ドレッシング状態判定方法
【課題】所望の砥石真直形状が達成できたか否かを判定することのできるドレッシング状態判定方法を提供する。
【解決手段】ドレッシングの際に発生する超音波と、予め定められた複数の標本線との交差点数をMTシステムのT法における微分特性として取得すると共に、各交差点の内、交差点の位置を上回る位置に超音波が存在する交差点間の間隔の和をMTシステムのT法における積分特性として取得し、複数の標本線の内、予め定めら有効標本線における微分特性及び積分特性について、所定の単位空間データによって規準化し、その規準化された微分特性及び積分特性を基にドレッシングによる砥石真直度の推定値を算出し、算出された推定値が所定のしきい値を満足する場合に所望のドレッシング状態に達したと判定するものである。
【解決手段】ドレッシングの際に発生する超音波と、予め定められた複数の標本線との交差点数をMTシステムのT法における微分特性として取得すると共に、各交差点の内、交差点の位置を上回る位置に超音波が存在する交差点間の間隔の和をMTシステムのT法における積分特性として取得し、複数の標本線の内、予め定めら有効標本線における微分特性及び積分特性について、所定の単位空間データによって規準化し、その規準化された微分特性及び積分特性を基にドレッシングによる砥石真直度の推定値を算出し、算出された推定値が所定のしきい値を満足する場合に所望のドレッシング状態に達したと判定するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石のドレッシング状態の良否判定方法に係り、特に、砥石の真直形状との相関に基づくドレッシング状態の良否判別を可能としたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、砥石ドレッシング状態の良否判別方法としては、例えば、特許文献1には、ドレッシング時に発生する超音波を検出し、その検出信号の強度がほぼ一定レベルか否かにより砥石車の外周面の軸方向における平坦度を判定するようにしたものが開示されている。
また、特許文献2には、ドレッシング時に発生する超音波を検出し、その検出信号が、ドレッシング中に所定の閾値を上回る回数と下回る回数を計数し、その計数値に基づいてドレッシング状態の判定するようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−13136号公報(第3−7頁、図1−図12)
【特許文献2】特開平11−235665号公報(第4−5頁、図1−図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のいずれの判定方法においても、砥石の真直形状との相関関係が必ずしも明確ではない。すなわち、例えば、ノズルなどの内径研削を行う場合、ドレッシング後の砥石には、サブミクロンレベルでの真直形状が必要となるが、上述した従来の判定方法にあっては、ドレッシングの良否判定が、必ずしもサブミクロンレベルでの真直形状を保証するものではなく、所望する直真形状が得られているか否かが確実に判定できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、所望の砥石真直形状が達成できたか否かを判定することのできるドレッシング状態判定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るドレッシング状態判定方法は、
ドレッシング状態の良否を判定するドレッシング状態判定方法であって、
ドレッシングの際に発生する超音波に対して、その信号波形に対応した複数の標本線を設定し、前記複数の標本線の各々における前記信号波形との交差点数をMTシステムの微分特性として取得すると共に、前記各交差点の内、当該交差点の位置を上回る位置に前記信号波形が存在する交差点間の間隔の和をMTシステムの積分特性として取得し、前記複数の微分特性及び積分特性の内、予め定められた微分特性及び積分特性対応する微分特性及び積分特性を有効特徴項目として、予め定められた単位空間データによって規準化し、当該規準化された微分特性及び/又は積分特性を基にドレッシングによる砥石真直度の推定値を算出し、当該推定値が所定のしきい値を満足する場合に所望のドレッシング状態に達したと判定するよう構成されてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来と異なり、ドレッシングの良否を所望する砥石の真直度を満たすか否かによって判定できるようにしたので、無駄なドレッシングを行うことなく、効率良く、所望するドレッシング状態を高い信頼性で確保することがきるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態におけるドレッシング状態判定方法が適用される装置構成例を示す構成図である。
【図2】図1に示された構成例におけるドレッシング状態判定装置の機能ブロックを示したブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるドレッシング状態判定方法を実行する前に行われるドレッシング状態準備の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態におけるドレッシング状態判定装置において実行されるドレッシング状態判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態において超音波検出装置によって得られるドレッシングの際の超音波波形の一例を示す波形図である。
【図6】図5に示された超音波波形における微分特性と積分特性の抽出を説明するための超音波波形の主要部を示す波形図である。
【図7】ドレッシング状態診断準備において微分特性と積分特性を抽出した場合の抽出結果を表形式に纏めた例を示す説明図である。
【図8】ドレッシング状態診断準備において信号空間データの微分特性と積分特性を抽出した場合の具体的数値例を示した説明図である。
【図9】ドレッシング状態診断準備において抽出された信号空間データの微分特性と積分特性の規準化した結果を表形式に纏めた例を示す説明図である。
【図10】図8に示された信号空間データの微分特性と積分特性の規準化の結果を示す説明図である。
【図11】図9に示された信号空間データの規準化された値に対する比例定数βとSN比ηの例を示した説明図である。
【図12】図11に示された例に対して各メンバーの推定値を付加した場合の例を示す説明図である。
【図13】L32の2水準系直交表に全26項目を割り付けた例を説明する説明図である。
【図14】2水準系SN比η平均差をその値の大きい項目順に並べて表した棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図14を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるドレッシング状態判定装置の構成例にてついて、図1を参照しつつ説明する。
まず、図1に示された研削装置201自体は、公知・周知のものであり、同図においては、ドレッシング機能を有する例が示されている。同図は、主に、ドレッサヘッド211により砥石1をドレッシングする構成部分を示しており、砥石1によるワークの研削部分の構成については、図示を省略してある。
【0010】
かかる研削装置201には、ドレッシングの際に生ずる超音波の検出を行う超音波検出装置301が付加された構成となっている。
すなわち、超音波検出装置301は、超音波センサ311と、送信部(図示せず)と、受信部312とに大別されてなり、本発明の実施の形態において、超音波センサ311は、図示されない送信部と共にドレッサヘッド211内に配設されたものとなっている。
【0011】
この例における送信部(図示せず)及び受信部312は、超音波センサ311の検出信号を無線により送受信する構成となっているもので、受信部312で復調された超音波センサ311の検出信号は、ドレッシング状態判定装置(図1においては「JUD-UNIT」と表記)101に入力されるようになっている。
ドレッシング状態判定装置101によるドレッシング状態の判定結果は、研削制御部(図1においては「CONT」と表記)202による研削装置201の動作制御に供されるようになっている。
なお、図1における超音波検出装置301は、送信部(図示せず)と受信部312との間の信号の授受に無線を用いる構成としたが、勿論、このような構成に限定される必要はなく、有線式のものであっても良い。
【0012】
ドレッシング状態判定装置101は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータ(図示せず)を中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)を有すると共に、研削装置201とのインターフェースを図るインタ^フェイス回路(図示せず)などを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0013】
図2には、ドレッシング状態判定装置101においてドレッシング状態判定処理を実行するためにソフトウェアにより構成される機能を表した機能ブロック図が示されており、以下、同図について説明する。
まず、診断対象となる砥石のドレッシングの際に称するAE波信号(判定用AE波信号)は、超音波検出装置301を介してドレッシング状態判定装置101へ入力されるようになっており、入力された判定用AE波信号は、特徴量抽出手段により所定の特徴量が抽出される(詳細は後述)。
【0014】
次いで、特徴量抽出手段により抽出された特徴量に基づいて、砥石真直度を判定するための種々の演算が砥石真直形状推定値演算手段により演算され(詳細は後述)、真直判定手段により所望する砥石真直度に達しているか否かが判定さるものとなっている。なお、判定結果は、研削装置201におけるドレッシング動作の制御に供されるようになっている。
【0015】
図3には、ドレッシング状態判定装置101においてドレッシング状態診断処理を実行するために必要となる事前の準備処理であるドレッシング診断準備処理の手順が、図4には、ドレッシング状態判定装置101において実行されるドレッシング状態診断処理の処理手順がそれぞれ示されており、以下、同図を参照しつつ、これらの処理手順について説明する。
最初に、本発明の実施の形態におけるドレッシング状態診断方法について、概括的に説明する。
本発明の実施の形態におけるドレッシング状態診断方法は、ドレッシングによる砥石の真直形状が、所望の直真度を満足しているか否かを、MTシステムの一手法であるT法を用いて判定するようにしたものである。
【0016】
かかるドレッシング状態診断方法においては、ドレッシングにより得られた超音波信号を、T法に基づいて分析し、その分析データの内、予め定められた特定の特徴量を選択し、その抽出された特徴量に基づいて算出した砥石の真直形状の推定値が、所望する真直度に対応するしきい値を満たしているか否かによってドレッシング状態の良否を決定するものである。
【0017】
かかるドレッシング状態診断方法を実施するあたっては、診断の際にデータの選択基準となる項目を予め設定するためのドレッシング診断準備処理が必要であり、図3には、その手順が示されており、以下、同図を参照しつつドレッシング診断準備処理について説明する。
最初に、T法における単位空間を設定するための砥石として予め選定された砥石についてドレッシングを実施し、その際生ずる超音波(AE)波形を測定、取得する(図3のステップS100参照)。
【0018】
ここで、AE波形は、いわゆる生データではなく、受信部312において増幅、フィルタリングされ、さらに検波処理が施された後、エンベロープ処理が施された波形である。
また、このドレッシング診断準備処理におけるAE波形は、後述するドレッシング診断処理の場合と異なり、研削制御部202へ入力するのではなく、受信部312から図示されない公知・周知の波形計測機器へ入力し測定をするものとする。
さらに、このドレッシング診断準備処理においてドレッシングに用いられる砥石は、後述するドレッシング診断処理において診断対象とされる砥石と同一の粗さ、硬度を有するものの中で標準的なものを用いることとする。
【0019】
次に、ドレッシング後の砥石の真直形状を測定する(図3のステップS150参照)。
本発明の実施の形態において、砥石の真直形状の計測は、ドレッシング後の砥石を適宜なワークに転写し、その転写形状を測定することによって行う。
具体的には、ドレッシング後の砥石を通常のオシレーション研削して、例えば、ワーク径4mmの位置まで内径研削を行う。このとき、砥石面形状が変化しないようにできるだけ遅い切込み速度で、若しくは、手動パルスにて切込みを行う。ワーク径4mmの位置まで切込みを行った後、一旦、切り込みをワークから戻し、次いで、ワークの中央位置に砥石を移動し、プランジ切込み(手動パルス)にてワークを数ミクロン加工する。これによって、ワーク加工面に砥石接触部のみ段差ができるので、この形状を砥石真直度として測定する。
【0020】
次に、上述のように測定された砥石真直度を単位空間データとすることで単位空間(換言すれば、基準となる空間)の設定となる(図3のステップS200参照)。
次に、信号空間の設定を行う(図3のステップS250参照)。
すなわち、信号空間設定用として予め選択した複数の砥石についてドレッシングを行い、そのAE波形と砥石真直度を測定し、これを信号空間のデータとする。
【0021】
本発明の実施の形態においては、先に述べた単位空間の設定に用いた砥石と同一の粗さ、硬度で組成の異なる2種類の砥石について、それぞれ3個の砥石を信号空間用としてドレッシングを行った。なお、ドレッシング条件は、単位空間設定のための砥石のドレッシング条件と同一である(図3のステップS100参照)。
【0022】
次いで、単位空間、信号空間のそれぞれのデータについて、特徴項目の抽出を行う(図3のステップS300参照)。
特徴項目とは、T法によって後述するようにして推定値を算出するための基礎データと言うべきデータである。
まず、AE波形データについて、移動平均(例えば、10回)によりフィルタリングを施し、そのフィルタリング後のAE波形データから、次述するようにして特徴項目を抽出する。
【0023】
図5には、上述のフィルタリング後のAE波形データ例が示されており、以下、同図を参照しつつ、特徴項目抽出の手順について説明することとする。
最初に、AE波形データについて、その平均の出力値の位置を基準位置として定める。図5においては、符号Lcが付された一点鎖線の直線は、このAE波形データ例における基準位置を表したもので、この例において、基準位置は、AE出力2.0Vの位置となっている。
【0024】
この基準位置Lcに対して、上下所定の範囲において、時間軸に対して平行に複数の線(以下、便宜的に「標本線」と称する)を引き(図5参照)、各標本線上で、標本線とAE波形の交差点について、次述するように特徴項目として抽出を行う(図5参照)。なお、図5において、標本線は、二点鎖線で示されている。
複数の標本線の間隔は、基準位置から遠のくにしたがって広くなる、換言すれば、基準位置に近づくにしたがって標本線の間隔は小さくなるように設定したほうが、判定の精度が向上する。
本発明の実施の形態において、基準位置Lcに対する上下所定の範囲は、±0.3Vとし、各標本線の間隔は、0.05Vとした。
なお、これはあくまでも一例であり、基準位置Lcに対する上下所定の範囲や標本線の間隔は、検出されるAE波のレベルや、計測器の出力レベル等を勘案して、データとして用いるに適した範囲となるように適宜定められるべきものである。
【0025】
本発明の実施の形態においては、標本線とAE波形との交差点の数と、標本線上のAE波形との交差点同士の長さの和の2種類を特徴項目としている。
標本線とAE波形との交差点の数は、「微分特性」と、また、標本線上のAE波形との交差点同士の距離の和は、「積分特性」と、それぞれ称され、これらは、AE波形の周波数に関する情報、振幅及び分布に関する情報を包含するものであり、MTシステムにおいては良く使用される特徴項目である。なお、積分特性における”距離”は、線分の長さ、又は、その間の時間いずれでも良いが、本発明の実施の形態においては、線分の長さとして説明する。
【0026】
図6には、図5に示されたAE波形において、基準位置における微分特性と積分特性の抽出をより具体的に説明するためのAE波形図が示されており、以下、同図を参照しつつ、その内容について説明する。
まず、図6において、例えば、符号X21、X22が付された黒丸の点は、AE波と基準位置における標本線との交差点を示している。なお、図6においては、図を簡潔にして理解を容易にする等の観点から一部の交差点については、黒丸を付すことを省略してある。
微分特性は、各標本線における交差点の数として定義されるものである。
【0027】
一方、積分特性は、上述した微分特性としての交差点の内、AE波出力のある交差点間の長さ、すなわち、標本線よりも上側にAE波が存在する交差点間の長さの和として定義されるものである。
すなわち、図6において、例えば、符号X21が付された黒丸の点と符号X22が付された黒丸の点と間は、AE波が存在する交差点間とされ、この2つの交差点間の長さ、すなわち、グラフ上での実際の線分の長さ、又は、時間が、この交差点間の長さ又は時間とされる。
【0028】
一方、図6において、符号X22が付された黒丸の点と符号X23が付された黒丸の点との間は、AE波のレベルがこの位置における標本線より下回っているためにAE波が存在する交差点間とはされず、この2点間の長さは、積分特性として扱われない。
積分特性は、一つの標本線上において、このようにして求められた複数の線分の長さの和として定義されるものである(以下、便宜的に「線分和」と称する)。
上述した微分特性と積分特性の抽出は、単位空間データと信号空間データのそれぞれにについて行われるもので、これらの抽出結果は、例えば、図7に示されたような形式の表に纏められる。
【0029】
図7は、表の構成を一般化して表したもので、各内容について説明すれば、まず、「メンバー」は、個々の試料、すなわち、砥石を意味し、「メンバー」の行の各算用数字は、各砥石を区分するため、それぞれの砥石に付された識別用の数字である。
単位空間の設定のために用いられた試料(砥石)の数、すなわち、メンバー数nは、n≧1とされるもので、本発明の実施の形態においては、n=1とされている。
一方、信号空間のメンバー数lは、複数であることが好ましく、本発明の実施の形態においては、メンバー数l=6とされている。
【0030】
図7において、「出力」は、このT法を用いて診断の対象とされる物理量、すなわち、砥石の真直度を意味し、「出力」の行において、y1〜ynは、単位空間の各メンバー毎の真直度であり、y’1〜y’l は、信号空間の各メンバー毎の真直度であり、いずれも実測値である。
なお、単位空間の欄における「平均値」は、上述した単位空間の各メンバーの出力の平均値である。
【0031】
図7において、項目1〜項目kは、先に図6で説明した各標本線毎の微分特性と積分特性とを表す項目である。
すなわち、項目1〜項目(k/2)は、標本線の位置の高い側から各標本線におけるAE波との交差点数を表す項目であり、項目(k/2+1)〜項目kは、標本線の位置の高い側から各標本線における線分和を表す項目である。
【0032】
そして、図7において、例えば、単位空間の項目1の行におけるx11〜xn1は、各メンバーの特徴抽出項目の値、すなわち、本発明の実施の形態においては、先に説明した微分特性の値、換言すれば、対応する標本線上におけるAE波との交差点の数である。以下、他の項目の行における各xの値についても同様のものである。
これは、信号空間においても基本的に同様である。すなわち、図7において、例えば、項目1の行におけるx’11〜x’n1は、最も高い位置にある標本線上における各メンバー毎のAE波との交差点の数である。
【0033】
図8には、図7の形式に基づいた信号空間データの具体例が示されており、以下、同図について説明する。
この図8に示された例は、信号空間のメンバー数l=6とし、13本の標本線によって特徴項目抽出を行った場合の例である。
砥石真直形状は、先に図7で述べたように、各メンバーの実測値であり、単位は「μm」である。
【0034】
また、図8において、項目1〜13は、微分特性であり、項目14〜項目26は、積分特性である。なお、この図8の例においては、項目6〜項目25を省略したものとしてある。
この例における積分特性は、先に図7で説明したように線分の和であり、単位は「mm」である。
なお、単位空間の場合も、具体的な数値は異なるとしても、図8に示されたように求められるが、本発明の実施の形態においては、メンバー数は、先に述べたように1である。
【0035】
ここで、再び、図3の説明に戻れば、上述のようにして特徴項目の抽出(図3のステップS300参照)を行った後は、信号データの規準化を行う(図3のステップS350参照)。
信号データの規準化は、単位空間のデータを用いて行われる。
図9には、規準化の結果を一般化して表した例が表形式で例示されており、以下、同図を参照しつつ規準化の手順について説明する。
【0036】
規準化は、出力についても行われ、図9において、M1〜Mlは、各メンバーの規準化された出力値である。
この出力の規準化は、下記する式1により求められるものである。
【0037】
Mj=y’j−M0(j=1、2、・・・l)・・・式1
【0038】
ここで、y’j(j=1、2、・・・l)は、規準化前の信号空間の各メンバーの出力である(図7参照)。また、M0は、単位空間の出力の平均値である(図7参照)。
【0039】
次に、図9において、各メンバーの各項目の値X11〜Xlkは、下記する式2によって求められた規準化された項目値である。
【0040】
Xij=x’ij−xj・・・式2(但し、i=1、2、・・・l、j=1、2、・・・k)
【0041】
ここで、x’ijは、規準化前の信号空間の各データ(各項目値)であり、また、xj は、規準化前の単位空間の各項目値の平均値である(図7参照)。
すなわち、規準化された項目値は、信号空間データと単位空間データの差として求められるものである。
このような規準化の手順によって、先に図8に示された信号空間データの具体例を規準化すると、図10に示された如くとなる。
【0042】
上述のようにして規準化を行った後は、規準化された信号空間の各項目値について比例定数βと、二乗比の算出を行う(図3のステップS400参照)。
具体的な算出方法について、図11を参照しつつ、以下に説明する。
図11には、比例定数βと、二乗比の算出結果例を一般的な表現で表した例が示されており、同図を参照しつつ比例定数βと、二乗比の算出式について説明する。
例えば、比例定数β1は、項目1についての比例定数であるが、これは、各メンバーの出力値M1〜Mlと各メンバーの項目1の値との積の和を、有効除数で除したものとして求められる。すなわち、下記する式3により求められるものである。
【0043】
β1=(M1・X11+M2・X21+・・・+Ml・Xl1)/r・・・式3
【0044】
ここで、M1〜Mlは、各メンバーの規準化された出力値であり、また、X11〜Xl1は、各メンバーの項目1の規準化された値である(図9参照)。
また、有効除数rは、各メンバーの出力M1〜Mlの二乗の和として定義されるものであり、具体的には、下記する式4により求められるものである。
【0045】
r=M12+M22+・・・+Ml2・・・式4
【0046】
他の比例定数β2〜βkについても、上述のβ1の算出手順に準じて同様に求められるものである。
一方、二乗比については、例えば、二乗比η1を例に採れば、下記する式5によって求められるものである。
【0047】
η1=(1/r)(Sβ1−Ve1)/Ve1・・・式5
【0048】
但し、この式5は、Sβ1>Ve1が成立する場合のみ有効であり、Sβ1≦Ve1の場合には、η1=0と定義される。
ここで、Sβ1は、”比例項の変動”と称されるもので、下記する式6により求められるものである。
【0049】
Sβ1=(M1・X11+M2・X21+・・・+Ml・Xl1)2/r・・・式6
【0050】
すなわち、項目1の変動Sβ1は、各メンバーの出力値M1〜Mlと各メンバーの項目1の値との積の和を二乗した結果を有効除数rで除したものとして求められるものである。
また、Ve1は、”誤差分散”と称されるもので、下記する式7により求められるものである。
【0051】
Ve1=Se1/(l−1)・・・式7
【0052】
式7において、「l」は、信号空間のメンバーの数である(図11参照)。
また、式7において、第1項のSe1は、”誤差変動”と称されるもので、下記する式8によって求められるものである。
【0053】
Se1=ST1−Sβ1・・・式8
【0054】
この式8において、第2項のSβ1は、先の式6によって求められる比例項の変動である。また、式8の第1項のST1は、”全変動”と称されるもので、下記する式9によって求められるものである。
【0055】
ST1=(X112+X212+・・・+Xl12)・・・式9
【0056】
すなわち、ST1は、各メンバーの項目1の規準化された値(図9参照)のそれぞれの二乗の和として求められるものである。なお、η2を求める場合には、全変動は、ST2となり、各メンバーの項目2の規準化された値(図9参照)のそれぞれの二乗の和として求められる。以下、η3〜ηkをそれぞれ求める際の全変動STについてもこれに準じて求められるものである。
【0057】
上述のようにして比例定数β、二乗比ηを求めた後は、それを基に各メンバーの出力に対する推定値、すなわち、真直度の推定値を算出する(図3のステップS450参照)。
図12には、先の図11に、推定値を加えた例が示されている。
一般に、Mの推定値は、Mの上に記号「^」を付すが、本明細書においては、表記の都合上、便宜的に「M^」と表記することとする。
推定値の算出について、例えば、メンバーi(i=1、2、・・・、l)の推定値Mi^は、下記する式10によって算出される。
【0058】
Mi^={η1×(Xi1/β1)+η2×(Xi2/β2)+・・・+ ηk×(Xik/βk)}/(η1+η2+・・・+ηk)・・・式10
【0059】
すなわち、推定値Mi^は、各項目の規準化された値と二乗比ηとの積を比例定数で除し、その除算結果を、各項目の二乗比ηの和で除したものとして求められる。
例えば、図12に示された例において、i=1の場合、すなわち、メンバー1の推定値M1^は、下記のように求められる。
【0060】
M1^={η1×(X11/β1)+η2×(X12/β2)+・・・+ ηk×(X1k/βk)}/(η1+η2+・・・+ηk)
【0061】
次いで、上述のようにして算出された推定値と実測値の相関を表す相関SN比ηを下記する式11により算出する(図3のステップS500参照)。
【0062】
η(db)=10log{(1/r)(Sβ−Ve)/Ve}・・・式11
【0063】
ここで、rは、既に説明した通り”有効除数”と称されるもので、式4により求められるものである。また、Sβは、”比例項の変動”と称されるもので、下記する式12により求められるものである。
しかして、相関SN比ηは、誤差変動と誤差分散の差を有効除数で除し、その除算結果をさらに誤差分散で除した除算結果を対数に変換したものとして求められるということができる。
【0064】
Sβ=L2/r・・・式12
【0065】
ここで、Lは、下記する式13の線形式によって求められるものである。
【0066】
L=M1・M1^+M2・M2^+・・・+Ml・Ml^・・・式13
【0067】
すなわち、Lは、各メンバーの出力値とその推定値との積の和である。
また、式11において、誤差分散Veは、下記する式14によって求められるものである。
【0068】
Ve=Se/(l−1)・・・式14
【0069】
ここで、Seは、”誤差変動”と称されるもので、下記する式15により求められるものである。
【0070】
Se=ST−Sβ・・・式15
【0071】
ここで、STは、”全変動”と称されるもので、下記する式16により求められるものである。
【0072】
ST=(M1^2+M2^2+・・・+Ml^2)・・・式16
【0073】
なお、式15において、Sβは、先の式12によって求められた”比例項の変動”である。
しかして、誤差変動Seは、全変動と比例項の変動の差として求められるものである。また、全変動は、各メンバーの推定値の二乗の和として求められるものである。
このようにして求められた相関SN比ηは、その数値が大きい程、推定値と実測値の相関が高い、すなわち、推定精度が高いことを意味する。
【0074】
上述のようにして推定値と実測値の相関を表す相関SN比ηを求めた後は、真直度の推定を行うに際していずれの項目の組合せが最適であるかを次述するようにして決定する(図3のステップS550参照)。
すなわち、本発明の実施の形態においては、まず、2水準系直交表を用いて、推定を行うのにいずれの項目が有効性の高いものであるかの評価を行う。なお、ここで、”項目”は、各標本線毎の微分特性、又は、積分特性を意味し、具体的には、例えば、図12における項目1〜項目kにあたるものである。
具体的には、例えば、先に図8に例示したように項目数が26である場合には、L32の2水準系直交表に全26項目を割り付けるのが好適である。図13には、かかるL32の2水準系直交表に全26項目を割り付けた例が示されており、同図を参照しつつ、この例について説明する。
【0075】
最初に、図13において、”1”の表記は、その項目が第1水準、すなわち、その項目を使用することを表しており、また、”2”の表記は、その項目が第2水準、すなわち、その項目を使用しないことを表している。
図13に示されたように割り付けを行った後、各行毎、すなわち、番号1〜番号32毎(要因毎)に、先の式11に基づくSN比を算出する。なお、図13においては、このように算出されたSN比を「総合推定のSN比」と表記してある。
例えば、図13に示された例において、番号1の行は、全26項目が第1水準とされているため、この行のSN比は、先のステップS500で算出された値に一致することとなる。
【0076】
また、図13において、例えば、番号2の行は、X1〜X4、X6、X7、X10及びX16の8項目が第1水準である。したがって、式11に基づくSN比ηの算出に当たっては、そのの8項目のみが用いられることとなる。具体的には、式11によりSN比ηを算出する際に必要とされる各メンバーの推定値Mi^の算出(式10参照)には、その8項目のみが用いられて算出されることとなる。
【0077】
次いで、上述のようにして算出されたSN比ηについて、項目毎に、第1水準のSN比ηの平均と第2水準のSN比ηの平均の比較として、両者の差を算出し、項目の有効性を判定する。
すなわち、図13に示された例において、例えば、項目X1の場合、第1水準におけるSN比ηの平均は、番号1から番号16までの各SN比ηを加算して、これを、SN比ηの数である16で除算した結果として求められる。また、第2水準におけるSN比ηの平均は、番号17から番号32までの各SN比ηを加算して、これを、SN比ηの数である16で除算した結果として求められる。その結果、項目X1においては、(第1水準におけるSN比ηの平均)−(第2水準におけるSN比ηの平均)=0.08dbと求められることとなる。
【0078】
また、例えば、項目X2の場合、第1水準におけるSN比ηの平均は、番号1から番号8までの各SN比η、及び、番号17から番号24までの各SN比ηを加算し、それをこれらのSN比ηの数である16で除算した結果として求められる。一方、第2水準におけるSN比ηの平均は、番号9から番号16までの各SN比η、及び、番号25から番号32までの各SN比ηを加算し、それをこれらのSN比ηの数である16で除算した結果として求められる。
他の項目についても以下同様にして、各項目における第1水準におけるSN比ηの平均と第2水準におけるSN比ηの平均との差を求める。
【0079】
次に、上述のようにして算出された各項目における第1水準におけるSN比ηの平均と第2水準におけるSN比ηの平均との差(以下、便宜的に「2水準系SN比η平均差」と称する)について、差の大きい順に項目を並べる。図14には、図13の例について上述のように項目毎に、2水準系SN比η平均差を求め、その結果に基づいて、差の大きい順、換言すれば、有効性の大きい順に項目を並べると共に、それぞれの2水準系SN比η平均差を棒グラフに表した例が示されている。
同図の例においては、項目X19、X24が最も利得(2水準系SN比η平均差)が高い結果となっている。
一方、下位の11項目は、いずれも負の値となっており、これらは、真直度の推定には効果が無いか、又は、推定精度を悪化させると推察される。
【0080】
次に、2水準系SN比η平均差の上位の項目の幾つかの組合せについて、先の式11に基づくSN比ηを算出し、その算出値が所定の目標基準値を超えるか否かの判定によって、有効特徴項目の選択を行う(図3のステップS600参照)。
すなわち、図13、図14に示された例にあっては、(1)2水準系SN比ηの上位15項目(換言すれば、2水準系SN比η平均差が正となる項目全て)、(2)上位7項目、(3)上位4項目、(4)上位2項目の4つの組合せについて、それぞれの項目のみを用いる場合の式11に基づくSN比ηを再度算出する。
なお、図14の例の場合、上位2つの項目(X19、X24)は、同値で同列1位であるので、上位4項目とは、上位から3番目までの項目を採ることを意味する。また、上位の項目を如何に組合せるかは、上述の例に限定されるものではなく、適宜選択されるべきものである。
【0081】
そして、上述のように算出された各項目組合せにおけるSN比ηが、所定の目標基準値を超えているか否かを判定し、所定の目標基準値を超えるSN比ηの算出に用いられた項目を有効特徴項目として選択する。
ここで、所定の目標基準値は、目標とする真直度に応じて適宜設定されるべきものである。
有効特徴項目と定められた項目は、次述するドレッシング診断処理において抽出される項目となるもので、次述するドレッシング診断処理の実行前に、ドレッシング状態判定装置101に予め定められた方法によって、有効特徴項目とされるべき項目番号の書き込み(指定)を行う必要がある。
以上で、ドレッシング診断準備が終了である。
【0082】
次に、ドレッシング診断処理について、図4を参照しつつ説明する。
まず、先のドレッシング診断準備においては、受信部312とドレッシング状態判定装置101とは、オフライン状態、すなわち、受信部312の出力は、別個の測定装置へ入力されるようにしたが、このドレッシング診断処理の実行においては、受信部312の出力は、ドレッシング状態判定装置101へ入力されることが前提である。その結果、ドレッシング状態判定装置101により、後述するようにしてリアルタイムでドレッシングの良否が判定され、判定結果は、研削装置201の研削制御部202に入力され、ドレッシング動作制御に供されることとなる。
【0083】
かかる前提の下、まず、研削装置201により、診断対象とされる砥石に対するドレッシングを開始する。ドレッシングの開始に伴い生じた超音波は、超音波センサ311により検出され、図示されない送信部により無線送信されて、受信部312において受信、復調される。そして、受信部312で復調された超音波信号は、研削装置201の動作開始と共に、同様に動作開始状態とされるドレッシング状態判定装置101に入力され、ドレッシング状態判定装置101におけるドレッシング状態判定処理プログラムの開始により判定用AE波信号の読み込みがなされることとなる(図4のステップS802参照)。
【0084】
ドレッシング状態判定装置101においては、AE波信号の読み込みが行われると同時に、図5及び図6を参照しつつ先に説明したようにして、読み込まれたAE波信号について微分特性及び積分特性が抽出され、例えば、図8に示されたような形式に準じて、ドレッシング状態判定装置101の所定の記憶領域に記憶されることとなる。
なお、この微分特性及び積分特性の抽出においては、基準位置Lcや標本線の間隔は、予め所望の値が設定されるものとなっている。
【0085】
次いで、ドレッシング状態判定装置101において特徴量の抽出が行われる(図4のステップS804参照)。
すなわち、上述のようにして得られた微分特性、積分特性の内、先のドレッシング診断準備において予め特定された有効特徴項目が抽出されることとなる。例えば、先のドレッシング診断準備において項目1と項目5(図8参照)が有効特徴項目として選択された場合(図3のステップS600参照)、すなわち、換言すれば、項目1に対応する標本線と項目5に対応する標本線が有効標本線として選択された場合、このステップS804においては、項目1と項目5に対応するデータが抽出されることとなる。
【0086】
次いで、上述のようにして抽出された項目のデータについて規準化が行われる(図4のステップS806参照)。
すなわち、先にドレッシング診断準備で行った単位空間データによる信号データの規準化同様、抽出された項目のデータを単位空間のデータを用いて規準化が行われる。この場合の単位空間のデータは、ドレッシング診断準備の際に設定されたものである。
具体的には、ドレッシング状態判定装置101において先の式2に基づいて判定用信号データの規準化が行われることとなる。この場合、式2のx’ijは、ステップS804において得られた各データである。また、式2のxj は、ドレッシング診断準備で用いた規準化前の単位空間の各項目値の平均値である(図7参照)。
【0087】
次いで、判定用信号データについての推定値の算出が行われることとなる(図4のステップS808参照)。
すなわち、ドレッシング状態判定装置101において先の式10に基づいて推定値が算出されることとなる。この場合、比例定数β、SN比ηは、ドレッシング診断準備において求められた値であり(図11参照)、Xij(i=1、2、・・・l、j=1、2、・・・k)は、ステップS806で算出された各項目の規準化された値である。
【0088】
次いで、ドレッシング状態の合否が判定されることとなる(図4のステップS810参照)。
すなわち、ドレッシング状態判定装置101において上述のようにして求められた推定値が予め定められたしきい値を満たすか否かが判定され、しきい値を満たすと判定された場合(YESの場合)には、ドレッシング状態は合格であるとして研削制御部202へドレッシング終了を許可する信号が出力され、一連の処理が終了されることとなる。ここで、しきい値は、所望する砥石真直度に対して、一定の許容範囲を定めるのが好適である。
【0089】
一方、ドレッシング状態判定装置101において推定値が予め定められたしきい値を満たしていないと判定された場合(NOの場合)には、ドレッシング不良であるとする信号が研削制御部202へ出力され、一連の処理が終了されることとなる。この場合、ドレッシング状態判定装置101から研削制御部202へ出力する信号としては、ドレッシング不良とする信号のみならず、推定値としきい値との差を出力し、研削制御部202においてドレッシングの継続が必要か否かを判定できるようにすると好適である。
【0090】
なお、図4を参照しつつ説明した本発明の実施の形態のドレッシング状態診断処理においては、ステップS802、S804により図2における特徴量抽出手段が、また、ステップS806、S808により図2における砥石真直形状推定演算手段が、ステップS810〜S814により図2における真直判定手段が実現されたものとなっている。
【符号の説明】
【0091】
101…ドレッシング状態判定装置
201…研削装置
202…研削制御部
301…超音波検出装置
311…超音波センサ
312…受信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石のドレッシング状態の良否判定方法に係り、特に、砥石の真直形状との相関に基づくドレッシング状態の良否判別を可能としたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、砥石ドレッシング状態の良否判別方法としては、例えば、特許文献1には、ドレッシング時に発生する超音波を検出し、その検出信号の強度がほぼ一定レベルか否かにより砥石車の外周面の軸方向における平坦度を判定するようにしたものが開示されている。
また、特許文献2には、ドレッシング時に発生する超音波を検出し、その検出信号が、ドレッシング中に所定の閾値を上回る回数と下回る回数を計数し、その計数値に基づいてドレッシング状態の判定するようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−13136号公報(第3−7頁、図1−図12)
【特許文献2】特開平11−235665号公報(第4−5頁、図1−図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のいずれの判定方法においても、砥石の真直形状との相関関係が必ずしも明確ではない。すなわち、例えば、ノズルなどの内径研削を行う場合、ドレッシング後の砥石には、サブミクロンレベルでの真直形状が必要となるが、上述した従来の判定方法にあっては、ドレッシングの良否判定が、必ずしもサブミクロンレベルでの真直形状を保証するものではなく、所望する直真形状が得られているか否かが確実に判定できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、所望の砥石真直形状が達成できたか否かを判定することのできるドレッシング状態判定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るドレッシング状態判定方法は、
ドレッシング状態の良否を判定するドレッシング状態判定方法であって、
ドレッシングの際に発生する超音波に対して、その信号波形に対応した複数の標本線を設定し、前記複数の標本線の各々における前記信号波形との交差点数をMTシステムの微分特性として取得すると共に、前記各交差点の内、当該交差点の位置を上回る位置に前記信号波形が存在する交差点間の間隔の和をMTシステムの積分特性として取得し、前記複数の微分特性及び積分特性の内、予め定められた微分特性及び積分特性対応する微分特性及び積分特性を有効特徴項目として、予め定められた単位空間データによって規準化し、当該規準化された微分特性及び/又は積分特性を基にドレッシングによる砥石真直度の推定値を算出し、当該推定値が所定のしきい値を満足する場合に所望のドレッシング状態に達したと判定するよう構成されてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来と異なり、ドレッシングの良否を所望する砥石の真直度を満たすか否かによって判定できるようにしたので、無駄なドレッシングを行うことなく、効率良く、所望するドレッシング状態を高い信頼性で確保することがきるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態におけるドレッシング状態判定方法が適用される装置構成例を示す構成図である。
【図2】図1に示された構成例におけるドレッシング状態判定装置の機能ブロックを示したブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるドレッシング状態判定方法を実行する前に行われるドレッシング状態準備の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態におけるドレッシング状態判定装置において実行されるドレッシング状態判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態において超音波検出装置によって得られるドレッシングの際の超音波波形の一例を示す波形図である。
【図6】図5に示された超音波波形における微分特性と積分特性の抽出を説明するための超音波波形の主要部を示す波形図である。
【図7】ドレッシング状態診断準備において微分特性と積分特性を抽出した場合の抽出結果を表形式に纏めた例を示す説明図である。
【図8】ドレッシング状態診断準備において信号空間データの微分特性と積分特性を抽出した場合の具体的数値例を示した説明図である。
【図9】ドレッシング状態診断準備において抽出された信号空間データの微分特性と積分特性の規準化した結果を表形式に纏めた例を示す説明図である。
【図10】図8に示された信号空間データの微分特性と積分特性の規準化の結果を示す説明図である。
【図11】図9に示された信号空間データの規準化された値に対する比例定数βとSN比ηの例を示した説明図である。
【図12】図11に示された例に対して各メンバーの推定値を付加した場合の例を示す説明図である。
【図13】L32の2水準系直交表に全26項目を割り付けた例を説明する説明図である。
【図14】2水準系SN比η平均差をその値の大きい項目順に並べて表した棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図14を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるドレッシング状態判定装置の構成例にてついて、図1を参照しつつ説明する。
まず、図1に示された研削装置201自体は、公知・周知のものであり、同図においては、ドレッシング機能を有する例が示されている。同図は、主に、ドレッサヘッド211により砥石1をドレッシングする構成部分を示しており、砥石1によるワークの研削部分の構成については、図示を省略してある。
【0010】
かかる研削装置201には、ドレッシングの際に生ずる超音波の検出を行う超音波検出装置301が付加された構成となっている。
すなわち、超音波検出装置301は、超音波センサ311と、送信部(図示せず)と、受信部312とに大別されてなり、本発明の実施の形態において、超音波センサ311は、図示されない送信部と共にドレッサヘッド211内に配設されたものとなっている。
【0011】
この例における送信部(図示せず)及び受信部312は、超音波センサ311の検出信号を無線により送受信する構成となっているもので、受信部312で復調された超音波センサ311の検出信号は、ドレッシング状態判定装置(図1においては「JUD-UNIT」と表記)101に入力されるようになっている。
ドレッシング状態判定装置101によるドレッシング状態の判定結果は、研削制御部(図1においては「CONT」と表記)202による研削装置201の動作制御に供されるようになっている。
なお、図1における超音波検出装置301は、送信部(図示せず)と受信部312との間の信号の授受に無線を用いる構成としたが、勿論、このような構成に限定される必要はなく、有線式のものであっても良い。
【0012】
ドレッシング状態判定装置101は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータ(図示せず)を中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)を有すると共に、研削装置201とのインターフェースを図るインタ^フェイス回路(図示せず)などを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0013】
図2には、ドレッシング状態判定装置101においてドレッシング状態判定処理を実行するためにソフトウェアにより構成される機能を表した機能ブロック図が示されており、以下、同図について説明する。
まず、診断対象となる砥石のドレッシングの際に称するAE波信号(判定用AE波信号)は、超音波検出装置301を介してドレッシング状態判定装置101へ入力されるようになっており、入力された判定用AE波信号は、特徴量抽出手段により所定の特徴量が抽出される(詳細は後述)。
【0014】
次いで、特徴量抽出手段により抽出された特徴量に基づいて、砥石真直度を判定するための種々の演算が砥石真直形状推定値演算手段により演算され(詳細は後述)、真直判定手段により所望する砥石真直度に達しているか否かが判定さるものとなっている。なお、判定結果は、研削装置201におけるドレッシング動作の制御に供されるようになっている。
【0015】
図3には、ドレッシング状態判定装置101においてドレッシング状態診断処理を実行するために必要となる事前の準備処理であるドレッシング診断準備処理の手順が、図4には、ドレッシング状態判定装置101において実行されるドレッシング状態診断処理の処理手順がそれぞれ示されており、以下、同図を参照しつつ、これらの処理手順について説明する。
最初に、本発明の実施の形態におけるドレッシング状態診断方法について、概括的に説明する。
本発明の実施の形態におけるドレッシング状態診断方法は、ドレッシングによる砥石の真直形状が、所望の直真度を満足しているか否かを、MTシステムの一手法であるT法を用いて判定するようにしたものである。
【0016】
かかるドレッシング状態診断方法においては、ドレッシングにより得られた超音波信号を、T法に基づいて分析し、その分析データの内、予め定められた特定の特徴量を選択し、その抽出された特徴量に基づいて算出した砥石の真直形状の推定値が、所望する真直度に対応するしきい値を満たしているか否かによってドレッシング状態の良否を決定するものである。
【0017】
かかるドレッシング状態診断方法を実施するあたっては、診断の際にデータの選択基準となる項目を予め設定するためのドレッシング診断準備処理が必要であり、図3には、その手順が示されており、以下、同図を参照しつつドレッシング診断準備処理について説明する。
最初に、T法における単位空間を設定するための砥石として予め選定された砥石についてドレッシングを実施し、その際生ずる超音波(AE)波形を測定、取得する(図3のステップS100参照)。
【0018】
ここで、AE波形は、いわゆる生データではなく、受信部312において増幅、フィルタリングされ、さらに検波処理が施された後、エンベロープ処理が施された波形である。
また、このドレッシング診断準備処理におけるAE波形は、後述するドレッシング診断処理の場合と異なり、研削制御部202へ入力するのではなく、受信部312から図示されない公知・周知の波形計測機器へ入力し測定をするものとする。
さらに、このドレッシング診断準備処理においてドレッシングに用いられる砥石は、後述するドレッシング診断処理において診断対象とされる砥石と同一の粗さ、硬度を有するものの中で標準的なものを用いることとする。
【0019】
次に、ドレッシング後の砥石の真直形状を測定する(図3のステップS150参照)。
本発明の実施の形態において、砥石の真直形状の計測は、ドレッシング後の砥石を適宜なワークに転写し、その転写形状を測定することによって行う。
具体的には、ドレッシング後の砥石を通常のオシレーション研削して、例えば、ワーク径4mmの位置まで内径研削を行う。このとき、砥石面形状が変化しないようにできるだけ遅い切込み速度で、若しくは、手動パルスにて切込みを行う。ワーク径4mmの位置まで切込みを行った後、一旦、切り込みをワークから戻し、次いで、ワークの中央位置に砥石を移動し、プランジ切込み(手動パルス)にてワークを数ミクロン加工する。これによって、ワーク加工面に砥石接触部のみ段差ができるので、この形状を砥石真直度として測定する。
【0020】
次に、上述のように測定された砥石真直度を単位空間データとすることで単位空間(換言すれば、基準となる空間)の設定となる(図3のステップS200参照)。
次に、信号空間の設定を行う(図3のステップS250参照)。
すなわち、信号空間設定用として予め選択した複数の砥石についてドレッシングを行い、そのAE波形と砥石真直度を測定し、これを信号空間のデータとする。
【0021】
本発明の実施の形態においては、先に述べた単位空間の設定に用いた砥石と同一の粗さ、硬度で組成の異なる2種類の砥石について、それぞれ3個の砥石を信号空間用としてドレッシングを行った。なお、ドレッシング条件は、単位空間設定のための砥石のドレッシング条件と同一である(図3のステップS100参照)。
【0022】
次いで、単位空間、信号空間のそれぞれのデータについて、特徴項目の抽出を行う(図3のステップS300参照)。
特徴項目とは、T法によって後述するようにして推定値を算出するための基礎データと言うべきデータである。
まず、AE波形データについて、移動平均(例えば、10回)によりフィルタリングを施し、そのフィルタリング後のAE波形データから、次述するようにして特徴項目を抽出する。
【0023】
図5には、上述のフィルタリング後のAE波形データ例が示されており、以下、同図を参照しつつ、特徴項目抽出の手順について説明することとする。
最初に、AE波形データについて、その平均の出力値の位置を基準位置として定める。図5においては、符号Lcが付された一点鎖線の直線は、このAE波形データ例における基準位置を表したもので、この例において、基準位置は、AE出力2.0Vの位置となっている。
【0024】
この基準位置Lcに対して、上下所定の範囲において、時間軸に対して平行に複数の線(以下、便宜的に「標本線」と称する)を引き(図5参照)、各標本線上で、標本線とAE波形の交差点について、次述するように特徴項目として抽出を行う(図5参照)。なお、図5において、標本線は、二点鎖線で示されている。
複数の標本線の間隔は、基準位置から遠のくにしたがって広くなる、換言すれば、基準位置に近づくにしたがって標本線の間隔は小さくなるように設定したほうが、判定の精度が向上する。
本発明の実施の形態において、基準位置Lcに対する上下所定の範囲は、±0.3Vとし、各標本線の間隔は、0.05Vとした。
なお、これはあくまでも一例であり、基準位置Lcに対する上下所定の範囲や標本線の間隔は、検出されるAE波のレベルや、計測器の出力レベル等を勘案して、データとして用いるに適した範囲となるように適宜定められるべきものである。
【0025】
本発明の実施の形態においては、標本線とAE波形との交差点の数と、標本線上のAE波形との交差点同士の長さの和の2種類を特徴項目としている。
標本線とAE波形との交差点の数は、「微分特性」と、また、標本線上のAE波形との交差点同士の距離の和は、「積分特性」と、それぞれ称され、これらは、AE波形の周波数に関する情報、振幅及び分布に関する情報を包含するものであり、MTシステムにおいては良く使用される特徴項目である。なお、積分特性における”距離”は、線分の長さ、又は、その間の時間いずれでも良いが、本発明の実施の形態においては、線分の長さとして説明する。
【0026】
図6には、図5に示されたAE波形において、基準位置における微分特性と積分特性の抽出をより具体的に説明するためのAE波形図が示されており、以下、同図を参照しつつ、その内容について説明する。
まず、図6において、例えば、符号X21、X22が付された黒丸の点は、AE波と基準位置における標本線との交差点を示している。なお、図6においては、図を簡潔にして理解を容易にする等の観点から一部の交差点については、黒丸を付すことを省略してある。
微分特性は、各標本線における交差点の数として定義されるものである。
【0027】
一方、積分特性は、上述した微分特性としての交差点の内、AE波出力のある交差点間の長さ、すなわち、標本線よりも上側にAE波が存在する交差点間の長さの和として定義されるものである。
すなわち、図6において、例えば、符号X21が付された黒丸の点と符号X22が付された黒丸の点と間は、AE波が存在する交差点間とされ、この2つの交差点間の長さ、すなわち、グラフ上での実際の線分の長さ、又は、時間が、この交差点間の長さ又は時間とされる。
【0028】
一方、図6において、符号X22が付された黒丸の点と符号X23が付された黒丸の点との間は、AE波のレベルがこの位置における標本線より下回っているためにAE波が存在する交差点間とはされず、この2点間の長さは、積分特性として扱われない。
積分特性は、一つの標本線上において、このようにして求められた複数の線分の長さの和として定義されるものである(以下、便宜的に「線分和」と称する)。
上述した微分特性と積分特性の抽出は、単位空間データと信号空間データのそれぞれにについて行われるもので、これらの抽出結果は、例えば、図7に示されたような形式の表に纏められる。
【0029】
図7は、表の構成を一般化して表したもので、各内容について説明すれば、まず、「メンバー」は、個々の試料、すなわち、砥石を意味し、「メンバー」の行の各算用数字は、各砥石を区分するため、それぞれの砥石に付された識別用の数字である。
単位空間の設定のために用いられた試料(砥石)の数、すなわち、メンバー数nは、n≧1とされるもので、本発明の実施の形態においては、n=1とされている。
一方、信号空間のメンバー数lは、複数であることが好ましく、本発明の実施の形態においては、メンバー数l=6とされている。
【0030】
図7において、「出力」は、このT法を用いて診断の対象とされる物理量、すなわち、砥石の真直度を意味し、「出力」の行において、y1〜ynは、単位空間の各メンバー毎の真直度であり、y’1〜y’l は、信号空間の各メンバー毎の真直度であり、いずれも実測値である。
なお、単位空間の欄における「平均値」は、上述した単位空間の各メンバーの出力の平均値である。
【0031】
図7において、項目1〜項目kは、先に図6で説明した各標本線毎の微分特性と積分特性とを表す項目である。
すなわち、項目1〜項目(k/2)は、標本線の位置の高い側から各標本線におけるAE波との交差点数を表す項目であり、項目(k/2+1)〜項目kは、標本線の位置の高い側から各標本線における線分和を表す項目である。
【0032】
そして、図7において、例えば、単位空間の項目1の行におけるx11〜xn1は、各メンバーの特徴抽出項目の値、すなわち、本発明の実施の形態においては、先に説明した微分特性の値、換言すれば、対応する標本線上におけるAE波との交差点の数である。以下、他の項目の行における各xの値についても同様のものである。
これは、信号空間においても基本的に同様である。すなわち、図7において、例えば、項目1の行におけるx’11〜x’n1は、最も高い位置にある標本線上における各メンバー毎のAE波との交差点の数である。
【0033】
図8には、図7の形式に基づいた信号空間データの具体例が示されており、以下、同図について説明する。
この図8に示された例は、信号空間のメンバー数l=6とし、13本の標本線によって特徴項目抽出を行った場合の例である。
砥石真直形状は、先に図7で述べたように、各メンバーの実測値であり、単位は「μm」である。
【0034】
また、図8において、項目1〜13は、微分特性であり、項目14〜項目26は、積分特性である。なお、この図8の例においては、項目6〜項目25を省略したものとしてある。
この例における積分特性は、先に図7で説明したように線分の和であり、単位は「mm」である。
なお、単位空間の場合も、具体的な数値は異なるとしても、図8に示されたように求められるが、本発明の実施の形態においては、メンバー数は、先に述べたように1である。
【0035】
ここで、再び、図3の説明に戻れば、上述のようにして特徴項目の抽出(図3のステップS300参照)を行った後は、信号データの規準化を行う(図3のステップS350参照)。
信号データの規準化は、単位空間のデータを用いて行われる。
図9には、規準化の結果を一般化して表した例が表形式で例示されており、以下、同図を参照しつつ規準化の手順について説明する。
【0036】
規準化は、出力についても行われ、図9において、M1〜Mlは、各メンバーの規準化された出力値である。
この出力の規準化は、下記する式1により求められるものである。
【0037】
Mj=y’j−M0(j=1、2、・・・l)・・・式1
【0038】
ここで、y’j(j=1、2、・・・l)は、規準化前の信号空間の各メンバーの出力である(図7参照)。また、M0は、単位空間の出力の平均値である(図7参照)。
【0039】
次に、図9において、各メンバーの各項目の値X11〜Xlkは、下記する式2によって求められた規準化された項目値である。
【0040】
Xij=x’ij−xj・・・式2(但し、i=1、2、・・・l、j=1、2、・・・k)
【0041】
ここで、x’ijは、規準化前の信号空間の各データ(各項目値)であり、また、xj は、規準化前の単位空間の各項目値の平均値である(図7参照)。
すなわち、規準化された項目値は、信号空間データと単位空間データの差として求められるものである。
このような規準化の手順によって、先に図8に示された信号空間データの具体例を規準化すると、図10に示された如くとなる。
【0042】
上述のようにして規準化を行った後は、規準化された信号空間の各項目値について比例定数βと、二乗比の算出を行う(図3のステップS400参照)。
具体的な算出方法について、図11を参照しつつ、以下に説明する。
図11には、比例定数βと、二乗比の算出結果例を一般的な表現で表した例が示されており、同図を参照しつつ比例定数βと、二乗比の算出式について説明する。
例えば、比例定数β1は、項目1についての比例定数であるが、これは、各メンバーの出力値M1〜Mlと各メンバーの項目1の値との積の和を、有効除数で除したものとして求められる。すなわち、下記する式3により求められるものである。
【0043】
β1=(M1・X11+M2・X21+・・・+Ml・Xl1)/r・・・式3
【0044】
ここで、M1〜Mlは、各メンバーの規準化された出力値であり、また、X11〜Xl1は、各メンバーの項目1の規準化された値である(図9参照)。
また、有効除数rは、各メンバーの出力M1〜Mlの二乗の和として定義されるものであり、具体的には、下記する式4により求められるものである。
【0045】
r=M12+M22+・・・+Ml2・・・式4
【0046】
他の比例定数β2〜βkについても、上述のβ1の算出手順に準じて同様に求められるものである。
一方、二乗比については、例えば、二乗比η1を例に採れば、下記する式5によって求められるものである。
【0047】
η1=(1/r)(Sβ1−Ve1)/Ve1・・・式5
【0048】
但し、この式5は、Sβ1>Ve1が成立する場合のみ有効であり、Sβ1≦Ve1の場合には、η1=0と定義される。
ここで、Sβ1は、”比例項の変動”と称されるもので、下記する式6により求められるものである。
【0049】
Sβ1=(M1・X11+M2・X21+・・・+Ml・Xl1)2/r・・・式6
【0050】
すなわち、項目1の変動Sβ1は、各メンバーの出力値M1〜Mlと各メンバーの項目1の値との積の和を二乗した結果を有効除数rで除したものとして求められるものである。
また、Ve1は、”誤差分散”と称されるもので、下記する式7により求められるものである。
【0051】
Ve1=Se1/(l−1)・・・式7
【0052】
式7において、「l」は、信号空間のメンバーの数である(図11参照)。
また、式7において、第1項のSe1は、”誤差変動”と称されるもので、下記する式8によって求められるものである。
【0053】
Se1=ST1−Sβ1・・・式8
【0054】
この式8において、第2項のSβ1は、先の式6によって求められる比例項の変動である。また、式8の第1項のST1は、”全変動”と称されるもので、下記する式9によって求められるものである。
【0055】
ST1=(X112+X212+・・・+Xl12)・・・式9
【0056】
すなわち、ST1は、各メンバーの項目1の規準化された値(図9参照)のそれぞれの二乗の和として求められるものである。なお、η2を求める場合には、全変動は、ST2となり、各メンバーの項目2の規準化された値(図9参照)のそれぞれの二乗の和として求められる。以下、η3〜ηkをそれぞれ求める際の全変動STについてもこれに準じて求められるものである。
【0057】
上述のようにして比例定数β、二乗比ηを求めた後は、それを基に各メンバーの出力に対する推定値、すなわち、真直度の推定値を算出する(図3のステップS450参照)。
図12には、先の図11に、推定値を加えた例が示されている。
一般に、Mの推定値は、Mの上に記号「^」を付すが、本明細書においては、表記の都合上、便宜的に「M^」と表記することとする。
推定値の算出について、例えば、メンバーi(i=1、2、・・・、l)の推定値Mi^は、下記する式10によって算出される。
【0058】
Mi^={η1×(Xi1/β1)+η2×(Xi2/β2)+・・・+ ηk×(Xik/βk)}/(η1+η2+・・・+ηk)・・・式10
【0059】
すなわち、推定値Mi^は、各項目の規準化された値と二乗比ηとの積を比例定数で除し、その除算結果を、各項目の二乗比ηの和で除したものとして求められる。
例えば、図12に示された例において、i=1の場合、すなわち、メンバー1の推定値M1^は、下記のように求められる。
【0060】
M1^={η1×(X11/β1)+η2×(X12/β2)+・・・+ ηk×(X1k/βk)}/(η1+η2+・・・+ηk)
【0061】
次いで、上述のようにして算出された推定値と実測値の相関を表す相関SN比ηを下記する式11により算出する(図3のステップS500参照)。
【0062】
η(db)=10log{(1/r)(Sβ−Ve)/Ve}・・・式11
【0063】
ここで、rは、既に説明した通り”有効除数”と称されるもので、式4により求められるものである。また、Sβは、”比例項の変動”と称されるもので、下記する式12により求められるものである。
しかして、相関SN比ηは、誤差変動と誤差分散の差を有効除数で除し、その除算結果をさらに誤差分散で除した除算結果を対数に変換したものとして求められるということができる。
【0064】
Sβ=L2/r・・・式12
【0065】
ここで、Lは、下記する式13の線形式によって求められるものである。
【0066】
L=M1・M1^+M2・M2^+・・・+Ml・Ml^・・・式13
【0067】
すなわち、Lは、各メンバーの出力値とその推定値との積の和である。
また、式11において、誤差分散Veは、下記する式14によって求められるものである。
【0068】
Ve=Se/(l−1)・・・式14
【0069】
ここで、Seは、”誤差変動”と称されるもので、下記する式15により求められるものである。
【0070】
Se=ST−Sβ・・・式15
【0071】
ここで、STは、”全変動”と称されるもので、下記する式16により求められるものである。
【0072】
ST=(M1^2+M2^2+・・・+Ml^2)・・・式16
【0073】
なお、式15において、Sβは、先の式12によって求められた”比例項の変動”である。
しかして、誤差変動Seは、全変動と比例項の変動の差として求められるものである。また、全変動は、各メンバーの推定値の二乗の和として求められるものである。
このようにして求められた相関SN比ηは、その数値が大きい程、推定値と実測値の相関が高い、すなわち、推定精度が高いことを意味する。
【0074】
上述のようにして推定値と実測値の相関を表す相関SN比ηを求めた後は、真直度の推定を行うに際していずれの項目の組合せが最適であるかを次述するようにして決定する(図3のステップS550参照)。
すなわち、本発明の実施の形態においては、まず、2水準系直交表を用いて、推定を行うのにいずれの項目が有効性の高いものであるかの評価を行う。なお、ここで、”項目”は、各標本線毎の微分特性、又は、積分特性を意味し、具体的には、例えば、図12における項目1〜項目kにあたるものである。
具体的には、例えば、先に図8に例示したように項目数が26である場合には、L32の2水準系直交表に全26項目を割り付けるのが好適である。図13には、かかるL32の2水準系直交表に全26項目を割り付けた例が示されており、同図を参照しつつ、この例について説明する。
【0075】
最初に、図13において、”1”の表記は、その項目が第1水準、すなわち、その項目を使用することを表しており、また、”2”の表記は、その項目が第2水準、すなわち、その項目を使用しないことを表している。
図13に示されたように割り付けを行った後、各行毎、すなわち、番号1〜番号32毎(要因毎)に、先の式11に基づくSN比を算出する。なお、図13においては、このように算出されたSN比を「総合推定のSN比」と表記してある。
例えば、図13に示された例において、番号1の行は、全26項目が第1水準とされているため、この行のSN比は、先のステップS500で算出された値に一致することとなる。
【0076】
また、図13において、例えば、番号2の行は、X1〜X4、X6、X7、X10及びX16の8項目が第1水準である。したがって、式11に基づくSN比ηの算出に当たっては、そのの8項目のみが用いられることとなる。具体的には、式11によりSN比ηを算出する際に必要とされる各メンバーの推定値Mi^の算出(式10参照)には、その8項目のみが用いられて算出されることとなる。
【0077】
次いで、上述のようにして算出されたSN比ηについて、項目毎に、第1水準のSN比ηの平均と第2水準のSN比ηの平均の比較として、両者の差を算出し、項目の有効性を判定する。
すなわち、図13に示された例において、例えば、項目X1の場合、第1水準におけるSN比ηの平均は、番号1から番号16までの各SN比ηを加算して、これを、SN比ηの数である16で除算した結果として求められる。また、第2水準におけるSN比ηの平均は、番号17から番号32までの各SN比ηを加算して、これを、SN比ηの数である16で除算した結果として求められる。その結果、項目X1においては、(第1水準におけるSN比ηの平均)−(第2水準におけるSN比ηの平均)=0.08dbと求められることとなる。
【0078】
また、例えば、項目X2の場合、第1水準におけるSN比ηの平均は、番号1から番号8までの各SN比η、及び、番号17から番号24までの各SN比ηを加算し、それをこれらのSN比ηの数である16で除算した結果として求められる。一方、第2水準におけるSN比ηの平均は、番号9から番号16までの各SN比η、及び、番号25から番号32までの各SN比ηを加算し、それをこれらのSN比ηの数である16で除算した結果として求められる。
他の項目についても以下同様にして、各項目における第1水準におけるSN比ηの平均と第2水準におけるSN比ηの平均との差を求める。
【0079】
次に、上述のようにして算出された各項目における第1水準におけるSN比ηの平均と第2水準におけるSN比ηの平均との差(以下、便宜的に「2水準系SN比η平均差」と称する)について、差の大きい順に項目を並べる。図14には、図13の例について上述のように項目毎に、2水準系SN比η平均差を求め、その結果に基づいて、差の大きい順、換言すれば、有効性の大きい順に項目を並べると共に、それぞれの2水準系SN比η平均差を棒グラフに表した例が示されている。
同図の例においては、項目X19、X24が最も利得(2水準系SN比η平均差)が高い結果となっている。
一方、下位の11項目は、いずれも負の値となっており、これらは、真直度の推定には効果が無いか、又は、推定精度を悪化させると推察される。
【0080】
次に、2水準系SN比η平均差の上位の項目の幾つかの組合せについて、先の式11に基づくSN比ηを算出し、その算出値が所定の目標基準値を超えるか否かの判定によって、有効特徴項目の選択を行う(図3のステップS600参照)。
すなわち、図13、図14に示された例にあっては、(1)2水準系SN比ηの上位15項目(換言すれば、2水準系SN比η平均差が正となる項目全て)、(2)上位7項目、(3)上位4項目、(4)上位2項目の4つの組合せについて、それぞれの項目のみを用いる場合の式11に基づくSN比ηを再度算出する。
なお、図14の例の場合、上位2つの項目(X19、X24)は、同値で同列1位であるので、上位4項目とは、上位から3番目までの項目を採ることを意味する。また、上位の項目を如何に組合せるかは、上述の例に限定されるものではなく、適宜選択されるべきものである。
【0081】
そして、上述のように算出された各項目組合せにおけるSN比ηが、所定の目標基準値を超えているか否かを判定し、所定の目標基準値を超えるSN比ηの算出に用いられた項目を有効特徴項目として選択する。
ここで、所定の目標基準値は、目標とする真直度に応じて適宜設定されるべきものである。
有効特徴項目と定められた項目は、次述するドレッシング診断処理において抽出される項目となるもので、次述するドレッシング診断処理の実行前に、ドレッシング状態判定装置101に予め定められた方法によって、有効特徴項目とされるべき項目番号の書き込み(指定)を行う必要がある。
以上で、ドレッシング診断準備が終了である。
【0082】
次に、ドレッシング診断処理について、図4を参照しつつ説明する。
まず、先のドレッシング診断準備においては、受信部312とドレッシング状態判定装置101とは、オフライン状態、すなわち、受信部312の出力は、別個の測定装置へ入力されるようにしたが、このドレッシング診断処理の実行においては、受信部312の出力は、ドレッシング状態判定装置101へ入力されることが前提である。その結果、ドレッシング状態判定装置101により、後述するようにしてリアルタイムでドレッシングの良否が判定され、判定結果は、研削装置201の研削制御部202に入力され、ドレッシング動作制御に供されることとなる。
【0083】
かかる前提の下、まず、研削装置201により、診断対象とされる砥石に対するドレッシングを開始する。ドレッシングの開始に伴い生じた超音波は、超音波センサ311により検出され、図示されない送信部により無線送信されて、受信部312において受信、復調される。そして、受信部312で復調された超音波信号は、研削装置201の動作開始と共に、同様に動作開始状態とされるドレッシング状態判定装置101に入力され、ドレッシング状態判定装置101におけるドレッシング状態判定処理プログラムの開始により判定用AE波信号の読み込みがなされることとなる(図4のステップS802参照)。
【0084】
ドレッシング状態判定装置101においては、AE波信号の読み込みが行われると同時に、図5及び図6を参照しつつ先に説明したようにして、読み込まれたAE波信号について微分特性及び積分特性が抽出され、例えば、図8に示されたような形式に準じて、ドレッシング状態判定装置101の所定の記憶領域に記憶されることとなる。
なお、この微分特性及び積分特性の抽出においては、基準位置Lcや標本線の間隔は、予め所望の値が設定されるものとなっている。
【0085】
次いで、ドレッシング状態判定装置101において特徴量の抽出が行われる(図4のステップS804参照)。
すなわち、上述のようにして得られた微分特性、積分特性の内、先のドレッシング診断準備において予め特定された有効特徴項目が抽出されることとなる。例えば、先のドレッシング診断準備において項目1と項目5(図8参照)が有効特徴項目として選択された場合(図3のステップS600参照)、すなわち、換言すれば、項目1に対応する標本線と項目5に対応する標本線が有効標本線として選択された場合、このステップS804においては、項目1と項目5に対応するデータが抽出されることとなる。
【0086】
次いで、上述のようにして抽出された項目のデータについて規準化が行われる(図4のステップS806参照)。
すなわち、先にドレッシング診断準備で行った単位空間データによる信号データの規準化同様、抽出された項目のデータを単位空間のデータを用いて規準化が行われる。この場合の単位空間のデータは、ドレッシング診断準備の際に設定されたものである。
具体的には、ドレッシング状態判定装置101において先の式2に基づいて判定用信号データの規準化が行われることとなる。この場合、式2のx’ijは、ステップS804において得られた各データである。また、式2のxj は、ドレッシング診断準備で用いた規準化前の単位空間の各項目値の平均値である(図7参照)。
【0087】
次いで、判定用信号データについての推定値の算出が行われることとなる(図4のステップS808参照)。
すなわち、ドレッシング状態判定装置101において先の式10に基づいて推定値が算出されることとなる。この場合、比例定数β、SN比ηは、ドレッシング診断準備において求められた値であり(図11参照)、Xij(i=1、2、・・・l、j=1、2、・・・k)は、ステップS806で算出された各項目の規準化された値である。
【0088】
次いで、ドレッシング状態の合否が判定されることとなる(図4のステップS810参照)。
すなわち、ドレッシング状態判定装置101において上述のようにして求められた推定値が予め定められたしきい値を満たすか否かが判定され、しきい値を満たすと判定された場合(YESの場合)には、ドレッシング状態は合格であるとして研削制御部202へドレッシング終了を許可する信号が出力され、一連の処理が終了されることとなる。ここで、しきい値は、所望する砥石真直度に対して、一定の許容範囲を定めるのが好適である。
【0089】
一方、ドレッシング状態判定装置101において推定値が予め定められたしきい値を満たしていないと判定された場合(NOの場合)には、ドレッシング不良であるとする信号が研削制御部202へ出力され、一連の処理が終了されることとなる。この場合、ドレッシング状態判定装置101から研削制御部202へ出力する信号としては、ドレッシング不良とする信号のみならず、推定値としきい値との差を出力し、研削制御部202においてドレッシングの継続が必要か否かを判定できるようにすると好適である。
【0090】
なお、図4を参照しつつ説明した本発明の実施の形態のドレッシング状態診断処理においては、ステップS802、S804により図2における特徴量抽出手段が、また、ステップS806、S808により図2における砥石真直形状推定演算手段が、ステップS810〜S814により図2における真直判定手段が実現されたものとなっている。
【符号の説明】
【0091】
101…ドレッシング状態判定装置
201…研削装置
202…研削制御部
301…超音波検出装置
311…超音波センサ
312…受信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレッシング状態の良否を判定するドレッシング状態判定方法であって、
ドレッシングの際に発生する超音波に対して、その信号波形に対応した複数の標本線を設定し、前記複数の標本線の各々における前記信号波形との交差点数をMTシステムの微分特性として取得すると共に、前記各交差点の内、当該交差点の位置を上回る位置に前記信号波形が存在する交差点間の間隔の和をMTシステムの積分特性として取得し、前記複数の微分特性及び積分特性の内、予め定められた微分特性及び積分特性対応する微分特性及び積分特性を有効特徴項目として、予め定められた単位空間データによって規準化し、当該規準化された微分特性及び/又は積分特性を基にドレッシングによる砥石真直度の推定値を算出し、当該推定値が所定のしきい値を満足する場合に所望のドレッシング状態に達したと判定することを特徴とするドレッシング状態判定方法。
【請求項2】
有効特徴項目は、MTシステムの単位空間用と定められた砥石と信号空間用と定められた砥石に対してそれぞれドレッシングを行い、それぞれにおいて生ずる超音波を取得し、各々の信号波形に対して、その信号波形に対応した複数の標本線を設定し、前記複数の標本線の各々における前記信号波形との交差点数をMTシステムの微分特性として取得すると共に、前記各交差点の内、当該交差点の位置を上回る位置に前記信号波形が存在する交差点間の間隔の和をMTシステムの積分特性として取得し、前記単位空間用の砥石について取得された前記微分特性及び積分特性を単位空間データとする一方、前記信号空間用の砥石について取得された前記微分特性及び積分特性を信号データとし、前記信号データに対して前記単位空間データを基にMTシステムのT法に基づく規準化を行い、前記各微分特性及び積分特性の前記規準化されたデータについてのT法に基づく比例定数βと二乗比を算出し、前記比例定数β、二乗比、及び、前記規準化されたデータを基に、前記信号空間用と定められた砥石についてのT法に基づく真直度の推定値を算出し、次いで、前記算出された推定値と実測値との相関関係を表す相関SN比ηを算出する一方、
前記信号データを構成する複数の微分特性及び積分特性を、当該特性取得のために設定された前記複数の標本線に対応して区分すべく、前記複数の標本線に1から昇順に付番し、その付番に応じてそれぞれの標本線において取得された微分特性又は積分特性を項目1から順に区分し、前記各項目を2水準系直交表における水準とする一方、前記信号空間用と定められた各々の砥石を2水準系直交表における要因として2水準系直交表に割り付けを行い、前記要因毎の相関SN比ηを求め、しかる後、前記項目毎に第1水準の相関SN比ηの平均値と第2水準の相関SN比ηの平均値の差を求め、当該算出結果の内、上位の複数の項目について任意に複数の組合せを設定し、それぞれの項目の組合せにおける相関SN比ηを算出し、その算出された相関SN比ηが所定の目標基準値を超える相関SN比ηの算出に用いられた項目に対応する前記微分特性及び積分特性を有効特徴項目として選択されたものであることを特徴とする請求項1記載のドレッシング状態判定方法。
【請求項3】
標本線は、超音波の出力レベルの平均値の位置を基準位置とし、前記平均値の上下に複数設定されたものであり、前記平均値から離間するにしたがい、各標本線の間隔が粗となるよう設定されてなることを特徴とする請求項2記載のドレッシング状態判定方法。
【請求項1】
ドレッシング状態の良否を判定するドレッシング状態判定方法であって、
ドレッシングの際に発生する超音波に対して、その信号波形に対応した複数の標本線を設定し、前記複数の標本線の各々における前記信号波形との交差点数をMTシステムの微分特性として取得すると共に、前記各交差点の内、当該交差点の位置を上回る位置に前記信号波形が存在する交差点間の間隔の和をMTシステムの積分特性として取得し、前記複数の微分特性及び積分特性の内、予め定められた微分特性及び積分特性対応する微分特性及び積分特性を有効特徴項目として、予め定められた単位空間データによって規準化し、当該規準化された微分特性及び/又は積分特性を基にドレッシングによる砥石真直度の推定値を算出し、当該推定値が所定のしきい値を満足する場合に所望のドレッシング状態に達したと判定することを特徴とするドレッシング状態判定方法。
【請求項2】
有効特徴項目は、MTシステムの単位空間用と定められた砥石と信号空間用と定められた砥石に対してそれぞれドレッシングを行い、それぞれにおいて生ずる超音波を取得し、各々の信号波形に対して、その信号波形に対応した複数の標本線を設定し、前記複数の標本線の各々における前記信号波形との交差点数をMTシステムの微分特性として取得すると共に、前記各交差点の内、当該交差点の位置を上回る位置に前記信号波形が存在する交差点間の間隔の和をMTシステムの積分特性として取得し、前記単位空間用の砥石について取得された前記微分特性及び積分特性を単位空間データとする一方、前記信号空間用の砥石について取得された前記微分特性及び積分特性を信号データとし、前記信号データに対して前記単位空間データを基にMTシステムのT法に基づく規準化を行い、前記各微分特性及び積分特性の前記規準化されたデータについてのT法に基づく比例定数βと二乗比を算出し、前記比例定数β、二乗比、及び、前記規準化されたデータを基に、前記信号空間用と定められた砥石についてのT法に基づく真直度の推定値を算出し、次いで、前記算出された推定値と実測値との相関関係を表す相関SN比ηを算出する一方、
前記信号データを構成する複数の微分特性及び積分特性を、当該特性取得のために設定された前記複数の標本線に対応して区分すべく、前記複数の標本線に1から昇順に付番し、その付番に応じてそれぞれの標本線において取得された微分特性又は積分特性を項目1から順に区分し、前記各項目を2水準系直交表における水準とする一方、前記信号空間用と定められた各々の砥石を2水準系直交表における要因として2水準系直交表に割り付けを行い、前記要因毎の相関SN比ηを求め、しかる後、前記項目毎に第1水準の相関SN比ηの平均値と第2水準の相関SN比ηの平均値の差を求め、当該算出結果の内、上位の複数の項目について任意に複数の組合せを設定し、それぞれの項目の組合せにおける相関SN比ηを算出し、その算出された相関SN比ηが所定の目標基準値を超える相関SN比ηの算出に用いられた項目に対応する前記微分特性及び積分特性を有効特徴項目として選択されたものであることを特徴とする請求項1記載のドレッシング状態判定方法。
【請求項3】
標本線は、超音波の出力レベルの平均値の位置を基準位置とし、前記平均値の上下に複数設定されたものであり、前記平均値から離間するにしたがい、各標本線の間隔が粗となるよう設定されてなることを特徴とする請求項2記載のドレッシング状態判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−36978(P2011−36978A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188915(P2009−188915)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
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