説明

ドリル穴加工用のバックアップボード

【課題】 ガラス繊維の有用性を生かし、穴のカエリの発生や穴の位置精度の低下等、品質の低下を防止する機能の向上を図る。
【解決手段】 コア層Cの両面に表層Sを積層して形成されるもので、表層Sを、ガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸させて構成し、コア層Cを、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸させて構成し、必要に応じ、エポキシ樹脂にフィラー(充填剤)を添加し、予め、コア層Cを構成するコア層プリプレグと、表層Sを構成する表層プリプレグとを作製し、次に、コア層プリプレグ及び表層プリプレグを積層するとともに、加熱,加圧成形し、コア層Cの厚さをTc、表層Sの厚さをTs、全体の厚さをT(=Tc+2Ts)としたとき、Ts=0.1mm以上にし、T=1〜2mmに設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にプリント配線板用銅張り積層板のドリルによる穴あけ加工に用いられるドリル穴加工用のバックアップボードに係り、特に、ガラス繊維を用いてなるドリル穴加工用のバックアップボードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂板の片面あるいは両面に銅箔が設けられたプリント配線板用銅張り積層板にドリルで穴あけ加工をする場合、ドリル穴加工用のバックアップボードの上に複数のプリント配線板用銅張り積層板を重ね、必要に応じその上に同様の材質などのエントリーボードを重ね、ドリルで所定の径の穴を所定の位置に順次あけている。バックアップボードを用いることにより、ドリル穴あけ加工の際にプリント配線板用銅張り積層板の銅箔がプリント配線板用銅張り積層板の表面から盛り上がる所謂カエリの発生、あるいは、ドリルの摩耗,曲り等に起因する穴の位置精度の低下等の品質低下を防止するようにしている。
【0003】
この種のバックアップボードとしては、従来、例えば、フェノール樹脂積層板、紙エポキシ樹脂板等種々のものがあるが、ガラス繊維とエポキシ樹脂を組み合わせたものも有効に使用されている。従来、ガラス繊維とエポキシ樹脂を組み合わせたバックアップボードとして、例えば、特許文献1(特開昭57−100788号公報)においては、ガラス繊維を織りあげたガラス織布にエポキシ樹脂を含浸させ、これを3枚積層したものが紹介されている。また、例えば、特許文献2(特許第3273919号公報)においては、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸させ表面に銅張した積層板が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−100788号公報
【特許文献2】特許第3273919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のガラス織布にエポキシ樹脂を含浸させたバックアップボードにおいては、ガラス繊維を使用していることに起因して、相当程度製品の品質低下の防止効果を発揮するものの、硬さがやや硬いことから、ドリルの摩耗や曲りが生じやすく、しばしば、ドリルの折損が発生し、特に、直径が0.3mm以下の小径ドリルでの加工では顕著になり、必ずしも充分な機能を発揮できていないという実情があった。
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、ガラス繊維の有用性を生かし、小径ドリル加工時に顕著に見られる、ドリルの摩耗や曲り等を低減させ、ドリルの折損の発生を少なくし、穴のカエリの発生や穴の位置精度の低下等、品質低下を防止する機能の向上を図ったドリル穴加工用のバックアップボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明のドリル穴加工用のバックアップボードは、コア層の両面に表層を積層して形成されるドリル穴加工用のバックアップボードにおいて、上記表層を、ガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸させて構成している。
これにより、例えば、樹脂板の片面あるいは両面に銅箔が設けられたプリント配線板用銅張り積層板にドリルで穴あけ加工をする場合、本発明のバックアップボードの上に複数のプリント配線板用銅張り積層板を重ね、必要に応じその上にエントリーボードを重ね、ドリルで所定の径の穴を所定の位置に順次あける。
【0007】
この場合、本発明のバックアップボードは、表層はガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸して構成されるので、従来のガラス織布を用いたものに比較して、表層のガラス成分の比率が少なくなり、曲げ強さや曲げ弾性率が低くなって比較的柔らかいものになる一方、ガラス成分の存在により樹脂の粘性の影響が抑えられ、ガラス成分と樹脂成分との成分バランスが極めて良くなる。そのため、ドリル穴あけ加工の際にプリント配線板用銅張り積層板の銅箔がプリント配線板用銅張り積層板の表面から盛り上がる所謂カエリの発生を確実に防止することができる。また、従来に比較して、ドリルの摩耗や曲り等を低減させ、ドリルの折損の発生を少なくすることができ、ドリルの耐久性を向上させることができる。その結果、ドリルの摩耗や曲り等に起因する穴の位置精度の低下等、品質低下を防止することができる。また、ドリルの折損による未貫通穴の発生も低減させることができる。
【0008】
そして、必要に応じ、上記コア層を、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸させて構成している。これにより、コア層は、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸して構成されているが、表層とは材質的にガラス繊維を用いた点で共通するので、表層とコア層との接合の相が極めて良くなる。また、コア層は、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸して構成されているので、表層のガラス不織布に比較して、曲げ強さが高くなり、単にガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸した表層を積層する場合に比較して、表層の支持強度が高くなるとともに、全体でも曲げ強さを増し、適度な柔らかさを保持できることから、上記の製品の穴のカエリの発生や穴の位置精度の低下等、品質低下を防止する機能を、より一層向上させることができる。
【0009】
また、必要に応じ、上記コア層の厚さをTc、表層の厚さをTs、全体の厚さをT(=Tc+2Ts)としたとき、Ts=0.1mm以上にし、T=1〜2mmに設定した構成としている。
これにより、上記の機能を確実に向上させることができる。
Tは、望ましくは、T=1.1〜1.6mmである。
Tcは、Tc=0.4mm以上に設定することが望ましい。
Tsが0.1mmに満たないと、バックアップボードを切り込む際、コア層までドリルが達しやすくなり、ドリルの摩耗が生じやすくなる。
Tが1mmに満たないと、板厚が薄いプリント配線板用銅張り積層板を保持する適度な強度を保てない虞がある。
【0010】
更に、必要に応じ、上記表層において、エポキシ樹脂を、20〜90重量%含有し、上記コア層において、エポキシ樹脂を、10〜70重量%含有する構成としている。ガラス成分と樹脂成分との成分バランスが極めて良くなる。
【0011】
更にまた、必要に応じ、上記エポキシ樹脂に対してフィラーを添加する構成としている。フィラーとは無機充填剤のことであり、より一層機能性の向上が図られる。尚、必要に応じて添加剤を添加する。添加剤とは、エポキシ樹脂の硬化剤,硬化促進剤,着色剤,酸化防止剤,還元剤,紫外線不透過剤等の補助的な材料を言い、適宜選択される。
【0012】
そしてまた、必要に応じ、予め、上記コア層を構成するコア層プリプレグと、上記表層を構成する表層プリプレグとを作製し、次に、コア層プリプレグ及び表層プリプレグを積層するとともに、加熱,加圧成形した構成としている。
これにより、予め、プリプレグを作製してから積層するので、製造を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表層はガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸して構成されるので、従来のガラス織布を用いたものに比較して、表層のガラス成分の比率が少なくなり、曲げ強さや曲げ弾性率が低くなって比較的柔らかいものになる一方、ガラス成分の存在により樹脂の粘性の影響が抑えられ、ガラス成分と樹脂成分との成分バランスが極めて良くなる。そのため、ドリル穴あけ加工の際にプリント配線板用銅張り積層板の銅箔がプリント配線板用銅張り積層板の表面から盛り上がる所謂カエリの発生を確実に防止することができる。また、従来に比較して、ドリルの摩耗や曲り等を低減させ、ドリルの折損の発生を少なくすることができ、ドリルの耐久性を向上させることができる。その結果、ドリルの摩耗や曲り等に起因する穴の位置精度の低下等、品質低下を防止することができ、ドリルの折損による未貫通穴の発生も低減させることができる。特にその効果は、小径ドリルの穴加工時に顕著に見られ、小径ドリル加工時に極めて有用になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るドリル穴加工用のバックアップボードを示す断面図である。
【図2】本発明の実施例についての試験例に係り、試験条件を示す図である。
【図3】本発明の実施例について、比較例とともに行った試験例の結果を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係るドリル穴加工用のバックアップボードについて詳細に説明する。
図1には、実施の形態に係るドリル穴加工用のバックアップボードBを示している。このドリル穴加工用のバックアップボードBの基本的構成は、コア層Cの両面に表層Sを積層して形成されるものである。
【0016】
表層Sは、ガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸させて構成されている。
ガラス不織布は、例えば、周知の湿式法によりガラス繊維を抄き上げて製造され、必要により、ガラス繊維とガラス繊維を結合するバインダー成分が含まれる。使用されるガラス繊維としては、Eガラス繊維、Sガラス繊維、Dガラス繊維が使用可能である。ガラス不織布は、特に限定されないが、単位面積当たりの重量が40〜110g/m2 であるものを用いる。好ましくは60〜90g/m2 である。これにより、表層Sの機械的強度を確保することができる。また、エポキシ樹脂の含浸性を確保できる。
【0017】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネートなどの複素環式エポキシ樹脂のほか、脂環式型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
表層Sにおいて、必要に応じ、エポキシ樹脂に対してフィラー(充填剤)を添加する。フィラーとは無機充填剤のことであり、より一層機能性の向上が図られる。フィラーとしては、クレー、水酸化アルミニウム、タルクなどが挙げられる。尚、必要に応じて添加剤を添加する。添加剤としては、主に、エポキシ樹脂の硬化剤,硬化促進剤がある。エポキシ樹脂の硬化剤としてはアミン類、フェノール類、酸無水物等が挙げられる。硬化促進剤としてはイミダゾール化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。その他、必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線不透過剤等を加えてもよい。添加剤は、適宜選択される。
【0019】
表層Sにおいて、エポキシ樹脂は、20〜90重量%含有する。好ましくは、26〜45重量%である。フィラー(充填剤)を添加する場合には、フィラーは、7〜68重量%含有する。好ましくは、22〜54重量%である。フィラーは、エポキシ樹脂100重量部に対して15〜200重量部添加する。望ましくは、40〜150重量部添加する。
添加剤は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜3重量部添加する。
【0020】
コア層Cは、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸させて構成されている。
ガラス織布は、ガラス長繊維を紡糸し、これを製織して形成されている。使用されるガラス繊維としては、Eガラス繊維、Sガラス繊維、Dガラス繊維が使用可能である。ガラス織布の織り組織についても、平織り、綾織り、朱子織りなどいずれの織り組織でも可能で、特に限定はされない。ガラス織布は、特に限定されないが、単位面積当たりの重量が100〜400g/m2 であるものを用いる。好ましくは150〜300g/m2である。これにより、コア層Cの機械的強度を確保することができる。また、エポキシ樹脂の含浸性を確保できる。
【0021】
コア層Cに用いる、エポキシ樹脂、必要に応じて用いられるフィラー(充填剤)及び添加剤は上記と同様である。
そして、コア層Cにおいて、エポキシ樹脂は、10〜62重量%含有する。好ましくは、12〜59重量%である。フィラーを添加する場合には、フィラーは、3〜39重量%含有する。好ましくは、10〜36重量%である。
【0022】
実施の形態に係るバックアップボードBにおいて、図1に示すように、コア層Cの厚さをTc、表層Sの厚さをTs、全体の厚さをT(=Tc+2Ts)としたとき、Ts=0.1mm以上にし、T=1〜2mmに設定した構成としている。
Tは、望ましくは、T=1.1〜1.6mmである。
Tcは、Tc=0.4mm以上に設定することが望ましい。
【0023】
そしてまた、実施の形態に係るバックアップボードBにおいては、予め、コア層Cを構成するコア層プリプレグを作製する。コア層プリプレグの作製においては、ガラス織布を必要に応じてフィラー(充填剤)及び添加剤を添加した溶融エポキシ樹脂中に浸漬させ、エポキシ樹脂を含浸させ、これを絞りローラーに通すことによって、エポキシ樹脂の付着量が所定の範囲となるように調整し、その後、加熱して半硬化の状態のコア層プリプレグにする。
【0024】
一方、表層Sを構成する表層プリプレグを作製する。表層プリプレグの作製においては、ガラス不織布を必要に応じてフィラー(充填剤)及び添加剤を添加した溶融エポキシ樹脂中に浸漬させ、エポキシ樹脂を含浸させ、これを絞りローラーに通すことによって、エポキシ樹脂の付着量が所定の範囲となるように調整し、その後、加熱して半硬化の状態の表層プリプレグにする。
【0025】
次に、コア層プリプレグ及び表層プリプレグを積層するとともに、加熱,加圧成形し、バックアップボードBとする。加熱,加圧条件は、エポキシ樹脂の種類等に応じて異なるが、温度160〜200℃で時間20〜90分間、圧力1.5〜4.5MPa程度の範囲に設定する。
この場合、コア層Cは、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸して構成されているが、表層Sとは材質的にガラス繊維を用いた点で共通するので、表層Sとコア層Cとの接合の相が極めて良くなる。
【0026】
上記のように作製されたバックアップボードBは、例えば、樹脂板の片面あるいは両面に銅箔が設けられたプリント配線板用銅張り積層板にドリルで穴あけ加工をする場合に用いられる。この際には、図2に示すように、実施の形態に係るバックアップボードBの上に複数のプリント配線板用銅張り積層板Kを重ね、必要に応じその上にエントリーボードEを重ね、ドリルDで所定の径の穴を所定の位置に順次あける。
この場合、バックアップボードBの表層Sはガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸して構成されるので、従来のガラス織布を用いたものに比較して、表層のガラス成分の比率が少なくなり、曲げ強さや曲げ弾性率が低くなって比較的柔らかいものになる一方、ガラス成分の存在により樹脂の粘性の影響が抑えられ、ガラス成分と樹脂成分との成分バランスが極めて良くなる。そのため、ドリル穴あけ加工の際にプリント配線板用銅張り積層板の銅箔がプリント配線板用銅張り積層板の表面から盛り上がる所謂カエリの発生を確実に防止することができる。また、従来に比較して、ドリルの摩耗や曲り等を低減させ、ドリルの折損の発生を少なくすることができ、ドリルの耐久性を向上させることができる。その結果、ドリルの摩耗や曲り等に起因する穴の位置精度の低下等、品質低下を防止することができる。また、ドリルの折損による未貫通穴の発生も低減させることができる。特にその効果は、小径ドリルの穴加工時に顕著に見られ、小径ドリル加工時に極めて有用になる。
【0027】
また、コア層Cは、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸して構成されているので、表層Sのガラス不織布に比較して、曲げ強さが高くなり、単にガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸した表層Sを積層する場合に比較して、表層Sの支持強度が高くなるとともに、全体でも曲げ強さを増し、適度な柔らかさを保持できることから、上記の製品の穴のカエリの発生や穴の位置精度の低下等の品質低下を防止する機能を、より一層向上させることができる。
また、実施の形態に係るバックアップボードBは、コア層Cの両面に設けられているので、両面を使用の用に供することができる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例について説明する。
(実施例1)
ガラス不織布として、単位面積当たりの重量が76〜84g/m2 のものを用いた。ガラス織布として、単位面積当たりの重量が205〜215g/m2 のものを用いた。また、エポキシ樹脂に対してフィラー(充填剤)を添加した。
【0029】
そして、上記と同様に、予め、コア層Cを構成するコア層プリプレグを作製した。コア層Cにおいて、エポキシ樹脂は、17.5重量%含有した。フィラーは、22.5重量%含有した。また、表層Sを構成する表層プリプレグを作製した。表層Sにおいて、エポキシ樹脂は、46.5重量%含有した。フィラーは、29.5重量%含有した。次に、コア層プリプレグ及び表層プリプレグを積層するとともに、加熱,加圧成形して、実施例1に係るバックアップボードBを作製した。加熱,加圧成形においては、温度180℃、圧力3MPa、時間50分間に設定した。
そして、実施例1に係るバックアップボードBにおいては、コア層Cの厚さをTc、表層Sの厚さをTs、全体の厚さをT(=Tc+2Ts)としたとき、Tc=0.4mm、Ts=0.4mm、T=1.2mmに設定した。
【0030】
(実施例2)
ガラス不織布及びガラス織布として、実施例1と同様のものを用いた。また、エポキシ樹脂に対してフィラー(充填剤)を添加した。添加量は、コア層Cにおいて、エポキシ樹脂は、29重量%含有し、フィラーは、11重量%含有した。また、表層Sにおいて、エポキシ樹脂は、62重量%含有した。フィラーは、14重量%含有した。他は上記実施例1と同様に作成した。
【0031】
(実施例3)
上記実施例1において、フィラー(充填剤)を使用しないものである。コア層Cにおいて、エポキシ樹脂は、43.0重量%含有した。表層Sにおいて、エポキシ樹脂は、66.6重量%含有した。他は、実施例1と同様である。
【0032】
<試験例>
次に、実施例1,2,3について、比較例とともに、性能比較試験を行った。先ず、比較例について示す。
(比較例1)
上記実施例3におけるコア層プリプレグと表層プリプレグとを逆にして、コア層Cにガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸させたものを設け、表層Sにガラス織布にエポキシ樹脂を含浸させたものを設けた。即ち、従来例で示したと同様に、表層Sにガラス織布にエポキシ樹脂を含浸させたものが設けられたものである。比較例1に係るバックアップボードBにおいては、コア層Cの厚さをTc、表層Sの厚さをTs、全体の厚さをT(=Tc+2Ts)としたとき、Tc=0.8mm、Ts=0.2mm、T=1.2mmに設定した。
【0033】
(比較例2)
比較例2は、周知の紙フェノール板を用いた。紙基材にフェノール樹脂を含浸して構成されており、その厚さTは、T=1.5mmである。
【0034】
(試験例1)
試験例1は、図2に示すように、実施例1〜3のバックアップボードB、比較例1,2のバックアップボードBに対して、厚さ0.15mmで銅箔厚9μのプリント配線板用銅張り積層板KをドリルDで穴あけ加工した。プリント配線板用銅張り積層板K(340mm×510mm)の穴あけ加工は、図2に示すように、プリント配線板用銅張り積層板Kを3枚重ねてバックアップボードBの上に載置し、更にその上にエントリーボードEを載置し、直径0.105mmのドリルDを用い、ドリルDを3枚のプリント配線板用銅張り積層板Kを貫通して先端がバックアップボードBにまで達するように送ることによって行なった。バックアップボードBへの切り込み量(穴あけ深さ)は、Da=0.12〜0.22mm、Db=0.25〜0.30mmの2つの場合にした。また、ドリルDは9本用意し、順次使用して穴あけ加工をできるようにした。ここで、ドリルDは、回転数20krpm、送り速度0.86mm/minの条件で作動させた。切り込み量Da,Dbの場合で、夫々、21150個の穴を加工した。ドリルD1本当たり、2350回/本になるようにした。
そして、ドリルDの使用前のドリル径φと、使用後のドリル径φxとの差を求め、これを摩耗量とし、平均を求めた。結果を図3に示す。
【0035】
この結果から、比較例1の表層Sがガラス織布にエポキシ樹脂のものでは、切り込み量Da,Db何れの場合でも、摩耗量が多く、これに比較して、実施例1〜3では、摩耗量は少なく、優れていることが分かった。比較例2においては、実施例より、成績の良いものもあるが、後述もするように、ドリルDの破損・表面状態などの原因による未貫通穴が多く、それだけ、穴あけ品質が劣る。
【0036】
(試験例2)
試験例2は、実施例1〜3のバックアップボードB、比較例1,2のバックアップボードBに対して、厚さ0.1mmで銅箔厚9μのプリント配線板用銅張り積層板KをドリルDで送り速度1.0mm/minの条件で穴あけ加工した。他の条件は試験例1と同様である。
そして、ホールアナライザ(穴位置座標測定器)を使い、穴の真の中心からのずれ量の平均値(Ave+3σ)を求めた。穴のあかないものは未カウントとした。結果を図3に示す。
【0037】
この結果から、比較例1の表層Sがガラス織布にエポキシ樹脂のものでは、ずれ量が大きいが、これに比較して、実施例1〜3では、ずれ量は少なく、優れていることが分かった。比較例2においては、実施例より、成績の良いものもあるが、後述もするように、ドリルDの破損・表面状態などの原因による未貫通穴が多く、それだけ、穴あけ品質が劣る。
【0038】
(試験例3)
試験例3は、実施例1〜3のバックアップボードB、比較例1,2のバックアップボードBに対して、厚さ0.1mmで銅箔厚9μのプリント配線板用銅張り積層板KをドリルDで穴あけ加工した。ドリルDは、直径0.105mmを用いた。他の条件は試験例2と同様である。
そして、本来あくべき21150個の穴のうち未貫通穴を計数した。結果を図3に示す。
【0039】
この結果から、実施例1〜3では、ほとんど未貫通穴はなく、即ち、ドリルDの折損・表面状態等の支障がなく、ドリルDで穴あけを確実に行えていることが分かる。比較例1においては、ドリルDの摩耗量が多く・穴位置精度が悪く、それだけ、穴あけ品質が劣る。
【0040】
(試験例4)
実施例1〜3のバックアップボードB、比較例1,2のバックアップボードBにおいて、製品の曲げ弾性率と、曲げ強さを測定した。結果を図3に示す。
この結果から、実施例1〜3の曲げ弾性率が比較例1,2より低く、約半分になっていることから、しなやかであり、ドリル穴あけの押さえ時にプリント配線板用銅張り積層板Kに追従し易く、穴あけ時の安定性が増す。一方、曲げ強さは200N/mm2前後で、比較例1より低いが、比較例2とは同等であり、プリント配線板用銅張り積層板Kを保持する適度な強度が保たれていることが分かる。
【符号の説明】
【0041】
B ドリル穴加工用のバックアップボード
S 表層
C コア層
K 積層板
E エントリーボード
D ドリル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層の両面に表層を積層して形成されるドリル穴加工用のバックアップボードにおいて、
上記表層を、ガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸させて構成したことを特徴とするドリル穴加工用のバックアップボード。
【請求項2】
上記コア層を、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸させて構成したことを特徴とする請求項1記載のドリル穴加工用のバックアップボード。
【請求項3】
上記コア層の厚さをTc、表層の厚さをTs、全体の厚さをT(=Tc+2Ts)としたとき、Ts=0.1mm以上にし、T=1〜2mmに設定したことを特徴とする請求項2記載のドリル穴加工用のバックアップボード。
【請求項4】
上記表層において、エポキシ樹脂を、20〜90重量%含有し、上記コア層において、エポキシ樹脂を、10〜70重量%含有することを特徴とする請求項3記載のドリル穴加工用のバックアップボード。
【請求項5】
上記エポキシ樹脂に対してフィラーを添加することを特徴とする請求項4記載のドリル穴加工用のバックアップボード。
【請求項6】
予め、上記コア層を構成するコア層プリプレグと、上記表層を構成する表層プリプレグとを作製し、次に、コア層プリプレグ及び表層プリプレグを積層するとともに、加熱,加圧成形したことを特徴とする請求項4または5記載のドリル穴加工用のバックアップボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−86207(P2013−86207A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228697(P2011−228697)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(591225545)ニッカン工業株式会社 (6)
【出願人】(511251582)岩手ニッカン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】