説明

ドキュメント転送装置

【課題】通信装置に対してドキュメントを転送するドキュメント転送装置において、送信可能なドキュメントの数が多くなっても、通信装置の使用者にかかる負担が必ずしも大きくならないようにする。
【解決手段】電子ペン2と、EPROM13と、CPU16とを備えるドキュメント転送装置10を提供する。CPU16は、EPROM13に記憶された複数のドキュメントのタイトルをドキュメント毎に表示し、電子ペン2の操作内容に基づいて、複数のドキュメントのタイトルのうちの一又は複数を選択し、選択した一又は複数のタイトルを通信装置20へ送信する。送信された一又は複数のタイトルは、通信装置20で表示される。表示された一又は複数の識別情報のうち、通信装置20の使用者に指定されたタイトルを受信すると、CPU16は、受信したタイトルのドキュメントを通信装置20に返信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドキュメントの転送に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ドキュメントは、一又は複数のファイルで構成される。ドキュメントの転送は、ドキュメントを構成する総てのファイルを転送することによって行われる。ファイルを転送するシステムとしては、Bluetooth(登録商標)のFTP(File Transfer Profile)を用いるシステムが知られている。このシステムでは、送信側の通信装置がサービス提供用のFTPを、受信側の通信装置がサービス利用用のFTPを用いる。
【0003】
具体的には、受信側の通信装置は、まず、送信側の通信装置の特定のフォルダ内の総てのファイル(送信可能なファイル)のファイル名を受信する。次に、受信側の通信装置は、受信したファイル名を表示し、表示したファイル名のうち、その使用者に指定されたファイル名を選択する。次に、受信側の通信装置は、選択したファイル名を送信側の通信装置へ送信することにより、選択したファイル名のファイルを受信する。
【0004】
一方、ファイルの転送に要する時間を短縮する技術としては、特許文献1に記載の技術が挙げられる。特許文献1には、サーバーから端末へファイルをダウンロードするシステムが記載されている。このシステムでは、ダウンロードすべきファイルを指定するダウンロードファイルリストがサーバーから端末へ転送される。端末は、ダウンロードファイルリストに指定されたファイルのうち、未ダウンロードのファイルのみをサーバーからダウンロードする。つまり、このシステムによれば、重複ダウンロードが排除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−316721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、FTPを用いる従来のシステムでは、受信側の通信装置において、送信可能なファイルのファイル名が表示される。この際、受信側の通信装置の画面の広さに対して送信可能なファイルの数が多い場合には、これらのファイルのファイル名は、一斉に表示されずに、画面の切り替えやスクロール表示等の処理によって逐次表示される。つまり、ファイル名の一覧性が低下してしまう。
また、画面の切り替えやスクロール表示等の処理は、人の指示に従って行われるから、受信側の通信装置の使用者が行うべき操作が繁雑となってしまう。
そもそも、受信側の通信装置の画面が十分に広く、画面の切り替えやスクロール表示等の処理が不要であっても、送信可能なファイルの数が多くなれば、受信側の通信装置において多くのファイル名が表示されるから、表示されたファイル名から使用者が所望のファイル名を見つけ出す作業が難しくなってしまう。
【0007】
このように、FTPを用いる従来のシステムでは、送信可能なファイル数が多くなると、受信側の通信装置の使用者にかかる負担が必ず大きくなるという問題がある。したがって、このシステムを用いてドキュメントを転送する場合、送信可能なドキュメント数が多くなると、受信側の通信装置の使用者にかかる負担が必ず大きくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、送信可能なドキュメントの数が多くなっても、受信側の通信装置の使用者にかかる負担が必ずしも大きくならないドキュメント転送装置を提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るドキュメント転送装置は、操作部と、複数のドキュメントを記憶する記憶部と、前記複数のドキュメントを個々に識別する識別情報を前記ドキュメント毎に表示し、前記操作部の操作内容に基づいて、前記複数のドキュメントの識別情報のうちの一又は複数を選択する選択部と、前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報を、外部の通信装置へ送信する通知部と、送信した前記一又は複数の識別情報は前記外部の通信装置で表示され、表示された前記一又は複数の識別情報のうち前記外部の通信装置において使用者に指定された識別情報を受信すると、受信した識別情報で識別される前記ドキュメントを前記外部の通信装置に返信する転送部とを備える。
ドキュメントは、データの集合であり、データの転送単位となる。ドキュメントに含まれるデータの形式は任意である。例えば、ドキュメントは、音データ、画像データ、テキストデータ、又はそれらのうちの任意の2以上のデータの組み合わせを含む。また、ドキュメントは、通常、一又は複数のファイルで構成されるが、これに限るものではない。また、上記の記憶部としては、図2のEPROM13を例示可能である。また、上記の選択部、通知部および転送部としては、図2のCPU16を例示可能である。
このドキュメント転送装置(送信側の通信装置)では、記憶部に記憶された総てのドキュメントの識別情報ではなく、これらの識別情報のうち、人の操作に基づいて選択された識別情報のみが外部の通信装置(受信側の通信装置)へ送信される。したがって、外部の通信装置では、ドキュメント転送装置の使用者の操作に基づいて選択された識別情報のみが表示される。つまり、ドキュメント転送装置は、外部の通信装置に表示される識別情報を絞ることができる。よって、送信可能なドキュメントの数が多くなっても、外部の通信装置の使用者にかかる負担は、必ずしも大きくならない。
外部の通信装置に表示される識別情報を絞る方法としては、ドキュメント転送装置が使用者の操作に基づいて絞る方法の他に、ドキュメント転送装置が自動的に絞る方法が挙げられる。例えば、ドキュメント転送装置がランダムに絞る方法である。しかし、この方法では、転送したいドキュメントの識別情報が外部の通信装置において表示されず、当該ドキュメントを転送することができないという不都合が発生しうる。これに対して、本発明では、ドキュメント転送装置が使用者の操作に基づいて絞るから、上記の不都合を回避することができる。
【0010】
上記のドキュメント転送装置において、前記操作部の操作内容に基づいて、前記複数のドキュメントの各々の識別情報を決定する決定部を備えることが好ましい。このドキュメント転送装置によれば、その使用者の操作に基づいてドキュメントの識別情報が決定されるから、ドキュメントの内容を理解し易い情報を、当該ドキュメントの識別情報とすることができる。外部の通信装置の使用者にしてみれば、ドキュメントの内容を理解し難い識別情報(例えば、「3a24d52…」や「0b0e730…」といった文字列)から転送したいドキュメントの識別情報を選ぶことよりも、ドキュメントの内容を理解し易い識別情報(例えば、「最初の原稿」や「修正原稿」といった文字列)から転送したいドキュメントの識別情報を選ぶことの方が容易である。つまり、このドキュメント転送装置によれば、外部の通信装置の使用者にかかる負担の軽減が可能となる。なお、上記の決定部としては、図2のCPU16を例示可能である。
なお、ドキュメントの識別情報が当該ドキュメントの内容を理解し難い情報であっても、外部の通信装置の使用者は、転送したいドキュメントの識別情報を指定することができる。これは、ドキュメント転送装置において、識別情報がドキュメント毎に表示されるからである。この表示により、ドキュメント転送装置の使用者は、どの識別情報とどのドキュメントとが対応しているのかを知ることができる。したがって、ドキュメント転送装置の使用者と外部の通信装置の使用者とが同一の場合には、外部の通信装置の使用者は、当然に、転送したいドキュメントの識別情報を指定することができる。一方、両者が同一でない場合には、外部の通信装置の使用者は、例えば、転送したいドキュメントの識別情報をドキュメント転送装置の使用者から教えてもらうことにより、転送したいドキュメントの識別情報を指定することができる。
【0011】
上記の各ドキュメント転送装置において、ドキュメントの識別情報として、文字列を採用することが好ましい。文字列のデータ量は、アイコンやサムネイルなどの画像に比較して少ないから、識別情報として文字列を採用すれば、ドキュメント転送装置と外部の通信装置との間の通信の負荷を軽減することができる。
【0012】
文字列を識別情報とする場合、前記複数のドキュメントの各々は一又は複数のファイルで構成され、前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報の各々について、当該識別情報で識別される前記ドキュメントを構成する総てのファイルとそのファイル名とを含む一括ファイルを生成する候補用ファイル生成部を備え、前記一括ファイルのファイル名は、当該一括ファイルに係る識別情報を含み、前記通知部は、前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報をそれぞれ含む、前記一括ファイルのファイル名を前記外部の通信装置へ送信し、前記転送部は、受信した識別情報に係る前記一括ファイルを前記外部の通信装置に返信するようにしてもよい。上記の候補用ファイル生成部としては、図2のCPU16を例示可能である。
この場合、外部の通信装置は、ドキュメント転送装置から一又は複数のファイル名を受信し、受信したファイル名から選択したファイル名をドキュメント転送装置へ送信し、このファイル名のファイルを受信することにより、ドキュメント転送装置からドキュメントを受信する。この手順は、サービス利用用のFTPを用いて実現可能である。つまり、外部の通信装置として、サービス利用用のFTPを実装した既存の通信装置を採用することができる。
一方、ドキュメント転送装置は、一又は複数のファイル名を外部の通信装置へ送信し、外部の通信装置からファイル名を受信すると、このファイル名のファイルを外部の通信装置へ送信することにより、外部の通信装置へドキュメントを送信する。この手順は、サービス提供用のFTPを用いて実現可能である。したがって、ドキュメント転送装置において新規に実装すべき箇所が少なくなる。
なお、ファイルは、データの集合であり、データの記憶単位となる。ファイルに含まれるデータの形式は任意である。例えば、ファイルは、音データ、画像データ、テキストデータ、又はそれらのうちの任意の2以上のデータの組み合わせを含む。また、一括ファイルのファイル名は、当該一括ファイルに含まれる総てのファイルで構成されるドキュメントの識別情報(文字列)そのものであってもよいし、当該識別情報と他の文字列とを連ねた文字列であってもよい。
【0013】
また、文字列を識別情報とする場合、前記複数のドキュメントの各々は一又は複数のファイルで構成され、前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報の各々について、当該識別情報で識別される前記ドキュメントを構成する総てのファイルとそのファイル名とを含む一括ファイルのファイル名を生成するファイル名生成部を備え、前記一括ファイルのファイル名は、当該一括ファイルに係る識別情報を含み、前記通知部は、前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報をそれぞれ含む、前記一括ファイルのファイル名を前記外部の通信装置へ送信し、前記転送部は、受信した前記識別情報で識別される前記ドキュメントを前記一括ファイルの形式に従った順序で前記外部の通信装置に返信するようにしてもよい。
この場合にも、サービス利用用のFTPを実装した既存の通信装置を、外部の通信装置として採用することができる。また、この場合には、転送部が、受信した識別情報で識別されるドキュメントを一括ファイルの形式に従った順序で外部の通信装置へ送信するから、ドキュメント転送装置において一括ファイルを生成することなく、外部の通信装置に一括ファイルを受信させることができる。したがって、ドキュメント転送装置において一括ファイルのための記憶領域を確保する必要がない。
【0014】
また、文字列を識別情報とする場合、前記複数のドキュメントの各々は一又は複数のファイルで構成され、前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報の各々について、当該識別情報で識別される前記ドキュメントを構成する総てのファイルとそのファイル名とを含む一括ファイルのファイル名を生成するファイル名生成部と、前記転送部に受信された前記識別情報について前記一括ファイルを生成する転送用ファイル生成部とを備え、前記一括ファイルのファイル名は、当該一括ファイルに係る識別情報を含み、前記通知部は、前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報をそれぞれ含む、前記一括ファイルのファイル名を前記外部の通信装置へ送信し、前記転送部は、受信した前記識別情報に係る前記一括ファイルを前記外部の通信装置に返信するようにしてもよい。
この場合にも、サービス利用用のFTPを実装した既存の通信装置を、外部の通信装置として採用することができる。また、この場合には、転送用ファイル生成部が、外部の通信装置から受信した識別情報について一括ファイルを生成し、この一括ファイルを転送部が外部の通信装置へ送信するから、ドキュメント転送装置において一括ファイルのために確保すべき記憶領域を、ドキュメント転送装置の操作に基づいて選択された総ての識別情報の各々について一括ファイルを生成する場合よりも狭くすることができる。
【0015】
一括ファイルを用いる場合には、ドキュメント転送装置が、前記外部の通信装置から前記一括ファイルを受信する受信部と、前記受信部に受信された前記一括ファイルを展開する展開部とを備えるようにするのが好ましい。この場合、ドキュメント転送装置は、外部の通信装置から受信した一括ファイルを展開し、この一括ファイルに含まれている総てのファイルで構成されるドキュメントを利用することができる。ドキュメントの利用の形態としては、ドキュメントの表示や編集を例示可能である。また、上記の受信部としては、図2のCPU16を例示可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るドキュメント転送装置10を有する通信システム100の構成を示すブロック図である。
【図2】ドキュメント転送装置10の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】ドキュメント転送装置10内のフォルダ構造を示す図である。
【図4】ドキュメント転送装置10内のドキュメント.dbの内容例を示す図である。
【図5】通信システム100における送信処理の流れを示すシーケンス図である。
【図6】送信処理中のドキュメント転送装置10の画面1の表示例を示す図である。
【図7】送信処理中のドキュメント転送装置10の送信フォルダの内容例を示す図である。
【図8】送信処理中の通信装置20の画面21の表示例を示す図である。
【図9】通信システム100における受信処理の流れを示すシーケンス図である。
【図10】受信処理中のドキュメント転送装置10の受信フォルダの内容例を示す図である。
【図11】受信処理後のドキュメント転送装置10のドキュメントフォルダの内容例を示す図である。
【図12】受信処理後のドキュメント.dbの内容例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<1.構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るドキュメント転送装置10を有する通信システム100の構成を示す図である。通信システム100は、ドキュメント転送装置10の他に、このドキュメント転送装置10と通信する通信装置20を有し、ドキュメント転送装置10と通信装置20との間でのドキュメントの転送を可能とする。ドキュメント転送装置10と通信装置20との間の通信のプロトコルは、Bluetoothである。
【0018】
ドキュメントは、データの集合であり、一又は複数のファイルで構成され、データの転送単位となる。ファイルは、データの集合であり、データの記憶単位となる。ファイルに含まれるデータの形式は任意である。例えば、ファイルは、音データ、画像データ、テキストデータ、又はそれらのうちの任意の2以上のデータの組み合わせを含む。
【0019】
実際には、通信システム100は、複数のドキュメント転送装置10と複数の通信装置20とを有する。これらのドキュメント転送装置10の構成および動作は互いに同様であり、これらの通信装置20の構成および動作も互いに同様である。また、ドキュメント転送装置10と通信装置20との間でドキュメントの転送処理が行われるのは、両装置のペアリングの完了後であって、両装置間の距離が通信可能な距離以下の場合に限られる。
【0020】
ドキュメント転送装置10は、いわゆる電子ペーパーであり、画面1を有する本体3と、画面1内の位置の指示に用いられる電子ペン(操作部)2とを備える。またドキュメント転送装置10は、BluetoothのFTPを実装している。具体的には、サービス利用用のFTPとサービス提供用のFTPとを実装している。つまり、ドキュメント転送装置10は、通信装置20に限らず、サービス提供用のFTPを実装した装置からファイルを受信し、サービス利用用のFTPを実装した任意の通信装置へファイルを送信することができる。
【0021】
通信装置20は、いわゆる携帯電話機であり、画面21及びキーパッド22を備え、移動体通信網を介して図示しないサーバー装置との間でファイルを転送することができる。また通信装置20は、サービス利用用のFTPとサービス提供用のFTPとを実装している。つまり、通信装置20は、ドキュメント転送装置10に限らず、サービス提供用のFTPを実装した装置からファイルを受信し、サービス利用用のFTPを実装した任意の通信装置へファイルを送信することができる。
【0022】
図2は、ドキュメント転送装置10の電気的構成を示すブロック図である。この図に示すように、ドキュメント転送装置10は、電磁誘導方式のタッチパネル11と、Bluetoothに準拠した通信インターフェイス12と、複数のドキュメントを記憶するEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)13と、ワークメモリとして使用されるRAM(Random Access Memory)14と、制御プログラムを記憶したROM15と、この制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)16とを備える。以降の説明では、CPU16は制御プログラムを実行中であるものとする。
【0023】
タッチパネル11は、表示部111とペンタブレット112とを備える。表示部111は、画面1を有し、電気泳動を利用して画像を画面1に表示する。ペンタブレット112は、画面1内の位置を入力する電磁誘導方式の位置入力装置であり、コイルを内蔵した電子ペン2と、当該コイルに誘導電流を発生させるタブレット4とを備える。タブレット4は、画面1内の位置であって、電子ペン2で指示された位置を検出する。CPU16は、画面1の表示内容とタブレット4の検出結果とに基づいて、ドキュメント転送装置10の使用者に入力された指示を特定する。
【0024】
通信インターフェイス12は、CPU16と通信装置20との間で要求や応答などのデータを中継する。つまり、CPU16は、通信インターフェイス12を介して、通信装置20との間でデータを送受信する。そして、CPU16は、入力された指示と受信したデータとに基づいて、各部を制御する。また、EPROM13は複数のファイルを記憶し、CPU16は、EPROM13に記憶された総てのファイルを管理する。この管理は、階層構造を持つフォルダ(ディレクトリ)を用いて行われる。
【0025】
図3は、EPROM13のフォルダ構造を示す図である。この図に示すように、最上位のルートフォルダの配下には、転送フォルダとドキュメントフォルダとが作成されている。転送フォルダの配下には、送信フォルダと受信フォルダとが作成されている。ドキュメントフォルダは、ドキュメントを保存するフォルダである。EPROM13に記憶されている総てのドキュメントは、ドキュメントフォルダに保存されている。ドキュメントの保存は、当該ドキュメントを構成する総てのファイルをドキュメントフォルダに格納することにより達成される。また、ドキュメントフォルダには、格納した総てのドキュメントを管理するためのデータベースファイル(ファイル名は「ドキュメント.db」)も格納されている。
【0026】
図4は、ドキュメント.dbの内容例を示す図である。この図に示すように、ドキュメント.dbは、総てのドキュメントを構成する総てのファイルの各々について、ファイル名と、当該ファイルが構成するドキュメントのタイトル(識別情報)とを対応付ける。例えば、図4の例では、ドキュメントのタイトルである「最初の原稿」には、「3a24d52cf5894d78bcdc…_ANNOT」というファイル名と、「3a24d52cf5894d78bcdc…_CONTE」というファイル名とが対応付けられている。したがって、CPU16は、ドキュメント.dbを参照することにより、ドキュメントとファイルとの対応関係を把握することができる。
【0027】
なお、末尾の文字列が「_CONTE」であるファイル名のファイルは、コンテンツファイルであり、ドキュメントの内容を示すデータを含む。一方、末尾の文字列が「_ANNOT」であるファイル名のファイルは、アノテーションファイルであり、ドキュメントに関連する情報を示すデータを含む。例えば、タイトルが「ブロック図」のドキュメントを構成する二つのファイルのうち、ファイル名が「3a24d52cf5894d78bcdc…_CONTE」のファイルは、画像データを含み、ファイル名が「3a24d52cf5894d78bcdc…_ANNOT」のファイルは、検索のためのキーワードを示すテキストデータを含む。
【0028】
以上の説明で例示したドキュメントは、いずれも、一つのコンテンツファイルと一つのアノテーションファイルとで構成されているが、これに限るものではない。例えば、タイトルが「備忘録」のドキュメントのように、一つのコンテンツファイルのみから構成されたドキュメントもあれば、3以上のファイルで構成されたドキュメント(図示略)もある。このように、ドキュメント転送装置10では、ドキュメントがファイルとは別に管理されるから、柔軟なドキュメント管理が可能となる。
【0029】
なお、本実施形態では、同一のドキュメントを構成する複数のファイルのファイル名が、「_ANNOT」や「_CONTE」といった末尾の文字列を除いて一致している。これは、ドキュメントの作成日時に基づいて、当該ドキュメントを構成するファイルのファイル名を生成しているからである。つまり、このような生成方法を採用する必要がなければ、同一のドキュメントを構成する複数のファイルのファイル名が末尾の文字列を除いても不一致となるように本実施形態を変形可能である。
【0030】
<2.ドキュメントの生成および保存>
ドキュメント転送装置10は、その使用者から入力された指示に基づいて、ドキュメントを生成および保存することができる。すなわち、CPU16は、ドキュメントの生成指示が入力されると、この生成指示にしたがってドキュメントを生成し、次にドキュメントの保存指示が入力されると、生成したドキュメントを構成する総てのファイルとそのファイル名とを生成し、生成したファイルをドキュメントフォルダに格納することにより、生成したドキュメントをドキュメントフォルダに保存する。
【0031】
ドキュメントの保存指示は、保存するドキュメントのタイトルを指定する指示でもある。タイトルの指定の仕方は任意である。例えば、使用者が電子ペン2を操作して文字列を入力することによって、この文字列をタイトルとして指定するようにしてもよいし、CPU16が、保存するドキュメントの内容に基づいてタイトルの候補文字列を生成して画面1に表示させ、使用者が、電子ペン2を操作して、表示された候補文字列のうち一つの候補文字列を指定することによって、この候補文字列をタイトルとして指定するようにしてもよい。いずれにせよ、CPU16は、保存するドキュメントのタイトルを、電子ペン2の操作内容に基づいて決定し、決定したタイトルと、当該ドキュメントを構成する総てのファイルのファイル名とが対応するように、ドキュメント.dbを更新する。
【0032】
<3.ドキュメントの転送処理>
ドキュメントの転送処理には、ドキュメントを、ドキュメント転送装置10が通信装置20へ送信する送信処理と、ドキュメント転送装置10が通信装置20から受信する受信処理とがある。以降の説明では、まず送信処理について説明し、次に受信処理について説明する。
【0033】
<3−1.送信処理>
図5は、通信システム100における送信処理の流れを示すシーケンス図である。送信処理は、ドキュメント転送装置10の使用者が電子ペン2を操作して送信処理の開始指示を入力すると開始する。
【0034】
送信処理では、まず、ドキュメント転送装置10が転送候補の選択処理を行う(S1)。転送候補とは、ドキュメント転送装置10からの送信が許可されたドキュメントのタイトルであり、EPROM13に記憶されている総てのドキュメント、すなわち送信可能なドキュメントのタイトルから選択される。この選択処理では、CPU16は、使用者から通信開始の指示が入力されるまで、転送候補の選択画面の表示および更新を行うとともに転送候補の選択を行う(S11、S12:NO)。
【0035】
具体的には、CPU16は、まず、ドキュメント.dbを参照して表示部111を制御し、図6に示すように、ドキュメントフォルダに格納された総てのドキュメントのタイトルを、タイトル毎にチェックボックスと対応付けて画面1に表示させる。この画面が転送候補の選択画面である。この画面には、通信開始ボタンB1も含まれている。ただし、総てのチェックボックスは未チェックである。
【0036】
以降、転送候補の選択画面の表示が繰り返し行われる。この繰り返しにおいて、使用者が電子ペン2で未チェックのチェックボックスを指示すると、CPU16は、当該チェックボックスが既チェックとなるように選択画面を更新するとともに、当該チェックボックスに対応するタイトルを転送候補として選択する。一方、使用者が電子ペン2で既チェックのチェックボックスを指示すると、CPU16は、当該チェックボックスが未チェックとなるように選択画像を更新するとともに、当該チェックボックスに対応するタイトルを転送候補から除外する。
【0037】
そして、使用者が電子ペン2で通信開始ボタンB1を押すと、CPU16は、通信開始の指示が入力されたと判断し(S12:YES)、転送候補の選択処理を終了させ、通信装置20との間にFTPコネクションを確立する確立処理を行う(S2)。FTPコネクションは、FTPに従ってファイルを転送する通信路である。この確立処理に呼応して、通信装置20では、上記のFTPコネクションを確立する確立処理が行われる。双方の確立処理は、上記のFTPコネクションが確立すると終了する。
【0038】
また、CPU16は、上記の確立処理において、転送候補の選択処理で選択された転送候補の各々について一括ファイルを生成し、送信フォルダに格納する(S21)。この際、送信フォルダには、この確立処理において生成された一括ファイルのみが格納される。例えば、転送候補として、図6に示すように「修正原稿」、「修正点リスト」及び「備忘録」の計3個のタイトルが選択された場合には、送信フォルダには、図7に示すように、ファイル名が「修正原稿.dcf」、「修正点リスト.dcf」及び「備忘録.dcf」の計3個の一括ファイルのみが格納される。
【0039】
一括ファイルは、対応するタイトルのドキュメントを構成する総てのファイルと、それらのファイル名とを含むファイルであり、その形式(ファイルフォーマット)は予め定められている。また、一括ファイルのファイル名は、対応するタイトルを含む。例えば、対応するタイトルが「修正原稿」である一括ファイルのファイル名は「修正原稿.dcf」である。
【0040】
上記のFTPコネクションが確立すると、ドキュメント転送装置10では応答処理が行われる(S4)。応答処理は、上記のFTPコネクションを介して、通信装置20からの要求に応答する処理である。一方、通信装置20は、応答処理中のドキュメント転送装置10から一括ファイルのファイル名を取得する(S5)。具体的には、通信装置20が、サービス利用用のFTPを用いて、送信フォルダ内の総てのファイルのファイル名の返信を要求する第1要求a1をドキュメント転送装置10へ送信し、この第1要求a1を受信したCPU16が、サービス提供用のFTPを用いて、送信フォルダ内の総てのファイルのファイル名を含む第1応答b1を通信装置20へ返信し(S41)、この第1応答b1を通信装置20が受信する。
【0041】
次に通信装置20は、転送ファイル名の選択処理を行う(S6)。転送ファイル名とは、転送するファイルのファイル名であり、この選択処理では、送信フォルダ内の総てのファイルのファイル名から選択される。具体的には、通信装置20は、まず、図8に示すように、受信した総てのファイル名を、ファイル名毎にチェックボックスと対応付けて画面21に表示させる。この画面が転送ファイル名の選択画面である。この画面には、転送開始ボタンB2も含まれている。ただし、総てのチェックボックスは未チェックである。
【0042】
以降、転送ファイル名の選択画面の表示が繰り返し行われる。この繰り返しにおいて、通信装置20は、キーパッド22の操作内容に基づいて、未チェックのチェックボックスが既チェックとなるように選択画面を更新しつつ、当該チェックボックスに対応するファイル名を転送ファイル名として選択したり、既チェックのチェックボックスが未チェックとなるように選択画面を更新しつつ、当該チェックボックスに対応するファイル名を転送ファイル名から除外したりする。つまり、通信装置20の使用者は、キーパッド22を操作することにより、転送ファイル名を指定することができる。
【0043】
そして、使用者がキーパッド22を操作して転送開始ボタンB2を押すと、通信装置20は、転送開始の指示が入力されたと判断し、転送ファイル名の選択処理を終了させ、この選択処理で選択された転送ファイル名のファイルをドキュメント転送装置10から取得する(S7)。具体的には、選択された総ての転送ファイル名の各々について、通信装置20が、サービス利用用のFTPを用いて、当該転送ファイル名のファイルの返信を要求する第2要求a2をドキュメント転送装置10へ送信し、この第2要求a2を受信したCPU16が、サービス提供用のFTPを用いて、当該転送ファイル名のファイルを含む第2応答b2を通信装置20へ返信し(S42)、この第2応答b2を、通信装置20が、サービス利用用のFTPを用いて受信する。
【0044】
こうして、一括ファイルがドキュメント転送装置10から通信装置20へ転送される。一括ファイルには、そのファイル名に含まれているタイトルのドキュメントを構成する総てのファイルが含まれているから、一括ファイルの転送は、ドキュメントの転送と等価である。なお、通信装置20へ転送された一括ファイルは、通信装置20、又は通信装置20から当該一括ファイルを受信した装置(例えば、ドキュメント転送装置10や図示しないサーバー装置)において展開される。これにより、転送された一括ファイルのファイル名に含まれているタイトルのドキュメントの利用(例えば、表示や編集)が可能となる。
【0045】
<3−2.受信処理>
図9は、通信システム100における受信処理の流れを示すシーケンス図である。受信処理は、ドキュメント転送装置10の使用者が電子ペン2を操作して受信処理の開始指示を入力すると開始する。なお、以降の説明では、通信装置20の所定のフォルダには、一又は複数のファイルが格納されているものとする。これらのファイルはいずれも一括ファイルであり、通信装置20において生成されたものでも、ドキュメント転送装置10から受信したものでも、図示しないサーバー装置から受信したものでもよい。
【0046】
受信処理では、まず、FTPコネクションの確立処理が行われる(R1及びR2)。このFTPコネクションが確立すると、通信装置20では、ドキュメント転送装置10からの要求に応答する応答処理が行われる(R3)。一方、ドキュメント転送装置10のCPU16は、サービス利用用のFTPを用いて、応答処理中の通信装置20から一括ファイルのファイル名を取得する(R4)。この取得の詳細は、図5のステップS5と同様である。ただし、この際に、通信装置20において用いられるFTPはサービス提供用のFTPであり、取得されるファイル名は、送信フォルダ内ではなく、所定のフォルダ内の総てのファイルのファイル名である。
【0047】
次にCPU16は、転送ファイル名の選択処理を行う(R5)。この選択処理では、転送ファイル名は、所定のフォルダ内の総てのファイルのファイル名から選択される。この選択の詳細は、図5のステップS6と同様である。ただし、この選択では、画面21ではなく画面1にファイル名が表示され、キーパッド22ではなく電子ペン2が使用者に操作される。
【0048】
そして、転送開始の指示が入力されると、CPU16は、転送ファイル名の選択処理を終了させ、サービス利用用のFTPを用いて、この選択処理で選択された転送ファイル名のファイルを通信装置20から取得する(R6)。この取得の詳細は、図5のステップS7と同様である。ただし、この際に、通信装置20において用いられるFTPはサービス提供用のFTPであり、取得されるファイルは、送信フォルダ内ではなく、所定のフォルダ内のファイルである。こうして、一括ファイルが通信装置20からドキュメント転送装置10へ転送される。
【0049】
また、ステップR6において、CPU16は、取得したファイルを受信フォルダに格納する。この際、受信フォルダには、取得したファイルのみが格納される。例えば、転送ファイル名として「チェック結果」のみが選択された場合には、受信フォルダには、図10に示すように、ファイル名が「チェック結果.dcf」の一括ファイルのみが格納される。
【0050】
次にCPU16は、受信フォルダ内の一括ファイルを展開し(R7)、ドキュメントを保存する(R8)。これにより、一括ファイルに含まれている一又は複数のファイルで構成されるドキュメント(一括ファイルのファイル名に含まれているタイトルのドキュメント)の利用が可能となる。
【0051】
具体的には、CPU16は、受信フォルダ内の総ての一括ファイルの各々について、当該一括ファイルを展開し、当該一括ファイルに含まれていた一又は複数のファイルをドキュメントフォルダに格納し、格納したファイルのファイル名と、当該一括ファイルのファイル名に含まれているタイトルとが対応するように、ドキュメント.dbを更新する。
【0052】
例えば、送信フォルダに、ファイル名が「0r6g7489d34h2s5bdc46…_ANNOT」のファイルと、ファイル名が「0r6g7489d34h2s5bdc46…_CONTE」のファイルとを含み、ファイル名が「チェック結果.dcf」の一括ファイルのみが格納されていたとする。この場合、ドキュメントフォルダには、図11に示すように、この一括ファイルに含まれていた二つのファイルが追加され、ドキュメント.dbには、これら二つのファイルのファイル名と、この一括ファイルのファイル名「チェック結果.dcf」から末尾の文字列「.dcf」を削除して得られる文字列「チェック結果」とを対応付ける情報が追加される。
【0053】
<4.まとめ>
以上説明したように、本実施形態では、送信処理において、CPU16が、送信可能な総てのドキュメントのタイトルから一又は複数のタイトルを選択し、選択したタイトルのみを通信装置20へ送信する。したがって、通信装置20では、ドキュメントフォルダに保存された総てのドキュメントのタイトルのうち、ドキュメント転送装置10において選択されたタイトルのみが表示される。つまり、本実施形態によれば、通信装置20に表示されるタイトルを絞ることができる。よって、ドキュメントフォルダに保存されたドキュメントの数が多くなっても、通信装置20の使用者にかかる負担は、必ずしも大きくならない。
【0054】
ところで、送信処理において、通信装置20に表示されるタイトルを絞る方法としては、
ドキュメント転送装置10が使用者の操作に基づいて絞る方法の他に、ドキュメント転送装置10が自動的に絞る方法が挙げられる。例えば、ドキュメント転送装置10が、ドキュメントフォルダ内のドキュメントのタイトルから、送信を許可するドキュメントのタイトルを、ランダムに選択する。しかし、この方法では、転送したいドキュメントのタイトルが通信装置20において表示されず、当該ドキュメントを転送することができないという不都合が発生しうる。これに対して、本実施形態では、送信を許可するドキュメントのタイトルがドキュメント転送装置10の使用者の操作に基づいて行われるから、上記の不都合を回避することができる。
【0055】
また、本実施形態では、CPU16は、保存するドキュメントのタイトルを、電子ペン2の操作内容に基づいて決定する。したがって、ドキュメントの内容を理解し易い情報を、当該ドキュメントのタイトルとすることができる。通信装置20の使用者にしてみれば、ドキュメントの内容を理解し難いタイトル(例えば、「3a24d52…」や「0b0e730…」といった文字列)から転送したいドキュメントのタイトルを選ぶことよりも、ドキュメントの内容を理解し易いタイトル(例えば、「最初の原稿」や「修正原稿」といった文字列)から転送したいドキュメントのタイトルを選ぶことの方が容易である。つまり、本実施形態によれば、通信装置20の使用者にかかる負担の軽減が可能となる。
【0056】
また、本実施形態では、通信装置20は、ドキュメント転送装置10から一又は複数のファイル名を受信し、受信したファイル名から選択したファイル名をドキュメント転送装置10へ送信し、このファイル名のファイルを受信することにより、ドキュメント転送装置10からドキュメントを受信するものであり、サービス利用用のFTPを実装した既存の通信装置である。つまり、ドキュメント転送装置10は、サービス利用用のFTPを実装した既存の通信装置に対して、ドキュメントを転送することができる。
【0057】
また、本実施形態では、CPU16は、電子ペン2の操作内容に基づいて選択された一又は複数のタイトルの各々について、当該タイトルで識別されるドキュメントを構成する総てのファイルとそのファイル名とを含む一括ファイルを生成する候補用ファイル生成部として機能し、通信装置20からファイル名を受信すると、このファイル名の一括ファイルを通信装置20に返信する。つまり、ドキュメント転送装置10は、サービス提供用のFTPを用いて、ドキュメントを送信することができる。したがって、ドキュメント転送装置10において新規に実装すべき箇所は少ない。
【0058】
<5.変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この実施形態を変形して得られる各種の変形例や、これらの変形例を適宜に組み合わせたものをも技術的範囲に含みうる。以下に、上述した実施形態の変形例を例示する。
【0059】
(第1変形例)
ドキュメント転送装置10においては一括ファイルを生成せず、通信装置20においては一括ファイルが受信されるように変形してもよい。
具体的には、CPU16が、上記の候補用ファイル生成部ではなく、電子ペン2の操作内容に基づいて選択された一又は複数のタイトルの各々について、当該タイトルで識別されるドキュメントを構成する総てのファイルとそのファイル名とを含む一括ファイルのファイル名を生成するファイル名生成部として機能し、通信装置20からファイル名を受信すると、このファイル名に含まれるタイトルで識別されるドキュメントを構成する一又は複数のファイルを一括ファイルの形式に従った順序で通信装置20に返信するようにする。
この変形例では、ドキュメント転送装置10において、サービス提供用のFTPを改変する必要があるから、新規に実装すべき箇所が増加するが、上述した実施形態と同様に、ドキュメント転送装置10は、サービス利用用のFTPを実装した既存の通信装置に対して、ドキュメントを転送することができる。また、この変形例には、ドキュメント転送装置10において一括ファイルのための記憶領域を確保する必要がないという利点がある。
【0060】
(第2変形例)
ドキュメント転送装置10において、電子ペン2の操作内容に基づいて選択された一又は複数のタイトルのうち、実際に転送するドキュメントのタイトルについて一括ファイルを生成するように変形してもよい。
具体的には、CPU16が、上記の候補用ファイル生成部ではなく、電子ペン2の操作内容に基づいて選択された一又は複数のタイトルの各々について、当該タイトルで識別されるドキュメントを構成する総てのファイルとそのファイル名とを含む一括ファイルのファイル名を生成するファイル名生成部として機能するとともに、通信装置20から受信したタイトルについて一括ファイルを生成する転送用ファイル生成部として機能し、通信装置20からファイル名を受信すると、このファイル名の一括ファイルを生成して通信装置20に返信するようにする。
この変形例では、ドキュメント転送装置10において、サービス提供用のFTPを改変する必要があるから、新規に実装すべき箇所が増加するが、上述した実施形態と同様に、ドキュメント転送装置10は、サービス利用用のFTPを実装した既存の通信装置に対して、ドキュメントを転送することができる。また、この変形例には、ドキュメント転送装置10において一括ファイルのために確保すべき記憶領域が狭くなるという利点がある。また、ファイル名を受信して当該ファイル名のファイルを返信することは、サービス利用用のFTPを用いて実現可能であるから、新規に実装すべき箇所は、第1変形例よりも少ない。
【0061】
(第3変形例)
ドキュメント転送装置10が、その使用者の操作に基づかずに、ドキュメントのタイトルを決定するようにしてもよい。例えば、ドキュメント転送装置10は、ドキュメントの生成日時に基づいて文字列を生成し、この文字列を当該ドキュメントのタイトルとする。この場合、図4に示すファイル名のような、ドキュメントの内容を理解し難い文字列がドキュメントのタイトルとなる。つまり、通信装置20には、ドキュメントの内容を理解し難いタイトルが一覧表示され、通信装置20の使用者は、これらのタイトルから転送したいドキュメントのタイトルを指定せねばならないことになる。
しかし、ドキュメント転送装置10では、タイトルがドキュメント毎に表示されるから、その使用者は、どのタイトルとどのドキュメントとが対応しているのかを知ることができる。したがって、通信装置20の使用者は、ドキュメント転送装置10の使用者と同一の場合には当然に、同一でない場合には例えばドキュメント転送装置の使用者から教えてもらうことにより、転送したいドキュメントのタイトルを指定することができる。
【0062】
(第4変形例)
ドキュメントのタイトルとして、文字列以外の情報を採用してもよい。文字列以外の情報としては、アイコンやサムネイルなどの画像を例示可能である。これに対して、上述した実施形態では、画像に比較してデータ量の少ない文字列をドキュメントのタイトルとして採用しているから、ドキュメント転送装置10と通信装置20との間の通信の負荷を軽減することができる。
【0063】
(第5変形例)
FTPに準拠しない形態としてもよい。例えば、送信処理において、ドキュメント転送装置10が、一又は複数のタイトルを通信装置20へ送信し、通信装置20からタイトルを受信すると、このタイトルのドキュメントを構成する複数のファイルを通信装置20へ送信する形態としてもよい。また例えば、送信処理において、ドキュメント転送装置10が、通信装置20からの要求を待つことなく、一又は複数のタイトルを通信装置20へ送信する形態としてもよい。
【0064】
(第6変形例)
各ドキュメントが一つのファイルで構成されるようにしてもよい。この場合、ドキュメントのタイトルと当該ドキュメントを構成するファイルのファイル名とを一致させることができる。両者が一致するならば、ドキュメントをファイルとは別に管理せずに済むから、ドキュメント.dbが不要となる。また、両者が一致するならば、一つのファイルを転送するだけで、当該ファイルで構成されるドキュメントを転送することができるから、一括ファイルを用いずに済む。なお、上述した実施形態では、データの記憶単位としてファイルを採用したが、ファイル以外のものを採用してもよい。この場合、ドキュメントは、ファイル以外の記憶単位を一又は複数含むことになる。
【0065】
(第7変形例)
上述した実施形態では、CPU16が、通信装置20から受信した一括ファイルを展開する展開部として機能するが、ドキュメント転送装置10が展開部を持たないようにしてもよい。この場合、通信装置20からドキュメント転送装置10へ転送されたドキュメントをドキュメント転送装置10において利用することはできない。もちろん、第6変形例のように、一括ファイルを使用しない形態であれば、ドキュメント転送装置10が展開部を持たなくとも、通信装置20からのドキュメントをドキュメント転送装置10において利用可能である。
【0066】
(第8変形例)
ドキュメント転送装置10及び通信装置20の構成を変更してもよい。例えば、ドキュメント転送装置10が、電気泳動を利用して画像を画面1に表示する表示部111に代えて、電気泳動を利用せずに画像を画面に表示する他の表示部を備えてもよいし、電磁誘導方式の位置入力装置に代えて他の方式の位置入力装置を備えてもよいし、電子ペン2に代えて他の操作部を備えてもよい。また例えば、電子ペーパー以外の装置をドキュメント転送装置10としてもよい。また例えば、通信装置20が、キーパッド22に代えて他の操作部を備えてもよいし、携帯電話機以外の装置を通信装置20としてもよい。また例えば、ドキュメント転送装置10以外の装置と通信不能な装置を通信装置20としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,21……画面、2……電子ペン、3……本体、4……タブレット、10……ドキュメント転送装置、11……タッチパネル、12……通信インターフェイス、13……EPROM、14……RAM、15……ROM、16……CPU、20……通信装置、22……キーパッド、100……通信システム。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、
複数のドキュメントを記憶する記憶部と、
前記複数のドキュメントを個々に識別する識別情報を前記ドキュメント毎に表示し、前記操作部の操作内容に基づいて、前記複数のドキュメントの識別情報のうちの一又は複数を選択する選択部と、
前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報を、外部の通信装置へ送信する通知部と、
送信した前記一又は複数の識別情報は前記外部の通信装置で表示され、表示された前記一又は複数の識別情報のうち前記外部の通信装置において使用者に指定された識別情報を受信すると、受信した識別情報で識別される前記ドキュメントを前記外部の通信装置に返信する転送部と、
を備えるドキュメント転送装置。
【請求項2】
前記操作部の操作内容に基づいて、前記複数のドキュメントの各々の識別情報を決定する決定部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のドキュメント転送装置。
【請求項3】
前記識別情報は文字列である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のドキュメント転送装置。
【請求項4】
前記複数のドキュメントの各々は一又は複数のファイルで構成され、
前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報の各々について、当該識別情報で識別される前記ドキュメントを構成する総てのファイルとそのファイル名とを含む一括ファイルを生成する候補用ファイル生成部を備え、
前記一括ファイルのファイル名は、当該一括ファイルに係る識別情報を含み、
前記通知部は、前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報をそれぞれ含む、前記一括ファイルのファイル名を前記外部の通信装置へ送信し、
前記転送部は、受信した識別情報に係る前記一括ファイルを前記外部の通信装置に返信する、
ことを特徴とする請求項3に記載のドキュメント転送装置。
【請求項5】
前記複数のドキュメントの各々は一又は複数のファイルで構成され、
前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報の各々について、当該識別情報で識別される前記ドキュメントを構成する総てのファイルとそのファイル名とを含む一括ファイルのファイル名を生成するファイル名生成部を備え、
前記一括ファイルのファイル名は、当該一括ファイルに係る識別情報を含み、
前記通知部は、前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報をそれぞれ含む、前記一括ファイルのファイル名を前記外部の通信装置へ送信し、
前記転送部は、受信した前記識別情報で識別される前記ドキュメントを前記一括ファイルの形式に従った順序で前記外部の通信装置に返信する、
ことを特徴とする請求項3に記載のドキュメント転送装置。
【請求項6】
前記複数のドキュメントの各々は一又は複数のファイルで構成され、
前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報の各々について、当該識別情報で識別される前記ドキュメントを構成する総てのファイルとそのファイル名とを含む一括ファイルのファイル名を生成するファイル名生成部と、
前記転送部に受信された前記識別情報について前記一括ファイルを生成する転送用ファイル生成部とを備え、
前記一括ファイルのファイル名は、当該一括ファイルに係る識別情報を含み、
前記通知部は、前記選択部に選択された前記一又は複数の識別情報をそれぞれ含む、前記一括ファイルのファイル名を前記外部の通信装置へ送信し、
前記転送部は、受信した前記識別情報に係る前記一括ファイルを前記外部の通信装置に返信する、
ことを特徴とする請求項3に記載のドキュメント転送装置。
【請求項7】
前記外部の通信装置から前記一括ファイルを受信する受信部と、
前記受信部に受信された前記一括ファイルを展開する展開部とを備える、
ことを特徴とする請求項4乃至6のうちいずれか一項に記載のドキュメント転送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−97205(P2011−97205A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247218(P2009−247218)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】