説明

ドレッシング装置、およびこのドレッシング装置によりドレッシングされる加工工具を用いた製造装置

【課題】ドレッシングが行われる時間を正確に把握することができるドレッシング装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るドレッシング装置は、ドレッシング工具1と、ドレッシング工具1を回転駆動するサーボモータ21とを備え、ドレッシング工具1をドレッシング面2内で回転させてドレッシング工具1のドレッシング面2に当接する研磨パッド15のドレッシングを行うドレッシング装置DAにおいて、サーボモータ21の回転駆動トルクを測定するトルク測定器35と、トルク測定器35により測定されたサーボモータ21の回転駆動トルクに基づいてドレッシング面2が研磨面16に当接していた時間を測定するコントローラ30とを有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨、研削、ラッピング加工等を行う加工工具の加工面をドレッシングするためのドレッシング装置と、このようなドレッシング装置によりドレッシングされる加工工具を用いた製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨、研削、ラッピング加工等を行う加工工具は、加工時間に応じて加工面の目詰まりが進行して劣化するため、定期的なドレッシングを行って常に良好な加工が行われるようにメンテナンスされる。このような加工工具としては、例えば、半導体ウェハの製造工程においてウェハ表面に形成された回路構成膜等の研磨加工を行う化学機械研磨装置(CMP装置)に用いられる研磨パッドがあり、この研磨パッドについても所定間隔をおいてドレッシング工具によるドレッシングが行われる。このようなドレッシング装置として、例えば、特開2003−80456号公報に開示のものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−80456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ドレッシングが行われる時間が加工工具である研磨パッドに与える影響は少なくない。そのため、ドレッシングが行われることによる研磨加工に対する影響を把握するために、ドレッシングが行われる時間を正確に把握する必要があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ドレッシングが行われる時間を正確に把握することができるドレッシング装置を提供することを目的とする。また、このドレッシング装置によりドレッシングされる加工工具を用いた製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的達成のため、本発明に係るドレッシング装置は、ドレッシング工具を備え、ドレッシング工具のドレッシング面に当接しつつ、ドレッシング面内で相対移動する加工工具のドレッシングを行うドレッシング装置において、ドレッシング面と平行な面内でのドレッシング工具の振れ量を測定する振れ量測定手段と、振れ量測定手段により測定されたドレッシング工具の振れ量に基づいてドレッシング面が加工面に当接していた時間を測定するドレッシング時間測定手段とを有して構成される。
【0007】
また、第2の本発明に係るドレッシング装置は、ドレッシング工具と、ドレッシング工具を回転駆動する駆動源とを備え、ドレッシング工具をドレッシング面内で回転させてドレッシング工具のドレッシング面に当接する加工工具のドレッシングを行うドレッシング装置において、駆動源の回転駆動トルクを測定するトルク測定手段と、トルク測定手段により測定された駆動源の回転駆動トルクに基づいてドレッシング面が加工面に当接していた時間を測定するドレッシング時間測定手段とを有して構成される。
【0008】
さらに、本発明に係る製造装置は、本発明に係るドレッシング装置によりドレッシングされた加工工具を用いて被加工物の加工を行うように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドレッシングが行われる時間を正確に把握することができ、これにより、ドレッシング後の加工条件をより適切に設定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るドレッシング装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】上記ドレッシング装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】ドレッシング工具の振れ量と時間との関係を示すグラフである。
【図4】サーボモータの駆動トルクと時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明に係る研磨パッド用ドレッシング装置DAを図1に示している。このドレッシング装置DAは、半導体ウェハ等の研磨を行うCMP装置に用いられる研磨パッド15(加工工具)の研磨面16(加工面)をドレッシングする装置であり、研磨パッド15を真空吸着などにより保持して回転するパッド保持機構10(加工工具保持手段)と、このパッド保持機構10により保持されて回転する研磨パッド15の研磨面16のドレッシングを行うドレッシング工具1と、このドレッシング工具1を回転自在に保持するドレッシング工具保持機構5(ドレッシング工具保持手段)とから構成される。
【0012】
パッド保持機構10は、研磨パッド15を真空吸着保持するパッド保持ヘッド11と、パッド保持ヘッド11に繋がる回転軸12と、この回転軸12を介してパッド保持ヘッド11を略水平面内で回転させる図示しない回転駆動装置とから構成される。なお、研磨パッド15は、ドーナツ円形の研磨面16を有した板状の部材からなり、その中心点を通り研磨面16に垂直な軸線が回転中心となるようにパッド保持ヘッド11に保持される。
【0013】
ドレッシング工具1は、研磨パッド15の研磨面16より径が小さい円形のドレッシング面2を有した円盤状に形成される。ドレッシング工具保持機構5は、ベース部材6と、ベース部材6の上側に取り付けられた本体ケース部材7と、本体ケース部材7に対し回転自在に且つ上下移動可能に取り付けられた回転軸部材8と、回転軸部材8の上端に固定されてドレッシング工具1を保持する工具保持部材9を有して構成され、ドレッシング面2が研磨パッド15の研磨面16と対向するように、ドレッシング工具1を略水平面内で回転自在に且つ上下移動可能に保持するようになっている。
【0014】
本体ケース部材7の内部には、回転軸部材8および工具保持部材9を回転駆動するサーボモータ21や、回転軸部材8および工具保持部材9を上下移動させる図示しないシリンダ機構などが配設される。そして、これらサーボモータ21およびシリンダ機構の作動により、工具保持部材9に保持されたドレッシング工具1が回転しつつ上方に移動し、ドレッシング工具1のドレッシング面2が(回転する状態で)回転する研磨パッド15の研磨面16に押し付けられる。このときのドレッシング工具1の回転力および押圧力は、詳細図示は省略するコントローラ30により適切な値に設定および制御され、研磨面16のドレッシングが行われる。
【0015】
図1および図2に示すように、本体ケース部材7の上部におけるドレッシング工具1の側方には、2つの変位センサ22,23が取り付けられており、ドレッシング面2と平行な面内(水平面内)におけるドレッシング工具1の所定基準位置からの振れ量(水平方向)をそれぞれ測定するようになっている。なお、変位センサ22,23に測定されたドレッシング工具1の振れ量は、コントローラ30に出力されるようになっている。また、図2に示すように、本体ケース部材7には、2つの水供給装置24,25が取り付けられており、ドレッシング工具1のドレッシング面2および研磨パッド15の研磨面16に向けてそれぞれ洗浄用の水を供給するようになっている。
【0016】
このような構成のドレッシング装置DAにおいて、前述したように、サーボモータ21およびシリンダ機構の作動により、工具保持部材9に保持されたドレッシング工具1が回転しつつ上方に移動し、ドレッシング工具1のドレッシング面2が(回転する状態で)回転する研磨パッド15の研磨面16に押し付けられる。そして、コントローラ30によりドレッシング工具1の回転力および押圧力が適切な値に制御され、研磨面16のドレッシングが行われる。
【0017】
また、本実施形態においては、コントローラ30が、変位センサ22,23により測定されたドレッシング工具の振れ量に基づいて、ドレッシング面2が実際に研磨面16に当接していた時間(すなわち、ドレッシングが行われた時間)を測定する。このように、研磨パッド15(研磨面16)に対してドレッシングが行われる時間を正確に把握することで、ドレッシング後のCMP装置における研磨条件(加工条件)をより適切に設定することが可能になる。
【0018】
図3に、ドレッシング工具の変位(振れ量)と時間との関係の一例を示す。この図から、ドレッシング面2が研磨面16に押し付けられてドレッシングが行われる間、ドレッシング工具の変位(振れ量)が0と−0.2mmとの間で推移することが分かる。このとき、コントローラ30は、例えば、ドレッシング工具の変位(振れ量)が0と−0.2mmとの間の値となるときの時間を測定し、測定した時間をドレッシング面2が研磨面16に当接していた時間(すなわち、ドレッシングが行われた時間)として測定する。図3においては、ドレッシング面2が研磨面16に当接していた時間は、(約31分17秒から31分24秒までの)約7秒となる。なお、グラフの波形が所定の形状(図3における中央部付近の波形)を示す時間をドレッシング面2が研磨面16に当接していた時間として測定するようにしてもよい。
【0019】
この結果、本実施形態によるドレッシング装置DAによれば、コントローラ30が、変位センサ22,23により測定されたドレッシング工具1の振れ量に基づいてドレッシング面2が研磨面16(加工面)に当接していた時間を測定するため、ドレッシングが行われる時間を正確に把握することができ、これにより、ドレッシング後の研磨条件(加工条件)をより適切に設定することが可能になる。また、ドレッシングが行われる時間を正確に把握することができるため、余分なドレッシングを行う必要がなくなり、研磨パッド15(加工工具)の寿命を延ばすことが可能になる。
【0020】
また、本実施形態におけるCMP装置(製造装置)が、本実施形態のドレッシング装置DAによりドレッシングされた研磨パッド15を用いて被加工物の研磨加工を行うように構成されることで、より適切に設定された研磨条件(加工条件)で被加工物の研磨加工を行うことが可能となり、研磨加工の加工精度を向上させることができる。
【0021】
なお、上述の実施形態において、研磨パッド15の下方においてドレッシング工具保持機構5によりドレッシング工具1が保持されるドレッシング装置について説明したが、これに限られるものではなく、本発明は、研磨パッドの上方においてドレッシング工具保持機構によりドレッシング工具が保持される構成のドレッシング装置にも用いることができる。
【0022】
また、上述の実施形態において、本発明に係る製造装置の一例として半導体ウェハ等の研磨を行うCMP装置を例に説明したが、これに限られるものではなく、例えば、研削装置やラッピング装置等でもよく、研磨、研削、ラッピング加工等を行う加工工具の加工面をドレッシングするためのドレッシング装置および、このようなドレッシング装置によりドレッシングされる加工工具を用いた製造装置であれば、本発明を適用することができる。
【0023】
さらに、上述の実施形態において、ドレッシング面2が研磨面16(加工面)に当接していた時間をコントローラ30が測定するように構成されているが、これに限られるものではなく、このようなドレッシング時間測定手段をコントローラと別に独立して設けるようにしてもよい。
【0024】
また、上述の実施形態において、コントローラ30が、変位センサ22,23により測定されたドレッシング工具1の振れ量に基づいてドレッシング面2が研磨面16(加工面)に当接していた時間を測定するように構成されているが、これに限られるものではない。例えば、図1の二点鎖線で示すように、トルク測定器35(トルク測定手段)により測定されたサーボモータ21の回転駆動トルクに基づいて、ドレッシング面2が研磨面16(加工面)に当接していた時間を測定するようにしてもよい。このようにしても、ドレッシングが行われる時間を正確に把握することができ、これにより、ドレッシング後の研磨条件(加工条件)をより適切に設定することが可能になる。
【0025】
なお実際には、トルク測定器35はサーボモータ21の駆動電流を検出し、検出した駆動電流から推測されるサーボモータ21の回転駆動トルクを電圧に変換してコントローラ30に出力する。図4に、サーボモータ21の駆動トルク(電圧)と時間との関係の一例を示す。この図から、サーボモータ21が作動してドレッシング工具1が回転駆動されるとき、ドレッシング面2が研磨面16に押し付けられてドレッシングが行われる間、サーボモータ21の駆動トルク(電圧)が0近傍で推移することが分かる。これは、研磨パッド15を回転させる回転駆動装置の回転駆動トルクがサーボモータ21の回転駆動トルクよりもかなり大きく、かつ研磨パッド15の回転方向とドレッシング工具1の回転方向が同じであり、ドレッシング面2が研磨面16に押し付けられるドレッシング時にはドレッシング工具1に回転駆動トルクを付与する必要が殆どないため、サーボモータ21に駆動電流があまり出力されないためである。
【0026】
このとき、コントローラ30は、例えば、サーボモータ21の駆動トルク(電圧)が0近傍となるときの時間を測定し、測定した時間をドレッシング面2が研磨面16に当接していた時間(すなわち、ドレッシングが行われた時間)として測定する。図4においては、ドレッシング面2が研磨面16に当接していた時間は、(約27分35秒から27分41秒までの)約6秒となる。なお、グラフの波形が所定の形状(図4における中央部付近の波形)を示す時間をドレッシング面2が研磨面16に当接していた時間として測定するようにしてもよい。
【0027】
なお、研磨パッド15の回転方向に対してドレッシング工具1の回転方向が逆回転となる場合は、ドレッシング面2が研磨面16に当接している状態でのサーボモータ21の駆動トルク(電圧)は0近傍にはならないので、予め、当接時の駆動トルク(電圧)の値を測定しておき、その駆動トルク(電圧)の値を使って当接していた時間を測定すればよい。
【0028】
このように、コントローラ30が、トルク測定器35により測定されたサーボモータ21の駆動トルクに基づいてドレッシング面2が研磨面16(加工面)に当接していた時間を測定するようにしても、ドレッシングが行われる時間を正確に把握することができ、これにより、ドレッシング後の研磨条件(加工条件)をより適切に設定することが可能になる。また、余分なドレッシングを行う必要もなくなり、研磨パッド15(加工工具)の寿命を延ばすことが可能になる。
【符号の説明】
【0029】
1 ドレッシング工具 2 ドレッシング面
5 ドレッシング工具保持機構(ドレッシング工具保持手段)
10 パッド保持機構(加工工具保持手段)
15 研磨パッド(加工工具) 16 研磨面(加工面)
21 サーボモータ(駆動源)
22 変位センサ(振れ量測定手段) 23 変位センサ(振れ量測定手段)
30 コントローラ(ドレッシング時間測定手段)
35 トルク測定器(トルク測定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレッシング工具を備え、前記ドレッシング工具のドレッシング面に当接しつつ、前記ドレッシング面内で相対移動する加工工具のドレッシングを行うドレッシング装置において、
前記ドレッシング面と平行な面内での前記ドレッシング工具の振れ量を測定する振れ量測定手段と、
前記振れ量測定手段により測定された前記ドレッシング工具の振れ量に基づいて前記ドレッシング面が前記加工面に当接していた時間を測定するドレッシング時間測定手段とを有して構成されることを特徴とするドレッシング装置。
【請求項2】
ドレッシング工具と、前記ドレッシング工具を回転駆動する駆動源とを備え、前記ドレッシング工具をドレッシング面内で回転させて前記ドレッシング工具の前記ドレッシング面に当接する加工工具のドレッシングを行うドレッシング装置において、
前記駆動源の回転駆動トルクを測定するトルク測定手段と、
前記トルク測定手段により測定された前記駆動源の回転駆動トルクに基づいて前記ドレッシング面が前記加工面に当接していた時間を測定するドレッシング時間測定手段とを有して構成されることを特徴とするドレッシング装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の前記ドレッシング装置によりドレッシングされた前記加工工具を用いて被加工物の加工を行うように構成されていることを特徴とする製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−183638(P2012−183638A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−148191(P2012−148191)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【分割の表示】特願2005−345734(P2005−345734)の分割
【原出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】