説明

ドハティ増幅装置

【課題】ハティ増幅装置において、ET電源の給電能力が十分でないET電源を用いても高出力が得られ、低出力レベルにおいても更なる高効率化を図る。
【解決手段】入力信号を増幅するメインアンプ1とピークアンプ2とを備え、入力信号が小信号である時には前記ピークアンプ2がOFF状態となり、入力信号が大信号である時には前記ピークアンプ2がON状態となるドハティ増幅装置10において、固定電圧Vsを前記ピークアンプ2に給電する固定電源部11と、入力信号のエンベロープ振幅レベルに応じて調整される可変電圧Vdを前記メインアンプ1に給電するエンベロープトラッキング電源部9と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドハティ増幅装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高効率増幅装置として、ドハティ型の増幅装置(以下、「ドハティ増幅装置」という)が知られている。ドハティ増幅装置は、メインアンプとピークアンプとを有している、ドハティ増幅装置に与えられる入力信号は、メインアンプとピークアンプとに分配され、両アンプによって増幅され、両アンプの合成出力が、ドハティ増幅装置の出力となる。
【0003】
従来の一般的なドハティ増幅装置において、メインアンプは、AB級アンプ又はB級アンプとして構成されており、常時ON状態である。一方、ピークアンプは、C級アンプとして構成されており、入力信号が小信号である時にはOFF状態となり電力を消費せず、入力信号が大信号になるとON状態となる。
【0004】
したがって、入力信号が小信号のときは、メインアンプだけで入力信号が増幅される。また、入力信号が大信号になると、ピークアンプがON状態となることで、メインアンプの負荷インピーダンスが低下することによって、飽和電力が向上し、かつピークアンプ出力が合成され、全体の飽和電力が向上する。これにより、ドハティ増幅装置では、広い範囲で増幅が行うことができる。しかも、ピークアンプは、入力信号のレベルが小さい場合は、消費電力が少ないので、ドハティ増幅装置全体では、広い入力レベル範囲(一般的な対称型ドハティアンプでは、その飽和電力レベルから6dB下がった範囲)で高効率となる。
【0005】
また、増幅装置を高効率化する他の技術としてエンベロープトラッキング(Envelope Tracking)電源を用いたものが知られている。エンベロップトラッキング電源(以下、「ET電源」という)は、入力信号のエンベロープ(包絡線)に応じてアンプに給電される電源電圧を制御することにより、高効率を達成する。
【0006】
さらに、ドハティ増幅装置にET電源を採用したものとして、特許文献1に記載のものがある。
特許文献1に記載のものは、平均電力増幅器(メインアンプ)には、第1の直流電源からの固定電圧が給電され、ピーク電力増幅器(ピークアンプ)には、電圧変調器から振幅変調された電圧が給電されるよう構成されている。
【0007】
特許文献1において、ピーク電力増幅器に給電される振幅変調電圧は、入力された変調波信号の振幅エンベロープに対応する電圧のうち、所定のしきい値を超えた電圧で、直流電圧を振幅変調したものである。
つまり、特許文献1に記載のものは、ピークアンプにET電源から給電される構成である。
【特許文献1】特開2007−53540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7は、(1)ドハティ増幅装置ではない普通の増幅装置の効率−出力特性A、(2)(2)従来の一般的なドハティ増幅装置の効率−出力特性B、(3)普通の増幅装置にET電源を用いたときの効率−出力特性Cを示している。
【0009】
図7の特性Bに示すように、従来の一般的なドハティ増幅装置の効率では、飽和出力に至るまで広い範囲で増幅できるとともに、普通の増幅装置(特性A)に比べて、特に低出力レベルの範囲で高効率化が図られている。
一方、図7の特性Cに示すように、普通の増幅装置にET電源を用いたときは、特に低出力レベルの範囲で、従来の一般的なドハティ増幅装置(特性B)よりもさらに高効率を得ることができる。
【0010】
しかし、普通の増幅装置にET電源を用いた場合、ET電源の給電能力によって、増幅装置のRF出力レベルが制限を受けてしまう。
つまり、図7の特性Cに示すように、アンプの出力能力よりも、ET電源の最大給電能力が低い場合、増幅装置全体の出力レベルが、ET電源の給電能力に制限を受けてしまう。
【0011】
したがって、増幅装置全体の出力レベルが、ET電源の最大給電能力に制限を受けないようにするには、ET電源の最大給電能力を十分に大きくする必要がある。しかし、ET電源は、高価であるため、ET電源の最大給電能力を大きくすると、増幅装置全体のコストアップとなる。
【0012】
また、特許文献1のドハティ型増幅器のように、ピーク電力増幅器(ピークアンプ)に対して、電圧変調器によって振幅エンベロープに応じた電圧を供給する場合においても、電圧変調器の最大給電能力は、入力信号が大信号であるときに動作するピーク電力増幅器の最大電力出力能力よりも大きくなければならない。さもなければ、ピーク電力増幅器の出力レベル、ひいてはドハティ型増幅器全体の出力レベルが、電圧変調器の最大給電能力による制限を受けてしまう。
しかし、電圧変調器(ET電源)の最大給電能力を大きくすると、コストアップとなるのは前述のとおりである。
【0013】
しかも、特許文献1のドハティ型増幅器では、平均電力増幅器(メインアンプ)だけが動作する小信号時においては、効率−出力特性は、普通のドハティ増幅装置(特性B)と変わらず、低出力レベルにおいては、普通の増幅装置にET電源を用いたときの効率(特性C)よりも劣ってしまう。
【0014】
このように、従来、増幅装置でET電源を用いると、高効率であるものの、ET電源の供給能力の制限により、高出力を確保することが困難であり、普通のドハティ増幅装置では、高出力が得られるがET電源を用いたときほどの広範囲な高効率は得られない。
また、特許文献1のドハティ型増幅器のようにピーク電力増幅器(ピークアンプ)にET電源を用いると、ピークアンプのON/OFFのスイッチングが明確になり、ピークアンプのON直前の効率が向上し、ピークアンプのON後も、高効率が期待されるが、平均電力増幅器(メインアンプ)だけが動作する小信号範囲での高効率化は期待できない。
【0015】
そこで、本発明は、ドハティ増幅装置において、ET電源の給電能力が十分でないET電源を用いても高出力が得られ、低出力レベルにおいても更なる高効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、入力信号を増幅するメインアンプとピークアンプとを備え、入力信号が小信号である時には前記ピークアンプがOFF状態となり、入力信号が大信号である時には前記ピークアンプがON状態となるドハティ増幅装置において、固定電圧を前記ピークアンプに給電する固定電源部と、入力信号のエンベロープ振幅レベルに応じて調整される可変電圧を前記メインアンプに給電するエンベロープトラッキング電源部と、を備えていることを特徴とするドハティ増幅装置である。
【0017】
上記本発明によれば、メインアンプがエンベロープトラッキング電源部から給電を受けるため、エンベロープトラッキングによる高効率化を図ることができる。しかも、エンベロープトラッキング電源の給電能力が十分でなくても、大信号の増幅を担うピークアンプは固定電圧であるため、エンベロープトラッキング電源の給電能力の制限を受けず、高出力が得られる。
【0018】
前記メインアンプの出力と前記ピークアンプの出力との出力合成点においてみたときに、記メインアンプの出力レベルと前記ピークアンプの出力レベルとが、前記ピークアンプのON状態時においてほぼ一致するように、前記メインアンプの利得特性及び/又は前記ピークアンプの利得特性を、前記メインアンプの電源電圧に応じて調整する利得調整手段を更に備えているのが好ましい。
メインアンプがエンベロープトラッキング電源から給電を受けると、メインアンプの利得が変動し、両アンプの出力レベルと一致させることが困難になるが、利得調整手段を設けておくことで、出力レベルを一致させることができる。
【0019】
前記メインアンプの出力と前記ピークアンプの出力との出力合成点においてみたときに、前記メインアンプの出力信号と前記ピークアンプの出力信号とが、前記ピークアンプのON状態時においてほぼ同位相となるように、前記メインアンプの通過位相特性及び/又は前記ピークアンプの通過位相特性を、前記メインアンプの電源電圧に応じて調整する位相調整手段を更に備えているのが好ましい。
メインアンプがエンベロープトラッキング電源から給電を受けると、メインアンプの通過位相が変動し、両アンプの出力を同位相にすることが困難になるが、位相調整手段を設けておくことで、両アンプの出力の位相を一致させることができる。
【0020】
前記エンベロープトラッキング電源部は、その最大給電能力が、メインアンプの最大電力出力時の必要供給電力よりも大きく、メインアンプとピークアンプの最大合成出力時の必要供給電力よりも小さいのが好ましい。この場合、高出力、高効率を維持しながら低コスト、小型化が図れる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ET電源の給電能力が十分でないET電源を用いても高出力が得られ、低出力レベルにおいても更なる高効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るドハティ増幅装置10を示している。このドハティ増幅装置10は、従来のドハティ増幅装置10と同様に、入力端子に入力された入力信号Pinを、メインアンプ1とピークアンプ2に分配する分配器3を備えており、入力信号Pinをメインアンプ1とピークアンプ2とで増幅するように構成されている。
【0023】
メインアンプ1とピークアンプ2とは、それぞれ、FET(電界効果トランジスタ)によって構成されている。入力信号Pinは、両アンプ1,2によって増幅されるとともに、合成されて、ドハティ増幅装置10の出力信号Poutとなる。
なお、分配器3とピークアンプ2との間には、第1のλ/4線路4が設けられている。また、メインアンプ1とピークアンプ2との出力合成点Aと、メインアンプ1との間にも、第2のλ/4線路5が設けられている。
【0024】
メインアンプ1は、AB級アンプ又はB級アンプとして構成されており、常時ON状態である。一方、ピークアンプ2は、C級アンプとして構成されており、入力信号が小信号である時にはOFF状態となり電力を消費せず、入力信号が大信号になるとON状態となる。
そして、入力信号が大信号になると、ピークアンプがON状態となることで、メインアンプの負荷インピーダンスが低下することにより、飽和電力が向上し、かつピークアンプ出力が合成され、全体の飽和電力が向上する。
【0025】
本実施形態のドハティ増幅装置10は、メインアンプ1に対し、電源電圧(ドレイン電圧)として可変電圧を給電するエンベロープトラッキング電源部(ET電源部)9を備えている。
このET電源部9は、固定電圧である直流電源部11(電圧Vs)から、入力信号Pinのエンベロープ振幅レベルに応じて調整された可変電圧を生成して、メインアンプ1に給電するためのものである。
【0026】
このET電源部9は、エンベロープ(包絡線)検出部6によって検出された入力信号Pinのエンベロープ振幅レベルVdetからメインアンプ1に給電される電源電圧Vdを決定する制御部8と、制御部8によって決定された電源電圧Vdを生成してメインアンプ1に給電する電源供給部7と、を備えている。
【0027】
前記制御部8は、検出されたエンベロープ振幅レベルVdetから、メインアンプ1に供給される電源電圧Vdを決定するために、例えば、ルックアップテーブル(図示省略)を用いる。このルックアップテーブルは、図示しない記憶部に記憶されており、検出されたエンベロープ振幅レベルVdetに対応する電源電圧Vdが規定されている。制御部8は、ルックアップテーブルを参照して、検出されたエンベロープ振幅レベルVdetに対応する電源電圧Vdを決定する。
【0028】
図2における特性Dは、本実施形態に係るドハティ増幅装置10の効率−出力特性を示している。同図に示すように、メインアンプ1へ給電される電圧Vdをエンベロープ振幅レベルVdetに応じて、変化させることで、メインアンプ1だけが動作する低出力レベル範囲においては、普通のドハティ増幅装置に比べて高効率化が達成される。
【0029】
ここで、ET電源部9(電源供給部7)は、その最大給電能力が、メインアンプ1の最大電力出力時の必要供給電力よりも大きいものが採用されているため、メインアンプ1だけが動作する範囲において、メインアンプ1の出力は、ET電源部9の給電能力による規制を受けない。
ただし、ET電源9の最大給電能力は、メインアンプ1とピークアンプ2(ドハティ増幅装置10)の最大合成電力時の必要供給電力よりも小さくなっている。
【0030】
前記ピークアンプ2には、直流電源部(固定電源部)11から、固定電圧Vsが給電される。直流電源部11は、ピークアンプ2の電力出力を制限しないように、十分な大きさの電力を供給できるものであるが、ピークアンプ2は、入力信号Pinが小信号であるときにはOFF状態となるため電力消費が少なく、高出力レベルの範囲において、従来のドハティ増幅装置とほぼ同様な高効率特性が確保される。
【0031】
このように、本実施形態のドハティ増幅装置10によれば、小信号に対応する低出力レベル範囲では普通のドハティ増幅装置よりも高い効率が得られるとともに、大信号に対応する高出力レベル範囲では普通のドハティ増幅装置とほぼ同様に高い効率が得られるため、低出力レベル範囲及び高出力レベル範囲の双方において、全体的に高い効率が得られる。
【0032】
しかも、本実施形態において、大きな入力信号Pinの増幅を受け持つピークアンプ2は、ET電源部9から給電を受けず、十分な給電能力がある固定電源部11から給電を受けるため、ET電源部9の給電能力が十分でないとしても、ピークアンプ2ひいてはドハティ増幅装置10全体では、ET電源部9の給電能力による制限を受けず、図2に示すように、高出力を維持できる。
【0033】
なお、本実施形態では、ピークアンプ2に固定電源部11から給電しているが、仮に、ピークアンプ2へも可変電圧を給電するET電源部9を設けると、ET電源部9の効率が低いことから、ドハティ増幅装置10全体の効率(η0)が劣化する。また、両アンプ1,2に給電するET電源部9が必要となるため、コストアップとなる。
一方、本実施形態のドハティ増幅装置10では、ピークアンプ2へはET電源部9から給電しないため、上記のような問題を回避できる。
【0034】
図3は、第2実施形態に係るドハティ増幅装置10を示している。第2実施形態では、第1実施形態のドハティ増幅装置10に可変利得回路(利得調整手段)12を加えたものである。なお、第2実施形態において説明を省略する点は、第1実施形態と同様である。
【0035】
ドハティ増幅装置10は、その動作をするための前提として、大信号時にピークアンプ2がON状態になると、ピークアンプ2の出力レベルは、出力合成点Aからみたときに、メインアンプ1からの出力レベルと同じであることが必要である。
ところが、ET動作中のメインアンプ1の利得(振幅特性)は、その変化する電源電圧(ドレイン電圧)Vdによって変化する。したがって、メインアンプ1をET動作させると、メインアンプ1に給電される電源電圧Vdの値によって、メインアンプの出力レベルが異なることになる。
【0036】
ここで、図4は、アンプの利得特性を示している。図4において2点鎖線で示す特性は、メインアンプ1において電源電圧をVd1〜Vd5に変化させたときのそれぞれの利得特性を示している。図4に示すように、利得特性は、電源電圧Vdによって変化する。したがって、ET動作させたメインアンプ1の利得−出力特性は、図4の実線で示すようになる。
一方、図4の1点鎖線は、固定電圧が供給されるピークアンプ2の利得−出力特性を示している。
図4に示すように、メインアンプ1の利得特性とピークアンプ2の利得特性は、一致しておらず、電源電圧Vdの値によって、出力レベルが一致しないことがわかる。
【0037】
前記可変利得回路12は、ピークアンプ2の利得を調整して、少なくともピークアンプのON状態において、ピークアンプ2の出力レベルとメインアンプ1の出力レベルとが一致するようにする。
【0038】
可変利得回路12は、制御部8によって制御される。制御部8は、メインアンプ1の電源電圧Vdに応じて、可変利得回路12を制御し、ピークアンプ2の利得を調整する。制御部8は、電源電圧Vdに対応する利得調整値を記憶したルックアップテーブルを参照することにより、利得を調整することができる。なお、前記ルックアップテーブルは、入力信号の振幅エンベロープレベルに対応する利得調整値を記憶したものや、メインアンプの出力レベルに対応する利得調整値を記憶したものであってもよい。
【0039】
図4に示すように、ピークアンプ2のON状態において、メインアンプ1の利得とピークアンプ2の利得を調整することで、両アンプ1,2の出力を一致させることができる。
なお、メインアンプ1の電源電圧Vdの最大値Vd_maxと、ピークアンプ2の電源電圧Vsは、ほぼ等しいものとする。
【0040】
なお、メインアンプ1の電源電圧Vdは、入力信号Pinの振幅エンベロープに応じて変化するものであるから、エンベロープ検出部6によって検出した振幅エンベロープレベルを用いて利得調整値を求めても、電源電圧Vdに応じて利得を調整したことになる。また、同様に、メインアンプ1の出力信号レベルも入力信号Pinの振幅エンベロープに対応しているため、メインアンプ1の出力レベルを検出し、当該出力レベルを用いて利得調整値を求めても、電源電圧Vdに応じて利得を調整したことになる。
【0041】
また、利得調整回路12は、ピークアンプ2側に替えて又は加えて、メインアンプ1側に設けても良い。
【0042】
図5は、第3実施形態に係るドハティ増幅装置10を示している。第3実施形態では、第2実施形態のドハティ増幅装置10に可変位相回路(位相調整手段)14を更に加えたものである。なお、第3実施形態において説明を省略する点は、第1及び第2実施形態と同様である。
【0043】
ドハティ増幅装置10は、その動作をするための前提として、大信号時にピークアンプ2がON状態になると、ピークアンプ2の出力レベルは、出力合成点Aからみたときに、ピークアンプ2の出力レベルがメインアンプ1からの出力レベルと同じであるだけでなく、さらに、両アンプ1,2の出力の位相が同位相にあることが必要である。
【0044】
ところが、ET動作中のメインアンプ1は、利得(振幅特性)だけでなく位相特性も、電源電圧(ドレイン電圧)Vdによって大きく変化する。したがって、メインアンプ1をET動作させると、メインアンプ1に給電される電源電圧Vdの値によって、メインアンプの出力レベルだけでなく、位相も異なることになる。
【0045】
ここで、図6は、アンプの通過位相特性を示している。図6において2点鎖線で示す特性は、メインアンプ1において電源電圧をVd1〜Vd5に変化させたときのそれぞれの通過位相特性を示している。図6に示すように、通過位相特性は、電源電圧Vdによって大きく変化する。したがって、ET動作させたメインアンプ1の位相−出力特性は、図6の実線で示すようになる。
一方、図6の1点鎖線は、固定電圧が供給されるピークアンプ2の位相−出力特性を示している。
図6に示すように、メインアンプ1の位相特性とピークアンプ2の位相特性は、一致しておらず、電源電圧Vdの値によって、位相が一致しないことがわかる。
【0046】
前記可変位相回路14は、メインアンプ1の位相を調整して、メインアンプ1の出力とピークアンプ2の出力と同位相になるようにする。
【0047】
可変位相回路14も、可変利得回路12と同様に、制御部8によって制御される。制御部8は、メインアンプ1の電源電圧Vdに応じて、可変位相回路14を制御し、メインアップ1の位相を調整する。制御部8は、電源電圧Vdに対応する位相調整値を記憶したルックアップテーブルを参照することにより、位相を調整することができる。なお、前記ルックアップテーブルは、入力信号の振幅エンベロープレベルに対応する位相調整値を記憶したものや、メインアンプの出力レベルに対応する位相調整値を記憶したものであってもよい。
【0048】
図6に示すように、少なくともピークアンプ2のON状態において、メインアンプ1の位相とピークアンプ2の位相を調整することで、両アンプ1,2の出力を同位相にすることができる。
【0049】
このように、第3実施形態では、利得と位相が調整されるため、メインアンプ1をET動作させて利得や位相が変化しても、両アンプ1,2の出力レベルや位相を揃えることができ、ドハティ増幅装置としての、より適切な動作が確保できる。
なお、位相調整回路14は、メインアンプ1側に替えて又は加えて、ピークアンプ2側に設けても良い。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施形態に係るドハティ増幅装置の回路図である。
【図2】ドハティ増幅装置の効率−RF出力電力特性図である。
【図3】第2実施形態に係るドハティ増幅装置の回路図である。
【図4】利得−出力特性図である。
【図5】第3実施形態に係るドハティ増幅装置の回路図である。
【図6】通過位相−出力特性図である。
【図7】従来技術の効率−RF出力電力特性図である。
【符号の説明】
【0052】
1:メインアンプ,2:ピークアンプ,3:分配器,4:λ/4線路,5:λ/4線路,6:エンベロープ検出部,7可変電源部,8:制御部,9:ET電源部,10:ドハティ増幅装置,11:固定電源部,12:可変利得回路,14:可変位相回路,Vd:可変電圧,Vs:固定電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を増幅するメインアンプとピークアンプとを備え、入力信号が小信号である時には前記ピークアンプがOFF状態となり、入力信号が大信号である時には前記ピークアンプがON状態となるドハティ増幅装置において、
固定電圧を前記ピークアンプに給電する固定電源部と、
入力信号のエンベロープ振幅レベルに応じて調整される可変電圧を前記メインアンプに給電するエンベロープトラッキング電源部と、
を備えていることを特徴とするドハティ増幅装置。
【請求項2】
前記メインアンプの出力と前記ピークアンプの出力との出力合成点においてみたときに、記メインアンプの出力レベルと前記ピークアンプの出力レベルとが、前記ピークアンプのON状態時においてほぼ一致するように、前記メインアンプの利得特性及び/又は前記ピークアンプの利得特性を、前記メインアンプの電源電圧に応じて調整する利得調整手段を更に備えている請求項1記載のドハティ増幅装置。
【請求項3】
前記メインアンプの出力と前記ピークアンプの出力との出力合成点においてみたときに、前記メインアンプの出力信号と前記ピークアンプの出力信号とが、前記ピークアンプのON状態時においてほぼ同位相となるように、前記メインアンプの通過位相特性及び/又は前記ピークアンプの通過位相特性を、前記メインアンプの電源電圧に応じて調整する位相調整手段を更に備えている請求項2記載のドハティ増幅装置。
【請求項4】
前記エンベロープトラッキング電源部は、その最大給電能力が、メインアンプの最大電力出力時の必要供給電力よりも大きく、メインアンプとピークアンプの最大合成出力時の必要供給電力よりも小さい請求項1〜3のいずれか1項に記載のドハティ増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−194448(P2009−194448A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30570(P2008−30570)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】