されて移動する第一の押圧部材と、
前記ドアおよび前記本体部のうち前記可動部が支持される方に前記可動部と同方向に往復動可能に支持されるとともに、前記可動部と係合し、当該可動部によって前記往復動方向の他方側に押されて移動する第二の押圧部材と、
前記第一および第二の押圧部材を相反する側に付勢してそれら第一および第二の押圧部材に前記可動部からの押圧力に対する付勢反力を与える付勢機構と、
を備え、
前記付勢機構によって付勢された前記第一および第二の押圧部材によって前記可動部の一部を挟持することにより、当該可動部を、前記一方側の位置と前記他方側の位置との間となる中間位置で保持するようにしたことを特徴とするドア開閉状態切替装置。
【請求項2】
前記ドアは、
前記開口部分を閉蓋する状態と、相互に対向する二つの端辺のうち一方側が前記本体部に回動可能に支持されて前記開口部分を他方側に開放する状態と、相互に対向する二つの端辺のうち他方側が前記本体部に回動可能に支持されて前記開口部分を一方側に開放する状態と、を切替可能な両開きドアであり、
前記接続状態切替機構は、
前記ドアの相互に対向する二つの端辺のうち一方側が前記本体部に接続されて回動可能に支持された状態と当該一方側が前記本体部から離脱した状態とを切替可能な第一の着脱式ヒンジ機構と、
前記ドアの相互に対向する二つの端辺のうち他方側が前記本体部に接続されて回動可能に支持された状態と当該他方側が前記本体部から離脱した状態とを切替可能な第二の着脱式ヒンジ機構と、
前記可動部が往復動方向の一方側に位置する状態では前記第一および第二の着脱式ヒンジ機構のうち一方を接続状態として他方を離脱状態とし、前記可動部が往復動方向の他方側に位置する状態では前記第一および第二の着脱式ヒンジ機構のうち他方を接続状態として一方を離脱状態とし、前記可動部が前記中間位置に位置する状態では前記第一および第二の着脱式ヒンジ機構の双方を接続状態とする操作機構と、を有することを特徴とする請求項1に記載のドア開閉状態切替装置。
【請求項3】
前記ドアを二つ備え、
前記接続状態切替機構は、
前記二つのドアのうち一方を本体部にロックする第一のロック機構と、
前記二つのドアのうち他方を本体部にロックする第二のロック機構と、
前記可動部が前記中間位置に位置する状態では前記第一および第二のロック機構の双方をロック状態とし、前記可動部が往復動方向の一方側に位置する状態と他方側に位置する状態とで、前記第一および第二のロック機構のうち少なくともいずれか一方のロックを解除して二つのドアの異なる開放状態を得る第二の操作機構と、を有することを特徴とする請求項1に記載のドア開閉状態切替装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−143514(P2010−143514A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325280(P2008−325280)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】